(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記突起部の側面と前記第1の差し込み孔の内壁(35a)との間に形成される第1の隙間の寸法(d1)は、前記中間部の側面と第2の差し込み孔の内壁(36a,37a)との間に形成される第2の隙間の寸法(d2)より小さい、
請求項3に記載の熱交換器。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る熱交換器について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0023】
(1)全体構成
図1および
図2は、熱交換器100の概略構成を示す図である。
図1は、熱交換器100の正面図である。熱交換器100は、
図1に示す態様で使用される。
図2は、
図1の熱交換器100を、矢印II方向から見た図(下面視図)である。構成部材が組み立てられた熱交換器100は、
図2に示す態様で、炉内に投入され、各構成部材がロウ材によりロウ付けされることにより一体化される。なお、
図2の一点鎖線Cは、熱交換器100を水平面に寝かせた状態における、熱交換器100の高さ方向の中心位置である。
【0024】
本実施形態に係る熱交換器100は、セパレートタイプの空気調和装置の室外ユニットの内部に設けられる。熱交換器100は、冷媒の蒸発器、または、冷媒の放熱器として機能する。熱交換器100は、空冷式かつ通風式である。熱交換器100は、空気調和装置に備えられた送風機によって供給された空気を利用して、空気と、熱交換器100の内部に流れる冷媒との間で熱交換を行う。
【0025】
熱交換器100は、
図1に示すように、主として、複数の扁平多穴管(チューブ)10と、複数の伝熱フィン20と、ヘッダ30,40と、差し込みプレート60とからなる。ヘッダ30,40には、複数の扁平多穴管10および差し込みプレート60が接合される。複数の扁平多穴管10は、ヘッダ30,40の長手方向に直交する向きに接合される。また、各扁平多穴管10は、ヘッダ30,40の長手方向に沿って、互いに所定の距離間隔をあけて積層される。差し込みプレート60は、ヘッダ30,40の長手方向において、複数の扁平多穴管10の両側に配置される。また、差し込みプレート60は、複数の扁平多穴管10と同様、ヘッダ30,40の長手方向に直交する向きに接合される。
【0026】
伝熱フィン20は、山部21および谷部22を有するコルゲートフィンである(
図3参照)。伝熱フィン20は、山部21および谷部22が、扁平多穴管10の平面に接触するように、複数の扁平多穴管10の間に設けられる。ヘッダ30,40は、それぞれ、液状態の冷媒や気液二層状態の冷媒を各扁平多穴管へ分流し、各扁平多穴管10の内部を流れた冷媒を集合させる。伝熱フィン20は、送風機によって供給された空気と接触して熱を受け、扁平多穴管10の内部に流れる冷媒を暖めて蒸発させる。熱交換器100を通過した空気は、扁平多穴管10の内部を流れる冷媒によって冷やされ、温度が低下する。以下、熱交換器100の各部の構成について、詳細に説明する。なお、以下の説明において、高さ方向とは、特筆しない限り、下面視(
図2)を基準とした上下方向を指すものとする。
【0027】
(2)扁平多穴管
扁平多穴管10は、冷媒を内部に通し、空気と冷媒との間で熱交換を行う伝熱管である。扁平多穴管10は、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属部材を、押し出し成形をすることによって形成される。以下、
図3を用いて、扁平多穴管10の構成を説明する。
図3は、
図1に示す領域Rの拡大図である。
図3に示す扁平多穴管10の厚み方向w10は、
図2に示す扁平多穴管10の奥行き方向である。また、
図3に示す扁平多穴管10の幅方向L10は、
図2に示す扁平多穴管10の高さ方向(上下方向)に対応する。
【0028】
上述したように、扁平多穴管10は、ヘッダ30,40に接合される。扁平多穴管10は、ヘッダ30,40の長手方向に交差する方向(具体的には、直交する方向)に延びる。扁平多穴管10は、長手方向に所定の長さ寸法を有する。また、扁平多穴管10の厚み方向の寸法w10は、約1.0〜2.5mmである。さらに、扁平多穴管は、所定の幅寸法(高さ寸法)L10を有する。扁平多穴管10の高さ寸法L10は、約10mm〜30mmである。
【0029】
図3に示すように、扁平多穴管10は、主として、管端部11と、複数の流路穴12a〜12iと、管平面部14とからなる。
【0030】
(2−1)管端部
管端部11は、扁平多穴管10の長手方向両端である。管端部11は、ヘッダ30,40と接合される部分である。扁平多穴管10の長手方向における管端部11の長さ寸法L11は、後述する介在プレート36の厚み寸法t36および接合部材37の厚み寸法t37の和(L11=t36+t37)である(
