特許第5884467号(P5884467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5884467リフトアップ装置の線材の降下装置、及び、リフトアップ工法における線材の降下方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5884467
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】リフトアップ装置の線材の降下装置、及び、リフトアップ工法における線材の降下方法
(51)【国際特許分類】
   B66F 3/46 20060101AFI20160301BHJP
   E04G 21/14 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
   B66F3/46
   E04G21/14
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-281616(P2011-281616)
(22)【出願日】2011年12月22日
(65)【公開番号】特開2013-129526(P2013-129526A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小野 英雄
(72)【発明者】
【氏名】笹原 大介
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀典
(72)【発明者】
【氏名】長野 義邦
【審査官】 葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−033396(JP,A)
【文献】 特開昭62−077514(JP,A)
【文献】 特開平06−173470(JP,A)
【文献】 特開平10−306593(JP,A)
【文献】 実開平01−157849(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 3/46
E04G 21/14−21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揚重物が接続された線材をジャッキで引き上げることにより前記揚重物を揚重するジャッキ式のリフトアップ装置に対して設置され、前記線材を降下させる装置であって、
前記線材の前記揚重物との接続部から延びる線材延長部と、
前記リフトアップ装置により引き上げられる前記線材に前記線材延長部を追従させる一方、前記線材延長部を引き下げることにより前記線材を降下させる降下機構と、
を備え
前記線材と前記線材延長部とにより環状に構成されており、
前記リフトアップ装置の上側に配され、前記リフトアップ装置から上方へ延びる前記線材を下方に折り返すように案内するガイドを備えるリフトアップ装置の線材の降下装置。
【請求項2】
揚重物が接続された線材をジャッキで引き上げることにより前記揚重物を揚重するジャッキ式のリフトアップ装置に対して設置され、前記線材を降下させる装置であって、
前記線材の前記揚重物との接続部から延びる線材延長部と、
前記リフトアップ装置により引き上げられる前記線材に前記線材延長部を追従させる一方、前記線材延長部を引き下げることにより前記線材を降下させる降下機構と、
を備え
前記降下機構は、
前記線材延長部を巻き上げることにより引き下げ、前記線材延長部を送り出すことにより前記線材に追従させる巻上装置と、
前記巻上装置と前記接続部との間の前記線材延長部が掛けられた複数の定滑車と、
一対の前記定滑車の間に上下動可能に配され、前記線材延長部を介して前記一対の定滑車に吊持される動滑車と、
前記動滑車に支持された錘と、
を備えるリフトアップ装置の線材の降下装置。
【請求項3】
揚重物が接続された線材をジャッキで引き上げることにより前記揚重物を揚重するリフトアップ工法において、前記線材を降下させる方法であって、
