(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5884212
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】IHクッキングヒータ用の上火ヒータユニット
(51)【国際特許分類】
H05B 6/12 20060101AFI20160301BHJP
F24C 15/20 20060101ALI20160301BHJP
A47J 36/00 20060101ALI20160301BHJP
A47J 37/06 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
H05B6/12 302
H05B6/12 318
H05B6/12 335
F24C15/20 E
A47J36/00
A47J37/06 371
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-287945(P2011-287945)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-137919(P2013-137919A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100562
【氏名又は名称】アール・ビー・コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106105
【弁理士】
【氏名又は名称】打揚 洋次
(72)【発明者】
【氏名】夷藤 喜造
(72)【発明者】
【氏名】酒井 英喜
(72)【発明者】
【氏名】砂原 康治
【審査官】
土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−167677(JP,A)
【文献】
特開平07−263132(JP,A)
【文献】
特開2006−029596(JP,A)
【文献】
特開平11−204243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/12
A47J 36/00
A47J 37/06
F24C 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IHクッキングヒータの誘導加熱コイルとの間における相互誘導作用によって起電力を発揮する受電コイルを内蔵し、上面を調理容器を安定に載置可能に形成してなる非金属製の調理容器台と、裏面側に前記受電コイルに生じた電力によって駆動するラジエントヒータを内蔵し、前記調理容器台上に載置された調理容器を覆う態様で使用する容器蓋とを備え、
前記調理容器台上に載置した調理容器内に収容された調理材料を誘導加熱コイルによる調理容器自体の発熱と前記容器蓋内のラジエントヒータからの放射熱とによって上下両面から焼き上げることを可能とするとともに、前記調理容器台の高さを調節することによって上下両面の焼き上がり加減をバランスさせることを可能とし、
さらに、前記調理容器台の中心部に上下方向の貫通孔を形成し、該貫通孔に前記調理容器台上に載置された調理容器の底面からIHクッキングヒータのトッププレートに至る長さの熱伝導性の高い非磁性金属からなる伝熱部材を装填し、該伝熱部材を介してIHクッキングヒータに備えられている温度検出センサを機能させることを特徴とするIHクッキングヒータ用の上火ヒータユニット。
【請求項2】
前記容器蓋に、加熱された調理材料から発生する煙および臭気物質を燃焼するための後燃焼触媒部材を付設した排気口を形成し、前記後燃焼触媒部材を調理材料とともに前記ラジエントヒータによって加熱することによって活性化することを特徴とする請求項1に記載のIHクッキングヒータ用の上火ヒータユニット。
【請求項3】
前記受電コイルの平面視における外形が、IHクッキングヒータの誘導加熱コイルの平面視における外形に対応する外形に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のIHクッキングヒータ用の上火ヒータユニット。
【請求項4】
