特許第5884826号(P5884826)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5884826故障表示及び二次電源を備える回路遮断器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5884826
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】故障表示及び二次電源を備える回路遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 83/02 20060101AFI20160301BHJP
【FI】
   H01H83/02 E
【請求項の数】14
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-534972(P2013-534972)
(86)(22)【出願日】2011年10月14日
(65)【公表番号】特表2013-540343(P2013-540343A)
(43)【公表日】2013年10月31日
(86)【国際出願番号】US2011056363
(87)【国際公開番号】WO2012054337
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2014年9月25日
(31)【優先権主張番号】12/908,312
(32)【優先日】2010年10月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】398032740
【氏名又は名称】シュナイダー エレクトリック ユーエスエイ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158148
【弁理士】
【氏名又は名称】荒木 淳
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー ディー シュレーダー
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ベイアーシュミット
(72)【発明者】
【氏名】ランダール ガス
【審査官】 佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−156071(JP,A)
【文献】 特開2008−204630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 69/00−69/01
H01H 71/00−83/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源を負荷に接続及び切断するように構成された制御可能な機械的接点と、
前記電源から前記負荷への電力の流れを監視し、異なる種類の故障状態を検出し、故障状態の検出に応答して前記接点を自動的に開くための制御回路と、
前記接点が閉じているときに前記電源から電力を受け取り、電力を前記制御回路に供給する一次電源と、
前記制御回路により制御される故障インジケータであって、前記制御回路が前記接点を開く原因となる故障状態の種類を表示するための故障インジケータと、
前記接点が開いているときに前記制御回路に電力を供給するための二次電源であって、前記接点が開いているときに前記電源から前記制御回路に電力を供給するために、前記制御回路に接続されたスイッチを備える二次電源と
を備える電子式回路遮断器。
【請求項2】
請求項1に記載の回路遮断器において、前記スイッチは、前記制御回路に接続され、さらに、前記スイッチが閉じているときに、前記制御回路に前記回路遮断器の様々なパラメータをテストさせる回路遮断器。
【請求項3】
請求項1に記載の回路遮断器において、前記スイッチは、前記制御可能な機械的接点の電源側で前記電源に接続された手動操作式スイッチであって、前記スイッチの他端は、前記制御回路に接続され、
前記制御可能な機械的接点が開いているときに、前記スイッチを閉じることで、前記電源を前記二次電源を通して前記制御回路に接続することができる回路遮断器。
【請求項4】
請求項3に記載の回路遮断器において、前記電源は交流電源であり、前記一次電源は、前記手動操作式スイッチ及び前記制御回路の両方に接続された整流器であって、前記制御回路のために、前記交流電源からの電力を直流電力に変換する整流器を備える回路遮断器。
【請求項5】
請求項1に記載の回路遮断器において、前記制御回路は、前記接点が閉じているときに前記制御可能な機械的接点を通って、又は前記接点が開いているときに前記手動操作式スイッチを通って、電力を受け取るように構成されたマイクロコントローラであり、
前記マイクロコントローラは、故障状態を検出し、故障状態の検出に応答して前記接点を開き、前記接点が閉じているときの故障保護動作モードと前記接点が開いているときの故障の種類表示動作モードとの間を自動的に切り替わるようにプログラムされている回路遮断器。
【請求項6】
