特許第5884731号(P5884731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5884731
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】ピロロキノリンキノンのゲル
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/22 20060101AFI20160301BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20160301BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20160301BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20160301BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20160301BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20160301BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20160301BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20160301BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20160301BHJP
   A23L 29/20 20160101ALI20160301BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALN20160301BHJP
【FI】
   A61K47/22
   A61K9/06
   C09K3/00 103M
   A61K8/49
   A61K8/02
   A61Q1/00
   A61Q5/00
   A61Q19/00
   A23L1/30 Z
   A23L1/04
   !A61K31/4745
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-528687(P2012-528687)
(86)(22)【出願日】2011年8月9日
(86)【国際出願番号】JP2011068181
(87)【国際公開番号】WO2012020767
(87)【国際公開日】20120216
【審査請求日】2014年4月16日
(31)【優先権主張番号】特願2010-178349(P2010-178349)
(32)【優先日】2010年8月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三毛門 毅
(72)【発明者】
【氏名】池本 一人
(72)【発明者】
【氏名】清水 甫
【審査官】 ▲高▼岡 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−113896(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/023277(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/025247(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00−47/48
A61K 9/00− 9/72
A61K 31/00−31/80
C09K 3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピロロキノリンキノンの塩からなる、繊維状構造体。
【請求項2】
塩が、ナトリウム塩である、請求項1に記載の繊維状構造体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の繊維状構造体を含んでなる、食品。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の繊維状構造体を含んでなる、医薬。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の繊維状構造体を含んでなる、化粧品。
【請求項6】
ピロロキノリンキノンの塩を含んでなる、ゲル化剤。
【請求項7】
ピロロキノリンキノンの塩と分散媒との混合物において、ピロロキノリンキノンの塩の溶解度を下げることを含んでなる、互いに会合して繊維状構造を形成するピロロキノリンキノンの塩を含んでなるゲルの製造方法。
【請求項8】
混合物の溶解度を下げることが、混合物の温度を10℃以上下げることにより行われる、請求項に記載の製造方法。
【請求項9】