前記受電コイルの上面側に、前記調理容器台上に載置された調理容器からの熱を遮断するための断熱層が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のIHクッキングヒータ用の上火ヒータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライパン等の手持ちの調理容器を用いてIHクッキングヒータによって焼き魚等の焼き物調理をする際に、その調理容器に蓋をする使用態様で用いることにより、調理材料を上下両面から焼き上げることができるようにしたIHクッキングヒータ用の上火ヒータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギー思想の浸透に伴い厨房における調理用の熱源として熱利用効率が高いIHクッキングヒータが普及している。
【0003】
IHクッキングヒータは、環状に形成した誘導加熱コイルに高周波電流を流して高周波交番磁束を発生させ、発生した高周波交番磁束を誘導加熱コイル上に配置された鍋やフライパン等の調理容器の金属材料に作用させて調理容器自体に発熱をさせるものである。なお、この際に調理容器に熱が発生するのは、高周波交番磁束が金属材料に作用することによって金属材料に電磁誘導による誘導電流が流れ、金属材料が有する電気抵抗との関係によってジュール熱が発生するからである。
【0004】
上記のような発熱原理によって調理容器自体を発熱させることができるIHクッキングヒータは、熱源から調理材料に至るまでの熱の伝達ロスが発生する余地がないことから、熱利用効率も頗る良好であるという特徴を有する。また、電気的制御に対する親和性が高く、予め設定されたプログラムによる調理の自動化にも対応することができる。
【0005】
ここで注目すべき事柄は、IHクッキングシステムの多くが誘導加熱とは発熱原理を異にするラジエントヒータを組み込んだ焼き物調理用のオーブングリルを備えていることである。これは、IHクッキングヒータは、焼き物調理が不得手であり、焼き物調理については、ラジエントヒータに頼らざるを得ないという実情に起因している。
【0006】
IHクッキングヒータが焼き物調理を不得手とする理由は、焼き物調理をおいしく仕上げるために必要とされる高温領域の遠赤外線成分を発生させることができないことが一つの理由である。これは、調理容器自体を発熱させるIHクッキングヒータにおいては、調理容器の耐熱性や取扱いの安全性の問題もあって高温領域の遠赤外線成分を発生させるに至る高温にまで調理容器を加熱することが許容されないからである。これに対して、専用の耐熱部材からなるラジエントヒータにおいては、このような制約要因は存しない。
【0007】
IHクッキングヒータが焼き物調理を不得手とする他の理由は、焼き物調理特有の油煙や臭気物質を有効に処理することができず、一旦室内に排出された油煙等をレンジフードファンによって屋外に排出することができるにすぎない。このため、IHクッキングヒータを利用してフライパン等で焼き物調理をした場合には、IHクッキングシステムのクリーンなイメージを大きく減殺するとともに、レンジフード回りの油煙汚れが問題になる。
【0008】
IHクッキングシステムは、上記のような理由によってIH方式本来の誘導加熱方式の熱源のほかに直熱式のラジエントヒータを熱源とするオーブングリルを備えているのであるが、このように発熱原理が異なる2系統の熱源を必要とすることは、IHクッキングシステムのコストを引き上げる要因となっていることの他にも、IHクッキングシステムのデザイン上の制約となる等の不利益をもたらしている。
【0009】
さらに、IHクッキングシステムに組み込まれたオーブングリルは、単品製品のオーブングリルに対して使い勝手が悪いという問題がある。
【0010】
IHクッキングシステムに付属するオーブングリルの使い勝手の悪さは、次のような問題点に起因している。オーブングリルへの調理材料の出し入れや清掃が不便であるという問題がある。これは、IHクッキングシステムのトッププレートが適切な高さに設定され、したがって、その下方に配置されざるを得ないオーブングリルの位置が低く、中腰での作業を余儀なくされるからである。
【0011】
また、オーブングリルへの調理材料の出し入れに不安感が伴うという問題がある。これは、オーブングリルの調理トレイの構造が戸棚の引き出しのような構造であることから、調理トレイを手前に出し切った際において極端な片持ち支持状態となって調理トレイの前面パネル側が垂れ下がるからである。抜け取れることはないのであるが、調理トレイ内に油受け用の水を張って使用している際には特に不安感が強い。
【0012】
さらに、調理中の調理材料が全く見えないという問題がある。調理トレイの前面パネルには、目視確認用の透明窓が設けられているが、調理中のオーブングリル内には蒸気や煙が立ち込めており、見えない場合の方が多いと言える。調理時間は、タイマーで設定することもできるようにされているが、タイマーは、調理材料毎の適切な焼き上がりを告知する装置ではあり得ず、調理未了に際しての追加通電による焼き焦げも珍しいことではない。
