(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光重合開始剤(C)が、光照射によって酸活性種を発生するA+B−で表される塩であって、前記陽イオンA+が、芳香族ヨードニウムイオンおよび芳香族スルホニウムイオンからなる群より選ばれる請求項1または2に記載の液晶表示装置用光重合性接着剤。
前記、シクロオレフィンポリマー系フィルムと貼り合せる光学フィルムは、シクロオレフィンポリマー系フィルム、アクリル系フィルム、アセチルセルロース系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリエステル系フィルムのいずれかである請求項4記載の液晶表示装置用積層体。
【背景技術】
【0002】
近年のエレクトロニクスの飛躍的な進歩により、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、リアプロジェクションディスプレイ(RPJ)、ELディスプレイ、発光ダイオ−ドディスプレイなどの様々なフラットパネルディスプレイ(FPD)が、様々な分野で表示装置として使用されるようになってきた。例えば、これらFPDは、パーソナルコンピューターのディスプレイや液晶テレビをはじめ屋内で使用されるばかりでなく、カーナビゲーション用ディスプレイ等のように車両に搭載して使用される。
【0003】
このような表示装置には、通常、外部光源からの反射を防ぐための反射防止フィルムや、表示装置の表面の傷付き防止のための保護フィルム(プロテクトフィルム)など、用途に応じて様々なフィルムが使用されており、例えば、LCDを構成する液晶セル用部材においては、偏光板や位相差フィルムが積層されている。
また、FPDは、表示装置として利用するだけではなく、その表面にタッチパネルの機能を設けて、入力装置として利用されることもある。タッチパネルにも、保護フィルム、反射防止フィルムやITO蒸着樹脂フィルムなどが使用されている。
また、表示装置には、液晶層を背面から照らして発光させるバックライト方式が普及し、液晶層の下面側にエッジライト型、直下型等のバックライトユニットが装備されている。かかるエッジライト型のバックライトユニットは、基本的には光源としての線状のランプと、ランプに端部が沿うように配置される方形板状の導光板と、導光板の表面側に配設される光拡散シートと、光拡散シートの表面側に配設されるプリズムシートを備えている。最近では、光源に令陰極管(COFL)から色再現性や省電力に優れた発光ダイオード(LED)が使用されるようになってきたため、より耐熱性や寸法安定性の要求が高まってきている。
このようなフィルムは、接着剤を介して被着体に貼着して表示装置に使用されている。表示装置に用いられる接着剤は、まず透明性や耐熱性に優れることが要求されるので、アクリル系樹脂を主剤とする溶剤含有の2液硬化型接着剤が一般に使用されている。
【0004】
ところで、シクロオレフィンポリマーは、透明性に優れ、複屈折が小さく、耐熱性、耐吸水性等にも優れており、光学用に非常に有用な材料である。さらに、該ポリマーは、強度、耐水性、電気絶縁性、耐溶剤性、酸やアルカリ等への耐薬品性にも優れており、光学用途以外にも、電気絶縁材料、容器やフィルム等の耐湿包装材料としても有用である。
【0005】
しかしながら、シクロオレフィンポリマーからなる成形品は、お互い同士、又は他の材料と接着しにくいという問題がある。
一般的にプラスチック成形品は、それ単独で用いることもあるが、お互いに接着したり、他の材料と接着して用いたりすることが多い。
【0006】
従来の光学用透明プラスチック成形品は、通常用いられる一般的な溶剤系やエマルジョン系の接着剤で接着することができる。
例えば、ポリカーボネート同士または、ポリカーボネートとステンレスなどの金属は、シアノアクリレート系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤などで接着できる。
また、ポリメタクリル酸メチル(以下、PMMAと称する)同士または、PMMAとステンレスなどの金属は、シアノアクリレート系接着剤、エポキシ系接着剤またはアクリル系接着剤などで接着できる。
ところが、シクロオレフィンポリマーからなる成形品は、一種のポリオレフィン樹脂であるため、表面の濡れが悪くポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂と同様に接着しにくく、上述のいずれの接着剤を用いても接着できず、該成形品同士も、該成形品と他の材料とも接着力が弱く容易に剥がれてしまう。
【0007】
