【文献】
ZHANG Chun-Hua(張春華)et al.,Preparation of light controllable films from photosensitive cinnamates,Yingyong Huaxue(応用化学),中国,2002年 8月,Vol.19, No.8,pp.715-718
【文献】
Yu Tao(于涛)et al.,Vertically aligned films for liquid crystals fabricated by monomer photo-crosslinking,Wuli Xuebao(物理学報),中国,2004年 1月,Vol.53, No.1,pp.316-319
【文献】
Rumiko Yamaguchi et al.,Polarized latent image forming in liquid crystal devices using polymer-surface photomodification technique,Proceedings of SPIE,2004年,Vol.5618,p.166-173
【文献】
S. Perny et al.,Molecular orientation and liquid crystal alignment properties of new cinnamate-based photocrosslinkable polymers,Liquid Crystals,2000年,Vol.27, No.3,p.341-348
【文献】
G. Montaudo et al.,Characterization of copolymer sequences by fast atom bombardment mass spectrometry. 2. Identification of oligomers contained in alternating and random copolyesters with photolabile units in the main chain,Macromolecules,1989年 2月 1日,Vol.22, No.2,p.627-632
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、上記式(1)で表される基又は式(2)で表される基を含む構造単位(I)を有する[A]重合体を含有する。当該液晶配向剤は、上記特定構造の基を有する[A]重合体を含有することで、放射線感度が向上し、低照射量の放射線で、優れた液晶配向性を有する液晶配向膜を形成することができる。またこの液晶配向膜を備える液晶表示素子は、電気的特性等の諸性能にも優れている。本発明の液晶配向剤は、本発明の効果を損なわない限り、必須成分である[A]重合体以外に、その他の成分を含有することができる。以下、各成分について詳述する。
【0021】
<[A]重合体>
[A]重合体は、構造単位(I)を有する重合体である。[A]重合体としては、上記構造単位(I)を有する重合体であれば特に限定されないが、ポリエステル(A1)又はポチオエステル(A2)であることが好ましい。[A]重合体が、上記構造単位(I)を有するポリエステル(A1)又はポリチオエステル(A2)であることにより、当該液晶配向剤は、優れた液晶配向性を有する液晶配向膜を形成することができる。
【0022】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、上記式(1)で表される基又は式(2)で表される基を含む。
【0023】
上記式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。Xは、酸素原子又は硫黄原子である。
上記式(2)中、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。
【0024】
上記R
1〜R
4で表される1価の有機基としては、例えば炭素数1〜10の鎖状炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、これらの基とヘテロ原子とを組み合わせてなる基等が挙げられる。
【0025】
上記炭素数1〜10の鎖状炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基等が挙げられる。
【0026】
上記炭素数3〜10の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基等が挙げられる。
【0027】
上記炭素数6〜10の芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0028】
上記ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
【0029】
上記R
1〜R
4としては、水素原子、炭素数1〜10の鎖状炭化水素基及び炭素数3〜10の脂環式炭化水素基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0030】
Xとしては、酸素原子であることが好ましい。
【0031】
構造単位(I)としては、上記式(1)で表される基又は式(2)で表される基を含む構造単位であれば、特に限定されないが、上記式(3)〜(5)で表される構造単位であることが好ましく、式(3)で表される構造単位であることがより好ましい。
【0032】
上記式(3)〜(5)中、R
1、R
2及びXは、上記式(1)と同義である。Y
1〜Y
3は、それぞれ独立して、2価の有機基である。
【0033】
上記Y
1〜Y
3で表される2価の有機基としては、例えば炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素基、これらの基とヘテロ原子とを組み合わせてなる基等が挙げられる。
【0034】
上記炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基としては、例えばメチレン基、エタンジイル基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基、オクタンジイル基等が挙げられる。
【0035】
上記炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロプロパンジイル基、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロオクタンジイル基等が挙げられる。
