【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年8月22日付け、支出負担行為担当官 総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「移動体間端末協調衛星測位技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
湯素華、外4名,“都市部における高精度車車間相対測位手法”,電子情報通信学会技術研究報告,2011年 2月17日,Vol.110,No.425,p.1-6
【文献】
Nima Alam, et al.,“Positioning Enhancement with Double Differencing and DSRC”,Proceedings of the 23rd International Technical Meeting of The Satellite Division of the Institute of Navigation (ION GNSS 2010),2010年 9月21日,p.1210-1218
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、相対測位装置等の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
(実施の形態1)
【0030】
本実施の形態において、共通衛星と移動体間の疑似距離差と、推測した共通衛星と移動体間の推測距離差との差を用いて、他衛星に対する疑似距離誤差の空間相関性の高低を判断し、相関性の高い衛星を用いて、衛星と相対測位装置の間の距離を推測し、自車両と他車両との相対位置を算出し、出力する相対測位装置について説明する。なお、自車両は、相対位置を出力する相対測位装置である自端末が搭載されている車両であり、他車両は、自車両との相対位置が算出される対象の車両であり、後述する他端末が搭載されている車両である。
【0031】
また、本実施の形態において、参照衛星を決定後、参照衛星に対する疑似距離の差と、他衛星に対する疑似距離の差とを用いて、他衛星に対する疑似距離誤差の空間相関性の高低を判断し、相関性の高い衛星を用いて、衛星と移動体間の距離を推測し、自車両と他車両との相対位置を算出し、出力する相対測位装置について説明する。
【0032】
図1は、本実施の形態における相対測位装置1を含む相対測位システムの概念図である。相対測位システムは、2以上の衛星(ここでは、6つの衛星)と、2つの相対測位装置1を有する。ここでは、相対測位システムは、第一の相対測位装置1と、第二の相対測位装置1との相対位置を出力する、とする。また、第一の相対測位装置1は自端末、第二の相対測位装置1は、自端末ではない他の端末であり、他端末ということとする。また、
図1において、衛星は6つであり、a1、a2、a3、a4、a5、a6である。さらに、
図1において、11は、後述する衛星信号受信部である。衛星信号受信部11は、例えば、GPS受信アンテナを有する。また、13、14は、後述する自端末情報群送信部および他端末情報群受信部を構成するアンテナであり、通常、通信用アンテナである。また、衛星とは、通常、測位衛星である。
【0033】
図2は、本実施の形態における相対測位装置1のブロック図である。また、
図3は、相対測位装置1を構成する相対位置取得部16のブロック図である。
【0034】
相対測位装置1は、衛星信号受信部11、自端末情報群取得部12、自端末情報群送信部13、他端末情報群受信部14、相関性判断部15、相対位置取得部16、および出力部17を備える。
【0035】
また、自端末情報群取得部12は、例えば、計測疑似距離取得手段121、受信SNR取得手段122、衛星位置取得手段123、および自端末移動情報取得手段124を備える。なお、自端末情報群取得部12は、上記のすべての要素を備える必要はない。
【0036】
また、他端末情報群受信部14は、例えば、他端末疑似距離受信手段141、受信SNR受信手段142、および他端末移動情報受信手段143を備える。なお、他端末情報群受信部14は、上記のすべての要素を備える必要はない。
【0037】
また、相関性判断部15は、例えば、参照衛星決定手段151、および相関性判断手段152を備える。
【0038】
さらに、相対位置取得部16は、例えば、位置格納手段161、相対位置格納手段162、予測位置取得手段163、推測疑似距離算出手段164、位置算出手段165、相対位置算出手段166、位置蓄積手段167、および相対位置蓄積手段168を備える。
【0039】
相対測位装置1を構成する衛星信号受信部11は、2以上の衛星の衛星信号を受信する。衛星信号とは、例えば、GPS信号である。衛星信号受信部11は、通常、GPS受信機で実現される。
【0040】
自端末情報群取得部12は、1以上の自端末情報の集合である自端末情報群を取得する。自端末情報は、自端末に関する情報である。自端末情報群は、衛星ごとの情報である自端末衛星情報群を含む。また、自端末衛星情報群は、自端末計測疑似距離を含む。自端末計測疑似距離は、2以上の衛星ごとに、衛星信号受信部11が受信した衛星信号を用いて取得される自端末と各衛星との疑似距離である。また、自端末衛星情報群は、例えば、受信SNR、衛星の仰角、衛星の位置(x,y,z)などを含んでも良い。また、自端末情報群は、自端末衛星情報群に加えて、例えば、自端末の移動に関する情報である自端末移動情報を含んでも良い。ここで、自端末移動情報は、例えば、移動速度や移動方向等の情報である。移動速度は、3次元速度でも2次元速度でも良い。なお、疑似距離は、衛星と端末との距離指標である。
【0041】
自端末情報群取得部12を構成する計測疑似距離取得手段121は、2以上の衛星ごとに、衛星信号受信部11が受信した衛星信号を用いて、自端末と各衛星との疑似距離である自端末計測疑似距離を取得する。計測疑似距離を取得する計測疑似距離取得手段121の技術は、公知技術であるので詳細な説明を省略する。
【0042】
受信SNR取得手段122は、2以上の衛星ごとに、衛星信号の自端末受信SNRを取得する。信号雑音比(SNR)を取得する技術は公知技術であるので詳細な説明を省略する。
【0043】
衛星位置取得手段123は、2以上の衛星ごとに、衛星の位置を示す衛星位置を取得する。衛星位置を取得する技術は公知技術であるので詳細な説明を省略する。
【0044】
自端末移動情報取得手段124は、自端末の移動速度と移動方向を含む自端末の移動に関する情報である自端末移動情報を取得する。自端末移動情報取得手段124は、例えば、車速パルスまたは加速度センサーにより移動速度を算出し、ジャイロ又は電子地図で移動方向を算出する。自端末移動情報を取得する技術も公知技術であるので詳細な説明を省略する。
【0045】
自端末情報群送信部13は、自端末情報群のうちの一部または全部の情報を送信する。自端末情報群送信部13が送信する情報は、予め決められている。自端末情報群送信部13は、例えば、計測疑似距離、受信SNRを送信する。なお、自端末情報群の送信先は、本明細書で言う他端末である。ただし、自端末情報群送信部13は、通常、相手先を指定せずに、情報をブロードキャストする。
【0046】
他端末情報群受信部14は、他端末(通常、相対測位装置1)が送信した他端末情報群のうちの一部または全部の情報を受信する。他端末情報群は、他端末衛星情報群を有する情報である。他端末衛星情報は、他端末に関する情報であり、通常、自端末衛星情報と同一のデータ構造である。他端末衛星情報は、他端末と各衛星との疑似距離である他端末計測疑似距離を含む。また、他端末衛星情報は、例えば、他端末が受信した衛星信号の信号雑音比である受信SNR、他端末移動情報などを含んでも良い。他端末移動情報は、他端末の移動速度と移動方向を含む他端末の移動に関する情報である。
【0047】
他端末情報群受信部14を構成する他端末疑似距離受信手段141は、2以上の衛星ごとに、各衛星と他端末との疑似距離である他端末計測疑似距離を受信する。
