(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5884439
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】車両周辺監視用画像生成装置
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20160301BHJP
B60R 1/00 20060101ALI20160301BHJP
B60R 21/00 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
H04N7/18 J
B60R1/00 A
B60R21/00 626G
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-256530(P2011-256530)
(22)【出願日】2011年11月24日
(65)【公開番号】特開2013-110712(P2013-110712A)
(43)【公開日】2013年6月6日
【審査請求日】2014年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(72)【発明者】
【氏名】武田 聖子
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 一矢
【審査官】
大室 秀明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−140401(JP,A)
【文献】
特開2008−301052(JP,A)
【文献】
特開2002−140703(JP,A)
【文献】
特開2005−311868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/00−1/04
B60R 1/08−1/12
B60R21/00−21/13
B60R21/34−21/38
G06T 1/00−1/40
G06T 3/00−5/50
G06T 9/00−9/40
H04N 5/222−5/257
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
広角レンズが装着された車載カメラによって取得され、且つ歪みを有する車両周辺の撮影画像を入力する入力部と、
前記撮影画像の水平方向に延びる基準線によって、前記撮影画像の垂直方向に関して所定間隔で区分けされた前記撮影画像の各領域に対し、前記撮影画像の垂直方向に関して前記広角レンズが備える基準補正値に基づき算出された特定補正値を設定する設定部と、
前記設定部によって設定された前記特定補正値を用いて前記撮影画像に対する垂直方向のみの歪み補正を実行する実行部と、
前記実行部によって補正された歪み補正済み撮影画像をモニタに出力する出力部と、
を備え、
前記車載カメラは複数備えられ、各車載カメラが前記車両に搭載される状況に応じて前記基準線が作成され、各車載カメラに対応する歪みマッピングデータから構成されるマッピングテーブルが前記基準線に基づいて前記設定部によって設定され、当該設定されたマッピングテーブルを用いて前記歪み補正が行われる車両周辺監視用画像生成装置。
【請求項2】
前記基準線が複数設定される請求項1に記載の車両周辺監視用画像生成装置。
【請求項3】
車両から所定距離離れた第1の周辺領域を写している撮影画像領域に設定される前記特定補正値は、前記第1の周辺領域よりも車両に近い第2の周辺領域を写す撮影画像領域に対して設定される前記特定補正値よりも小さい請求項1又は2に記載の車両周辺監視用画像生成装置。
【請求項4】
車両から所定距離離れた第1の周辺領域を写している撮影画像領域に対して設定される前記特定補正値がゼロに設定される請求項1から3のいずれか一項に記載の車両周辺監視用画像生成装置。
【請求項5】
