特許第5884462号(P5884462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5884462
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/17 20060101AFI20160301BHJP
   B60T 13/18 20060101ALI20160301BHJP
   B60T 13/68 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
   B60T8/17 C
   B60T13/18
   B60T13/68
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-280073(P2011-280073)
(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公開番号】特開2013-129314(P2013-129314A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 聡
【審査官】 本庄 亮太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−264795(JP,A)
【文献】 特開2006−264359(JP,A)
【文献】 特開2008−024098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/17
B60T 13/18
B60T 13/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ液が給排出されてマスタピストン(311、312)を駆動する駆動液圧室(316)を形成するマスタシリンダ(3)と、
前記駆動液圧室(316)内にブレーキ液を供給または前記駆動液圧室(316)内のブレーキ液を排出して、当該駆動液圧室(316)の駆動液圧を調整する電動式調圧部と、
ブレーキ操作部材(2)の操作に応じて圧縮または膨張する反力室(303)を形成し、前記ブレーキ操作部材(2)の操作量に応じた反力液圧を前記反力室(303)内に発生させる反力発生部と、を備えるブレーキ装置であって、
ブレーキ液のリザーバ(10)と、
前記反力室(303)と前記駆動液圧室(316)との間を接続する室間ブレーキ液経路(A)と、
前記リサーバ(10)を前記室間ブレーキ液経路(A)に接続するリザーバ経路(B)と、
前記リザーバ経路(B)に配設された常閉型の弁装置(6c、6d、6e、6h)とを備え、
前記電動式調圧部は、前記駆動液圧室(316)に直接接続され同駆動液圧室(316)にブレーキ液を供給する電動式の駆動ポンプ(7、7b)を有して構成され、
前記電動式調圧部及び前記反力発生部に含まれる電磁弁の少なくとも1つは、前記室間ブレーキ液経路(A)に配設された常開型の電磁弁(6a、6b、6f)であり、非通電状態において、前記室間ブレーキ液経路(A)が連通状態となるように構成されており、
前記電動式調圧部は、前記室間ブレーキ液経路(A)のうち前記リザーバ経路(B)との接続部と前記駆動液圧室(316)との間の部分に配設された駆動液圧制御弁(6b)を有して構成されていることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
前記駆動ポンプ(7b)は、前記室間ブレーキ液経路(A)のうち前記駆動液圧制御弁(6b)と前記駆動液圧室(316)との間の部分に接続されていることを特徴とする請求項に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記反力発生部は、前記反力室(303)に接続され同反力室(303)にブレーキ液を供給する反力ポンプ(7a)と、
前記室間ブレーキ液経路(A)のうち前記リザーバ経路(B)との接続部と前記反力室(303)との間の部分に配設された反力圧制御弁(6a)を有して構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記反力ポンプ(7a)は、前記室間ブレーキ液経路(A)のうち前記反力圧制御弁(6a)と前記反力室(303)との間の部分に接続されていることを特徴とする請求項に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
ブレーキ液が給排出されてマスタピストン(311、312)を駆動する駆動液圧室(316)を形成するマスタシリンダ(3)と、
前記駆動液圧室(316)内にブレーキ液を供給または前記駆動液圧室(316)内のブレーキ液を排出して、当該駆動液圧室(316)の駆動液圧を調整する電動式調圧部と、
ブレーキ操作部材(2)の操作に応じて圧縮または膨張する反力室(303)を形成し、前記ブレーキ操作部材(2)の操作量に応じた反力液圧を前記反力室(303)内に発生させる反力発生部と、を備えるブレーキ装置であって、
ブレーキ液のリザーバ(10)と、
前記反力室(303)と前記駆動液圧室(316)との間を接続する室間ブレーキ液経路(A)と、
前記リサーバ(10)を前記室間ブレーキ液経路(A)に接続するリザーバ経路(B)と、
前記リザーバ経路(B)に配設された常閉型の弁装置(6c、6d、6e、6h)とを備え、
前記電動式調圧部は、前記駆動液圧室(316)に直接接続され同駆動液圧室(316)にブレーキ液を供給する電動式の駆動ポンプ(7、7b)を有して構成され、
