特許第5884133号(P5884133)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5884133
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】自動車用高圧ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20160301BHJP
   H02G 1/00 20060101ALI20160301BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20160301BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
   H02G3/04 081
   H02G1/00
   H02G1/06
   B60R16/02 623U
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-243010(P2011-243010)
(22)【出願日】2011年11月7日
(65)【公開番号】特開2013-99216(P2013-99216A)
(43)【公開日】2013年5月20日
【審査請求日】2014年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075959
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 保
(72)【発明者】
【氏名】稲尾 伸一
(72)【発明者】
【氏名】遠山 栄一
【審査官】 甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−140612(JP,A)
【文献】 実開平05−037603(JP,U)
【文献】 実開昭59−013024(JP,U)
【文献】 特開2011−150991(JP,A)
【文献】 特開2013−042648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/00− 3/04
H02G 1/00− 1/10
B60R 16/02
H01B 7/17− 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に配索される一又は複数本の高圧導電路と、該高圧導電路の外装部材となる金属管体とを備え、該金属管体の外面側に、高電圧であることの認識が可能な高電圧認識部品を後付けしてなり、
前記高電圧認識部品は、シート状又はフィルム状に形成したものの側方の端部同士を重ね合わせ、前記金属管体を脱落することなく抱え込むように形成してなる
ことを特徴とする自動車用高圧ワイヤハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車用高圧ワイヤハーネスにおいて、
前記金属管体の外周方向に巻き付く形状に前記高電圧認識部品を形成する
ことを特徴とする自動車用高圧ワイヤハーネス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動車用高圧ワイヤハーネスにおいて、
前記金属管体に曲げを施して曲げ部と直線部とを形成し、該直線部に前記高電圧認識部品を後付けする
ことを特徴とする自動車用高圧ワイヤハーネス。
【請求項4】
請求項1、2、又は3に記載の自動車用高圧ワイヤハーネスにおいて、
前記自動車の所定位置に前記金属管体を固定する際に用いる固定部材の取り付け位置に合わせて前記高電圧認識部品を配置する
ことを特徴とする自動車用高圧ワイヤハーネス。
【請求項5】
請求項1、2、又は3に記載の自動車用高圧ワイヤハーネスにおいて、
前記高電圧認識部品に脱落防止用の係合部を設ける
ことを特徴とする自動車用高圧ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属管体を含む自動車用高圧ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されたワイヤハーネスは、三本の高圧電線と、この三本の高圧電線を一本ずつ収容して保護するための三本の金属保護パイプとを備えて構成されている。高圧電線は、車両の前側に搭載されるモータと、車両の中間又は後側に搭載されるインバータとを接続するものとして備えられている。