請求項5に記載の回路遮断器において、前記マイクロコントローラは、前記電源が前記制御可能な機械的接点を通って前記マイクロコントローラに接続していることを検出し、前記電源が前記接点を通って前記マイクロコントローラに接続していないときに前記故障表示モードに自動的に切り替わるようにプログラムされる回路遮断器。
【請求項7】
請求項1に記載の回路遮断器において、前記手動操作式スイッチは、前記制御可能な機械的接点が閉じているときに、前記回路遮断器の様々なパラメータの自動テストを開始するために通常使用されているプッシュツーテストスイッチである回路遮断器。
【請求項8】
請求項1に記載の回路遮断器において、前記電源は交流電源であり、前記一次電源は、前記手動操作式スイッチを前記制御回路に接続し、前記制御回路に直流電力を供給する整流器を備える回路遮断器。
【請求項9】
少なくとも一つの負荷に電源を接続及び切断するように構成された制御可能な機械的接点を備える電子式回路遮断器に、電力を供給する方法であって、
前記回路遮断器内の制御回路において、前記電源から前記負荷への電力の流れを監視し、異なる種類の故障状態を検出し、故障状態の検出に応答して自動的に前記接点を開くステップと、
前記接点が閉じているときに前記電源から一次電源で電力を受け取るステップと、前記制御回路に前記一次電源で電力を供給するステップと、
前記制御回路が前記接点を開く原因となる故障状態の種類を特定する情報を格納するステップと、
前記接点が開いているときに前記制御回路に電力を供給するために、前記電源を前記制御回路に接続するように手動でスイッチを閉じることで、前記接点が開いているときに前記制御回路に電力を供給するステップと
を有する方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、前記制御回路のために交流電源からの電力を直流電力に変換するステップを有する方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法において、マイクロコントローラである前記制御回路は前記接点が閉じているときの故障保護動作モードと前記接点が開いているときの故障表示動作モードとの間で自動的に切り替えるステップを有する方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、(1)前記電源が前記接点を通って前記マイクロコントローラに接続されていないときで、(2)前記スイッチが手動で閉じられるときに、前記故障表示動作モードに自動的に切り替えるステップを有する方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記スイッチは、前記回路遮断器の様々なパラメータの自動テストを開始するために通常使用されるプッシュツーテストスイッチであって、前記プッシュツーテストスイッチは、前記二次電源を活性化するステップを有する方法。
【請求項14】
請求項9に記載の方法において、前記電源は交流電源であり、前記回路遮断器内で、前記電源からの交流電力を前記制御回路駆動用の直流電力に変換するステップを有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子式回路遮断器、及び、特に、故障表示及び回路遮断器が開いている間の故障表示のための二次電源を備える改良型回路遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の住宅用電子式回路遮断器(AFCI)は、多くの異なる種類の故障状態を監視し、これら多くの異なる種類の故障状態から保護している。電子式回路がトリップしたとき、的確且つ迅速に故障状態を是正するために、回路遮断器がどんな種類の故障を遮断したかを知ることは有効である。このような回路遮断器内の電子モジュールは、電子部品に電力が供給される場合にのみ、遮断した故障を表示することができる。通常、これを行うには、回路遮断器を再び閉じて、電子モジュールに電力を供給する必要がある。しかしながら、遮断した故障の原因を表示するために回路遮断器を再び閉じるということは、その故障が存在し続けていれば、その故障に再び通電することも意味する。回路遮断器を安全に再び閉じるためには、電子技術者が、負荷中心を開き、回路遮断器から回線負荷及び中性負荷線を取除かなければならない。電子モジュールに遮断した故障を表示可能にさせるには、危険であると考えられるレベルにまで故障に再び通電することなく電子モジュールに電力を供給する第二の手段を取ることが望ましく、これにより回路遮断器から負荷線を取除く必要はなくなる。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態において、電子式回路遮断器は、交流電源を少なくとも一つの負荷に接続するように構成された制御可能な機械的接点と、前記交流電源から負荷への電力の流れを監視し、異なる種類の故障状態を検出し、故障状態の検出に応答して前記接点を自動的に開くための制御回路とを備える。一次電源は、接点が閉じているときに前記交流電源から電力を受け取り、電力を前記制御回路に供給する。前記制御回路により制御される故障インジケータは、前記制御回路が前記接点を開く原因となる故障状態の種類を表示し、二次電源は、接点が開いていて手動操作式スイッチが閉じているときに、制御回路に電力を供給する。遮断器接点が開いている間に二次電源から制御回路に電力を供給することにより、本遮断器システムは、回路遮断器がトリップした原因を決定するために、危険な故障に対して回路遮断器を閉じる必要はなくなる。また、トリップの原因を表示するため、ファームウェアをアップデートするため、又は診断を実行するために、回路遮断器から分岐回路配線を取除く必要も、又は負荷中心から回路遮断器を再び開く必要もなくなる。
