【実施例】
【0055】
次に、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に何等限定されない。
【0056】
実施例1
酸処理黒鉛粉末として、濃度98%の濃硫酸を攪拌しながら強酸化剤として過酸化水素水の60%水溶液を加えてこれを反応液とし、この反応液を冷却して10℃の温度に保持し、該反応液に粒度30〜80メッシュの鱗片状天然黒鉛粉末を添加して30分間反応を行った後、吸引濾過して酸処理黒鉛粉末を分離し、該酸処理黒鉛粉末を水で10分間攪拌して吸引濾過するという洗浄作業を2回繰返し、酸処理黒鉛から硫酸分を充分除去し、硫酸を充分除去した酸処理黒鉛粉末を110℃の温度に保持した乾燥炉で3時間乾燥して得た酸処理黒鉛粉末を使用した。
【0057】
黒鉛粉末として、密度1.12Mg/m
3であって、厚さが0.4mmの膨張黒鉛シートを裁断し、粉砕して得た膨張黒鉛粉末を使用した。
【0058】
無機バインダーとして、燐酸水素マグネシウム(第二燐酸マグネシウム)を使用した。
【0059】
上記膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末とを質量比を1:0.01の割合で配合すると共に膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末との質量1に対し燐酸水素マグネシウムと蒸留水とを0.25:0.75の質量比で配合し、これらを混練して湿潤性を有する混合物を作製した。
【0060】
金属細線として、線径0.15mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を7本使用して網目の目幅が縦2.0mm、横1.5mm程度の円筒状編組金網を作製し、これを一対のローラ間に通してこれを補強材用の帯状金網とした。
【0061】
図5に示す圧延装置を使用し、該圧延装置のホッパーに、帯状金網を挿入し、該帯状金網の挿入端部を一対の圧延ローラ間に通過させると共に該帯状金網によって二分されたホッパー内にコンベアから湿潤性を有する混合物を供給して、ホッパー内に供給された混合物を帯状金網の両面に供給すると同時に圧延ローラ間に供給し、当該混合物を圧延ローラ間で圧延して帯状金網と帯状金網の網目に充填保持された混合物とが一体となった複合帯状素材を作製した。
【0062】
複合帯状素材を乾燥炉内で乾燥して混合物に含有された水分を蒸発、逸散させた後、乾燥後の複合帯状素材を切断して幅63mm、長さ175mm程度の複合帯状材(複合帯状材の質量:32.7g、複合帯状材中の帯状金網の質量:27.2g、膨張黒鉛粉末:4.36g、酸処理黒鉛粉末:0.04g、燐酸水素マグネシウム1.1g)を作製した。
【0063】
この複合帯状材を円筒状の芯金の外周面にうず巻き状に2周捲回して筒状母材を作製した。
【0064】
内面に貫通孔を有するキャビティの該貫通孔に段付きコアを嵌挿することによって内部に中空円筒部が形成された
図8に示す金型の段付きコアに筒状母材を挿入した。
【0065】
金型の中空円筒部に配した筒状母材をコア軸方向に196N/mm
2(2トン/cm
2)の圧力で圧縮成形し、貫通孔を規定する円筒状の内周面と円筒状の外周面と環状の端面とを備えた内径22.1mm、外径29.35mm、長さ25mmの円筒状ガスケットを作製した。この円筒状ガスケットにおいて、補強材と耐熱材と気孔との含有率は、体積比で夫々46.9%、34.4%及び18.7%であった。
【0066】
実施例2
酸処理黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の酸処理黒鉛粉末を使用し、黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の膨張黒鉛粉末を使用し、無機バインダーとして、前記実施例1と同様の燐酸水素マグネシウムを使用した。
【0067】
膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末とを質量比1:0.05の割合で配合すると共に膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末との質量1に対し燐酸水素マグネシウムと蒸留水とを0.18:0.82の質量比で配合し、これらを混練して湿潤性を有する混合物を作製した。
【0068】
補強材用の帯状金網として、前記実施例1と同様の帯状金網を使用した。
【0069】
湿潤性を有する混合物及び帯状金網を使用し、前記実施例1と同様の方法で複合帯状素材を作製した。
【0070】
