(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一般式(2−1)で示されるテトラアリールボレート化合物のカチオンが、4級アンモニウムイオン、又は4級ホスホニウムイオンであることを特徴とする請求項1記載の光化学電池。
含窒素二座配位子が、2,2’−ビピリジン、2,2’−(4,4’−ジメチル)ビピリジン、2,2’−(4,4’−ジ−t−ブチル)ビピリジン、2,2’−(4,4’−ジ−n−ノニル)ビピリジン、2,2’−(4,4’−ジ−n−ドデシル)ビピリジン又は1,10−フェナントロリンである請求項1記載の光化学電池。
前記二核ルテニウム錯体色素により増感された半導体微粒子を電極上に固定したものである光電変換素子と対極とを有し、その間に前記一般式(2−1)で示されるテトラアリールボレート化合物を含有する電解質溶液の層を有する請求項1記載の光化学電池。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、光電変換効率が高く、しかも耐久性が高い光化学電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以下の事項に関する。
【0012】
1. 一般式(1):
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、X
N−は、対イオンであるN価のアニオン(但し、Nは1又は2である。)、
【0015】
【化2】
【0016】
は、カルボキシル基をふたつ有する含窒素二座配位子、
【0017】
【化3】
【0018】
は、含窒素四座配位子、
【0019】
【化4】
【0020】
は、含窒素二座配位子を示す。nは、0〜2の整数を示す。pは、錯体の電荷を中和するのに必要な対イオンの数を表す。なお、カルボキシル基(COOH)は、脱プロトン(H
+)化されてカルボキシイオン(COO
−)となっていても良い。)
で示される二核ルテニウム錯体色素により増感された半導体微粒子と、
一般式(2−1):
【0021】
【化5】
【0022】
(式中、Z
+はN
+又はP
+を示し、R
61、R
62、R
63及びR
64は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ互いに独立に、水素原子又は直鎖もしくは分岐アルキル基を示すか、または、これらの二つ以上が一緒になってそれらが結合する窒素原子又はリン原子と共に飽和または不飽和のヘテロ環を形成しても良い。Ar
61、Ar
62、Ar
63及びAr
64は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ互いに独立に、フェニル基又は置換フェニル基を示す。)
で示されるテトラアリールボレート化合物を含有する電解質溶液とを備える光化学電池。
【0023】
2. 前記一般式(2−1)で示されるテトラアリールボレート化合物のカチオンが、4級アンモニウムイオン、又は4級ホスホニウムイオンであることを特徴とする上記1記載の光化学電池。
【0024】
3. 一般式(1):
【0025】
【化6】
【0026】
(式中、X
N−は、対イオンであるN価のアニオン(但し、Nは1又は2である。)、
【0027】
【化7】
【0028】
は、カルボキシル基をふたつ有する含窒素二座配位子、
【0029】
【化8】
【0030】
は、含窒素四座配位子、
【0031】
【化9】
【0032】
は、含窒素二座配位子を示す。nは、0〜2の整数を示す。pは、錯体の電荷を中和するのに必要な対イオンの数を表す。なお、カルボキシル基(COOH)は、脱プロトン(H
+)化されてカルボキシイオン(COO
−)となっていても良い。)
で示される二核ルテニウム錯体色素により増感された半導体微粒子と、
一般式(2−2):
【0033】
【化10】
【0034】
(式中、Z
+はN
+又はP
+を示し、R
71、R
72、R
73及びR
74は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ互いに独立に、水素原子又は直鎖もしくは分岐アルキル基を示すか、または、これらの二つ以上が一緒になってそれらが結合する窒素原子又はリン原子と共に飽和または不飽和のヘテロ環を形成しても良い。A
−はアニオンを示す。)
で示されるオニウム塩を複数種含有する電解質溶液とを備える光化学電池。
【0035】
4. 前記一般式(2−2)で示されるオニウム塩のアニオンが、テトラシアノボレートイオン、又はテトラアリールボレートイオンであることを特徴とする上記3記載の光化学電池。
【0036】
5. 前記一般式(2−2)で示されるオニウム塩のカチオンが、4級アンモニウムイオン、又は4級ホスホニウムイオンであることを特徴とする上記3記載の光化学電池。
【0037】
6. X
N−が、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、硝酸イオン又はヨウ化物イオンである上記1または3記載の光化学電池。
【0038】
7. 含窒素二座配位子が、2,2’−ビピリジン、2,2’−(4,4’−ジメチル)ビピリジン、2,2’−(4,4’−ジ−t−ブチル)ビピリジン、2,2’−(4,4’−ジ−n−ノニル)ビピリジン、2,2’−(4,4’−ジ−n−ドデシル)ビピリジン又は1,10−フェナントロリンである上記1または3記載の光化学電池。
【0039】
8. カルボキシル基をふたつ有する含窒素二座配位子が、2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸である上記1または3記載の光化学電池。
【0040】
9. 含窒素四座配位子が、2,2’−ビイミダゾール又は2,2’−ビベンズイミダゾールである上記1または3記載の光化学電池。
【0041】
10. 半導体微粒子が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、又はそれらの混合物である上記1または3記載の光化学電池。
