(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明である水質改善装置の一実施形態を
図1ないし
図4に基づいて説明する。
図2において
1は海洋の一部である内海で、そこには都市部を経由してきた河川水が流れ込んで、上記のように表層水域2は溶存酸素濃度が高く底層水域4は溶存酸素濃度が低い酸欠状態とされて酸素の補給が必要な状況になっている。これら表層水域2・中層水域3・底層水域4は成層化されて中層水域3より下側の底層水域4を含む水域は窪地状をなしている。窪地状でない開放状水域であっても水質改善の対象に含まれる。5は窪地の海底である。表層水域2には沖合からの
表層波15が矢印A方向に進行してきている。海底5の水深はここでは20m前後とされており、酸欠状態は水深15〜20mの場合にその底層水域4において発生する。
水質改善装置は、金属や樹脂などを目的に応じて用いることで作製されるが、こうした海洋領域を対象として上部が浮上設置されて表層波を取り込むようにされる一方下部が底層水域4へと放流のため臨むようにして設置されている。
【0010】
水質改善装置は、装置上部として表層波取込タンク8を備える。
表層波取込タンク8は、12角形の角筒型をしてその筒中心軸を縦(垂直)向きにして設けられるとともに、その上面は作業台9とされてその周りには乗降可能な
開口を残すようにして安全手摺11が設けられている。
作業台9の上には吊掛け具10が設けられていて、自力移動式などの海上クレーン(図示省略)からのワイヤーフックに吊り掛けられて装置全体を矢印方向に持ち上げて海上移送したり水質改善の目的海上において降ろしてまた
図2のような浮上設置状態に戻すことができるようになっている。
【0011】
表層波取込タンク8の本体部分は図示した12角形やその他の8角形や16角形などに形成したりあるいは簡単な円筒型に形成することができる。この
表層波取込タンク8の周面には、例えば、12角形では12か所の表層波取込口12が
図4のような矩形開口としてかつ上下略中段高さにあるようにして開けられており、この表層波取込口12の内周側には、ヒンジ13により上端が支持された逆止弁14がぶら下げ式に取り付けられ、この逆止弁14は、表層波15により内向きには開かれるが取り込まれた水による外向きの力によっては開かないようになっている。従って、
図1の矢印Aに対応する3つの逆止弁14は
図2の左側に示すように表層波15により内向きに開いて表層波取込口12を通じて海水を取り込むようにするが、それ以外の逆止弁14は
図2の右側に示すように閉じたままになっているので、取り込まれた海水によっては開かず一旦取り込まれた海水を内部保留してゆくように機能するものである。尚、逆止弁14は、樹脂のような軽量弁にして開閉しやすくする。
【0012】
表層波取込タンク8の下部は円錐コーン状に形成されて取り込まれた海水17が下部中央に下向きに突設した円筒状タンクパイプ18の方向へ流れ出しやすくしてある。表層波取込タンク8の下部底面にはフロート(高さ調節手段の一つ)20が脱着可能に取り付けられている。このフロート20は、周方向に分割型で個別的に脱着可能とすることで浮力を段階的に増減調節できるようになっている。この増減調節作業は海上クレーンによる装置の吊上げにより行える。
【0013】
表層波取込タンク8の外周12か所には、表層波掬いガイド22が設けられている。この表層波掬いガイド22は、
図4に示すように、表層波取込口12と略同じ幅をもちやや湾曲したスロープ板でなってその基部が表層波取込口12の下端縁に略対応する高さとされる一方表層波15の進行してくる前方側は下がり傾斜して水中に位置するようにしてある。表層波掬いガイド22は、その基部に垂下した案内板23を備えていて、表層波取込タンク8の外周面に取り付けた左右一対のガイドレール24に案内板23を添わせて昇降できるようにしてあるとともに、作業台9上でネジ調整具25を回し昇降ロッド25を上下調節することにより表層波取込口12の下端縁高さに表層波掬いガイド22の基部高さを合致させるようになっている。場合によって、表層波掬いガイド22を独自に表層波取込口12の下端縁よりも下げたりあるいは引上げたりすることができることは勿論である。
【0014】