図5および
図6参照)。本実施形態では、管端部11の長さ寸法L11は、4.0mm〜5.0mm程度である。管端部11は、端面13を有する。端面13は、扁平多穴管10の厚み方向および幅方向に延びる面である。ここで、扁平多穴管10の幅方向とは、後述する流路穴12a〜12iが並ぶ方向であり、端面13の長手方向(高さ方向)である。また、扁平多穴管10の厚み方向とは、端面13の幅方向である。
【0031】
(2−2)流路穴
複数の流路穴12a〜12iは、端面13に並べて形成される。本実施形態では、端面13に、9つの流路穴12a〜12iが形成されている。具体的に、9つの流路穴12a〜12iは、端面13の長手方向に並べて形成される。すなわち、炉内では、流路穴12a〜12iは、上下方向に並ぶ。流路穴12a〜12iの数は、9つに限定されるものではなく、9つ以上であっても、9つ以下であってもよい。複数の流路穴12a〜12iは、ヘッダ30からヘッダ40に冷媒を流すための冷媒流路を形成する。すなわち、複数の流路穴12a〜12iは、それぞれ、扁平多穴管10の一端側の端面から他端側の端面まで貫通する。各流路穴12a〜12iの直径は、約250μmである。
【0032】
(2−3)管平面部
管平面部14は、
図3において、扁平多穴管10の幅方向および長手方向に延びる面である。管平面部14は、矩形である。上述したように、各扁平多穴管10は、互いの管平面部14が平行になるように、ヘッダ30,40に接合される。扁平多穴管10の管平面部14には、伝熱フィン20の山部21または谷部22が接合される。熱交換器100の使用時、管平面部14は、
図3における水平方向に生じる空気流れに対して略平行になる。なお、
図1では、熱交換器100が、6つの扁平多穴管10を用いる例を示したが、ヘッダ30,40に接合される扁平多穴管10の数は、これに限定されるものではない。
【0033】
(3)伝熱フィン
伝熱フィン20は、
図1および
図3に示すように、ヘッダ30,40の長手方向に沿って積層される複数の扁平多穴管10の間に設けられる。言い換えると、伝熱フィン20は、二つの扁平多穴管10の管平面部14によって挟まれる空間に配置される。伝熱フィン20は、送風機によって供給された空気と熱交換を行う。伝熱フィン20は、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属部材から構成される。伝熱フィン20の板厚は、約0.1mmである。伝熱フィン20は、長尺の板状部材が長手方向に波形に折り曲げられることによって形成されるコルゲートフィンである。
【0034】
伝熱フィン20は、
図3に示すように、主として、山部21と谷部22と伝熱面23とを有する。山部21および谷部22は、それぞれ、炉内で扁平多穴管10の管平面部14にロウ付けされる。伝熱面23は、主として、空気と熱交換を行う部分である。伝熱面23には、熱交換効率を向上させるための複数の切り起こし部23aがルーバー状に切り起こされている。切り起こし部23aは、伝熱フィン20の幅方向のいずれか一方に所定の角度になるように傾斜して切り起こされている。切り起こし部23aは、伝熱フィン20の幅方向の中心を基準に、一端側と他端側とで異なる方向に切り起こされている。
【0035】
(4)ヘッダ
ヘッダ30,40は、液状態の冷媒や気液二層状態の冷媒を各扁平多穴管10へ分流し、各扁平多穴管の内部を流れた冷媒を集合させる。具体的に、
図1の左側に配置されたヘッダ30には、
図1における方向R1から冷媒が送り込まれる。また、ヘッダ30は、当該冷媒を各扁平多穴管10へ分流する。また、
図1の右側に配置されたヘッダ40は、各扁平多穴管10を流れ、複数の流路穴12a〜12iから流れ出た冷媒を合流させ、
図1における方向R2(方向R1とは逆の方向)へ冷媒を送り出す。
【0036】
ヘッダ30,40は、アルミニウム合金である。
図2および
図4に示すように、ヘッダ30,40は、それぞれ、主として、円筒部31,41と、連通孔形成部32,42と、連結部50とからなる。なお、ヘッダ30の構成と、ヘッダ40の構成とは、基本的に同じである。したがって、以下、
図3を参照して、ヘッダ30の構成を説明する。
【0037】
(4−1)円筒部
円筒部31は、主として、主流路31aと流路壁31bとからなる。主流路31aは、ヘッダ30の内部に形成された冷媒の通路である。主流路31aは、流路壁31bによって囲われた空間である。主流路31aは、長軸に直交する方向の断面(横断面)が円形状である。主流路31aの直径は、約11mm〜12mmである。主流路31aは、ヘッダ30の長手方向に延びる。すなわち、主流路31aの軸方向と、ヘッダ30の長手方向とは、同一である。主流路31aは、後述する多数の連絡流路34aと連通している。流路壁31bの厚みは、4mm〜6mmである。すなわち、円筒部31の外径は、約19mm〜24mmである。