混合物の溶解度を下げることが、混合物のpHを0.1以上下げることにより行われる、請求項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本特許出願は、2010年8月9日に提出された日本出願である特願2010−178349の利益を享受する。この先の出願における全開示内容は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ピロロキノリンキノンを含有するゲルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ピロロキノリンキノン(以下、PQQと表すことがある)は、新しいビタミンの可能性があることが提案されており(非特許文献1)、健康補助食品、化粧品などに有用な物質として注目を集めている。さらには、PQQは、細菌に限らず、真核生物のカビ、酵母に存在し、補酵素としてとして重要な働きを行っている。また、PQQについては、近年までに細胞の増殖促進作用、抗白内障作用、肝臓疾患要望治療作用、損傷治癒作用、抗アレルギー作用、逆転写酵素阻害作用およびグリオキサラーゼI阻害―制癌作用など多くの生理活性が明らかにされている。
【0004】
PQQは、有機化学合成法(非特許文献2)又は発酵法(特許文献1)などの方法により得られるPQQ粗生成物をクロイマトグラフィーに供し、流出液中のPQQ区分を濃縮して、晶析により結晶化し、乾燥して得ることができる(特許文献2)。このPQQ塩の結晶構造は報告されている(非特許文献3)。
【0005】
ところで、PQQを使用した食品、薬剤は、これまで溶液、粉体で提供されることが多く、PQQを使用したゲル状の物質に関しては知られていない。ゲル化した食品、薬は、その触感、取り扱いが液体と異なり、ゼリー、プリンを代表として広く使用されている。また、加齢や病気で嚥下(食物を飲み込むこと)機能が低下し、硬い錠剤を飲むことが困難になった人にもゼリー状は飲みやすいために使用が望まれている。ゲル状物質は、また、食品分野、化粧品、クロマトグラフィーだけでなく、身近な競技用靴、脱臭剤等にも使用されている。
【0006】
通常、食品や薬分野で使用されるゲル化剤は、コラーゲン、ヒアルロン酸、寒天、カラギーナンを代表とする高分子量の物質である。高分子化合物の他に、低分子化合物でもゲル化するゲル化剤が報告されている(非特許文献4,5)。しかし、低分子ゲル化剤については食品に使用できるような物質は知られていない。また、高分子ゲル化剤の多くは加温して溶解し、冷却して形成させることが多いが、食品分野で使用するには変質を避けるために室温付近でゲル化するものが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−218597号公報
【特許文献2】特許第2072284号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】nature, vol.422, 24April, 3003, p832
【非特許文献2】JACS, 第103巻,第5599〜5600頁 (1981)
【非特許文献3】JACS, 第111巻,第6822〜6828頁 (1989)
【非特許文献4】JACS, 第122巻,第11679〜11691頁 (2000)
【非特許文献5】Angew. Chem. Int. Ed, 第39巻, 第3447〜3450頁 (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、ピロロキノリンキノンの塩と分散媒とを室温で混合し、得られた混合物の温度を10℃以上下げることにより、ピロロキノリンキノンの塩が繊維状構造を形成してなるゲルが得られることを見出した。本発明によれば、ピロロキノリンキノンの塩は、所定の条件下で、分散媒(溶媒)には溶解せずにゲルを形成することができる。本発明はこの知見に基づくものである。
【0010】
本発明は、室温近辺で容易にゲル化可能で、食品分野でも使用可能なピロロキノリンキノンを含有するゲルおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)ピロロキノリンキノンの塩を含んでなる、ゲル。
(2)ピロロキノリンキノンの塩が、互いに会合して繊維状構造を形成することを特徴とする、(1)に記載のゲル。
(3)ピロロキノリンキノンの塩が、全ゲル重量に対して、0.5〜70重量%である、(1)または(2)に記載のゲル。
(4)塩が、ナトリウム塩である、(1)〜(3)のいずれかに記載のゲル。
(5)ピロロキノリンキノンの塩と分散媒との混合物において、ピロロキノリンキノンの塩の溶解度を下げることにより製造される、(1)〜(4)のいずれかに記載のゲル。
(6)混合物の溶解度を下げることが、混合物の温度を10℃以上下げることにより行われる、(5)に記載のゲル。
(7)混合物の溶解度を下げることが、混合物のpHを0.1以上下げることにより行われる、(5)に記載のゲル。