前記線材の前記揚重物との接続部から延びる線材延長部を、前記線材と前記線材延長部とにより環状に構成されるように設け、前記ジャッキの上側に配されたガイドにより、前記ジャッキから上方へ延びる前記線材を下方に折り返すように案内し、前記リフトアップ工法において引き上げられる前記線材に前記線材延長部を追従させる一方、前記線材延長部を引き下げることにより前記線材を降下させるリフトアップ工法における線材の降下方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャッキ式のリフトアップ装置の線材を降下させる装置、及び、リフトアップ工法において線材を降下させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の建設工事では、地上付近で組立てた大重量の構築物を一括して吊り上げる工法や、構築物を組立てながら高い揚程を吊り上げていく工法等が採用されており、これらの工法ではジャッキ式の吊り上げ機械(リフトアップ装置)が用いられている(例えば、非特許文献1参照)。ジャッキ式のリフトアップ装置は、PC鋼線等の線材を締め付けることにより保持する上下の保持機構(くさび)と、その間や周りに配される油圧ジャッキとを備えており、ジャッキを伸縮させて上下の保持機構を交互に開閉させることにより、油圧ジャッキのストロークの量ずつ線材を引き上げていき、揚重物を揚重する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】労働省労働基準局安全衛生部建設安全対策室 監修,「ジャッキ式つり上げ機械 運転者必携」,平成12年1月21日初版発行,建設業労働災害防止協会 編集・発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のジャッキ式のリフトアップ装置では、線材を油圧ジャッキのストロークの量ずつ引き上げて揚重物を揚重したり、油圧ジャッキのストロークの量ずつ揚重物を降下させたりする機構があるのみで、揚重物が接続されていない状態の線材を素早く降下させる機構は存在しない。このため、揚重を繰返す場合には作業に手間がかかる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ジャッキ式のリフトアップ装置により揚重を繰返す作業の作業性を向上させることを課題にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るリフトアップ装置の線材の降下装置は、揚重物が接続された線材をジャッキで引き上げることにより前記揚重物を揚重するジャッキ式のリフトアップ装置に対して設置され、前記線材を降下させる装置であって、前記線材の前記揚重物との接続部から延びる線材延長部と、前記リフトアップ装置により引き上げられる前記線材に前記線材延長部を追従させる一方、前記線材延長部を引き下げることにより前記線材を降下させる降下機構とを備え、前記線材と前記線材延長部とにより環状に構成されており、前記リフトアップ装置の上側に配され、前記リフトアップ装置から上方へ延びる前記線材を下方に折り返すように案内するガイドを備える
【0008】
また、本発明は、揚重物が接続された線材をジャッキで引き上げることにより前記揚重物を揚重するジャッキ式のリフトアップ装置に対して設置され、前記線材を降下させる装置であって、前記線材の前記揚重物との接続部から延びる線材延長部と、前記リフトアップ装置により引き上げられる前記線材に前記線材延長部を追従させる一方、前記線材延長部を引き下げることにより前記線材を降下させる降下機構と、を備え、前記降下機構は、前記線材延長部を巻き上げることにより引き下げ、前記線材延長部を送り出すことにより前記線材に追従させる巻上装置と、前記巻上装置と前記接続部との間の前記線材延長部が掛けられた複数の定滑車と、一対の前記定滑車の間に上下動可能に配され、前記線材延長部を介して前記一対の定滑車に吊持される動滑車と、前記動滑車に支持された錘とを備え
【0010】
また、本発明に係るリフトアップ工法における線材の降下方法は、揚重物が接続された線材をジャッキで引き上げることにより前記揚重物を揚重するリフトアップ工法において、前記線材を降下させる方法であって、前記線材の前記揚重物との接続部から延びる線材延長部を、前記線材と前記線材延長部とにより環状に構成されるように設け、前記ジャッキの上側に配されたガイドにより、前記ジャッキから上方へ延びる前記線材を下方に折り返すように案内し、前記リフトアップ工法において引き上げられる前記線材に前記線材延長部を追従させる一方、前記線材延長部を引き下げることにより前記線材を降下させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るジャッキ式のリフトアップ装置によれば、ジャッキ式のリフトアップ装置により揚重を繰返す作業の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係るジャッキ式のリフトアップ装置及び降下装置を示す立面図である。
図2】リフトアップ装置を拡大して示す立面図である。
図3】降下機構を拡大して示す立面図である。
図4】柱の底部を示す平面図である。
図5】柱の内部に階段を設置する手順を示す図である。
