【実施例1】
【0032】
以下、図面を参照しながら実施例1を説明する。
図1は本発明の自動車用高圧ワイヤハーネスに係る図であり、(a)は自動車用高圧ワイヤハーネスの配索状態を示す概略図、(b)は金属管体の外面側に高電圧認識部品を後付けした状態を示す斜視図、(c)は金属管体の外面側に高電圧認識部品を後付けした状態を示す側面図である。また、
図2〜
図6は高電圧認識部品の第一〜第五の具体例に係る図であり、(a)は高電圧認識部品の斜視図、(b)は後付けするにあたり高電圧認識部品を開いた状態を示す斜視図、(c)は高電圧認識部品を後付けした状態を示す斜視図である。
【0033】
本実施例においては、ハイブリッド自動車(電気自動車や一般的な自動車であってもよいものとする)に本発明のワイヤハーネスを採用する例を挙げて説明するものとする。
【0034】
図1において、引用符号1はハイブリッド自動車を示している。ハイブリッド自動車1は、エンジン2及びモータユニット3の二つの動力をミックスして駆動する車両であって、モータユニット3にはインバータユニット4を介してバッテリー5(電池パック)からの電力が供給されるようになっている。エンジン2、モータユニット3、及びインバータユニット4は、本実施例において前輪等がある位置のエンジンルーム6に搭載されている。また、バッテリー5は、後輪等がある自動車後部7に搭載されている(エンジンルーム6の後方に存在する自動車室内に搭載してもよいものとする)。
【0035】
モータユニット3とインバータユニット4は、公知の高圧ワイヤハーネス8により接続されている。また、バッテリー5とインバータユニット4は、本発明のワイヤハーネス9(自動車用高圧ワイヤハーネス)により接続されている。ワイヤハーネス9は、高圧用のものとして構成されている。ワイヤハーネス9は、この中間部10が車体床下11の地面側に配索されている。また、車体床下11に沿って略平行に配索されている。車体床下11は、公知のボディであるとともに所謂パネル部材であって、所定位置には貫通孔(符号省略)が形成されている。この貫通孔には、ワイヤハーネス9が挿通されている。
【0036】
ワイヤハーネス9とバッテリー5は、このバッテリー5に設けられるジャンクションブロック12を介して接続されている。ジャンクションブロック12には、ワイヤハーネス9の後端13が公知の方法で電気的に接続されている。ワイヤハーネス9の前端14側は、インバータユニット4に対し公知の方法で電気的に接続されている。
【0037】
モータユニット3はモータ及びジェネレータを構成に含んでいるものとする。また、インバータユニット4は、インバータ及びコンバータを構成に含んでいるものとする。モータユニット3は、シールドケースを含むモータアッセンブリとして形成されるものとする。また、インバータユニット4もシールドケースを含むインバータアッセンブリとして形成されるものとする。バッテリー5は、Ni−MH系やLi−ion系のものであって、モジュール化してなるものとする。尚、例えばキャパシタのような蓄電装置を使用することも可能であるものとする。バッテリー5は、ハイブリッド自動車1や電気自動車に使用可能であれば特に限定されないものとする。
【0038】
先ず、ワイヤハーネス9の構成及び構造について説明をする。
【0039】
ワイヤハーネス9は、導電路集合体15と、この導電路集合体15の外装部材となる金属管体16と、金属管体16に後付けされる複数の高電圧認識部品17とを備えて構成されている。
【0040】
導電路集合体15は、二本の高圧電線18(高圧導電路)と、この二本の高圧電線18を一括して覆いシールドする電磁シールド部材19とを備えて構成されている(低圧電線をさらに含んでもよいものとする)。高圧電線18は、導体及び絶縁体(被覆)を含む高圧の導電路であって、電気的な接続に必要な長さを有するように形成されている。導体は、銅や銅合金、アルミニウムやアルミニウム合金により製造されている。導体に関しては、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面矩形又は丸形となる棒状の導体構造(例えば平角単心や丸単心となる導体構造であり、この場合、電線自体も棒状となる)のもののいずれであってもよいものとする。
【0041】
高圧電線18は、非シールド電線となるものに構成されている。高圧電線18の端末には、コネクタ(図示省略)が設けられている。
【0042】