前記撮影画像は、車両前方の周辺を写した前方撮影画像と、車両側方の周辺を写した側方撮影画像と、車両後方の周辺を写した後方撮影画像とを含み、それぞれの撮影画像に対して少なくとも前記基準線または前記特定補正値の1つが設定される請求項1から4のいずれか一項に記載の車両周辺監視用画像生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたカメラによって撮影された車両周辺の撮影画像に所定の画像処理を施して車室内のモニタに表示するためのモニタ表示画像を生成する車両周辺監視用画像生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載するカメラの位置や台数は制限されているが、その制限下においてできるだけ撮影死角をなくすために、一度に車両周辺のできるだけ広い範囲を捉えることができる、魚眼レンズを含む広角レンズが装着されている。しかしながら、魚眼レンズのような広角レンズを用いた撮影画像では被写体は円形に歪み、その歪みは周辺に近づくほど増していく。このようなレンズ歪みは、レンズ特性に合わせた補正パラメータに従った補正により解消することができるが、あまり強く歪み補正をかけると、せっかく写しこんだ周辺領域が見えなくなってしまうという不都合が生じる。
【0003】
縦列駐車時や車庫入れ時などに要求される車両の周辺監視画像においては、実空間における車体の縁部とこの車体の縁部に平行な直線とが、可能な限りそのままの平行関係で表示されることが望まれる。このような要望に答えるべく、特許文献1では、車体の縁部を含む撮影画像に対して、実空間と同様の平行感となるような歪補正処理を施してモニタ表示する周辺監視装置が記載されている。具体的には、この周辺監視装置は、撮影画像に車体の縁部を含むように設置されたカメラによって撮影された撮影画像において車体の縁部に沿った第1軸と、この第1軸と直交する第2軸とを設定する座標軸設定部と、撮影画像に対して第1軸方向は略固定としつつ、前記第2軸方向をこの第2軸からの距離に依存した非線形的に増加する拡大率で拡大処理する歪補正処理部とを備え、この歪補正処理部により歪補正処理された撮影画像を表示装置に表示する。
【0004】
しかしながら、この周辺監視装置における歪補正処理は、撮影画像を構成する横画素列をその縦方向位置に応じて異なる拡大率で引き延ばすだけの変形であるので、魚眼レンズなど超広角レンズのレンズ歪補正としては、不十分である。また、補正パラメータが縦方向位置によって一義的に決定される拡大率であり、この拡大率によって各横画素列が拡大されるだけなので所望の歪み補正ができない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009‐012652号公報(段落番号〔0015−0038〕、
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記実情から、魚眼レンズのような広角レンズを用いた撮影画像であっても、車両周辺監視に適したモニタ表示画像を作成することができる車両周辺監視用画像生成装置が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明による車両周辺監視用画像生成装置は、広角レンズ
が装着
された車載カメラによって取得され
、且つ歪みを有する車両周辺の撮影画像を入力する
入力部と、前記撮影画像の
水平方向に延びる
基準線によって
、前記撮影画像の垂直方向
に関して所定間隔で区分けされた
前記撮影画像
の各領域に対し
、前記撮影画像の垂直方向に関して前記広角レンズが備える基準補正値に基づき算出された特定補正値を設定する
設定部と、前記
設定部によって設定された
前記特定補正値を用いて前記撮影画像に対する
垂直方向のみの歪み補正を実行する
実行部と、前記
実行部によって補正された
歪み補正済み撮影画像
をモニタ
に出力する
出力部とを備えている。
【0008】
この構成によると、補正対象となる撮影画像はまず、
基準線を通じて
垂直方向で区分けされ
た撮影画像領域に対して、個別に、当該撮影画像に使用された広角レンズ
が備える基準補正値に基づき特定補正値が設定される。つまり、広角レンズのレンズ特性と撮影方向(カメラ取り付け姿勢によって決まる)とによりレンズ歪みを補正すべき補正量は算定できるが、この補正量をどの程度施すか
がこの
特定補正値により決定される。したがって、
垂直方向で区分けされた撮影画像領域毎に異なる
特定補正値を設定することで、カメラに近い領域と遠い領域とで異なる
特定補正値を用いて補正を行うことができる。これにより、モニタ
を通じて運転者が特に確認したい被写体のカメラからの距離によって異なる適切な補正に対処することができる。なお、
垂直方向のレンズ歪みに対して歪み補正が行われるのは、これにより湾曲化された
水平方向の線が直線化されることから、運転者にとっては好ましい遠近感が確保されるからである。
【0009】