【0013】
IHクッキングシステムに組み込まれたオーブングリルには、IHクッキングシステムに組み込まれているということに起因して上記のような各種の不利不便が伴う。このため、オーブングリルを使用すれば、無用の排煙や臭気を発生させることなく調理ができるにもかかわらず、組込みのオーブングリルの使用を差し控え、フライパン等を用いて多量の煙を発生させながら焼き物調理をするという不合理が発生する事態ともなるのである。しかし、IHクッキングシステムに組み込まれているという理由に基づく不利不便には、改良の余地がない。
【0014】
上記のような理由によりメーカ側では、IHクッキングシステムのオーブングリルを廃止したいと考えているところであるが、使用頻度はともかくとして、焼き物調理ができないという商品に対する需要者の抵抗感を考えると廃止に踏み切ることはできない。
【0015】
上記問題は、IHクッキングシステムを利用してそのトッププレート上で焼き物調理をすることができる適切な調理器具が提供されれば解決することができる問題である。このことに着目した提案としてとしては、次のような高周波誘導加熱調理器具の例がある(下記、特許文献1参照)。
【0016】
しかし、上記提案例においては、調理材料から発生する焼き物調理特有の油煙や臭気の問題には触れられておらず、この問題をどのように処理するのかが不明である。焼き物調理の味覚的特徴は焦げ味であり、油煙や臭気を発生させることなく焼き物調理をすることはできない。仮に、油煙等を調理容器内に閉じ込めて調理するのであるとすると、油煙にまみれた黒っぽい調理が出来上がるであろうし、蓋を取り外すのであるとすると、蓋内の加熱部を利用することができないという問題が生じる。
【0017】
そこで、本願の発明者らは、既に、上記提案の有する油煙等の処理問題を後燃焼触媒部材を利用して解決した提案を行っている(下記、特許文献2参照)。本願は、この提案をさらに改良したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2000−40536号公報
【特許文献2】特願2010−262169号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本願との関係において、本願の発明者らによる先の提案内容の概略および先の提案からその後に提出された問題点を簡単に説明する。
【0020】
本願の発明者らによる先の提案は、焼き物調理に使用する調理容器の容器蓋の裏面側に調理材料を上面側から加熱する、いわゆる上火ヒータを設けるとともに、容器蓋に後燃焼触媒部材を付設した排気口を設け、調理材料から発生する油煙等を後燃焼触媒部材によって完全燃焼させて排出するようにしたものである。
【0021】
この際、後燃焼触媒部材は、上火ヒータを利用して活性化させている。つまり上火ヒータは、調理用と後燃焼触媒部材の活性化用途とに供用されているのである。また、上火ヒータの電源としては、調理容器または容器蓋のいずれかに、IHクッキングヒータの誘導加熱コイルから発生する高周波交番磁束によって起電力発揮する受電コイルを設置し、これを電源としている。
【0022】
上記本願の発明者らによる先の提案は、その後継続的な追試に付され、この結果、次のような問題が顕在化した。
【0023】
基本的な問題としては、受電コイルの電力不足が挙げられる。受電コイルの設置場所については、当初より問題となっていたのであるが、先の提案においては、調理容器または容器蓋に受電コイルを設置する案が採用されていた。しかし、いずれに受電コイルを設けるにしても調理器具としての取扱い性を確保しながら十分なターン数の受電コイルを設けることには限界があったのである。
【0024】
また、ターン数の問題ばかりでなく受電コイルを容器蓋に取り付ける場合には、IHクッキングヒータの誘導加熱コイルとの距離が過大となり、この問題を解決するには極めて特殊な形状のデザインを採用する必要があった。また、受電コイルを調理容器に取り付ける場合には、利用者において調理材料に応じた自由な調理容器の使用が制限されるとともに、さらに受電コイルの熱対策が問題となった。
【0025】
他の基本的な問題としては、調理材料の上下両面の焼き上がり加減をバランスさせるのが難しいという問題が指摘された。具体的には、調理容器自体の発熱を受ける調理材料の裏面側が早期に焼け上がってしまいがちなのである。この問題は、上火ヒータの火力を増すことによって解決できるのであるが、受電コイルの能力不足がこの解決策の採用を阻んでいたのである。ただし、上火ヒータが容器蓋内に設置されるという構造上、調理容器自体の発熱に対抗できるような大出力の上火ヒータを使用すると、容器蓋としての取扱い性や安全性に問題が生じることから、この解決策のみに依存することもできないという事情がある。