尚、本実施例においては高圧電線18を用いているが、この限りでないものとする。すなわち、公知のバスバーに絶縁体を設けて高圧導電路としたもの等を用いてもよいものとする。また、中心にプラス極導体及びマイナス極導体のいずれか一方を配置し、このいずれか一方の外側に第一絶縁体を配置し、第一絶縁体の外側にプラス極導体及びマイナス極導体のいずれか他方を配置し、このいずれか他方の外側に第二絶縁体を配置してなるような高圧導電路、すなわち二本の高圧導電路を一本にまとめてなるような同軸の高圧導電路(複合導電路や複合電線、同軸複合導電路や同軸複合電線、或いは、同軸導電路や同軸電線などと呼ぶこともできる)を用いてもよいものとする。さらには、三本の高圧導電路を一本にまとめてなるような同軸の高圧導電路を用いてもよいものとする。
【0043】
電磁シールド部材19は、二本の高圧電線18を覆う電磁シールド用の部材(電磁波対策用のシールド部材)であって、導電性の金属箔を含むシールド部材、或いは金属箔単体などにて筒状に形成されている。電磁シールド部材19は、二本の高圧電線18の全長とほぼ同じ長さに形成されている。電磁シールド部材19は、図示しないコネクタを介して、又は直接インバータユニット4のシールドケース等に接続されている。
【0044】
尚、電磁シールド部材19は、本実施例において金属箔を含んでいるが、この限りでないものとする。すなわち、電磁波対策をすることが可能であれば、例えば極細の素線を多数有する編組を用いてもよいものとする。編組は、導電性を有しており、筒状に編んで形成されるものとする。
【0045】
電磁シールド部材19は、高圧電線18が上記の如く非シールド電線となる構成であることから備えられるものであって、高圧電線18が電磁シールド機能を有するシールド電線である場合にはこの限りでないものとする。
【0046】
金属管体16は、金属製の管体であって、導電路集合体15を収容するのに必要な長さを有するように形成されている。金属管体16は、本実施例において断面円形状に形成されている(断面形状は一例であるものとする。楕円形状や長円形状、矩形状であってもよいものとする)。このような金属管体16は、配索経路に合わせて曲げ加工が施されている。
【0047】
金属管体16は、本実施例においてアルミニウム製の断面円形状のパイプ部材が用いられている(尚、アルミニウムに限らず金属製なら特に限定されないものとする)。金属管体16は、導電路集合体15を収容することができる程度の内径寸法で形成されている。金属管体16は、導電路集合体15を収容した後、例えば図示しないベンダー機を用いて曲げ部20を形成するような曲げを施すと、これによってワイヤハーネス9が配索経路形状に沿った経路で保持されるようになっている。
【0048】
曲げ部20は、複数箇所形成されている。また、曲げ部20以外の部分は直線部21として形成されている。
【0049】
高電圧認識部品17は、高電圧であることを認識させるための手段として設けられている(ワイヤハーネス9が高圧電線18を備えるため、これを認識させる手段が必要)。高電圧認識部品17は、高電圧であることを示すオレンジ色に素材自体が着色されている。高電圧認識部品17は、金属管体16の外面側に、この金属管体16に対する加工後に組み付けることができるように形成されている。すなわち、後付けにより高電圧認識部品17を組み付けることができるように形成されている(加工前でも組み付けは可能であるものとする。加工の邪魔にならなければよいものとする)。
【0050】
高電圧認識部品17は、この組み付け対象が曲げ部20以外の直線部21となっている。これは、金属管体16の曲げ形状に高電圧認識部品17の形状が左右されないようにするためである。高電圧認識部品17は、直線部21に一つ又は複数個組み付けすることができる長さに形成されている。尚、高電圧認識部品17の長さが短い場合には、例えば100mm間隔程度で組み付けることが一例として挙げられるものとする。
【0051】
高電圧認識部品17は、ワイヤハーネス9を全体的に見た時に高電圧であることを認識させることができれば、必ずしも直線部21に一つ組み付けなくてよいものとする。また、直線部21が短い場合にも、他の部分で高電圧であることを認識させることができれば組み付けなくてもよいものとする。つまり、全ての直線部21が組み付け対象にならなくてもよいものとする。
【0052】
高電圧認識部品17は、金属管体16の外周方向に巻き付く形状、且つ、金属管体16から脱落しない形状に形成されている(具体的な形状については
図2ないし