シクロオレフィンポリマーと高い接着力を有する接着剤としては、ジエン系低重合体の2官能以上の(メタ)アクリル酸エステル(アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとを併せて(メタ)アクリル酸エステルと表記する。以下同様。)よりなる組成物の提案がある(特許文献1)。
しかし2官能以上の(メタ)アクリル酸エステルを用いた場合、光重合による重合収縮が発生し、加工時や湿熱耐久試験において端部が容易に剥がれてしまう問題があった。
【0008】
また、特許文献2では、反応性モノマーまたは反応性オリゴマーよりなる組成物に溶剤、紫外線に不活性な熱可塑性ポリマー、および充填剤から選ばれる少なくとも1種を含有する接着剤が提案されている。
しかし、溶剤を添加すると、塗工設備を防爆仕様にしたり、乾燥オーブンを設置したりしなければならなくなる。また、紫外線に不活性な熱可塑性ポリマーを添加すると、粘度が高くなり塗工性に難を生じる。さらに、充填剤を添加すると、充填剤が紫外線を一部吸収するため重合性が低下する問題があった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の光重合性接着剤は、一個以上のオキセタン環を含有するビニルエーテル化合物(A)と、三員環状のオキシラン化合物(B)を必須成分とすることが特徴である。
本発明の光重合性接着剤において、一個以上のオキセタン環を含有するビニルエーテル化合物(A)とは、反応性官能基として分子内に四員環状の環状エーテル基を1つ以上有し、さらにビニルエーテル基を有する化合物であり、特に制限が無く使用できる。
一個以上のオキセタン環を含有するビニルエーテル化合物(A)の具体的な例としては、3−メチル−3−(ビニルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ビニルオキシメチル)オキセタン、3−プロピル−3−(ビニルオキシメチル)オキセタン、3−メチル−3−(2−ビニルオキシエチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−ビニルオキシエチル)オキセタン、3−プロピル−3−(2−ビニルオキシエチル)オキセタン、3−メチル−3−(3−ビニルオキシプロピル)オキセタン、3−エチル−3−(3−ビニルオキシプロピル)オキセタン、3−プロピル−3−(3−ビニルオキシプロピル)オキセタン、3−メチル−3−(3−ビニルオキシブチル)オキセタン、3−エチル−3−(3−ビニルオキシブチル)オキセタン、3−プロピル−3−(3−ビニルオキシブチル)オキセタン、エチレングリコール[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]ビニルエーテル、プロピレングリコール[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]ビニルエーテル、3,3−ビス[(ビニロキシ)メチル]オキセタン等が挙げられる。
【0018】
本発明の光重合性接着剤において、三員環状のオキシラン化合物(B)とは、反応性官能基として分子内に三員環状の環状エーテル基を1つ以上有する化合物であり、特に制限無く使用できる。
分子内に三員環状の環状エーテル基としては、例えば、オキシラン、メチルオキシラン、フェニルオキシラン、1,2−ジフェニルオキシラン、メチリデンオキシラン、オキシラニルメチル、オキシラニルメタノール、オキシランカルボン酸、(クロロメチル)オキシラン、(ブロモメチル)オキシラン、オキシラニルアセトニトリル等の脂肪族系環状エーテル基;
例えば、3,4−オキシランシクロヘキシルメチル 3,4−オキシランシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−オキシラン−6−メチルシクロヘキシルメチル 3,4−オキシラン−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレンビス(3,4−オキシランシクロヘキサンカルボキシレート)、ビス(3,4−オキシランシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−オキシラン−6−メチルシクロヘキシルメチル) アジペート、ジエチレングリコールビス(3,4−オキシランシクロヘキシルメチルエーテル)、エチレングリコールビス(3,4−オキシランシクロヘキシルメチルエーテル)、2,3,14,15−ジオキシラン−7,11,18,21−テトラオキサトリスピロ−[5.2.2.5.2.2]ヘンイコサン(また、3,4−オキシランシクロヘキサンスピロ−2’,6’−ジオキサンスピロ−3’’,5’’−ジオキサンスピロ−3’’’,4’’’−オキシランシクロヘキサンとも命名できる化合物)、4−(3,4−オキシランシクロヘキシル)−2,6−ジオキサ−8,9−オキシランスピロ[5.5]ウンデカン、4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ビス−2,3−オキシランシクロペンチルエーテル、およびジシクロペンタジエンジオキサイド等の脂環式環に結合した三員環状の環状エーテル基が挙げられ、これら三員環状の環状エーテル基含有化合物中の水素原子を1個または複数個取り除いた形の基が他の化学構造に結合した化合物が、三員環状のオキシラン化合物(B)となりうる。