【0042】
11. 電解質溶液が、レドックス対を含む上記1または3記載の光化学電池。
【0043】
12. 前記二核ルテニウム錯体色素により増感された半導体微粒子を電極上に固定したものである光電変換素子と対極とを有し、その間に前記一般式(2−1)で示されるテトラアリールボレート化合物を含有する電解質溶液の層を有する上記1記載の光化学電池。
【0044】
13. 前記二核ルテニウム錯体色素により増感された半導体微粒子を電極上に固定したものである光電変換素子と対極とを有し、その間に前記一般式(2−2)で示されるオニウム塩を複数種含有する電解質溶液の層を有する上記3記載の光化学電池。
【発明の効果】
【0045】
本発明の第1の光化学電池は、高い吸光係数を有する、電子移動に優れた二核ルテニウム錯体色素により増感された半導体微粒子と、テトラアリールボレート化合物を含有する電解質溶液とを備える。電解質溶液はテトラアリールボレート化合物を複数種含有してもよく、他の化合物、特に他のオニウム塩を含有してもよい。この光化学電池は、光電変換効率が高く、しかもテトラアリールボレート化合物を含まないものと比べて、高い耐久性が得られる。
【0046】
本発明の第2の光化学電池は、高い吸光係数を有する、電子移動に優れた二核ルテニウム錯体色素により増感された半導体微粒子と、オニウム塩を複数種含有する電解質溶液とを備える。この光化学電池は、光電変換効率が高く、しかもオニウム塩を複数種含まないもの(但し、1種のテトラアリールボレート化合物を含むものを除く。)と比べて、高い耐久性が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の二核ルテニウム錯体色素により増感された半導体微粒子は、前記の二核ルテニウム錯体と半導体微粒子を接触させることによって得られる。
【0048】
本発明において使用する二核ルテニウム錯体は、前記一般式(1)で示されるものである。
【0049】
その一般式(1)において、X
N−は、対イオンであるN価のアニオン(但し、Nは1又は2である。)を示す。X
−としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、チオシアン酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオンなどのハロゲン化物イオン等が挙げられるが、好ましくはヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、硝酸イオン、ハロゲン化物イオンであり、更に好ましくはヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、硝酸イオン、ヨウ化物イオンである。又、X
2−としては、硫酸イオン、亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、炭酸イオン、リン酸一水素イオン等が挙げられ、好ましくは硫酸イオンが挙げられる。
【0052】
は、カルボキシル基をふたつ有する含窒素二座配位子を示す。カルボキシル基(COOH)は、脱プロトン(H
+)化されてカルボキシイオン(COO
−)となっていても良い。このカルボキシル基をふたつ有する含窒素二座配位子は、錯体内にふたつ含まれているが、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0053】
このカルボキシル基をふたつ有する含窒素二座配位子としては、下式(1−A)で表される配位子が挙げられる。
【0055】
式中、−COOHのHは脱離していてもよく、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25及びR
26は、それぞれ独立に、水素原子または置換もしくは無置換の直鎖もしくは分岐アルキル基を表すか、または、これらの二つ以上が一緒になってそれらが結合する炭素原子と共に置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環を形成している。
【0056】
アルキル基としては、炭素数6以下のものが好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0057】
また、R
22とR
23、R
24とR
25、R
21とR
26が一緒になってそれらが結合する炭素原子と共に6員の芳香族炭化水素環(置換基を有していてもよい)を形成していることも好ましい。芳香族炭化水素環の置換基としては、アルキル基(メチル基、エチル基など)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基など)などが挙げられる。
【0058】
R
21〜R
26は全て水素原子であるか、R
21とR
26が水素原子であり、R
22とR
23、R
24とR
25が一緒になってそれらが結合する炭素原子と共に6員の芳香族炭化水素環を形成していることが好ましく、R
21〜R
26が全て水素原子であることが特に好ましい。
【0059】
カルボキシル基をふたつ有する含窒素二座配位子としては、例えば、2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸、1,10−フェナントロリン−4,7−ジカルボン酸、2−(2−(4−カルボキシピリジル))−4−カルボキシキノリン、2,2’−ビキノリン−4,4’−ジカルボン酸等が挙げられるが、好ましくは2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸である。なお、これらの配位子中のカルボキシル基(COOH)は、脱プロトン(H
+)化されてカルボキシイオン(COO
−)となっていても良い。
【0063】
この含窒素四座配位子としては、下式(1−B1)で表される配位子が挙げられる。