【0038】
(4−2)連通孔形成部
連通孔形成部32は、円筒部31の側壁と繋がる部分である。また、連通孔形成部32は、ヘッダ30の長手方向に延びる。すなわち、連通孔形成部32の長手方向と、主流路31aの軸方向とは一致する。連通孔形成部32は、矩形の平面部を有する。平面部は、約1.5mm〜3mmの厚み寸法を有する。平面部の長手方向の寸法(長さ寸法)は、円筒部31の長さ寸法と同じである。平面部の高さ寸法は、円筒部31の直径よりわずかに短い。ここで、平面部の高さ方向とは、熱交換器100を水平面に対して寝かせた状態における連通孔形成部32の高さ方向である(
図2参照)。すなわち、平面部の高さ方向は、使用時の熱交換器100では、幅方向と一致する。
【0039】
平面部には、複数の連通孔34が形成されている。連通孔34は、連通孔形成部32の長手方向に並んで形成される。各連通孔34は、所定の間隔を空けて配置される。また、連通孔34は、連通孔形成部32の高さ方向中心位置に設けられる。複数の連通孔34は、主流路31aの軸方向に対して交差する方向に延びて、主流路31aに連通する連絡流路34aを構成する。連通孔34は、ドリル加工によって形成される。ヘッダ30と扁平多穴管10および差し込みプレート60とが接合される際には、連通孔形成部32の高さ方向両側に対して連結部50が接合される。
【0040】
(4−3)連結部
連結部50は、扁平多穴管10および差し込みプレート60をヘッダ30に連結するための部材である。
図5から
図7に、連結部50の概略構成を示す。
図5は、
図2に示す熱交換器100のV−V断面の部分拡大図である。
図6は、
図1に示す熱交換器100のVI−VI断面の部分拡大図である。
図7は、
図1に示す熱交換器100のVII−VII断面の部分拡大図である。以下、
図5から
図7を参照して、ヘッダ30と、扁平多穴管10または差し込みプレート60とを連結する連結部50の全体構成を説明する。なお、ヘッダ40と、扁平多穴管10または差し込みプレート60とを連結する連結部50は、ヘッダ30と、扁平多穴管10または差し込みプレート60とを連結する連結部50の構成と同様である。
【0041】
連結部50は、主として、スペーサ35と、介在プレート(固定部材)36、接合部材37とからなる。
図5から
図7に示すように、スペーサ35は、連通孔形成部32の平面部に接触するように連通孔形成部32に隣接して配置される。介在プレート36は、スペーサ35の平面に接触するように、スペーサ35に隣接して配置される。接合部材37は、連通孔形成部32、スペーサ35、および介在プレート36を外側から取り囲む位置に配置される。
図5に示すように、連結部50に含まれる構成部材は、扁平多穴管10が延びる方向において、ヘッダ30の側から、スペーサ35、介在プレート36、および接合部材37の順番に配置される。すなわち、スペーサ35は、連通孔形成部32と、介在プレート36との間に配置され、介在プレート36は、スペーサ35と接合部材37との間に配置される。以下、連結部50に含まれる各構成部材について、詳細に説明する。
【0042】
(4−3−1)スペーサ
スペーサ35は、ヘッダ30と扁平多穴管10との間に、冷媒の集合空間ARを形成する部材である(
図5および
図6参照)。集合空間ARとは、ヘッダ30を流れる冷媒を分配するための空間、または、各扁平多穴管10が有する複数の冷媒流路12a〜12iを流れた冷媒を集合させる空間である。
【0043】
スペーサ35は、クラッド材である。具体的には、スペーサ35は、ヘッダ30,40と同じアルミニウム合金を心材とし、心材の表面に心材よりも融点の低い別のアルミニウム合金(ロウ材)が張り合わされた金属部材である。
【0044】
スペーサ35は、
図5に示すように、ヘッダ30の長手方向に延びる平板部材である。スペーサ35は、2.0mm〜3.0mm程度の厚み寸法t35を有する。スペーサ35の長手方向の寸法は、連通孔形成部32の長手方向の寸法とほぼ同一である。スペーサ35の高さ寸法h35は、連通孔形成部32の高さ寸法h32とほぼ同一である(
図8参照)。
【0045】
図8に示すように、スペーサ35には、集合空間ARを構成するスペーサ孔(第1の差し込み孔)351が形成されている。スペーサ孔351の開口形状は、矩形または楕円形状である。スペーサ孔351は、スペーサ35の長さ方向に複数並べて形成されている。また、スペーサ孔351は、スペーサ35の高さ方向中心位置Cに形成される。なお、スペーサ35の高さ方向中心位置は、熱交換器100の高さ方向中心位置Cと一致する。また、スペーサ35の高さ方向と、スペーサ孔351の高さ方向とは一致する。