【0019】
ここに例示したオキシラン化合物は、それぞれ単独で使用してもよいし、また複数のオキシラン化合物を混合して使用してもよい。
【0020】
このような三員環状のオキシラン化合物(B)のオキシラン当量は、通常、30〜3000g/eqであり、50〜1500g/eqが好ましい。オキシラン当量が30g/eqを下回ると、硬化後の光学フィルムの可撓性が低下したり、接着強度が低下したりする場合があるため好ましくない。一方、3000g/eqを超えると、他の成分との相溶性が低下する場合があるため好ましくない。
【0021】
また、本発明の三員環状のオキシラン化合物(B)が、三員環状のオキシラン環を二個以上有する化合物(b−1)を含有することが好ましい。三員環状のオキシラン環が複数含有することで、後述する接着剤の架橋性が向上し、効果的な接着力と耐熱性や耐湿熱性を維持することが可能となる。
ここで、前記した(b−1)は、1種だけを用いてもよいし、あるいは、複数種を併用してもよい。
また、ビニルエーテル化合物(A)100重量部に対して、三員環状のオキシラン化合物(B)を5〜50重量含有することが好ましい。
【0022】
本発明において、前記の光重合性接着剤に光重合開始剤(C)を含有することによって、光重合性接着剤とすることができる。
上記の光重合開始剤(C)が、光照射によって酸性活性種を発生するA+B−で表される塩であって、特に限定されないが、一般的にはオニウム塩が良く知られている。オニウム塩としてはルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩などが挙げられる。この陽イオンA+が、芳香族ヨードニウムイオンおよび/または芳香族スルホニウムイオンであることが本発明では好ましい。
【0023】
光重合開始剤(C)としては、例えば、UVACURE1590(ダイセル・サイテック製)、CPI−110P(サンアプロ製)、などのスルホニウム塩やIRGACURE250(BASF製)、WPI−113(和光純薬製)、Rp−2074(ローディア・ジャパン製)等のヨードニウム塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
光重合開始剤(C)の配合割合は、ビニルエーテル化合物(A)100重量部に対して、0.5〜20重量部であり、0.5〜10重量部であることが好ましい。
【0025】
更に、上記、光重合開始剤(C)の性能を向上させるために、光増感剤(D)を併用しても良い。光増感剤としては、アントラセン系やベンゾフェノン系、チオキサントン系やペリレン、フェノチアジン、ローズベンガル等が挙げられる。
【0026】
本発明における光重合性接着剤は、更に酸化防止剤(E)を含んでも良い。酸化防止剤(E)を含むことによって、光重合後の接着剤層の経時での着色を抑制することができる。
酸化防止剤(E)としては、例えば、アデカスタブAO‐50、アデカスタブAO‐80(旭電化工業製)、などのフェノール系酸化防止剤や、IRGANOX‐PS‐800FD(BASF製)、などのイオウ系酸化防止剤、TINUBIN622LD、TINUBIN144、TINUBIN765(BASF製)等のヒンダードアミン系の光安定剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
酸化防止剤(E)の配合割合は、重合性成分100重量部に対して、0〜5重量部であり、0.01〜3重量部であることが好ましい。
【0027】
本発明の光重合性接着剤は、実質的に有機溶剤を含まない。有機溶剤を全く含まないほうが好ましいが、光重合開始剤(C)は重合性成分に難溶性のことが多い。そのため光重合開始剤(C)を溶解するため少量の有機溶剤は含んでもよい。光重合性接着剤中の有機溶剤の含有量は5重量%以内である。
【0028】
本発明の光重合性接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で有れば、重合性モノマーやオリゴマー、シランカップリング剤、重合禁止剤、軟化剤、染料、顔料、消泡剤、タッキファイヤ、可塑剤、充填剤および老化防止剤等の各種の公知の添加剤を、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲内で含むことができる。