【0026】
本発明は、IHクッキングヒータ上において、独立の電源に依存することなく無臭無排煙での上下両面焼き物調理を前提とした上で、上記2つの基本的な問題点、すなわち、受電コイルの設置上の制約を排除し十分な出力を確保することにより、大出力の上火ヒータを駆動することができるようにすること、および、上火ヒータの大出力化にも自ずと制約が伴うことから、調理材料の上下両面の焼き上がり加減を自由に設定することができる追加的な方策を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用する。
【0028】
(解決手段1)
本発明IHクッキングヒータ用の上火ヒータユニットは、IHクッキングヒータの誘導加熱コイルとの間における相互誘導作用によって起電力を発揮する受電コイルを内蔵し、上面を調理容器を安定に載置可能に形成してなる非金属製の調理容器台と、裏面側に前記受電コイルに生じた電力によって駆動するラジエントヒータを内蔵し、前記調理容器台上に載置された調理容器を覆う態様で使用する容器蓋とを備え、前記調理容器台上に載置した調理容器内に収容された調理材料を誘導加熱コイルによる調理容器自体の発熱と前記容器蓋内のラジエントヒータからの放射熱とによって上下両面から焼き上げることを可能とするとともに、前記調理容器台の高さを調節することによって上下両面の焼き上がり加減をバランスさせることを可能とし
、さらに、前記調理容器台の中心部に上下方向の貫通孔を形成し、該貫通孔に前記調理容器台上に載置された調理容器の底面からIHクッキングヒータのトッププレートに至る長さの熱伝導性の高い非磁性金属からなる伝熱部材を装填し、該伝熱部材を介してIHクッキングヒータに備えられている温度検出センサを機能させることを特徴とする。
【0029】
上記解決手段1について説明する。上火ヒータユニットは、調理容器台と容器蓋とからなる。調理容器台は、非金属素材からなり、IHクッキングヒータの誘導加熱コイルの電磁的影響を受けないばかりではなく、電磁的影響を与えることもない。この調理容器台には、IHクッキングヒータの誘導加熱コイルとの間における相互誘導作用によって起電力を発揮する受電コイルを内蔵され、調理容器台の上面は、調理容器を安定に載置することができるように形成されている。
【0030】
他方、容器蓋の裏面側には、調理容器台に内蔵された受電コイルの出力によって駆動するラジエントヒータが内蔵されている。したがって、IHクッキングヒータ上に調理容器台を載置し、調理容器台上に任意の調理容器を載せ、調理容器に容器蓋をして使用することにより、調理容器内の調理材料をIHクッキングヒータの誘導加熱コイルによる調理容器自体の発熱と、容器蓋のラジエントヒータからの放射熱とによって上下両面から焼き上げることができる。この際、調理容器台の高さを調節することによってラジエントヒータによる火力を一定としながら調理容器自体の発熱量を加減することができるので、調理材料における上下両面の焼き上がり加減を最適化することができる。
【0031】
なお、上下両面の焼き上がり加減の設定は、本発明の上火ヒータユニットの利用者において実施するようにすることも可能であるが、ここでは、設計者において予め最適化したものを前提としている。したがって、本発明の利用者において調理容器台の高さを調節することを要しない。
また、IHクッキングヒータにおける火力制御は、調理容器がトッププレート上に置かれていることを前提とするセンサ群によって行われている。しかし、本発明の上火ヒータユニットにおいては、使用状態において調理容器とトッププレートとの間に調理容器台が介在することとなる。そこで、調理容器台の中心部に伝熱部材を設け、この伝熱部材を利用して調理容器の熱をトッププレート位置にまで伝達し、IHクッキングヒータに備えられたセンサ群を機能させることによって、異常加熱による通電停止等の制御成果を利用することができる。
【0032】
(解決手段2)
本発明のIHクッキングヒータ用の上火ヒータユニットは、解決手段1に記載の上火ヒータユニットを基本発明として、その容器蓋に、加熱された調理材料から発生する煙および臭気物質を燃焼するための後燃焼触媒部材を付設した排気口を形成し、この後燃焼触媒部材を調理材料とともにラジエントヒータによって加熱することによって活性化することを特徴とする。
【0033】