前記電動式調圧部及び前記反力発生部に含まれる電磁弁の少なくとも1つは、前記室間ブレーキ液経路(A)に配設された常開型の電磁弁(6a、6b、6f)であり、非通電状態において、前記室間ブレーキ液経路(A)が連通状態となるように構成されており、 前記反力発生部は、ストロークシミュレータ(16)と、前記室間ブレーキ液経路(A)のうち前記リザーバ経路(B)との接続部と前記反力室(303)との間の部分に前記ストロークシミュレータ(16)を接続するストロークシミュレータ経路(E)と、前記室間ブレーキ液経路(A)のうち前記ストロークシミュレータ経路(E)との接続部と前記リザーバ経路(B)との接続部との間の部分に配設された常開型の第1制御弁(6f)と、前記ストロークシミュレータ経路(E)に配設された常閉型の第2制御弁(6g)とを有して構成され、
前記電動式調圧部は、前記リザーバ経路(B)に配設された常開型の電磁弁(6i)を有して構成されていることを特徴とするブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サービスブレーキと回生ブレーキとの協調を行う回生協調制御を行うことができるブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、制動時のエネルギーを回生エネルギーとして回収すべく、回生協調制御が行われている。回生協調制御では、ドライバによってブレーキペダルが踏み込まれたときに、サービスブレーキに代えて回生ブレーキを発生させる。この回生協調制御を行うに際し、ブレーキペダルの踏み込みによって入力ピストンが移動させられるが、このときに入力ピストンが出力ピストン(マスタシリンダ(以下、M/Cという)に備えられるM/Cピストン)に接してM/C圧を発生させてしまうと、サービスブレーキによる制動力を発生させて回生効率の低下を招く。
【0003】
これを防止すべく、特許文献1において、入力ピストンと出力ピストンとの間に、回生ブレーキの制動量に対応するストローク量を見込んだ隙間を設置した構造の車両用制動装置が提案されている。このように入力ピストンと出力ピストンの間に隙間を設けることにより、回生協調時に、発生させ得る最大の回生ブレーキが発生させられるまで入力ピストンが出力ピストンに接しないようにでき、最大量の回生効率を達成することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−55588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電気系統(例えばブレーキECU)が故障した電源失陥時には、出力ピストンを直接押圧して制動力を発生させなければならず、上記のような入力ピストンと出力ピストンの間の隙間は無効ストロークとなる。このため、制動作動時の応答性不足を招くことになり、隙間の大きさによってはM/Cからホイールシリンダ(以下、W/Cという)に出力されるブレーキ液量が十分ではなくなる可能性がある。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、回生効率を確保しつつ、無効ストロークを無くすことが可能なブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、マスタピストン(311、312)を駆動する駆動液圧室(316)とブレーキ操作部材(2)の操作に応じて圧縮または膨張する反力室(303)を形成し、電動式調圧部にて駆動液圧室(316)内にブレーキ液を供給または駆動液圧室(316)内のブレーキ液を排出して、当該駆動液圧室(316)の駆動液圧を調整すると共に、反力発生部にてブレーキ操作部材(2)の操作量に応じた反力液圧を反力室(303)内に発生させるブレーキ装置において、ブレーキ液のリザーバ(10)と、反力室(303)と駆動液圧室(316)との間を接続する室間ブレーキ液経路(A)と、りサーバ(10)を室間ブレーキ液経路(A)に接続するリザーバ経路(B)と、リザーバ経路(B)に配設された常閉型の弁装置(6c、6d、6e、6h)とを備え、電動式調圧部は、駆動液圧室(316)に直接接続され同駆動液圧室(316)にブレーキ液を供給する電動式の駆動ポンプ(7、7b)を有して構成され、電動式調圧部及び反力発生部に含まれる電磁弁の少なくとも1つは、室間ブレーキ液経路(A)に配設された常開型の電磁弁(6a、6b、6f)であり、非通電状態において、室間ブレーキ液経路(A)が連通状態となるように構成されていることを特徴としている。
【0008】
このようなブレーキ装置において、正常時に回生協調制御を実行する際には、電磁弁(6a、6b、6f)および弁装置(6c、6d、6e、6h)によって駆動液圧室(316)に発生させられる駆動液圧を制御すると共に反力室(303)内に発生させる反力液圧を制御する。これにより、発生させ得る最大の回生ブレーキが発生させられるまでM/C圧を発生させないようにすることで、最大の回生効率を得ることが可能となる。また、電源失陥時には、電磁弁(6a、6b、6f)により室間ブレーキ液経路(A)が連通状態となるため、室間ブレーキ液経路(A)を通じて反力室(303)内のブレーキ液が駆動液圧室(316)に移動することで、無効ストローク無くブレーキ操作部材の操作量に応じた制動力を発生させることができる。したがって、回生効率を確保しつつ、電源失陥時に無効ストロークをなくすことが可能となる。
【0009】
さらに、駆動液圧室(316)内に駆動液圧を発生させる際に、駆動ポンプ(7、7b)から駆動液圧室(316)に至るまでの経路中に何も電磁弁などのオリフィスとなる圧力回路要素が配置されていない。このため、電磁弁などのオリフィスとなる圧力回路要素を通過してからブレーキ液を流動させる場合と比較して、圧力回路要素内に存在するオリフィスを通過する必要がないため、応答性を向上させることが可能となる。
【0010】
また、請求項に記載の発明では、電動式調圧部は、室間ブレーキ液経路(A)のうちリザーバ経路(B)との接続部と駆動液圧室(316)との間の部分に配設された駆動液圧制御弁(6b)を有して構成されていることを特徴としている。
