(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5884471
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】モジュール基板の製造方法及びその製造装置
(51)【国際特許分類】
G06K 19/02 20060101AFI20160301BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20160301BHJP
H01L 25/04 20140101ALI20160301BHJP
H01L 25/18 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
G06K19/02 050
G06K19/077 192
G06K19/077 212
H01L25/04 Z
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-283076(P2011-283076)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2013-134542(P2013-134542A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】片岡 慎
【審査官】
岡北 有平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−155820(JP,A)
【文献】
特開2001−076110(JP,A)
【文献】
米国特許第06380614(US,B1)
【文献】
特開2000−285213(JP,A)
【文献】
特開2009−140387(JP,A)
【文献】
特表2000−502477(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2001/0054230(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0043430(US,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第02302566(EP,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0097911(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/00 − 19/18
H01L 25/04
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の所定の位置にICチップ搭載用樹脂基板を収容するための開口部を形成し、周縁部に熱可塑性樹脂を塗布する工程、
ICチップ搭載用樹脂基板に電極パッドを形成する工程、
枠状突起が外周に沿って立設する台座を有するステージの該台座に、前記樹脂基板が枠状突起内に収容されるように載置する工程、
紙基材の開口部に台座が収容されるように紙基材をステージに載置する工程、
紙基材周縁部の熱可塑性樹脂にワイヤ導体をループ状に敷設し固定する工程、
ワイヤ導体の端部を、枠状突起に形成されたスリットを通して紙基材の開口部を直線的に横断させ、且つ接触する態様で電極パッド上に載置する工程、
ワイヤ導体の端部と電極パッドとを熱圧着ヘッドを用いて熱圧着する工程、
ICチップを樹脂基板の所定の位置に実装する工程、とを有することを特徴とするモジュール基板の製造方法。
【請求項2】
紙基材に設けた前記開口部は、ICチップ搭載用樹脂基板に対して0.3MM以上のクリアランスを有する大きさであることを特徴とする請求項1に記載のモジュール基板の製造方法。
【請求項3】
前記クリアランスは、紙基材が載置された際の紙基材の紙目方向のクリアランスがそれに垂直な方向のクリアランスよりも大となるように設定されることを特徴とする請求項2に記載のモジュール基板の製造方法。
【請求項4】
紙基材に設けた開口部に、ICチップ搭載用樹脂基板が紙基材に平行に収容されるように配し、紙基材に敷設されたワイヤ導体の端部と樹脂基板に形成した電極パッドとを熱圧着するモジュール基板の製造装置であって、少なくとも、熱圧着ヘッドとステージとを備え、ステージは紙基材と樹脂基板の厚みの差を補償するために開口部に貫入可能な樹脂基板底上げ用台座を備え、前記台座は外周に沿って立設するテーパー状の枠状突起を有し、枠状突起はワイヤ導体を通すためのスリットを有することを特徴とするモジュール基板の製造装置。
【請求項5】
