特許第5884675号(P5884675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5884675
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】渦電流式減速装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 49/02 20060101AFI20160301BHJP
   H02K 49/10 20060101ALI20160301BHJP
   F16D 63/00 20060101ALI20160301BHJP
   F16D 65/12 20060101ALI20160301BHJP
   F16D 65/847 20060101ALI20160301BHJP
   B60T 5/00 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
   H02K49/02 B
   H02K49/10 B
   F16D63/00 A
   F16D63/00 Z
   F16D65/12 U
   F16D65/847
   B60T5/00 A
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-179139(P2012-179139)
(22)【出願日】2012年8月13日
(65)【公開番号】特開2014-39361(P2014-39361A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2014年8月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100103481
【弁理士】
【氏名又は名称】森 道雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134957
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 英幸
(72)【発明者】
【氏名】野上 裕
(72)【発明者】
【氏名】今西 憲治
(72)【発明者】
【氏名】野口 泰隆
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 晃
(72)【発明者】
【氏名】山口 博行
(72)【発明者】
【氏名】田坂 方宏
(72)【発明者】
【氏名】奥田 洋三
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−182574(JP,A)
【文献】 特開2004−328863(JP,A)
【文献】 特開2012−152060(JP,A)
【文献】 特開平11−289731(JP,A)
【文献】 特開平09−163717(JP,A)
【文献】 特開2006−042507(JP,A)
【文献】 実開平07−009085(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第00777316(EP,A1)
【文献】 特開平03−164046(JP,A)
【文献】 実開平06−052386(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 49/02
B60T 5/00
F16D 63/00
F16D 65/12
F16D 65/847
H02K 49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の回転軸に固定された制動ディスクと、前記制動ディスクの主面に対向して円周方向にわたり磁極が交互に異なって配置された複数の永久磁石を保持した磁石保持ディスクと、を備えた渦電流式減速装置であって、
前記磁石保持ディスクは、前記制動ディスクの主面と対向する正面を前記永久磁石とともに覆う薄板からなる非磁性金属材料の磁石カバーが前記永久磁石と非接触状態で取り付けられ、円周方向に隣接する前記永久磁石同士の間に前記磁石カバーと前記磁石保持ディスクに接触した非磁性金属材料の伝熱ブロックが配置されていることを特徴とする渦電流式減速装置。
【請求項2】
前記伝熱ブロックは、前記永久磁石と非接触状態で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の渦電流式減速装置。
【請求項3】
前記磁石保持ディスクは、前記回転軸に回転可能に支持されており、制動時に摩擦ブレーキによって静止させられる構成であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の渦電流式減速装置。
【請求項4】
前記磁石保持ディスクは、前記回転軸に沿う方向に移動可能に支持されており、制動時に前記制動ディスクに接近した状態で静止させられる構成であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の渦電流式減速装置。