【0004】
一実施形態において、前記手動操作式スイッチは、前記制御可能な機械的接点の電源側で前記交流電源に接続され、スイッチの他端は前記制御回路に接続され、前記接点が開いているときにスイッチを閉じることで、前記交流電源が前記制御回路に接続されて前記制御回路に電力を供給することができるようにする。前記交流電源からの電力を前記制御回路のために直流電力に変換するために、整流器を前記手動操作式スイッチ及び前記制御回路に接続することができる。
【0005】
前記制御回路は、望ましくは、接点が閉じているときに前記接点を通じて、又は前記接点が開いているときに前記手動操作式スイッチを通じて、電力を受け取るように構成されたマイクロコントローラを備える。マイクロコントローラは、故障状態を検出し、故障状態の検出に応答して前記接点を開き、前記接点が閉じているときの故障保護動作モードと前記接点が開いているときの故障表示動作モードとの間で自動的に切り替わるようにプログラムされている。マイクロコントローラは、前記交流電源が前記接点を通じてマイクロコントローラに接続していることを検出し、前記交流電源が前記接点を通じて前記マイクロコントローラに接続していないときに故障表示モードに自動的に切り替わるようにプログラムされている。
【0006】
本発明は、添付図面と合わせて以下の説明を参照することにより、最も良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、回路遮断器のトリップの原因となる故障の種類を表示することができる回路遮断器内の電子式回路の一部分の回路図である。
図2図2は、回路遮断器がトリップしている間にマイクロコントローラ及び故障インジケータに電力を供給するために二次電源を活性化する、図1の回路内のマイクロコントローラにより実行されるルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、特定の望ましい実施形態と関連して記載されるが、本発明は、これら特定の実施形態に限定されないものと理解されたい。それどころか、本発明は、添付の特許請求の範囲において特定される本発明の要旨及び範囲に含まれうる全ての代替、改良及び均等構成を包含することが意図される。
【0009】
図1は、120ボルトの交流電源等のライン電源10から一以上の負荷11に供給される電力を監視する回路遮断器を示すものである。通常動作中、すなわち、故障が発生していない場合、電源10は、制御可能な機械的接点、すなわち、本技術分野において周知であるように、負荷11を保護するために自動的に開くトリップ回路13の、通常閉じている遮断器接点12を通して、交流電力を負荷11に供給する。加えて、全波整流器15(例えばダイオードブリッジ)、前置電圧調整回路16及び電圧調整器17を備える一次電源から、遮断器内のマイクロコントローラ14に、直流電力が供給される。ダイオードブリッジ15は、前置電圧調整回路16に供給する直流出力を生成するために、電源10からの交流電力を整流する。前置電圧調整回路16は、次に電圧調整器17に電力を供給し、電圧調整器17は、調整された直流入力電圧をマイクロコントローラ14に供給する。プッシュツーテストボタン18は、例えば、本発明と同一の出願人による米国特許第7151656号明細書に記載されているように、本回路遮断器の様々なパラメータのテストの手動開始を可能にするために、マイクロコントローラ14のPTT入力に接続されている。
【0010】
回路遮断器により故障が検出されたとき、マイクロコントローラ14はトリップ信号を生成し、この信号はトリップ回路13に提供され、電流の負荷への流れを遮断するために、自動的に遮断器接点を開く。マイクロコントローラは、また、トリップの原因を特定する情報、例えば接地故障又はアーク故障等の検出情報も格納する。トリップの後、ユーザが格納された情報を検索したいときは、マイクロコントローラが、格納された情報を検索し、この情報を表示する又はそうでなければユーザにこの情報を通信することを可能とするために、マイクロコントローラに電力を供給することが必要である。遮断器接点12を再び閉じることにより、交流電源10が整流器15に再接続される場合、トリップの原因となった故障に、再び通電する危険が存在する。そのため、最初にトリップの原因となった故障に再び通電するのを避けるために、マイクロコントローラ14は、遮断器接点12を閉じることなく電力を供給されるのが好ましい。
【0011】