【0011】
これにより、室間ブレーキ液経路(A)のうちリザーバ経路(B)との接続部と駆動液圧室(316)との間の部分を、駆動液圧室(316)からリザーバ(10)へのブレーキ液の排出経路として利用でき、回路構成の簡素化を図ることが可能となる。
【0012】
請求項に記載の発明では、駆動ポンプ(7b)は、室間ブレーキ液経路(A)のうち駆動液圧制御弁(6b)と駆動液圧室(316)との間の部分に接続されていることを特徴としている。
【0013】
これにより、室間ブレーキ液経路(A)のうち駆動ポンプ(7b)との接続部から駆動液圧室(316)との間の部分を、駆動ポンプ(7b)から駆動液圧室(316)へのブレーキ液の供給経路として利用でき、回路構成の簡素化を図ることが可能となる。
【0014】
請求項に記載の発明では、反力発生部は、反力室(303)に接続され同反力室(303)にブレーキ液を供給する反力ポンプ(7a)と、室間ブレーキ液経路(A)のうちリザーバ経路(B)との接続部と反力室(303)との間の部分に配設された反力圧制御弁(6a)を有して構成されていることを特徴としている。
【0015】
これにより、室間ブレーキ液経路(A)のうちリザーバ経路(B)との接続部と反力室(303)との間の部分を、反力室(303)からリザーバ(10)へのブレーキ液の排出経路として利用でき、回路構成の簡素化を図ることが可能となる。
【0016】
請求項に記載の発明では、反力ポンプ(7a)は、室間ブレーキ液経路(A)のうち反力圧制御弁(6a)と反力室(303)との間の部分に接続されていることを特徴としている。
【0017】
これにより、室間ブレーキ液経路(A)のうち反力ポンプ(7a)との接続部と反力室(303)との間の部分を、反力ポンプ(7a)から反力室(303)へのブレーキ液の供給経路として利用でき、回路構成の簡素化を図ることが可能となる。
【0018】
請求項に記載の発明では、反力発生部は、ストロークシミュレータ(16)と、室間ブレーキ液経路(A)のうちリザーバ経路(B)との接続部と反力室(303)との間の部分にストロークシミュレータ(16)を接続するストロークシミュレータ経路(E)と、室間ブレーキ液経路(A)のうちストロークシミュレータ経路(E)との接続部とリザーバ経路(B)との接続部との間の部分に配設された常開型の第1制御弁(6f)と、ストロークシミュレータ経路(E)に配設された常閉型の第2制御弁(6g)とを有して構成され、電動式調圧部は、リザーバ経路(B)に配設された常開型の電磁弁(6i)を有して構成されていることを特徴としている。
【0019】
このような構成とすることで、反力発生部をモータやポンプ無しで構成できることから、回路構成の簡略化を図ることが可能となる。
【0020】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態にかかる車両用のブレーキ装置1の全体構成を示した回路模式図である。
図2】本発明の第2実施形態にかかる車両用のブレーキ装置1の全体構成を示した回路模式図である。
図3】本発明の第3実施形態にかかる車両用のブレーキ装置1の全体構成を示した回路模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0023】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態が適用された車両用のブレーキ装置1の全体構成を示したものである。以下、図1を参照して、本実施形態のブレーキ装置1について説明する。
【0024】
図1に示されるように、ブレーキ装置1には、ブレーキペダル2、M/C3、W/C4a〜4d、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5、弁装置を構成する第1〜第3制御弁6a〜6c、第1、第2ポンプ7a、7b、第1、第2モータ8a、8bおよびブレーキECU9などが備えられている。
【0025】
ブレーキペダル2は、ドライバによって踏み込まれることにより、M/C3内に備えられた入力ピストン301を押圧する。ブレーキペダル2の操作量は、操作量センサ21によって検出される。操作量センサ21は、例えばストロークセンサや踏力センサ等で構成され、操作量センサ21の検出信号がブレーキECU9に伝えられることで、ブレーキECU9でブレーキペダル2の操作量が把握できるようにされている。なお、ここではブレーキ操作部材としてブレーキペダル2を例に上げているが、ブレーキレバーなどを適用することもできる。
【0026】
M/C3は、入力部30と出力部31およびマスタリザーバ32とによって構成されており、入力部30にはブレーキペダル2の踏み込みに応じて移動させられる入力ピストン301が備えられ、出力部31にはサービスブレーキを発生させる際に移動させられる出力ピストンに相当するM/Cピストン311、312が備えられている。
【0027】
入力部30には、ブレーキペダル2の踏み込みに応じて付勢される入力ピストン301と、入力ピストン301が摺動させられると共にブレーキ液が収容される空間を形成するシリンダ部302とが備えられている。
【0028】
入力ピストン301は、受圧部301aと摺動部301bおよび押圧部301cを有した構成とされている。受圧部301aは、ブレーキペダル2の踏力が入力される部分であり、シリンダ部302の一端に備えられた開口部302a内に挿入されている。摺動部301bは、受圧部301aよりも径大とされ、シリンダ部302の内径と同寸法ないし若干縮径されている。この摺動部301bの外周面には、Oリングなどで構成されるシール部材301d、301eが備えられ、摺動部301bとシリンダ部302との間のシールが行われている。押圧部301cは、摺動部301bよりも縮径され、かつ、摺動部301bから出力部31側に向かって軸方向に突き出した構成とされている。押圧部301cの先端はM/Cピストン311から隙間Sだけ離間して配置されている。