【請求項5】
前記磁石保持ディスクの背面には、前記伝熱ブロックの配置された位置に対応して放熱フィンが設けられていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の渦電流式減速装置。
【請求項6】
前記磁石カバーの内面には、前記永久磁石の配置された位置に対応して断熱塗膜が積層されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の渦電流式減速装置。
【請求項7】
車両の回転軸に固定された制動ドラムと、前記制動ドラムの内周面に対向して円周方向にわたり磁極が交互に異なって配置された複数の永久磁石を保持した磁石保持ドラムと、を備えた渦電流式減速装置であって、
前記磁石保持ドラムは、前記制動ドラムの内周面と対向する外周面を前記永久磁石とともに覆う薄板からなる非磁性金属材料の磁石カバーが前記永久磁石と非接触状態で取り付けられ、円周方向に隣接する前記永久磁石同士の間に前記磁石カバーと前記磁石保持ドラムに接触した非磁性金属材料の伝熱ブロックが配置されていることを特徴とする渦電流式減速装置。
【請求項8】
前記伝熱ブロックは、前記永久磁石と非接触状態で配置されていることを特徴とする請求項7に記載の渦電流式減速装置。
【請求項9】
前記磁石保持ドラムは、前記回転軸に回転可能に支持されており、制動時に摩擦ブレーキによって静止させられる構成であることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の渦電流式減速装置。
【請求項10】
前記磁石保持ドラムは、前記回転軸に沿う方向に移動可能に支持されており、制動時に前記制動ドラムに接近した状態で静止させられる構成であることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の渦電流式減速装置。
【請求項11】
前記磁石保持ドラムの内周面には、前記伝熱ブロックの配置された位置に対応して放熱フィンが設けられていることを特徴とする請求項10のいずれかに記載の渦電流式減速装置。
【請求項12】
前記磁石カバーの内周面には、前記永久磁石の配置された位置に対応して断熱塗膜が積層されていることを特徴とする請求項11のいずれかに記載の渦電流式減速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックやバスなどの車両に補助ブレーキとして搭載される渦電流式減速装置に関し、特に、制動力を発生させるために永久磁石を用いた渦電流式減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、永久磁石(以下、単に「磁石」ともいう)を用いた渦電流式減速装置(以下、単に「減速装置」ともいう)は、プロペラシャフトなどの回転軸に固定した制動部材を有し、制動時に、磁石からの磁界の作用で、磁石と対向する制動部材の表面に渦電流を発生させ、これにより、回転軸と一体で回転する制動部材に回転方向と逆向きの制動力が生じ、回転軸を減速させるものである。減速装置は、制動力をもたらすために渦電流が発生させられる制動部材、および磁石を保持して制動部材と対をなす磁石保持部材の形状に応じてドラム型とディスク型に大別され、制動と非制動とを切り替える構造も様々ある。
【0003】
近年、装置の小型化への要請に対応するため、磁石を保持する磁石保持部材を回転軸に回転可能に支持し、制動時にその磁石保持部材を摩擦ブレーキによって静止させる減速装置が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。この減速装置は、以下に示すように、非制動時に磁石保持部材と制動部材が同期して一体的に回転することから、同期回転方式の減速装置と称される。
【0004】
図1は、従来の同期回転方式の減速装置の構成例を示す縦断面図である。同図に示す減速装置はディスク型であり、制動部材としての制動ディスク1と、磁石保持部材としてその制動ディスク1の主面に対向し永久磁石5を保持する磁石保持ディスク4とを備える。
【0005】
図1では、制動ディスク1は、プロペラシャフトなどの回転軸11と一体で回転するように構成される。具体的には、回転軸11と同軸上に連結軸12がボルトなどによって固定され、フランジ付きのスリーブ13がその連結軸12にスプラインで噛み合いながら挿入されてナット14で固定されている。制動ディスク1は、回転軸11と一体化されたスリーブ13のフランジにボルトなどで固定され、これにより回転軸11と一体で回転するようになる。
【0006】
制動ディスク1には、例えばその外周に放熱フィン2が設けられる。この放熱フィン2は、制動ディスク1と一体成形され、制動ディスク1そのものを冷却する役割を担う。制動ディスク1の材質は、鉄などの強磁性材料や、フェライト系ステンレス鋼などの弱磁性材料である。
【0007】