【0036】
上記炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素基としては、例えばフェニレン基、ナフタレニレン基、アントラセニレン基等が挙げられる。
【0037】
上記Y
1〜Y
3で表される2価の有機基が有してもよい上記ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。これらのうち、酸素原子が好ましい。
【0038】
上記Y
1〜Y
3としては、炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素基とヘテロ原子とを組み合わせてなる基が好ましく、炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基とヘテロ原子とを組合せてなる基がより好ましく、炭素数2〜4の2価の鎖状炭化水素基と酸素原子とを組合せてなる基がさらに好ましく、−CH
2−O−(CH2)
n−O−CH
2−で表される基であることが特に好ましい。但し、nは、1〜10の整数である。
【0039】
[A]重合体における構造単位(I)の含有率としては10モル%以上100モル%以下が好ましく、60モル%以上100モル%以下がより好ましく、80モル%以上100モル%以下がさらに好ましく、90モル%以上100モル%以下が特に好ましい。[A]重合体における構造単位(I)の含有率を上記特定範囲とすることで、当該液晶配向剤は、放射線感度をより向上させることができる。
【0040】
上記構造単位(I)は、後述する[A]重合体の合成方法で詳細に説明するように、上記式(1)で表される基又は式(2)で表される基を含むジカルボン酸化合物とジエポキシ化合物とを重合させること等により得られる。
【0041】
[A]重合体としては、ポリエステル(A1)及びポリチオエステル(A2)であることが好ましく、これらの重合体が有する構造単位(I)が、上記式(3)、式(4)又は式(5)で表されることがより好ましい。
【0042】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体の合成方法として、ポリエステル(A1)及びポリチオエステル(A2)の合成方法について以下に詳述するが、本発明における[A]重合体の合成方法は、これらの合成方法に限定されるものではない。
【0043】
[ポリエステル(A1)の合成方法]
ポリエステル(A1)は、例えば上記式(1)で表される基を含むジカルボン酸化合物と、ジエポキシ化合物とを有機溶媒中で反応させることにより合成できる。
【0044】
上記式(1)で表される基を含むジカルボン酸化合物は、例えば下記スキームに従って合成することができる。
【0046】
例えば(E)−桂皮酸を水/エタノール=1:1溶液等の溶媒中で加熱して完全に溶解させ、冷却して再結晶させることで、(E)−桂皮酸のα−結晶を得ることができる。上記加熱温度としては、70℃〜200℃が好ましく、80℃〜120℃がより好ましい。上記冷却温度としては、20℃〜60℃が好ましく、40℃〜55℃がより好ましい。次に、再結晶で得たα−結晶を乳鉢等で粉末状になるまですり潰し、二枚のパイレックス(登録商標)ガラス板等で挟み、均等な厚さになるように調製したものに、500W高圧水銀ランプを用いて、光照射することで、上記式(B−1)で表されるジカルボン酸化合物を合成することができる。上記光照射時間としては、2時間〜10時間が好ましく、3時間〜6時間がより好ましい。
【0047】
上記ジエポキシ化合物としては、例えば下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0049】
ジエポキシ化合物として、3員環のエポキシ基(オキシラン)を有する化合物を用いた場合には、上記式(2)及び式(3)で表される構造単位を形成することができる。それに対し、4員環のエポキシ基(オキセタン)を有する化合物を用いた場合には、上記式(4)で表される構造単位を形成することができる。
【0050】
本発明で用いられるポリエステル(A1)の合成には、上記式(1)で表される基を含むジカルボン酸化合物と共に、他のジカルボン酸化合物を併せて用いることもできる。
【0051】
他のジカルボン酸化合物としては、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエ−テル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(カルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸等が挙げられる。これらの他のジカルボン酸化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0052】
ポリエステル(A1)の合成反応に用いられるジエポキシ化合物とジカルボン酸化合物(上記式(1)で表される基を含むジカルボン酸化合物、及びその他のジカルボン酸化合物の合計)との使用割合としては、ジカルボン酸化合物に含まれるカルボキシ基1当量に対して、ジエポキシ化合物のエポキシ基が0.2当量〜2当量が好ましく、0.3当量〜1.2当量がより好ましい。
【0053】
合成反応は、有機溶媒中において行うことが好ましい。反応温度としては、0℃〜250℃が好ましく、50℃〜180℃がより好ましい。反応時間としては、0.5時間〜24時間が好ましく、2時間〜12時間がより好ましい。
【0054】
有機溶媒としては、合成されるポリエステルを溶解できるものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド等の非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノール等のフェノール系溶媒が挙げられる。
【0055】
有機溶媒の使用量(a)としては、ジエポキシ化合物及びジカルボン酸化合物の総量(b)と有機溶媒の使用量(a)の合計(a+b)に対して、0.1質量%〜50質量%が好ましく、5質量%〜30質量%がより好ましい。
【0056】
ポリエステル(A1)における上記ジカルボン酸化合物と上記ジエポキシ化合物に由来する上記式(3)〜(5)で表される構造単位(I)の含有割合は、全重合体の全構造単位に対して、50モル%〜100モル%であることが好ましく、60モル%〜100モル%であることがより好ましく、80モル%〜100モル%であることがさらに好ましい。