【0046】
スペーサ孔351は、対向面35aによって形成される。言い換えると、対向面35aは、集合空間ARを取り囲み、集合空間ARに対向する面(内壁)である。スペーサ孔351の幅寸法w351は、
図8に示すように、連通孔34の径よりわずかに大きい。さらに、スペーサ孔351の寸法は、扁平多穴管10の端部11(端面13)の寸法より小さい。具体的に、
図11に示すように、スペーサ孔351の幅寸法w351は、扁平多穴管10の幅寸法(厚み寸法)w10より小さい。また、スペーサ孔351の高さ寸法h351は、扁平多穴管10の高さ寸法(端面13の長手方向の寸法)L10より小さい。さらに、スペーサ孔351の高さ寸法h351は、扁平多穴管10の全流路穴12a〜12iが形成されている部分の高さ寸法h12より大きい。したがって、扁平多穴管10は、端面13に形成された流路穴12a〜12iをスペーサ孔351に対向させ、端面13の縁部をスペーサ35に当接させる。これにより、流路穴12a〜12iは、集合空間ARと連通する。上方または下方に位置する対向面35aからスペーサ35端部までは、所定の距離寸法h1を有する。
【0047】
図6および
図7に示すように、スペーサ35の一方側の面は、連通孔形成部32の平面部と接触する。スペーサ35の他方側の面は、高さ方向両側で介在プレート36と接触する。また、スペーサ35の他方側の面は、高さ方向中央部(すなわち、スペーサ孔351の周縁部)で扁平多穴管10の端面13、または、差し込みプレート60のエッジ部65と接触する。具体的には、差し込みプレート60が差し込まれるスペーサ孔351の周縁部は、エッジ部65と接触する。その他の場合、スペーサ孔351の周縁部は、扁平多穴管10の端面13と接触する。
【0048】
また、スペーサ孔351の内壁35aと、差し込みプレート60の側面との間には、所定の隙間寸法d1がとられる(
図13参照)。ここで、所定の隙間寸法d1とは、約0.05mmである。
【0049】
(4−3−2)介在プレート
介在プレート36は、スペーサ35と接合部材37との間に介在される平板部材である(
図5および
図9参照)。介在プレート36もまた、ヘッダ30の長手方向に延びる。介在プレート36は、ヘッダ30,40と同じアルミニウム合金である。
【0050】
介在プレート36は、約2.5mm〜3.0mmの厚み寸法t36を有する(
図5参照)。介在プレート36の長手方向の寸法は、連通孔形成部32の長手方向の寸法と同一である。介在プレート36の高さ寸法h36もまた、連通孔形成部32の高さ寸法h32と同一である。
【0051】
図9に示すように、介在プレート36には、扁平多穴管10の端部を挿入するための挿入孔(第2の差し込み孔)361が形成されている。挿入孔361の開口形状もまた、矩形または楕円形状である。挿入孔361は、介在プレート36の長さ方向に複数並べて形成されている。また、挿入孔361は、介在プレート36の高さ方向中心位置Cに形成される。なお、介在プレート36の高さ方向中心位置Cは、熱交換器100の高さ方向中心位置Cと一致する。また、挿入孔361の高さ方向と、介在プレート36の長手方向とは一致する。
【0052】
挿入孔361は、対向面36aによって形成される。すなわち、対向面36aは、挿入孔361の内壁である。対向面36aは、扁平多穴管10の管端部11の側面、または、後述する差し込みプレート60の内側端部62bの側面に対向する。
図9に示すように、挿入孔361は、スペーサ孔351より大きい。具体的に、挿入孔361の幅寸法w361および高さ寸法h361は、スペーサ孔351の幅寸法w351および高さ寸法h351より大きい。上方または下方に位置する対向面36aから介在プレート36の端部までは、所定の距離寸法h2を有する。距離寸法h2は、上述の距離寸法h1より小さい。
【0053】
なお、挿入孔361の内壁36aと、挿入孔361に差し込まれた扁平多穴管10の側面との間には、所定の隙間寸法d2がとられる(
図12参照)。また、挿入孔361の内壁36aと、挿入孔361に差し込まれた差し込みプレート60の側面との間にも、所定の隙間寸法d2がとられる(
図13参照)。ここで、所定の隙間寸法d2とは、約0.1mmである。
【0054】
(4−3−3)接合部材
接合部材37は、連通孔形成部32、スペーサ35、介在プレート36、および扁平多穴管10の端部の外面に接合され、連通孔形成部32、スペーサ35、介在プレート36、および扁平多穴管10を保持する部材である。接合部材37は、長手方向に直交する方向である高さ方向両端部が折り曲げられることにより、