【0003】
ワイヤハーネスは、車体フレームの外側となる車体床下を通って配索されるようになっている。このため、金属保護パイプは石跳ねや水跳ねから高圧電線を保護することができるように形成されている。金属保護パイプは、石跳ねや水跳ねから高圧電線を保護し且つ高圧電線の撓みを防止する剛性を有するとともに、金属製であることから電磁シールド機能も有している。
【0004】
ワイヤハーネスは、真っ直ぐな状態の金属保護パイプに高圧電線を挿通し、これを三本分行った後に、車体床下におけるワイヤハーネスの配索経路に沿って金属保護パイプに曲げを施すことにより製造されている。ワイヤハーネスは、ハーネスメーカーの工場で上記の如く製造された後に、自動車メーカーの組み立て工場へと搬送されて車両の所定位置に組み付けられ、これにより配索が完了するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−224156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高圧電線を備えるワイヤハーネスにあっては、これが高電圧であることを認識させるための手段として、外装部材をオレンジ色にする必要がある。
【0007】
特許文献1に開示された金属保護パイプなどの金属製の外装部材(管体)は、例えば外面をオレンジ色に塗装し、高電圧であることを認識させるようになっている。
【0008】
ところで、本願発明者は、例えばアルミニウムからなる金属管体を用いて高圧電線を保護しようと考えている。この場合は、次のような問題点を有している。
【0009】
すなわち、アルミニウム製の金属管体の外面をオレンジ色に塗装するためには、先ず表面(外面)を洗浄し、次に下地処理を施し、次に下塗りをし、次に上塗りをし、最後に熱処理をする必要があることから、処理工程が長くなり、コスト高になってしまうという問題点を有することを見いだしている。
【0010】
また、塗装材料によっては、有機溶剤を用いる場合があり、大掛かりなVOC対策が必要になることや、その費用が嵩んでしまうという問題点を有している。上記VOCは揮発性有機化合物の略称であり、具体例としては溶剤が挙げられる。環境への放出がなされた場合には、公害等を引き起こしてしまう虞があり、これは一般に知られている。
【0011】
また、上記処理工程を全て経ることが重要であり、例えば下地処理や下塗りを省略して上塗りだけにすると、アルミニウム表面に対する上塗りの密着性が悪くなり、部分的に塗装はじきが生じてしまうことや、塗膜が均一にならないなど、品質に影響を来してしまうという問題点を有している。尚、塗膜に関しては、この管理が難しいのは言うまでもない。
【0012】
この他、例えば下地処理や下塗りを省略すると、金属管体に曲げを施した時に、塗装剥がれが生じてしまうという問題点を有している。
【0013】
また、金属管体を所定位置に固定するためとして例えばクランプを用いる場合には、上記塗膜の管理が難しいことに起因してクランプの形状設計に影響を来してしまい、コスト高になってしまうという問題点を有している。
【0014】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、高電圧であることを認識させるためとして、この処理工程の簡素化を図ることが可能な、また、コスト低減を図ることが可能な、さらには、品質向上を図ることが可能な、自動車用高圧ワイヤハーネスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明の自動車用高圧ワイヤハーネスは、自動車に配索される一又は複数本の高圧導電路と、該高圧導電路の外装部材となる金属管体とを備え、該金属管体の外面側に、高電圧であることの認識が可能な高電圧認識部品を後付けしてなり、前記高電圧認識部品は、シート状又はフィルム状に形成したものの側方の端部同士を重ね合わせ、前記金属管体を脱落することなく抱え込むように形成してなることを特徴とする。
【0016】