図1では、磁石保持ディスク4は、回転軸11に対し回転可能に構成される。磁石保持ディスク4は、連結軸12と同心状の環状部材3と一体成形されたり、個別に成形されてボルトなどで環状部材3に固定されたりしたものである。環状部材3は回転軸11と一体化されたスリーブ13に軸受15a、15bを介して支持され、これにより磁石保持ディスク4は回転軸11に対し自由に回転が可能になる。軸受15a、15bには潤滑グリスが充填され、この潤滑グリスは、環状部材3の前後両端に装着されたリング状のシール部材16a、16bにより漏出を防止される。
【0008】
磁石保持ディスク4には、制動ディスク1の主面と対向する面に、円周方向にわたり複数の永久磁石5が固着される。永久磁石5は、磁極(N極、S極)の向きが磁石保持ディスク4の軸方向であり、円周方向に隣接するもの同士で磁極が交互に異なるように配置される。
【0009】
図1では、磁石保持ディスク4には、永久磁石5の全体を覆うように、薄板からなる磁石カバー20が取り付けられる。この磁石カバー20は、鉄粉や粉塵から永久磁石5を保護するのみならず、永久磁石5の保有する磁力が熱影響で低下するのを防止するために、制動ディスク1からの輻射熱を遮る役割を担う。磁石カバー20の材質は、永久磁石5からの磁界に影響を及ぼさないように、非磁性材料である。
【0010】
図1に示す減速装置は、制動時に磁石保持ディスク4を静止させる摩擦ブレーキとしてディスクブレーキを備える。このディスクブレーキは、磁石保持ディスク4の後方で環状部材3と一体のブレーキディスク6と、このブレーキディスク6を間に挟むブレーキパッド8a、8bを有するブレーキキャリパ7と、このブレーキキャリパ7を駆動させる電動式直動アクチュエータ9とから構成される。ブレーキディスク6は、ボルトなどで環状部材3に取り付けられ、環状部材3と一体化される。
【0011】
ブレーキキャリパ7は、前後で一対のブレーキパッド8a、8bを有しており、ブレーキパッド8a、8bの間にブレーキディスク6を配置し所定の隙間を設けて挟んだ状態で、バネを搭載したボルトなどによりブラケット17に付勢支持される。このブラケット17は、車両のシャーシやクロスメンバーなどの非回転部に取り付けられる。また、ブラケット17は、ブレーキディスク6の後方で環状部材3を包囲し、環状部材3に軸受18を介して回転可能に支持される。この軸受18にも潤滑グリスが充填され、この潤滑グリスは、ブラケット17の前後両端に装着されたリング状のシール部材19a、19bにより漏出を防止される。
【0012】
ブレーキキャリパ7には、アクチュエータ9がボルトなどで固定される。アクチュエータ9は、電動モータ10によって駆動し、電動モータ10の回転運動を直線運動に変換して後側のブレーキパッド8bをブレーキディスク6に向け直線移動させる。これにより、後側のブレーキパッド8bがブレーキディスク6を押圧し、これに伴う反力の作用で、前側のブレーキパッド8aがブレーキディスク6に向け移動し、その結果、ブレーキディスク6を前後のブレーキパッド8a、8bで強力に挟み込む。
【0013】
図1に示す減速装置において、非制動時は、ディスクブレーキ(摩擦ブレーキ)を作動させない状態にある。このとき、回転軸11と一体で制動ディスク1が回転するのに伴い、環状部材3と一体の磁石保持ディスク4が、永久磁石5と制動ディスク1との磁気吸引作用により、制動ディスク1と同期して一体的に回転する。このため、制動ディスク1と永久磁石5との間に相対的な回転速度差が生じないことから、制動力は発生しない。
【0014】
一方、制動時は、ディスクブレーキ(摩擦ブレーキ)を作動させ、ブレーキディスク6がブレーキパッド8a、8bによって挟み込まれ、これにより環状部材3と一体の磁石保持ディスク4の回転が停止し、磁石保持ディスク4が静止する。制動ディスク1が回転している際に磁石保持ディスク4のみが静止すると、制動ディスク1と永久磁石5との間に相対的な回転速度差が生じるため、永久磁石5からの磁界の作用で、制動ディスク1の主面に渦電流が発生し、制動ディスク1を介して回転軸11に制動力を発生させることができる。
【0015】
このように図1に示す減速装置は、同期回転方式の減速装置として成り立たせるため、磁石保持部材としての磁石保持ディスク4を回転軸11に回転可能に支持した構成であるが、旧来の一般的な減速装置のように、磁石保持ディスク4を回転軸11に沿う方向に移動可能に支持し、制動時に磁石保持ディスク4を制動ディスク1に接近させた状態で静止させ、非制動時には磁石保持ディスク4を制動ディスク1から離間させる構成でも成り立つ(例えば、特許文献6参照)。
【0016】
この減速装置の場合、非制動時は、磁石保持ディスクが制動ディスクから離間しているので、回転軸と一体で回転する制動ディスクには永久磁石からの磁界が作用しない。このため、制動ディスクの主面に渦電流は発生しないし、制動力も発生しない。
【0017】
一方、制動時は、アクチュエータなどの作動により磁石保持ディスクが制動ディスクに向けて移動し、制動ディスクに接近した状態で静止する。すると、回転軸と一体で回転する制動ディスクには磁石保持ディスクにおける永久磁石からの磁界が作用するため、制動ディスクと永久磁石との間の相対的な回転速度差により、制動ディスクの主面に渦電流が発生する。このため、回転する制動ディスクに制動力が発生し、制動ディスクを介して回転軸の回転を減速させることができる。