【0048】
受信SNR受信手段142は、2以上の衛星ごとに、他端末の衛星信号の他端末受信SNRを受信する。
【0049】
他端末移動情報受信手段143は、他端末の移動速度と移動方向を含む他端末の移動に関する情報である他端末移動情報を受信する。
【0050】
相関性判断部15は、各共通衛星について、共通衛星から送信されてくる衛星信号を用いて取得した自端末衛星情報群と、共通衛星から送信されてくる衛星信号を用いて取得された他端末衛星情報群とが相関性が高いか否かを判断する。なお、共通衛星とは、自端末と他端末の両端末が共通に衛星信号を受信できる衛星である。
【0051】
具体的には、相関性判断部15は、2以上の共通衛星のうちの、2つの共通衛星の自端末計測疑似距離、および2つの共通衛星の他端末計測疑似距離、2つの共通衛星と自端末との距離である自端末推測距離、および2つの共通衛星と他端末との距離である他端末推測距離を取得し、2つの共通衛星の自端末計測疑似距離、2つの共通衛星の他端末計測疑似距離、2つの共通衛星の自端末推測距離、および2つの共通衛星の他端末推測距離を用いて、2つの共通衛星のうちの一の共通衛星について、自端末衛星情報群と他端末衛星情報群とが相関性が高いか否かを判断する。なお、ここでの2つの共通衛星のうちの一つは、通常、後述する参照衛星である。また、参照衛星は固定されていることが好適であるが、動的に変化しても良い。
【0052】
さらに具体的には、相関性判断部15は、2つの衛星の自端末計測疑似距離の差と2つの衛星の他端末計測疑似距離との差である疑似距離のダブルディファレンスと、2つの衛星の自端末推測距離と2つの衛星の他端末推測距離との差である推測距離のダブルディファレンスとを算出し、当該疑似距離のダブルディファレンスと推測距離のダブルディファレンスとの差が、閾値より小さい場合に、他の共通衛星について、自端末衛星情報群と他端末衛星情報群とが相関性が高いと判断する。なお、ここで、他の共通衛星は、通常、参照衛星ではない共通衛星である。
【0053】
相関性判断部15は、2以上の各共通衛星の疑似距離の差を算出し、疑似距離の差が閾値より小さいか否かを判断し、閾値以上である共通衛星は相関性が低いと判断することは好適である。ここで、閾値は、衛星ごとに異なることが好適である。
【0054】
相関性判断部15を構成する参照衛星決定手段151は、共通衛星の中で、予め決められた条件を満たすほど、反射波を受信する確率が低い衛星を決定する。ここで、予め決められた条件とは、例えば、仰角の一番高い衛星であることが好適である。また、例えば、予め決められた条件とは、受信SNRが最も高い衛星であることでも良い。また、ここで決定された衛星は参照衛星である。
【0055】
相関性判断手段152は、参照衛星決定手段151で決定した参照衛星と各共通衛星の2つの衛星の自端末計測疑似距離、および前記2つの衛星の他端末計測疑似距離、前記2つの衛星と自端末との距離である自端末推測距離、および前記2つの衛星と他端末との距離である他端末推測距離を取得し、前記2つの衛星の自端末計測疑似距離、前記2つの衛星の他端末計測疑似距離、前記2つの衛星の自端末推測距離、および前記2つの衛星の他端末推測距離を用いて、各共通衛星について、自端末衛星情報群と他端末衛星情報群とが相関性が高いか否かを判断する。
【0056】
相対位置取得部16は、相関性判断部15によって相関性が高いと判断された1以上の衛星の自端末衛星情報群および他端末衛星情報群を用いて、自端末と他端末との相対位置を取得する。
【0057】
相対位置取得部16を構成する位置格納手段161は、自端末の前の時点の位置である自端末前時点位置、および他端末の前の時点の位置である他端末前時点位置とを格納し得る。なお、前の時点とは、現時点より、n(例えば、1)秒前の時点である。なお、「n」は、相対位置を算出する周期の時間である。また、自端末前時点位置、および他端末前時点位置の初期値は、公知の単独測位技術によって算出した位置情報である。
【0058】
相対位置格納手段162は、自端末と他端末との相対位置を、少なくとも一時的に格納し得る。
【0059】
予測位置取得手段163は、自端末前時点位置と自端末移動情報とを用いて、自端末のn秒後の位置である自端末現時点予測位置を取得し、かつ、他端末前時点位置と他端末移動情報とを用いて、他端末のn秒後の位置である他端末現時点予測位置を取得する。なお、ここでの自端末移動情報と他端末移動情報とは、通常、自端末と他端末の移動速度と移動方向である。また、n秒後の位置とは、現時点の位置と考えても良い。また、前時点位置と移動速度と移動方向とが与えられた場合、前時点よりn秒後の位置を算出する方法は公知である。
【0060】
推測疑似距離算出手段164は、自端末現時点予測位置と、1以上の各衛星の衛星位置とを用いて、自端末と1以上の各衛星との疑似距離である1以上の自端末推測疑似距離を算出する。また、推測疑似距離算出手段164は、他端末現時点予測位置と、1以上の各衛星の衛星位置とを用いて、他端末と1以上の各衛星との疑似距離である1以上の他端末推測疑似距離を算出する。また、推測疑似距離算出手段164は、自端末現時点予測位置と、相関性が高いと判断された1以上の各衛星の衛星位置とを用いて、自端末と1以上の各衛星との疑似距離である1以上の自端末推測疑似距離を算出する。また、推測疑似距離算出手段164は、他端末現時点予測位置と、相関性が高いと判断された1以上の各衛星の衛星位置とを用いて、他端末と1以上の各衛星との疑似距離である1以上の他端末推測疑似距離を算出することは好適である。
【0061】
位置算出手段165は、自端末現時点予測位置と、相関性が高いと判断された1以上の各衛星の自端末計測疑似距離と、相関性が高いと判断された1以上の各衛星の自端末推測疑似距離とを用いて、自端末の位置である自端末位置を算出する。また、位置算出手段165は、他端末現時点予測位置と、相関性が高いと判断された1以上の各衛星の他端末計測疑似距離と、相関性が高いと判断された1以上の各衛星の他端末推測疑似距離とを用いて、他端末の位置である他端末位置を算出する。
【0062】
相対位置算出手段166は、自端末位置および他端末位置から自端末と他端末の相対位置を算出する。2つの端末の位置が与えられた場合に、当該2つの端末の相対位置を算出する処理は公知技術である。
【0063】
位置蓄積手段167は、自端末位置および他端末位置を、自端末前時点位置および他端末の前の時点の位置である他端末前時点位置として、位置格納手段161に蓄積する。自端末位置および他端末位置は、現時点での各端末の位置であり、位置算出手段165が算出した情報である。
【0064】
相対位置蓄積手段168は、相対位置算出手段166が算出した相対位置を相対位置格納手段162に蓄積する。相対位置蓄積手段168は、相対位置算出手段166が演算途中の相対位置を一時的に相対位置格納手段162に蓄積する。つまり、相対位置蓄積手段168は、疑似距離を用いて自端末位置および他端末位置が更新されている間、自端末位置および他端末位置が更新されるごとに、一時的に相対位置を蓄積する。
【0065】
出力部17は、相対位置取得部16が取得した相対位置を出力する。なお、この相対位置は、例えば、相対位置格納手段162の相対位置である。また、出力部17が相対位置を出力するタイミングは問わない。相対位置取得部16が相対位置を取得するごとに、相対位置を出力しても良いし、図示しない受付部が、ユーザからの出力指示を受け付けた場合に、相対位置を出力しても良い。また、出力部17が相対位置を出力する態様は問わない。出力部17は、例えば、相対位置が示す両端末の距離が閾値以内であることを判断し、2つの車両が接近し過ぎていることを警告音等により出力しても良い。ここで、出力とは、ディスプレイへの表示、プロジェクターを用いた投影、プリンタでの印字、音出力、外部の装置への送信、記録媒体への蓄積、他の処理装置や他のプログラムなどへの処理結果の引渡しなどを含む概念である。出力部17は、ディスプレイやスピーカー等の出力デバイスを含むと考えても含まないと考えても良い。出力部17は、出力デバイスのドライバーソフトまたは、出力デバイスのドライバーソフトと出力デバイス等で実現され得る。