【0029】
また、押圧部301cおよび摺動部301bの内部には、押圧部301cの先端から摺動部301bの外周面におけるシール部材301eよりもブレーキペダル2側に繋がる連通通路301fが備えられている。この連通通路301fにより隙間Sによって形成される押圧部301cの先端とM/Cピストン311との間の空間内のブレーキ液が流動できるようになっている。
【0030】
シリンダ部302は、シール部材301d、301eによって摺動部301bの外周面と当該シリンダ部302の内壁面との間のシールを確保しつつ、入力ピストン301を軸方向において摺動させる。シリンダ部302には、受圧部301aが挿入される開口部302aと、大気圧とされているマスタリザーバ32と連通させるための連通通路302bと、第1〜第3制御弁6a〜6cおよび第1、第2ポンプ7a、7bなどによって構成される液圧回路と連通させるための連通通路302cが形成されている。開口部302aの内壁面には、シール部材302dが備えられ、シリンダ部302の開口部302aと受圧部301aの外周面との間がシールされている。
【0031】
このような構造により入力部30が構成されている。このように構成された入力部30では、入力ピストン301がシリンダ部302内に配置されることにより、シリンダ部302内における摺動部301bよりも出力部31側に、ブレーキペダル2の操作に応じて圧縮または膨張する反力室303が構成される。この反力室303が連通通路302cを介して第1〜第3制御弁6a〜6cおよび第1、第2ポンプ7a、7bなどによって構成される液圧回路に接続されている。
【0032】
また、シリンダ部302内におけるシール部材301eよりもブレーキペダル2側において、摺動部301bの外周および摺動部301bよりもブレーキペダル2側の部位による背室304が構成されている。この背室304は、押圧部301cおよび摺動部301b内に形成された連通通路301fを通じて、隙間Sによって形成される押圧部301cの先端とM/Cピストン311との間の空間と連通させられる。そして、入力ピストン301の移動に基づいて、隙間Sによって形成される押圧部301cの先端とM/Cピストン311との間の空間と背室304の容積が変位するが、その容積の変位量が等しくなるように、シリンダ部302の内径および受圧部301aの外径との差分の面積と、押圧部301cの先端の面積とが一致させられている。このため、入力ピストン301がシリンダ部302内において軸方向の双方のいずれかに移動させられても、それによる反力が発生しないようにできる。
【0033】
なお、連通通路302bは、ブレーキペダル2の踏み込みが行われる前の状態において、シール部材301dよりもブレーキペダル2から離れる側に配置されているが、ブレーキペダル2の踏み込みによって入力ピストン301が移動させられると、直ぐにシール部材301dよりもブレーキペダル2側に位置するように配置されている。このため、ブレーキペダル2が踏み込まれると直ぐに反力室303内とマスタリザーバ32とが遮断され、反力室303内のブレーキ液圧である反力液圧を高められるようになっている。
【0034】
出力部31は、M/Cピストン311、312とシリンダ部313およびリターンスプリング314、315を有した構成とされている。
【0035】
M/Cピストン311、312は、M/Cピストン311をプライマリピストン、M/Cピストン312をセカンダリピストンとして、M/Cピストン311がM/Cピストン312よりも入力ピストン301側となるように、シリンダ部313内に同軸的に配置されている。これらM/Cピストン311、312は、有底円筒状とされ、底部311a、312aが入力ピストン301側を向けられてシリンダ部313内に配置されている。これにより、M/Cピストン311の底部とシリンダ部313の一端面313aとの間に、ブレーキ液が給排出されてM/Cピストン311、312を駆動する駆動液圧室316が構成される。また、M/Cピストン311とM/Cピストン312の間のプライマリ室317およびM/Cピストン312とシリンダ部313の他端との間のセカンダリ室318が構成される。
【0036】
シリンダ部313は、両端面313a、313bを有する中空筒形状を為しており、その中空部内にM/Cピストン311、312を収容している。
【0037】
シリンダ部313の外周壁には、連通通路313c〜313gが形成されている。連通通路313c、313dは、M/Cピストン311、312がサービスブレーキの発生させられていない状態である初期位置に位置しているときに、大気圧とされているマスタリザーバ32とプライマリ室317およびセカンダリ室318をそれぞれ連通させる。これら連通通路313c、313dは、M/Cピストン311、312が初期位置から移動させられると、M/Cピストン311、312の外周面によって遮断される。連通通路313eは、第1〜第3制御弁6a〜6cおよび第1、第2ポンプ7a、7bなどによって構成される液圧回路と駆動液圧室316とを連通させている。連通通路313f、313gは、プライマリ室317とセカンダリ室318とブレーキ液圧回路における第1配管系統と第2配管系統とを連通させている。
【0038】
また、シリンダ部313の内径は、M/Cピストン311の底部側において拡大されている。また、シリンダ部313の一端面313aからM/Cピストン311側に向かって突き出す突起部313hが備えられ、それによりシリンダ部313の一端面313aとM/Cピストン311の底部との間に隙間が設けられている。これらシリンダ部313の内径が拡大された部分およびシリンダ部313の一端面313aとM/Cピストン311の底部との間の隙間によって、駆動液圧室316が構成されている。