図6】柱の内部に階段を設置する手順を示す図である。
図7】階段ユニットを揚重している状態を示す立面図である。
図8】PC鋼線を降下させている状態を示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係るジャッキ式のリフトアップ装置100及び降下装置10を示す立面図である。この図に示すように、リフトアップ装置100は、PC鋼線102を介して揚重物を揚重するジャッキ式の吊り上げ機械である。また、降下装置10は、リフトアップ装置100による揚重が完了した後に、PC鋼線102を降下させる装置であり、PC鋼線102に結合されたモノロープ12をウインチ16により巻き上げることによりPC鋼線102を降下させる。
【0014】
図2は、リフトアップ装置100を拡大して示す立面図である。この図に示すように、リフトアップ装置100は、上下の定着機構104(下側は不図示)と、その周囲に配された複数の油圧ジャッキ106とを備えている。このリフトアップ装置100は、油圧ジャッキ106としてラム作動ジャッキとシリンダ作動ジャッキとが併設されたダブルツインジャッキ(登録商標)であり、ラム作動ジャッキとシリンダ作動ジャッキとの一方が作動している間に他方が反転戻し動作を行うことで、連続稼動が可能となっている。
【0015】
リフトアップ装置100では、ラム作動ジャッキとシリンダ作動ジャッキとの一方が作動(上昇)すると、上側の定着機構104が楔作用によりPC鋼線102を把持した状態で上昇することにより、PC鋼線102が引き上げられる。この際、ラム作動ジャッキとシリンダ作動ジャッキとの他方は下降している。そして、ラム作動ジャッキとシリンダ作動ジャッキとの他方が作動(上昇)し、上昇していた一方が下降することにより、一旦、下側の定着機構104が楔作用によりPC鋼線102を把持した後、即座に、上側の定着機構104が楔作用によりPC鋼線102を把持した状態で上昇することにより、PC鋼線102が引き上げられる。以上の動作が繰返されることにより、PC鋼線102に接続された被揚重物が連続的に揚重されていく。なお、リフトアップ装置100として、ダブルツインジャッキを用いることは必須ではなく、ラム作動ジャッキとシリンダ作動ジャッキとの一方のみを備えるリフトアップ装置を用いてもよい。
【0016】
リフトアップ装置100は、高層建築物内の円筒形状の柱1(図4参照)内に階段を設置するために使用されるものであり、PC鋼線102の一端には、階段ユニット5(図4参照)を取り付けるための階段吊具108が取り付けられている。また、リフトアップ装置100は、柱1の上部に設置された架台110上のジャッキ受梁112に固定されており、架台110には、半円状のガイド金物18が設置されている。このガイド金物18には、PC鋼線102の他端側が巻き掛けられており、PC鋼線102の他端側は、ガイド金物18により下方に折り返されている。
【0017】
図1に示すように、降下装置10は、PC鋼線102の他端に一端が結合されたモノロープ12と、モノロープ12を引き下げたりPC鋼線102に追従させたりする降下機構11と、上記ガイド金物18とを備えている。降下機構11は、階段吊具108の下部に揺動可能に支持されモノロープ12の他端が取り付けられたチェーンブロック14と、柱1内の底面に設置され、モノロープ12を巻き上げるウインチ16と、柱1内の底面に設置され、ウインチ16とチェーンブロック14との間のモノロープ12の長さや張力を調整する調整機構20とを備えている。
【0018】
ここで、PC鋼線102の一端に階段吊具108及びチェーンブロック14を介してモノロープ12の他端が取り付けられ、PC鋼線102の他端にモノロープ12の一端が結合されることにより、PC鋼線102とモノロープ12とによりループ状(環状)の線材が形成されている。
【0019】
チェーンブロック14は、チェーン14Aに取り付けられたフック14Bを、チェーン14Aを伸縮させることにより昇降させる。このフック14Bにモノロープ12の他端が取り付けられており、フック14Bが昇降することによりモノロープ12の他端の位置が上下する。
【0020】
ウインチ16と調整機構20とは、柱1内の底面に固定されたH鋼19上に設置されている。H鋼19は、ガイド金物18の鉛直下方に設置されており、H鋼19の長手方向一端がリフトアップ装置100の鉛直下方に位置し、H鋼19の長手方向他端がPC鋼線102とモノロープ12との結合部12Aの直下に位置する。そして、ウインチ16は、H鋼19の長手方向他端部に設置されており、ウインチ16のドラムにモノロープ12が巻き付けられている。また、H鋼19の長手方向一端部には、シーブ21が設置されており、モノロープ12が巻き掛けられている。