【0065】
式中、R
31、R
32及びR
33は、それぞれ独立に、水素原子または置換もしくは無置換の直鎖もしくは分岐アルキル基を表すか、または、これらの二つ以上が一緒になってそれらが結合する炭素原子と共に置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環を形成しており、R
34、R
35及びR
36は、それぞれ独立に、水素原子または置換もしくは無置換の直鎖もしくは分岐アルキル基を表すか、または、これらの二つ以上が一緒になってそれらが結合する炭素原子と共に置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環を形成している。
【0066】
アルキル基としては、炭素数6以下のものが好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0067】
また、R
31〜R
36の隣接する二つが一緒になってそれらが結合する炭素原子と共に6員の芳香族炭化水素環(置換基を有していてもよい)を形成していることも好ましい。芳香族炭化水素環の置換基としては、アルキル基(メチル基、エチル基など)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基など)などが挙げられる。
【0068】
R
31〜R
36は水素原子またはメチル基であることが好ましく、R
31〜R
36が全て水素原子であることが特に好ましい。
【0069】
また、含窒素四座配位子としては、下式(1−B2)で表される配位子も挙げられる。
【0071】
式中、R
41及びR
42は、それぞれ独立に、水素原子または置換もしくは無置換の直鎖もしくは分岐アルキル基を表すか、または、これらが一緒になってそれらが結合する炭素原子と共に置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環を形成しており、R
43及びR
44は、それぞれ独立に、水素原子または置換もしくは無置換の直鎖もしくは分岐アルキル基を表すか、または、これらが一緒になってそれらが結合する炭素原子と共に置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環を形成している。
【0072】
アルキル基としては、炭素数6以下のものが好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0073】
また、R
41とR
42、R
43とR
44が一緒になってそれらが結合する炭素原子と共に6員の芳香族炭化水素環(置換基を有していてもよい)を形成していることも好ましい。芳香族炭化水素環の置換基としては、アルキル基(メチル基、エチル基など)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基など)などが挙げられる。
【0074】
R
41〜R
44は水素原子またはメチル基であることが好ましく、R
41〜R
44が全て水素原子であることが特に好ましい。また、R
41とR
42、R
43とR
44が一緒になってそれらが結合する炭素原子と共に6員の芳香族炭化水素環(メチル基などの置換基を有していてもよい)を形成していることも特に好ましく、例えば下式(1−B3)で表される配位子であることが好ましい。
【0076】
式中、R
51、R
52、R
53及びR
54は、それぞれ独立に、水素原子または置換もしくは無置換の直鎖もしくは分岐アルキル基を表し、R
55、R
56、R
57及びR
58は、それぞれ独立に、水素原子または置換もしくは無置換の直鎖もしくは分岐アルキル基を表す。
【0077】
アルキル基としては、炭素数6以下のものが好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0078】
R
51〜R
58は水素原子またはメチル基であることが好ましく、R
51〜R
58が全て水素原子であるか、R
52、R
53、R
56及びR
57がメチル基であり、R
51、R
54、R
55及びR
58が水素原子であることが特に好ましく、R
51〜R
58が全て水素原子であることがさらに好ましい。
【0079】
含窒素四座配位子としては、例えば、2,2’−ビピリミジン、2,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビベンズイミダゾール等が挙げられるが、好ましくは2,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビベンズイミダゾールであり、更に好ましくは2,2’−ビベンズイミダゾールである。
【0082】
は、含窒素二座配位子を示す。この含窒素二座配位子は、錯体内にふたつ含まれているが、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0083】
この含窒素二座配位子としては、下式(1−C)で表される配位子が挙げられる。
【0085】
式中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17及びR
18は、それぞれ独立に、水素原子または置換もしくは無置換の直鎖もしくは分岐アルキル基を表すか、または、これらの二つ以上が一緒になってそれらが結合する炭素原子と共に置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環を形成している。
【0086】
アルキル基としては、炭素数30以下のもの、更に好ましくは炭素数18以下のものが好ましく、メチル基、t−ブチル基、ノニル基、ドデシル基がより好ましい。
【0087】
また、R
11〜R
18の隣接する二つ、またはR
11とR