図2に示されるように、側面視でU字型の形状を有する。接合部材37もまた、ヘッダ30の長手方向に延びる。接合部材37は、スペーサ35と同様のクラッド材である。
【0055】
接合部材37は、1.5mm〜2.0mm程度の厚み寸法t37を有する(
図5参照)。接合部材37の長手方向の寸法は、連通孔形成部32の長手方向の寸法とほぼ同一である。接合部材37の高さ寸法h37は、連通孔形成部32の高さ寸法h32より、厚み寸法t37分大きい(
図10参照)。
【0056】
接合部材37には、
図10に示すように、扁平多穴管10の管端部11を嵌入するための嵌入孔(第2の差し込み孔)371が形成される。嵌入孔371の開口形状もまた、矩形または楕円形状である。嵌入孔371は、接合部材37の長さ方向に複数並べて形成されている。また、嵌入孔371は、接合部材37の高さ方向中心位置Cに形成される。嵌入孔371の高さ方向と、接合部材37の長手方向とは一致する。
【0057】
嵌入孔371は、対向面37aによって形成される。すなわち、対向面37aは、嵌入孔371の内壁である。対向面37aは、扁平多穴管10の端部の側面に対向する面である。嵌入孔371の幅寸法w371および高さ寸法h371は、挿入孔361の幅寸法w361および高さ寸法h361と同じである。すなわち、嵌入孔371は、スペーサ孔351より大きく、嵌入孔371の幅寸法w371および高さ寸法h371は、スペーサ孔351の幅寸法w351および高さ寸法h351より大きい。上方または下方に位置する対向面37aから接合部材37の端部までは、所定の距離寸法h3を有する。
【0058】
なお、嵌入孔371の内壁37aと、嵌入孔371に差し込まれた扁平多穴管10の側面との間にも、所定の隙間寸法d2がとられる(
図12参照)。また、嵌入孔371の内壁37aと、嵌入孔371に差し込まれた差し込みプレート60の側面との間にも、所定の隙間寸法d2がとられる(
図13参照)。所定の隙間寸法d2とは、上述したように、約0.1mmである。
【0059】
(5)差し込みプレート
差し込みプレート60は、熱交換器100の各構成部材の相対位置を変化させずにロウ付けするための部材である。言い換えると、差し込みプレート60は、熱交換器100の各構成部材がロウ付けによって接合されるまでの間、ヘッダ30,40および扁平多穴管10の姿勢を維持させるための部材である。差し込みプレート60は、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属性の板状部材である。
【0060】
上述したように、差し込みプレート60は、ヘッダ30,40の長手方向において、複数の扁平多穴管10の両側に配置される(
図1参照)。また、上述したように、差し込みプレート60は、複数の扁平多穴管10と同様、ヘッダ30,40の長手方向に直交する方向に延びる。
【0061】
差し込みプレート60は、例えば、
図3および
図7に示すように、差し込みプレート中央部(本体部)61と、差し込み端部62とを有する。差し込みプレート中央部61は、差し込みプレート60の長手方向中央に位置する。差し込み端部62は、長手方向において差し込みプレート中央部61を挟み、差し込みプレート60の両端に位置する。なお、
図3および
図7の差し込みプレート60に示す破線は、差し込みプレート中央部61と差し込み端部62とを識別するために示した仮想線である。
【0062】
差し込みプレート60の厚み方向の寸法t60は、扁平多穴管10の厚み寸法w10と同様に、約1.0〜2.5mmである。差し込みプレート60の長手方向の寸法は、扁平多穴管10の長手方向の寸法より長い。具体的には、後述する外側端部62bの長さ寸法L22の分だけ、差し込みプレート60は、扁平多穴管10よりも長い(
図7参照)。また、差し込みプレート60の高さ寸法L20a,L20bは、長手方向端部を除き、扁平多穴管10の高さ寸法L10と同じである。以下、差し込みプレート中央部61および差し込み端部61について詳細に説明する。
【0063】
(5−1)差し込みプレート中央部
差し込みプレート中央部61は、差し込みプレート60の長手方向中央に位置する部分であって、平面部64を有する。平面部64は、矩形であり、長手方向および高さ方向に延びる。高さ方向とは、水平面において長手方向に直交する方向であり、
図2に示す熱交換器100を基準にした上下方向である。なお、差し込みプレート中央部61の長手方向の寸法は、扁平多穴管10の管平面部14の長手方向の寸法と同じである。また、差し込みプレート中央部61の高さ方向の寸法L20aは、扁平多穴管10の高さ寸法L10と同じである(
図6および
図7参照)。
【0064】