前記ステージは、底上げ用台座の周辺に紙基材吸着固定用の真空引き穴を有することを特徴とする請求項4に記載のモジュール基板の製造装置。
【請求項6】
前記底上げ用台座は、樹脂基板吸着固定用の真空引き穴を有することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のモジュール基板の製造装置。
【請求項7】
前記樹脂基板吸着固定用の真空引き穴は、ワイヤ導体と電極とが熱圧着する部位とは離間した位置に配置されていることを特徴とする請求項6に記載のモジュール基板の製造装置。
【請求項8】
前記樹脂基板吸着固定用の真空引き穴は、ICチップ搭載部位から離間した位置に配置されていることを特徴とする請求項6又は請求項7のいずれか1項に記載のモジュール基板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触型ICカードや冊子に使用するモジュール基板に係り、特にはワイヤ導体がその周縁部にコイル状に敷設された紙基材に開口部を設け、IC搭載用樹脂基板を嵌め込み、ワイヤ導体端部を樹脂基板上の電極パッドに接続する方法とそのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触ICカードは、基本的には送受信用のアンテナと情報記録用のICチップとを電気的接続をとって紙基材やプラスチック基材中に埋め込んだものである。一般には、
図2に示すように径が0.1mm程度のワイヤ導体4がコイル状に敷設された厚みが0.2mm程度の紙基材1に所定の大きさの開口部を設け、厚みが0.17mm程度のIC搭載用樹脂基板2を該開口部に嵌め込んだモジュール基板10を、さらにプラスチック基材で両側からラミネートして意匠性を付与したものである。
【0003】
モジュール基板10を構成する紙基材1は、
図1に示すようにワイヤ導体4をコイル状に敷設したアンテナ(
図1では省略)とIC搭載用樹脂基板2を収容する開口部3を備えているが、ワイヤ導体を紙基材1の周縁にコイル状に敷設するには、基材面のアンテナ敷設位置に塗布された熱可塑性樹脂6(粘着層)上にワイヤ導体4をワイヤ導体敷設ヘッドから送り出し、敷設ヘッドにより熱可塑性樹脂6を溶融させることで、ワイヤ導体を、開口部3を除く紙基材2の周縁部に固定している。
【0004】
IC搭載用樹脂基板2は、ICチップ5が、対を成す電極パッド7A,7B間のスリットを跨ぐように基板上に実装され、さらにモールド樹脂によりICチップが被覆され所定形状に成型されたものである。完成したIC搭載用樹脂基板(以下、樹脂基板とも記す。)を紙基材の開口部3に収容してからワイヤ導体端部4’と電気的接続がとられることもあれば、樹脂基板2だけを紙基材1の開口部3に収容してからICチップ5の搭載とワイヤ導体4の接続を行い、その後モールド樹脂で被覆する場合がある。後者の場合、紙基材1面からモールド層が大きく突出しないように、ワイヤ導体の太さ等を考慮して、樹脂基板2の厚みは紙基材1の厚みよりも薄く設定されるのが普通である(
図1(c)参照)。
【0005】
樹脂基板2に形成された電極パッド7A,7Bと紙基材上のワイヤ導体末端4’との接続は、
図1(b)に示すように、ワイヤ導体末端4’を樹脂基板2の電極パッド7A,7B上に開口部3を横断する形で載置した後、熱圧着ヘッドによって、ワイヤ導体4’を樹脂基板2の電極7A,7Bに向けて押し付け、当該ワイヤ導体4’を電極パッドに熱圧着して固定している。
【0006】
その際、上述したようにIC搭載用樹脂基板2の厚みが紙基材の厚みよりも薄いと、通常の平坦なステージ上での加工では、樹脂基板が開口部3内に沈み込むのでワイヤ導体を弛ませて電極面7に接触させる必要がある。弛ませると電極上を跨ぐ部分のワイヤ導体が、位置ズレを起こしたり蛇行したりするなどの問題がある。
【0007】
また、開口部3は、一般にIC搭載用樹脂基板2より大きく設定されるので(クリアランス)、樹脂基板は固定されず若干動く余裕がある。この場合、例えば熱圧着ヘッドの大きさが適切でないと、電極パッド7A,7Bとワイヤ導体4’のアライメントに誤差が生じ、ワイヤ導体4’が歪んだり湾曲して熱圧着がうまく行えず、ワイヤ導体4’に吊り下がる樹脂基板2の開口部3での占有位置が安定しないという問題がある。樹脂基板2の位置が安定しないと、その後のICチップ5の取り付け工程でチップの取り付けがうまくい
かないという問題も生じる。
【0008】