28は調整ウエイト(高さ調節手段の一つ)で、作業台9の中心点に対して同心状の配置となるようにして設けられた止着具29に重ね止めできるようにしてある。このウエイト28は、作業台9上の作業員による脱着作業によって装置としてのバランスを保ちながら大小に変更することができ、これにより、フロート20による浮力が一定の元でウエイト28の量を加減してゆくことで、あるいはフロート20およびウエイト28の双方の設置量を加減してゆくことで、表層波取込口12の下端縁高さを表層波15の呑み込み得る好適な高さ関係に調節して、
図2に例示するように表層波15が表層波掬いガイド22上で次第に掬い上げられながらやや高めの波高に制御されて表層波取込口12内から逆止弁14を開けてタンク8内に取り込まれ得るようにすることができる。
【0015】
尚、表層波掬いガイド22は、
図4に示すように、基部側から前方へと下がりながら上向きに凹状に多少湾曲していて表層波15を滑らかに掬い上げるようにしてあるが、直板状のスロープ板にしてもよい。
表層波掬いガイド22の左右両側にはガイド22上の表層波15が側方へ逃げず高い状態を維持させながら表層波取込口12内へと誘引させるようにする規制板32を一体立ち上げ状にして対向配置してもよい。
表層波掬いガイド22は、
図4に仮想線で示すように、基部側に対する前方側が幅広状で基部側が幅狭状をしたスロープ板で形成されるとともに、その表層波掬いガイド22の左右両側にはガイド22上にくる表層波15を幅寄せしながら波高傾向にして表層波取込口12へと確実に導く波寄せ板33を立設してもよい。この
図4の波寄せ板33付き表層波掬いガイド22の実施形態は、
図6および
図7に示すようになる。この場合、波寄せ板33は左右に一対ずつあることで隣り合うもの同士は
図6のように重複型となるが、それを省略型とするため、
図8に示すように隣り合う間の波寄せ板33は統合した1枚ものにしてもよい。
一方、前記逆止弁14は、表層波取込口12の開口下縁高さが取込水面よりも常に高くなるようにして
表層波取込タンク外に排出されないように設定すれば、設ける必要がない。
【0016】
表層波取込タンク8内には次第に表層波15による海水が溜まってゆきその高さが海面よりも常に高く保たれることによりその水頭差により
図2に示すような下降流Bが発生するようになる。
前記タンクパイプ18には、装置下部としての下降流案内管35が外嵌式でガイドパッキン36を介して円滑に昇降し得るように設けられている。この下降流案内管35は金属や樹脂管により長い円筒で形成され、タンクパイプ18とは互いのストッパ37を介して抜け落ちないようにしてあるとともに、下端には四方十字パイプ状をした放流管38が設けられてその末端に放流口39を開口してある。放流口39は、下降流Bを海底5に平行な方向あるいはやや上向きに放流するようになっている。下降流案内管35内から放流口39に至る経路には作業台9上から制御操作できるような絞りバルブ41を設けて
表層波取込タンク8内の海水17高さが常に前記水頭差をもつように構成することができる。42は下部ウエイトで、放流管38の底面に取り付けられて下降流案内管35の下端が海底まで届くようにする。
【0017】
尚、43は装置を係留するとともに表層波取込口12の向きを表層波15の進行してくる方向Aに対向させるようにするアンカー(方向規定手段)であり、図示しないウインチで巻き上げ・繰出しが可能になっている。
図2ではアンカー43はリンクチェーンなどのアンカー線条のみが図示されているが、下端にはウエイトや錨などの定着体が設けられている。アンカー43は下部ウエイト42がある場合には省略することもできる。
前記水質改善装置は、表層波取込口12の開口下縁が海面レベル(表層水域2の表面あるいは表層波15の波谷間平均高さ)よりも例えば、10〜50cm高くなるようにして試験設定されたあと、海上クレーンによる移動後、閉鎖性水域へと持ち込まれ、そこで吊り降ろして浮上設置される。前記表層波取込口12の高さ調節は、高さ調節手段20,28を調節することによりなされる。また、表層波掬いガイド22の高さも昇降ロッド26を調節することで上下でき表層波15を掬い上げる好ましい高さまで調節される。
【0018】