図6を参照しながら後述する)。尚、金属管体16の外周方向に巻き付く形状であれば脱落し難くなるのは勿論であるが、より確実に脱落し難くする一例としては、金属管体16を車体床下11に固定する際に用いる固定部材22(例えばクランプなど)を利用することが挙げられるものとする(金属管体16と固定部材22との間に介在させる)。この場合、高電圧認識部品17を固定部材22の取り付け位置に合わせて配置するものとする。脱落防止に関しては、高電圧認識部品17に脱落防止用の係合部(後述する)を設けるようにしてもよいものとする。
【0053】
高電圧認識部品17は、金属管体16の外周方向に巻き付く形状に形成されれば、組み付け易い形状になるのは勿論である。
【0054】
高電圧認識部品17は、樹脂製であって、樹脂材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などが挙げられるものとする。高電圧認識部品17は、特に限定するものでないが、押出成型可能なもので、所定長さにカットして使用できるようなものがコストや製造性、或いは汎用性等の面で好適であるものとする。
【0055】
次に、
図2ないし
図6を参照しながら高電圧認識部品17の具体例(第一〜第五の具体例)について説明をする。
【0056】
図2において、第一の具体例となる高電圧認識部品17aは、樹脂製でオレンジ色に着色されたシート状又はフィルム状のも
のを所定の長さに切断することにより形成されている。高電圧認識部品17aは、金属管体16の外周方向に巻き付く形状、且つ、金属管体16から脱落しない形状にするために、全体が丸く癖づけられた癖付け部23を有するとともに、側方の端部同士が重なるオーバーラップ部24を有するように形成されている。
【0057】
高電圧認識部品17aは、柔軟性を有している。また、高電圧認識部品17aは、非常に軽いものに形成されている。
【0058】
高電圧認識部品17aは、側方の端部同士を広げて組み付け空間25を形成し、この組み付け空間25を介して直線部21へと押し込むことにより、金属管体16に対する後付けが完了するようになっている。オーバーラップ部24には、広げた状態から元の状態へと戻ろうとする力が生じ、これにより直線部21への巻き付きが維持されるようになっている。
【0059】
高電圧認識部品17aは、この側方の端部同士を金属管体16の直径以上に広げるような力が作用しない限り、脱落することのないものになっている。
【0060】
図3において、第二の具体例となる高電圧認識部品17bは、オレンジ色に着色されたものを樹脂の押出成型することにより、また、所定の長さに切断することにより形成されている(射出成型で所定長さに形成してもよいものとする)。高電圧認識部品17bは、金属管体16の外周方向に巻き付く形状、且つ、金属管体16から脱落しない形状にするために、図示の如く形成されている。
【0061】
具体的には、組み付け開口部26が生じる一方及び他方のC字状筒部27、28と、これら一方及び他方のC字状筒部27、28をつなぐヒンジ部29とを有しており、金属管体16の直線部21への組み付けがなされると、円筒状となるような形状に、また、オーバーラップ部30が生じるような形状に形成されている。高電圧認識部品17bは、第一の具体例よりも厚く剛性がある形状に形成されている。
【0062】
高電圧認識部品17bは、一方のC字状筒部27の組み付け開口部26を広げ、そして、この広げた組み付け開口部26を介して一方のC字状筒部27を金属管体16の直線部21へと押し込み、この後に他方のC字状筒部28の組み付け開口部26を広げ、そして、この広げた組み付け開口部26を介して他方のC字状筒部28を直線部21へと押し込むことにより、金属管体16に対する後付けが完了するようになっている。オーバーラップ部30には、他方のC字状筒部28に係り、広げた状態から元の状態へと戻ろうとする力が生じ、これにより直線部21への巻き付きが維持されるようになっている。
【0063】
高電圧認識部品17bは、一方及び他方のC字状筒部27、28の各組み付け開口部26を広げるような力が作用しない限り、脱落することのないものになっている。
【0064】
図4において、第三の具体例となる高電圧認識部品17cは、上記第二の具体例を略コルゲートチューブ状に形成したものであり、基本的には同じ効果を奏するものになっている(作用面で若干異なる。この点については後述する)。
【0065】
高電圧認識部品17cは、組み付け開口部31が生じる一方及び他方のC字状筒部32、33と、これら一方及び他方のC字状筒部32、33をつなぐヒンジ部34とを有しており、金属管体16の直線部21への組み付けがなされると、コルゲートチューブとなるような形状に、また、オーバーラップ部35が生じるような形状に形成されている。
【0066】