【0057】
反応後に得られるポリエステル(A1)溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に用いてもよく、反応溶液中に含まれるポリエステル(A1)を単離した上で液晶配向剤の調製に用いてもよく、単離したポリエステルを精製した上で液晶配向剤の調製に用いてもよい。ポリエステル(A1)の単離方法としては、例えば反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで得られる析出物を減圧下乾燥する方法、反応溶液をエバポレーターで減圧留去する方法等が挙げられる。ポリエステルの精製方法としては、単離したポリエステル(A1)を再び有機溶媒に溶解し、貧溶媒で析出させる方法、エバポレーターで有機溶媒等を減圧留去する工程を1回若しくは複数回行う方法が挙げられる。
【0058】
上記ポリエステル(A1)の合成において、上記ジエポキシ化合物及びジカルボン酸化合物に加えて、適当な分子量調節剤を用いて末端修飾型の重合体を合成してもよい。かかる末端修飾型の重合体とすることにより、本発明の効果を損なうことなく液晶配向剤の塗布性(印刷性)をさらに改善することができる。
【0059】
上記分子量調節剤としては、酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物等を挙げることができる。
【0060】
酸一無水物としては、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物等が挙げられる。
【0061】
モノアミン化合物としては、アニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン等が挙げられる。
【0062】
モノイソシアネート化合物としては、フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が挙げられる。
【0063】
分子量調節剤の使用割合は、使用するジエポキシ化合物及びジカルボン酸化合物の合計100質量部に対して、20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下とすることがより好ましい。
【0064】
[ポリチオエステル(A2)の合成方法]
ポリチオエステル(A2)は、例えば上記式(1)で表される基を含むジチオ−S−酸化合物及びジエポキシ化合物を有機溶媒中で反応させることにより得られる。
【0065】
上記ジエポキシ化合物としては、ポリエステル(A1)の合成に用いられるジエポキシ化合物として例示した化合物と同様の化合物が挙げられる。
【0066】
得られたポリチオエステル(A2)を含有する反応溶液は、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリチオエステル(A2)を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリチオエステル(A2)を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。
【0067】
以上のようにして得られるポリエステル(A1)及びポリチオエステル(A2)は、これを濃度10質量%の溶液としたときに、20mPa・s〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、30mPa・s〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。上記[A]重合体の溶液粘度(mPa・s)は、当該重合体の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等)を用いて調製した濃度10質量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
【0068】
<その他の成分>
本発明の液晶配向剤は、[A]重合体を必須成分として含有するが、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。かかるその他の成分としては、例えば[A]重合体以外のその他の重合体、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」ともいう)、官能性シラン化合物等が挙げられる。
【0069】
(その他の重合体)
上記その他の重合体は、溶液特性及び電気特性の改善のために使用することができる。かかるその他の重合体は、上記ポリエステル(A1)、上記ポリチオエステル(A2)等の[A]重合体以外の重合体であり、例えばと上記式(1)で表される構造を有さないジカルボン酸化合物と、ジエポキシ化合物とを反応させて得られるポリエステル(以下、「他のポリエステル」ともいう)、上記式(1)で表される構造を有さないポリチオエステル、ポリアミド、ポリシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらのうち、他のポリエステル、他のポリチオエステルが好ましく、他のポリエステルがより好ましい。
【0070】
上記他のポリエステル又は他のポリチオエステルを合成するために用いられるジカルボン酸化合物としては、ポリエステル(A1)を合成するために用いられる他のジカルボン酸化合物として上述したものと同様のものを挙げることができる。
【0071】
上記他のポリエステル又は他のポリチオエステルを合成するために用いられるジエポキシ化合物としては、ポリエステル(A1)及びポリチオエステル(A2)を合成する際に使用するジエポキシ化合物として例示したものと同様の化合物等が挙げられる。
【0072】
その他の重合体の使用割合としては、[A]重合体に対して50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0073】
(エポキシ化合物)
上記エポキシ化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−シクロヘキシルアミン等を好ましいものとして挙げることができる。
【0074】
これらエポキシ化合物の配合割合は、重合体の合計100質量部に対して、好ましくは40質量部以下、より好ましくは0.1〜30質量部である。