水質改善装置が閉鎖性水域上に持ち込まれて浮上設置されると、下降流案内管35はそのものの重さや下部ウエイト42の重さにより自動的に延びて、その下部の放流口39は海底5上に対応するようにされる。下部ウエイト42により表層波取込タンク8の向きは適当な方向に設定されるが、この実施形態では、逆止弁14付き表層波取込口12が周方向に多数開設されているので、そのままでそのうちの一つ12が表層波15の進行方向Aに対向し得る便利なものとなっている。従って、表層波15側の例えば、3つの表層波取込口12がAの方向に対応していたとすると、表層波15は表層波掬いガイド22に添って掬い上げられて波高状になって逆止弁14を開きながら表層波取込口12を通じてタンク8内に取り込まれることになる。
【0019】
取り込まれた海水17は、外部海面との水頭差が常に発生することにより矢印Bのように下降流案内管35内を通じて流下し放流口39を通じて海底5上を矢印Cのように放出されてゆく。その放出流Cは密度が小さいものであり、それらが密度が大きく酸欠状態の底層水域4に放出されると浮力を発生して周辺海水を巻き込み(連行し)ながら流量を増して上昇してゆき、密度が同程度となる中層水域3の層レベルまで達すると今度は横方向の強い流れとして流出してゆくことになる。これにより、第1上昇流Dが発生するとともに中層水域3から底層水域4への循環流により循環撹拌流が発生することで酸欠状態が解消される。そのとき、第1上昇流Dには中層放流口45を通じて下降流の一部を矢印Eのように放出するようにしておけば、
図2のように第2上昇流Fが発生し、この流れが前記第1上昇流Dを連行する流れとなって表層水域2へと誘導され、その結果、大きな循環流が発生して酸欠状態を解消することができるようになる。46は分流ガイドである。
図2の右側(手前および向う側も含む)の放流口39からも同様の第1上昇流Dが発生して矢印Eの流れと合流化して第2上昇流Fを発生する。
【0020】
尚、下降流案内管35の下部35aは、
図3に示すように、蛇腹などのフレキシブルタイプにして深さ追従性が高まるようにしてもよい。
また、表層波取込口12は、同じ寸法形状をした矩形口のものが
表層波取込タンク12の周面に複数並べられているが、
図5にその展開図を示すように、幅と下端高さは同じであるが高さの異なる3種の口、すなわち、低波口12A・中波口12B・高波口12Cを適宜に配列し低波弁14A・中波弁14B・高波弁14Cのようにそれぞれに配置したものを構成して低波のときには低波口12Aのみから、また中波のときには低波口12Aと中波口12Bから、高波のときにはすべての口12A〜12Cを通じて表層波が誘引されるように構成してもよい。これによれば、表層波がある程度高い波でないと逆止弁が重くて開かないという問題を大中小の段階的な逆止弁付き口の構成により低波の段階から中波の段階へと確実に作動し得る機構とすることができる。
下部ウエイト42は、下降流案内管35が自重でウエイトの役目を果たす場合には省略することができる。
【0021】
図9および
図10は水質改善装置についての他の実施形態を示し、
図11および
図12はその一部取出説明図である。
図10において
1は内海、2は表層水域、3は中層水域、4は底層水域で、これら水域2,3,4は成層化されるとともに中層水域3より下側の底層水域4を含む水域は窪地状をなしている。窪地状でない開放状水域であっても水質改善の対象に含まれる。5は窪地の海底である。表層水域2には沖合からの
表層波15が矢印A方向に進行してきている。海底5の水深は満潮状態の水深でここでは20m前後とされており、酸欠状態は水深15〜20mの場合にその底層水域4において発生する。
水質改善装置は、金属や樹脂などを目的に応じて用いることで作製されるが、こうした海洋領域を対象として上部が浮上設置されて表層波を取り込むようにされる一方下部が底層水域4へと放流のため臨むようにして設置されている。
【0022】
水質改善装置は、装置上部として表層波取込タンク8を備える。
表層波取込タンク8は、12角形の角筒型をしてその筒中心軸を縦(垂直)向きにして設けられるとともに、その上面は作業台9とされてその周りには乗降口を残すようにして安全手摺11が設けられている。この手摺11は強度のある周枠体で、自力移動式などの海上クレーン(図示省略)から降ろされるワイヤーフックに吊り掛けられて装置全体を吊り上げて海上移送したり水質改善の目的海上に移動後に降ろしてまた
図10のような浮上設置状態に戻すことができるようになっている。
【0023】
表層波取込タンク8の12角形の各面には、
図11のように、中段に
横桟を残した形で上下2段に分かれた矩形表層波取込口12,12が配置され、この表層波取込口12,12の内周側上下には、樹脂などによる軽量質の逆止弁14,14がヒンジ13によりぶら下げ支持されている。