差し込みプレート60は、差し込みプレート中央部61の平面部64が扁平多穴管10の管平面部14に対して平行になるようにヘッダ30,40に接合される。平面部64には、伝熱フィン20の山部21または谷部22が接合される。
【0065】
(5−2)差し込み端部
差し込み端部62は、差し込みプレート60の長手方向両端である。差し込み端部62は、ヘッダ30,40に差し込まれ、ヘッダ30,40と接合される部分である。差し込み端部62は、
図3および
図7に示すように、内側端部(中間部)62aと外側端部(突起部)62bとからなる。すなわち、差し込みプレート60の長手方向における差し込み端部62の寸法L23は、
図7に示すように、内側端部62aの長手方向の寸法L21と、外側端部62bの長手方向の寸法L23との和(L23=L21+L22)である。差し込み端部62は、平面視で、外側端部62bを凸とする形状を有する。
【0066】
(5−2−1)内側端部
内側端部62aは、差し込みプレート60の長手方向において外側端部62bよりも内側に位置する部分である。内側端部62aは、差し込みプレート60の長手方向において、差し込みプレート中央部61に隣接する部分である。内側端部62aは、後述する介在プレート36および接合部材37と接合される部分である。
【0067】
内側端部62aの長さ寸法L21は、介在プレート36の厚み寸法t36および接合部材37の厚み寸法t37の和(L21=t36+t37)である(
図5および
図7参照)。内側端部62aの長さ方向は、差し込みプレート60の長手方向に対応する。本実施形態では、内側端部62aの長さ寸法L21は、約4.0mm〜5.0mmである。
【0068】
また、内側端部62aの高さ寸法L20aおよび幅寸法w60aは、扁平多穴管10の端部11(端面13)の高さ寸法L10および幅寸法w10と同じである(
図3参照)。なお、上述したように、内側端部62aの高さ寸法L20aおよび幅寸法w60aは、内側端部62aの側面と、挿入孔361の内壁36aおよび嵌入孔371の内壁37aとの間に、所定の隙間寸法d2が形成されるように決定されるものとする(
図13参照)。所定の隙間寸法d2は、上述したように、約0.1mmである。
【0069】
また、内側端部62aは、後述する外側端部62bの端面63に平行の面を有するエッジ部65を有する。エッジ部65は、
図7および
図13に示すように、内側端部62aの高さ方向両側に位置する。エッジ部65は、後述するスペーサ35の平面に衝突する位置にあり、スペーサ35の平面と接合される。
【0070】
(5−2−2)外側端部
外側端部62bは、差し込みプレート60の長手方向において、最も外側に位置する端部である。外側端部62bは、後述するスペーサ35と接合される部分である。言い換えると、外側端部62bは、スペーサ孔351に挿入され、スペーサ孔351の内壁35aによって拘束される部分である。
【0071】
図7に示すように、外側端部62bの長さ寸法L22は、スペーサ35の厚み寸法t35と同じである(L22=t35)。外側端部62bの長さ方向もまた、差し込みプレート60の長手方向に対応する。本実施形態では、外側端部62bの長さ寸法L22は、約2.0mm〜3.0mmである。
【0072】
また、外側端部62bの寸法は、内側端部62aの寸法より小さい。具体的に、外側端部62bの高さ寸法L20bおよび幅寸法w60bは、内側端部62aの高さ寸法L20aおよび幅寸法w60aより小さい。さらに、
図11に示すように、外側端部62bの寸法は、スペーサ孔351の寸法より小さい。具体的に、外側端部62bの高さ寸法L20bおよび幅寸法w60bは、スペーサ孔351の高さ寸法h351および幅寸法w3531より小さい。なお、上述したように、外側端部62bの高さ寸法L20bおよび幅寸法w60bは、スペーサ孔351の内壁35aと、外側端部62bの側面との間に、所定の隙間寸法d1が形成されるように決定されるものとする。所定の隙間寸法d1は、約0.05mmである(
図13参照)。
【0073】
外側端部62bは、端面63を有する。端面63は、差し込みプレート60の幅方向w60bおよび高さ方向L20bに延びる面である。端面63は、連通孔形成部32の平面と衝突する位置にある。すなわち、端面63は、連通孔形成部32と接合される。
【0074】
(5−3)連結部に形成される差し込み空間
連結部50には、接合部材37、介在プレート36、およびスペーサ35によって、扁平多穴管10または差し込みプレート60を差し込むための差し込み空間P1,P2が形成されている。差し込み空間P1,P2には、
図14に示すように、第1の差し込み空間P1と、第2の差し込み空間P2とが含まれる。第1の差し込み空間P1は、差し込みプレート60を差し込むための空間である。第2の差し込み空間P2は、扁平多穴管10を差し込むための空間である。
【0075】