【0066】
なお、上述した自端末情報群取得部12、計測疑似距離取得手段121、受信SNR取得手段122、衛星位置取得手段123、相関性判断部15、参照衛星決定手段151、相関性判断手段152、相対位置取得部16、予測位置取得手段163、推測疑似距離算出手段164、位置算出手段165、相対位置算出手段166、位置蓄積手段167、および相対位置蓄積手段168は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。自端末情報群取得部12等の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0067】
また、自端末情報群送信部13は、通常、無線または有線の通信手段で実現されるが、放送手段で実現されても良い。
【0068】
また、他端末情報群受信部14は、通常、無線または有線の通信手段で実現されるが、放送を受信する手段で実現されても良い。
【0069】
さらに、位置格納手段161、相対位置格納手段162は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。
【0070】
次に、相対測位装置1の動作について、
図4のフローチャートを用いて説明する。
【0071】
(ステップS401)衛星信号受信部11は、衛星信号を受信したか否かを判断する。衛星信号を受信すればステップS402に行き、受信しなければステップS401に戻る。なお、ここでは、衛星信号受信部11は、1以上の衛星からの衛星信号を受信する、とする。
【0072】
(ステップS402)自端末情報群取得部12は、カウンタiに1を代入する。
【0073】
(ステップS403)自端末情報群取得部12は、ステップS401で受信した衛星信号の中に、i番目の衛星信号が存在するか否かを判断する。i番目の衛星信号が存在すればステップS404に行き、存在しなければステップS406に行く。
【0074】
(ステップS404)自端末情報群取得部12は、i番目の衛星信号から、1以上の自端末衛星情報を取得し、自端末衛星情報群に追加する。
【0075】
(ステップS405)自端末情報群取得部12は、カウンタiを1、インクリメントする。ステップS403に戻る。
【0076】
(ステップS406)自端末情報群取得部12の自端末移動情報取得手段124は、自端末移動情報を取得する。
【0077】
(ステップS407)自端末情報群送信部13は、ステップS404で取得された自端末衛星情報群、およびステップS406で取得された自端末移動情報のうちの1以上の情報から、他端末に送信する自端末情報群を構成する。
【0078】
(ステップS408)自端末情報群送信部13は、ステップS407で構成した自端末情報群を送信する。
【0079】
(ステップS409)他端末情報群受信部14は、他端末情報群を受信したか否かを判断する。他端末情報群を受信すればステップS410に行き、受信しなければステップS409に戻る。
【0080】
(ステップS410)相関性判断部15は、衛星信号受信部11が受信した1以上の衛星信号に対応する1以上の各衛星について、自端末(自端末衛星情報群)と他端末(他端末衛星情報群)とが相関性が高いか否かを判断する。かかる処理を相関性判断処理という。相関性判断処理について、
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0081】
(ステップS411)相対位置取得部16は、相関性が高いと判断された1以上の衛星の自端末衛星情報群および他端末衛星情報群を用いて、自端末と他端末との相対位置を取得する。かかる処理を相対位置算出処理という。相対位置算出処理について、
図7のフローチャートを用いて説明する。
【0082】
(ステップS412)出力部17は、ステップS411で取得された相対位置を出力する。ステップS401に戻る。
【0083】
なお、
図4のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
【0084】
次に、ステップS410の相関性判断処理について、
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0085】
(ステップS501)相関性判断部15の参照衛星決定手段151は、自端末情報群が有する1以上の衛星の識別子と、他端末情報群が有する1以上の衛星の識別子とから、共通する衛星の識別子を取得する。なお、かかる識別子で識別される衛星は共通衛星である。
【0086】
(ステップS502)参照衛星決定手段151は、自端末情報群が有する仰角であり、ステップS501で取得した共通衛星の識別子に対応する仰角を取得する。そして、参照衛星決定手段151は、仰角の一番高い衛星の衛星識別子を取得する。なお、かかる衛星識別子で識別される衛星が参照衛星である。
【0087】
(ステップS503)相関性判断手段152は、参照衛星の計測疑似距離を取得する。
【0088】
(ステップS504)相関性判断手段152は、参照衛星の距離を推定する。なお、距離の推定方法の例は後述する。
【0089】
(ステップS505)相関性判断手段152は、カウンタiに1を代入する。
【0090】
(ステップS506)相関性判断手段152は、i番目の共通衛星が存在するか否かを判断する。i番目の共通衛星が存在すればステップS507に行き、存在しなければ上位処理にリターンする。なお、ここでの共通衛星は、参照衛星を除く。
【0091】
(ステップS507)相関性判断手段152は、i番目の共通衛星の計測疑似距離を取得する。
【0092】
(ステップS508)相関性判断手段152は、i番目の共通衛星の距離を推定する。
【0093】
(ステップS509)相関性判断手段152は、相関性判断のための値を算出する。かかる処理について、
図6のフローチャートを用いて説明する。
【0094】
(ステップS510)相関性判断手段152は、i番目の共通衛星の閾値を取得する。なお、閾値の取得方法の具体例について後述する。
【0095】
(ステップS511)相関性判断手段152は、ステップS509で取得した値が閾値以内か否かを判断する。閾値以内であればステップS512に行き、閾値以内でなければステップS513に行く。
【0096】
(ステップS512)相関性判断手段152は、i番目の共通衛星の識別子を図示しないバッファに一時蓄積する。
【0097】
(ステップS513)相関性判断手段152は、カウンタiを1、インクリメントする。ステップS506に戻る。
【0098】
次に、ステップS509の相関性判断のための値を算出処理について、
図6のフローチャートを用いて説明する。
【0099】
(ステップS601)相関性判断手段152は、i番目の共通衛星の自端末計測疑似距離を取得する。
【0100】
(ステップS602)相関性判断手段152は、参照衛星の自端末計測疑似距離を取得する。
【0101】
(ステップS603)相関性判断手段152は、i番目の共通衛星の他端末計測疑似距離を取得する。
【0102】
(ステップS604)相関性判断手段152は、参照衛星の他端末計測疑似距離を取得する。
【0103】
(ステップS605)相関性判断手段152は、i番目の共通衛星の自端末推測距離を取得する。
【0104】
(ステップS606)相関性判断手段152は、参照衛星の自端末推測距離を取得する。
【0105】
(ステップS607)相関性判断手段152は、i番目の共通衛星の他端末推測距離を取得する。
【0106】
(ステップS608)相関性判断手段152は、参照衛星の他端末推測距離を取得する。
【0107】
(ステップS609)相関性判断手段152は、ステップS601からステップS608まで取得した値を用いて、相関性判断のための値を算出する。上位処理にリターンする。なお、相関性判断のための値は、例えば、後述する疑似距離のダブルディファレンス(P