(8)甘味料をさらに含んでなる、(1)〜(7)のいずれかに記載のゲル。
(9)高分子ゲル化剤をさらに含んでなる、(1)〜(8)のいずれかに記載のゲル。
(10)(1)〜(9)のいずれかに記載のゲルの乾燥体。
(11)ピロロキノリンキノンの塩からなる、繊維状構造体。
(12)(1)〜(9)のいずれかに記載のゲル、(10)に記載の乾燥体、または(11)に記載の繊維状構造体を含んでなる、食品。
(13)(1)〜(9)のいずれかに記載のゲル、(10)に記載の乾燥体、または(11)に記載の繊維状構造体を含んでなる、医薬。
(14)(1)〜(9)のいずれかに記載のゲル、(10)に記載の乾燥体、または(11)に記載の繊維状構造体を含んでなる、化粧品。
(15)ピロロキノリンキノンの塩を含んでなる、ゲル化剤。
(16)ピロロキノリンキノンの塩と分散媒との混合物において、ピロロキノリンキノンの塩の溶解度を下げることを含んでなる、ピロロキノリンキノンの塩を含んでなるゲルの製造方法。
(17)混合物の溶解度を下げることが、混合物の温度を10℃以上下げることにより行われる、(16)に記載の製造方法。
(18)混合物の溶解度を下げることが、混合物のpHを0.1以上下げることにより行われる、(16)に記載の製造方法。
【0012】
本発明のゲルは、食べることができる新規の低分子ゲルである。本発明によりPQQを使用した含水ゲルを提供することができる。本発明によれば、室温以下でゲル化することができるため、加温等の処理が必要ない点で有利である。また、本発明によれば、ゲル化により高濃度でも均一になるPQQ含有液を提供することができる点で有利である。さらに、本発明によれば、このゲルは同一量の結晶とは溶解速度が異なっており溶解性を制御することができるため、食品、機能性食品、医薬品、医薬部外品、化粧品等に使用することができる点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、原料のPQQジナトリウム塩結晶の光学顕微鏡写真を示す。
図2図2は、原料のPQQジナトリウム塩結晶のX線回折の結果を示す。
図3図3は、1%ゲルの光学顕微鏡写真を示す。
図4図4は、1%ゲルのX線回折を示す。
図5図5は、2%ゲルの光学顕微鏡写真を示す。
図6図6は、5%ゲルでの成型品写真を示す。
図7図7は、5%ゲルの光学顕微鏡写真を示す。
図8図8は、5%ゲルのX線回折を示す。
図9図9は、ゲル凍結乾燥品のX線回折を示す。
図10図10は、ゲル凍結乾燥品の光学顕微鏡写真を示す。
図11図11は、1%ゲルをエタノール洗浄後乾燥した固体の走査電子顕微鏡写真を示す。
【発明の具体的説明】
【0014】
本発明によれば、ピロロキノリンキノンの塩と分散媒との混合物において、ピロロキノリンキノンの塩の溶解度を下げることにより、ピロロキノリンキノンの塩を含んでなるゲルを製造することができる。
【0015】
「ピロロキノリンキノンの塩を含んでなるゲル」は、ピロロキノリンキノンの塩と分散媒とから実質的になるゲルである。本発明のゲルにおいて、ピロロキノリンキノンの塩は、互いに会合して繊維状構造を形成し、該繊維状構造内に分散媒が含有される。
【0016】
本願明細書において「繊維状構造」とは、ピロロキノリンキノンの塩が共有結合以外の相互作用により自己会合して形成された会合体が物理架橋して形成される三次元網目構造を意味する。すなわち、本発明のゲルは物理ゲルといえる。共有結合以外の相互作用としては、水素結合、イオン結合、配位結合、π-π相互作用(スタッキング)、疎水性相互作用等の非共有結合が挙げられるが、特には、水素結合、イオン結合である。
【0017】
本発明で用いられるピロロキノリンキノンの塩は、下記式(1)で表される構造式の塩である。
【化1】
【0018】
本発明において用いられるピロロキノリンキノンの塩としてはピロロキノリンキノンのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩が挙げられるが、好ましくは、アルカリ金属塩である。ピロロキノリンキノンの塩は、単独で使用してもよいし、混合して使用してもよい。
【0019】
本発明において用いられるピロロキノリンキノンのアルカリ金属塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、セシウム、ルビジュウムなどの塩が挙げられる。好ましくは、ナトリウム塩である。ピロロキノリンキノンのアルカリ金属塩における塩の置換数は、1〜3であり、モノアルカリ金属塩、ジアルカリ金属塩、トリアルカリ金属塩のどれでも良いが、好ましくは、ジアルカリ金属塩である。ピロロキノリンキノンのアルカリ金属塩として、特に好ましくは、ジナトリウム塩である。
【0020】
より再現性良くゲル化させるには、結晶の形態のピロロキノリンキノンの塩を使用することができる。使用原料として粉末X線回折でCu Kα放射線を用いた2θのピークで9.1、10.3、13.8±0.4°に代表される結晶構造を有する針状結晶であるジナトリウム塩が好ましい。