【0039】
なお、図中では、シリンダ部313が単一部材のように図示してあるが、複数部材を組み合わせて一体化することで構成される。
【0040】
リターンスプリング314、315は、それぞれ、M/Cピストン311とM/Cピストン312との間およびM/Cピストン312とシリンダ部313の他端面313bとの間に配置されている。これらリターンスプリング314、315は、M/Cピストン312が紙面左側に付勢されたときに反力を発生させると共に、サービスブレーキを発生させないときにM/Cピストン311、312を入力ピストン301側に戻す役割を果たす。
【0041】
このような構造により、出力部31が構成されている。そして、入力部30と出力部31は、両シリンダ部302、313の先端部が接続されること、具体的にはシリンダ部313の一端面313aにおける突起部313hと反対側の挿入部313iがシリンダ部302内に嵌め込まれることで一体化され、M/C3が構成されている。なお、挿入部313iの外周側には、Oリングなどによって構成されたシール部材313jが備えられ、シリンダ部302との密閉性が確保されている。また、挿入部313iの内周側にも、Oリングなどで構成されたシール部材313kが備えられ、反力室303とM/Cピストン311の底部側との密閉性が確保されている。
【0042】
W/C4a〜4dは、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5を介して、プライマリ室317もしくはセカンダリ室318とそれぞれ連通させられている。例えば、前後配管の場合には、左右前輪FL、FRのW/C4a、4bが第1配管系統を介してプライマリ室317に接続され、左右後輪RL、RRのW/C4c、4dが第2配管系統を介してセカンダリ室318に接続される。そして、M/C3のプライマリ室317およびセカンダリ室318に対して同圧のブレーキ液圧(M/C圧)が発生させられると、それがブレーキ液圧制御用アクチュエータ5を介して各W/C4a〜4dに伝えられることでW/C圧が発生させられ、各車輪FL〜RRに制動力が発生させられる。
【0043】
ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5は、W/C圧を調整するためのブレーキ液圧回路を構成するものである。具体的には、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5は、金属製のハウジングに対してブレーキ液圧の制御を行うための複数の配管を形成し、各種電磁弁やポンプがハウジング内に形成された配管に接続されると共に、ポンプ駆動用のモータがハウジングに固定されることで、M/C3とW/C4a〜4dとの間のブレーキ液圧回路を構成する。そして、ブレーキECU9が各種電磁弁を駆動したり、モータを駆動してポンプを作動させることで、ブレーキ液圧回路内のブレーキ液圧を制御し、W/C圧の調整を行う。なお、このブレーキ液圧制御用アクチュエータ5の構造については、周知であるため、ここでは詳細説明については省略する。
【0044】
第1〜第3制御弁6a〜6cは、それぞれ本発明の反力圧制御弁、駆動液圧制御弁、弁装置に相当するものであり、第1、第2制御弁6a、6bが常開型、第3制御弁6cが常閉型とされている。第1、第2ポンプ7a、7bは、それぞれ反力ポンプと駆動ポンプを構成するもので、第1、第2モータ8a、8bの駆動に基づいてブレーキ液の吸入吐出作動を行う。これらのうち、第1制御弁6aや第1ポンプ7aおよび第1モータ8aにより、ブレーキペダル2の操作に応じて反力室303を圧縮または膨張させてブレーキペダル2の操作量に応じた反力液圧を発生させる反力発生部を構成している。また、第2制御弁6bや第2ポンプ7bおよび第2モータ8bにより、駆動液圧室316内にブレーキ液を供給または駆動液圧室316内のブレーキ液を排出して駆動液圧室316内の駆動液圧を調整する電動式調圧部を構成している。
【0045】
具体的には、第1〜第3制御弁6a〜6cおよび第1、第2ポンプ7は、入力部30における反力室303と出力部31における駆動液圧室316との間に備えられる液圧回路を構成している。反力室303と駆動液圧室316との間が管路Aにて接続されており、この管路A中に常開型の第1、第2制御弁6a、6bが備えられている。また、管路A中における第1、第2制御弁6a、6bの間と大気圧リザーバ10との間が管路Bにて接続されており、この管路B中に常閉型の第3制御弁6cが備えられている。また、管路A中における反力室303と第1制御弁6aの間に管路C1が接続されていると共に、管路A中における駆動液圧室316と第2制御弁6bとの間に管路C2が接続されている。さらに、大気圧リザーバ10と管路C1、C2の間が管路Dにて接続されており、これら管路Dと管路C1、C2との接続点に第1、第2ポンプ7a、7bが備えられている。なお、第1、第2制御弁6a、6bに対して並列に、また各ポンプ7a、7bの吐出口側に、チェック弁11が備えられており、閉弁時における駆動液圧室316側から反力室303もしくは大気圧リザーバ10へのブレーキ液の流動や、第1、第2ポンプ7a、7bの吐出口への高圧印加が行われないような構成としてある。なお、本実施形態では、管路Aが室間ブレーキ液経路に、管路Bがリザーバ経路に相当する。
【0046】
また、管路C1もしくは管路Aにおける第1制御弁6aよりも反力室303側の部位には第1圧力センサ12が備えられ、管路C2もしくは管路Aにおける第2制御弁6bよりも駆動液圧室316側の部位には第2圧力センサ13が備えられている。これら第1、第2圧力センサ12、13により、反力室303内の反力液圧および駆動液圧室316内の駆動液圧がモニタされ、その検出信号がブレーキECU9に入力される。そして、これら反力室303内の反力液圧および駆動液圧室316内の駆動液圧に基づいて、ブレーキECU9が第1〜第3制御弁6a〜6cを制御すると共に、第1、第2モータ8a、8bを駆動して第1、第2ポンプ7a、7bを作動させることで、回生制動時のブレーキペダル2の踏み込みに対する反力の発生や、M/C圧の調整などの動作を行っている。