図示する回路において、遮断器接点12が開いている間に、交流電源10のライン側を電圧調整器17の入力に接続するためにプッシュツーテストボタン18を押すことで、二次電源をマイクロコントローラ14に結合することができる。PTTボタン18を押すことで閉じられるPTTスイッチから、電源10からの交流信号は、電流制限抵抗器R1を通過し、ツェナーダイオードZ1によりクランプされる。ダイオードD1により形成される半波整流器により、電流をダイオードD1と抵抗器R1との間のノードN1から電圧調整器17へ流すことができ、この電流は入力キャパシタC1を充電し、電圧調整器17に電力を供給するのに十分である。その後、電圧調整器17は、マイクロコントローラ14がトリップの原因となった故障の種類を検索し、表示することができるように、必要な電圧および電流をマイクロコントローラ14に供給する。マイクロコントローラ14が、いつPTTスイッチが閉じられたかを検出できるように、ダイオードD1に供給された信号と同一の信号が、抵抗器R2を通ってマイクロコントローラのPTT入力にも供給される。
【0012】
そのため、どのような種類の故障が回路遮断器のトリップの原因となったかを確認するためには、ユーザは、抵抗器R1及びダイオードD1を通して交流電源を一時的に電圧調整器17に接続するために、単にPTTボタン18を押せばよい。調整器17がC1からマイクロコントローラ14に電力を供給するため、トリップの原因となった故障の種類を特定する情報が、マイクロコントローラ14により検索され、例えばインジケータライト19又は他の好ましい種類のインジケータ等によりユーザに表示される。ユーザは、表示された故障表示を理解するまでPTTボタン18を押し続け、その後、ユーザは、PTTボタン18を離すことで、マイクロコントローラ14の電源を切る。
【0013】
図2を参照すると、いずれかの電源により電力が供給されると、ステップ20において、ファームウェアは、いずれの動作モードに入るべきかを決定するまで、低電力状態に初期化する。この低電力状態の間、ステップ21において、ファームウェアは、一次電源(すなわち、標準電圧監視回路)を監視し、一次電源が存在するか否かを決定する。応答が肯定的であれば、マイクロコントローラは、標準動作モードが初期化されるステップ23に進む。ステップ22における応答が否定的であれば、システムは、ユーザ入力(すなわち、PTTスイッチが閉じられるか)を監視するステップ24、及びユーザ入力が存在するか否かを決定するステップ25に進む。ステップ25における応答が否定的であれば、システムは、標準動作モードが初期化されるステップ23に進む。ステップ25における応答が肯定的な場合、システムは、一方の経路がステップ26及びステップ27により示され、他方の並列経路がステップ28により示される一組の並列処理過程に進む。ステップ26は、一次電源を監視し、ステップ27は、一次電源が存在するか否かを決定する。ステップ27における応答が否定的な場合、システムはステップ26に戻り、一次電源が検出されない限りこのループが続く。一方、並列経路において、ステップ28は代替動作モードを開始し、その後、システムは、代替動作を終了するためにステップ29に進み、トリップの原因となった故障の種類を示す。
【0014】
図2から、ファームウェアは、(1)一次電源から電力が検出されない場合で、(2)PTTスイッチが閉じられていることが検出される場合に限り、代替モードに入ることが理解できる。ファームウェアは、一次電源からの電力が検出された場合は、PTTスイッチが開いているか又は閉じているかにかかわらず、常に標準動作モードに入るか、又は標準動作モードのままである。
【0015】
一次電源から(閉じている遮断器接点12を通って)マイクロコントローラ14に電力が供給される標準動作モードの間、マイクロコントローラ14内のファームウェアは、遮断器接点を開く原因となったトリップ信号を発信する前に、電子トリップ事象の原因を、モジュールの内部メモリに記録する。二次電源からマイクロコントローラに電力が供給される代替動作モードの間、ファームウェアは、トリップ事象の記録をメモリから呼び戻し、ユーザにその情報を表示する。代替モードの間、ファームウェアは、常に一次電源を監視し、一次電源からの電力が検出されたとき、標準モードに切り替える。通信/記憶ポートを加えることにより、代替動作モードは、自己更新特性及び/又は回路診断も実行することができる。
【0016】
遮断器接点12が開いている間に二次電源からマイクロコントローラ14に電力を供給することにより、前述のシステムは、回路遮断器がトリップした原因を決定するために、危険な故障に対して回路遮断器を閉じる必要はなくなる。このシステムは、また、トリップの原因を表示する、ファームウェアをアップデートする、又は診断を実行するために、回路遮断器から分岐回路配線を取除く必要も、負荷中心から回路遮断器を再び開く必要もなくなる。
【0017】
本発明の特定の実施形態及び適用例が示され、記載されているが、本発明は、本明細書において開示されたものと同一の構造及び構成に限定されず、種々の修正、変更及び変形が、添付の特許請求の範囲において特定される本発明の要旨及び範囲から逸脱することなく、上記の記載から明確であるものと理解されたい。
図1
図2