上記解決手段2について説明する。容器蓋に排気口を形成すると、調理材料から発生した煙や臭気物質は、蒸気に追われて排気口を通過して外部に流出する。この際外部に流出する雰囲気は、排気口に付設され、ラジエントヒータに加熱されて活性化した後燃焼触媒部材の触媒作用によって完全燃焼される。
【0034】
(解決手段3)
本発明のIHクッキングヒータ用の上火ヒータユニットは、解決手段1または解決手段2に記載の上火ヒータユニットを基本発明として、その受電コイルの平面視における外形が、IHクッキングヒータの誘導加熱コイルの平面視における外形に対応する外形に形成されていることを特徴とする。
【0035】
上記解決手段3について説明する。上記解決手段は、受電コイルの効率を向上させることができる受電コイルの外形を示している。導線に電流を流すと導線に対して一定の位置関係を有する磁界が発生する。また、導線に磁界を作用させると導線に電流が流れる。このような可逆的な電磁変換作用の効率は、受電コイルの外形をIHクッキングヒータの誘導加熱コイルの外形に対応する外形とし、受電コイルと誘導加熱コイルとをできるだけ接近させることによって向上させることができるのである。
【0036】
(解決手段4)
本発明のIHクッキングヒータ用の上火ヒータユニットは、上記解決手段1ないし解決手段3のいずれかに記載の上火ヒータユニットを基本発明として、その受電コイルの上面側に、調理容器台上に載置された調理容器からの熱を遮断するための断熱部材が配設されていることを特徴とする。
【0037】
上記解決手段4について説明する。上記解決手段は、調理容器台上に載置され、IHクッキングヒータの誘導加熱コイルによって発熱した調理容器からの放射熱に対する受電コイルの熱対策を示している。調理容器台上の調理容器は、当然に調理容器台に内蔵された受電コイルの上に位置する。したがって、受電コイルの上面側に断熱部材を配置することによって有効な断熱効果が得られるのである。
【発明の効果】
【0041】
本発明のIHクッキングヒータ用の上火ヒータユニットは、受電コイルを内蔵した調理容器台と、ラジエントヒータを内蔵した容器蓋とからなり、調理容器台上にフライパン等の任意の調理容器を載置し、その調理容器に容器蓋をして焼き物調理をすることにより、調理材料を上下両面から焼き上げることができる。この際、受電コイルを調理容器としての制約が存しない調理容器台に内蔵することによって、受電コイルの外形やターン数の制限を排除することができるので、受電コイルによる電磁変換効率を格段に高めることができるとともに、それに伴ってIHクッキングヒータの誘導加熱コイルによる調理容器自体の発熱とバランスさせやすい出力のラジエントヒータの採用が可能であり、調理材料の上下両面間における焼き上がり状態の偏り問題を解消することができる。さらには、調理容器台の高さを調節し、IHクッキングヒータの誘導加熱コイルと調理容器との間隔を変化させることで上下両面の焼き上がり加減をバランスさせることもできる。
【0042】
また、容器蓋に後燃焼触媒部材を付設した排気口を形成し、後燃焼触媒部材を内蔵のラジエントヒータによって活性化しながら使用するものは、調理材料から発生する煙や臭気物質を後燃焼触媒部材によって完全燃焼させながら焼き物調理をすることができるので、上記、本発明の効果を無煙無臭下において享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の上火ヒータユニットの実施の形態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の上火ヒータユニットの使用状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面を引用しながら本発明のIHクッキングヒータ用の上火ヒータユニットの実施の形態について説明する。
【0045】
上火ヒータユニットは、電源としての機能を分担する調理容器台50と、熱源としての機能を分担する容器蓋60とからなる(
図1)。
【0046】
調理容器台50は、耐熱性に優れたシリコーン樹脂材料から一体成形されたベース台51を備え、必要な機構部材を全てベース台51に組み付ける構成を採用している。ベース台51の概略的形状は、中抜した円柱状部材に5角形の
周枠5Aを一体化したような形状である。ベース台51は、IHクッキングヒータのトッププレートTP上に滑動するおそれなく安定に載置することができる。ベース台51の中心部には、上下方向の貫通孔5Hが形成されている。周枠5Aには、全体として5徳として機能する5本の支脚5B…が放射状に配置され、ベース台51上にフライパン等の調理容器10を安定に載置することができる(