また、第1の差し込み空間P1は、第2の差し込み空間P2を包含する空間である。具体的に、第1の差し込み空間P1のうち、第1の差し込み空間P1の開口付近の空間が第2の差し込み空間P2である。
【0076】
より具体的に、第1の差し込み空間P1は、嵌入孔371の内壁37a、挿入孔361の内壁36a、およびスペーサ孔35aの内壁によって形成される空間である。第1の差し込み空間P1の奥行き寸法(すなわち、差し込みプレート60を差し込むことが可能な長さ)L31は、スペーサ35の厚み寸法t35、介在プレート36の厚み寸法t36、および接合部材37の厚み寸法t37の和である(L31=t35+t36+t37)。第1の差し込み空間P1の奥行き寸法L31は、プレート60の差し込み端部62の長さ寸法L23と同じである(L31=L23)。
【0077】
第2の差し込み空間P2は、嵌入孔371の内壁37aおよび挿入孔361の内壁36aによって形成される空間である。第2の差し込み空間P2の奥行き(すなわち、扁平多穴管10を差し込むことが可能な長さ)寸法L32は、介在プレート36の厚み寸法t36および接合部材37の厚み寸法t37の和である(L32=t35+t37)。第2の差し込み空間P2の奥行き寸法L32は、プレート60の差し込み端部62に含まれる内側端部62aの長さ寸法L21と同じである(L32=L21)。また、第2の差し込み空間P2の奥行き寸法L32は、扁平多穴管10の管端部11の長さ寸法L11と同じである(L32=L11)。
【0078】
すなわち、連結部50に対して差し込みプレート60を差し込み可能な距離は、連結部に対して扁平多穴管10を差し込み可能な距離に比べて長い。言い換えると、差し込みプレート60は、扁平多穴管10より深く連結部50に差し込まれる。
【0079】
(6)特徴
(6−1)
上記実施形態に係る熱交換器100は、ロウ付けによって一体化される。一般的に、熱交換器は、構成部材が組み立てられ、その後、当該組み立てられた構成部材が炉に投入されることによりロウ付けされる。具体的には、複数の扁平多穴管がヘッダに差し込まれ、
図2に示すように、ヘッダの長手方向が水平面に対して水平になるようにコンベア上で寝かされた状態で、組み立てられた構成部材が炉に投入される。ここで、ヘッダおよび扁平多穴管がロウ付けされる前、ヘッダと、ヘッダに差し込まれた扁平多穴管との間には、炉内における扁平多穴管の膨張を考慮した寸法の隙間が形成される(第2の隙間寸法d2)。ヘッダおよび扁平多穴管は、ロウ付け前、当該第2の隙間寸法d2の隙間の間を自由に動く。これにより、ヘッダおよび扁平多穴管は、所望する相対位置とは異なる相対位置へ変化した状態でロウ付けされる場合がある。具体的には、水平面に対して、ヘッダの高さ方向中心位置C(
図2参照)が傾く。それにより、扁平多穴管の流路穴とヘッダが有する連通孔とが好適に連通せず、熱交換器の性能を低下させてしまう可能性がある。
【0080】
しかし、上記実施形態に係る熱交換器100は、扁平多穴管10と共に、差し込みプレート60がヘッダ30,40に差し込まれる。差し込みプレート60は、接合部材37、介在プレート36、およびスペーサ35によって形成される第1の差し込み空間P1に差し込まれる。扁平多穴管10は、接合部材37および介在プレート36によって形成される第2の差し込み空間P2に差し込まれる。具体的に、差し込みプレート60は、嵌入孔371、挿入孔361、およびスペーサ孔351の順番に差し込み端部62が差し込まれる。差し込みプレート60の端面63は、連通孔形成部32に接触させる。また、差し込みプレート60の側面は、嵌入孔371の対向面37a、挿入孔361の対向面36a、およびスペーサ孔351の対向面35aによって拘束される。一方、扁平多穴管10の管端部11は、嵌入孔371および挿入孔361の順に差し込まれ、管端部11の側面は、挿入孔361の対向面36aおよびスペーサ孔351の対向面35aによって拘束される。扁平多穴管10はまた、端面13の周縁部をスペーサ35に接触させ、流路穴12a〜12iが形成されている部分をスペーサ孔351の開口に対向させる。
【0081】
扁平多穴管10は、流路穴12a〜12iと連通させる必要がある。そのため、扁平多穴管10の端面13は、集合空間ARの手前で留める必要がある。したがって、扁平多穴管10の端部11は、スペーサ孔351に差し込むことができない。しかし、差し込みプレート60は、集合空間ARを必要としない。したがって、差し込みプレート50は、スペーサ孔351の内壁35aによって形成される空間にまで差し込むことができる。すなわち、扁平多穴管10に比べ、差し込みプレート60は、ヘッダ30,40に対して深く差し込むことができる。ヘッダ30,40は、差し込みプレート60によってバランスが取られ、姿勢を維持する。したがって、ロウ付け前であっても、差し込みプレート60とヘッダ30,40との相対位置が変化し難い。言い換えると、差し込みプレート60に対してヘッダ30,40が姿勢を維持する。これにより、ヘッダ30,40と扁平多穴管10との相対位置も維持することができる。