【0029】
本発明における光重合性接着剤は、実質的に有機溶剤を含まないことが好ましく、23℃における粘度は1〜1500mPa・sであることが重要であり、好ましくは10〜1300mPa・sであり、20〜1000mPa・sであることがより好ましい。粘度が1500mPa・sより高いと光学フィルムに塗工した場合、0.1〜6μmの薄膜塗工ができず、透過率等の光学的特性が悪化してしまう。一方、粘度が1mPa・sより低いと接着剤層の膜厚制御が困難になる。
光重合性接着剤の粘度は、光重合性オキシラン系樹脂組成物の粘度で殆ど決定されるため、光重合性オキシラン系樹脂組成物の粘度を1〜1500mPa・sの範囲で管理することにより、光重合性接着剤の粘度も管理が可能である。
【0030】
常法にしたがって適当な方法で光学フィルムに光重合性接着剤を塗工して、光学フィルムの上に光重合性接着層を形成することができる。
光重合性接着層の厚さは、0.1〜6μmの薄膜塗工であることが好ましく、0.1μm〜3μmであることがより好ましい。0.1μm未満では十分な接着力が得られないことがあり、6μmを超えても接着力等の特性はそれ以上向上しない場合が多い。
【0031】
本発明の光重合性接着剤を光学フィルム等に塗工する方法としては、特に制限は無く、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、マイクログラビアコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等種々の塗工方法が挙げられるが、薄膜塗工が可能であれば、特に制限はない。
【0032】
本発明の光重合性接着剤は、さらに光学用光重合性接着剤として好適である。即ち、フィルム状基材である光学フィルムと該光学フィルムの少なくとも一方の面に位置する接着層とを具備する積層体の形成に使用されることが好ましい。
本発明の光学フィルムの積層体は、以下のようにして得ることができる。
フィルム状基材である光学フィルムの片面に光学用光重合性接着剤を塗工し、別の光学フィルムを光重合性接着層の表面に積層したり、更にこの積層体の片面や両面に光学用光重合性接着剤を塗工し、更に別の光学フィルム、ガラス、あるいは光学成形体に積層したりすることによって、光学用積層体を得ることができる。
光学用光重合性接着剤の光重合反応は、光学用光重合性接着剤の塗工時、あるいは積層する際、さらには積層した後に活性エネルギー線を照射して進行するが、積層した後に活性エネルギー線を照射して光重合反応を進めることが好ましい。
【0033】
ここで、光学用光重合性接着剤及び光学用積層体について一般的な説明をする。
光重合性接着剤は、光学素子用積層体を形成するために用いられる。
光学素子用積層体の基本的積層構成は、フィルム状基材/光重合性接着層/フィルム状基材、あるいはフィルム状基材/光重合性接着層/フィルム状基材/光重合性接着層/フィルム状基材のようなシート状の両面感光重合性接着積層体である。さらには、フィルム状基材/光重合性接着層/フィルム状基材/光重合性接着層/フィルム状基材/光重合性接着層/フィルム状基材、ガラス、あるいは光学成形体のような多層の光学フィルムを光学部材に固定化した光学素子用積層体として使用される。
【0034】
フィルム状基材としては、セロハン、各種プラスチックフィルム、紙等のフィルム状基材が挙げられる。また、フィルム状基材としては、単層のものであってもよいし、複数の基材を積層してなる多層状態にあるものも用いることができる。
【0035】
フィルム状基材として使用される各種プラスチックフィルムとしては、各種プラスチックシートともいわれ、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムやトリアセチルセルロース系フィルムや、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系フィルム、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリノルボルネン系フィルム、ポリアリレート系フィルム、アクリル系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ビニル系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリイミド系フィルム、オキシラン系フィルムなどが挙げられる。
【0036】