【0075】
(官能性シラン化合物)
上記官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、2―グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2―グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3―グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0076】
これら官能性シラン化合物の配合割合は、重合体の合計100質量部に対して、好ましくは2質量部以下、より好ましくは0.02〜0.2質量部である。
【0077】
<液晶配向剤の調製>
本発明の液晶配向剤は、上記ポリエステル(A1)、ポリチオエステル(A2)等の[A]重合体、及び必要に応じて任意的に配合されるその他の成分が、好ましくは有機溶媒中に溶解含有されて構成される。
【0078】
本発明の液晶配向剤に使用される有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0079】
本発明の液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計質量が液晶配向剤の全質量に占める割合)は、粘性、揮発性等を考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1〜10質量%の範囲である。すなわち、本発明の液晶配向剤は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることにより液晶配向膜である塗膜又は液晶配向膜となる塗膜が形成されるが、固形分濃度が1質量%未満である場合には、この塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得ることができず、一方固形分濃度が10質量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得ることができず、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が劣るものとなる。
【0080】
特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えばスピンナー法による場合には固形分濃度1.5〜4.5質量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9質量%の範囲とし、それにより溶液粘度を12mPa・s〜50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5質量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3mPa・s〜15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。
【0081】
本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは10℃〜50℃であり、より好ましくは20℃〜30℃である。
【0082】
<液晶配向膜>
本発明の液晶配向膜は、当該液晶配向剤により形成される。そのため形成工程において、低照射量の放射線により優れた液晶配向能を付与することができる。さらに放射線の照射中及び照射後の加熱工程が不要であるため、生産効率がよく製造コストも削減できる。
【0083】
<液晶配向膜の形成方法>
本発明の液晶配向剤は、光配向法による液晶配向膜の材料として好適に使用することができる。また、TN型若しくはSTN型の液晶セルを有する液晶表示素子、又はIPS型、FFS型等の液晶セルを有する横電界方式の液晶表示素子に用いられる液晶配向膜を形成するために好適に使用することができる。本発明の液晶配向剤は、特にIPS型、FFS型の液晶セルを有する液晶表示素子に適用したときに、本発明の効果が最大限に発揮されることとなり好ましい。
【0084】
本発明の液晶配向膜の形成方法は、
(1)本発明の液晶配向剤を用い、基板上に塗膜を形成する工程(以下、「工程(1)」ともいう)、及び
(2)上記塗膜に偏光した紫外線を照射し、液晶配向能を付与する工程(以下、工程(2)ともいう)
を含む。以下、各工程について詳述する。
【0085】
[工程(1)]
ここで、本発明の液晶配向剤を、TN型又はSTN型の液晶セルを有する液晶表示素子に適用する場合、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板2枚を一対として、その各透明性導電膜形成面上に、本発明の液晶配向剤を塗布して塗膜を形成する。一方、本発明の液晶配向剤を、IPS型、FFS型の液晶セルを有する液晶表示素子に適用する場合には、片面に透明導電膜又は金属膜が櫛歯状にパターニングされた電極を有する基板と、電極が設けられていない対向基板とを一対とし、櫛歯状電極の形成面と、対向基板の片面とに、それぞれ本発明の液晶配向剤を塗布して塗膜を形成する。
【0086】
いずれの場合も、上記の基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスの如きガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートの如きプラスチックからなる透明基板等を用いることができる。上記透明導電膜としては、例えばIn
2O
3−SnO
2からなるITO膜、SnO
2からなるNESA(登録商標)膜等を用いることができる。上記金属膜としては、例えばクロム等の金属からなる膜を使用することができる。透明導電膜及び金属膜のパターニングには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後にフォト・エッチング法、スパッタ法等によりパターンを形成する方法、透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法等によることができる。
【0087】
基板上への液晶配向剤の塗布に際して基板又は導電膜ないし電極と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板及び電極上に、予め官能性シラン化合物、チタネート等を塗布しておいてもよい。
【0088】