【0018】
また、上記した減速装置はディスク型であるが、ドラム型であっても成り立つ。ドラム型の減速装置の場合、車両の回転軸に制動ドラムが固定され、この制動ドラムの内周面に対向して円周方向にわたり複数の永久磁石を保持した磁石保持ドラムが配設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平4−331456号公報
【特許文献2】実開平5−80178号公報
【特許文献3】特開2011−97696号公報
【特許文献4】特開2011−139574号公報
【特許文献5】特開2011−182574号公報
【特許文献6】特開2003−339150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
ところで上記した従来の減速装置では、制動時に制動部材に発生した渦電流により、回転軸の運動エネルギーが熱エネルギーに変換され、この熱エネルギーによって制動部材が発熱する。このとき、永久磁石は、制動部材の発熱領域(ディスク型の場合は制動ディスクの主面、ドラム型の場合は制動ドラムの内周面)に近接しているため、温度が上昇し易い状況下にある。
【0021】
仮に磁石の温度が耐熱温度以上に上昇したならば、磁石自身が熱減磁を起こし、これにより制動力が低下することから、減速装置として必要な性能を確保できない。これを防止するために、磁石温度が耐熱温度を超えないように制動時間を制御すればよいが、この場合は、連続制動可能な時間が短くなる。さらに、磁石は、耐熱温度を高めるために、一般にレアアースであるDy(ディスプロシウム)などを含有するが、昨今のレアアースの急激な価格高騰を受け、製品コストが不安定になるのみならず、レアアースの確保そのものが困難となる可能性がある。
【0022】
したがって、制動時における磁石の温度上昇を抑制する技術の確立が強く望まれる。この点、例えば、前記特許文献1に記載の減速装置では、磁石の制動部材側となる面にポールピースと称される強磁性板が配置されている。この場合、制動部材の発熱領域から磁石までの距離が少なくとも強磁性板の厚み分広がるため、磁石の温度上昇が鈍化する。このとき、制動部材内で発生した熱が一旦強磁性板に吸収されるため、制動時における磁石の昇温速度が緩和されるものの、強磁性板そのものの温度が上昇するといずれは磁石に熱が伝わり、磁石の温度上昇は免れない。
【0023】
また、例えば、前記特許文献6に記載の減速装置は、制動部材の発熱領域に冷却媒体を吹き付ける構造を具備しており、制動部材を積極的に冷却し、これに伴って磁石の温度上昇を抑制することができる。ただし、この減速装置では、冷却媒体を貯蔵するタンク、その冷却媒体を供給する装置およびそれらの設置スペースが別途必要となる。
【0024】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、制動時における永久磁石の温度上昇を簡素な構成で効果的に抑制することができる渦電流式減速装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明者らは、永久磁石を用いた減速装置において、制動時に制動部材が発熱するのに伴って磁石の温度が上昇する現象を考察し、その上で、上記目的を達成することが可能な構成について鋭意検討を重ね、下記の知見を得た。
【0026】
図2は、制動時に永久磁石の温度が上昇する現象を説明するために制動部材と磁石の配置関係を示す模式図である。同図では、前記図1に示す減速装置の該当部分を拡大し、磁石カバー20を省略した場合のものを示している。
【0027】
図2に示すように、制動時に、磁石5を保持した磁石保持部材としての磁石保持ディスクが静止し、その一方で制動部材としての制動ディスク1が回転しているとき、両者の回転速度差に起因し、制動ディスク1の主面と磁石5の表面との隙間に、雰囲気ガス(空気)の激しい流動が生じる(図2中の点線矢印参照)。このため、雰囲気ガスは制動ディスク1の発熱領域(主面)を流動することにより昇温する。そして、磁石5は、そのように高温化して流動する雰囲気ガスとの対流熱伝達(熱交換)により加熱され、さらに制動ディスク1の発熱領域からの輻射熱伝達(図2中の波線矢印参照)によっても加熱される。
【0028】
このように制動時における磁石の温度上昇は、制動部材の発熱に伴う対流熱伝達と輻射熱伝達による。そこで、対流熱伝達と輻射熱伝達による直接的な磁石の加熱を回避するためには、まず、制動部材と磁石との隙間に、前記図1に示すような非磁性金属材料からなる薄板状の磁石カバーを設ける。
【0029】
ここで、磁石カバーには対流熱伝達と輻射熱伝達により熱が与えられる。このとき、磁石カバーが磁石に接触していると、磁石カバーの受け取った熱が熱伝導により磁石に伝わってしまう。このため、磁石カバーは、磁石と非接触状態を維持しつつ、磁石保持部材に固定するのがよい。なお、磁石カバーの材質が仮に強磁性材料であると、磁石カバーが磁力によって磁石に吸引されるため、磁石カバー自身が変形し、これにより磁石との非接触状態を確保することが困難となる。