具体的には、IC搭載用樹脂基板2の各電極パッド7A、7Bにワイヤ端部4’を熱圧着した後に、ICチップ5を電極パッド間をブリッジするようにフリップチップ実装するが、樹脂基板2がワイヤ導体4’に固定された状態でこの処理を行うことになる。紙基材1の厚みは樹脂基板2の厚みよりも厚いので、樹脂基板2と該基板が載置されるステージの間に隙間ができて、吸着によりステージに固定することが困難となり、超音波接合が不完全になるなどICチップ5の実装を確実に行えないという問題がある。
【0009】
IC搭載用樹脂基板の板厚を厚くすれば前記の問題は改善されるが、板厚の調整は容易ではなく、また厚くすると基板のコストが上昇し、コストダウンの要望に背反するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3721520号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたもので、IC搭載用樹脂基板の実質上の板厚が紙基材の厚みより薄くても、紙基材に敷設したワイヤ導体を精度良く前記樹脂基板の電極上に配設できるよう、紙基材開口部における前記樹脂基板の占有位置を確実に規定し固定できる方法及びそのための装置を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を達成するための請求項1に記載の発明は、紙基材の所定の位置にICチップ搭載用樹脂基板を収容するための開口部を形成し、周縁部に熱可塑性樹脂を塗布する工程、ICチップ搭載用樹脂基板に電極パッドを形成する工程、枠状突起が外周に沿って立設する台座を有するステージの該台座に、前記樹脂基板が枠状突起内に収容されるように載置する工程、紙基材の開口部に台座が収容されるように紙基材をステージに載置する工程、紙基材周縁部の熱可塑性樹脂にワイヤ導体をループ状に敷設し固定する工程、ワイヤ導体の端部を、枠状突起に形成されたスリットを通して紙基材の開口部を直線的に横断させ、且つ接触する態様で電極パッド上に載置する工程、ワイヤ導体の端部と電極パッドとを熱圧着ヘッドを用いて熱圧着する工程、ICチップを樹脂基板の所定の位置に実装する工程、とを有することを特徴とするモジュール基板の製造方法としたものである。
【0013】
請求項2に記載の発明は、紙基材に設けた前記開口部は、ICチップ搭載用樹脂基板に対して0.3mm以上のクリアランスを有する大きさであることを特徴とする請求項1に記載のモジュール基板の製造方法としたものである。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記クリアランスは、紙基材が載置された際の紙基材の紙目方向のクリアランスがそれに垂直な方向のクリアランスよりも大となるように設定されることを特徴とする請求項2に記載のモジュール基板の製造方法としたものである。
【0015】
請求項4に記載の発明は、紙基材に設けた開口部に、ICチップ搭載用樹脂基板が紙基材に平行に収容されるように配し、紙基材に敷設されたワイヤ導体の端部と樹脂基板に形成した電極パッドとを熱圧着するモジュール基板の製造装置であって、少なくとも、熱圧着ヘッドとステージとを備え、ステージは紙基材と樹脂基板の厚みの差を補償するために開口部に貫入可能な樹脂基板底上げ用台座を備え、前記台座は外周に沿って立設するテーパー状の枠状突起を有し、枠状突起はワイヤ導体を通すためのスリットを有することを特
徴とするモジュール基板の製造装置としたものである。
【0016】
請求項5に記載の発明は、
前記ステージは、底上げ用台座の周辺に紙基材吸着固定用の真空引き穴を有することを特徴とする請求項4に記載のモジュール基板の製造装置としたものである。
【0017】
請求項6に記載の発明は、
前記底上げ用台座は、樹脂基板吸着固定用の真空引き穴を有することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のモジュール基板の製造装置としたものである。
【0018】
請求項7に記載の発明は、前記樹脂基板吸着固定用の真空引き穴は、ワイヤ導体と電極とが熱圧着する部位とは離間した位置に配置されていることを特徴とす
る請求項
6に記載のモジュール基板の製造装置としたものである。
【0019】
請求項8に記載の発明は、前記樹脂基板吸着固定用の真空引き穴は、ICチップ搭載部位から離間した位置に配置されていることを特徴とする請求項
6又は請求項7のいずれか1項に記載のモジュール基板の製造装置としたものである。
【発明の効果】
【0020】
請求項1及び請求項
4に記載の発明により、樹脂基板とワイヤ導体、紙基材の相対的位置関係を正確に固定することが容易となり、かつワイヤ導体と樹脂基板を熱圧着する際にワイヤ導体には張力が殆どかからなくなることや、圧着後のワイヤ導体の弛みが殆ど無くなること等から、熱圧着後の樹脂基板と紙基材(基板嵌め込み穴)との位置関係を安定させることが可能となり、樹脂基板の紙基材への乗り上げや潜り込みと言った、樹脂基板の固定位置不良を低減させることができる。