ab(kl))と推測距離のダブルディファレンス(ρ
ab(kl))との差|(P
ab(kl)−ρ
ab(kl))|である。
【0108】
なお、
図6のフローチャートにおいて、ステップS601からS608までの情報の取得順序や取得方法等は問わない。
【0109】
次に、ステップS411の相対位置算出処理について、
図7のフローチャートを用いて説明する。
【0110】
(ステップS701)相対位置取得部16は、相関性の高い1以上の共通衛星の自端末計測疑似距離を取得する。また、相対位置取得部16は、相関性の高い1以上の共通衛星の他端末計測疑似距離を取得する。また、相関性の高い1以上の共通衛星の位置を取得する。
【0111】
(ステップS702)相対位置取得部16は、自端末前時刻の位置と自端末の速度を取得する。また、相対位置取得部16は、他端末前時刻の位置と他端末の速度を取得する。なお、ここでの速度は3次元速度が好適であるが、2次元速度でも良い。
【0112】
(ステップS703)相対位置取得部16は、ステップS701で取得した相関性の高い1以上の共通衛星の位置と自端末計測疑似距離と、ステップS702で取得した自端末前時刻の位置と自端末の速度とを用いて、自端末の位置を算出する。
【0113】
(ステップS704)相対位置取得部16は、ステップS701で取得した相関性の高い1以上の共通衛星の位置と他端末計測疑似距離と、ステップS702で取得した他端末前時刻の位置と他端末の速度とを用いて、他端末の位置を算出する。
【0114】
(ステップS705)相対位置取得部16は、自端末の位置と他端末の位置とを用いて、自端末と他端末の相対位置を取得する。上位処理にリターンする。
【0115】
以下、本実施の形態における相対測位装置1の具体的な動作について説明する。相対測位装置1の概念図は
図8である。
【0116】
相対測位装置1(自端末)の衛星信号受信部11は、ここでは、例えば、
図8の衛星l、衛星kから測位信号を受信する。同様に、相対測位装置1(他端末)の衛星信号受信部11も、例えば、
図8の衛星l、衛星kから測位信号を受信する。
【0117】
次に、自端末の自端末情報群取得部12は、衛星l、衛星kからの測位信号を用いて、衛星lおよび衛星kと自端末の間の疑似距離pを計測する。なお、以下の数式1に示すように、計測した疑似距離pは、推測距離ρのほかに、受信機時刻誤差Δt、衛星の時刻誤差ΔT(c:光速度)、電離層による誤差d
ion、対流圏による誤差d
trop、反射波や熱雑音などによる誤差εを用いて算出され得る。
【数1】
【0118】
また、自端末の自端末情報群取得部12は、疑似距離p以外の自端末衛星情報を取得する。なお、疑似距離p以外の自端末衛星情報は、例えば、受信SNR、衛星の仰角、衛星の位置(x,y,z)などである。
【0119】
また、自端末の自端末情報群取得部12は、3次元速度を含む自端末移動情報を取得する。
【0120】
次に、自端末情報群送信部13は、取得された自端末衛星情報群および自端末移動情報のうちの1以上の情報から、他端末に送信する自端末情報群を構成する。そして、自端末情報群送信部13は、構成した自端末情報群を送信する。
【0121】
同様に、他端末の自端末情報群取得部12は、他端末の自端末移動情報(自端末にとっては、他端末移動情報)を取得する。そして、他端末の自端末情報群送信部13は、取得された自端末衛星情報群および自端末移動情報のうちの1以上の情報から、自端末(他端末にとっては、他の端末)に送信する自端末情報群(自端末にとっては、他端末情報群)を構成し、送信する。
【0122】
次に、自端末の他端末情報群受信部14は、他端末情報群を受信する。
【0123】
次に、自端末の相関性判断部15は、以下のように、衛星lおよび衛星kの相関性を判断する。まず、相関性判断部15の参照衛星決定手段151は、自端末情報群が有する1以上の衛星の識別子と、他端末情報群が有する1以上の衛星の識別子とから、共通衛星の識別子(ここでは、衛星lおよび衛星k)を取得する。
【0124】
次に、相関性判断部15の参照衛星決定手段151は、共通衛星l、kの識別子に対応する仰角を取得する。そして、参照衛星決定手段151は、仰角の一番高い衛星の衛星識別子lを取得する。つまり、参照衛星決定手段151は、衛星lを参照衛星と決定する。
【0125】
次に、相関性判断手段152は、参照衛星lの計測疑似距離(p
a(l))を取得する。なお、かかる計測疑似距離は、参照衛星の自端末計測疑似距離である。また、相関性判断手段152は、参照衛星lの推測距離(ρ
a(l))を推定する。なお、かかる推測距離は、参照衛星の自端末推測距離である。
【0126】
次に、相関性判断手段152は、共通衛星kの計測疑似距離(p
a(k))を取得する。なお、かかる計測疑似距離は、共通衛星kの自端末計測疑似距離である。また、相関性判断手段152は、共通衛星kの推測距離(ρ
a(k))を推定する。なお、かかる推測距離は、共通衛星kの自端末推測距離である。
【0127】
次に、相関性判断手段152は、共通衛星kの他端末計測疑似距離(p
b(k))を取得する。また、相関性判断手段152は、参照衛星lの他端末計測疑似距離(p
b(l))を取得する。
【0128】
さらに、相関性判断手段152は、共通衛星kの他端末推測距離(ρ
b(k))を取得する。また、相関性判断手段152は、参照衛星lの他端末推測距離(ρ
b(l))を取得する。
【0129】
次に、相関性判断手段152は、以下の数式2に、上記で取得した情報を代入して、衛星k,lに対してそれぞれ計測した疑似距離のダブルディファレンス(P
ab(kl))と推測距離のダブルディファレンス(ρ
ab(kl))との差(P
ab(kl)−ρ
ab(kl))を算出する。
【数2】
【0130】
なお、数式2において、P
ab(kl)−ρ
ab(kl)は、近距離で空間相関性の高い誤差成分(d
ion、d
trop)と共通成分(△t、△T)がなくなり、残る部分は、ほとんど、反射波や熱雑音の影響である。
【0131】
また、数式2において、P
a(k)は、移動体a(端末aと言っても良い)と衛星kとの疑似距離である。また、P
ab(kl)は、移動体a,bが衛星k,lに対してそれぞれ計測した疑似距離のダブルディファレンスである。さらに、ρ
ab(kl)は、推測距離のダブルディファレンスである。
【0132】
また、数式2において、衛星lの仰角が高ければ(例えば、衛星lは準天頂衛星であれば)、誤差成分には、反射波の影響がなく、誤差成分のほとんどは熱雑音で、その値は小さい。そして、(ε
a(k)−ε
b(k))は、近似的にP
ab(kl)−ρ
ab(kl)となる。
【0133】
また、ここで、|P
ab(kl)−ρ
ab(kl)|の値は大きければ、|ε
a(k)−ε
b(k)|は大きく、一台の移動体(自端末または他端末)は直接波を受信しており、他方の移動体(他端末または自端末)は反射波を受信している可能性は高い。従って、相関性判断手段152は、|P
ab(kl)−ρ
ab(kl)|の値が閾値より大きい場合、2つの端末でそれぞれ計測した疑似距離の相関性が低いと判断する。なお、閾値より大きいことは、閾値以上を含む概念である、とする。また、かかる場合の閾値は相関性判断手段152が保持していても良い。
【0134】
また、逆に、|P
ab(kl)−ρ
ab(kl))|の値が小さければ、|ε
a(k)−ε
b(k)|の値も小さい。かかる場合、2台の移動体(自端末および他端末)は、両方直接波を受信している、または、両方反射波を受信しているが反射波の空間相関性があり、誤差成分は相殺されている。よって、相関性判断手段152は、|P
ab(kl)−ρ
ab(kl)|を閾値と比較し、自端末および他端末は衛星kに対して計測した疑似距離の空間相関性を判断できる。なお、ここで、閾値と比較する値|P
ab(kl)−ρ
ab(kl)|は、疑似距離のダブルディファレンスと推測距離のダブルディファレンスとの差であるが、同意義の情報と上記の閾値とは異なる閾値とを比較しても良い。ここで、同意義の情報とは、疑似距離のダブルディファレンスと推測距離のダブルディファレンスとの差に関する情報であり、例えば、上記の閾値と比較する値をx倍した値、正規化した値等である。
