特許第5884719号(P5884719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5884719空気式防舷材のガイロープの張力検知システムおよび空気式防舷材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5884719
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】空気式防舷材のガイロープの張力検知システムおよび空気式防舷材
(51)【国際特許分類】
   B63B 59/02 20060101AFI20160301BHJP
   E02B 3/26 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
   B63B59/02 E
   E02B3/26 K
   E02B3/26 D
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-277992(P2012-277992)
(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公開番号】特開2014-121898(P2014-121898A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2014年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】榊原 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】金子 理人
(72)【発明者】
【氏名】山田 周
(72)【発明者】
【氏名】和泉 南
(72)【発明者】
【氏名】中谷 興司
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−017464(JP,A)
【文献】 特開2007−168749(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/053887(WO,A1)
【文献】 特開平07−232693(JP,A)
【文献】 特開2004−219605(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/038299(WO,A1)
【文献】 中国実用新案第200995770(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 59/02
E02B 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気式防舷材を係留するガイロープの張力を検知する張力センサと、この張力センサが検知した張力データを送信する無線送信機と、この無線送信機により送信された張力データが入力される演算装置と、警告装置とを備えた空気式防舷材のガイロープの張力検知システムであって、前記張力センサが、前記ガイロープと防舷材本体との間に介在する金具部材に取り付けられる歪ゲージであり、前記入力された張力データが前記演算装置に予め入力されている基準データ以上になった時に、前記警告装置によって警告を発することを特徴とする空気式防舷材のガイロープの張力検知システム。
【請求項2】
前記基準データが、前記ガイロープの仕様に基づいて設定される請求項1に記載の空気式防舷材のガイロープの張力検知システム。
【請求項3】
前記基準データが、前記ガイロープの使用頻度に基づいて設定される請求項1または2に記載の空気式防舷材のガイロープの張力検知システム。
【請求項4】
防舷材本体と、防舷材本体とガイロープとの間に介在する金具部材を備えた空気式防舷材において、前記金具部材に取り付けられてガイロープの張力を検知する張力センサと、前記防舷材本体に取り付けられる無線送信機とを備え、前記張力センサが検知した張力データが前記無線送信機によって、この張力データに基づいて過大張力の発生の有無を判断する演算装置に送信されることを特徴とする空気式防舷材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気式防舷材のガイロープの張力検知システムおよび空気式防舷材に関し、さらに詳しくは、ガイロープの破断を防止できる空気式防舷材のガイロープの張力検知システムおよび空気式防舷材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気式防舷材は、ガイロープによって係留されて港湾の岸壁や船の舷側に設置される(例えば、特許文献1参照)。例えば、洋上の二隻の船舶の間で原油等の受け渡しのオペレーションを行なう際には、これら船舶の間に空気式防舷材が設置される。このようなオペレーション中や空気式防舷材の設置、撤去時にガイロープに生じる張力は変動する。使用するガイロープは、生じると想定される張力に十分耐え得るものが選択されるが、想定以上の過大な張力が生じて破断することがある。ガイロープが破断すると、オペレーションを中断しなければならない等の多大な損害が生じる。
【0003】
しかしながら、従来、ガイロープに生じる張力を精度よく把握する手段が存在しなかった。そのため、ガイロープの破断を防止するには、安全率を高く設定して、過剰に太いガイロープを用いる等によって対応しなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−168749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ガイロープの破断を防止できる空気式防舷材のガイロープの張力検知システムおよび空気式防舷材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の空気式防舷材のガイロープの張力検知システムは、空気式防舷材を係留するガイロープの張力を検知する張力センサと、この張力センサが検知した張力データを送信する無線送信機と、この無線送信機により送信された張力データが入力される演算装置と、警告装置とを備えた空気式防舷材のガイロープの張力検知システムであって、前記張力センサが、前記ガイロープと防舷材本体との間に介在する金具部材に取り付けられる歪ゲージであり、前記入力された張力データが前記演算装置に予め入力されている基準データ以上になった時に、前記警告装置によって警告を発することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の空気式防舷材は、防舷材本体と、防舷材本体とガイロープとの間に介在する金具部材を備えた空気式防舷材において、前記金具部材に取り付けられてガイロープの張力を検知する張力センサと、前記防舷材本体に取り付けられる無線送信機とを備え、前記張力センサが検知した張力データが前記無線送信機によって、この張力データに基づいて過大張力の発生の有無を判断する演算装置に送信されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ガイロープの張力を検知する張力センサによって、ガイロープに生じる張力を逐次把握することができる。そして、張力センサが検知した張力データを無線送信機により演算装置に送信、入力して、演算装置に予め入力されている基準データ以上になった時に、警告装置によって警告を発するので、基準データを適切に設定すれば、ガイロープが破断する前に警告を発することができる。警告が発せられた時に、ガイロープに生じる張力を低減させる処置をすることで、ガイロープの破断を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の空気式防舷材および空気式防舷材のガイロープの張力検知システムを例示する説明図である。