【0030】
ただし、磁石カバーのみでは、磁石と磁石カバーとの隙間における空気を媒体として熱伝導または緩やかな対流熱伝達により磁石が加熱されてしまう。そこで、磁石カバーの熱を磁石以外に優先的に逃がすことができるように、円周方向に隣接する磁石同士の間に、熱伝導性に優れた非磁性金属材料の伝熱ブロックを配置すればよい。
【0031】
この伝熱ブロックは、磁石カバーからの受熱と磁石保持部材への放熱とを効率的に行うために、磁石カバーと磁石保持部材の両者に接触した状態で磁石保持部材に固定する。磁石保持部材は、伝熱ブロックよりも熱容量が遥かに大きく、とりわけ同期回転方式の減速装置の場合は非制動時に回転軸とともに回転して積極的に放熱が行われる。これにより、磁石保持部材は常に低温状態に維持され、その結果、磁石の温度上昇を効果的に抑制することが可能となる。
【0032】
以上のことから、制動部材の発熱領域と磁石との隙間に、磁石と非接触状態で非磁性金属材料からなる薄板状の磁石カバーを配置し、さらに円周方向に隣接する磁石同士の間に、磁石カバーと磁石保持部材の両者に接触した状態で非磁性金属材料からなる伝熱ブロックを配置すれば、磁石を迂回するように発熱領域からの熱流を制御することができ、磁石の温度上昇を抑制することができる。
【0033】
本発明は、上記の知見に基づいて完成させたものであり、その要旨は、下記の(1)および(2)に示す渦電流式減速装置にある。
【0034】
(1)本発明の渦電流式減速装置は、
車両の回転軸に固定された制動ディスクと、前記制動ディスクの主面に対向して円周方向にわたり磁極が交互に異なって配置された複数の永久磁石を保持した磁石保持ディスクと、を備えた渦電流式減速装置であって、
前記磁石保持ディスクは、前記制動ディスクの主面と対向する正面を前記永久磁石とともに覆う薄板からなる非磁性金属材料の磁石カバーが取り付けられ、円周方向に隣接する前記永久磁石同士の間に前記磁石カバーと前記磁石保持ディスクに接触した非磁性金属材料の伝熱ブロックが配置されていることを特徴とする渦電流式減速装置である。
【0035】
上記(1)の減速装置において、前記磁石保持ディスクは、前記回転軸に回転可能に支持されており、制動時に摩擦ブレーキによって静止させられる構成にすることができる。
【0036】
上記(1)の減速装置において、前記磁石保持ディスクは、前記回転軸に沿う方向に移動可能に支持されており、制動時に前記制動ディスクに接近した状態で静止させられる構成にすることも可能である。
【0037】
また、上記(1)の減速装置では、前記磁石保持ディスクの背面には、前記伝熱ブロックの配置された位置に対応して放熱フィンが設けられていることが好ましい。
【0038】
また、上記(1)の減速装置では、前記磁石カバーの内面には、前記永久磁石の配置された位置に対応して断熱塗膜が積層されていることが好ましい。
【0039】
(2)本発明の渦電流式減速装置は、
車両の回転軸に固定された制動ドラムと、前記制動ドラムの内周面に対向して円周方向にわたり磁極が交互に異なって配置された複数の永久磁石を保持した磁石保持ドラムと、を備えた渦電流式減速装置であって、
前記磁石保持ドラムは、前記制動ドラムの内周面と対向する外周面を前記永久磁石とともに覆う薄板からなる非磁性金属材料の磁石カバーが取り付けられ、円周方向に隣接する前記永久磁石同士の間に前記磁石カバーと前記磁石保持ドラムに接触した非磁性金属材料の伝熱ブロックが配置されていることを特徴とする渦電流式減速装置である。
【0040】
上記(2)の減速装置において、前記磁石保持ドラムは、前記回転軸に回転可能に支持されており、制動時に摩擦ブレーキによって静止させられる構成にすることができる。
【0041】
上記(2)の減速装置において、前記磁石保持ドラムは、前記回転軸に沿う方向に移動可能に支持されており、制動時に前記制動ドラムに接近した状態で静止させられる構成にすることも可能である。
【0042】
また、上記(2)の減速装置では、前記磁石保持ドラムの内周面には、前記伝熱ブロックの配置された位置に対応して放熱フィンが設けられていることが好ましい。
【0043】
また、上記(2)の減速装置では、前記磁石カバーの内周面には、前記永久磁石の配置された位置に対応して断熱塗膜が積層されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0044】
本発明の減速装置によれば、制動部材(制動ディスク、制動ドラム)が制動時に発熱しても、その熱はまず磁石カバーに伝わり、続いて、磁石カバーに接触している伝熱ブロックに優先的に伝わり、そして、伝熱ブロックに接触している磁石保持部材(磁石保持ディスク、磁石保持ドラム)に伝わって放熱されるため、磁石の温度が上昇するのを効果的に抑制することができる。しかも、この減速装置は、従来の減速装置のような冷却媒体を制動部材の発熱領域に吹き付ける格別な構造が不要であり、極めて簡素な構成である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】従来の同期回転方式の減速装置の構成例を示す縦断面図である。