【0082】
(6−2)
また、上記実施形態に係る熱交換器100は、スペーサ孔351の内壁35aと、差し込みプレート60の外側端部62bの側面との間に形成される隙間寸法(第1の隙間寸法)d1は、挿入孔361および嵌入孔371の内壁36a,37aと、差し込みプレート60の外側端部62b以外の部分の側面または扁平多穴管10の側面との間に形成される隙間の寸法(第2の隙間寸法)d2よりも小さい。差し込みプレート60は、第1の差し込み空間P1内でしっかりとヘッダ30,40に固定されているため、ヘッダ30,40は、差し込みプレート60に対して動き難い構成となっている。すなわち、差し込みプレート60が、よりしっかりとヘッダ30,40と接合されることによって、ヘッダ30,40の姿勢は変更しない。これにより、ロウ付け前のヘッダ30,40と扁平多穴管10との相対位置も維持することができ、その結果、熱交換器100の性能を維持させることができる。
【0083】
(6−3)
上記実施形態では、差し込みプレート60の内側端部62aの寸法L20a,w60aと外側端部62bの寸法L20b,w60bとを異なる寸法にしている。すなわち、差し込みプレート60の端部62の形状は、外側端部62bをスペーサ孔351に差し込ませ、内側端部62aを嵌入孔371および挿入孔361に差し込ませることができるように構成されている。言い換えると、外側端部62bは、差し込みプレート60の凸部となる。ここで、外側端部62bの側面とスペーサ孔351の対向面35aとの間にできる隙間寸法d1が、内側端部62aの側面と嵌入孔371および挿入孔361の対向面37a,36aとの間にできる隙間寸法d2よりも小さくなるように構成している。すなわち、ロウ付け前であっても、外側端部62bは、スペーサ35に対する相対位置を殆ど変化させない。これにより、ロウ付けされるまでヘッダ30,40の姿勢が変動しないため、ヘッダ30,40と扁平多穴管10との相対位置も維持することができる。
【0084】
(7)変形例
(7−1)変形例A
上記実施形態において、連結部50を構成する各部材35,36,37にそれぞれ形成される孔351,361,371の寸法(幅寸法および高さ寸法)が、ほぼ同じであってもよい(
図15参照)。この場合であっても、差し込みプレート60がヘッダ30,40に対して深く差し込まれることにより、差し込みプレート60とヘッダ30,40との相対位置を維持することができる。
【0085】
また、このとき、差し込みプレート60の外側端部62bの寸法を、内側端部62aの寸法より大きくしてもよい。具体的に、外側端部62bの高さ寸法L20bおよび幅寸法w60bを、内側端部62aの高さ寸法L20aおよび幅寸法w60aより大きくする。これによっても、差し込みプレート60の先端部分(外側端部)62bの側面とスペーサ孔351の内壁との隙間寸法d1を他の隙間寸法d2と比べて小さくすることができる。これによって、差し込みプレート60に対してヘッダ30,40は傾き難くなり、結果として、ヘッダ30,40の姿勢を維持することができる。
【0086】
(7−2)変形例B
また、上記実施形態に係る接合部材37において、嵌入孔371の寸法を挿入孔361の寸法に比べて小さくしてもよい。これにより、扁平多穴管10や差し込みプレート60の側面と嵌入孔371の内壁371aとの間にできる隙間d2が小さくなるため、扁平多穴管10や差し込みプレート60に対してヘッダ30,40を移動させ難くすることができる。
【0087】
(7−3)変形例C
また、上記実施形態では、スペーサ35および接合部材37の間に介在プレート36を設けた。ここで、接合部材37および介在プレート36が一体の構成を有していてもよい。
【0088】
(7−4)変形例D
上記実施形態では、スペーサ孔351の寸法が、扁平多穴管10の端部11の寸法より小さい場合を例に挙げたが、スペーサ孔351の寸法は、扁平多穴管10の端部11の寸法より大きくてもよい。この場合であっても、差し込みプレート60によってヘッダ30,40の傾きを抑制することができる。
【0089】
また、この場合であっても、差し込みプレート60の先端側面と、スペーサ孔351の内壁35aとの間に形成される隙間d1が他の隙間d2に比べて小さくなるように、差し込みプレート60の寸法を決定してもよい。これにより、ヘッダ30,40の傾きを一層防止することができる。その結果、ヘッダ30,40と扁平多穴管10との相対位置を維持することができる。