歪み補正を画素単位で行うために、本発明の好適な実施形態の1つでは、
前記設定部は、前記
特定補正値によって決定される画素単位の
マッピングデータから構成されるマッピングテーブル
を設定し、当該
設定されたマッピングテーブルを用いて前記歪み補正が実行される。予めレンズ歪みの補正量とその補正量の適用度合いとしての撮影画像領域毎の
特定補正値とから補正後画像が決まる。従って、撮影画像である補正前画像とモニタ
に表示
される補正後画像の比較を行い、補正前画像の各画素が補正後画像におけるどの画素位置に来るかを予め算定しておき、
マッピングデータを求めておく。この
マッピングデータをテーブル化したものがマッピングテーブルであり、このマッピングテーブルを用いることで、撮影画像の画素をモニタ
に表示
される補正後画像の画素に転送することで、
歪み補正済み撮影画像が生成される。撮影画像の画素と表示画像の画素が対応しない場合、つまり転送先にできた画素の隙間は補間演算で穴埋めするとよい。
【0010】
個別にその
特定補正値が設定できる撮影画像の区分け数は多い方が、運転者にとってより見易い
画像をモニタに表示させることができる。このため、本発明の好適な実施形態では、前記
基準線が複数設定されるように構成されている。
【0011】
車から離れた撮影画像領域に関しては、広角レンズの特徴であるできるだけ広範囲の撮影範囲をそのまま生かすことが好ましい。従って、本発明の好適な実施形態の1つでは、車両から
所定距離離れた第1の周辺領域を写している撮影画像領域
に設定される前記特定補正値は、前記第1の周辺領域よりも車両に近い第2の周辺領域を写す撮影画像領域に対して設定される前記
特定補正値よりも小さく設定される。その際、車両から
所定距離離れた第1の周辺領域を写している撮影画像領域に対して設定される前記
特定補正値が
ゼロに設定することも場合によっては効果的である。
【0012】
比較的広い視野(画像)が要求される前方ビュー、車体近くでは歪みのない視野が要求されるサイドビュー、比較的正確は遠近感が要求される後方ビューといったように、車両の全周囲のうちでもその監視画面に要求される画像形態が異なっている。このためには、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記撮影画像
は、車両前方の周辺を写した前方撮影画像と、車両側方の周辺を写した側方撮影画像と、車両後方の周辺を写した後方撮影画像
とを含み、それぞれの撮影画像に対して
少なくとも前記基準線または前記特定補正値の1つが設定
される
ように構成するとよい。またこのような前方撮影画像、側方撮影画像、後方撮影画像を組み合わせて車両の全周囲をカバーする
歪み補正済み撮影画像を生成して、モニタに表示することも本発明の枠内で可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による車両周辺監視用画像生成装置で採用された歪み補正の基本原理を説明する模式図である。
【
図2】本発明による車両周辺監視
用画像生成装置を搭載した車両
周辺監視装置の運転電子系の一部を示す機能ブロック図である。
【
図3】車両周辺監視装置を構成する画像処理モジュールの機能ブロック図である。
【
図4】マッピングテーブルによる歪み補正の過程を図解した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の具体的な実施形態を説明する前に、本発明で採用されている広角レンズ(魚眼レンズを含む)歪みの補正処理の基本原理を
図1の模式図を用いて説明する。
図1では、説明を分かり易くするために、車載カメラによって写される被写体としての原風景を格子で示しており、白丸の格子点は撮影中心を示している。撮影画像は、この原風景を魚眼レンズに相当する広角レンズを装着したカメラによって取得されたもので、その歪みを分かり易くするために、原風景と撮影画像における対応する特定の位置(画素)を黒丸で示している。
【0015】
撮影画像に対するレンズ歪み補正は、装着されている広角レンズの特性に合わせた補正パラメータに基づいて、その
垂直方向のレンズ歪みを解消(湾曲化された
水平方向の線を直線化する)するように撮影画像の画素を移動する。但し、レンズ歪みを完全に取り除くとせっかくの広角レンズの効果がなくなるので、その補正の度合い、つまり補正強度が設定される。ここでは、補正強度が「ゼロ」で補正されないものとし、補正強度「1」で完全補正、つまり広角レンズによって曲線となった直線を再び直線とする補正が施されるものとする。この発明では、そのような歪み補正の度合い、つまり補正強度が撮影画像の