図9の矢印Aである表層波15に対応する3つの逆止弁14は
図10のように表層波15により内向きに開いて海水を表層波取込口12を通じて取り込むようにするが、それ以外の逆止弁14は
図10の右部に示すように閉じたままになるので、取り込まれた海水を次々と内部貯留してゆくようになっている。尚、逆止弁14は、上下1枚ものの背の高い板弁にしておくと波が低くても高くても重くて開閉作動しにくいものになるが、この実施形態のように上下に分けておくことで特に低い波のときも高い波のときも開閉作動が軽快に行われて確実に海水を取り込み得るようになる。9aはタンク8内の空間を抜くための空気抜き孔である。
【0024】
表層波取込タンク8の下部は円錐コーン状に形成されていて、
表層波取込タンク8内に取り込まれた海水17が
表層波取込タンク8下部中央に下向きに突設した円筒状タンクパイプ18の方向へ流れ込みやすくしてある。表層波取込タンク8の下部底面にはフロート(高さ調節手段の一つ)20が脱着可能に取り付けられている。このフロート20は、周方向に分割型で個別的に脱着可能とすることで浮力を段階的に増減調節できるようになっている。この増減調節作業は海上クレーンによる装置の吊上げにより行える。フロート20には、
表層波取込タンク8上から操作可能な開閉弁を備えておいてその操作により海水を取り入れて浮上高さを下げたりあるいは空気導入により浮上高さを上げたりすることができるようにしてもよい。
【0025】
表層波取込タンク8の外周12か所には、金属あるいは樹脂製の表層波掬いガイド22が設けられている。この表層波掬いガイド22は、
図9に示すように、基部が表層波取込口12と略同じ幅をもち前方が外方へ幅広状とされたやや湾曲状のスロープ板でなり、その基部が表層波取込口12の下端縁に略対応して表層波15の少し水中内に位置するような高さとされる一方前方側は表層波15の進行してくる側に下がり傾斜して表層波15の数10cm〜1m程度水中に深く位置するようにしてある。表層波掬いガイド22は、その基部に垂下した案内板23を備えていて、表層波取込タンク8の外周面に取り付けた左右一対のガイドレール24(
図4参照)に案内板23を添わせて昇降できるようにしてあるとともに、作業台9上でネジ調整具25を回し昇降ロッド25を上下調節することにより表層波取込口12の下端縁高さに表層波掬いガイド22の基部高さを合致させ得るようになっている。場合によって、表層波掬いガイド22を独自に表層波取込口12の下端縁よりも下げたりあるいは引上げたりすることができることは勿論である。33は波寄せ板で、
表層波取込タンク8の中心から放射状をなす線上に対応して表層波掬いガイド22の両側に立ち上がるようにして設けられている。両波寄せ板33は、表層波掬いガイド22上に添ってせり上がってくる表層波15をさらに横サイドから幅寄せしながら波高さ盛り上げるとともに速度も速くなるように制御する板である。
【0026】
28は調整ウエイト(高さ調節手段の一つ)で、作業台9の中心点に対してバランスの良い同心状となるようにして配置された止着具29によって挿脱可能に重ね止めできるようにしてあり、各点で数量変更可能になっている。
【0027】
タンクパイプ18は、上部の1本ものの基部パイプ18aと複数本(4本)の分岐パイプ18bとからなり、各分岐パイプ18bには、海水と同程度の比重でフレキシブル樹脂タイプの下降流案内管35がその上端で挿し込まれて締付具50で固定されている。各下降流案内管35は、その下端が
表層波取込タンク8の中心下方位置を中心に放射方向に広がるように弓なり状に形成されている。その形は、
図12にも示すように、直径が1〜3mの軽量樹脂パイプ製保持リング52により規定され、このリング52は、各下降流案内管35の略中段高さ周りに装着された取付環53の内側突片に通されて水平連結リングとされることで下降流案内管35の下端をぶら下がった自然状態で3ないし5mの水平円軌道上にくるように規定する。下降流案内管35の下端には放流管38が装着され、その先端には放流口39…が形成されて下降流案内管35からの流れを海底5に対し大きな角度で放出するのでなくできるだけ小さく寝かせた角度をもって放出できるようにしてある。
【0028】