18が一緒になってそれらが結合する炭素原子と共に6員の芳香族炭化水素環(置換基を有していてもよい)を形成していることも好ましい。芳香族炭化水素環の置換基としては、アルキル基(メチル基、t−ブチル基、ドデシル基など)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基など)などが挙げられる。
【0088】
R
11〜R
18は水素原子またはメチル基、t−ブチル基、ノニル基、ドデシル基であることが好ましく、R
11〜R
18が全て水素原子であるか、R
12及びR
17がメチル基、t−ブチル基、ノニル基、ドデシル基であり、R
11、R
13〜R
16及びR
18が水素原子であることが特に好ましい。また、R
11とR
18が一緒になってそれらが結合する炭素原子と共に6員の芳香族炭化水素環(メチル基などの置換基を有していてもよい)を形成しており、R
12〜R
17は水素原子またはメチル基、t−ブチル基、ノニル基、ドデシル基、より好ましくは水素原子であることも特に好ましい。さらに、R
13とR
14、R
15とR
16が一緒になってそれらが結合する炭素原子と共に6員の芳香族炭化水素環(メチル基などの置換基を有していてもよい)を形成しており、R
11、R
12、R
17及びR
18は水素原子またはメチル基、t−ブチル基、ノニル基、ドデシル基、より好ましくは水素原子であることも特に好ましい。
【0089】
含窒素二座配位子としては、例えば、2,2’−ビピリジン、2,2’−4,4’−ジメチル−ビピリジン、2,2’−4,4’−ジ−t−ブチル−ビピリジン、2,2’−4,4’−ジノニル−ビピリジン、2,2’−4,4’−ジドデシル−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、2−(2−ピリジニル)キノリン、2,2’−ビキノリン等が挙げられるが、好ましくは2,2’−ビピリジン、2,2’−4,4’−ジメチル−ビピリジン、2,2’−4,4’−ジ−t−ブチル−ビピリジン、2,2’−4,4’−ジノニル−ビピリジン、2,2’−4,4’−ジドデシル−ビピリジン、1,10−フェナントロリンである。
【0090】
なお、nはカチオンの価数を表し、通常0〜2の整数であり、好ましくは1又は2、更に好ましくは1である。又、pは錯体の電荷を中和するのに必要な対イオンの数を表す。
【0091】
上記のような本発明において使用する二核ルテニウム錯体の具体的な化合物としては、例えば、以下の(D−1)から(D−18)の化合物が挙げられるが、好ましくは(D−4)、(D−5)、(D−9)、(D−10)、(D−11)、(D−13)、(D−16)、(D−17)及び(D−18)が使用される。なお、式(D−1)〜(D−18)中の−COOHのHは脱離していてもよい。
【0098】
なお、これらの二核ルテニウム錯体は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0099】
これらの二核ルテニウム錯体は、公知の方法によって合成することができる(例えば、国際公開第2006/038587号参照)。
【0100】
本発明において使用する半導体微粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化バナジウム等の金属酸化物類;チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等の複合酸化物類;硫化カドミウム、硫化ビスマス等の金属硫化物;セレン化カドミウム等の金属セレン化物;テルル化カドミウム等の金属テルル化物;リン化ガリウム等の金属リン化物;ヒ素化ガリウム等の金属ヒ素化物が挙げられるが、好ましくは金属酸化物、更に好ましくは酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズが使用される。なお、半導体微粒子の一次粒子径は特に制限されないが、好ましくは1〜5000nm、更に好ましくは2〜500nm、特に好ましくは3〜300nmのものが使用される。これらの半導体微粒子は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0101】
半導体微粒子に二核金属錯体色素を吸着させる方法としては、導電性支持体上に半導体微粒子を含む半導体層(半導体微粒子膜)を形成した後、これを二核金属錯体色素を含む溶液に浸漬する方法が挙げられる(例えば、国際公開第2006/038587号参照)。半導体層は、導電性支持体上に半導体微粒子のペーストを塗布し、加熱焼成して形成することができる。そして、色素溶液に浸漬後、この半導体層が形成された導電性支持体を洗浄、乾燥する。
【0102】
色素溶液の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレングリコール等のアルコール類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン等の尿素類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類が挙げられるが、好ましくはイソプロピルアルコールやt−ブタノール、アセトニトリルが用いられる。これらの有機溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0103】
溶液中の色素の濃度は適宜決めることができるが、短時間で色素を吸着させることができるので高濃度の方が好ましく、飽和溶液であることが好ましい。
【0104】
色素を吸着させる際の温度は、通常、0〜80℃とすればよく、好ましくは20〜40℃である。色素を吸着させる時間(色素溶液に浸漬する時間)は適宜決めることができ、例えば1〜40時間、好ましくは5〜20時間程度である。吸着時間がこれより長くなってくると、色素の吸着量は余り変わらなくなる一方で、光電変換効率が低下してくることがある。
【0105】
本発明の光電変換素子は、二核ルテニウム錯体色素により増感された半導体微粒子を含むものであり、具体的には、例えば、当該ルテニウム錯体色素により増感された半導体微粒子を電極上に固定したものである。