【0135】
なお、ここで、推測距離ρのダブルディファレンス(ρ
ab(kl))が使用されているが、実際は、相関性判断手段152は、現時刻のρ
ab(kl)を知らず、従来の情報を用いて予測する。すなわち、相関性判断手段152は、カルマンフィルターを用いて、前時刻で測位するときに、相関性の低い受信波を使用せず精度よく位置を算出していれば、その算出した前時刻の位置情報と計測した速度情報を用いて現時刻の位置情報を予測できる。また、相関性判断手段152は、予測した移動体(端末)の位置と衛星の位置の距離を推測し、計測した疑似距離を推測した距離とを比較し、両方の距離が大幅にずれる場合(閾値以上の場合)、計測した疑似距離に相関性の低い反射波が含まれていると判断する。
【0136】
さらに、詳細には、相関性判断手段152は、上記のように衛星の位置と予測した移動体の位置から算出した距離を、推測距離の推測値として使用する。
【0137】
また、以下、相関性の高い衛星を決定するための上記の閾値は衛星ごとに異なることは好適である。かかる場合の閾値について、以下に説明する。ここで、移動体(端末)間の水平相対位置に着目する。測位中使用する衛星の仰角によって、疑似距離誤差は、水平相対位置の誤差に与える影響が異なる。水平相対位置の精度が予め決められた場合、各衛星の疑似距離に許容できる誤差が異なる。従って、衛星ごとに、その疑似距離の相関性を判断するための閾値を決めることが好適である。
【0138】
具体的には、以下のように、衛星ごとに閾値を決定する。
【0139】
まず、
図8に示すように、相関性判断手段152は、移動体aとbの位置をr
a、r
bとし、移動体aとbの相対位置を「r
ab=r
a−r
b」とする。また、
図8において、r
0は移動体a,b付近の参照位置であり、その経度と緯度はそれぞれλとφであり、aとbが共通に受信できる衛星の位置はそれぞれr
(1),r
(2),・・・,r
(K)であり、aとbが共通衛星に対してそれぞれ計測した疑似距離ベクトルがP
aとP
bである、とする。
【数3】
【0140】
また、数式3に示すように、疑似距離の差(P
a−P
b)は相対位置(r
ab)をパラメータとして算出され得る(△l
abは時刻誤差に相当する成分)。ただし、Hは、K個の衛星の配置を示すK行4列の行列であり、「−(r
(1)−r
0)
T/|(r
(1)−r
0)|」が1番目の衛星から参照位置r
0への方向を示す正規化3次元ベクトルであり、「−(r
(K)−r
0)
T/|(r
(K)−r
0)|」がK番目の衛星から参照位置r
0への方向を示す正規化3次元ベクトルである。したがって、相関性判断手段152は、疑似距離の差(P
a−P
b)とHから相対位置r
abを算出できる。
【0141】
なお、数式3の上記の衛星位置r
(1),r
(2),・・・,r
(K)と車両位置r
a,r
bは、ECEF(Earth−Centered Earth−Fixed)座標である。車両間の水平相対位置は、車両付近のENU(East−North−Up)座標系において算出されるべきである。
【0142】
そこで、相関性判断手段152は、
図9に示すECEF座標(x,y,z)からENU座標(e,n,u)へ、数式4を用いて変換する。なお、ECEF座標は、地球の質量の中心を原点とした座標系(地球中心地球固定座標系)であり、ENU座標は、車両位置r
a,r
b付近の参照位置である点(r
0=(x
0,y
0,z
0))を原点として、天頂方向(垂直線の上方向)にZ軸の正をとり、これに直角に東方向にX軸をとり、北方向にY軸をとる座標系であり、地平直交座標とも呼ばれる。
【数4】
【0143】
つまり、相関性判断手段152は、端末a(移動体aと言っても良い)とbの水平相対位置r
abenuを、以下の数式5を用いて算出する。
【数5】
【0144】
端末aとbについて、共通衛星kに対して計測した疑似距離の相関性が高ければ、ほとんどの誤差は相殺されるので、k番目の衛星との疑似距離の差は小さい。k番目の衛星の疑似距離に相殺できていない誤差がある場合、それが水平位置に与える影響は、数式6によって算出される。端末a,bの水平相対位置の誤差がd以下に要求される場合、k番目の衛星の疑似距離の誤差は、数式7で示すd
k以下になるべきである。つまり、相関性判断手段152は、衛星ごとに、閾値として、数式7のd
kを算出する。ここでは、相関性判断手段152は、衛星kの閾値(d
k)を取得する。
【数6】
【数7】
【0145】
次に、相関性判断手段152は、|(P
ab(kl)−ρ
ab(kl))|が閾値(d
k)以下であるか否かを判断する。そして、相関性判断手段152は、|(P
ab(kl)−ρ
ab(kl))|が閾値(d
k)以下である、と判断した、とする。次に、相関性判断手段152は、共通衛星kの識別子を図示しないバッファに一時蓄積する。つまり、共通衛星kは相関性の高い衛星として選択された。
【0146】
相関性判断手段152は、以上の処理をすべての共通衛星に対して行い、相関性の高い1以上の衛星を決定する。
【0147】
次に、疑似距離の相関性の高い1以上の共通衛星の集合における衛星の疑似距離を用いて現時刻の相対位置を、
図7のフローチャートを用いて説明した処理により算出する。
(具体例)
【0148】
以下、2つの端末(自端末aと他端末b)の相対位置を算出する、さらに具体的な動作について説明する。
【0149】
今、
図1に示すように、2つの端末(例えば、車車間通信における2台の車両に搭載された相対測位装置)はGPS衛星a1、a2、a3、a4、a5、a6から信号を受信し、計測した疑似距離と速度の情報を交換し合って、相対位置を算出するものとする。
【0150】
自端末aにおいて、GPS受信アンテ11を経由して、GPS衛星a1、a2、a3、a4、a5からの測位信号を受信し、自端末情報群取得部12を構成する計測疑似距離取得手段121で疑似距離を計測する。また、受信SNR取得手段122が受信SNRを計測する。また、自端末移動情報取得手段124は、車速パルスまたは加速度センサーを用いて速度を算出する。また、自端末移動情報取得手段124は、電子地図またはジャイロを用いて移動方向を算出し、さらに3次元速度を算出する。そして、自端末情報群送信部13は、計測した3次元速度、疑似距離・SNRを、
図10に示すフォーマットで、通信用アンテナ13,14を経由して送信する。
【0151】
また、他端末bは自端末aと同様に動作する。ただし、他端末bはGPS衛星a2、a3、a4、a5、a6からの測位信号を受信している。
【0152】
なお、
図10のメッセージ201は自端末情報群であり、メッセージ202は他端末情報群である。201および202は、端末間の位置交換メッセージである、と言える。ここでは、201および202のヘッダー(Header)が、メッセージの送信元アドレス(SRC)と送信先アドレス(broadcast address)とからなる。また、201および202のペイロード(Payload)が、送信元の3次元速度、送信元で受信できる衛星の衛星番号(PRN)、疑似距離p、およびSNRからなる。
【0153】
また、端末の位置情報ベクトルXを「X=(x,y,z,δ,v
x,v
y,v
z)」とする。ここで、(x,y,z)は、ECEF座標である、δは受信機の時刻誤差に相当する疑似距離誤差部分であり、(v
x,v
y,v
z)はECEF座標系における3次元速度である。つまり、「x=X
1←→3」は位置を示し、「v=X
5←→7」は速度を示す。なお、「X
1←→3」は、位置情報ベクトルXの1番目から3番目までの要素を示す。また、端末の計測情報ベクトルYを「Y=(p
(1),p
(2),・・・,p
(n),v
x,v
y,v
z)
T」とする。計測情報ベクトルYは、計測したn個の衛星の疑似距離と端末の3次元速度からなる。
【0154】
かかる場合の自端末aの動作について、
