(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内燃機関に駆動連結される入力部材と車輪に駆動連結される出力部材とを結ぶ動力伝達経路上に、前記入力部材の側から、第一係合装置、回転電機、第二係合装置、及び前記出力部材、の順に設けられた車両用駆動装置を制御対象とする制御装置であって、
前記入力部材が前記内燃機関により駆動されている状態であると共に、前記第一係合装置が直結係合状態であり、前記第二係合装置が解放状態である場合であって、車両を駆動するために必要とされるトルクである要求駆動力を増加する要求があった場合に、
前記第一係合装置及び前記第二係合装置の双方をスリップ係合状態とすると共に、前記回転電機の回転速度を前記内燃機関に駆動されている前記入力部材の回転速度よりも低くしてスリップ走行モードを実現する制御装置。
前記第一係合装置及び前記第二係合装置の双方をスリップ係合状態とする前記スリップ走行モードにおいて、更に、前記回転電機の回転速度を前記出力部材の回転速度よりも高くする請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置。
前記入力部材と前記第一係合装置の前記入力部材側の係合部材とが一体回転するように連結されているとともに、前記回転電機と前記第一係合装置の前記出力部材側の係合部材とが一体回転するように連結されている請求項1から7のいずれか一項に記載の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.第一の実施形態
本発明に係る制御装置の第一の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る制御装置3は、駆動装置1を制御対象とする駆動装置用制御装置とされている。ここで、本実施形態に係る駆動装置1は、駆動力源として内燃機関11及び回転電機12の双方を備えた車両(ハイブリッド車両)6を駆動するための車両用駆動装置(ハイブリッド車両用駆動装置)である。以下、本実施形態に係る制御装置3について、詳細に説明する。
【0016】
なお、以下の説明では、各係合装置の状態に関して、「解放状態」は、当該係合装置の両側の係合部材間で回転及び駆動力が伝達されない状態を表す。「スリップ係合状態」は、両側の係合部材が回転速度差を有する状態で駆動力を伝達可能に係合されている状態を表す。「直結係合状態」は、両側の係合部材が一体回転する状態で係合されている状態を表す。
また、「係合圧」は、一方の係合部材と他方の係合部材とを相互に押し付け合う圧力を表す。また、「解放圧」は、当該係合装置が定常的に解放状態となる圧を表す。「解放境界圧」は、当該係合装置が解放状態とスリップ係合状態との境界のスリップ境界状態となる圧(解放側スリップ境界圧)を表す。「係合境界圧」は、当該係合装置がスリップ係合状態と直結係合状態との境界のスリップ境界状態となる圧(係合側スリップ境界圧)を表す。「完全係合圧」は、当該係合装置が定常的に直結係合状態となる圧を表す。
【0017】
1−1.駆動装置の構成
まず、本実施形態に係る制御装置3による制御対象となる駆動装置1の構成について説明する。本実施形態に係る駆動装置1は、いわゆる1モータパラレル方式のハイブリッド車両用の駆動装置として構成されている。この駆動装置1は、
図1に示すように、内燃機関11に駆動連結される入力軸Iと車輪15に駆動連結される出力軸Oとを結ぶ動力伝達経路上に、入力軸Iの側から、発進クラッチCS、回転電機12、変速機構13、及び出力軸O、の順に備えている。これらは、同軸上に配置されている。なお、変速機構13には後述するように変速用の第一クラッチC1が備えられており、これにより、入力軸Iと出力軸Oとを結ぶ動力伝達経路上に、入力軸Iの側から、発進クラッチCS、回転電機12、第一クラッチC1、及び出力軸O、の順に設けられている。これらの各構成は、駆動装置ケース(図示せず)内に収容されている。本実施形態では、入力軸Iが本発明における「入力部材」に相当し、出力軸Oが本発明における「出力部材」に相当する。
【0018】