【0021】
結晶の形態のピロロキノリンキノンの塩を使用する場合、ピロロキノリンキノンの塩の結晶性は0〜100%とすることができるが、好ましくは、20〜100%である。
【0022】
本発明において用いられるピロロキノリンキノンの塩は、市販されているものを入手することができるし、公知の方法により製造することができる。
【0023】
後述の実施例によれば、本発明は、PQQの塩と分散媒(水)からPQQ自体をゲル化可能としたことが特徴であり、通常のゲル化剤を使用しなくとも製造することができる。
【0024】
一般的に、ゲルの形成は繊維状の高分子鎖が溶液全体に広がり、液体を保持することで行われる。よく知られる例は寒天、コラーゲンであり、高分子鎖が水を保持する。
【0025】
PQQは低分子であり、ゲル化するにはまず繊維状になることが必要になる。PQQは非共有結合により分子鎖が広がり繊維化していると考えられる。この非共有結合を利用するゲル化法は塩濃度、前駆体、温度等の状況によって変わりやすいが、本発明のゲルは、次のように製造することができる。
【0026】
ピロロキノリンキノンの塩と分散媒とを混合し、得られた混合物における、ピロロキノリンキノンの塩の溶解度を下げることにより、ピロロキノリンキノンの塩を含んでなるゲルを製造することができる。ピロロキノリンキノンの塩の溶解度を下げるために、混合物の温度やpHを調整することができる。具体的には、ピロロキノリンキノンの塩と分散媒とを混合し、得られた混合物の温度を10℃以上下げることにより、ピロロキノリンキノンの塩が互いに会合して形成された繊維状構造を有するゲルを製造することができる。あるいは、ピロロキノリンキノンの塩と分散媒とを混合し、得られた混合物のpHを2以上下げることにより、ピロロキノリンキノンの塩が互いに会合して形成された繊維状構造を有するゲルを製造することができる。
【0027】
この繊維状構造を保持することができれば溶媒を含む固体であるゲルになる。本発明は基本的には水中でゲル化させるが、このゲルの中に含まれる水を他のものに置換することも可能である。液体としてエタノール、プロパノール、ブタノール、油脂等に置換しても問題がない。本発明は含水ゲルだけでなく、有機溶媒を含有したゲルにすることも可能である。
【0028】
すなわち、本発明において用いられる分散媒としては、水、有機溶媒(例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、プロピレングリコール等)、油脂等が挙げられるが、好ましくは、水である。分散媒が水の場合、含水ゲル(ヒドロゲル)とすることができる。
【0029】
ピロロキノリンキノンの塩と分散媒との混合は、ピロロキノリンキノンの塩を分散媒に添加してもよいし、分散媒をピロロキノリンキノンの塩に分散媒に添加してもよいし、あるいは、ピロロキノリンキノンの塩と分散媒とを別の容器に添加してもよいが、好ましくは、ピロロキノリンキノンの塩を分散媒に添加することができる。この時、ピロロキノリンキノンの塩の濃度は溶解度以上であることが好ましい。本願明細書において「溶解度」とは、溶質が溶媒に溶解する限度を意味し、飽和溶液中における溶質の濃度で表すことができる。ピロロキノリンキノンの塩の溶解度は、混合物の温度によって適宜決定することができる。例えば、ピロロキノリンキノンジナトリウムの溶解度は、25℃の場合、水100gに対して0.299gである。
【0030】
ピロロキノリンキノンの塩の重量濃度は、0.5〜70重量%で含まれることが好ましく、より好ましくは0.7〜20重量%である。この濃度より薄い場合、純水の場合等に、溶解してしまいゲル化しない。また、この範囲より高濃度である場合、粘土状になってしまい、ゲル状態を形成しているかどうかを判断できない。PQQの含有量を増やすために一旦ゲル化した後に、固体のPQQの塩を加え、濃度の高いゲルを形成させることも可能である。ピロロキノリンキノンの塩の重量濃度は、好ましくは、混合物の温度が20〜50℃の場合に、0.7〜20重量%、より好ましくは、0.7〜10重量%である。
【0031】
ピロロキノリンキノンの塩の溶解度を下げるために混合物の温度を調整する場合は、ピロロキノリンキノンの塩と分散媒との混合は、−30〜150℃で行うことができる。好ましくは、混合物を室温以上の20から100℃で一部溶解する状況に置くことで元の結晶が溶解し、構造変換が起きやすくなる。より好ましくは、混合物の温度は、20〜50℃、さらに好ましくは、20〜40℃、さらにより好ましくは、20〜30℃とすることができる。
【0032】
得られた混合物のpHは、pH2〜10とすることができる。
【0033】
得られた混合物は、攪拌されてもよい。攪拌は、磁気攪拌、機械攪拌、手動攪拌、振とう攪拌等に供することにより実施することができるが、好ましくは、機械攪拌、手動攪拌、振とう攪拌である。
【0034】