高電圧認識部品17cにおけるオーバーラップ部35は、
図3のオーバーラップ部30と異なり、次のような作用をする部分として形成されている。すなわち、高電圧認識部品17cは、コルゲートチューブとなるような形状の一方及び他方のC字状筒部32、33を有することから、金属管体16の直線部21に対し巻き付くように後付けをすると、一方のC字状筒部32におけるコルゲート山部の表面が適度な摩擦を持って他方のC字状筒部33におけるコルゲート山部の裏面側に入り込み、また、一方のC字状筒部32におけるコルゲート谷部の表面が適度な摩擦を持って他方のC字状筒部33におけるコルゲート谷部の裏面側に入り込み、そして、そのまま押し込まれることにより、さらに入り込みの状態が大きくなるような作用をする部分として、つまりは摩擦を持って係合し合う力が強くなるような部分として形成されている。従って、直線部21への巻き付きが維持されるようになっている。
【0067】
高電圧認識部品17cは、一方及び他方のC字状筒部32、33の上記入り込みの状態を解除するような力が作用しない限り、脱落することのないものになっている。
【0068】
図5において、第四の具体例となる高電圧認識部品17dは、樹脂製でオレンジ色に着色されたシート状のも
のを所定の長さに切断することにより形成されている(射出成型で所定長さに形成してもよいものとする)。高電圧認識部品17dは、厚みがあるものの柔軟性を有している。高電圧認識部品17dは、金属管体16の外周方向に巻き付く形状、且つ、金属管体16から脱落しない形状にするために、全体が丸く癖づけられた癖付け部36を有するとともに、側方の端部同士が係合する係合部37、38を有するように形成されている。
【0069】
高電圧認識部品17dは、側方の端部同士を広げて組み付け空間39を形成し、この組み付け空間39を介して直線部21へと押し込んだ後、係合部37、38を係合させることにより、金属管体16に対する後付けが完了するようになっている。係合部37、38は、これらの係合によりロック状態が形成されることから、直線部21への巻き付きが維持されるようになっている。係合部37、38の図示形状は一例であるものとする。
【0070】
高電圧認識部品17dは、上記ロック状態の解除と、側方の端部同士を金属管体16の直径以上に広げるような力が作用しない限り、脱落することのないものになっている。
【0071】
図6において、第五の具体例となる高電圧認識部品17eは、樹脂成型品であって、オレンジ色に着色され、また、上記各具体例よりも長さが短く形成されている。高電圧認識部品17eは、金属管体16の外周方向に巻き付く形状、且つ、金属管体16から脱落しない形状にするために、図示の如く略めがね状、略クランプ状に形成されている。
【0072】
具体的には、組み付け開口部40が生じる一方及び他方のC字状湾曲部41、42と、これら一方及び他方のC字状湾曲部41、42をつなぐヒンジ部43と、一方及び他方のC字状湾曲部41、42の側方の端部同士を係合させる係合部44、45とを有しており、金属管体16の直線部21への組み付けがなされると、リング状となるような形状に形成されている。
【0073】
高電圧認識部品17eは、一方及び他方のC字状湾曲部41、42にて直線部21を囲うようにして係合部44、45を係合させることにより、金属管体16に対する後付けが完了するようになっている。係合部44、45は、これらの係合によりロック状態が形成されることから、直線部21への巻き付きが維持されるようになっている。
【0074】
高電圧認識部品17eは、上記ロック状態の解除がなされない限り、脱落することのないものになっている。
【0075】
以上、
図1ないし
図6を参照しながら説明してきたように、本発明によれば、高圧のワイヤハーネス9であることを認識させるためとして、金属管体16の外面側に高電圧認識部品17(17a〜17e)を後付けしている。本発明のように、後付けの高電圧認識部品17を用いることにより、金属管体16への曲げ加工をした後に高電圧認識部品17を取り付けすることができる。
【0076】
また、本発明のように、後付けの高電圧認識部品17を用いることにより、金属管体16に高電圧であることを認識させる塗装を省略することができる。
【0077】
本発明によれば、高電圧であることを認識させるための処理工程を従来よりも格段に簡素化することができる。また、これによりコスト低減を図ることができ、さらには、品質向上を図ることもできる。
【0078】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。