内燃機関11は、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機である。内燃機関Eとしては、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等を用いることができる。内燃機関11は入力軸Iと一体回転するように駆動連結されている。本例では、内燃機関11のクランクシャフト等の出力軸が入力軸Iに駆動連結されている。なお、内燃機関11が、ダンパ等の他の装置を介して入力軸Iに駆動連結された構成としても好適である。内燃機関11は、発進クラッチCSを介して回転電機12に駆動連結されている。
【0019】
発進クラッチCSは、内燃機関11と回転電機12との間に設けられている。発進クラッチCSは、入力軸Iと中間軸M及び出力軸Oとを選択的に駆動連結する摩擦係合装置であり、内燃機関切り離し用摩擦係合装置として機能する。本実施形態では、発進クラッチCSは、湿式多板クラッチとして構成されている。また、本実施形態においては、発進クラッチCSは、その周囲を覆うクラッチハウジング内に油密状態で配置されており、基本的には当該クラッチハウジング内において常時油に浸っている。本実施形態では、その全体が常時油に浸った構成を採用することで、発進クラッチCSの冷却性能を良好に維持することが可能となっている。本実施形態では、発進クラッチCSが本発明における「第一係合装置」に相当する。
【0020】
回転電機12は、ロータとステータとを有して構成され(図示せず)、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを果たすことが可能とされている。回転電機12のロータは中間軸Mと一体回転するように駆動連結されている。また、回転電機12は、インバータ装置27を介して蓄電装置28に電気的に接続されている。蓄電装置28としては、バッテリやキャパシタ等を用いることができる。回転電機12は、蓄電装置28から電力の供給を受けて力行し、或いは、内燃機関11が出力するトルクや車両6の慣性力により発電した電力を蓄電装置28に供給して蓄電させる。また、回転電機12のロータと一体回転する中間軸Mは、変速機構13に駆動連結されている。すなわち、中間軸Mは、変速機構13の入力軸(変速入力軸)となっている。
【0021】
変速機構13は、複数の変速形態を切替可能な機構である。本実施形態では、変速機構13は、変速比の異なる複数の変速段(変速形態の一種)を切替可能に有する自動有段変速機構とされている。変速機構13は、これら複数の変速段を形成するために、一又は二以上の遊星歯車機構等の歯車機構と、この歯車機構の回転要素間を選択的に駆動連結することで複数の変速段を切り替えるための、クラッチやブレーキ等の複数の摩擦係合装置とを備えている。ここでは、変速機構13は変速用の複数の摩擦係合装置のうちの1つとして、第一クラッチC1を備えている。本実施形態では、第一クラッチC1は、湿式多板クラッチとして構成されている。第一クラッチC1は、中間軸Mと変速機構13内に設けられた変速中間軸Sとを選択的に駆動連結する。本実施形態では、第一クラッチC1が本発明における「第二係合装置」に相当する。変速中間軸Sは、変速機構13内の他の摩擦係合装置や軸部材を介して出力軸Oに駆動連結されている。
【0022】
変速機構13は、複数の摩擦係合装置の係合状態に応じて形成される各変速段についてそれぞれ設定された所定の変速比で、中間軸Mの回転速度を変速すると共にトルクを変換して、出力軸Oへ伝達する。変速機構13から出力軸Oへ伝達されたトルクは、出力用差動歯車装置14を介して左右二つの車輪15に分配されて伝達される。これにより、駆動装置1は、内燃機関11及び回転電機12の一方又は双方のトルクを車輪15に伝達させて車両6を走行させることができる。
【0023】
また、本実施形態においては、駆動装置1は、中間軸Mに駆動連結されるオイルポンプ(図示せず)を備えている。オイルポンプは、オイルパン(図示せず)に蓄えられた油を吸引し、駆動装置1の各部に油を供給するための油圧源として機能する。オイルポンプは、中間軸Mを介して伝達される回転電機12及び内燃機関11の一方又は双方の駆動力により駆動されて作動し、油を吐出して油圧を発生させる。オイルポンプからの油は、油圧制御装置25により所定油圧に調整されてから、発進クラッチCSや変速機構13内に備えられる第一クラッチC1等に供給される。なお、このオイルポンプとは別に、電動オイルポンプを備えた構成としても良い。