ピロロキノリンキノンの塩の溶解度を下げるために、得られた混合物の温度は、−20から100℃、より好ましくは−10から50℃とすることができる。温度を高くするとPQQの溶解度が上がり、ゲル化の繊維を形成させる為のPQQの必要量が増加する。また、温度が低すぎる場合はPQQの溶解度が下がりすぎて、線維化に必要な構造変換が遅くなる。また、水分が凍結してゲル化が起こらなくなる。
【0035】
すなわち、得られた混合物の温度は、元の温度から、10℃以上、好ましくは、15℃以上、より好ましくは、20℃以上、下げることができる。得られた混合物の温度は、また、元の温度から、10〜120℃、好ましくは、15〜50℃下げることができる。混合物の温度は、例えば、−20から20℃とすることができる。好ましくは、−15から15℃、より好ましくは、−10から10℃とすることができる。これにより溶解度が下がり、繊維状の固体ができることでゲル化が生じる。混合物の温度を下げる手法は特に限定されず、例えば、冷蔵庫に置くことで温度を下げることができる。
【0036】
温度を下げた混合物は、攪拌されてもよい。攪拌は、磁気攪拌、機械攪拌、手動攪拌、振とう攪拌等に供することにより実施することができるが、好ましくは、機械攪拌、手動攪拌、振とう攪拌である。
【0037】
温度を下げた混合物は、そのまま静置することができる。時間は、0.5分〜2週間とすることができるが、好ましくは、30分〜1週間である。
【0038】
ピロロキノリンキノンの塩の溶解度を下げるために混合物のpHを調整する場合は、ピロロキノリンキノンの塩と分散媒との混合は、pH2〜10で行うことができる
【0039】
得られた混合物の温度は、−30〜150℃、好ましくは、20〜100℃とすることができる。
【0040】
得られた混合物は、攪拌されてもよい。攪拌は、磁気攪拌、機械攪拌、手動攪拌、振とう攪拌等に供することにより実施することができるが、好ましくは、機械攪拌、手動攪拌、振とう攪拌である。
【0041】
ピロロキノリンキノンの塩の溶解度を下げるために、得られた混合物のpHは、pH2〜4とすることができる。すなわち、得られた混合物のpHは、元のpHから、0.1以上、好ましくは、0.2以上、より好ましくは、0.3以上、下げることができる。混合物のpHを変化(特には、pH6〜10からpH2〜4の領域に変化)させることでピロロキノリンキノンの塩の溶解度を減少させることができることから、本発明のゲルを製造することができる。混合物のpHを下げる手法は特に限定されず、例えば、酸性物質(例えば、塩酸等)やアルカリ性物質(例えば、水酸化ナトリウム等)を使用して調整することができる。
【0042】
pHを下げた混合物は、攪拌されてもよい。攪拌は、磁気攪拌、機械攪拌、手動攪拌、振とう攪拌等に供することにより実施することができるが、好ましくは、機械攪拌、手動攪拌、振とう攪拌である。
【0043】
pHを下げた混合物は、そのまま静置することができる。時間は、0.5分〜2週間とすることができるが、好ましくは、30分〜1週間である。
【0044】
本発明のゲルはこのように繊維化を分子間のつながりで作り、その形成が室温で加えることででき、従来の寒天のようなゲル化剤と異なり、加温して溶かす必要がない。
【0045】
PQQの分子間はアルカリ金属とのイオン結合や水素結合で形成されていると予想される。PQQの濃度が高い場合、ゲル化する線維構造以外に元の結晶構造も混ざった物質になるが、ゲル化が生じていれば特に問題がない。また、一旦ゲル化した物質にPQQの粉末を混合しても問題がない。
【0046】
PQQが繊維に変化するためには分子鎖が伸びていると考えられるが、我々は以下のように考えている。非特許文献3に記載の結晶構造ではPQQのジナトリウム塩においては分子間の水素結合、イオン結合が存在することが示されており、また、芳香環のスタッキングも予想される。繊維化したPQQは結晶とは異なる構造ではあるが、短い繰り返し単位では類似構造をとっていると考えられ、前記の分子間の相互作用で分子間の結合を行っていると思われる。下記式(2)に、予想される分子間のつながりの一部を記載する。
【化2】
具体的には、以下の相互作用を介して会合すると考えられる:
−ピロロキノリンキノンのピリジン骨格の窒素原子と、別のピロロキノリンキノンのカルボン酸基の酸素原子との、アルカリ金属を介したイオン結合;
−ピロロキノリンキノンのピリジン骨格の窒素原子と、別のピロロキノリンキノンのキノンの酸素原子との、アルカリ金属を介したイオン結合;
−ピロロキノリンキノンのカルボン酸と別のピロロキノリンキノンのカルボン酸の酸素原子の水素結合;
−ピロロキノリンキノンと芳香環と別のピロロキノリンキノンの芳香環のπ-πスタッキング。
【0047】
本発明のゲルは、ピロロキノリンキノンの塩の重量濃度が、全ゲル重量に対して、0.5〜70重量%で含まれることが好ましく、より好ましくは0.7〜20重量%、さらに好ましくは、0.7〜10重量%である。
【0048】
