特許第5884413号(P5884413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横浜ゴム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5884413-空気入りタイヤ 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5884413
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 1/00 20060101AFI20160301BHJP
   B60C 9/04 20060101ALI20160301BHJP
   B60C 15/00 20060101ALI20160301BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20160301BHJP
   C08K 5/45 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
   B60C1/00 C
   B60C9/04 D
   B60C15/00 B
   C08L21/00
   C08K5/45
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-243321(P2011-243321)
(22)【出願日】2011年11月7日
(65)【公開番号】特開2013-95403(P2013-95403A)
(43)【公開日】2013年5月20日
【審査請求日】2014年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 宏匡
【審査官】 平野 貴也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−099872(JP,A)
【文献】 特開2004−136839(JP,A)
【文献】 特開2006−315502(JP,A)
【文献】 特開2006−111767(JP,A)
【文献】 特開2005−146076(JP,A)
【文献】 特開2007−045245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00
B60C 9/04
B60C 15/00
C08K 5/45
C08L 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のビード部間に跨るようにカーカス層を装架し、トレッド部における前記カーカス層の外周側に複数のベルト層を配置した空気入りタイヤにおいて、
最大幅を有するベルト層の端部よりも前記ビード部側の領域をタイヤサイド領域とし、該タイヤサイド領域内の前記カーカス層の折り返し端の位置よりタイヤ径方向内側の領域をタイヤサイド下部領域としたとき、前記カーカス層の前記タイヤサイド下部領域に対応する部分のみに下記(1)式で表わされる環状ポリスルフィドを配合したゴム組成物からなるカーカスコートゴムを局所的に用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【化1】
(式中、Rは置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数2〜20のオキシアルキレン基又は芳香族環を含むアルキレン基を示し、nは1〜20の整数であり、xは平均2〜6の数である。)
【請求項2】
前記式(1)におけるR基が−CH2 −CH2 −O−CH2 −O−CH2 −CH2 −であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記カーカスコートゴムが、硫黄加硫可能なゴム100重量部に対して前記式(1)で表わされる環状ポリスルフィドを0.2〜10重量部配合したゴム組成物から構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記カーカス層の折返し端がタイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向内側に位置することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、フラットスポット性を悪化させることなく高速耐久性を向上することを可能にした空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の高性能化を受けて、空気入りタイヤは高速、高荷重の条件で使用される機会が増え、従来の構造のままでは充分な耐久性が得られないことが懸念されている。空気入りタイヤの高速耐久性が不足した場合、カーカス層においてコード破断やセパレーションが発生するが、これらの原因としては、カーカスコートゴム自体の耐熱老化性、屈曲疲労性が充分高くないことや、カーカスコートゴムが長時間加硫されて過加硫になることが挙げられる。