【0024】
また、
図1に示すように、この駆動装置1が搭載された車両6の各部には、複数のセンサが備えられている。具体的には、入力軸回転速度センサSe1、中間軸回転速度センサSe2、出力軸回転速度センサSe3、アクセル開度検出センサSe4、及び充電状態検出センサSe5が備えられている。
【0025】
入力軸回転速度センサSe1は、入力軸Iの回転速度を検出するセンサである。入力軸回転速度センサSe1により検出される入力軸Iの回転速度は、内燃機関11の回転速度に等しい。中間軸回転速度センサSe2は、中間軸Mの回転速度を検出するセンサである。中間軸回転速度センサSe2により検出される中間軸Mの回転速度は、回転電機12の回転速度に等しい。出力軸回転速度センサSe3は、出力軸Oの回転速度を検出するセンサである。制御装置3は、出力軸回転速度センサSe3により検出される出力軸Oの回転速度に基づいて、車両6の走行速度である車速を導出することもできる。アクセル開度検出センサSe4は、アクセルペダル17の操作量を検出することによりアクセル開度を検出するセンサである。充電状態検出センサSe5は、SOC(state of charge:充電状態)を検出するセンサである。制御装置3は、充電状態検出センサSe5により検出されるSOCに基づいて蓄電装置28の蓄電量を導出することもできる。これらの各センサSe1〜Se5による検出結果を示す情報は、次に説明する制御装置3へ出力される。
【0026】
1−2.制御装置の構成
次に、本実施形態に係る制御装置3の構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る制御装置3は、主に内燃機関11を制御するための内燃機関制御ユニット30と、主に回転電機12、発進クラッチCS、及び変速機構13を制御するための駆動装置制御ユニット40とを備えている。内燃機関制御ユニット30及び駆動装置制御ユニット40は、駆動装置1の各部の動作制御を行う中核部材としての機能を果たしている。
【0027】
これらの内燃機関制御ユニット30及び駆動装置制御ユニット40は、それぞれCPU等の演算処理装置を中核部材として備えている(図示せず)。そして、ROM等に記憶されたソフトウェア(プログラム)又は別途設けられた演算回路等のハードウェア、或いはそれらの両方により、内燃機関制御ユニット30及び駆動装置制御ユニット40の各機能部が構成されている。これらの各機能部は、互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。更に、内燃機関制御ユニット30と駆動装置制御ユニット40との間でも、互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。また、内燃機関制御ユニット30及び駆動装置制御ユニット40は、上述した各センサSe1〜Se5による検出結果の情報を取得可能に構成されている。
【0028】
内燃機関制御ユニット30は、内燃機関制御部31を備えている。
内燃機関制御部31は、内燃機関11の動作制御を行う機能部である。内燃機関制御部31は、内燃機関11の出力トルク(内燃機関トルクTe)及び回転速度の制御目標としての目標トルク及び目標回転速度を決定し、この制御目標に応じて内燃機関11を動作させることにより、内燃機関11の動作制御を行う。本実施形態では、内燃機関制御部31は、車両6の走行状態に応じて内燃機関11のトルク制御及び回転速度制御を切り替えることが可能とされている。ここで、トルク制御は、内燃機関11に目標トルクを指令し、内燃機関トルクTeをその目標トルクに追従させる制御である。また、回転速度制御は、内燃機関11に目標回転速度を指令し、内燃機関11の回転速度をその目標回転速度に追従させるように目標トルクを決定する制御である。
【0029】