基板上への液晶配向剤の塗布は、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法、インクジェット印刷法等の適宜の塗布方法により行うことができ、次いで、塗布面を予備加熱(プレベーク)し、次いで焼成(ポストベーク)することにより塗膜を形成する。プレベーク条件は、例えば40℃〜120℃において0.1分〜5分であり、ポストベーク条件は、好ましくは120℃〜300℃、より好ましくは150℃〜250℃において、好ましくは5分〜200分、より好ましくは10分〜100分である。ポストベーク後の塗膜の膜厚は、好ましくは0.001μm〜1μmであり、より好ましくは0.005μm〜0.5μmである。
【0089】
[工程(2)]
このようにして形成された塗膜に、偏光した放射線を照射することにより、液晶配向能を付与する。ここで、放射線としては、例えば150nm〜800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができるが、200nm〜400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。
【0090】
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザー等を使用することができる。上記の好ましい波長領域の紫外線は、上記光源を、例えばフィルター、回折格子等と併用する手段等により得ることができる。
【0091】
本発明の液晶配向剤を用いると、通常10,000J/m
2以上の紫外線照射が必要とされるところ、8000J/m
2であっても良好な液晶配向能を付与することができ、液晶表示素子の生産性向上と製造コストの削減に資する。
【0092】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、当該液晶配向剤を用いて形成される液晶配向膜を備えるため、従来より少ない放射線照射量で液晶配向能を付与することができる。そのため、当該液晶配向膜を備える液晶表示素子は、従来より安価に製造することができる。本発明の液晶表示素子は、例えば以下のようにして製造することができる。
【0093】
上記のようにして液晶配向膜が形成された一対の基板を準備し、この一対の基板間に液晶が狭持された構成の液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法が挙げられる。
【0094】
第一の方法は、従来から知られている方法である。それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造することができる。
【0095】
第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外光硬化性のシール材を塗布し、さらに液晶配向膜面上に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造することができる。
【0096】
いずれの方法による場合でも、次いで、液晶セルを、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
【0097】
そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、本発明の液晶表示素子を得ることができる。ここで、液晶配向膜が形成された2枚の基板における、照射した直線偏光放射線の偏光方向のなす角度及びそれぞれの基板と偏光板との角度を適当に調整することにより、所望の液晶表示素子を得ることができる。
【0098】
上記シール剤としては、例えばスペーサーとしての酸化アルミニウム球及び硬化剤を含有するエポキシ樹脂等を用いることができる。
【0099】
上記液晶としては、例えばネマティック型液晶、スメクティック型液晶等を用いることができる。ネマティック型液晶を形成する正の誘電異方性を有するものが好ましく、例えばビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶等が用いられる。また上記液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネート等のコレステリック液晶;
商品名「C−15」、「CB−15」(以上、メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;
p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメート等の強誘電性液晶等を、さらに添加して使用してもよい。
【0100】
液晶セルの外側に使用される偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と呼ばれる偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板、又はH膜そのものからなる偏光板等を挙げることができる。このようにして製造された本発明の液晶表示素子は、表示特性、電気特性等の諸性能に優れるものである。
【0101】
<重合体>
本発明の液晶配向剤が含有する重合体は、上記式(1)又は式(2)で表される基を含む構造単位(I)を有する。この重合体としては、ポリエステル又はポリチオエステルであることが好ましく、上記構造単位(I)が、上記式(3)、式(4)又は式(5)で表される構造単位であることがより好ましく、上記式(3)で表される構造単位であることがさらに好ましい。本発明の重合体は上記特定構造を有するため、当該液晶配向剤における[A]重合体として好適に用いられ、本発明の重合体を含有する当該液晶配港剤は、放射線に対する感度が高く、低照射量の放射線により優れた液晶配向能を有する液晶配向膜を形成することができる。なお、本発明の重合体については、当該液晶配向剤が含有する[A]重合体の説明を適用できるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【実施例】
【0102】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0103】
<ジカルボン酸の合成>
下記スキームに従って、下記式(B−1)で表される化合物を合成した。
【0104】
【化6】
【0105】
[合成例1]