42は海底への定着体である中央ライン上の下部ウエイトで、装置中心を通るリンクチェーン等のアンカー線条43の下端に取り付けられ、アンカー線条43は、作業台9上のウインチ54により巻き上げと繰り出しが可能になっている。アンカー線条43の上部は、作業台9の空気抜き9aからタンク8の下端に取り付けられた上部通しパイプ55内を通り、中段やや下側は保持リング52の十字受け56に設けた下部通しパイプ57に通されて上下動が安定して案内されるようになっている。下降流案内管35の各下端には、リンク状の周位アンカー線条58と周位ウエイト59をそれぞれ配備することがある。
【0029】
尚、分岐パイプ18bは、
図13に示すように、短目で1〜3mあるいは長目で5m〜10mのように延長型にしてこのパイプ18bに下降流案内管35を上下調節可能なように締め付け固定するようにしておけば、下降流案内管35の下端高さを海底深さに合わせたより広い対応が可能となる。
また、下降流案内管35を弓なりに規定するには、
図10のように保持リング52により可能であるが、それ以外の方法として、
図14に示すように、下降流案内管35の長手方向に複数装着した掛け具61にワイヤーやチェーンなどの牽張材62を引張可能に装備して弓なりを得るようにしてもよい。この弓なりにする方法により共通の下降流案内管35を使用して弓なりの程度を調節することによって水深が多少変わっても調節のみでそれに十分対応できる。63は張緩ウインチである。
図14による方法と
図10の右側に示す方法および
図13による方法のいずれか2者あるいは3者を組み合わせて長さ調節可能に構成することもある。
【0030】
図9および10における65は超音波水位計で計測値を陸上へ発信する機能をもつ。この水位計65に付属する計測カバーパイプ66は作業台9の略中央に通されて下端開口が取り込まれた海水17内に臨んでその中の海水面レベルを標準水面との関係においてその増減を計測できるようになっているが、ここでは、海水17内に没するようにパイプ66が臨むことで乱れのない状態の介して海水面を捉えて計測することができるし、さらに、パイプ66の下端内にメッシュなど波消制御材67を1枚あるいは上下複数枚張っておくと波立ちが殆どなくなった静穩な海水面を対象にして一層精度良く取込水面を計測することができるようになっている。この取込水面の計測値は放流口39からの放流量(循環水量)推測値として捉えられ、従って、取込水面の計測データと後日実施される当該海域での酸素濃度実測値とを関連データとして得ることによって、取込水量の制御を如何にすればより効果的な酸欠改善ができるかを決定することができるようになるかの基礎資料を得ることができる。68はバッテリで、水位計65の電源とされ、計測値を陸上へと発信したりするのに使用される。
【0031】
水質改善装置を浮上設置する目的個所の最大水深(満潮時の水位)は海図に表示された最大干潮時の水深表示に干満差をプラスした値(変動性はある)かあるいは現地での超音波などによる実測値により決定される。水質改善装置が満潮時の海上に浮上設置された場合に、放流口39が海底5の少し上方に対応位置するような関係となるような長さの下降流案内管35を選択し装着するのが放流効率上好ましい。準備完了した水質改善装置は、安全手摺11にフック掛けすることで海上クレーンで吊掛移動して目的とする海上まで運ばれ、降ろされて浮上設置される。海上に降ろされる途中の下降流案内管35は保持リング52によりたこ足のように広がった状態にあるが、只、下降流案内管35は、
図10に示すような足が大きく拡がった状態でなくやや狭まった状態にあり、下降して4個の周ウエイト59…が海底5に辿り着いて
表層波取込タンク8が完全に海上に浮上を終えた状態においては、先に海底5に着いた周ウエイト59を固定体とし周アンカー線条58が支えとなって下降流案内管35を持ち上げる形になって放流口39を
図10のように海底5の面にやや平行状に放出する向きに制御する。
【0032】
海上クレーンによる移動後、閉鎖性水域へと持ち込まれてそこで吊り降ろされて浮上設置された水質改善装置は、表層波取込口12の開口下縁が満潮時の海面レベル(表層水域2の表面あるいは表層波15の波谷間平均高さ)2aよりも例えば、10〜50cm程度高くなるように設定される。これは
表層波取込タンク8などの装置重量とフロート20による主浮力(装置に発生する浮力も加味)および調整ウエイト28の下げ力など装置すべてに働く上下作用力のバランスの上に計算される。そのうえで、