本発明における光学素子用積層体としては、上記の各種プラスチックフィルムのうち、主に光学用途にて用いられる光学フィルムが好適に使用される。光学フィルムとしては、上記プラスチックフィルムに特殊な処理を施されたものであり、光学的機能(光透過、光拡散、集光、屈折、散乱、HAZE等の諸機能)を有するものが光学フィルムと称されている。これらの光学フィルムは単独で、または数種の光学フィルムを接着剤で多層に積層されて光学素子用積層体として使用される。例えば、位相差フィルム、反射防止フィルム、光拡散フィルム、輝度向上フィルム、プリズムフィルム(プリズムシートともいう)、導光フィルム(導光板ともいう)等が挙げられる。
【0037】
本発明の光重合性接着剤を使用した光学フィルムの積層体は、液晶表示装置、PDPモジュール、タッチパネルモジュール、有機ELモジュール等のガラス板や上記の各種プラスチックフィルムに貼着して光学素子用積層体として使用されることが好ましい。
【0038】
本発明の積層体は、より具体的には、以下のようにして得ることができる。
シクロオレフィンポリマー系フィルムの一方の面に、光重合性接着剤を塗工し、重合性接着剤層を形成し、光学フィルムを重ね合わせた後、光学積層フィルムとし、更に、活性エネルギー線を照射し、光重合性接着剤層を硬化することによって製造する方法。
【0039】
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、本発明は、下記実施例に限定されない。また、下記実施例および比較例中、「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を表す。
【0040】
[配合例1〜14]
酸素濃度が10%以下に置換された遮光された300ccのマヨネーズ瓶に、少なくとも一個以上のオキセタン環を含有するビニルエーテル化合物(A)、三員環状のオキシラン化合物(B)、及び光重合開始剤(C)を表1に示す比率で仕込み、エアモーターにて十分に攪拌を行い、十分に脱泡を行った後、配合例に示す光重合性接着剤を得た。
【0041】
表1に示した配合例の光重合性接着剤について、溶液外観、粘度を以下の方法に従って求め、結果を表2に示した。
【0042】
《外観》
各配合例で得られた光重合性接着剤の液体外観を目視にて評価した。
【0043】
《粘度》
各配合例で得られた光重合性接着剤を23℃の雰囲気下でE型粘度計(東機産業社製 TV−22)にて、約1.2mlを測定用試料とし、回転速度100〜0.5rpm、1分間回転の条件で測定し、溶液粘度(mPa・s)とした。
【0044】
本発明において、少なくとも一個以上のオキセタン環を含有するビニルエーテル化合物(A)、三員環状のオキシラン化合物(B)、光重合開始剤(C)、増感剤(D)、及び酸化防止剤(E)の代表例として、例示化合物は以下の表1に具体的に示すが、これらに限られるものではない。尚、例示化合物の表記として、EOXTVE(a−1):エチルオキセタンメタノールビニルエーテル(丸善石油社製)、OXT−DVE(a−2):3,3−ビス[(ビニロキシ)メチル]オキセタン、EX212(b−1):(1,6−ヘキシレングリコキシメチル))ジオキシラン(ナガセケムテック社製)、JER806(b−2):ビスフェノールF型オキシラン樹脂(三菱化学社製)、2021P(b−3):3,4−オキシランシクロヘキシルメチル−3,4−オキシランシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学工業社製)、CP110P(c−1):p-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムPF6塩、Irg250(c−2):(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムPF6塩、DET−X(D):2,4−ジエチルチオキサントン、AO−50(E):ステアリル-β-(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを示す。
【0047】
[実施例1]
配合例1で得られた光重合性接着剤を使用して、以下の積層フィルムを作成した。
光学フィルム(1)として、日本ゼオン社製のノルボルネン系フィルム(商品名「ゼオノア ZF−14:100μm」を使用し、その表面に300W・min/m2の放電量でコロナ処理を行い、表面処理後1時間以内に、配合例1に示す光重合性接着剤を、ワイヤーバーコーターを用いて膜厚2μmとなるように塗工し、ZF−14/重合性接着剤層/ZF−14からなる積層フィルムを得た。
この積層体の四方をセロハンテープで固定し、ブリキ板に固定した。
UV照射装置(東芝社製 高圧水銀灯)で最大照度300mW/cm2、積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射して、積層体を作製した。
【0048】
[実施例2〜8]
実施例1で光重合性接着剤(配合例1)の代わりに、表1に示すように配合例2〜8に変更した以外は、実施例1と同様にして積層体を作製した。