複合帯状素材を乾燥炉内で乾燥して混合物に含有された水分を蒸発、逸散させた後、乾燥後の複合帯状素材を切断して幅63mm、長さ175mm程度の複合帯状材(複合帯状材の質量:31.92g、複合帯状材中の帯状金網の質量:27.2g、膨張黒鉛粉末:3.81g、酸処理黒鉛粉末:0.19g、燐酸水素マグネシウム0.72g)を作製した。
【0071】
この複合帯状材を円筒状の芯金の外周面にうず巻き状に2周捲回して筒状母材を作製し、前記実施例1と同様の方法で、貫通孔を規定する円筒状の内周面と円筒状の外周面と環状の端面とを備えた内径22.1mm、外径29.35mm、長さ25mmの円筒状ガスケットを作製した。この円筒状ガスケットにおいて、補強材と耐熱材と気孔との含有率は、体積比で夫々46.9%、29.4%及び23.7%であった。
【0072】
実施例3
酸処理黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の酸処理黒鉛粉末を使用し、黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の膨張黒鉛粉末を使用し、無機バインダーとして、燐酸二水素アルミニウムを使用した。
【0073】
膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末とを質量比1:0.1の割合で配合すると共に膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末との質量1に対し燐酸二水素アルミニウムと蒸留水とを0.25:0.75の質量比で配合し、これらを混練して湿潤性を有する混合物を作製した。
【0074】
補強材用の帯状金網として、前記実施例1と同様の帯状金網を使用した。
【0075】
湿潤性を有する混合物及び帯状金網を使用し、前記実施例1と同様の方法で複合帯状素材を作製した。
【0076】
複合帯状素材を乾燥炉内で乾燥して混合物に含有された水分を蒸発、逸散させた後、複合帯状素材を切断して幅63mm、長さ175mm程度の複合帯状材(複合帯状材の質量:32.2g、複合帯状材中の帯状金網の質量:27.2g、膨張黒鉛粉末:3.64g、酸処理黒鉛粉末:0.36g、燐酸二水素アルミニウム:1g)を作製した。
【0077】
この複合帯状材を円筒状の芯金の外周面にうず巻き状に2周捲回して筒状母材を作製し、前記実施例1と同様の方法で、貫通孔を規定する円筒状の内周面と円筒状の外周面と環状の端面とを備えた内径22.1mm、外径29.35mm、長さ25mmの円筒状ガスケットを作製した。この円筒状ガスケットにおいて、補強材と耐熱材と気孔との含有率は、体積比で夫々46.9%、33.9%及び19.2%であった。
【0078】
実施例4
酸処理黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の酸処理黒鉛粉末を使用し、黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の膨張黒鉛粉末を使用し、無機バインダーとして、燐酸二水素アルミニウム(第一燐酸アルミニウム)を使用した。
【0079】
膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末とを質量比1:0.3の割合で配合すると共に膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末との質量1に対し燐酸二水素アルミニウムと蒸留水とを0.25:0.75の質量比で配合し、これらを混練して湿潤性を有する混合物を作製した。
【0080】
補強材用の帯状金網として、前記実施例1と同様の帯状金網を使用した。
【0081】
湿潤性を有する混合物及び帯状金網を使用し、前記実施例1と同様の方法で複合帯状素材を作製した。
【0082】
複合帯状素材を乾燥炉内で乾燥して混合物に含有された水分を蒸発、逸散させた後、複合帯状素材を切断して幅63mm、長さ175mm程度の複合帯状材(複合帯状材の質量:32.7g、複合帯状材中の帯状金網の質量:27.2g、膨張黒鉛粉末:3.38g、酸処理黒鉛粉末:1.02g、燐酸二水素アルミニウム:1.1g)を作製した。
【0083】
この複合帯状材を円筒状の芯金の外周面にうず巻き状に2周捲回して筒状母材を作製し、前記実施例1と同様の方法で、貫通孔を規定する円筒状の内周面と円筒状の外周面と環状の端面とを備えた内径22.1mm、外径29.35mm、長さ25mmの円筒状ガスケットを作製した。この円筒状ガスケットにおいて、補強材と耐熱材と気孔との含有率は、体積比で夫々46.9%、34.8%及び18.3%であった。
【0084】
実施例5