このような特徴を有する本発明によれば、高電圧であることを認識させるためとして、金属管体の外面側に高電圧認識部品を後付けする。高電圧認識部品は、高電圧であることを認識できる色、具体的には現在規定されているオレンジ色にする。本発明のように、後付けの高電圧認識部品を用いることにより、金属管体への加工をした後に高電圧認識部品を取り付けすることができる。また、後付けの高電圧認識部品を用いることにより、金属管体に高電圧であることを認識させる塗装をする必要がなくなり、これに伴って塗膜の管理をする必要もなくなることから、金属管体の固定の際に用いる例えばクランプ等の固定部材の形状設計を非常に容易にすることができる。また、後付けの高電圧認識部品を用いることにより、塗膜の管理をする必要がなくなることから、全体的な管理も非常に容易にすることができる。また、後付けの高電圧認識部品を用いることにより、例えば塗装と比べて処理工程や設備を簡素化することができる。また、塗装を行わないことから、塗装はじきや塗装斑の発生をなくし、見栄えも十分に確保することができる。
【0017】
請求項2に記載の本発明の自動車用高圧ワイヤハーネスは、請求項1に記載の自動車用高圧ワイヤハーネスに係り、前記金属管体の外周方向に巻き付く形状に前記高電圧認識部品を形成することを特徴とする。
【0018】
このような特徴を有する本発明によれば、金属管体に高電圧認識部品を後付けすると、金属管体の外周方向に巻き付くようにすることができる。高電圧認識部品を金属管体の外周方向に巻き付く形状に形成すれば、金属管体からの脱落を防止することができる。
【0019】
請求項3に記載の本発明の自動車用高圧ワイヤハーネスは、請求項1又は2に記載の自動車用高圧ワイヤハーネスに係り、前記金属管体に曲げを施して曲げ部と直線部とを形成し、該直線部に前記高電圧認識部品を後付けすることを特徴とする。
【0020】
このような特徴を有する本発明によれば、高電圧認識部品を金属管体の直線部に後付けすることから、曲げ部へ取り付けする場合と比べて、高電圧認識部品の構造を簡素化することができる。
【0021】
請求項4に記載の本発明の自動車用高圧ワイヤハーネスは、請求項1、2、又は3に記載の自動車用高圧ワイヤハーネスに係り、前記自動車の所定位置に前記金属管体を固定する際に用いる固定部材の取り付け位置に合わせて前記高電圧認識部品を配置することを特徴とする。
【0022】
このような特徴を有する本発明によれば、自動車の所定位置に金属管体を固定する際に用いる固定部材を利用することから、高電圧認識部品を金属管体に確実に固定することができる。従って、金属管体からの脱落を防止することができる。
【0023】
請求項5に記載の本発明の自動車用高圧ワイヤハーネスは、請求項1、2、又は3に記載の自動車用高圧ワイヤハーネスに係り、前記高電圧認識部品に脱落防止用の係合部を設けることを特徴とする。
【0024】
このような特徴を有する本発明によれば、係合部を有する高電圧認識部品であることから、他の部材を利用せずに、また、部品を新設したりせずに高電圧認識部品を金属管体に固定することができる。従って、金属管体からの脱落を防止することができる。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に記載された本発明によれば、高電圧であることを認識させるためとして、後付けの高電圧認識部品を用いることから、従来と比べて処理工程の簡素化を図ることができ、また、コスト低減を図ることができ、さらには、品質向上を図ることができるという効果を奏する。
【0026】
請求項2に記載された本発明によれば、請求項1の効果に加え次のような効果を奏する。すなわち、高電圧認識部品を金属管体の外周方向に巻き付く形状に形成することから、金属管体からの脱落を防止することができるという効果を奏する。
【0027】
請求項3に記載された本発明によれば、請求項1又は2の効果に加え次のような効果を奏する。すなわち、高電圧認識部品の構造を簡素化することができるという効果を奏する。また、構造を簡素化すれば、組み付けをし易くすることができるという効果や、コスト低減を図ることができるという効果も奏する。
【0028】
請求項4に記載された本発明によれば、請求項1、2、又は3の効果に加え次のような効果を奏する。すなわち、固定部材を利用して高電圧認識部品を固定することから、金属管体からの脱落を確実に防止することができるという効果を奏する。
【0029】