【0049】
[比較例1〜6]
実施例1で光重合性接着剤(配合例1)の代わりに、表1に示すように配合例9〜14に変更した以外は、実施例1と同様にして積層体を作製した。
【0050】
[実施例9〜11]
日本ゼオン社製のノルボルネン系フィルム(商品名「ゼオノア ZF−14:100μm」)と貼り合わせる光学フィルムを、三菱レイヨン社製のアクリル系フィルム(商品名「HDB−002:50μm」)に(実施例9)、カネカ社製のポリカーボネート系フィルム(商品名「R−140:43μm」に(実施例10)、富士フィルムビジネスサプライ社製の紫外線吸収剤を含有しないトリアセチルセルロース系フィルム:商品名「TAC50μ」(厚み50μm)に(実施例11)それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして積層体を得、同様に評価した。
【0051】
実施例、比較例で得られた積層体について、剥離強度、ゲル分率、打ち抜き加工性、及び耐湿熱性を以下の方法に従って求め、結果を表3に示した。
なお、本明細書において、実施例4および5は、参考例である。
【0052】
《剥離強度》
接着力は、JIS K6 854−4 接着剤−剥離接着強さ試験方法−第4部:浮動ローラー法に準拠して測定した。
即ち、得られた積層体を、25mm×150mmのサイズにカッターを用いて裁断して測定用サンプルとした。サンプルを、両面粘着テープ(トーヨーケム株式会社製DF8712S)を使用して、ラミネータを用いて金属板上に貼り付けて、積層体と金属板との測定用の試験片を得た。この測定用の試験片を23℃、相対湿度50%の条件下で、300mm/分の速度で引き剥がし、剥離力とした。
◎:剥離不可、あるいはフィルム破壊
○:剥離力が2.0(N/25mm)以上〜5.0(N/25mm)未満。
△:剥離力が1.0(N/25mm)以上〜2.0(N/25mm)未満。
×:剥離力が1.0(N/25mm)未満。
【0053】
《ゲル分率》
コロナ処理を施していない日本ゼオン社製のノルボルネン系フィルム(商品名「ゼオノア ZF−14:100μm」に、配合例1に示す光重合性接着剤を、ワイヤーバーコーターを用いて膜厚20〜25μmとなるように塗工し、光重合性接着剤層を形成した。さらに光重合性接着剤層の上にコロナ処理を施していないゼオノア ZF−14を重ね、3層からなる積層フィルムを得た後、UV照射装置(東芝社製 高圧水銀灯)で最大照度300mW/cm2、積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射し光重合性接着剤層を硬化させた。3層からなる積層体のゼオノア ZF−14を剥離し接着剤層を得た。
接着剤層の重量を測定した後(重量1)を金属メッシュと金属メッシュの間に挟み接着剤層同士が重ならないようにし、メチルエチルケトン(MEK)中で3時間還流した。さらに80℃−30分乾燥し、接着剤層の重量を測定した(重量2)。下記式よりゲル分率を求め、3段階評価した。
ゲル分率(%)={1−(重量1−重量2)/重量1)}×100
○:ゲル分率が90%以上
×:ゲル分率が90%未満
【0054】
《打ち抜き加工性》
ダンベル社製の100mm×100mmの刃を用い、作製した積層体を打ち抜いた。
打ち抜いた積層体の浮きや剥がれの有無を目視で確認した。
○:浮き又は剥がれなし
×:浮き又は剥がれあり
【0055】
《耐湿熱性》
各実施例、比較例で得られた積層体を、50mm×40mmの大きさに裁断し、60℃−90%RHの条件下で1000時間暴露した。暴露後の端部の剥がれの有無を目視にて評価した。
○:剥がれが全く無し
×:剥がれあり
【0057】
本発明の光重合性接着剤は、表3に示すように、いずれの実施例でも、粘度が100mPa・s以下であり、接着力、硬化性、打ち抜き加工性、湿熱耐性に優れた光学素子積層体を形成することがわかる。
これに対して、三員環状のオキシラン化合物(B)のみの比較例5では、粘度が高く、さらにゲル分率が低く硬化性が悪いため、打ち抜き加工性、湿熱耐性に劣ることがわかる。
また、少なくとも一個以上のオキセタン環を含有するビニルエーテル化合物(A)を含まず、オキセタン化合物およびビニルエーテル化合物に対して三員環状のオキシラン化合物(B)を添加した比較例1では、ゲル分率が低く硬化性が悪いため、打ち抜き加工性、湿熱耐性に劣ることがわかる。
一方、オキセタン化合物のみの比較例2やビニルエーテル化合物のみの比較例3では、光学フィルムに全く接着しない上に、ゲル分率が低く硬化性が悪いため、打ち抜き加工性、湿熱耐性に劣ることがわかる。
さらに、三員環状のオキシラン化合物(B)を含まない比較例4では、硬化した接着剤が硬脆いため、打ち抜き加工性、湿熱耐性に劣ることがわかる。