図2】制動時に永久磁石の温度が上昇する現象を説明するために制動部材と磁石の配置関係を示す模式図である。
図3】本発明の第1実施形態である渦電流式減速装置の要部を示す模式図であり、同図(a)は磁石保持部材に相当する磁石保持ディスクを正面側から見た断面図を、同図(b)は同図(a)のA−A断面図を、同図(c)は同図(a)のB−B断面図をそれぞれ示す。
図4】本発明の第2実施形態である渦電流式減速装置の要部を示す模式図であり、同図(a)は磁石保持部材に相当する磁石保持ディスクを正面側から見た断面図を、同図(b)は同図(a)のC−C断面図を、同図(c)は同図(a)のD−D断面図をそれぞれ示す。
図5】本発明の第3実施形態である渦電流式減速装置の要部を示す模式図であり、同図(a)は磁石保持部材に相当する磁石保持ディスクを正面側から見た断面図を、同図(b)は同図(a)のE−E断面図を、同図(c)は同図(a)のF−F断面図をそれぞれ示す。
図6】本発明の第4実施形態である渦電流式減速装置の構成例を示す模式図であり、同図(a)は全体構成を示す縦断面図、同図(b)は磁石保持部材に相当する磁石保持ドラムを外周面側から見た要部の断面展開図を、同図(c)は同図(b)のG−G断面図を、同図(d)は同図(b)のH−H断面図をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に、本発明の渦電流式減速装置の実施形態について詳述する。
【0047】
<第1実施形態>
図3は、本発明の第1実施形態である渦電流式減速装置の要部を示す模式図であり、同図(a)は磁石保持部材に相当する磁石保持ディスクを正面側から見た断面図を、同図(b)は同図(a)のA−A断面図を、同図(c)は同図(a)のB−B断面図をそれぞれ示す。同図に示す第1実施形態の減速装置は、前記図1に示すディスク型で同期回転方式の減速装置の構成を基本とし、重複する説明は適宜省略する。
【0048】
図3に示すように、第1実施形態の減速装置は、回転軸に固定されて回転軸と一体で回転する制動部材として、制動ディスク1を備え、この制動ディスク1の主面に対向して円周方向にわたり磁極が交互に異なって配置された複数の永久磁石5を保持する磁石保持部材として、回転軸に回転可能に支持された磁石保持ディスク4を備える。この磁石保持ディスク4は、制動時に摩擦ブレーキ(ディスクブレーキ)によって静止させられる。
【0049】
第1実施形態では、磁石保持ディスク4には、制動ディスク1の主面と対向する面、すなわち永久磁石5を保持する正面を永久磁石5とともに覆うように、薄板からなる磁石カバー20が取り付けられている。磁石カバー20の材質は、アルミニウムやオーステナイト系ステンレス鋼などの非磁性金属材料である。一方、磁石保持ディスク4の材質は、鉄などの強磁性金属材料である。
【0050】
さらに、磁石保持ディスク4には、円周方向に隣接する磁石5同士の間に、磁石カバー20と磁石保持ディスク4の両者に接触した状態で伝熱ブロック21が配置されている。伝熱ブロック21は、まず磁石保持ディスク4に接合され、その磁石保持ディスク4に磁石カバー20が固定されることにより、磁石カバー20と接触状態にされる。これとは逆に、伝熱ブロック21は、まず磁石カバー20に接合され、その磁石カバー20が磁石保持ディスク4に固定されることにより、磁石保持ディスク4と接触状態にされてもよい。
【0051】
伝熱ブロック21の材質は、非磁性金属材料であって磁石5よりも熱伝導性が十分に高ければよく、アルミニウムやオーステナイト系ステンレス鋼などを採用できる。2種類の非磁性金属材料を張り合わせたクラッド材を伝熱ブロック21に採用して、熱伝導性と強度の両立を図ることもできる。
【0052】
ここで、磁石カバー20は、磁石5と非接触状態を維持しつつ、磁石保持ディスク4に固定されている。磁石カバー20と磁石5との非接触状態を保つには、伝熱ブロック21の厚みを磁石5の厚みよりも若干厚くすればよい。また、伝熱ブロック21は、磁石5と非接触状態であるのが好ましく、その形状と個数は、磁石5同士の間に配置が可能であれば、特段の制約はない。
【0053】
このような構成の減速装置によれば、制動部材に相当する制動ディスク1が制動時に発熱しても、その熱はまず磁石カバー20に伝わり、続いて、磁石カバー20に接触している熱伝導性の高い伝熱ブロック21に優先的に伝わり、そして、伝熱ブロック21に接触している磁石保持ディスク4に伝わって放熱されるため、磁石5の温度が上昇するのを効果的に抑制することができる。その結果、磁石5の熱減磁による制動力の低下を回避することが可能となり、連続制動可能な時間を拡大することもできる。さらに、磁石5の耐熱温度を高めるレアアース(Dy:ディスプロシウム)の含有を少量化したり、場合によっては不要とすることができ、これにより低コスト化が可能となる。しかも、この減速装置は、前記特許文献6に記載される従来の減速装置のような冷却媒体を制動部材の発熱領域に吹き付ける格別な構造が不要であり、極めて簡素な構成である。