そのため、カーカスコートゴムに耐熱劣化性、屈曲疲労性に優れ、過加硫が発生し難い環状ポリスルフィドを配合することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、環状ポリスルフィドを配合したゴム組成物は圧縮永久歪が生じ易くなる傾向があり、このようなゴム組成物を用いた場合にタイヤのフラットスポット性に悪影響を及ぼすという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−099872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述する問題点を解決するもので、フラットスポット性を悪化させることなく高速耐久性を向上することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、左右一対のビード部間に跨るようにカーカス層を装架し、トレッド部における前記カーカス層の外周側に複数のベルト層を配置した空気入りタイヤにおいて、最大幅を有するベルト層の端部よりも前記ビード部側の領域をタイヤサイド領域とし、該タイヤサイド領域内の前記カーカス層の折り返し端の位置よりタイヤ径方向内側の領域をタイヤサイド下部領域としたとき、前記カーカス層の前記タイヤサイド下部領域に対応する部分のみに下記(1)式で表わされる環状ポリスルフィドを配合したゴム組成物からなるカーカスコートゴムを局所的に用いたことを特徴とする。
【化1】
(式中、Rは置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数2〜20のオキシアルキレン基又は芳香族環を含むアルキレン基を示し、nは1〜20の整数であり、xは平均2〜6の数である。)
【発明の効果】
【0007】
本発明は、カーカス層のタイヤサイド領域に対応する部分に上記式(1)で示される環状ポリスルフィドを配合したゴム組成物からなるカーカスコートゴムを用いたので、環状ポリスルフィドの耐屈曲疲労性及び耐熱性が高く、加硫速度を低下することが出来る特性によって、タイヤサイド領域における過加硫を回避すると共に、当該箇所の耐屈曲疲労性及び耐熱性を向上して、タイヤの高速耐久性を向上することが出来る。更に、環状ポリスルフィドを配合したゴム組成物は圧縮永久歪が生じ易く、タイヤのフラットスポット性に悪影響を及ぼす傾向があるが、環状ポリスルフィドを配合したゴム組成物がフラットスポット性への寄与が高いトレッド部を除いたタイヤサイド領域に局所的に用いられるので、フラットスポット性を悪化させることなく上述の優れた高速耐久性を得ることが出来る。
【0008】
本発明においては、前記式(1)におけるR基が−CH2 −CH2 −O−CH2 −O−CH2 −CH2 −であることが好ましい。
【0009】
本発明においては、カーカスコートゴムが、硫黄加硫可能なゴム100重量部に対して前記式(1)で表わされる環状ポリスルフィドを0.2〜10重量部配合したゴム組成物から構成されることが好ましい。このように配合される環状ポリスルフィドの量を特定することで、カーカスコートゴムの粘度を維持して生産性を向上することが出来る。
【0010】
本発明においては、特に、タイヤサイド領域内のカーカス層の折返し端の位置よりもタイヤ径方向内側の領域をタイヤサイド下部領域としておりこのカーカス層のタイヤサイド下部領域に対応する部分のみに前記式(1)で表わされる環状ポリスルフィドを配合したゴム組成物からなるカーカスコートゴムを局所的に用いているので、タイヤサイド領域の中でも特に高速耐久性への寄与が大きい部位に局所的に環状ポリスルフィドを配合したゴム組成物を用いることができ、高速耐久性を向上しながら、環状ポリスルフィドを配合したゴム組成物の使用量を抑えてフラットスポット性を向上することが出来る。
【0011】
このとき、更に、カーカス層の折返し端がタイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向内側に位置することが好ましく、フラットスポット性と高速耐久性とをより高度に両立することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤの子午線半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示す。図1において、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。左右一対のビード部3,3間には1層のカーカス層4が装架され、これらカーカス層4の端部がビードコア5の周りにタイヤ内側から外側に折り返されている。ビードコア5の外周側にはゴムからなる断面三角形状のビードフィラー6が配置されている。トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には、2層のベルト層7がタイヤ全周に亘って配置されている。これらベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。
【0015】
本発明は、このような一般的な空気入りタイヤに適用されるが、その具体的な構造は上述の基本構造に限定されるものではない。
【0016】