【0021】
請求項3及び請求項4に記載の発明により、紙基材及び樹脂基板をステージ上に確実に固定・吸着することが可能となり、ワイヤ導体の配線及び基板との熱圧着や、樹脂基板へのICチップの実装を確実に行うことが可能となる。
【0022】
請求項5及び請求項6に記載の発明により、紙基材が吸湿又は乾燥し、紙目に対して特に垂直な方向に伸縮した際にステージ突起部に対して紙基材の基板嵌め込み穴が嵌らなくなるケースを減らすことが可能となる。
【0023】
請求項
5に記載の発明により、ワイヤ導体を樹脂基板に熱圧着する際に、熱圧着を行う接合パッド付近において、熱圧着ヘッドをワイヤ導体及び基板に押し付けた際に、ステージ突起部に設けた穴側に樹脂基板が歪んで沈み込む等の影響で、圧着の印加圧力が減少してしまう問題を解決することができ、ワイヤ導体の樹脂基板への熱圧着を確実に行うことが可能となる。
【0024】
請求項7及び請求項8に記載の発明により、ICチップを樹脂基板に実装する際に、実装を行うICチップ実装部付近において、チップ実装ヘッドをチップ及び基板に押し付けた際に、ステージ突起部に設けた穴側に樹脂基板が歪んで沈み込む等の影響で、チップ実装の印加圧力が減少してしまう問題を解決することができ、ICチップの樹脂基板への実装を確実に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】モジュール基板の構成を説明する斜視図(a),(b)と断面視の図(c)。(a)紙基材開口部上にIC搭載用樹脂基板をセットした様子。(b)開口部に樹脂基板を嵌め込んだ様子。(b)のAA’線での断面視の図。
【
図2】モジュール基板上のワイヤ導体とICチップの配置を説明する上面視の図である。
【
図3】本発明に係るモジュール基板製造装置の構成と動作を模式的に説明する断面視の図である。(a)熱圧着時、(b)熱圧着装置からモジュール基板を外した図である。
【
図4】(a),(b)は、本発明になるモジュール基板の製造工程の一部を模式的に説明する斜視図である。
【
図5】本発明にかかるモジュール基板製造装置にモジュール基板が載置された場合のクリアランスと樹脂基板吸引穴の位置の一例を説明する上面視図(a)である。(b)は、土手の形状の別の一例の上面視の図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の対象となるモジュール基板の形態は、
図1又は
図2に記載の従来型の構成のものと同一であるが、紙基材1の開口部3に所定のIC搭載用樹脂基板2を嵌め込んでから該樹脂基板に予め形成してある電極パッド7A、7Bにワイヤ導体(アンテナ線)端部4’とICチップ5をそれぞれ接続して製造するものに限られる。
【0027】
この場合、樹脂基板2の実質的な厚みは、紙基材1の実質的な厚みより薄く設定されるのが普通である。その場合、ワイヤ導体端部4’とICチップ5とを基板の電極パッド7A,7Bにそれぞれ接続する場合種々の不都合が発生する。
【0028】
具体的には、紙基材1に敷設したワイヤ端4’を電極7に確実に圧着接続し、その接続によって樹脂基板2が、開口部3の所定の位置に所定の高さと向きで滞留するようにするには、
図3(b)に示すように紙基材1の表面と樹脂2の表面が同一平面をなすようにする必要がある。面一にするためには、薄い方の樹脂基板2を下から厚み差の分だけ持ち上げる必要がある。すなわち、
図3(a)に示すようにステージ13に下駄をはかせるための台座14を設け、その台座上で圧着する必要がある。
【0029】
仮にこの様にしてワイヤ端部4’が電極パッド7A,7Bに接続されると、樹脂基板2はワイヤ端部に吊り下がる状態になりステージから浮き上がって滞留するため、このままではICチップ5をフリップチップ接続できない。そこでこの場合にも吊り下がった樹脂2を下から平坦な台座で支えて行う。
【0030】
下から持ち上げて支持するという目的が同じだが異なる台座(作業用ステージ)を使用する。ワイヤ導体4’を電極7に押し付ける装置12(TCB)と、ICチップ5を電極間に接続する装置(超音波実装ヘッド;図示せず)が異なるからである。基材側を固定してTCBと超音波実装ヘッドを入れ替えることができればステージの方は共通にできる。
【0031】
本発明は、紙基材開口部3の樹脂基板2の滞留位置を垂直方向と水平方向でより確実に規定するために、上記台座14の導入により高さと平行度調整をした上さらに、台座平坦部の形状を改良した。すなわち、
図3(a)、
図4(見にくいが)、