例えば、内燃機関制御部31は、車両6の通常走行時(ここでは、後述するパラレルアシストモードでの走行時;以下同様)には、後述する要求トルク決定部42により決定される車両要求トルクTdのうち、内燃機関11による負担分である内燃機関要求トルクを決定する。そして、内燃機関制御部31は、決定された内燃機関要求トルクを上記目標トルクとしてトルク制御を実行する。また、本実施形態では、回転電機制御部43は、後述するスリップ発電制御中に決定される内燃機関トルク指令に応じたトルクを上記目標トルクとしてトルク制御を実行することが可能である。
【0030】
駆動装置制御ユニット40は、走行モード決定部41、要求トルク決定部42、回転電機制御部43、発進クラッチ動作制御部44、変速機構動作制御部45、スリップ発電制御部46、及び要求発電量決定部47を備えている。
【0031】
走行モード決定部41は、車両6の走行モードを決定する機能部である。走行モード決定部41は、例えば出力軸回転速度センサSe3の検出結果に基づいて導出される車速や、アクセル開度検出センサSe4により検出されるアクセル開度、充電状態検出センサSe5の検出結果に基づいて導出される蓄電装置28の蓄電量等に基づいて、駆動装置1が実現すべき走行モードを決定する。その際、走行モード決定部41は、メモリ等の記録装置に記憶して備えられた、車速、アクセル開度、及び蓄電量と走行モードとの関係を規定したモード選択マップ(図示せず)を参照する。
【0032】
図2に示すように、本例では、走行モード決定部41が選択可能な走行モードには、電動走行モード、パラレル走行モード、スリップ走行モード、及び停車発電モードが含まれる。また、パラレル走行モードには、パラレルアシストモード及びパラレル発電モードが含まれる。スリップ走行モードには、スリップアシストモード、第一スリップ発電モード、及び第二スリップ発電モードが含まれる。なお、
図2において、各クラッチCS,C1の列の「○」は各係合装置が直結係合状態とされることを表し、「△」はスリップ係合状態とされることを表している。また、「×」は各係合装置が解放状態とされることを表している。また、回転電機12の列の「力行」は、車両6に対してトルクアシストを行っていること、又はトルクアシストは行わずに単に空転していることを表している。
【0033】
図2に示すように、電動走行モードでは、発進クラッチCSが解放状態、第一クラッチC1が直結係合状態とされ、回転電機12が力行する。制御装置3は、この電動走行モードを選択することにより、回転電機12の出力トルク(回転電機トルクTm)のみにより車両6を走行させる。パラレル走行モードでは、発進クラッチCS及び第一クラッチC1の双方が直結係合状態とされ、回転電機12は力行又は発電する。制御装置3は、このパラレル走行モードを選択することにより、少なくとも内燃機関トルクTeにより車両6を走行させる。その際、回転電機12は、パラレルアシストモードでは正の回転電機トルクTm(>0)を出力して内燃機関トルクTeによる駆動力を補助し、パラレル発電モードでは負の回転電機トルクTm(<0)を出力して内燃機関トルクTeの一部によって発電する。
【0034】
スリップアシストモードでは、発進クラッチCS及び第一クラッチC1の双方がスリップ係合状態とされ、回転電機12は力行する。制御装置3は、このスリップアシストモードを選択することにより、少なくとも内燃機関トルクTeにより車両6を走行させる。第一スリップ発電モードでは、発進クラッチCS及び第一クラッチC1の双方がスリップ係合状態とされ、回転電機12は発電する。第二スリップ発電モードでは、発進クラッチCSがスリップ係合状態、第一クラッチC1が直結係合状態とされ、回転電機12は発電する。制御装置3は、これら2つのスリップ発電モードのいずれかを選択することにより、内燃機関トルクTeを利用して回転電機12に発電させつつ車両6を走行させる。停車発電モードでは、発進クラッチCSが直結係合状態、第一クラッチC1が解放状態とされ、回転電機12は発電する。制御装置3は、この停車発電モードを選択することにより、車両6の停止状態で内燃機関トルクTeにより回転電機12に発電させる。なお、これらのうちの一部の走行モードのみを備える構成、或いはこれら以外の走行モードを備える構成を採用しても良い。