図11、
図12のフローチャートを用いて説明する。
【0155】
(ステップS1101)自端末aの自端末情報群取得部12は、自端末の3次元速度を計測する。また、自端末情報群取得部12は、衛星a1、a2、a3、a4、a5からの受信信号によって疑似距離、SNRを計測し、公知の手法で衛星暦を復号し、衛星位置と仰角を算出する。なお、端末bも、端末aと同様に動作する。ただし、端末bは、衛星a2、a3、a4、a5、a6から測位信号を受信している。
【0156】
(ステップS1102)自端末aの自端末情報群送信部13は、衛星ごとの疑似距離、SNR、3次元速度をメッセージ201に入れて、送信する。なお、他端末bも同様に動作する。
【0157】
(ステップS1103) 自端末aの他端末情報群受信部14は、他端末bから、他端末bの3次元速度、受信できる衛星の衛星番号、疑似距離、SNRを含むメッセージ202を受信する。他端末bも同様に自端末aからメッセージ201を受信する。
【0158】
(ステップS1104)自端末aの相関性判断部15は、自端末aが受信できる衛星の集合(a1、a2、a3、a4、a5)と移動体bが受信できる衛星の集合(a2、a3、a4、a5、a6)の共通部分(a2、a3、a4、a5)を算出し、この共通衛星集合をCS
All={a2、a3、a4、a5}とする。なお、CS
Allは、共通衛星の識別子を格納するバッファである。
【0159】
(ステップS1105)自端末aの相関性判断部15は、共通衛星集合CS
All={a2、a3、a4、a5}において、自端末aで算出した各衛星の仰角={23、55、36、18}を用いて、SNRが閾値を超える衛星(閾値以上でも良い)から、仰角が一番高い衛星a3を選択し、参照衛星とし、その番号をlとする。つまり、ここでは、相関性判断部15は、SNRが閾値より大きい衛星の中から、仰角が一番高い共通衛星を参照衛星として決定する。なお、各衛星の仰角={23、55、36、18}は例であることは言うまでもない。また、ここで、SNRが閾値を超える衛星の中から参照衛星を選択したが、かかる処理は必須ではない。
【0160】
(ステップS1106)自端末aの相関性判断部15は、位置予測するためのカルマンフィルターを初期化する。つまり、相関性判断部15は、2台の端末においてカルマンフィルターの初期値が決まっているかどうかを表すフラグをチェックする。フラグが付いていなければ(初期値が決まっていなければ)ステップS1107に行き、フラグが付いていれば(初期値が決まっていれば)ステップS1110に行く。
【0161】
(ステップS1107)相関性判断部15は、CS
Allにおける共通衛星に対して、2台の端末で計測したSNRの差が一定閾値以下のものを決定し、かかる共通衛星をCS
WeakCorrとする。なお、CS
WeakCorrは、SNRの差が一定閾値以下の共通衛星の識別子を格納するバッファである。
【0162】
(ステップS1108)相関性判断部15は、CS
WeakCorrにおける衛星の数が4以上であるかどうかを判断する。衛星の数が4以上であれば、単独測位ができるので、ステップS1109に行く。また、CS
WeakCorrにおける衛星の数が3以下であれは、単独測位ができないので、相関性判断部15は、単独測位できるまで待機し、終了する。
【0163】
(ステップS1109)相関性判断部15は、端末a,bに対して、CS
WeakCorrにおける共通衛星の疑似距離と位置を用いて、公知の手法で移動体a,bのECEF位置x
+a,0とx
+b,0とを算出する。そして、相関性判断部15は、端末aのカルマンフィルターの初期値「X
+a,0=[x
+a,0,δ
a,0,v
a,0]
T,P
+a,0=I
7・σ(σはパラメータである)」を得る。なお、「x
+a,0」は端末aの位置の初期値であり、「δ
a,0」は時刻誤差の初期値であり、「v
a,0」は端末aの3次元速度の初期値である。また、「P
+a,0」はX
+a,0の共分散行列であり、「I
7」は7×7の単位行列である。また、 端末bのカルマンフィルターの初期値は、「X
+b,0=[x
+b,0,δ
b,0,v
b,0]
T,P
+b,0=I
7・σ
0」とする。それに、カルマンフィルターの初期値が決められたフラグを付けて、終了する。
【0164】
(ステップS1110)カルマンフィルターの初期値が決められたフラグが付いている場合は、自端末aの相関性判断部15は、端末a,bで計測した疑似距離の相関性を判断するための閾値を算出する。ここで、現在の時刻をmとする。つまり、相関性判断部15は、時刻m−1における2台の端末a,bのカルマンフィルターの状態X
+a,m−1,P
+a,m−1とX
+b,m−1,P
+b,m−1とを読み込む。
【0165】
(ステップS1111)相関性判断部15は、2台の端末の時刻mでの状態をそれぞれ予測する。具体的には、相関性判断部15は、以下の数式8を用いて、端末aの状態を取得する。
【数8】
【0166】
なお、数式8において、Φは状態遷移マトリクスであり、Qは状態ランダムネスマトリクスである。状態遷移マトリクスとは前時刻の位置情報と速度情報を用いて現時刻の位置を予測する関係を表す行列であり、τが前時刻と現時刻の差である。また、状態ランダムネスマトリクスとはランダム要素によって状態を予測できない程度を表す行列である。
【0167】
(ステップS1112)相関性判断部15は、ステップS1111で取得した自端末aの予測位置x
−a,mをr
0とする。
【0168】
(ステップS1113)相関性判断部15は、CS
Allにおける共通衛星の位置r
(k)とr
0間の方位を示すHを算出する。なお、Hの算出は、上述の数式3を用いる
【0169】
(ステップS1114)相関性判断部15は、r
0用いてR
Lを算出する。なお、R
Lは数式5を用いて算出される。
【0170】
(ステップS1115)相関性判断部15は、R
LとHとを用いてGを算出する。なお、Gは数式5を用いて算出される。
【0171】
(ステップS1116)相関性判断部15は、CS
Allにおける共通衛星(k)ごとに、疑似距離差の許容値d
kを算出する。なお、許容値d
kは数式7を用いて算出される。
【0172】
(ステップS1117)相関性判断部15は、CS
Allにおいて、参照衛星l以外の共通衛星kに対して、端末a,bの予測位置と衛星位置を用いてダブルディファレンス「ρ
ab(kl)=(ρ
a(k)−ρ
b(k))−(ρ
a(l)−ρ
b(l))」を取得する。ただし、「ρ
a(k)=|x
−a,m−r
(k)|、ρ
b(k)=|x
−b,m−r
(k)|、ρ
a(l)=|x
−a,m−r
(l)|、ρ
b(l)=|x
−b,m−r
(l)|」である。
【0173】
(ステップS1118)相関性判断部15は、CS
Allにおいて、l以外の共通衛星kに対して、疑似距離のダブルディファレンス「p
ab(kl)=(p
a(k)−p
b(k))−(p
a(l)−p
b(l))」を算出する。
【0174】
(ステップS1119)相関性判断部15は、CS
Allにおいて、l 以外の共通衛星kに対して、「|p
ab(kl)−ρ
ab(kl)|<d
k」が成立するか否かを判断する。成立すれば、端末a,bが共通衛星kに対して疑似距離の相関性が高いとし、相関性判断部15は、衛星kの識別子(例えば、k)をCS
StrongCorrに入れる。なお、CS
StrongCorrは、疑似距離の相関性が高い衛星の識別子を格納するバッファである。
【0175】
(ステップS1120)相対位置取得部16は、疑似距離の相関性の高い共通衛星の集合CS
StrongCorrにおける衛星の疑似距離を用いて、現時刻における端末aと端末bとの相対位置を算出する。
【0176】
具体的には、相対位置取得部16は、計測情報「Y
a,m=(p
a(1),p
a(2),・・・,p
a(n),v
ax,v
ay,v
az)
T」と「Y
b,m=(p
b(1),p
b(2),・・・,p
b(n),v
bx,v
by,v
bz)
T」とから、端末a,bの集合CS