(E)−桂皮酸2.00gを水/エタノール=1/1溶液10mLに加え、オイルバスで90℃に加熱し、完全に溶解させた。オイルバスの設定を50℃にし、徐々に結晶化させ、1.3g(収率65%)の(E)−桂皮酸のα−結晶を得た。再結晶で得られたα−結晶150mgを乳鉢で粉末状になるまですり潰し、2枚のパイレックス(登録商標)ガラス板で挟み、均等な厚さになるように調製した。500W高圧水銀ランプを用いて、4h光照射し、上記式(B−1)で表される化合物(B−1)147mgを得た。なお、上記のスケールで合成を繰り返すことにより、以降のポリエステルの合成例における必要量を確保した。
【0106】
<ポリエステル(A1)の合成>
ポリエステルの合成に用いたジエポキシ化合物を下記に示す。
【0107】
【化7】
【0108】
[実施例1]
化合物(B−1)0.1モル(29.62g)と、上記式(E−1)で表されるジエポキシ化合物(E−1)0.1モル(17.72g)とをN−メチル−2−ピロリドン110.46gに溶解し、140℃で9時間反応させた。次いで、反応混合物を大過剰のメタノールと混合し、反応生成物を沈殿させた。その後、メタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させてポリエステル(A−1)を45.9g(収率97.0%)得た。
【0109】
[実施例2]
ジエポキシ化合物を上記式(E−2)で表される化合物(E−2)とした以外は実施例1と同様にしてポリエステル(A−2)を得た。
【0110】
[比較合成例1]
1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物0.1モル(19.61g)と、下記ジアミン化合物(D−1)0.1モル(41.05g)とをN−メチル−2−ピロリドン343.74gに溶解し、室温で6時間反応させた。次いで、反応混合物を大過剰のメタノールと混合し、反応生成物を沈澱させた。その後、メタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥して、ポリアミック酸(a−1)を60g(収率98.9%)得た。
【0111】
[比較合成例2〜3]
ジアミン化合物をそれぞれ下記(D−2)又は(D−3)とした以外は比較合成例1と同様にしてそれぞれのポリアミック酸(a−2)及び(a−3)を得た。
【0112】
[ジアミン化合物]
D−1:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
D−2:p−フェニレンジアミン
D−3:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
【0113】
<液晶配向剤の調製>
[実施例3]
上記合成例1で得たポリエステル(A−1)を含有する溶液に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)及びブチルセロソルブ(BC)を加え、さらにエポキシ化合物としてN,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンをポリアミック酸(A1−1)の合計100質量部に対して20質量部加えて十分に撹拌し、溶媒組成がNMP:BC=60:40(質量比)、固形分濃度2.5質量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより、液晶配向剤(S−1)を調製した。
【0114】
[実施例4及び比較例1〜3]
実施例3において、ポリエステル(A−1)に代えて、それぞれポリエステル(A−2)、ポリアミック酸(a−1)〜(a−3)をそれぞれ使用した以外は実施例3と同様にして液晶配向剤S−2、s−1〜s−3を調製した。
【0115】
<液晶表示素子の製造>
上記で調製した液晶配向剤(S−1〜S−2及びs−1〜s−3)をそれぞれITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上に、膜厚が0.1μmになるようにスピンナーを用いて塗布し、200℃で1時間乾燥して塗膜を形成した。この塗膜表面に、Hg−Xeランプを用いて、254nmの輝線を含む偏光の紫外線8,000J/m
2、10,000J/m
2、又は50,000J/m
2を、基板法線方向から照射し、液晶配向膜を形成した。次に、上記光照射処理を行った一対の基板について、液晶配向膜を形成した面の縁に液晶注入口を残して直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷塗布した後、光照射方向が反平行となるように基板を重ね合わせて圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、一対の基板間に液晶注入口よりネマティック型液晶(メルク社製、ZLI−1565)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で加熱してから室温まで徐冷した。次に、基板の外側両面に、偏光板を、その偏光方向が互いに直交し、かつ、液晶配向膜の偏光紫外線の光軸の基板面への射影方向と一方は直交し、もう一方は平行となるように貼り合わせて液晶表示素子を作製した。
【0116】
上記それぞれの液晶表示素子について、下記評価を行った。結果を表1に示す。
【0117】
<評価>
[液晶配向性]
液晶表示素子において、電圧をオン・オフ(印加・解除)したときの異常ドメインの有無を偏光顕微鏡で観察し、異常ドメインのない場合を「良好」、異常ドメインがひとつでもある場合を「不良」と判定した。
【0118】
[電圧保持率]
偏光紫外線照射量8,000J/m
2で作製した液晶表示素子に5Vの電圧を60マイクロ秒の印加、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定した。測定装置は東陽テクニカ社製VHR−1を使用した。電圧保持率が90%以上の場合を「良好」、それ以外の場合を「不良」と判断した。
【0119】
【表1】
【0120】
表1に示すように、実施例の液晶配向剤は、放射線に対する感度が高く、8,000J/m
2の低照射量でも、得られる液晶配向膜を備える液晶表示素子の液晶配向性は良好となった。また、電圧保持率も良好であった。それと比較して、比較例では8,000J/m
2の低照射量では異常ドメインが観察され、液晶配向性は不良となった。以上より本発明の液晶配向剤は、放射線感度に優れ、低照射量の放射線照射で、優れた液晶配向性を有する液晶配向膜を形成することができることが明らかとなった。