【0035】
要求トルク決定部42は、車両6を走行させるために必要とされる車両要求トルクTdを決定する機能部である。要求トルク決定部42は、出力軸回転速度センサSe3の検出結果に基づいて導出される車速と、アクセル開度検出センサSe4により検出されるアクセル開度とに基づいて、所定のマップ(図示せず)を参照する等して車両要求トルクTdを決定する。本実施形態では、車両要求トルクTdが本発明における「要求駆動力」に相当する。決定された車両要求トルクTdは、内燃機関制御部31、回転電機制御部43、及びスリップ発電制御部46等に出力される。
【0036】
回転電機制御部43は、回転電機12の動作制御を行う機能部である。回転電機制御部43は、回転電機トルクTm及び回転速度の制御目標としての目標トルク及び目標回転速度を決定し、この制御目標に応じて回転電機12を動作させることにより、回転電機12の動作制御を行う。本実施形態では、回転電機制御部43は、車両6の走行状態に応じて回転電機12のトルク制御及び回転速度制御を切り替えることが可能とされている。ここで、トルク制御は、回転電機12に目標トルクを指令し、回転電機トルクTmをその目標トルクに追従させる制御である。また、回転速度制御は、回転電機12に目標回転速度を指令し、回転電機12の回転速度をその目標回転速度に追従させるように目標トルクを決定する制御である。
【0037】
例えば、回転電機制御部43は、車両6の通常走行時には、要求トルク決定部42により決定される車両要求トルクTdのうち、回転電機12による負担分である回転電機要求トルクを決定する。そして、回転電機制御部43は、決定された回転電機要求トルクを上記目標トルクとして回転電機トルクTmを制御する。また、本実施形態では、回転電機制御部43は、後述するスリップ発電制御中に決定される目標回転速度Nmtを上記目標回転速度として、回転電機12の回転速度制御を実行することが可能である。
【0038】
また、回転電機制御部43は、負の目標トルクを指令し、負の回転電機トルクTm(<0)を出力させることにより、回転電機12に発電を行わせることができる。すなわち、回転電機12は、車両6の前進時には基本的に正方向に回転するため、正方向に回転しつつ負の回転電機トルクTm(<0)を出力して発電する。本実施形態では、上述したように例えば第一スリップ発電モード等では内燃機関トルクTeの一部により回転電機12に発電させる構成とされており、回転電機12に発電させるためのトルクを「発電トルクTg」としている。この発電トルクTgは、負の回転電機トルクTm(<0)の絶対値に一致する。
【0039】
発進クラッチ動作制御部44は、発進クラッチCSの動作を制御する機能部である。ここで、発進クラッチ動作制御部44は、油圧制御装置25を介して発進クラッチCSに供給される油圧を制御し、発進クラッチCSの係合圧を制御することにより、当該発進クラッチCSの動作を制御する。例えば、発進クラッチ動作制御部44は、発進クラッチCSに対する油圧指令値Pcsを出力し、油圧制御装置25を介して発進クラッチCSへの供給油圧を解放圧とすることにより、発進クラッチCSを解放状態とする。また、発進クラッチ動作制御部44は、油圧制御装置25を介して発進クラッチCSへの供給油圧を完全係合圧とすることにより、発進クラッチCSを直結係合状態とする。また、発進クラッチ動作制御部44は、油圧制御装置25を介して発進クラッチCSへの供給油圧を、解放境界圧以上係合境界圧以下のスリップ係合圧とすることにより、発進クラッチCSをスリップ係合状態とする。
【0040】
発進クラッチCSのスリップ係合状態では、入力軸Iと中間軸Mとが相対回転する状態で、これらの間で駆動力が伝達される。なお、発進クラッチCSの直結係合状態又はスリップ係合状態で伝達可能なトルクの大きさは、発進クラッチCSのその時点での係合圧に応じて決まる。このときのトルクの大きさを、発進クラッチCSの「伝達トルク容量Tcs」とする。本実施形態では、発進クラッチCSに対する油圧指令値Pcsに応じて、比例ソレノイド等で発進クラッチCSへの供給油量及び供給油圧の大きさを連続的に制御することにより、係合圧及び伝達トルク容量Tcsの増減が連続的に制御可能となっている。なお、発進クラッチCSのスリップ係合状態で当該発進クラッチCSを介して伝達されるトルクの伝達方向は、入力軸Iと中間軸Mとの間の相対回転の向きに応じて決まる。