請求項5に記載された本発明によれば、請求項1、2、又は3の効果に加え次のような効果を奏する。すなわち、高電圧認識部品自身に脱落防止用の係合部を有することから、金属管体からの脱落を確実に防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の自動車用高圧ワイヤハーネスに係る図であり、(a)は自動車用高圧ワイヤハーネスの配索状態を示す概略図、(b)は金属管体の外面側に高電圧認識部品を後付けした状態を示す斜視図、(c)は金属管体の外面側に高電圧認識部品を後付けした状態を示す側面図である。
図2】高電圧認識部品の第一の具体例に係る図であり、(a)は高電圧認識部品の斜視図、(b)は後付けするにあたり高電圧認識部品を開いた状態を示す斜視図、(c)は高電圧認識部品を後付けした状態を示す斜視図である。
図3】高電圧認識部品の第二の具体例に係る図であり、(a)は高電圧認識部品の斜視図、(b)は後付けするにあたり高電圧認識部品を開いた状態を示す斜視図、(c)は高電圧認識部品を後付けした状態を示す斜視図である。
図4】高電圧認識部品の第三の具体例に係る図であり、(a)は高電圧認識部品の斜視図、(b)は後付けするにあたり高電圧認識部品を開いた状態を示す斜視図、(c)は高電圧認識部品を後付けした状態を示す斜視図である。
図5】高電圧認識部品の第四の具体例に係る図であり、(a)は高電圧認識部品の斜視図、(b)は後付けするにあたり高電圧認識部品を開いた状態を示す斜視図、(c)は高電圧認識部品を後付けした状態を示す斜視図である。
図6】高電圧認識部品の第五の具体例に係る図であり、(a)は高電圧認識部品の斜視図、(b)は後付けするにあたり高電圧認識部品を開いた状態を示す斜視図、(c)は高電圧認識部品を後付けした状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
自動車用高圧ワイヤハーネスは、一又は複数本の高圧導電路と、この高圧導電路の外装部材となる金属管体とを備えて構成される。金属管体の外面側には、高電圧であることの認識が可能な高電圧認識部品が後付けにより設けられる。
【実施例1】
【0032】
以下、図面を参照しながら実施例1を説明する。図1は本発明の自動車用高圧ワイヤハーネスに係る図であり、(a)は自動車用高圧ワイヤハーネスの配索状態を示す概略図、(b)は金属管体の外面側に高電圧認識部品を後付けした状態を示す斜視図、(c)は金属管体の外面側に高電圧認識部品を後付けした状態を示す側面図である。また、図2図6は高電圧認識部品の第一〜第五の具体例に係る図であり、(a)は高電圧認識部品の斜視図、(b)は後付けするにあたり高電圧認識部品を開いた状態を示す斜視図、(c)は高電圧認識部品を後付けした状態を示す斜視図である。
【0033】
本実施例においては、ハイブリッド自動車(電気自動車や一般的な自動車であってもよいものとする)に本発明のワイヤハーネスを採用する例を挙げて説明するものとする。
【0034】
図1において、引用符号1はハイブリッド自動車を示している。ハイブリッド自動車1は、エンジン2及びモータユニット3の二つの動力をミックスして駆動する車両であって、モータユニット3にはインバータユニット4を介してバッテリー5(電池パック)からの電力が供給されるようになっている。エンジン2、モータユニット3、及びインバータユニット4は、本実施例において前輪等がある位置のエンジンルーム6に搭載されている。また、バッテリー5は、後輪等がある自動車後部7に搭載されている(エンジンルーム6の後方に存在する自動車室内に搭載してもよいものとする)。
【0035】
モータユニット3とインバータユニット4は、公知の高圧ワイヤハーネス8により接続されている。また、バッテリー5とインバータユニット4は、本発明のワイヤハーネス9(自動車用高圧ワイヤハーネス)により接続されている。ワイヤハーネス9は、高圧用のものとして構成されている。ワイヤハーネス9は、この中間部10が車体床下11の地面側に配索されている。また、車体床下11に沿って略平行に配索されている。車体床下11は、公知のボディであるとともに所謂パネル部材であって、所定位置には貫通孔(符号省略)が形成されている。この貫通孔には、ワイヤハーネス9が挿通されている。
【0036】