StrongCorrにおける衛星の疑似距離と、3次元速度とを抽出する。この疑似距離と3次元速度とを含む情報を、「Y'
a,m」と「Y'
b,m」とする。そして、相対位置取得部16は、以下の数式9を用いて、移動体a,bのそれぞれのカルマンゲイン「K
a,m」と「K
b,m」とを算出する。さらに、相対位置取得部16は、カルマンゲイン「K
a,m」と「K
b,m」とを用いて、数式9を用いて、計測情報と予測情報の差から新しい状態「X
+a,m」と「X
+b,m」とを算出し、その誤差マトリクス「P
+a,m」と「P
+b,m」も算出する。
【数9】
【0177】
なお、数式9において、ρ
a,mはCS
StrongCorrにおける衛星の位置と端末aの予測位置x
−a,mとの間の距離のベクトルであり、ρ
b,mはCS
StrongCorrにおける衛星の位置と移動体bの予測位置x
−b,mとの間の距離のベクトルである。
【0178】
そして、相対位置取得部16は、X
+a,mにおけるx
+a,mをr
aとし、X
+b,mにおけるx
+b,mをr
bとし、r
a,benu=R
L (r
a - r
b)から、「r
a,benu=(Δe
a,b,Δn
a,b,Δu
a,b)」を算出し、端末aと端末bの間の水平相対位置「(Δe
a,b,Δn
a,b)」を取得する。
ただし、Δe
a,bは東方向であり、Δn
a,bは北方向である。
【0179】
以上、本実施の形態によれば、端末間の相対位置を精度高く取得できる。さらに具体的には、本実施の形態において、移動体間で共通に受信できる衛星に対して、計測した疑似距離の相関性の判断を行う場合に、両受信機で共通に受信できた信号のうち、反射波を含めた疑似距離の相関性の高い受信波を用い、相関性の低い反射波を排除する。従って、反射波の悪い影響を回避しながら、測位のために使用する衛星の数を増加することができ、相対位置を精度高く取得できる。
【0180】
また、本実施の形態によれば、相対測位装置1は、衛星数が不足しており、電波環境の悪い場所でも相対位置を取得できる。なお、相対測位装置1において、相関性のある反射波を利用でき、反射波誤差を削減できることにより、精度が高く相対位置を取得できる。
【0181】
なお、本実施の形態において、端末装置(移動体)の速度は3次元速度を利用した。しかし、2次元速度を利用しても良い。
【0182】
さらに、本実施の形態における処理は、ソフトウェアで実現しても良い。そして、このソフトウェアをソフトウェアダウンロード等により配布しても良い。また、このソフトウェアをCD−ROMなどの記録媒体に記録して流布しても良い。なお、このことは、本明細書における他の実施の形態においても該当する。なお、本実施の形態における相対測位装置1を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、コンピュータを、2以上の衛星の衛星信号を受信する衛星信号受信部と、前記衛星信号受信部が受信した衛星信号または当該衛星信号を用いて取得される情報のうちの1以上の自端末に関する情報であり、2以上の衛星ごとに前記衛星信号を用いて、自端末と各衛星との擬似距離である自端末計測疑似距離を含む、自端末に関する自端末情報群を取得する自端末情報群取得部と、前記自端末情報群のうちの一部または全部の情報を送信する自端末情報群送信部と、他端末が受信した衛星信号または当該衛星信号を用いて取得される情報のうちの1以上の前記他端末に関する情報である2以上の衛星ごとの他端末衛星情報群を有する情報であり、他端末と各衛星との擬似距離である他端末計測疑似距離を含む、他端末情報群のうちの一部または全部の情報を受信する他端末情報群受信部と、自端末と他端末の両方が衛星信号を受信できる2以上の共通衛星のうちの、2つの共通衛星の自端末計測疑似距離、および前記2つの共通衛星の他端末計測疑似距離、前記2つの共通衛星と自端末との距離である自端末推測距離、および前記2つの共通衛星と他端末との距離である他端末推測距離を取得し、前記2つの共通衛星の自端末計測疑似距離、前記2つの共通衛星の他端末計測疑似距離、前記2つの共通衛星の自端末推測距離、および前記2つの共通衛星の他端末推測距離を用いて、前記2つの共通衛星のうちの一の共通衛星について、前記自端末衛星情報群と前記他端末衛星情報群とが相関性が高いか否かを判断する相関性判断部と、前記相関性が高いと判断された1以上の衛星の自端末衛星情報群および他端末衛星情報群を用いて、前記自端末と前記他端末との相対位置を取得する相対位置取得部と、前記相対位置取得部が取得した相対位置を出力する出力部として機能させるためのプログラム、である。
【0183】
また、上記プログラムにおいて、前記相関性判断部は、共通衛星の中で、予め決められた条件を満たすほど、反射波を受信する確率が低い衛星を決定する参照衛星決定手段を具備し、前記参照衛星と他の共通衛星の2つの衛星の自端末計測疑似距離、当該2つの衛星の他端末計測疑似距離、当該2つの衛星と自端末との距離である自端末推測距離、および当該2つの衛星と他端末との距離である他端末推測距離を取得し、前記2つの衛星の自端末計測疑似距離、前記2つの衛星の他端末計測疑似距離、前記2つの衛星の自端末推測距離、および前記2つの衛星の他端末推測距離を用いて、前記他の共通衛星について、前記自端末衛星情報群と前記他端末衛星情報群とが相関性が高いか否かを判断するものとして、コンピュータを機能させることは好適である。
【0184】
また、上記プログラムにおいて、前記相関性判断部は、前記2つの衛星の自端末計測疑似距離の差と前記2つの衛星の他端末計測疑似距離との差である疑似距離のダブルディファレンスと、前記2つの衛星の自端末推測距離と前記2つの衛星の他端末推測距離との差である推測距離のダブルディファレンスとを算出し、疑似距離のダブルディファレンスと推測距離のダブルディファレンスとの差が、閾値より小さい場合に、前記他の共通衛星について、前記自端末衛星情報群と前記他端末衛星情報群とが相関性が高いと判断するものとして、コンピュータを機能させることは好適である。
【0185】
また、上記プログラムにおいて、前記相関性判断部は、2以上の各共通衛星の疑似距離差を算出し、当該疑似距離差が閾値より小さいか否かを判断し、閾値以上である共通衛星は相関性が低いと判断するものとして、コンピュータを機能させることは好適である。
【0186】
また、上記プログラムにおいて、前記閾値は、衛星ごとに異なるものとして、コンピュータを機能させることは好適である。
【0187】
また、上記プログラムにおいて、前記自端末情報群取得部は、2以上の衛星ごとに前記衛星信号受信部が受信した衛星信号を用いて、自端末と各衛星との擬似距離である自端末計測疑似距離を取得する計測擬似距離取得手段と、2以上の衛星ごとに、衛星信号の自端末受信SNRを取得する受信SNR取得手段と、2以上の衛星ごとに、衛星の位置を示す衛星位置を取得する衛星位置取得手段と、自端末の移動速度と移動方向を含む自端末の移動に関する情報である自端末移動情報を取得する自端末移動情報取得手段とを具備するものとして、コンピュータを機能させることは好適である。
【0188】
(実施の形態2)
本実施の形態において、相対測位装置が、疑似距離の相関性判断のための閾値d
kを固定値に使用する場合について説明する。
【0189】
図13は、本実施の形態における相対測位装置2のブロック図である。相対測位装置2は、衛星信号受信部11、自端末情報群取得部12、自端末情報群送信部13、他端末情報群受信部14、相関性判断部25、相対位置取得部16、および出力部17を備える。
【0190】
相関性判断部25は、参照衛星決定手段151、相関性判断手段252を備える。
【0191】
相関性判断部25は、自端末と他端末の両方が衛星信号を受信できる2以上の共通衛星のうちの、2つの共通衛星の自端末計測疑似距離、および2つの共通衛星の他端末計測疑似距離、2つの共通衛星と自端末との距離である自端末推測距離、および2つの共通衛星と他端末との距離である他端末推測距離を取得し、2つの共通衛星の自端末計測疑似距離、2つの共通衛星の他端末計測疑似距離、2つの共通衛星の自端末推測距離、および2つの共通衛星の他端末推測距離を用いて、2つの共通衛星のうちの一の共通衛星について、自端末衛星情報群と他端末衛星情報群とが相関性が高いか否かを判断する。