【0106】
前記電極は、導電性電極であり、好ましくは透明基板上に形成された透明電極である。導電剤としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム等の金属、スズをドープした酸化インジウム(ITO)に代表される酸化インジウム系化合物、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)に代表される酸化スズ系化合物、酸化亜鉛系化合物などが挙げられる。
【0107】
本発明の光化学電池は、先述した二核ルテニウム錯体色素により増感された半導体微粒子を用いて製造することができる。
【0108】
本発明の光化学電池は、具体的には、電極として上記の本発明の光電変換素子と対極とを有し、その間に電解質溶液層を有するものである。なお、本発明の光電変換素子に用いた電極と対極の少なくとも片方は透明電極である。
【0109】
対極は、光電変換素子と組み合わせて光化学電池としたときに正極として作用するものである。対極としては、上記導電性電極と同様に導電層を有する基板を用いることもできるが、金属板そのものを使用すれば、基板は必ずしも必要ではない。対極に用いる導電剤としては、例えば、白金等の金属、炭素、フッ素をドープした酸化スズ等の導電性金属酸化物が好適に使用される。
【0110】
第1の本発明では、光化学電池の電解質として、テトラアリールボレート化合物を含有する電解質溶液を使用する。この電解質溶液は、テトラアリールボレート化合物とレドックス対(酸化還元対)を含むものである。テトラアリールボレート化合物は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、電解質溶液は他の化合物、特に他のオニウム塩1種以上を含有していてもよい。
【0111】
本発明において用いるテトラアリールボレート化合物は、一般式(2−1)
【0112】
【化25】
(式中、Z
+はN
+又はP
+を示し、R
61、R
62、R
63及びR
64は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ互いに独立に、水素原子又は直鎖もしくは分岐アルキル基を示すか、または、これらの二つ以上が一緒になってそれらが結合する窒素原子又はリン原子と共に飽和または不飽和のヘテロ環を形成しても良い。Ar
61、Ar
62、Ar
63及びAr
64は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ互いに独立に、フェニル基又は置換フェニル基を示す。)
で示されるが、好ましくはR
61、R
62、R
63及びR
64が全てアルキル基(R
61、R
62、R
63及びR
64は、同一でも異なっていてもよい。)である4級アンモニウムイオン、又は4級ホスホニウムイオンをカチオンとした塩である。
【0113】
R
61、R
62、R
63及びR
64としては、水素原子、又は炭素数30以下、更に好ましくは炭素数18以下、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基が好ましい。また、R
61、R
62、R
63及びR
64の隣接する二つが一緒になってそれらが結合する窒素原子又はリン原子と共に飽和または不飽和のヘテロ環、更に好ましくは5〜6員の飽和または不飽和のヘテロ環、特に好ましくはピロリジン環を形成していることも好ましい。形成される環としては、ピロリジン環の他に、例えば、ピペリジン環、ピリジン環などが挙げられる。なお、形成される環は置換基を有していてもよい。
【0114】
Z
+がN
+であるアンモニウム塩化合物のアンモニウムカチオンとしては、アンモニウムイオン、及びテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン、テトラヘプチルアンモニウムイオン、テトラオクチルアンモニウムイオン、トリメチルヘキシルアンモニウムイオン、トリメチルオクチルアンモニウムイオンなどの4級アンモニウムイオン、及びジメチルピロリジニウムイオン、ジブチルピロリジニウムイオン、ブチルメチルピロリジニウムイオンなどのピロリジニウムイオンが好ましく、4級アンモニウムイオンがさらに好ましく、テトラブチルアンモニウムイオンが特に好ましい。
【0115】
Z
+がP
+であるホスホニウム塩化合物のホスホニウムカチオンとしては、ホスホニウムイオン、及びテトラメチルホスホニウムイオン、テトラエチルホスホニウムイオン、テトラプロピルホスホニウムイオン、テトラブチルホスホニウムイオン、テトラペンチルホスホニウムイオン、テトラヘキシルホスホニウムイオン、テトラヘプチルホスホニウムイオン、テトラオクチルホスホニウムイオン、トリメチルヘキシルホスホニウムイオン、トリメチルオクチルホスホニウムイオンなどの4級ホスホニウムイオンが好ましく、4級ホスホニウムイオンがさらに好ましく、テトラブチルホスホニウムイオンが特に好ましい。
【0116】
前記一般式(2−1)で示されるテトラアリールボレート化合物としては、一般式(E−1)
【0118】
(式(E−1)中、Z
+はN
+又はP
+を示す。Ar
61、Ar
62、Ar
63及びAr
64は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ互いに独立に、フェニル基又は置換フェニル基を示す。)
で示されるテトラブチルアンモニウムイオン、又はテトラブチルホスホニウムイオンをカチオンとした塩が特に好ましい。
【0119】