ワイヤハーネス9とバッテリー5は、このバッテリー5に設けられるジャンクションブロック12を介して接続されている。ジャンクションブロック12には、ワイヤハーネス9の後端13が公知の方法で電気的に接続されている。ワイヤハーネス9の前端14側は、インバータユニット4に対し公知の方法で電気的に接続されている。
【0037】
モータユニット3はモータ及びジェネレータを構成に含んでいるものとする。また、インバータユニット4は、インバータ及びコンバータを構成に含んでいるものとする。モータユニット3は、シールドケースを含むモータアッセンブリとして形成されるものとする。また、インバータユニット4もシールドケースを含むインバータアッセンブリとして形成されるものとする。バッテリー5は、Ni−MH系やLi−ion系のものであって、モジュール化してなるものとする。尚、例えばキャパシタのような蓄電装置を使用することも可能であるものとする。バッテリー5は、ハイブリッド自動車1や電気自動車に使用可能であれば特に限定されないものとする。
【0038】
先ず、ワイヤハーネス9の構成及び構造について説明をする。
【0039】
ワイヤハーネス9は、導電路集合体15と、この導電路集合体15の外装部材となる金属管体16と、金属管体16に後付けされる複数の高電圧認識部品17とを備えて構成されている。
【0040】
導電路集合体15は、二本の高圧電線18(高圧導電路)と、この二本の高圧電線18を一括して覆いシールドする電磁シールド部材19とを備えて構成されている(低圧電線をさらに含んでもよいものとする)。高圧電線18は、導体及び絶縁体(被覆)を含む高圧の導電路であって、電気的な接続に必要な長さを有するように形成されている。導体は、銅や銅合金、アルミニウムやアルミニウム合金により製造されている。導体に関しては、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面矩形又は丸形となる棒状の導体構造(例えば平角単心や丸単心となる導体構造であり、この場合、電線自体も棒状となる)のもののいずれであってもよいものとする。
【0041】
高圧電線18は、非シールド電線となるものに構成されている。高圧電線18の端末には、コネクタ(図示省略)が設けられている。
【0042】
尚、本実施例においては高圧電線18を用いているが、この限りでないものとする。すなわち、公知のバスバーに絶縁体を設けて高圧導電路としたもの等を用いてもよいものとする。また、中心にプラス極導体及びマイナス極導体のいずれか一方を配置し、このいずれか一方の外側に第一絶縁体を配置し、第一絶縁体の外側にプラス極導体及びマイナス極導体のいずれか他方を配置し、このいずれか他方の外側に第二絶縁体を配置してなるような高圧導電路、すなわち二本の高圧導電路を一本にまとめてなるような同軸の高圧導電路(複合導電路や複合電線、同軸複合導電路や同軸複合電線、或いは、同軸導電路や同軸電線などと呼ぶこともできる)を用いてもよいものとする。さらには、三本の高圧導電路を一本にまとめてなるような同軸の高圧導電路を用いてもよいものとする。
【0043】
電磁シールド部材19は、二本の高圧電線18を覆う電磁シールド用の部材(電磁波対策用のシールド部材)であって、導電性の金属箔を含むシールド部材、或いは金属箔単体などにて筒状に形成されている。電磁シールド部材19は、二本の高圧電線18の全長とほぼ同じ長さに形成されている。電磁シールド部材19は、図示しないコネクタを介して、又は直接インバータユニット4のシールドケース等に接続されている。
【0044】
尚、電磁シールド部材19は、本実施例において金属箔を含んでいるが、この限りでないものとする。すなわち、電磁波対策をすることが可能であれば、例えば極細の素線を多数有する編組を用いてもよいものとする。編組は、導電性を有しており、筒状に編んで形成されるものとする。
【0045】
電磁シールド部材19は、高圧電線18が上記の如く非シールド電線となる構成であることから備えられるものであって、高圧電線18が電磁シールド機能を有するシールド電線である場合にはこの限りでないものとする。
【0046】
金属管体16は、金属製の管体であって、導電路集合体15を収容するのに必要な長さを有するように形成されている。金属管体16は、本実施例において断面円形状に形成されている(断面形状は一例であるものとする。楕円形状や長円形状、矩形状であってもよいものとする)。このような金属管体16は、配索経路に合わせて曲げ加工が施されている。