図1,
図2)。
【0047】
調理容器台50に組み込まれる主な部材は、受電コイルL2と伝熱部材52である。受電コイルL2は、円環状に密巻きされ、ベース台51の中抜きした部分に落とし込む態様でセットされている。セットされた受電コイルL2の上面側は断熱部材5Dによって保護され、受電コイルL2から5徳の支脚5B…までの空間は、断熱部材5Dおよび断熱空間の併用による断熱層5Sとされている。これによって、調理容器台50上に載置された調理容器10からの輻射熱を遮断することができる。
【0048】
なお、ベース台51のサイズは、平面視においてIHクッキングヒータの加熱誘導コイルL1に対応する平面形状の受電コイルL2をその平面形状のまま収納することができるサイズに設定されている。また、ベース台51の高さは、その上に載置された調理容器10のIHクッキングヒータによる発熱量と、その上火ヒータユニットに使用されるラジエントヒータ62の発熱量とがバランスする高さに設定されている。
【0049】
伝熱部材52は、例えば、アルミニウム合金や銅のような熱伝導性の高い非磁性金属からなる。伝熱部材52は、調理容器台50に載置された調理容器10の底面11からIHクッキングヒータのトッププレートTPに至る長さを有する丸棒状に形成され、ベース台51の中心部に形成された貫通孔5Hに装填されている。
【0050】
なお、伝熱部材52の基部には、一定のストローク範囲で伝熱部材52を上方に付勢するスプリング5Eが組み込まれ、伝熱部材52と調理容器10の底面11との密着性が確保されるようになっている。この伝熱部材52によってトッププレートTPレベルにまで調理容器10の熱を伝えることで、IHクッキングヒータに内蔵された各種センサを機能させることができる。
【0051】
調理容器台10におけるベース台51の側面部には、内蔵された受電コイルL2の出力を外部に取り出すためのコンセント53が設けられている。
【0052】
本発明の上火ヒータユニットを構成する容器蓋60は、蓋面61の裏面側にラジエントヒータ62を内蔵し、蓋面61の中央位置に配置される排気口6Hに後燃焼触媒部材63を付設してなる。
【0053】
容器蓋60の蓋面61は、裏面側を鏡面仕上げしたステンレス系の素材のプレス加工部材であり、調理材料Fに向けて熱線を効率よく反射することができる。容器蓋60は、調理容器10の規格に応じたサイズに設定され、調理容器10を覆う態様で使用することができる。
【0054】
容器蓋60の排気口6Hに付設される後燃焼触媒部材63は、セル孔構造のセラミックス基体に酸化パラジウム系の触媒剤を担持させてなる酸化促進用の触媒であり、排気口6H内に嵌め込む態様で取り付けられている。また、ラジエントヒータ62には、シーズヒータが採用され、ステー6A,6Aを介して
蓋面61の裏面との間に適切な間隔を維持して取り付けられている。なお、蓋面61には、末端部にラジエントヒータ62用のソケット6Sを設けた持ち手64が取り付けられている。また、持ち手64には、手元スイッチ6Tが備えられている。
【0055】
本発明の上火ヒータユニットは、調理容器台50と容器蓋60とを専用の接続コードCD接続し、調理容器台50をIHクッキングヒータの加熱誘導コイルL1の中心部にセットし、調理容器台50上にフライパン等の調理容器10を載せて使用する。この状態において、調理容器台50内の受電コイルL2とIHクッキングヒータの加熱誘導コイルL1とが上下に対応する位置関係となり、受電コイルL2の電磁変換効率が最も良くなるからである。
【0056】
本発明の上火ヒータユニットの使用によって、IHクッキングヒータ上において無煙無臭での上下両面焼きが実現される。調理容器10内の調理材料Fから発生する煙や臭気物質は、排気口6Hから排出される際にラジエントヒータ62に熱せられて活性化した後燃焼触媒部材63によって完全燃焼されるからである。
【0057】
なお、上記実施の形態における調理容器台50のベース台51の材質等は例示であり、例えば、珪藻土等の粘土質材料やセラミックス系の素材によるベース台51とすることも可能である。また、ラジエントヒータ62についても、例えば、セラミックス管入りの遠赤外線ヒータ、その他任意のヒータを用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
TP トッププレート
L1 加熱誘導コイル
L1 受電コイル
10 調理容器
50 調理容器台
5H 貫通孔
52 伝熱部材
60 容器蓋
6H 排気口
6S 断熱層
62 ラジエントヒータ
63 後燃焼触媒部材