水平方向に延びるように設定された
基準線によって上下に区分けされた領域、例えば、
図1の真ん中の例では第1撮影画像領域と第2撮影画像領域とで異なるように設定されている。一般的には、車両の近くでは物体との正確な距離感を把握するために補正強度を大きくし、直線は直線らしく示すようにし、例えばバンパはできるだけ実際の形状に近い直線で表示されるようにする。また、車両からはなれた領域では、個別の物体の正確な位置よりむしろ大きな視野が重要となるので、その補正強度はゼロに近いものとして、広角レンズの効果をできるだけ享受する。このため、通常の歪み補正では、第1撮影画像領域の補正強度は大きく設定され、第2撮影画像領域の補正強度が小さく設定される。但し、その逆なる歪み補正、第1撮影画像領域の補正強度は小さく設定され、第2撮影画像領域の補正強度が大きく設定される歪み補正が本発明から排除されているわけではない。
【0016】
この歪み補正の補正強度が個別に設定される撮影画像領域は、1つの
基準線によって区分けされるものに限定されるわけではない。複数の
基準線を設定し、撮影画像を3つ以上の撮影画像領域に区分けし、それぞれに補正強度を設定してもよい。例えば、
図1の下方の例では、2つの
基準線によって、撮影画像は、第1撮影画像領域と第2撮影画像領域と第3撮影画像領域とに区分けられ、そこに下から上にかけて小さくなっている補正強度が設定されている。従って、補正された撮影画像では、下方領域ではほとんど格子横線は直線化され、上方領域では、格子横線は曲線のままであり、広い撮影視野を維持している。
【0017】
なお、この
図1で例示された歪み補正では、撮影画像の
垂直方向のレンズ歪みに対する歪み補正が行われている
。
【0018】
以下、本発明の具体的な実施形態を図面に基づいて説明する。
図2は、本発明による車両周辺監視用画像生成装置を組み込んだ車両周辺監視装置の運転電子系の一部を示す機能ブロック図である。
この
車両周辺監視装置を搭載した車両には、4つの車載カメラ1、つまり、フロントカメラ1a、バックカメラ1d、左サイドカメラ1b、右サイドカメラ1cが装備されている。これらの車載カメラ1からの撮影画像から、前方ビュー画像、後方ビュー画像、サイドビュー画像、俯瞰画像、さらにはそれらを組み合わせたマルチビュー画像が作成される。以下の説明において、適宜、これらの車載カメラ1a、1b、1c、1dを単にカメラ1と総称する場合がある。車両周辺監視制御が動作する際には、カメラ1による撮影画像ないしは当該撮影画像を用いて生成される俯瞰画像がモニタ表示される。カメラ1は車両周辺を時系列に撮影して得られて撮影画像をデジタル変換してリアルタイムに出力するデジタルカメラである。カメラ1は、魚眼レンズに相当の広角レンズを装着している。
【0019】
この車両電子系を構成する処理モジュール23には、運転操作や車両走行の状態を検出する車両状態検出センサ群と接続されており、車両状態検出センサ群からの信号入力をそのまま、あるいは評価して出力する。車両状態検出センサ群には、図示していないが、ステアリング操作方向(操舵方向)と操作量(操舵量)とを計測するステアリングセンサ、シフトレバーのシフト位置を判別するシフト位置センサ、アクセルペダルの操作量を計測するアクセルセンサ、ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキセンサ、自車の走行距離を検出する距離センサなどが含まれる。
【0020】
車両周辺監視装置の中核をなす運転支援画像処理ユニット20には、ハードウエア又はソフトウエアあるいはその両方の形態で構築される種々の機能部が含まれるが、本発明に特に関係する機能部としては、画像処理モジュール50、操作入力処理部60、通信インターフェース70、表示制御部71、音声処理モジュール72などが備えられている。操作入力処理部60は、タッチパネル21Tやその他のスイッチ類を通じて運転者によって入力された操作指令に基づいて、運転支援画像処理ユニット20内に構築された各機能部に制御指令を与える。通信インターフェース70は車載LANのための入出力インターフェースとして用いられており、処理モジュール23、タッチパネル21T、パワーステアリングユニットPS、変速機構T、ブレーキ装置BKなどの制御ユニットとデータ伝送可能に接続されている。その他、視覚情報の出力デバイスとしてモニタ21、音声情報の出力デバイスとしてスピーカ22も搭載されている。画像処理モジュール50で生成されたモニタ