【0047】
金属管体16は、本実施例においてアルミニウム製の断面円形状のパイプ部材が用いられている(尚、アルミニウムに限らず金属製なら特に限定されないものとする)。金属管体16は、導電路集合体15を収容することができる程度の内径寸法で形成されている。金属管体16は、導電路集合体15を収容した後、例えば図示しないベンダー機を用いて曲げ部20を形成するような曲げを施すと、これによってワイヤハーネス9が配索経路形状に沿った経路で保持されるようになっている。
【0048】
曲げ部20は、複数箇所形成されている。また、曲げ部20以外の部分は直線部21として形成されている。
【0049】
高電圧認識部品17は、高電圧であることを認識させるための手段として設けられている(ワイヤハーネス9が高圧電線18を備えるため、これを認識させる手段が必要)。高電圧認識部品17は、高電圧であることを示すオレンジ色に素材自体が着色されている。高電圧認識部品17は、金属管体16の外面側に、この金属管体16に対する加工後に組み付けることができるように形成されている。すなわち、後付けにより高電圧認識部品17を組み付けることができるように形成されている(加工前でも組み付けは可能であるものとする。加工の邪魔にならなければよいものとする)。
【0050】
高電圧認識部品17は、この組み付け対象が曲げ部20以外の直線部21となっている。これは、金属管体16の曲げ形状に高電圧認識部品17の形状が左右されないようにするためである。高電圧認識部品17は、直線部21に一つ又は複数個組み付けすることができる長さに形成されている。尚、高電圧認識部品17の長さが短い場合には、例えば100mm間隔程度で組み付けることが一例として挙げられるものとする。
【0051】
高電圧認識部品17は、ワイヤハーネス9を全体的に見た時に高電圧であることを認識させることができれば、必ずしも直線部21に一つ組み付けなくてよいものとする。また、直線部21が短い場合にも、他の部分で高電圧であることを認識させることができれば組み付けなくてもよいものとする。つまり、全ての直線部21が組み付け対象にならなくてもよいものとする。
【0052】
高電圧認識部品17は、金属管体16の外周方向に巻き付く形状、且つ、金属管体16から脱落しない形状に形成されている(具体的な形状については図2ないし図6を参照しながら後述する)。尚、金属管体16の外周方向に巻き付く形状であれば脱落し難くなるのは勿論であるが、より確実に脱落し難くする一例としては、金属管体16を車体床下11に固定する際に用いる固定部材22(例えばクランプなど)を利用することが挙げられるものとする(金属管体16と固定部材22との間に介在させる)。この場合、高電圧認識部品17を固定部材22の取り付け位置に合わせて配置するものとする。脱落防止に関しては、高電圧認識部品17に脱落防止用の係合部(後述する)を設けるようにしてもよいものとする。
【0053】
高電圧認識部品17は、金属管体16の外周方向に巻き付く形状に形成されれば、組み付け易い形状になるのは勿論である。
【0054】
高電圧認識部品17は、樹脂製であって、樹脂材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などが挙げられるものとする。高電圧認識部品17は、特に限定するものでないが、押出成型可能なもので、所定長さにカットして使用できるようなものがコストや製造性、或いは汎用性等の面で好適であるものとする。
【0055】
次に、図2ないし図6を参照しながら高電圧認識部品17の具体例(第一〜第五の具体例)について説明をする。
【0056】
図2において、第一の具体例となる高電圧認識部品17aは、樹脂製でオレンジ色に着色されたシート状又はフィルム状のもを所定の長さに切断することにより形成されている。高電圧認識部品17aは、金属管体16の外周方向に巻き付く形状、且つ、金属管体16から脱落しない形状にするために、全体が丸く癖づけられた癖付け部23を有するとともに、側方の端部同士が重なるオーバーラップ部24を有するように形成されている。
【0057】
高電圧認識部品17aは、柔軟性を有している。また、高電圧認識部品17aは、非常に軽いものに形成されている。
【0058】