酸処理黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の酸処理黒鉛粉末を使用し、黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の膨張黒鉛粉末を使用し、無機バインダーとして、燐酸二水素カルシウム(第一燐酸カルシウム)を使用した。
【0085】
膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末とを質量比1:0.2の割合で配合すると共に膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末との質量1に対し燐酸二水素カルシウムと蒸留水とを0.25:0.75の質量比で配合し、これらを混練して湿潤性を有する混合物を作製した。
【0086】
補強材用の帯状金網として、前記実施例1と同様の帯状金網を使用した。
【0087】
湿潤性を有する混合物及び帯状金網を使用し、前記実施例1と同様の方法で複合帯状素材を作製した。
【0088】
複合帯状素材を乾燥炉内で乾燥して混合物に含有された水分を蒸発、逸散させた後、複合帯状素材を切断して幅63mm、長さ175mm程度の複合帯状材(複合帯状材の質量:32.7g、複合帯状材中の帯状金網の質量:27.2g、膨張黒鉛粉末:3.67g、酸処理黒鉛粉末:0.73g、燐酸二水素カルシウム:1.1g)を作製した。
【0089】
この複合帯状材を円筒状の芯金の外周面にうず巻き状に2周捲回して筒状母材を作製し、前記実施例1と同様の方法で、貫通孔を規定する円筒状の内周面と円筒状の外周面と環状の端面とを備えた内径22.1mm、外径29.35mm、長さ25mmの円筒状ガスケットを作製した。この円筒状ガスケットにおいて、補強材と耐熱材と気孔との含有率は、体積比で夫々46.9%、34.0%及び19.1%であった。
【0090】
実施例6
酸処理黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の酸処理黒鉛粉末を使用し、黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の膨張黒鉛粉末を使用し、無機バインダーとして、燐酸水素カルシウム(第二燐酸カルシウム)を使用した。
【0091】
膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末とを質量比1:0.1の割合で配合すると共に膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末との質量1に対し、燐酸水素カルシウムと蒸留水とを0.2:0.8の質量比で配合し、これらを混練して湿潤性を有する混合物を作製した。
【0092】
補強材用の帯状金網として、前記実施例1と同様の帯状金網を使用した。
【0093】
湿潤性を有する混合物及び帯状金網を使用し、前記実施例1と同様の方法で複合帯状素材を作製した。
【0094】
複合帯状素材を乾燥炉内で乾燥して混合物に含有された水分を蒸発、逸散させた後、複合帯状素材を切断して幅63mm、長さ175mm程度の複合帯状材(複合帯状材の質量:32.0g、複合帯状材中の帯状金網の質量:27.2g、膨張黒鉛粉末:3.64g、酸処理黒鉛粉末:0.36g、燐酸水素カルシウム:0.8g)を作製した。
【0095】
この複合帯状材を円筒状の芯金の外周面にうず巻き状に2周捲回して筒状母材を作製し、前記実施例1と同様の方法で、貫通孔を規定する円筒状の内周面と円筒状の外周面と環状の端面とを備えた内径22.1mm、外径29.35mm、長さ25mmの円筒状ガスケットを作製した。この円筒状ガスケットにおいて、補強材と耐熱材と気孔との含有率は、体積比で夫々46.9%、29.4%及び気孔23.7%であった。
【0096】
実施例7
酸処理黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の酸処理黒鉛粉末を使用し、黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の膨張黒鉛粉末を使用し、無機バインダーとして、燐酸(H
3PO
4:75%水溶液)を使用した。
【0097】
膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末とを質量比1:0.3の割合で配合すると共に膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末との質量1に対し、燐酸を0.25の質量比で配合し、これらを混練して湿潤性を有する混合物を作製した。
【0098】
補強材用の帯状金網として、前記実施例1と同様の帯状金網を使用した。
【0099】
湿潤性を有する混合物及び帯状金網を使用し、前記実施例1と同様の方法で複合帯状素材を作製した。