テトラアリールボレート化合物のアニオンとしては、テトラフェニルボレートイオン、及びテトラキス(4−メチルフェニル)ボレートイオン、テトラキス(4−t−ブチルフェニル)ボレートイオン、テトラキス(4−ビフェニル)ボレートイオン、テトラキス(4−フルオロフェニル)ボレートイオン、テトラキス(4−クロロフェニル)ボレートイオン、テトラキス(4−ヨードフェニル)ボレートイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン、テトラキス(ペンタクロロフェニル)ボレートイオン、テトラキス(ペンタヨードフェニル)ボレートイオン、テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートイオン、テトラキス[3,5−ビス(トリクロロメチル)フェニル]ボレートイオン、テトラキス[3,5−ビス(トリヨードメチル)フェニル]ボレートイオンなどの置換フェニル基を有するボレートイオンが好ましく、Ar
61、Ar
62、Ar
63及びAr
64が全て無置換のフェニル基であるテトラフェニルボレートイオンが特に好ましい。なお、Ar
61、Ar
62、Ar
63及びAr
64の置換フェニル基は特に限定されず、上記以外の置換フェニル基を有するボレートイオンを使用することもできる。
【0120】
本発明において用いるテトラアリールボレート化合物の電解質溶液中の濃度は、0.001mol/lから飽和濃度の範囲が好ましく、0.001mol/lから1mol/lがより好ましく、0.01mol/lから0.5mol/lが特に好ましい。
【0121】
第2の本発明では、光化学電池の電解質として、オニウム塩を複数種含有する電解質溶液を使用する。この電解質溶液は、複数種のオニウム塩とレドックス対(酸化還元対)を含むものである。
【0122】
本発明においては、好ましくは一般式(2−2)
【0123】
【化27】
(式中、Z
+はN
+又はP
+を示し、R
71、R
72、R
73及びR
74は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ互いに独立に、水素原子又は直鎖もしくは分岐アルキル基を示すか、または、これらの二つ以上が一緒になってそれらが結合する窒素原子又はリン原子と共に飽和または不飽和のヘテロ環を形成しても良い。A
−はアニオンを示す。)
で示される複数種のオニウム塩を使用するが、好ましくはテトラシアノボレートイオン、又はテトラアリールボレートイオンをアニオンとしたオニウム塩を複数種使用する。テトラシアノボレートイオンをアニオンとしたオニウム塩を複数種使用してもよく、テトラアリールボレートイオンをアニオンとしたオニウム塩を複数種使用してもよく、1種以上のテトラシアノボレートイオンをアニオンとしたオニウム塩と1種以上のテトラアリールボレートイオンをアニオンとしたオニウム塩とを組み合わせて使用してもよい。
【0124】
テトラアリールボレートイオンをアニオンとしたオニウム塩としては、テトラフェニルボレートイオンをアニオンとしたオニウム塩(但し、フェニル基は置換基を有していてもよい。)がより好ましい。
【0125】
本発明においては、更に好ましくは一般式(E−2)
【0127】
(式中、Z
+はN
+又はP
+を示し、R
71、R
72、R
73及びR
74は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ互いに独立に、水素原子又は直鎖もしくは分岐アルキル基を示すか、または、これらの二つ以上が一緒になってそれらが結合する窒素原子又はリン原子と共に飽和または不飽和のヘテロ環を形成しても良い。)
で示されるテトラシアノボレートイオンをアニオンとしたオニウム塩と、一般式(E−3)
【0129】
(式中、Z
+はN
+又はP
+を示し、R
71、R
72、R
73及びR
74は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ互いに独立に、水素原子又は直鎖もしくは分岐アルキル基を示すか、または、これらの二つ以上が一緒になってそれらが結合する窒素原子又はリン原子と共に飽和または不飽和のヘテロ環を形成しても良い。Ar
71、Ar
72、Ar
73及びAr
74は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ互いに独立に、フェニル基又は置換フェニル基を示す。)
で示されるテトラアリールボレートイオンをアニオンとしたオニウム塩とを組み合わせて使用することが特に好ましい。
【0130】
オニウム塩を構成するR
71、R
72、R
73及びR
74としては、水素原子、又は炭素数30以下、更に好ましくは炭素数18以下、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基が好ましい。また、R
71、R
72、R
73及びR
74の隣接する二つが一緒になってそれらが結合する窒素原子又はリン原子と共に飽和または不飽和のヘテロ環、更に好ましくは5〜6員の飽和または不飽和のヘテロ環、特に好ましくはピロリジン環を形成していることも好ましい。形成される環としては、ピロリジン環の他に、例えば、ピペリジン環、ピリジン環などが挙げられる。なお、形成される環は置換基を有していてもよい。
【0131】
Z
+がN
+であるアンモニウム塩化合物のアンモニウムカチオンとしては、アンモニウムイオン、及びテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン、テトラヘプチルアンモニウムイオン、テトラオクチルアンモニウムイオン、トリメチルヘキシルアンモニウムイオン、トリメチルオクチルアンモニウムイオンなどの4級アンモニウムイオン、及びジメチルピロリジニウムイオン、ジブチルピロリジニウムイオン、ブチルメチルピロリジニウムイオンなどのピロリジニウムイオンが好ましく、4級アンモニウムイオンがさらに好ましく、テトラブチルアンモニウムイオンが特に好ましい。
【0132】
Z
+がP
+であるホスホニウム塩化合物のホスホニウムカチオンとしては、ホスホニウムイオン、及びテトラメチルホスホニウムイオン、テトラエチルホスホニウムイオン、テトラプロピルホスホニウムイオン、テトラブチルホスホニウムイオン、テトラペンチルホスホニウムイオン、テトラヘキシルホスホニウムイオン、テトラヘプチルホスホニウムイオン、テトラオクチルホスホニウムイオン、トリメチルヘキシルホスホニウムイオン、トリメチルオクチルホスホニウムイオンなどの4級ホスホニウムイオンが好ましく、4級ホスホニウムイオンがさらに好ましく、テトラブチルホスホニウムイオンが特に好ましい。