本発明のゲルは元の結晶に比べ、溶解速度が遅くなっており、PQQに溶解性制御物質を混合することなく、ゲル化操作を行うだけで溶解速度を変化させることができる。これは他の物資と混合した場合において、変性するのを抑える利点や徐々に放出する技術として非常に有効である。この性質は繊維化の際にPQQ分子の配列が水溶化しにくい構造になっているからと推測している。本発明のゲルは、徐放性基材と使用することができる。
【0049】
本発明のゲルは、また、pHを調整することにより溶解速度を制御することができる。本発明のゲルは、酸性条件下では溶解を抑制することができ、中性条件下では溶解を進行させることができる。
【0050】
本発明の好ましい態様によれば、20〜40℃であるピロロキノリンキノンのナトリウム塩と分散媒との混合物の温度を10℃以上下げて−10〜10℃とすることにより製造される、ピロロキノリンキノンのナトリウム塩を含んでなるゲルおよびその製造方法である。ここで、混合物のピロロキノリンキノンのナトリウム塩の重量濃度は、好ましくは、0.7〜20重量%、より好ましくは、0.7〜10重量%である。
【0051】
本発明のより好ましい態様によれば、20〜40℃であるピロロキノリンキノンのナトリウム塩と分散媒との混合物の温度を20℃以上下げて−10〜10℃とすることにより製造される、ピロロキノリンキノンのナトリウム塩を含んでなるゲルおよびその製造方法である。ここで、混合物のピロロキノリンキノンのナトリウム塩の重量濃度は、好ましくは、0.7〜20重量%、より好ましくは、0.7〜10重量%である。
【0052】
本発明のゲルを乾燥させることでPQQの塩からなる繊維状構造体(繊維状物質)を製造することができる。
【0053】
本発明の繊維状構造体は、本発明のゲルを凍結乾燥、スプレードライ乾燥、溶媒置換後に加熱乾燥等の方法で乾燥することにより製造することができる。このゲルを乾燥して作る固体は表面積が大きく、繊維状である特徴があり、それにより食感、見た目が通常の粉末とことなる物質であり食品、化粧品や薬の分野で重要である。また、これを板の上にキャストしてフィルム状にすることも可能である。
【0054】
本発明の繊維状構造体の繊維の太さは、0.02〜2000μm、好ましくは、0.05〜500μm、より好ましくは、0.05〜50μm、さらにより好ましくは、0.05〜5μmとすることができる。本発明において、繊維の太さは、顕微鏡(電子顕微鏡、光学顕微鏡、プローブ等)を用いて測定することができる。
【0055】
本発明のゲルは食べることができることから、通常のゲル状食品に使用される甘味料を混合することもできる。甘味料として単糖、二糖、オリゴ糖、人工甘味料糖を混合することができる。フルクトース、グルコース、ガラクトース、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、トレハロース、パラチニット、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース、カンゾウエキス、ラカンカ水あめ、蜂蜜等が挙げられる。
【0056】
ゲルの性状を改善するのに通常の高分子ゲル化剤を混合することも可能である。よく使用されるのはゼラチン、寒天、カラギーナン、コラーゲン、フコイダン、ヒアルロン酸、コンニャク、グルコマンナン、ペクチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、ジェランガム、澱粉、卵白等である。これらの混合はゲル化した状態に混合してもよく、また、同時にゲル化させてもよい。
【0057】
食品、化粧品等の製品化には、それに必要なその他の成分は必要に応じて添加できる。香料、酸味料、塩、うまみ成分、果汁、発酵食品、脂質、保湿剤、美白剤、ハーブエキス、お茶、コーヒー、乳化剤、グリセリン、防腐剤、抗菌剤、ステロイド、サリチル酸メチル、ビタミン、インドメタシン等必要に応じて加えればよい。
【0058】
これらの混合物を形成させる場合、PQQのゲルを壊さない範囲で加えることが望ましく、室温以下の条件で混合することが好ましい。PQQが完全に溶解する条件にすることは好ましくなく、そのような場合、ゲル化ではなく、結晶、アモルファスとして析出する危険性がある。
【0059】
食品、医薬、化粧品の用途で使用する場合、衛生面で注意することは当然で無菌的な環境、例えば、クリーンルームで製造することが望ましい。
【0060】
本発明によれば、ピロロキノリンキノンの塩を含んでなるゲル化剤を提供することができる。
【0061】
本発明によれば、また、以下の発明も提供される。
(1)ピロロキノリンキノンの塩から成るゲル。
(2)ピロロキノリンキノンの塩が0.5から70重量%であることを特徴する(1)に記載のゲル。
(3)ピロロキノリンキノンのナトリウム塩から成ることを特徴とする(1)又は(2)に記載のゲル。
(4)甘味料を含有する(1)〜(3)のいずれかに記載のゲル。
(5)高分子ゲル化剤を含有する(1)〜(4)のいずれかに記載のゲル。