高電圧認識部品17aは、側方の端部同士を広げて組み付け空間25を形成し、この組み付け空間25を介して直線部21へと押し込むことにより、金属管体16に対する後付けが完了するようになっている。オーバーラップ部24には、広げた状態から元の状態へと戻ろうとする力が生じ、これにより直線部21への巻き付きが維持されるようになっている。
【0059】
高電圧認識部品17aは、この側方の端部同士を金属管体16の直径以上に広げるような力が作用しない限り、脱落することのないものになっている。
【0060】
図3において、第二の具体例となる高電圧認識部品17bは、オレンジ色に着色されたものを樹脂の押出成型することにより、また、所定の長さに切断することにより形成されている(射出成型で所定長さに形成してもよいものとする)。高電圧認識部品17bは、金属管体16の外周方向に巻き付く形状、且つ、金属管体16から脱落しない形状にするために、図示の如く形成されている。
【0061】
具体的には、組み付け開口部26が生じる一方及び他方のC字状筒部27、28と、これら一方及び他方のC字状筒部27、28をつなぐヒンジ部29とを有しており、金属管体16の直線部21への組み付けがなされると、円筒状となるような形状に、また、オーバーラップ部30が生じるような形状に形成されている。高電圧認識部品17bは、第一の具体例よりも厚く剛性がある形状に形成されている。
【0062】
高電圧認識部品17bは、一方のC字状筒部27の組み付け開口部26を広げ、そして、この広げた組み付け開口部26を介して一方のC字状筒部27を金属管体16の直線部21へと押し込み、この後に他方のC字状筒部28の組み付け開口部26を広げ、そして、この広げた組み付け開口部26を介して他方のC字状筒部28を直線部21へと押し込むことにより、金属管体16に対する後付けが完了するようになっている。オーバーラップ部30には、他方のC字状筒部28に係り、広げた状態から元の状態へと戻ろうとする力が生じ、これにより直線部21への巻き付きが維持されるようになっている。
【0063】
高電圧認識部品17bは、一方及び他方のC字状筒部27、28の各組み付け開口部26を広げるような力が作用しない限り、脱落することのないものになっている。
【0064】
図4において、第三の具体例となる高電圧認識部品17cは、上記第二の具体例を略コルゲートチューブ状に形成したものであり、基本的には同じ効果を奏するものになっている(作用面で若干異なる。この点については後述する)。
【0065】
高電圧認識部品17cは、組み付け開口部31が生じる一方及び他方のC字状筒部32、33と、これら一方及び他方のC字状筒部32、33をつなぐヒンジ部34とを有しており、金属管体16の直線部21への組み付けがなされると、コルゲートチューブとなるような形状に、また、オーバーラップ部35が生じるような形状に形成されている。
【0066】
高電圧認識部品17cにおけるオーバーラップ部35は、図3のオーバーラップ部30と異なり、次のような作用をする部分として形成されている。すなわち、高電圧認識部品17cは、コルゲートチューブとなるような形状の一方及び他方のC字状筒部32、33を有することから、金属管体16の直線部21に対し巻き付くように後付けをすると、一方のC字状筒部32におけるコルゲート山部の表面が適度な摩擦を持って他方のC字状筒部33におけるコルゲート山部の裏面側に入り込み、また、一方のC字状筒部32におけるコルゲート谷部の表面が適度な摩擦を持って他方のC字状筒部33におけるコルゲート谷部の裏面側に入り込み、そして、そのまま押し込まれることにより、さらに入り込みの状態が大きくなるような作用をする部分として、つまりは摩擦を持って係合し合う力が強くなるような部分として形成されている。従って、直線部21への巻き付きが維持されるようになっている。
【0067】
高電圧認識部品17cは、一方及び他方のC字状筒部32、33の上記入り込みの状態を解除するような力が作用しない限り、脱落することのないものになっている。
【0068】
図5において、第四の具体例となる高電圧認識部品17dは、樹脂製でオレンジ色に着色されたシート状のもを所定の長さに切断することにより形成されている(射出成型で所定長さに形成してもよいものとする)。高電圧認識部品17dは、厚みがあるものの柔軟性を有している。高電圧認識部品17dは、金属管体16の外周方向に巻き付く形状、且つ、金属管体16から脱落しない形状にするために、全体が丸く癖づけられた癖付け部36を有するとともに、側方の端部同士が係合する係合部37、38を有するように形成されている。