【0133】
テトラアリールボレート化合物(テトラアリールボレートイオンをアニオンとしたオニウム塩)のアニオンとしては、テトラフェニルボレートイオン、及びテトラキス(4−メチルフェニル)ボレートイオン、テトラキス(4−t−ブチルフェニル)ボレートイオン、テトラキス(4−ビフェニル)ボレートイオン、テトラキス(4−フルオロフェニル)ボレートイオン、テトラキス(4−クロロフェニル)ボレートイオン、テトラキス(4−ヨードフェニル)ボレートイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン、テトラキス(ペンタクロロフェニル)ボレートイオン、テトラキス(ペンタヨードフェニル)ボレートイオン、テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートイオン、テトラキス[3,5−ビス(トリクロロメチル)フェニル]ボレートイオン、テトラキス[3,5−ビス(トリヨードメチル)フェニル]ボレートイオンなどの置換フェニル基を有するボレートイオンが好ましく、テトラフェニルボレートイオンが特に好ましい。なお、置換フェニル基は特に限定されず、上記以外の置換フェニル基を有するボレートイオンを使用することもできる。
【0134】
第2の本発明で使用するテトラアリールボレートイオンをアニオンとしたオニウム塩としては、第1の本発明で使用する一般式(2−1)で示されるテトラアリールボレート化合物が特に好ましい。
【0135】
本発明において用いるオニウム塩の電解質溶液中の濃度は、合計で、0.001mol/lから飽和濃度の範囲が好ましく、0.001mol/lから5mol/lがより好ましく、0.01mol/lから1mol/lが特に好ましい。
【0136】
第1の本発明でも、第2の本発明でも、本発明の電解質溶液は、レドックス対(酸化還元対)を含んでいることが望ましい。使用するレドックス対は特に限定されないが、例えば、
(1)ヨウ素とヨウ化物(例えば、ヨウ化リチウム、ヨウ化カリウム等の金属ヨウ化物;ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム、ヨウ化ピリジニウム、ヨウ化イミダゾリウム等の4級アンモニウム化合物のヨウ化物)の組み合わせ、
(2)臭素と臭化物(例えば、臭化リチウム、臭化カリウム等の金属臭化物;臭化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、臭化ピリジニウム、臭化イミダゾリウム等の4級アンモニウム化合物の臭化物)の組み合わせ、
(3)塩素と塩化物(例えば、塩化リチウム、塩化カリウム等の金属塩化物;塩化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウム、塩化ピリジニウム、塩化イミダゾリウム等の4級アンモニウム化合物の塩化物)の組み合わせ、
(4)アルキルビオローゲンとその還元体の組み合わせ、
(5)キノン/ハイドロキノン、鉄(II)イオン/鉄(III)イオン、銅(I)イオン/銅(II)イオン、マンガン(II)イオン/マンガン(III)イオン、コバルトイオン(II)/コバルトイオン(III))等の遷移金属イオン対、
(6)フェロシアン/フェリシアン、四塩化コバルト(II)/四塩化コバルト(III)、四臭化コバルト(II)/四臭化コバルト(III)、六塩化イリジウム(II)/六塩化イリジウム(III)、六シアノ化ルテニウム(II)/六シアノ化ルテニウム(III)、六塩化ロジウム(II)/六塩化ロジウム(III)、六塩化レニウム(III)/六塩化レニウム(IV)、六塩化レニウム(IV)/六塩化レニウム(V)、六塩化オスミウム(III)/六塩化オスミウム(IV)、六塩化オスミウム(IV)/六塩化オスミウム(V)等の錯イオンの組み合わせ、
(7)コバルト、鉄、ルテニウム、マンガン、ニッケル、レニウム等の遷移金属と、ビピリジンやその誘導体、ターピリジンやその誘導体、フェナントロリンやその誘導体等の複素共役環及びその誘導体で形成されている錯体類、
(8)フェロセン/フェロセニウムイオン、コバルトセン/コバルトセニウムイオン、ルテノセン/ルテノセウムイオン等のシクロペンタジエン及びその誘導体と金属の錯体類、
(9)ポルフィリン系化合物類
が挙げられるが、好ましくは前記(1)で挙げたレドックス対が使用される。なお、これらのレドックス対は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。これらのレドックス対の使用量は、適宜決めることができる。
【0137】
電解質溶液の溶媒としては、例えば、水、アルコール類、ニトリル類、鎖状エーテル類、環状エーテル類、鎖状エステル類、環状エステル類、鎖状アミド類、環状アミド類、鎖状スルホン類、環状スルホン類、鎖状尿素類、環状尿素類、アミン類等が使用される。なお、電解質溶液の溶媒は、これらに限定されるものではなく、単独又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0138】
本発明の光化学電池は、従来から適用されている方法によって製造することができ、例えば、
(1)透明電極上に酸化物等の半導体微粒子のペーストを塗布し、加熱焼成して半導体微粒子の薄膜を作製する。
(2)次いで、半導体微粒子の薄膜がチタニアの場合、温度400〜550℃で0.5〜1時間焼成する。
(3)得られた薄膜の付いた透明電極を色素溶液に浸漬し、二核ルテニウム錯体色素を担持して光電変換素子を作製する。
(4)得られた光電変換素子と対極として白金又は炭素を蒸着した透明電極を合わせ、その間に電解質溶液を入れる。