(6)ピロロキノリンキノンの塩から成る繊維状物質。
(7)水にピロロキノリンキノンの塩を加え20から100℃で撹拌した後、10℃以上冷却するか若しくはpHを下げることを特徴とするピロロキノリンキノンの塩から成るゲルの製造方法。
(8)(1)〜(5)のいずれかに記載のゲルを含む食品。
(9)(1)〜(5)のいずれかに記載のゲルを含む薬。
(10)(1)〜(5)のいずれかに記載のゲルを含む化粧品。
(11)(6)に記載の繊維状物質を含む食品。
(12)(6)に記載の繊維状物質を含む薬。
(13)(6)に記載の繊維状物質を含む化粧品。
【実施例】
【0062】
実施例及び比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例にのみ限定されるものではない。
【0063】
本実施例および比較例では、粉末X線回折(以下、XRDと記す)は、株式会社マックサイエンス製M18XCEで、Cu/管電圧40kV/管電流100mA、発散スリット:1°、散乱スリット:1°、受光スリット:0.3mm、スキャンスピード:4.000°/min、サンプリング幅:0.020°で行った。
【0064】
本実施例および比較例では、光学顕微鏡写真は、NIKON製顕微鏡TE−2000Sを使用し、対物レンズ40倍で撮影した。
【0065】
本実施例および比較例では、UV測定は、HITACHI U−2000 Spectrophotometerを使用して測定した。
【0066】
比較例1:原料ピロロキノリンキノンジナトリウム
原料としてピロロキノリンキノンジナトリウム(製造元:三菱ガス化学株式会社、粉末)を使用した。ピロロキノリンキノンジナトリウムを光学顕微鏡で観察した結果を図1に示した。使用したピロロキノリンキノンジナトリウムは針状の結晶であり、ゲル化したものよりも短いことが分かった(図1および後述の図3)。また、結晶性の物質であり、ゲルを形成しているものとは異なっていることが分かった。ピロロキノリンキノンジナトリウムをXRDで測定した結果を図2に示した。Cu Kα放射線を用いた2θのピークで9.1、10.3、13.8±0.4°に代表される結晶構造を有する針状結晶であることが分かった。
【0067】
実施例1:1%ゲル
比較例1のPQQ粉末0.1gを15mlのプラスチック製遠心分離用容器に加え、水10ml加え、室温で振って混合した(約25℃)。これを冷蔵庫で冷却して4℃になった後、さらに振って混合した。一晩、冷蔵庫に保存すると全体が均一なゲル状に変化した。これを光学顕微鏡で観察した結果を図3に示した。元の針状よりも長くなった繊維状に変化していた(図1および図3)。
【0068】
このゲル状物質をXRDで測定した結果、図4に示す構造になっていた。ピークは8.2°に強く表れ、回折のピークが減少していることから、結晶構造が変化し、元の構造から変化してアモルファスに近い構造になっていると予想される。
【0069】
これらの分析結果から、ゲル化の際には結晶からアモルファスに近い構造に変化した繊維状になることで液体を保持できるゲルになったと考えられる。また、ゲル状態になることでPQQ固体の沈殿は見られず、全体に均一であった。
【0070】
実施例2:2%ゲル
実施例1と同様の操作を行った。比較例1のPQQ粉末0.2gを15mlのプラスチック製遠心分離用容器に加え、水10ml加え、室温で振って混合した(約25℃)。これを冷蔵庫で冷却して4℃になった後、さらに振って混合した。一晩、冷蔵庫に保存すると全体が均一なゲル状に変化した。これを光学顕微鏡で観察した結果を図5に示した。細かい繊維が形成されていた。濃度が高くなると繊維密度が高くなった(図3
【0071】
実施例3:5%ゲル
実施例1と同様の操作を行った。比較例1のPQQ粉末0.5gを15mlのプラスチック製遠心分離用容器に加え、水10ml加え、室温で振って混合した(約25℃)。これを冷蔵庫で冷却して4℃になった後、さらに振って混合した。一晩、冷蔵庫に保存すると全体が均一なゲル状に変化した。これを容器から取り出し、適当な長さに切って9cmのシャーレに入れて観察した結果を図6に示した。形状を維持できる強固なゲルになっていた。また、写真でもわかるようにゲルは内の固体(PQQ)は沈降しない全体として均一なものになった。
【0072】
さらに光学顕微鏡で観察した結果を図7に示した。高密度な繊維状の構造をとっていることが分かった。XRDで測定した結果を図8に示した。実施例1と同様の8.3°のピークとともに元の結晶構造に由来するピークが存在した。すなわち、ゲル化に必要な線維化とともに元の結晶構造がわずかに混合したゲルになっていた。光学顕微鏡では元の結晶は殆ど混ざっておらず、繊維状の物質が元の結晶に近い構造を含んでいると考えられる。
【0073】
実施例4:エタノールゲル
実施例3で作製した5%ゲルを大過剰のエタノール内に落としたところ、ゲル状態は維持されていた。拡散による交換でエタノールが内部に浸透した。
【0074】