図5に示すように、ステージ13から突出する台座14の外周に沿って枠状の突起11(以下、土手とも記す。)を立設させた。土手11に囲まれる面積は、樹脂基板2がすっぽりと収容される面積と同程度か若干のクリアランスがあるのが望ましい。
図5の上面視の図では、樹脂基板2が土手11内にぴったり収まるように描かれているが、実際は、タイトということではなく余裕があるものである。
【0032】
土手11の高さについては、
図3(a)に図示したように紙基材1の表面と樹脂基板2の電極パッド面が面一になるように台座14の高さを調整してあるので、樹脂基板2の厚み以上であればよい。しかしながら、本発明では、樹脂基板2の厚みよりは高く設定することとした。そうすると、ワイヤ導体7が土手を乗り越えることになって不都合なので、土手11がワイヤ導体で乗り越えられる部位にスリット16を設けてワイヤが直線的に伸
延できるようにした。スリット16をワイヤ導体7が通過するようにしたことで、ワイヤ導体の動きが規制され位置を一定にできた。
【0033】
突起11の外形形状は、テーパー状が好ましい。この方が樹脂基板を簡単に土手内に収容できる。また、突起は台座の周囲に完全な枠状に形成されている必要はない。例えば、
図5(b)に示すような中落ちタイプのようなものであっても構わない。
【0034】
以下、実施例に基づいて本発明を簡単に説明する。
【0035】
本実施形態に係るモジュール基板は、少なくともコア層として
図4に示すように、紙基材1とワイヤ導体4、4’及びIC搭載用樹脂基板2と該基板に搭載するICチップとを有している。但し、
図4では、紙基材周縁に敷設されたワイヤ導体4を省略し、その端部4’だけ示してある。最終的にはモジュール基板は、オーバーコート材で表裏が被覆され、非接触ICカードあるいは通帳等の冊子となるものである。
【0036】
(紙基材)
紙基材1(以下、単に基材とも記す。)は、厚さが0.20mm程度の平板形状の上質紙や樹脂などであって、少なくとも表層が非導電性物質からなる。紙基材表面のワイヤ導体4がアンテナとして敷設される位置には、塗布等によって粘着材層として熱可塑性樹脂層6が予め設けられている紙基材1を使用する。さらに紙基材1には、
図4で示すような、IC搭載用樹脂基板2(以下、単に樹脂基板とも記す。)と略同形の開口部3が、所定のクリアランスを保つように形成されていて、その開口部3に樹脂基板2が嵌め込まれる。
【0037】
(IC搭載用樹脂基板)
IC搭載用樹脂基板2は、FR−4、ポリイミド、PET、PENに代表される樹脂などの非導電性材料から板状に構成される。その基板2の表面(上面)と裏面(下面)のうち、少なくとも表面には、
図4(a)あるいは
図5に示すように一対の電極7A,7Bが形成されている。電極7は、Cu、Al等の導電性材料で構成されている。
図5には、ICチップ5が搭載されたように描いているが、現時点ではチップ搭載の予定位置を示すものである。
【0038】
電極は、それぞれ、
図4、
図5に示すように、接合パッド部7A,7BとICチップ実装部8とを備える。電極パッド7A,7Bは、ワイヤ導体4を接続するための部分である。実装部8は、ICチップ5を電極のスリットを跨ぐように搭載する部分である。本実施形態の対を成す電極7は、
図4、
図5に示すように、平面視において左右対称に形成され、所定のスリットを挟んで実装部8が対向配置し、その左右両側にそれぞれ長方形形状の接合パッド部7A、7Bが形成されている。電極パッドは、上記スリットと同方向に長辺を向けて配置している。但し、電極の形状自体は図示したものに限られず一対の電極がICチップと接続可能な範囲にあればよい。
【0039】
そして、本実施形態では、
図3(b)に示すように、電極7を含む樹脂基板2の総厚みaを、紙基材1の厚みb(熱可塑性樹脂層8の厚みは除く)よりも薄くなるように調整している。なお、ICカードを製造する場合には、上記総厚みaと基材2の厚みbの差は0.2mm以下に収めるのが好ましい。
【0040】
「モジュール基板の製造方法」
紙基材1を、上部にTCB12を備えるステージ13上にセットする。それと同時にステージ13の台座14周囲に設けた吸引穴20から吸引して固定する(
図5参照)。ステージ13は、断面が
図3(a)で示されるもので、中央にステージ13から突出する台座14が設けられている。台座14は、台座平端部の大きさが紙基材1の開口部3より若干小さく、一定のクリアランスで基材の下部から僅かに開口部3に貫入するようになっている。台座14の張り出し高さは、紙基材1の厚みと開口部3に収容される基板2の厚みの差程度であって、丁度紙基材1の上表面と基板2の表面が面一になる高さである。