という操作を行うことにより、本発明の光化学電池を製造することが出来る。
【実施例】
【0139】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。なお、光化学電池の光電変換効率は、ソーラーシュミレーター(英弘精機株式会社製)の擬似太陽光を照射して測定した。また、二核ルテニウム錯体色素は、国際公開第2006/038587号を参照して合成した。
【0140】
実施例A1
(多孔質チタニア電極の作製)
チタニアペーストPST−18NR(日揮触媒化成株式会社製)を透明層に、PST−400C(日揮触媒化成株式会社製)を拡散層に用い、透明導電性ガラス電極(旭硝子株式会社製)の上に、スクリーン印刷機を用いて塗布した。得られた膜を25℃、相対湿度60%の雰囲気下で5分間エージングし、このエージングした膜を440〜460℃で30分間焼成した。この操作を繰り返すことで、16mm
2の多孔質チタニア電極を作製した。
【0141】
(色素を吸着した多孔質チタニア電極の作製)
イソプロピルアルコールに、二核ルテニウム錯体色素(D−18)を加えて当該ルテニウム錯体色素の色素溶液(0.3mmol/l)を調製した。次いで、多孔質チタニア電極を、前記色素溶液に、内温30℃の恒温器中で5時間浸漬し、色素を吸着した多孔質チタニア電極を作製した。
【0142】
(光化学電池の作製)
以上のようにして得られた色素吸着多孔質チタニア電極と白金板(対極)を重ね合わせた。次に、表1に示す組成からなる電解質溶液を両電極の隙間に毛細管現象を利用して染み込ませることにより光化学電池を作製した。なお、表1のMPI−I、I
2、TBP、TBA−BPh
4、及びGBLは、それぞれ1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、ヨウ素、t−ブチルピリジン、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、及びγ−ブチロラクトンを示す。
【0143】
(光電変換効率の測定)
得られた光化学電池の光電変換効率を英弘精機株式会社製のソーラーシュミレーターを用い、100mW/cm
2の擬似太陽光を照射し測定した。
【0144】
(耐久性評価)
得られた光化学電池を60℃暗所で所定の時間静置した後、室温に戻し、光電変換効率(η)を英弘精機株式会社製のソーラーシュミレーターを用い、100mW/cm
2の擬似太陽光を照射し測定した。表1に60℃暗所放置1日後の光電変換効率を100%とした場合の30日後の光電変換効率の維持率を示す。
【0145】
比較例A1〜A2
電解質溶液中の添加物の種類や濃度を表1に示す通りに変えたこと以外は実施例A1と同様に光化学電池を作製し、光電変換効率を測定した。その結果を表1に合わせて示す。なお、4−t−ブチルピリジン(TBP)は最も良好な結果を与える添加物として知られている化合物である。
【0146】
【表1】
【0147】
以上の結果より、電解質溶液の添加物としてテトラアリールボレート化合物を使用することにより、テトラアリールボレート化合物を添加しない場合に比べ、高い光電変換効率を維持しつつ、耐久性が向上することが判明した。
【0148】
実施例B1
(多孔質チタニア電極の作製)
チタニアペーストPST−18NR(日揮触媒化成株式会社製)を透明層に、PST−400C(日揮触媒化成株式会社製)を拡散層に用い、透明導電性ガラス電極(旭硝子株式会社製)の上に、スクリーン印刷機を用いて塗布した。得られた膜を25℃、相対湿度60%の雰囲気下で5分間エージングし、このエージングした膜を440〜460℃で30分間焼成した。この操作を繰り返すことで、16mm
2の多孔質チタニア電極を作製した。
【0149】
(色素を吸着した多孔質チタニア電極の作製)
イソプロピルアルコールに、二核ルテニウム錯体色素(D−18)を加えて当該ルテニウム錯体色素の色素溶液(0.3mmol/l)を調製した。次いで、多孔質チタニア電極を、前記色素溶液に、内温30℃の恒温器中で5時間浸漬し、色素を吸着した多孔質チタニア電極を作製した。
【0150】
(光化学電池の作製)
以上のようにして得られた色素吸着多孔質チタニア電極と白金板(対極)を重ね合わせた。次に、表2に示す組成からなる電解質溶液を両電極の隙間に毛細管現象を利用して染み込ませることにより光化学電池を作製した。なお、表2のMPI−I、I
2、TBP、TBA−B(CN)
4、TBA−BPh
4、及びGBLは、それぞれ1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、ヨウ素、4−t−ブチルピリジン、テトラブチルアンモニウムテトラシアノボレート、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、及びγ−ブチロラクトンを示す。
【0151】
(光電変換効率の測定)
得られた光化学電池の光電変換効率を英弘精機株式会社製のソーラーシュミレーターを用い、100mW/cm
2の擬似太陽光を照射し測定した。
【0152】
(耐久性評価)
得られた光化学電池を60℃暗所で所定の時間静置した後、室温に戻し、光電変換効率(η)を英弘精機株式会社製のソーラーシュミレーターを用い、100mW/cm
2の擬似太陽光を照射し測定した。表2に60℃暗所放置1日後の光電変換効率を100%とした場合の30日後の光電変換効率の維持率を示す。
【0153】
実施例B2、比較例B1〜B5
電解質溶液中の添加物の種類や濃度を表2に示す通りに変えたこと以外は実施例B1と同様に光化学電池を作製し、光電変換効率を測定した。その結果を表2に合わせて示す。なお、4−t−ブチルピリジン(TBP)は最も良好な結果を与える添加物として知られている化合物である。
【0154】
【表2】
【0155】
以上の結果より、電解質溶液の添加物としてオニウム塩を複数種含有させることにより、オニウム塩を1種含有させる場合に比べ、高い光電変換効率を維持しつつ、耐久性が向上することが判明した。