【0054】
とりわけ、第1実施形態の減速装置は、同期回転方式であり、非制動時に磁石保持ディスク4が回転軸とともに回転することから、磁石保持ディスク4が保有する熱を積極的に放熱できるという利点がある。
【0055】
<第2実施形態>
図4は、本発明の第2実施形態である渦電流式減速装置の要部を示す模式図であり、同図(a)は磁石保持部材に相当する磁石保持ディスクを正面側から見た断面図を、同図(b)は同図(a)のC−C断面図を、同図(c)は同図(a)のD−D断面図をそれぞれ示す。同図に示す第2実施形態の減速装置は、前記図3に示す第1実施形態の減速装置の構成を基本とし、磁石温度上昇のより顕著な抑制を図ったものである。
【0056】
すなわち、図4に示すように、第2実施形態の減速装置の磁石保持ディスク4には、磁石5を保持する正面とは反対側の背面に放熱フィン22が設けられている。ここで、放熱フィン22は、伝熱ブロック21の配置された位置に対応する位置、すなわち磁石保持ディスク4を間に挟んで伝熱ブロック21の背後の位置に限定して、磁石保持ディスク4の円周方向にわたり複数設けられている。この放熱フィン22は磁石保持ディスク4と一体成形されたものである。
【0057】
このような構成の第2実施形態の減速装置では、磁石保持ディスク4に伝わった熱は放熱フィン22を通じて積極的に放熱されるため、伝熱ブロック21および磁石5の両者に対して冷却能が向上する。このとき、放熱フィン22が、伝熱ブロック21の配置された位置に対応する位置に限定して設けられているので、放熱フィン22による冷却能は磁石5よりも伝熱ブロック21に対して強くなり、伝熱ブロック21の冷却の方が促進する。このため、磁石カバー20からの熱はより伝熱ブロック21へ伝わり易く、相対的に磁石5には伝わり難くなり、その結果として磁石5の温度上昇をより一層抑制することが可能になる。
【0058】
<第3実施形態>
図5は、本発明の第3実施形態である渦電流式減速装置の要部を示す模式図であり、同図(a)は磁石保持部材に相当する磁石保持ディスクを正面側から見た断面図を、同図(b)は同図(a)のE−E断面図を、同図(c)は同図(a)のF−F断面図をそれぞれ示す。同図に示す第3実施形態の減速装置も、前記第2実施形態と同様に、前記図3に示す第1実施形態の減速装置の構成を基本とし、磁石温度上昇のより顕著な抑制を図ったものである。
【0059】
すなわち、図5に示すように、第3実施形態の減速装置の磁石カバー20には、磁石5と対向する内面に断熱塗膜23が積層されている。ここで、断熱塗膜23は、磁石5の配置された位置に対応する位置、すなわち磁石5と対向する位置に限定して、積層されている。この断熱塗膜23は、例えば、中空ガラスビース、シリコーン樹脂、シリカ粉末および溶剤で構成された液体塗料を原料とし、この液体原料を磁石カバー20の内面の該当領域に塗布し、乾燥させることにより、高温環境に耐え得るゴム状の膜として形成されたものである。
【0060】
従来の減速装置のように断熱塗膜23が無い場合、磁石5と磁石カバー20との隙間における空気を媒体とした緩やかな対流熱伝達により磁石5が加熱されてしまうおそれがあるが、第3実施形態の減速装置では、磁石5と磁石カバー20との間に断熱塗膜23が存在するため、そのような対流熱伝達による磁石5の加熱を完全に排除することができる。さらに、磁石カバー20が仮に熱変形した場合であっても、磁石カバー20自体と磁石5との非接触状態を確実に確保することができる。その結果、磁石5の温度上昇をより一層抑制することが可能になる。
【0061】
なお、このような断熱塗膜23は、前記第1実施形態の減速装置のみならず、前記第2実施形態の減速装置に適用することも可能である。
【0062】
<第4実施形態>
図6は、本発明の第4実施形態である渦電流式減速装置の構成例を示す模式図であり、同図(a)は全体構成を示す縦断面図、同図(b)は磁石保持部材に相当する磁石保持ドラムを外周面側から見た要部の断面展開図を、同図(c)は同図(b)のG−G断面図を、同図(d)は同図(b)のH−H断面図をそれぞれ示す。同図に示す第4実施形態の減速装置は、前記図3に示す第1実施形態の減速装置と基本構成は同じであり、同期回転方式であるが、ドラム型である点で前記第1実施形態とは相違する。
【0063】
すなわち、図6に示すように、第4実施形態の減速装置は、前記第1実施形態における制動部材に相当する制動ディスク1を円筒状の制動ドラム31に変更し、これに伴い、磁石保持部材に相当する磁石保持ディスク4を円筒状の磁石保持ドラム32に変更した構成である。制動ドラム31は、回転軸11に対して固定され、回転軸11と一体で回転する。磁石保持ドラム32は、制動ドラム31の内側に配置され、回転軸11に対し環状部材3と一体で回転可能に支持される。
【0064】
磁石保持ドラム32には、制動ドラム31の内周面と対向する外周面に、円周方向にわたり複数の永久磁石5が固着される。永久磁石5は、磁極(N極、S極)の向きが磁石保持ドラム32の径方向であり、円周方向に隣接するもの同士で磁極が交互に異なるように配置される。