【0047】
以上のようにして、本実施形態にかかるブレーキ装置1が構成されている。次に、このような構成のブレーキ装置1の作動について、正常時と異常(電源失陥)時それぞれに場合分けして説明する。
【0048】
(1)正常時の動作
正常時、つまりブレーキECU9等が故障しておらず、正常に第1〜第3制御弁6a〜6cや第1、第2モータ8a、8b等の駆動を行うことができる場合には、操作量センサ21や第1、第2圧力センサ12、13の検出信号に基づいてブレーキペダル2の操作量をモニタすると共に、反力室303や駆動液圧室316内のブレーキ圧をモニタする。そして、回生協調制御を行い、ブレーキペダル2の操作量がある程度に達するまでは、発生させ得る最大の回生ブレーキが発生させられるようにする。
【0049】
まず、第1モータ8aを駆動して第1ポンプ7aを作動させると共に、第3制御弁6cを連通状態に切替え、第1制御弁6aのソレノイドへの通電量を制御することで管路Aのうち第1制御弁6aを挟んで反応室303側と大気圧リザーバ10側との間の差圧量をリニアに制御する。これにより、第1ポンプ7aの吸入吐出動作および第1制御弁6aによって形成される差圧により反力室303内にブレーキ液が導入され、反力室303内の反力液圧が上昇し、入力ピストン301を介してブレーキペダル2に対してペダル反力を付与する。このとき、操作量センサ21および第1圧力センサ12のモニタ結果に基づいて、ブレーキペダル2の操作量に応じたペダル反力を発生させられるように、第1制御弁6aの差圧量を調整することによって反力室303内の反力液圧を調整する。
【0050】
また、第2制御弁6bについては、遮断状態にして反力室303と駆動液圧室316とが遮断されるようにしても良いが、特に制御せず連通状態のままとしている。この場合でも、駆動液圧室316が大気圧リザーバ10と連通状態となってブレーキ液圧が発生させられないため、ブレーキペダル2の踏み込みに伴って入力ピストン301における押圧部301cの先端がM/Cピストン311に接するまではM/C圧が発生させられない。
【0051】
したがって、回生協調制御において、発生させ得る最大の回生ブレーキが発生させられるまで入力ピストン301が出力ピストンであるM/Cピストン311に接しないようにできる。これにより、最大量の回生効率を達成することが可能となる。
【0052】
この後、ブレーキペダル2の操作量が大きくなり、回生ブレーキとして発生させ得る最大量に達すると、第2モータ8bを駆動して第2ポンプ7bを作動させる。そして、第2制御弁6bについては、ソレノイドへの通電量を制御することで管路Aのうち第2制御弁6bを挟んで駆動液圧室316側と大気圧リザーバ10側との間の差圧量をリニアに制御する。これにより、第2ポンプ7bの吸入吐出動作および第2制御弁6bによって形成される差圧により、第2ポンプ7bに対して電磁弁などのオリフィスとなる圧力回路要素を介することなく直接接続された駆動液圧室316内にブレーキ液が導入される。また、駆動液圧室316内のブレーキ液圧である駆動液圧が上昇し、M/Cピストン311、312が紙面左側に押圧されてM/C圧が発生させられる。そして、操作量センサ21および第2圧力センサ13のモニタ結果に基づいて第2モータ8bを制御し、駆動液圧室316内の駆動液圧を調整する。これにより、ブレーキペダル2の操作量に応じて発生させる制動力のうち回生ブレーキ分を除いた分を発生させることが可能となる。
【0053】
このようにしてM/C圧が発生させられると、それがブレーキ液圧制御用アクチュエータ5を介して各W/C4a〜4dに伝えられる。これにより、所望の制動力を発生させることが可能となる。このような構成では、第1、第2ポンプ7a、7bおよび第1、第2ポンプ8a、8bを備えているため、反力室303内の反力液圧の制御と駆動液圧室316内の駆動液圧の制御を別系統として分けて行うことができる。したがって、反力室303内の反力液圧と駆動液圧室316内の駆動液圧を独立して制御可能となり、最適なブレーキ液圧に制御できる。つまり、第1、第2制御弁6a、6bを独立して制御することで反力室303内の反力液圧と駆動液圧室316内の駆動液圧を独立して制御できるため、各系統の相互干渉の影響なく、最適なブレーキ液圧に制御できる。そして、反力室303内の反力液圧を第1モータ8aの駆動に応じた圧力にできるため、モータ駆動に応じた反力を付与でき、車両状態や車種に応じてフレキシブルに反力特性を調整することが可能となる。
【0054】
(2)電源失陥時の動作
電源失陥時、つまりブレーキECU9等が故障して正常に第1〜第3制御弁6a〜6cや第1、第2モータ8a、8b等の駆動を行うことができない場合には、第1〜第3制御弁6a〜6cは図示位置のままとなる。
【0055】
この状態において、ブレーキペダル2が踏み込まれると、入力ピストン301が紙面左側に移動させられることで反力室303内のブレーキ液が管路Aを通って駆動液圧室316内に移動させられる。つまり、第1、第2制御弁6a、6bが共に連通状態であり、第3制御弁6cが遮断状態であるため、反力室303から押し出されたブレーキ液量相当が駆動液圧室316内に導入される。
【0056】