図2】過大張力の発生の有無を判断する手順を例示するフローチャートである。
図3】本発明の空気式防舷材の配置を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の空気式防舷材のガイロープの張力検知システムおよび空気式防舷材を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1に例示するように本発明の空気式防舷材1(以下、防舷材1という)は、防舷材本体1aと、防舷材本体1aとガイロープ2との間に介在する金具部材(トーイングリング3a)と、ガイロープ2に生じる張力を検知する張力センサ5と、無線送信機6とを備えている。
【0012】
防舷材本体1aは、ゴムを主材料として、円筒部の両端にボウル状の鏡部を有し、少なくとも一方の鏡部に口金部1bが設けられている。防舷材本体1aの外周面にはチェーン4につながれた多数の保護部材4aが配置されている。保護部材4aは任意に設けられるが、例えば、タイヤ等が用いられる。これらチェーン4の端部は、防舷材本体1aの鏡部に配置されたトーイングリング3aに接続されている。
【0013】
張力センサ5は、防舷材本体1aとガイロープ2との間に介在する金具部材に取り付けられる。この実施形態では、ガイロープ2とトーイングリング3aとの間に張力センサ5が介在されている。張力センサ5の設置場所はこの場所に限らず、トーイングリング3aに設置することもできる。張力センサ5としては歪ゲージを例示できる。このような張力センサ5によれば、安定して精度よくガイロープ2に生じる張力を検知できる。
【0014】
無線送信機6は防舷材本体1aの内部に取り付けられ、例えば口金部1bの内部や口金部1bの近傍に取り付けられる。張力センサ5が検知した張力データTは無線送信機6によって、演算装置8に送信、入力される。演算装置8は、入力された張力データTに基づいて過大張力の発生の有無を判断する。そのため演算装置8には、ガイロープ2に過大張力が生じているか否かの判断基準となる基準データCが予め入力されている。
【0015】
本発明のガイロープの張力検知システムは、張力センサ5と、無線送信機6と、演算装置8と、警告装置9とで構成されている。演算装置8に入力された張力データTが予め入力されている基準データC以上になった時に、警告装置9によって警告を発するシステムになっている。
【0016】
演算装置8としては例えば、パーソナルコンピュータが用いられる。警告装置9としては、警報機、警告灯、警告無線放送等やこれらを組み合わせたものが使用される。
【0017】
この実施形態では、さらに、演算装置8に接続されるモニタ10が設けられている。モニタ10は任意に設けることができる。
【0018】
張力センサ5は、逐次、ガイロープ2に生じる張力を検知する。張力センサ5が検知した張力データTは、逐次、無線送信機6により無線送信される。送信された張力データTは、受信機7を通じて演算装置8に入力される。
【0019】
そして、演算装置8は、入力された張力データTと基準データCとを比較して逐次、過大張力の発生の有無を判断する。この判断を行なう手順は、図2に例示するとおりである。
【0020】
基準データCとしては、ガイロープ2が実用上耐え得る張力の値が閾値として設定される。そして、検知された張力データT(張力の値)が基準データCとして設定された張力の値以上になった場合に、過大張力が発生したと判断する。過大張力が発生したと判断した時には即時、警告装置9により警告を発する。警告装置9により警告が発せられると、ガイロープ2が破断する可能性があるので、ガイロープ2に生じる張力を低減させる処置をする。この処置によって、ガイロープ2の破断を防止することが可能になる。
【0021】
このように基準データCを適切に設定すれば、ガイロープ2が破断する前に警告を発することができるので、ガイロープ2の破断を確実に防止できる。また、ガイロープ2に生じる張力に基づいて破断が防止できるので、ガイロープ2の破断防止のために過度に安全率を高く設定してオーバースペックな(例えば太すぎる)ガイロープを使用する必要がなくなる。
【0022】
基準データCは、例えば、ガイロープ2の仕様に基づいて設定される。この仕様とは、ガイロープ2の太さ、材質、構造などであり、これらの仕様のうちの少なくとも一つに基づいて基準データCが設定される。例えば、ガイロープ2が太い程、基準データCとする張力の値を大きくする。或いは、基準データCは、ガイロープ2の使用頻度に基づいて設定される。即ち、ガイロープ2の使用頻度が高い程、基準データCとする張力の値を大きくする。この場合、演算装置8には、それぞれのガイロープ2の使用頻度が記憶される。もしくは、基準データCは、ガイロープ2の太さおよび使用頻度に基づいて設定することもできる。このようにして基準データCを設定することで、より確実にガイロープ2の破断を防止できる。
【0023】
モニタ10には、例えば、演算装置8に入力された張力データTおよび基準データCを逐次表示するとよい。これにより、モニタ10の表示を見れば、即座に過大張力の発生の有無を把握できる。
【0024】
船舶11a、11bの間で原油等の受け渡しをするオペレーションを行なう場合は、図3に例示するように、複数の防舷材1がガイロープ2a、2b、2c、2d、2eによってつながれて舷側に配置される。受信機7、演算装置8、警告装置9およびモニタ10は、例えば船舶11a(11b)の管理室に設置される。
【0025】
演算装置8が、いずれかのガイロープ2a〜2eに過大張力が生じていると判断して、警告装置9によって警告が発せられた時には、例えば、即座に船舶11a、11bどうしの間隔を保持している本船係留ロープ12を締めて両者の間隔を狭める。これによって、ガイロープ2a〜2eに生じる張力を低減させる。或いは、船舶11a、11bの間でのオペレーションを中止する。このような処置によって、ガイロープ2a〜2eの破断を防止する。
【0026】
また、このオペレーションの場合、波が進行してくる方向Fの側(船舶11a、11bの先端側)にあるガイロープ2aに過大張力が生じ易い。そこで、波が進行してくる方向Fの側に最も近いガイロープ2aは、すべてのガイロープ2a、2b、2c、2d、2eのうちで最も太いもの、或いは、最も使用頻度が低いものを使用するとよい。
【符号の説明】
【0027】
1 空気式防舷材
1a 防舷材本体
1b 口金部
2、2a、2b、2c、2d、2e ガイロープ
3a トーイングリング
3b 吊り金具
4 チェーン
4a 保護部材
5 張力センサ
6 無線送信機
7 受信機
8 演算装置
9 警告装置
10 モニタ
11a、11b 船舶
12 本船係留ロープ
図1
図2
図3