【0065】
また、第4実施形態では、前記第1実施形態と同様の磁石カバー20が、制動ドラム31の内周面と対向する面、すなわち永久磁石5を保持する磁石保持ドラム32の外周面を永久磁石5とともに覆うように、磁石保持ドラム32に取り付けられている。さらに、磁石保持ドラム32には、前記第1実施形態と同様の伝熱ブロック21が、円周方向に隣接する磁石5同士の間に、磁石カバー20と磁石保持ドラム32の両者に接触した状態で配置されている。
【0066】
このような構成の第4実施形態の減速装置では、非制動時は、回転軸11と一体で制動ドラム31が回転するのに伴い、環状部材3と一体の磁石保持ドラム32が、永久磁石5と制動ドラム31との磁気吸引作用により、制動ドラム31と同期して一体的に回転する。このため、制動ドラム31と永久磁石5との間に相対的な回転速度差が生じないことから、制動力は発生しない。
【0067】
一方、制動時は、ディスクブレーキ(摩擦ブレーキ)の作動により環状部材3と一体の磁石保持ドラム32が静止する。制動ドラム31が回転している際に磁石保持ドラム32のみが静止すると、制動ドラム31と永久磁石5との間に相対的な回転速度差が生じるため、永久磁石5からの磁界の作用で、制動ドラム31の内周面に渦電流が発生し、制動ドラム31を介して回転軸11に制動力を発生させることができる。
【0068】
第4実施形態の減速装置によれば、前記第1実施形態と同様の磁石カバー20および伝熱ブロック21を具備するので、制動部材に相当する制動ドラム31が制動時に発熱しても、その熱はまず磁石カバー20に伝わり、続いて、磁石カバー20に接触している伝熱ブロック21に優先的に伝わり、そして、伝熱ブロック21に接触している磁石保持ドラム32に伝わって放熱される。したがって、第4実施形態の減速装置でも、前記第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0069】
なお、このような第4実施形態の減速装置に、前記第2実施形態の放熱フィン22を適用することもできる。すなわち、図6を参照して説明すれば、磁石保持ドラム32には、磁石5を保持する外周面とは反対側の内周面に、伝熱ブロック21の配置された位置に対応する位置、すなわち磁石保持ドラム32を間に挟んで伝熱ブロック21の内側の位置に限定して、磁石保持ドラム32の円周方向にわたり複数の放熱フィンを設けた構成とすることができる。
【0070】
また、第4実施形態の減速装置に、前記第3実施形態の断熱塗膜23を適用することもできる。すなわち、図6を参照して説明すれば、磁石カバー20には、磁石5と対向する内周面に、磁石5の配置された位置に対応する位置、すなわち磁石5と対向する位置に限定して、断熱塗膜を積層した構成とすることができる。
【0071】
その他本発明は上記の各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。例えば、上記の実施形態はいずれも同期回転方式の減速装置であり、制動時に磁石保持部材(磁石保持ディスク、磁石保持ドラム)を摩擦ブレーキによって静止させるものであるが、その摩擦ブレーキとしては、磁石保持部材と別体のブレーキディスクを一対のブレーキパッドで挟み込むディスクブレーキに限らない。そのブレーキディスクに一方向のみから摩擦部材を押し付けるものであってもよいし、磁石保持部材に直接摩擦部材を押し付けるものであっても構わない。
【0072】
また、上記の実施形態はいずれも同期回転方式の減速装置であるため、磁石保持部材(磁石保持ディスク、磁石保持ドラム)を回転軸に回転可能に支持した構成であるが、旧来の一般的な減速装置のように、磁石保持部材を回転軸に沿う方向に移動可能に支持し、制動時に磁石保持部材を制動部材(制動ディスク、制動ドラム)に接近させた状態で静止させ、非制動時には磁石保持部材を制動部材から離間させる構成の減速装置に、上記の磁石カバー20および伝熱ブロック21、さらには放熱フィン22や断熱塗膜23を適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の渦電流式減速装置は、あらゆる車両の補助ブレーキとして有用である。
【符号の説明】
【0074】
1:制動ディスク、 2:放熱フィン、 3:環状部材、
4:磁石保持ディスク、 5:永久磁石、 6:ブレーキディスク、
7:ブレーキキャリパ、 8a、8b:ブレーキパッド、
9:電動式直動アクチュエータ、 10:電動モータ、 11:回転軸、
12:連結軸、 13:スリーブ、 14:ナット、
15a、15b:軸受、 16a、16b:シール部材、
17:ブラケット、 18:軸受、 19a、19b:シール部材、
20:磁石カバー、 21:伝熱ブロック、 22:放熱フィン、
23:断熱塗膜、 31:制動ドラム、 32:磁石保持ドラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6