本発明の空気入りタイヤにおいては、最大幅を有するベルト層7の端部7aよりビード部3側の領域、即ち上述のサイドウォール部2及びビード部3に相当する領域をタイヤサイド領域Sとする。より具体的には、最大幅を有するベルト層7の端部7aからカーカス層4の内面に対して垂線Lを引き、その垂線Lよりもビード部3側の領域をタイヤサイド領域Sとする。そして、カーカス層4のタイヤサイド領域Sに対応する部分に下記(1)式で表わされる環状ポリスルフィドを配合したゴム組成物からなるカーカスコートゴムを局所的に用いる。
【化2】
(式中、Rは置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数2〜20のオキシアルキレン基又は芳香族環を含むアルキレン基を示し、nは1〜20の整数であり、xは平均2〜6の数である。)
【0017】
上記式(1)で表わされる環状ポリスルフィドは熱可塑性の物質であり、ゴム組成物中で架橋剤として働き、その架橋構造は耐熱老化性に優れ、熱ダレを抑制し、高速耐久性を向上することが出来る。また、この環状ポリスルフィドを配合したゴム組成物は、加硫速度が遅いという特性を有しているため、長時間加硫する場合でも加硫時間に対して加硫度が低く過加硫が抑制されて高速耐久性を向上することが出来る。そのため、上述のようにカーカス層4のタイヤサイド領域Sに対応する部分に環状ポリスルフィドを配合したゴム組成物からなるカーカスコートゴムを用いることで、タイヤサイド領域Sを補強し、高速耐久性を向上することが出来る。更に、上述の環状ポリスルフィドを配合したゴム組成物は圧縮永久歪が生じ易くなり、即ち、セット性が悪化して、フラットスポット性が低下する傾向があるが、フラットスポット性への寄与が高いトレッド部1を除いたタイヤサイド領域Sのみに環状ポリスルフィドを配合したゴム組成物を局所的に用いているので、フラットスポット性を悪化させずに上述の優れた高速耐久性を得ることが出来る。
【0018】
タイヤサイド領域Sに含まれるカーカス層4を構成するカーカスコートゴムに配合される環状ポリスルフィドとしては、上記式(1)で表わされるものであれば、どのようなものを配合しても構わないが、好ましくは、上記式(1)におけるR基が−CH2 −CH2 −O−CH2 −O−CH2 −CH2 −であることが好ましい。
【0019】
尚、カーカス層4のタイヤサイド領域Sに対応する部分以外、即ちトレッド部1に対応する部分については、上述の環状ポリスルフィドを配合したゴム組成物からなるカーカスコートゴムは用いないものとする。環状ポリスルフィドを配合したゴム組成物は、上述のように耐屈曲疲労性及び耐熱性が優れ、更に加硫速度が遅いという特性を有しているので、トレッド部1に対応する部分のカーカス層4のカーカスコートゴムに用いた場合、トレッド部1にも優れた耐屈曲疲労性や耐熱性を付与することが出来るが、その一方でフラットスポット性に対する寄与の高いトレッド部1に圧縮永久歪が生じ易いゴム組成物が配置されることになるのでフラットスポット性が低下する。また、カーカス層4のタイヤサイド領域Sに対応する部分以外に環状ポリスルフィドを配合したゴム組成物からなるカーカスコートゴムを用いた場合、特にカーカス層4全体に環状ポリスルフィドを配合したゴム組成物からなるカーカスコートゴムを用いた場合、カーカス層4全体の加硫速度が低下するため生産性が悪化する。また、環状ポリスルフィドを配合することによるコストが余分に掛かるため製造コストが増大する。
【0020】
本発明においては、カーカス層4のタイヤサイド領域Sに対応する部分のカーカスコートゴムが少なくとも環状ポリスルフィドを含んでいれば上記性能を得ることが出来るが、好ましくは、カーカスコートゴムが硫黄加硫可能なゴム100重量部に対して環状ポリスルフィドを0.2〜10重量部、より好ましくは0.5〜4重量部配合したゴム組成物であると良い。
【0021】
このように環状ポリスルフィドの配合量を規定することで、カーカスコートゴムの粘度を維持して生産性を向上することが出来る。環状ポリスルフィドの配合量が0.2重量部より少ないと、耐屈曲疲労性、耐熱性、加硫速度遅延の効果が少なく、カーカスコートゴムの物性が低下する。環状ポリスルフィドの配合量が10重量部より多いと、ゴムの粘度が下がり過ぎて生産性が悪化する。また、環状ポリスルフィドの配合量が増える程、その分のコストが掛かるため製造コストが増加すると云う問題がある。
【0022】
本発明は、上述のようにカーカス層4のタイヤサイド領域Sに対応する部分のカーカスコートゴムの全体に環状ポリスルフィドを配合するものではなく、タイヤサイド領域Sのうち、カーカス層4の折返し端4eの位置よりもタイヤ径方向内側のタイヤサイド下部領域S’に対応する部分のみに前記式(1)で表わされる環状ポリスルフィドを配合したゴム組成物からなるカーカスコートゴムを局所的に用いる。尚、タイヤサイド下部領域S’とは、カーカス層4の折返し端4eからタイヤ軸方向に引いた線L’よりもタイヤ径方向内側の領域である。
【0023】
このとき、特にカーカス層4の折返し端4eがタイヤ最大幅位置Pよりタイヤ径方向内側に位置することが好ましい。
【0024】