図10のような満潮時における装置では、表層波取込口12が低い波である表層波15を呑み込むに十分な高さに設定されるが、その高さが相互的に適切でない場合、高さ調節手段20,28が調節制御される。また、表層波掬いガイド22の高さも昇降ロッド26を調節することで上下でき表層波15を掬い上げる好ましい高さまで調節される。
【0033】
水質改善装置が閉鎖性水域上に持ち込まれて浮上設置されると、作業台9上に乗り込んだ作業員によるウインチ54の操作によりアンカー線条43が繰出されることにより下部ウエイト42が海底5に達するようにされ、これにより、装置全体はアンカーを得て潮の干満に拘らず流されることなく略停止して表層波15を受ける態勢となる。また、たこ足のように広がった
下降流案内管35は、先に海底5上に到達してリンク状周アンカー線条58により突き上げられることでさらに広がり状になってその先端の
放流口39が
図10のように海底5に平行流を放出するような向きに制御される。これらにより自ずと表層波15に対向する表層波取込口12の位置関係が決まる。この実施形態では、逆止弁14付き表層波取込口12が周方向に多数開設されているので、
図9のように表層波15側に例えば、3つの表層波取込口12が対向することになる。表層波15は表層波掬いガイド22に添って掬い上げられて低い波であっても波高状になって逆止弁14を開きながら表層波取込口12を通じて
表層波取込タンク8内に取り込まれることになる。ここで、表層波取込口12は上下に分けられそれぞれに逆止弁14を設けてなるので、低い波でも高い波であっても軽快に弁を開いて水の取り込みが行われるようになる。
【0034】
取り込まれた海水17は、外部海面との水頭差が常に発生することにより矢印Bのように複数本の下降流案内管35内を通じて流下し放流口39を通じて海底5上を矢印Cのように放出されてゆく。その放出流Cは密度が小さいものであり、それらが密度が大きく酸欠状態の底層水域4に放出されると浮力を発生して周辺海水を巻き込み(連行し)ながら流量を増して上昇してゆき、密度が同程度となる中層水域3の層レベルまで達すると今度は横方向の強い流れとして流出してゆくことになる。これにより、第1上昇流Dが発生するとともに中層水域3から底層水域4への循環流により循環撹拌流が発生することで酸欠状態が解消される。
下降流案内管35の途中にT字形の中層放流具69を接続して中層流Eを放出するようにしておけば、
図10のように第2上昇流Fが発生し、この流れが前記第1上昇流Dを連行する流れとなって表層水域2へと誘導され、その結果、大きな循環流が発生して酸欠状態を解消することができるようになる。下降流案内管35はそれら複数本を捩ってその形を保持するようにして捩れたたこ足型を形成することもできる。
下降流案内管35は、
図10の方式では海底深さに合わせて1本取り換え方式で対応するようにしてあるが、同
図10の右側に示すように、下降流案内管35を上下に分けておきその間を接続パイプaにより長さ調節することにより海底深さに対応した長いあるいは短い下降流案内管35を提供できるようにすることもできる。この場合、締付具50を使用する。
【0035】
図15ないし
図17は水質改善装置についての他の実施形態を示している。70は表層波取込タンクで八角形をした筒型でその上面が作業台71で8面の周面のうちの1面にのみ矩形の表層波取込口72を形成し左右2枚組の逆止弁73を設けてある。この1面が波側に向くという意味でここで前面とされている。逆止弁73は1枚にしたりもしくは省略してもよい。74はフロート、75は調整ウエイトで、これらは装置全体の高さ調節手段を構成する。77は前面から前方へ張り出したスロープ状の表層波掬いガイドで、基部のヒンジ78を前面に平行に介して上下動可能とされ、作業台71からの延長台80との間に設けた昇降具81を介して角度調節可能とされている。
【0036】
表層波掬いガイド77は、
表層波取込タンク70側となる基部側に対する波押し寄せ側である前方側が幅広状で基部側が幅狭状をしたスロープ板で形成されるとともに、その両側には表層波82の誘引幅を狭めながら次第に高く制御するための波寄せ板83が立設されている。84は引掛け具で、前後に設けられており、その引掛け具84に牽き船(図示省略)からのワイヤーフックが掛けられて自由な方向に曳航されるようになっている。延長台80には、アンカーウインチ86が設けられ、この
アンカーウインチ86に巻かれたアンカー(方向規定手段の一つ)87は表層波掬いガイド77に設けたガイドローラー88を介して