これにより、駆動液圧室316内の駆動液圧によってM/Cピストン311、312が紙面左側に押圧されてM/C圧が発生させられる。このようにしてM/C圧が発生させられると、それがブレーキ液圧制御用アクチュエータ5を介して各W/C4a〜4dに伝えられる。これにより、所望の制動力を発生させることが可能となる。したがって、電源失陥時であっても、入力ピストン301が出力ピストンであるM/Cピストン311に接する前から、制動力を発生させることが可能となり、入力ピストン301とM/Cピストン311との間に隙間Sが設けられていても、無効ストロークを無くすことが可能となる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態のブレーキ装置1によれば、M/C3内に入力ピストン301の移動に伴って反力液圧を変化させる反力室303と、反力室303と液圧回路を介して接続される駆動液圧室316とを備え、液圧回路中に第1〜第3制御弁6a〜6cや第1、第2ポンプ7a、7bを備えることで反力室303内に反力液圧を発生させる反力発生部や駆動液圧室316内の駆動液圧を調整する電動式調圧部を構成するようにしている。そして、第1、第2制御弁6a、6bを、非通電状態で連通状態となる常開型の電磁弁としている。これら第1、第2制御弁6a、6bは、通電される電流量に応じて差圧量を調整できる比例制御弁にて構成されるが、単なる開閉弁であっても構わない。
【0058】
このようなブレーキ装置によれば、正常時に回生協調制御を実行する際には、第1〜第3制御弁6a〜6cによって駆動液圧室316に発生させられる駆動液圧を制御すると共に反力室303内に発生させる反力液圧を制御し、発生させ得る最大の回生ブレーキが発生させられるまでM/C圧を発生させないようにすることで、最大の回生効率を得ることが可能となる。また、電源失陥時には、第1、第2制御弁6a、6bが常開型とされているため、室間ブレーキ液経路を構成する管路Aが連通状態となり、管路Aを通じて反力室303内のブレーキ液が駆動液圧室316に移動することで、無効ストローク無くブレーキ操作部材の操作量に応じた制動力を発生させることができる。したがって、回生効率を確保しつつ、電源失陥時に無効ストロークをなくすことが可能となる。
【0059】
また、駆動液圧室316内に駆動液圧を発生させる際に、第2ポンプ7bから駆動液圧室316に至るまでの経路中に何も制御弁が配置されていない。このため、制御弁を通過してからブレーキ液を流動させる場合と比較して、圧力回路要素内に存在するオリフィスを通過する必要がないため、応答性を向上させることが可能となる。
【0060】
また、反力室303内の反力液圧および駆動液圧室316内の駆動液圧を常開型の第1、第2制御弁6a、6bによって制御することが可能となる。このため、常閉型制御弁を用いて制御する場合のように、強いバネ力に抗して液圧制御を行わなくてもよいため、消費電流低減を図ることが可能となる。
【0061】
さらに、リザーバ経路となる管路Bを室間ブレーキ液経路となる管路Aに接続し、管路Aのうちの駆動液圧室316から管路Bに接続されるまでの部分を駆動液圧室316から大気圧リザーバ10へのブレーキ液の排出経路として利用している。また、管路Aのうち反力室303から管路Bに接続されるまでの部分を反力室303から大気圧リザーバ10へのブレーキ液の排出経路として利用している。また、管路Aのうちの第2ポンプ7bとの接続部から駆動液圧室316との間の部分を第2ポンプ7bから駆動液圧室316へのブレーキ液の供給経路として利用している。同様に、管路Aのうち第1ポンプ7aとの接続部と反力室303との間の部分を、第1ポンプ7aから反力室303へのブレーキ液の供給経路として利用している。そして、ブレーキ液の経路が共通化されている管路Aに第1制御弁6a、第2制御弁6bを備えたり、管路Bに第3制御弁6cを備えた構造としている。これにより、各種経路や第3制御弁6cの共通化、つまり反力発生部と電動式調圧部の双方を構成するものとして使用することができ、回路構成の簡素化が図れると共に、ブレーキ装置の小型化や低コスト化を図ることができる。
【0062】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して液圧回路に備えられる制御弁の構成を変更したものである。その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0063】
図2は、本実施形態にかかる車両用のブレーキ装置1の全体構成を示したものである。この図に示されるように、本実施形態では、第1〜第4制御弁6a、6b、6d、6eを備えるようにしている。これらのうち第1、第2制御弁6a、6bは第1実施形態と同じ役割を果たすものであるが、第3、第4制御弁6d、6eは第1実施形態の第3制御弁6cの役割を果たすものを2つにしたものである。具体的には、第1制御弁6aとリザーバ10との間に第3制御弁6dを備えると共に、第2制御弁6bとリザーバ10との間に第4制御弁6eを備えている。すなわち、管路Aのうちの第1、第2制御弁6a、6bの間の部位とリザーバ10とを繋ぐ管路Bを2つに分けて並列的に接続し、2つに分けた管路Bそれぞれに第3、第4制御弁6d、6eを備えた構成としている。
【0064】
このように、第3、第4制御弁6d、6eを備えるようにすれば、仮に、これらのうちの一方が異物の噛み込みなどによって制御不能になったとしても、正常なもう一方によって制御を実現することができる。
【0065】
なお、本実施形態の場合、第1制御弁6aや第1ポンプ7aおよび第1モータ8aにて反力発生部が構成され、第2制御弁6bや第2ポンプ7bおよび第2モータ8bにて電動式調圧部が構成され、第3制御弁6d及び第4制御弁6eにて弁装置が構成されることになる。
【0066】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してペダル反力をストロークシミュレータにて発生させる形態としたものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第4実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0067】