【0041】
また、本実施形態では、発進クラッチ動作制御部44は、車両6の走行状態に応じて発進クラッチCSのトルク制御及び回転速度制御を切り替えることが可能とされている。ここで、トルク制御は、発進クラッチCSの伝達トルク容量Tcsを所定の目標伝達トルク容量とする制御である。また、回転速度制御は、発進クラッチCSの一方の係合部材に連結された回転部材(ここでは、入力軸I)の回転速度と他方の係合部材に連結された回転部材(ここでは、中間軸M)の回転速度との間の回転速度差を所定の目標差回転速度に追従させるように、発進クラッチCSへの油圧指令値Pcs又は発進クラッチCSの目標伝達トルク容量を決定する制御である。
【0042】
変速機構動作制御部45は、変速機構13の動作を制御する機能部である。変速機構動作制御部45は、アクセル開度及び車速に基づいて目標変速段を決定すると共に、変速機構13に対して決定された目標変速段を形成させる制御を行う。その際、変速機構動作制御部45は、メモリ等の記録装置に記憶して備えられた、車速及びアクセル開度と目標変速段との関係を規定した変速マップ(図示せず)を参照する。変速マップは、アクセル開度及び車速に基づくシフトスケジュールを設定したマップである。変速機構動作制御部45は、決定された目標変速段に基づいて、変速機構13内に備えられる所定の摩擦係合装置への供給油圧を制御して目標変速段を形成する。
【0043】
上記のとおり、変速機構13には変速用の第一クラッチC1が備えられている。この第一クラッチC1は、例えば直結係合状態でワンウェイクラッチと協働して第1速段を形成する。この第一クラッチC1も、当然に変速機構動作制御部45の制御対象に含まれる。ここでは、第一クラッチC1の動作を制御する機能部を、特に第一クラッチ動作制御部45aとする。第一クラッチ動作制御部45aは、油圧制御装置25を介して第一クラッチC1に供給される油圧を制御し、第一クラッチC1の係合圧を制御することにより、当該第一クラッチC1の動作を制御する。例えば、第一クラッチ動作制御部45aは、第一クラッチC1に対する油圧指令値Pc1を出力し、油圧制御装置25を介して第一クラッチC1への供給油圧を解放圧とすることにより、第一クラッチC1を解放状態とする。また、第一クラッチ動作制御部45aは、油圧制御装置25を介して第一クラッチC1への供給油圧を完全係合圧とすることにより、第一クラッチC1を直結係合状態とする。また、第一クラッチ動作制御部45aは、油圧制御装置25を介して第一クラッチC1への供給油圧をスリップ係合圧とすることにより、第一クラッチC1をスリップ係合状態とする。
【0044】
第一クラッチC1のスリップ係合状態では、中間軸Mと変速中間軸Sとが相対回転する状態で、これらの間で駆動力が伝達される。なお、第一クラッチC1の直結係合状態又はスリップ係合状態で伝達可能なトルクの大きさは、第一クラッチC1のその時点での係合圧に応じて決まる。このときのトルクの大きさを、第一クラッチC1の「伝達トルク容量Tc1」とする。本実施形態では、第一クラッチC1に対する油圧指令値Pc1に応じて、比例ソレノイド等で第一クラッチC1への供給油量及び供給油圧の大きさを連続的に制御することにより、係合圧及び伝達トルク容量Tc1の増減が連続的に制御可能となっている。なお、第一クラッチC1のスリップ係合状態で当該第一クラッチC1を介して伝達されるトルクの伝達方向は、中間軸Mと変速中間軸Sとの間の相対回転の向きに応じて決まる。
【0045】