【0041】
台座の周囲の枠状突起11の高さは、樹脂基板2の厚みより厚く加工し、ワイヤ導体の通過位置にスリット16を予め形成しておいた。スリット16は平行に走る突起の相対する部位に形成した。また、紙基材1に塗布された熱可塑性樹脂6の厚みは考慮に入れないが、樹脂基板2上の電極7は基板の厚みに入れる。
【0042】
次に、基材1に形成した開口部3に一対の電極7が形成されたIC搭載用樹脂基板2を嵌め込む。嵌め込みは、樹脂基板2の切り掛け9に台座の突起11が挿通するようにする。嵌め込むと同時に台座14に設けた吸引穴21から吸引して固定する(
図4(b)、
図5参照)。尚、ステージ上に紙基材1と樹脂基板2を載置する順序は、上述の順に限られず適宜入れ換えても構わない。
【0043】
次に、基材1表面に対し、図示しない敷設ヘッドからワイヤ導体4を送り出しながら、敷設ヘッドによって基材1の上面に塗布された熱可塑性樹脂層6を溶融させることで、基材表面に対して、ループアンテナ形状にワイヤ導体4を敷設しつつ固定する。このとき、基材1の開口部3に配置した樹脂基板2上においても、敷設ヘッドからワイヤ導体4を送り出して、各電極7のパッド部7A、7B上を通過するようにワイヤ端部4’を敷設する(
図4(b))。その後、熱圧着ヘッド12でワイヤ導体4を電極7に押し付け熱圧着することで、ワイヤ導体4を電極7に固定する。
【0044】
このとき、台座のない平坦なステージ13の所定の位置に紙基材1載置すると、電極6を含むIC搭載用樹脂基板2の総厚みaが基材1の厚みbよりも薄いことから、基材1の上面(熱可塑性樹脂層8の厚みは除く。)よりも、樹脂基板2の電極7が下方に凹んだ状態となる。この状態でワイヤ導体4を開口部3を横断するように送り出して敷設すると、ワイヤ導体4は、弛んだ状態で敷設されることがあり、圧着後の樹脂基板2の開口部3内の停留形態と位置が安定しない。突出する台座14を設け、さらに枠状突起11を設けることでこうした不安定さが解消される。
【0045】
次に、超音波実装ヘッド(図示せず)を備える別のステージに紙基材を移動する。そして対をなす電極7A,7Bの実装部8に跨るようにICチップ5を配置する。また、台座11とその周囲に形成した吸引穴20、21から真空引きすることで、基材1及びIC搭載用樹脂基板2を台座とステージに吸着固定した状態とする。この状態で、ICチップ5に上側から超音波実装ヘッド(図示せず)を当接して超音波を付与することで、ICチップ5を一対の実装部8に接合して固定する。この場合の台座14の高さはワイヤ4を熱圧着する場合と同様である。
【0046】
このように紙基材を持ち上げて支え、枠状の突起内にIC搭載用樹脂基板を載置すれば、該樹脂基板を所定の位置に吸着・固定することが可能となり、ICチップを超音波実装する際にも、超音波エネルギーを有効に活用できる。すなわち、IC搭載用樹脂基板2の裏面(下面)を台座14に密着するように吸着した状態で、ICチップの実装を確実に行うことができる。
【0047】
最後に、紙基材とIC搭載用樹脂基板をステージに密着固定するための吸引穴の配置とクリアランスについて説明する。
図5は、ステージから突出した台座14上と近傍における吸引穴配置の一例を上面視で図示したものである。少なくとも、紙基材1を吸引するための吸引穴20を台座11の周囲に配置する必要がある。位置については、紙基材単体の大きさに合わせて適宜配置する。
【0048】
樹脂基板を吸引する吸引穴21は、台座11上に配置する。この位置については、ICチップ5が搭載される位置(
図5)直下から離れたところで、且つワイヤ端部4A,4Bが走る位置直下からも離れた部位が好ましい。吸引穴直上は、搭載される基板のそこの温度が下がったり加圧時の基板の歪みにより、熱圧着及び超音波実装が確実に行えなくなるおそれがあるからである。
【0049】
紙基材1の開口部3とそこに収容される樹脂基板2のクリアランスについては、
図5に示すように、紙基材の紙目(流れ目)に対して略平行な辺同士のクリアランスa比べて略直交する辺同士間のクリアランスbが大きいのが好ましい。特に、b>a≧0.3mmの関係を満たすのが好ましい。
【符号の説明】
【0050】
1、紙基材
2、樹脂基板(IC搭載用)
3、開口部
4、ワイヤ導体(アンテナ)
4’、4A、4B、ワイヤ導体端部
5、ICチップ
6、熱可塑性樹脂
7、(接続用)電極
7A,7B、電極パッド
8、ICチップ実装部(電極間スリット)
9、切り掛け
10、モジュール基板
11、突起(枠状の土手)
12、TCB
13、ステージ
14、台座
15、紙目(流れ目)
16、スリット(突起上の)
20、吸引穴(紙基材対応)
21、吸引穴(基板対応)