【0069】
高電圧認識部品17dは、側方の端部同士を広げて組み付け空間39を形成し、この組み付け空間39を介して直線部21へと押し込んだ後、係合部37、38を係合させることにより、金属管体16に対する後付けが完了するようになっている。係合部37、38は、これらの係合によりロック状態が形成されることから、直線部21への巻き付きが維持されるようになっている。係合部37、38の図示形状は一例であるものとする。
【0070】
高電圧認識部品17dは、上記ロック状態の解除と、側方の端部同士を金属管体16の直径以上に広げるような力が作用しない限り、脱落することのないものになっている。
【0071】
図6において、第五の具体例となる高電圧認識部品17eは、樹脂成型品であって、オレンジ色に着色され、また、上記各具体例よりも長さが短く形成されている。高電圧認識部品17eは、金属管体16の外周方向に巻き付く形状、且つ、金属管体16から脱落しない形状にするために、図示の如く略めがね状、略クランプ状に形成されている。
【0072】
具体的には、組み付け開口部40が生じる一方及び他方のC字状湾曲部41、42と、これら一方及び他方のC字状湾曲部41、42をつなぐヒンジ部43と、一方及び他方のC字状湾曲部41、42の側方の端部同士を係合させる係合部44、45とを有しており、金属管体16の直線部21への組み付けがなされると、リング状となるような形状に形成されている。
【0073】
高電圧認識部品17eは、一方及び他方のC字状湾曲部41、42にて直線部21を囲うようにして係合部44、45を係合させることにより、金属管体16に対する後付けが完了するようになっている。係合部44、45は、これらの係合によりロック状態が形成されることから、直線部21への巻き付きが維持されるようになっている。
【0074】
高電圧認識部品17eは、上記ロック状態の解除がなされない限り、脱落することのないものになっている。
【0075】
以上、図1ないし図6を参照しながら説明してきたように、本発明によれば、高圧のワイヤハーネス9であることを認識させるためとして、金属管体16の外面側に高電圧認識部品17(17a〜17e)を後付けしている。本発明のように、後付けの高電圧認識部品17を用いることにより、金属管体16への曲げ加工をした後に高電圧認識部品17を取り付けすることができる。
【0076】
また、本発明のように、後付けの高電圧認識部品17を用いることにより、金属管体16に高電圧であることを認識させる塗装を省略することができる。
【0077】
本発明によれば、高電圧であることを認識させるための処理工程を従来よりも格段に簡素化することができる。また、これによりコスト低減を図ることができ、さらには、品質向上を図ることもできる。
【0078】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0079】
1…ハイブリッド自動車(自動車)、 2…エンジン、 3…モータユニット、 4…インバータユニット、 5…バッテリー、 6…エンジンルーム、 7…自動車後部、 8…高圧ワイヤハーネス、 9…ワイヤハーネス(自動車用高圧ワイヤハーネス)、 10…中間部、 11…車体床下、 12…ジャンクションブロック、 13…後端、 14…前端、 15…導電路集合体、 16…金属管体、 17、17a〜17e…高電圧認識部品、 18…高圧電線(高圧導電路)、 19…電磁シールド部材、 20…曲げ部、 21…直線部、 22…固定部材、 23…癖付け部、 24…オーバーラップ部、 25…組み付け空間、 26、31…組み付け開口部、 27、32…一方のC字状筒部、 28、33…他方のC字状筒部、 29、34…ヒンジ部、 30、35…オーバーラップ部、 36…癖付け部、 37、38…係合部、 39…組み付け空間、 40…組み付け開口部、 41…一方のC字状湾曲部、 42…他方のC字状湾曲部、 43…ヒンジ部、 44、45…係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6