【0021】
図3は、降下機構11を拡大して示す立面図である。この図に示すように、調整機構20は、ウインチ16とシーブ21との間に設置された縦長の長方形状のフレーム22と、フレーム22の上部に設置された左右一対の定滑車であるシーブ24と、左右一対のシーブ24の間の下側に配された動滑車であるシーブ26とを備えている。左右一対のシーブ24とその間のシーブ26とにはモノロープ12が巻き掛けられており、シーブ26は、モノロープ12を介して左右一対のシーブ24から吊り下げられた状態になっている。
【0022】
また、調整機構20は、シーブ26から吊り下げられたウエイト28と、ウエイト28の上下動をガイドする左右一対のガイドバー29とを備えている。ウエイト28は、シーブ26の下部に設けられたフック28Aからロープ28Bで吊り下げられている。また、ウエイト28には、左右一対のガイドバー29を貫通させるための孔が空けられており、左右一対のガイドバー29は、フレーム22の上下に固定されている。即ち、シーブ26及びウエイト28は、モノロープ12を介して左右一対のシーブ24に昇降可能に吊持されており、モノロープ12の張力に応じて昇降する。
【0023】
図4は、柱1の底部を示す平面図である。この図に示すように、柱1の内壁と揚重される階段ユニット5との間には、図中上下左右の4箇所にかまぼこ型の空間が存在し、図中上下の空間には、夫々、一対の降下装置10が設置されている。この一対の降下装置10は、図中左右に反転して配されており、各降下装置10に対応してリフトアップ装置100が設置されている。
【0024】
図5及び図6は、柱1の内部に階段2を設置する手順を示す図である。これらの図に示すように、階段2は、階段ユニット5を繋ぎ合わせることにより構築する。そのために、まず、図4に示すように、柱1内の下部で階段ユニット5を組み立てる。その際、柱1内の下部に設置した壁クレーン3で階段ユニット5を吊り上げた状態で行う。そして、図5に示すように、柱1内の上部に設置したリフトアップ装置100で、PC鋼線102を介して階段ユニット5を揚重することによりリフトアップする。そして、階段ユニット5を柱1の内壁に固定する。以上の工程を繰返すことにより、階段2を下へ下へと伸ばしていく。即ち、柱1内に階段2を設置するために、階段ユニット5の揚重を繰返す。
【0025】
図7は、階段ユニット5(図示省略)を揚重している状態を示す立面図であり、図8は、PC鋼線102を降下させている状態を示す立面図である。図7に示すように、階段ユニット5の揚重の開始する際には、まず、チェーンブロック14のフック14Bを下降させることにより、モノロープ12の張力を開放する。この際、ウエイト28は下限位置まで下降する。そして、リフトアップ装置100による階段ユニット5の揚重を開始する。
【0026】
この際、モノロープ12のPC鋼線102との結合部からウインチ16までの間の部分には余長があるのに対し、モノロープ12のウインチ16からチェーンブロック14までの間の部分には余長が無い。そのため、ウインチ16でモノロープ12を揚重に追従する方向へ送出しない場合には、モノロープ12のウインチ16からチェーンブロック14までの間の部分の張力が上昇し、これにより、ウエイト28は上限位置まで上昇する。この状態で、モノロープ12をPC鋼線102に追従させずにリフトアップ装置100による揚重を継続することはできないため、ウインチ16によりモノロープ12をPC鋼線102に追従するように送出しながら、リフトアップ装置100による階段ユニット5の揚重を行う。この際、ウエイト28によりモノロープ12の張力が調整される。なお、リフトアップ装置100は、1m/minの速度でPC鋼線102を引き上げるのに対し、ウインチ16は、9.5m/minの速度でモノロープ12を送出する。
【0027】
そして、図8に示すように、リフトアップ装置100による階段ユニット5の揚重が完了すると、チェーンブロック14のフック14Bを上昇させることにより、モノロープ12に張力を導入する。そして、階段ユニット5を階段吊具108から取り外した後、リフトアップ装置100によるPC鋼線102の把持を開放し、ウインチ16でモノロープ12を巻き上げることにより階段吊具108及びPC鋼線102を降下させる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態に係る降下装置10によれば、リフトアップ装置100による階段ユニット5の揚重が完了した後、速やかにPC鋼線102を降下させることができる。また、リフトアップ装置100により引き上げられるPC鋼線102に対してモノロープ12を追従させることができるため、リフトアップ装置100による階段ユニット5の揚重が阻害されることもない。従って、ジャッキ式のリフトアップ装置100による階段ユニット5の揚重を繰返す作業の作業性を向上させることができ、柱1内に階段2を設置する作業に要する時間や手間を低減することができる。