実施例5:甘味料添加
実施例2で合成した2%ゲルに10%分のソルビトールを粉末で加えたところ、ゲル構造は維持され、甘味料を有するゲルを作成することができた。
【0075】
実施例6および比較例2:溶解試験
比較例2として、各実施例で使用した原料である比較例1のPQQ粉末を用い、UV測定用のアクリル製セルに該PQQ粉末1.3mgを入れ、さらに2mlの水を加えた。
実施例6として、実施例3で作製した5%ゲル27mg(PQQ粉末1.35mg相当)をUV測定用のアクリル製セルに入れ、さらに2mlの水を加えた。
室温で450nmの吸収で水への溶解を追跡した。吸光度測定を1時間行い、濃度変化の傾きからすべて溶けるまでの時間を計算した。その結果を表1に示す。
【表1】
この結果から、ゲル化を行うことでPQQの溶解速度を抑えることができることが分かった。このことから、PQQゲルは、その他の食品成分との反応を抑える効果が期待できる。また、この方法によれば、特殊なコーティング技術や物質を必要とせずに溶解性を制御することができる。
【0076】
実施例7および8:pH応答性(生体の溶解性のモデル)
実施例6の溶解性試験と同様の方法で5%ゲルの溶解速度がpHでどのように変化するかを試験した。人工胃液と人工腸液を使用して実験を行った。その結果を表2に示す。
【表2】
人工胃液を添加した場合ははじめに溶解した量以上には溶けださず、溶液内の濃度は上昇しなかった。一方、人工腸液を添加した場合は直線的に溶解量が上昇し、攪拌するとすぐに溶けた。
以上のことから、本発明のゲルは、pHにより溶解速度の変化するゲルであることが分かった。また、本発明のゲルは、水や胃液では溶解せず、腸で溶解することがわかった。これは経口投与の場合、胃では溶解せず、腸で溶解するため、不必要な食品成分との反応を避けることができ、また、吸収が行われる腸で溶解する性質を有しており好ましい。
【0077】
実施例9:ゲル乾燥物の製造
実施例1で作製した1%ゲルを80℃で凍結した。これを凍結乾燥器(機種:EYELA FDU2100、製造元:東京理化器械)で2日間乾燥し、最終的には8paまで減圧したところ、繊維状の固体が出来た。この個体をXRDで測定した結果を図9に、光学顕微鏡で観察した結果を図10にそれぞれ示した。ゲル乾燥物が、ゲルの線維構造を維持した固体であることが分かった。
【0078】
実施例10および比較例3:比表面積測定
比較例1の粉末および実施例9の1%ゲル乾燥物に対し、前処理としてQuantachrome Instruments社 AUTOSORB DEGASSERを使用し150℃、20時間乾燥した。測定装置は Quantachrome Instruments社 Autosorb-6Bを使用し、N吸着でBET法を用いて比表面積を出した。
その結果、比較例1の粉末が2.9m/gであったのに対し、実施例9の1%ゲル乾燥物の繊維状の固体は7m/gであった。
以上のことから、繊維状になることで表面積が大きくなることが分かった。本発明のゲルを使用することで表面積の大きな固体を作ることができた。これにより繊維状の固体の作ることができる。
【0079】
比較例4
比較例1のPQQ粉末0.5gを15mlのプラスチック製遠心分離用容器に加え、水10ml加え、室温で振って混合した(約25℃)。室温で30分後、混合液は原料結晶が沈降して不均一な溶液になった。
【0080】
実施例12:電子顕微鏡観察
実施例1で作製した1%ゲルを大過剰のエタノールで洗浄し、水を除いた後、アルミホイルにキャストした。これを減圧乾燥して不織布状のPQQを得た。これを日立ハイテク製 S−3400N 走査電子顕微鏡で観察した。その結果を図11に示す。繊維の太さは0.15から1.5μmであり、殆どが1μm以下の細い繊維であった。
【0081】
実施例13
寒天(商品名:アガロース(低電気浸透)、製造元:ナカライテクス株式会社)0.01gを水10mlに加え、電子レンジで溶解した。約40℃まで冷却し、実施例1で作成した1%ゲルと1mlずつ混合した。冷蔵庫で1晩冷却した。ゲル化しており、光学顕微鏡で繊維が確認できた。
【0082】
実施例14
ゼラチン(商品名:ゼライス、製造元:新田ゼラチン株式会社)0.01gを75℃の水10mlに加え、溶解した。約40℃まで冷却し、実施例1で作成した1%ゲルと0.5mlずつ混合した。冷蔵庫で1晩冷却した。ゲル化しており、光学顕微鏡で繊維が確認できた。
【0083】
比較例5
寒天0.01gと比較例1のPQQジナトリウム0.01gを水10mlに加え、電子レンジを用いて沸騰するまで加熱した。この時、PQQジナトリウムは完全に溶解した。これを冷却するとゲル化した。光学顕微鏡で観察した結果、PQQの赤い層は寒天中に球状に分散しており、繊維構造はなくなっていた。以上のことから、このゲルは寒天によるゲル化でPQQはゲル化に関わっていないことが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11