巻き上げ・繰出し可能になっている。90はタンクパイプで、その下部にはフレキシブルな下降流案内管91がフランジ接合されている。下降流案内管91の下端には
図17のように上からみて二股型の放流管(方向規定手段の一つ)92が接続されていてその末端の放流口93が海底5上において2本の放流を行うようになっている。95は引上げウインチで、作業台71上に設けられ、その
引上げウインチ95から繰出された吊線材96が放流管92上に掛けられている。この吊線材96は、
表層波取込タンク70内を通る通しパイプ97内を経由し、
引上げウインチ95が巻き上げ操作されると下降流案内管91が海底5より持ち上がるので、牽き船による次の目的地への移動が可能になり、到着した目的地で
引上げウインチ95を繰り出し操作することで放流管92が海底5まで下げ降ろされて放流のための準備ができることになる。
【0037】
水質改善装置が下降流案内管91を持ち上げた状態で成層化水域まで移動されそのあと下降流案内管91を
図16のように下げ降ろすとともに表層波82の前方となる側にアンカー87を投入して待機する。装置はアンカー87と波寄せ力とによって表層波82に対して前記前面(表層波取込口72のある側)が対向する関係に制御される。その際、放流管92が二股型で海底に載り掛る力が下降流案内管91およびタンクパイプ90の軸周りに作用することにより装置の前面が表層波82の押し寄せてくる向きAに対向するようにする。ここで、方向規定手段はアンカー87と放流管92の両方で構成されているが、いずれか一方のみで構成してもよい。このようにすれば前面にのみ表層波取込口72および逆止弁73を設ければ済むので装置が簡単になる。放流管92にはウエイトを付して海底5に二股部分が平行に規定されるようにしてもよい。
【0038】
表層波82は、表層波掬いガイド77に添って掬い上げられるとともに波寄せ板83で窄められるので波高状になって逆止弁73を開きながら表層波取込口72を通じて
表層波取込タンク70内へと確実に取り込まれることになる。取り込まれた海水99は、外部海面との間で水頭差による圧力が常時発生することにより矢印Bのように下降流案内管91内を通じて溶存酸素濃度が高く密度が低い海水が流下し放流口93を通じて海底5上に矢印Cのように放出されてゆく。その放出流Cは密度が小さいものであり、それらが密度が大きく酸欠状態の底層水域4に放出されると浮力を発生して周辺海水を巻き込み(連行し)ながら流量を増して上昇してゆき、密度が同程度となる中層水域3の層レベルまで達すると今度は横方向の強い流れとして流出してゆくことになる。これにより、第1上昇流Dが発生するとともに中層水域3から底層水域4への循環流により循環撹拌流が発生することで酸欠状態が解消される。そのとき、第1上昇流Dには中層放流口101を通じて下降流の一部を矢印Eのように放出するようにしておけば、
図16のように第2上昇流Fが発生し、この流れが前記第1上昇流Dを連行する流れとなって表層水域2へと誘導され、その結果、大きな循環流が発生して酸欠状態を解消することができるようになる。
前記下降流案内管91は下部が単一本状になっていたが、
図16に仮想線で示すように前後に二股状にあるいはさらに四方分岐状に併設してもよい。
【0039】
図18は四角形の筒型にした表層波取込口70を示し、
図19は六角形の筒型にした表層波取込口70を示す。
図20は、
図15ないし
図19に示す実施形態においてその波寄せ板83を前方からみて逆ハの字状に配したもので、右欄のように各波寄せ板83が外向きに湾曲して開くように形成してもよく、これらの場合、表層波82の波寄せおよび高波化が円滑になされるようになる。
【解決手段】溶存酸素濃度の高い表層水域2の海水を、底層水域4へと誘導するように構成された水質改善装置であって、表層波取込口12が開けられるとともに、下部には下向きに連通状をなして伸びるタンクパイプ18を備えた表層波取込タンク8と、表層波Aの取込みを可能とすべく、表層波取込口12の開口下縁の高さを調節可能とする高さ調節手段と、表層波取込口12の開口下縁高さに基部を対応させるべく表層波取込タンク8外周に表層波Aの押し寄せる方向に張り出して設けられた表層波掬いガイド22と、上部がタンクパイプ18に連通して接続される一方、下部が下向きに伸び、底層水域4に向けて表層波取込タンク内8からの取込水を放出すべく放流口39を開口した下降流案内管35を備える水質改善装置。