に表示
される画像
(モニタ表示画像)は表示制御部71でビデオ信号に変換されてモニタ21に送られる。音声処理モジュール72で生成された音声ガイドや緊急時の警告音などはスピーカ22で鳴らされる。
【0021】
図3に、運転支援画像処理ユニット20の画像処理モジュール50の機能ブロック図が示されている。画像処理モジュール50は、自車周辺を撮影するカメラ1によって取得された撮影画像から各種のモニタ表示画像を生成する機能を有している。
【0022】
画像処理モジュール50は、撮影画像メモリ51、前処理部52、テンプレート画像出力部53、表示画像生成部54、マッピングテーブル設定部55、マッピングテーブル56、表示画像選択部57、
出力部58、フレームメモリ59を含んでいる。カメラ1によって取得された撮影画像は画像入力部としての撮影画像メモリ51に展開され、前処理部52はカメラ1によって個々に取得された撮影画像間の輝度バランスやカラーバランス等を調整する。
【0023】
テンプレート画像出力部53は、生成されたモニタ表示画像をモニタ21に表示する際の表示レイアウトに合わせた画像フレームとしてテンプレート画像を出力する。例えば、周辺俯瞰画像をモニタ表示画像として生成する際の自車の位置を明示するために自車の俯瞰画像などがテンプレート画像に含まれる。自車の俯瞰画像は、写真でもよいし、イラストなどでもよい。また、テンプレート画像は、前方ビュー画面や後方ビュー画面など各種ビュー画面におけるマスクとしても利用される。
【0024】
マッピングテーブル設定部55は、表示画像生成部54によって生成されるモニタ表示画像のためのマッピングデータを演算し、マッピングテーブル56に設定する。この実施形態では、マッピングテーブル設定部55は、撮影画像の
水平方向に延びる
基準線によって
撮影画像の垂直方向で区分けされた撮影画像領域に対して個別に、当該撮影画像を出力したカメラに装着された広角レンズの
垂直方向のレンズ歪みを補正する画素単位の歪み補正量の強度を設定する
設定部としても機能する。つまり、マッピングテーブル56に設定されるマッピングデータは、
図1を用いて説明したレンズ歪みを補正す
る補正量を調整する補正強度を1つのパラメータとして演算されている。従って、このマッピングデータは、撮影画像からモニタ表示画像に変換する際に、歪み補正を考慮した上での当該撮影画像の画素とモニタ表示画像の画素との対応関係を表すデータである。また、このマッピングテーブル56は、前方ビュー画面や後方ビュー画面など各種ビュー画面のためのモニタ表示画像に共通的に用いられるので、モニタ表示画像の画素位置に相当する位置アドレスに、処理対象となる撮影画像から取り出される対応画素の座標位置だけでなく当該撮影画像のカメラを識別する識別子も含まれている。
【0025】
従って、マッピングテーブル56は、モニタ21に表示される全てのモニタ表示画像に対応するサイズを有するメモリから構成され、マッピングテーブル設定部55によって書き込み、書き換えられるマッピングデータを記憶している。
【0026】
表示画像生成部54は、マッピングテーブル56を用いて、モニタ21に表示するための所定のモニタ表示画像を撮影画像メモリ51に展開された撮影画像を変換元画像として生成する。その際、マッピングテーブル56に設定されるマッピングデータは、撮影画像に対して
垂直方向で区分けされた撮影画像領域毎に設定された補正強度でレンズ歪みを補正することも考慮して作成されているので、このマッピングテーブル56を用いた生成において同時に歪み補正も実行される。従って、この表示画像生成部54は
実行部としても機能する。
【0027】
表示画像選択部57は、操作入力処理部60を介して送られてくるマニュアル制御指令や図示されていない車両運転制御ユニットから送られてくる制御指令に基づいて、モニタ21に表示する車両周辺監視画面を決定し、それに用いられるテンプレート画像の出力やモニタ表示画像の生成をテンプレート画像出力部53や表示画像生成部54に要求する。
【0028】
次に
実行部としても機能する表示画像生成部54による、マッピングテーブル56を用いての歪み補正の過程が