図3は、本実施形態にかかる車両用のブレーキ装置1の全体構成を示したものである。この図に示されるように、本実施形態では、第1実施形態に備えてあった反力発生部の一部を構成する第1ポンプ7aおよび第1モータ8aを無くし、第1、第2制御弁6f、6gとストロークシミュレータ16によって反力発生部を構成している。管路Aには、常開型の第1制御弁6fのみが配置されており、管路Aのうち第1制御弁6fと反力室303との間に管路Eを接続している。この管路Eには、常閉型の第2制御弁6gが配置されている。そして、第1制御弁6fによってM/C3とストロークシミュレータ16とを結ぶ経路と駆動液圧室316との間の連通、遮断状態を制御し、第2制御弁6gによって反力室303とストロークシミュレータ16との間の連通、遮断状態を制御している。
【0068】
また、管路Aのうちの第1制御弁6fと駆動液圧室316との間には、大気圧リザーバ10に接続された管路Bが接続され、この管路B内に常閉型の第3制御弁6hと常開型の第4制御弁6iとを備えている。第3制御弁6hは、弁装置を構成するもので、駆動液圧室316と大気圧リザーバ10との間を通電状態の際に連通状態に制御しつつ非通電状態の際に遮断状態に制御する。第4制御弁6iは、ソレノイドへの通電量に応じて駆動液圧室316と大気圧リザーバ10との間の差圧量を制御できる比例制御弁にて構成され、差圧量を制御することで、駆動液圧室316から大気圧リザーバ10へのブレーキ液の流動を制御し、駆動液圧室316の駆動液圧を調整する。ここでは第4制御弁6iを比例制御弁にて構成したが、単なる開閉弁であっても構わない。
【0069】
また、管路Aのうちの第1制御弁6fと駆動液圧室316との間には管路Cも接続され、第1実施形態における第2ポンプ7bおよび第2モータ8bに相当するポンプ7およびモータ8と管路Dを介しての大気圧リザーバ10からのブレーキ液供給に基づいて、管路Cを通じて駆動液圧室316内のブレーキ液を発生させられるようになっている。つまり、第3、第4制御弁6h、6iやポンプ7およびモータ8によって電動式調圧部を構成している。
【0070】
このような構成のブレーキ装置1でも、正常時には、第1制御弁6fを遮断状態に切替えることで、ブレーキペダル2の踏み込みに伴って入力ピストン301が移動させられてもM/Cピストン311、312が移動させられないようにする。また、これと同時に、第2制御弁6gを通電によって連通状態に切り替え、反力室303をストロークシミュレータ16と連通させる。これにより、反力室303に発生させる反力液圧をストロークシミュレータ16によって設定される圧力にでき、ブレーキペダル2に対して操作量に応じたペダル反力を付与することができる。
【0071】
この後、ブレーキペダル2の操作量が大きくなり、回生ブレーキとして発生させ得る最大量に達すると、モータ8を駆動してポンプ7を作動させつつ第4制御弁6iによる差圧量をリニアに駆動すると共に第3制御弁6hを連通状態に切り替える。これにより、駆動液圧室316内にも所望の駆動液圧を発生させることができる。
【0072】
一方、電源失陥時には、第1〜第4制御弁6f〜6iがすべて図示位置のままとなる。このため、管路Aおよび連通状態になっている第1制御弁6aを通じて、反力室303と駆動液圧室316が連通した状態となる。したがって、第1実施形態と同様、ブレーキペダル2が踏み込まれたときには、管路Aを通じて反力室303から駆動液圧室316にブレーキ液が移動させられ、駆動液圧室316内の駆動液圧によってM/C圧を発生させることができる。
【0073】
このように、ストロークシミュレータ16によってブレーキペダル2の操作量に応じた反力液圧が発生させられるようにすることもできる。このような構成としても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、このような構成とすることで、反力発生部をモータやポンプ無しで構成できることから、回路構成の簡略化を図ることが可能となる。
【0074】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、大気圧リザーバ10をマスタリザーバ32とは別構成として備えている場合について説明したが、マスタリザーバ32を大気圧リザーバ10として用いることもできる。
【0075】
また、上記第3実施形態では、管路B中に第3、第4制御弁6h、6iの2つを備えるようにしたが、モータ8を制御することによって駆動液圧室316内の駆動液圧を制御できるため、常閉型とされる第3制御弁6hのみを備えるようにしても良い。
【0076】
なお、上記各実施形態では、液圧回路に備えられる管路A〜Eによって本発明の各種経路を構成している。具体的には、これら各管路A〜Eのうち、反力室303と駆動液圧室316との間を接続する管路Aが室間ブレーキ液経路、大気圧リザーバ10を室間ブレーキ液経路に接続する管路Bがリザーバ経路、ストロークシミュレータ16を室間ブレーキ液経路に接続する管路Eがシミュレータ経路に相当する。
【符号の説明】
【0077】
1…ブレーキ装置、2…ブレーキペダル、3…M/C、4a〜4d…W/C、5…ブレーキ液圧制御用アクチュエータ、6a〜6i…制御弁(第1〜第4制御弁)、7…ポンプ、8…モータ、10…大気圧リザーバ、12、13…圧力センサ、16…ストロークシミュレータ、21…操作量センサ、30…入力部、31…出力部、301…入力ピストン、302…シリンダ部、303…反力室、304…背室、311、312…M/Cピストン、313…シリンダ部、316…駆動液圧室、317…プライマリ室、318…セカンダリ室、A〜D…管路
図1
図2
図3