【0192】
相関性判断部25は、2つの衛星の自端末計測疑似距離の差と2つの衛星の他端末計測疑似距離との差である疑似距離のダブルディファレンスと、2つの衛星の自端末推測距離と2つの衛星の他端末推測距離との差である推測距離のダブルディファレンスとを算出し、疑似距離のダブルディファレンスと推測距離のダブルディファレンスとの差が、閾値より小さい場合に、他の共通衛星について、自端末衛星情報群と他端末衛星情報群とが相関性が高いと判断する。
【0193】
相関性判断部25は、2以上の各共通衛星の疑似距離差を算出し、疑似距離差が閾値より小さいか否かを判断し、閾値以上である共通衛星は相関性が低いと判断する。ここでの閾値は、すべての衛星において同じ値である。相関性判断部25は、予め閾値を格納しておいても良いし、一の衛星を選択し、当該選択した衛星に対応する閾値を算出し、当該算出した閾値を、他の衛星に対して適用しても良い。かかる閾値の算出方法は、実施の形態1で説明した方法で良い。また、一の衛星は、どのように選択しても良い。例えば、SNRが最も高い衛星を選択しても良いし、仰角が2番目に大きい衛星を選択する等しても良い。なお、相関性判断手段252の動作について、参照衛星を決定した後は、上述した相関性判断部25の動作と同様であるので、説明を省略する。
【0194】
相関性判断部25、および相関性判断手段252は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。相関性判断部25の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0195】
以上、本実施の形態によれば、相対位置を取得するための演算が簡略化できる。そのために、より高速に相対位置を算出できる。
【0196】
(実施の形態3)
本実施の形態において、疑似距離の相関性を判断する場合に、実施の形態1で説明した疑似距離差と推測距離差の差「|(P
ab(kl)−ρ
ab(kl))|」を第一の閾値(d
k)と比較することに加えて、SNRの差「(SNR
a(k)−SNR
b(k))」を第二の閾値と比較し、相関性の高い衛星を決定する相対測位装置3について説明する。
【0197】
図14は、本実施の形態における相対測位装置3のブロック図である。相対測位装置3は、衛星信号受信部11、自端末情報群取得部12、自端末情報群送信部13、他端末情報群受信部14、相関性判断部35、相対位置取得部16、および出力部17を備える。
【0198】
相関性判断部35は、参照衛星決定手段151、および相関性判断手段352を備える。
【0199】
相関性判断部35は、2つの共通衛星の自端末計測疑似距離、2つの共通衛星の他端末計測疑似距離、2つの共通衛星の自端末推測距離、および2つの共通衛星の他端末推測距離を用いて、2つの共通衛星のうちの一の共通衛星について、自端末衛星情報群と他端末衛星情報群とが相関性が高いか否かを判断し、かつ自端末受信SNRと前記他端末受信SNRとを用いて、2つの共通衛星のうちの一の共通衛星について、自端末衛星情報群と他端末衛星情報群とが相関性が高いか否かを判断し、両方の判断が、相関性が高いとの判断の場合に、自端末衛星情報群と他端末衛星情報群とが相関性が高いとする。
【0200】
さらに具体的には、相関性判断部35は、疑似距離差と推測距離差の差「|(P
ab(kl)−ρ
ab(kl))|」を第一の閾値(d
k)と比較する。また、相関性判断部35は、SNRの差「(SNR
a(k)−SNR
b(k))」を第二の閾値と比較する。そして、相関性判断部35は、両方が閾値以下であれば、衛星kに対する疑似距離の相関性が高いとし、衛星kを相対位置の取得のために使用する。なお、相関性判断手段352の動作について、参照衛星を決定した後は、上述した相関性判断部35の動作と同様であるので、説明を省略する。
【0201】
相関性判断部35、および相関性判断手段352は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。相関性判断部35の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0202】
以上、本実施の形態によれば、相関性の判定をさらに厳しくして、相関性の判断の信頼性を向上できる。
【0203】
また、
図15は、本明細書で述べたプログラムを実行して、上述した種々の実施の形態の相対測位装置を実現するコンピュータの外観を示す。上述の実施の形態は、コンピュータハードウェア及びその上で実行されるコンピュータプログラムで実現され得る。
図15は、このコンピュータシステム300の概観図であり、
図16は、システム300のブロック図である。
【0204】
図15において、コンピュータシステム300は、CD−ROMドライブを含むコンピュータ301と、キーボード302と、マウス303と、モニタ304とを含む。
【0205】
図16において、コンピュータ301は、CD−ROMドライブ3012に加えて、MPU3013と、MPU3013やCD−ROMドライブ3012に接続されたバス3014と、ブートアッププログラム等のプログラムを記憶するためのROM3015と、MPU3013に接続され、アプリケーションプログラムの命令を一時的に記憶するとともに一時記憶空間を提供するためのRAM3016と、アプリケーションプログラム、システムプログラム、及びデータを記憶するためのハードディスク3017とを含む。ここでは、図示しないが、コンピュータ301は、さらに、LANへの接続を提供するネットワークカードを含んでも良い。
【0206】
コンピュータシステム300に、上述した実施の形態の相対測位装置の機能を実行させるプログラムは、CD−ROM3101、またはFD3102に記憶されて、CD−ROMドライブ3012またはFDドライブ3011に挿入され、さらにハードディスク3017に転送されても良い。これに代えて、プログラムは、図示しないネットワークを介してコンピュータ301に送信され、ハードディスク3017に記憶されても良い。プログラムは実行の際にRAM3016にロードされる。プログラムは、CD−ROM3101、FD3102またはネットワークから直接、ロードされても良い。
【0207】
プログラムは、コンピュータ301に、上述した実施の形態の相対測位装置の機能を実行させるオペレーティングシステム(OS)、またはサードパーティープログラム等は、必ずしも含まなくても良い。プログラムは、制御された態様で適切な機能(モジュール)を呼び出し、所望の結果が得られるようにする命令の部分のみを含んでいれば良い。コンピュータシステム300がどのように動作するかは周知であり、詳細な説明は省略する。
【0208】
なお、上記プログラムにおいて、情報を送信するステップや、情報を受信するステップなどでは、ハードウェアによって行われる処理、例えば、送信ステップにおけるモデムやインターフェースカードなどで行われる処理(ハードウェアでしか行われない処理)は含まれない。
【0209】
また、上記プログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、あるいは分散処理を行ってもよい。
【0210】
また、上記各実施の形態において、一の装置に存在する2以上の通信手段は、物理的に一の媒体で実現されても良いことは言うまでもない。
【0211】
また、上記各実施の形態において、各処理(各機能)は、単一の装置(システム)によって集中処理されることによって実現されてもよく、あるいは、複数の装置によって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0212】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。