図4に図解されている。この図解された例では、表示ビュー画面の選択を指令する表示ビュー選択指令を通じて、前方撮影画像に基づくモニタ表示画像をモニタ21に表示することが表示画像選択部57に要求される。同時に、デフォルトで設定されているかあるいはマニュアルで設定された前方撮影画像のための歪み補正種別を指定する補正コードも表示画像選択部57に与えられる。この歪み補正種別は、
基準線によって区分けされる撮影画像領域と、その撮影画像領域に対して個別に設定された補正強度によって規定されている。具体的な一例としては、複数段階の補正強度に基づいて撮影画像の種類(カメラ1の種類)毎に予めマッピングデータ群を作成し格納しておく。さらに、そこから、利用する撮影画像の種類(前方撮影画像)に適合するとともに撮影画像領域毎に設定されている補正強度に適合するマッピングデータ群を抽出し、このマッピングデータ群を区分けされた撮影画像領域に適用するように組み合わせてマッピングテーブル56に設定する。これにより、マッピングテーブル56は、所定の歪み補正を実行するために用いられるマッピングデータ群で設定された前方ビュー用マッピングテーブルとなる。つまり、前方撮影画像を歪み補正しながらモニタ表示画像に画像変換するこの前方ビュー用マッピングテーブルの各要素に設定される各マッピングデータは、目標とするモニタ表示画像の各画素が前方撮影画像のどの画素を転送させるかを規定しているが、場合によっては複数の画素の補間値を規定することも可能である。
【0029】
出力部58は、テンプレート画像出力部53から出力されたテンプレート画像、つまり画像枠に表示画像生成部54によって生成されたモニタ表示画像等をはめ込む合成処理を行い、最終的なモニタ表示画像を生成して、フレームメモリ59に転送する。フレームメモリ59に転送されたモニタ表示画像は、表示制御部71によって、モニタ21に表示される。
【0030】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、表示画像生成部54が
実行部としても機能していたが、
実行部を表示画像生成部54から独立させて構成してもよい。そのような
実行部は、歪み補正のためだけのマッピングデータをマッピングテーブル56に設定し、当該マッピングテーブル56を用いて、撮影画像メモリ51に展開している撮影画像に対して歪み補正を行う。補正された撮影画像は表示画像生成部54によってモニタ表示画像の生成のための元画像として用いられる。
(2)
基準線や
特定補正値は予め所定のものを設定しておいてユーザが選択できるようにしてもよいし、ユーザが任意に設定できるようにしてもよい。
(3)本発明には、特定の1つのカメラからの撮影画像を変換元画像として歪み補正をしながらモニタ表示画像を生成する画像変換だけでなく、複数のカメラからの撮影画像を変換元画像として用いて、上方視点からの全周囲俯瞰画像を生成することも含まれている。また、フロントカメラ、バックカメラ、左・右サイドカメラからの撮影画像を元画像とする俯瞰画像、及びフロントカメラからの撮影画像を元画像とする前方ビュー画像を組み合わせたようなモニタ表示画像を、同様なマッピングテーブル56を用いて生成することも可能である。
(4)上述した実施形態では、特に画像処理モジュール50に構築されているテンプレート画像出力部53、表示画像生成部54、マッピングテーブル設定部55、表示画像選択部
57、
出力部58などは、説明を分かり易くするためにそれらが果たす機能がブロック化されているが、このブロック化の形態は任意に変更することができる。例えば、テンプレート画像出力部5
3と
出力部58とを一体化してもよいし、テンプレート画像もマッピングテーブルを用いて生成するようにしてもよい。さらには、マッピングテーブル設定部55と表示画像選択部5
7を一体化してもよい
。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、撮影画像に基づくモニタ表示画像を用いて車両周辺の監視を行う全ての技術に利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1:カメラ
21:モニタ
50:画像処理モジュール
51:撮影画像メモリ(
入力部)
53:テンプレート画像出力部
54:表示画像生成部(
実行部)
55:マッピングテーブル設定部(
設定部)
56:マッピングテーブル
57:表示画像選択部
58:
出力部
59:フレームメモリ
60:操作入力処理部
71: 表示制御部