【0029】
また、本実施形態に係る降下装置10では、PC鋼線102とモノロープ12とにより環状の線材を構成し、リフトアップ装置100の上方でPC鋼線102を下方へ折り返すガイド金物18を設けたことにより、リフトアップ装置100の近傍でPC鋼線102を巻き取るリールや、ウインチ16の近傍でモノロープ12を巻き取るリール等を不要にすることができ、降下装置10の構成を簡素化でき、装置のコストを低減できる。
【0030】
また、図3に示すように、本実施形態に係る降下装置10では、ウインチ16とチェーンブロック14との間に、一対の定滑車であるシーブ24とその間で上下動可能な動滑車であるシーブ26と、シーブ26に吊持されたウエイト28とを備える調整機構20を設置した。当該調整機構20によれば、シーブ24、26に掛けられたモノロープ12の張力が上がれば、シーブ26及びウエイト28が上昇し、該張力が下がれば、シーブ26及びウエイト28が降下する。これにより、ウインチ16とチェーンブロック14との間において、モノロープ12の張力が過剰に上下変動することを抑制でき、モノロープ12の張力を好適に制御することができる。
【0031】
また、図7及び図8に示すように、本実施形態に係る降下装置10では、PC鋼線102とモノロープ12とを、チェーンブロック14により、相対距離を可変に接続することで、PC鋼線102とウインチ16との間のモノロープ12の張力を調整可能としている。これにより、リフトアップ装置100により揚重を開始する際にはモノロープ12の張力を抜くことで、揚重に支障がないようにし、PC鋼線102を降下させる際にはモノロープ12に張力を導入することで、モノロープ12からPC鋼線102に力が伝わりモノロープ12が引き下げられるようにすることができる。
【0032】
なお、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上述の実施形態では、PC鋼線102に階段吊具108及びチェーンブロック14を介してモノロープ12を接続することで、PC鋼線102の揚重物との接合部から延伸する線材延伸部を設けたが、PC鋼線102自体を揚重物との接合部から延伸させることで線材延伸部を設けてもよい。また、PC鋼線102の両端とモノロープ12との両端とを階段吊具108及びチェーンブロック14を介して接続することで、PC鋼線102とモノロープ12とで環状の線材を構成したが、PC鋼線102の両端を階段吊具108及びチェーンブロック14を介して接続することで、PC鋼線102のみで環状の線材を構成してもよい。また、線材延伸部をモノロープ12とすることは必須ではなく、ワイヤー等の他の線材にしてもよい。
【0033】
また、上述の実施形態では、リフトアップ装置100による揚重時に、ウインチ16でモノロープ12を送り出すことによりモノロープ12をPC鋼線102に追従させたが、ウインチ16にクラッチを設けて該クラッチを切った状態にすることによりモノロープ12がPC鋼線102に対して追従するようにしてもよい。また、チェーンブロック14を設けることは必須ではない。
【0034】
さらに、上述の実施形態では、円筒状の柱1の内部で階段2を組み立てるのに使用するリフトアップ装置100のPC鋼線102の降下装置10を例に挙げて本発明を説明したが、本発明に係る降下装置の用途はこれに限られるものではない。
【符号の説明】
【0035】
1 柱、2 階段、3 壁クレーン、5 階段ユニット(揚重物)、10 降下装置、11 降下機構、12 モノロープ(線材延長部)、14 チェーンブロック(張力調整機構)、14A チェーン、14B フック、16 ウインチ(巻上装置)、18 ガイド金物(ガイド)、19 H鋼、20 調整機構、21 シーブ、22 フレーム、24 シーブ(定滑車)、26 シーブ(動滑車)、28 ウエイト(錘)、28A フック、28B ロープ、29 ガイドバー、100 リフトアップ装置、102 PC鋼線、104 定着機構、106 油圧ジャッキ、108 階段吊具(接続部)、110 架台、112 ジャッキ受梁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8