【0100】
複合帯状素材を乾燥炉内で乾燥して混合物に含有された水分を蒸発、逸散させた後、複合帯状素材を切断して幅63mm、長さ175mm程度の複合帯状材(複合帯状材の質量:32.2g、複合帯状材中の帯状金網の質量:27.2g、膨張黒鉛粉末:3.1g、酸処理黒鉛粉末:0.9g、燐酸:1g)を作製した。
【0101】
この複合帯状材を円筒状の芯金の外周面にうず巻き状に2周捲回して筒状母材を作製し、前記実施例1と同様の方法で、貫通孔を規定する円筒状の内周面と円筒状の外周面と環状の端面とを備えた内径22.1mm、外径29.35mm、長さ25mmの円筒状ガスケットを作製した。この円筒状ガスケットにおいて、補強材と耐熱材と気孔との含有率は、体積比で夫々46.9%、32.4%及び20.7%であった。
【0102】
実施例8
酸処理黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の酸処理黒鉛粉末を使用し、黒鉛粉末として、前記実施例1と同様の膨張黒鉛粉末を使用し、無機バインダーとして、前記実施例1と同様の燐酸水素マグネシウムを使用した。
【0103】
膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末とを質量比1:0.5の割合で配合すると共に、膨張黒鉛粉末と酸処理黒鉛粉末との質量1に対し、燐酸水素マグネシウムと蒸留水とを0.25:0.75の質量比で配合し、これらを混練して湿潤性を有する混合物を作製した。
【0104】
補強材用の帯状金網として、前記実施例1と同様の帯状金網を使用した。
【0105】
湿潤性を有する混合物及び帯状金網を使用し、前記実施例1と同様の方法で複合帯状素材を作製した。
【0106】
複合帯状素材を乾燥炉内で乾燥して混合物に含有された水分を蒸発、逸散させた後、複合帯状素材を切断して幅63mm、長さ175mm程度の複合帯状材(複合帯状材の質量:32.2g、複合帯状材中の帯状金網の質量:27.2g、膨張黒鉛粉末:2.67g、酸処理黒鉛粉末:1.33g、燐酸水素マグネシウム:1.0g)を作製した。
【0107】
この複合帯状材を円筒状の芯金の外周面にうず巻き状に2周捲回して筒状母材を作製し、前記実施例1と同様の方法で、貫通孔を規定する円筒状の内周面と円筒状の外周面と環状の端面とを備えた内径22.1mm、外径29.35mm、長さ25mmの円筒状ガスケットを作製した。この円筒状ガスケットにおいて、補強材と耐熱材と気孔との含有率は、体積比で夫々46.9%、31.3%及び21.8%であった。
【0108】
比較例1
密度が1.2Mg/m
3であって、厚さが0.4mmの幅75mm、長さ257mmの寸法に切断した短冊状の耐熱材用の膨張黒鉛シート片を準備した。
【0109】
金属細線として、線径0.15mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を一本使用して網目の目幅が縦4.00mm、横3.0mm程度の円筒状編組金網を作製し、これを一対のローラ間に通して幅68mmの連続した帯状金網とし、該帯状金網を長さ257mmの寸法に切断して、これを補強材用の帯状金網とした。
【0110】
円筒状ガスケットの環状の端面となる補強材用の帯状金網の幅方向の両端縁から膨張黒鉛シート片が幅方向にはみ出していると共に、膨張黒鉛シート片の長さ方向の一方の端縁と当該端縁に対応する膨張黒鉛シート片の長さ方向の端縁を合致させて当該膨張黒鉛シート片と帯状金網とを互いに重ね合わせた重合体を作製した。
【0111】
円筒状の芯金の外周面に、重合体を、膨張黒鉛シート片を内側にしてうず巻き状であって膨張黒鉛シート片が1周多くなるように捲回して、内周面側及び外周面側の両方に膨張黒鉛シート片が露出した筒状母材を作製した。この筒状母材においては、膨張黒鉛シート片の幅方向の両端部は夫々帯状金網の幅方向に突出し(はみ出し)ている。
【0112】
内面に貫通孔を有するキャビティの該貫通孔に段付きコアを嵌挿することによって内部に中空円筒部が形成された
図8に示す金型を準備し、該金型の段付きコアに筒状母材を挿入した。
【0113】
金型の中空円筒部に配した筒状母材をコア軸方向に196N/mm
2(2トン/cm
2)の圧力で圧縮成形し、貫通孔を規定する円筒状の内周面と円筒状の外周面と環状端面とを備えた内径22.1mm、外径29.4mm、長さ25mmの円筒状ガスケットを作製した。この円筒状ガスケットにおいて、圧縮された帯状金網からなる補強材と同じく圧縮された膨張黒鉛シート片からなる耐熱材と気孔との含有率は、体積比で夫々補強材9.8%、耐熱材49.6%及び気孔40.5%であった。
【0114】
比較例2
前記比較例1と同様の耐熱材用の膨張黒鉛シート片を準備した。