このように、前記式(1)で表わされる環状ポリスルフィドを配合したゴム組成物からなるカーカスコートゴムを用いるカーカス層4の部分を、タイヤサイド領域Sの中のタイヤサイド下部領域S’に対応する部分に限定することで、フラットスポット性と高速耐久性とをより高度に両立することが出来る。即ち、フラットスポット性に悪影響を及ぼす環状ポリスルフィドを配合したゴム組成物の使用量を極力減らしながら、高速耐久性に対する寄与の大きい部位については環状ポリスルフィドを配合したゴム組成物で補強するようにすることで、フラットスポット性の悪化を抑制すると共に優れた高速耐久性を得ることが出来る。
【0025】
本発明は、様々な空気入りタイヤに適用することが出来る。例えば、SUV用タイヤ(特に扁平率が65%以上のホワイトレタータイヤ)であって、速度記号がS以上に分類されるタイヤでは、高速走行時にスタンディングウェーブが起こりタイヤサイド領域Sからコード破断が発生する傾向があるが、上述のように環状ポリスルフィドを配合することにより、タイヤサイド領域Sの耐熱劣化性や屈曲疲労性が向上し、高速耐久性が向上するので、タイヤサイド領域Sにおけるコード破断を効果的に防止することが出来る。また、フラットスポット性についても、従来程度の高いレベルを維持することが出来る。
【0026】
また、扁平率が40%以下、タイヤ断面高さSHが100mm以下、タイヤ内径18インチ以上の超扁平タイヤは、高荷重負荷時にビードフィラー6のタイヤ径方向外端部6a付近でビードフィラー6とカーカス層4とがセパレーションを起こす傾向があるが、上述のように環状ポリスルフィドを配合することにより、タイヤサイド領域Sの屈曲疲労性が向上するので、ビードフィラー6とカーカス層4とのセパレーションを効果的に防止することが出来る。また、フラットスポット性についても、従来程度の高いレベルを維持することが出来る。
【実施例】
【0027】
タイヤサイズ265/70R16の空気入りタイヤにおいて、タイヤ構造を図1とし、環状ポリスルフィド配合の有無、環状ポリスルフィドの配合領域、環状ポリスルフィドの配合量をそれぞれ表1のように異ならせた従来例1、比較例1〜2、参考例1〜5、実施例の9種類の試験タイヤを製作した。
【0028】
尚、全ての試験タイヤにおいて、カーカス層の折返し端位置はタイヤ断面高さの40%とし、タイヤサイド下部領域S’はカーカス層の折返し端位置よりもタイヤ径方向内側の領域とした。
【0029】
これら9種類の試験タイヤについて、下記の評価方法によりフラットスポット性、高速耐久性、生産性を評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0030】
フラットスポット性
試験タイヤをリムサイズ8J×16inchのホイールに組み付けて、空気圧230kPaを充填し、直径1707mmのドラム試験機を用い、JASO C607に準拠してユニフォミティー(RFV)を測定すると共に、ドラム上を速度150km/hにて30分間予備走行させた後、ドラムを停止して荷重(6.37kN)を負荷した状態で1時間放置した。その後、再びユニフォミティー(RFV)を測定し、予備走行前後におけるユニフォミティー(RFV)値の差を評価指標とした。評価結果は、従来例1を100とする指数により示した。この指数値が小さいほどフラットスポット性が優れていることを示す。尚、指数値で105以下であれば許容範囲内である。
【0031】
高速耐久性
試験タイヤをリムサイズ8J×16inchのホイールに組み付けて、空気圧230kPaを充填し、直径1707mmのドラム試験機を用い、JATMA規定の最大負荷荷重の85%に相当する荷重を負荷し、初期速度を170km/hとして10分間走行させ、その後10分毎に速度を10km/hずつ段階的に上昇させた。7段階まで速度を上昇し、最終速度220km/hで10分間走行させた後、規定走行を終了し、コード破断の有無を観測した。評価結果は、規定走行終了後にコード破断が発生していないものを「○」、規定走行終了前に故障が発生したもの及び規定走行流量後にコード破断が発生していたものを「×」として示した。
【0032】
生産性
試験タイヤを製造する際のカーカスコートゴムの混練時間を測定し生産性として評価した。評価結果は、混練時間が従来例1程度のものを「○」、混練時間が従来例1よりも掛かるが実用上問題ない程度のものを「△」として示した。
【0033】
【表1】
【0034】
表1から判るように、参考例1〜5および実施例は、いずれも環状ポリスルフィドを配合していない従来例1に対して、フラットスポット性を維持しながら高速耐久性を向上した。特に、環状ポリスルフィドの配合量を硫黄加硫可能なゴム100重量部に対して10重量部以下にした参考例1〜4および実施例は、環状ポリスルフィドを配合しない従来例1程度の優れた生産性を維持することが出来た。
【0035】
一方、環状ポリスルフィドをカーカス層全域のカーカスコートゴムに配合した比較例1、及び環状ポリスルフィドをトレッド部のカーカス層を構成するカーカスコートゴムに配合した比較例2はフラットスポット性が著しく悪化した。
【符号の説明】
【0036】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
S タイヤサイド領域
S’ タイヤサイド下部領域
P タイヤ最大幅位置
図1