【0115】
金属細線として、前記比較例1と同様の線径0.15mmのオーステナイト系ステンレス鋼線を七本使用して網目の目幅が縦4.00mm、横3.0mm程度の円筒状編組金網を作製し、これを一対のローラ間に通して幅68mmの連続した帯状金網とし、該帯状金網を長さ257mmの寸法に切断して、これを補強材用の帯状金網とした。
【0116】
以下、前記比較例1と同様の方法で、内径22.1mm、外径29.4mm、長さ25mmの円筒状ガスケットを作製した。この円筒状ガスケットにおいて、補強材と耐熱材と気孔の含有率は、体積比で夫々補強材43.4%、耐熱材15.1%、気孔41.5%であった。
【0117】
次に、上記した実施例1ないし実施例8並びに比較例1及び比較例2で得た円筒状ガスケットを
図9に示す差し込み型排気管継手に組込み、ガス漏れ量(l/min)及び締結バンドによる締付けトルクの低下率(%)について試験した。
【0118】
<ガス漏れ量の試験条件及び試験方法>
<ガス漏れ量の試験条件>
締結バンドによる締付け力:12N・m
加振角度:±0.5°(内管固定)
加振周波数(揺動速度):50Hz
温度(
図9に示す内管の外表面温度):室温(25℃)〜500℃
試験時間:24時間
【0119】
<ガス漏れ量の試験方法>
室温(25℃)において50Hzの加振周波数で±0.5°の揺動運動を継続しながら1時間で500℃の温度まで昇温し、その温度を22時間保持した状態で揺動運動を継続し、22時間経過後、1時間で室温まで降温し、室温(試験開始前)でのガス漏れ量と試験時間24時間経過後のガス漏れ量を測定した。
【0120】
<ガス漏れ量の測定方法>
図9に示す差し込み型排気管継手の外管の開口部を閉塞し、内管側から、30kPaの圧力で乾燥空気を流入し、継手部分(内管と外管との間の隙間)からのガス漏れ量を流量計にて、(1)試験初期(試験開始直後)及び(2)24時間経過後の2回測定した。
【0121】
表1ないし表3は、上記試験結果を示す。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
【表3】
【0125】
表1ないし表3に示す試験結果から、実施例1ないし実施例8からなる円筒状ガスケットは、ガス漏れ量及び締付けトルクの低下率において、比較例1及び比較例2からなる円筒状ガスケットよりも優れていることがわかる。各実施例からなる円筒状ガスケットのガス漏れ量は、試験開始直後においては比較例1の円筒状ガスケットのガス漏れ量よりも多い傾向を示したが、各実施例の円筒状ガスケットのガス漏れ量は、試験時間の経過とともに減少傾向を示し、24時間経過後のガス漏れ量は極めて低いガス漏れ量であった。これは、試験時間の経過とともに排気管の温度上昇により円筒状ガスケットに体積膨張を来たし、該円筒状ガスケットの体積膨張により、円筒状ガスケットの内、外周面は、内管の円筒状の外周面及び外管の円筒状の内周面に密に当接し、両者間の隙間を閉塞したため、当該隙間からのガス漏れが減少したものと推察される。
【0126】
これに対し、比較例1からなる円筒状ガスケットは、試験時間の経過とともにガス漏れ量が増大する傾向を示したが、これは締付けトルクの低下率が当初の半分以下に減少し、該円筒状ガスケットにヘタリを生じて両者間の隙間が増大したことによるものと推察される。また、比較例2からなる円筒状ガスケットは、剛性に特化したガスケットであり、締付けトルクの低下率は、各実施例の円筒状ガスケットと大きな差は認められなかったが、試験開始直後から24時間経過後の試験時間を通してガス漏れ量が多い傾向を示した。
【0127】
以上説明したように、本発明の円筒状ガスケットは、補強材と耐熱材とが互いに絡み合って構造的一体性を有すると共に補強材は円筒状の内周面から円筒状の外周面にかけて径方向に密に含有されており、補強材と耐熱材と気孔との含有率が体積比で夫々補強材32〜60%、耐熱材5〜58%及び気孔10〜35%であるので、締結バンドによる締付け力や振動による荷重に対する剛性を備えており、また当該補強材の金網の網目は耐熱材で充填されていると共に、該円筒状ガスケットは、差し込み型排気管継手に組込まれると、排気管内を流動する排気ガスの熱の作用で体積膨張を来たし、円筒状ガスケットの内、外周面は、内管の円筒状の外周面及び外管の円筒状の内周面に密に当接し両者間の隙間を閉塞するので、排気管と円筒状ガスケットとの間の隙間の密封性にも優れている。したがって、本発明の円筒状ガスケットは、差し込み型排気管継手に組込まれ、締結バンドによって強固に締め付けられてもヘタリ等の不具合を生じることがなく、悪路走行により当該継手部位に振動荷重、曲げトルクや内、外管間にこじれが繰り返し生じた場合においても、排気管の継手部位からのガス漏れを極力防止することができる。