また、本実施形態では、第一クラッチ動作制御部45aは、車両6の走行状態に応じて第一クラッチC1のトルク制御及び回転速度制御を切り替えることが可能とされている。ここで、トルク制御は、第一クラッチC1の伝達トルク容量Tc1を所定の目標伝達トルク容量とする制御である。また、回転速度制御は、第一クラッチC1の一方の係合部材に連結された回転部材(ここでは、中間軸M)の回転速度と他方の係合部材に連結された回転部材(ここでは、変速中間軸S)の回転速度との間の回転速度差を所定の目標差回転速度に追従させるように、第一クラッチC1への油圧指令値Pc1又は第一クラッチC1の目標伝達トルク容量を決定する制御である。
【0046】
スリップ発電制御部46は、所定のスリップ発電制御を実行する機能部である。本実施形態では、少なくとも発進クラッチCSのスリップ係合状態で入力軸Iに伝達される内燃機関トルクTeにより回転電機12に発電を行わせる制御を「スリップ発電制御」としている。スリップ発電制御は、スリップ発電制御部46を中核として、内燃機関制御部31、回転電機制御部43、発進クラッチ動作制御部44、及び第一クラッチ動作制御部45a等が協働することにより実行される。スリップ発電制御の詳細な内容については、後述する。
【0047】
要求発電量決定部47は、停車発電モード、第一スリップ発電モード、第二スリップ発電モード、又はパラレル発電モード時に、回転電機12が発電すべき電力量である要求発電量Gdを決定する機能部である。本実施形態では、車両6に備えられる補機類であって電力を用いて駆動されるもの(例えば、車載用エアコンディショナーのコンプレッサ、パワーステアリング用のオイルポンプ、内燃機関11の冷却水のウォーターポンプ、灯火類等)は、基本的に回転電機12が発電した電力によって駆動されるものとされている。そのため、本実施形態では、要求発電量決定部47は、車両6に備えられる補機の定格消費電力に基づいて要求発電量Gdを決定する。すなわち、要求発電量決定部47は、各補機について予め設定されている定格消費電力を積算して得られる合計定格消費電力として、要求発電量Gdを決定する。本例では、このようにして決定される要求発電量Gdも、車両6に搭載された補機の種別に応じて予め設定されている。決定された要求発電量Gdは、スリップ発電制御部46等に出力される。
【0048】
1−3.スリップ発電制御の内容
次に、スリップ発電制御部46を中核として実行されるスリップ発電制御の具体的内容について、
図3を参照して説明する。スリップ発電制御は、入力軸Iが内燃機関11により駆動されていると共に、少なくとも発進クラッチCSのスリップ係合状態で回転電機12に発電を行わせる制御であり、本例では
図3における時刻T02〜T08の期間に実行されている。また本実施形態では、出力軸Oの回転速度が所定値以下の状態におけるスリップ発電制御を特に「特定スリップ発電制御」としており、この特定スリップ発電制御は、本例では
図3における時刻T02〜T06の期間に実行されている。なお、本実施形態では、スリップ発電制御のうち、特定スリップ発電制御を除いた制御を「通常スリップ発電制御(時刻T06〜T08)」としている。
【0049】
なお、以下の説明では、発進クラッチCSの両側の係合部材間の差回転速度、すなわち入力軸Iと中間軸Mとの間の回転速度の差を「第一差回転速度ΔN1」とする。スリップ発電制御部46は、入力軸回転速度センサSe1により検出される入力軸Iの回転速度から中間軸回転速度センサSe2により検出される中間軸Mの回転速度を減算して得られる減算値として、第一差回転速度ΔN1を取得可能である。発進クラッチCSの直結係合状態では、入力軸Iと中間軸Mとが一体回転するので第一差回転速度ΔN1がない(第一差回転速度ΔN1がゼロの)状態となる。一方、発進クラッチCSのスリップ係合状態又は解放状態では、入力軸Iと中間軸Mとが相対回転するので第一差回転速度ΔN1を有する(第一差回転速度ΔN1がゼロより大きい)状態となる。
【0050】
また、第一クラッチC1の両側の係合部材間の差回転速度、すなわち中間軸Mと変速中間軸Sとの間の回転速度の差を「第二差回転速度ΔN2」とする。スリップ発電制御部46は、中間軸回転速度センサSe2により検出される中間軸Mの回転速度から出力軸回転速度センサSe3により検出される出力軸Oの回転速度に基づいて定まる変速中間軸Sの回転速度を減算して得られる減算値として、第二差回転速度ΔN2を取得可能である。なお、変速中間軸Sの回転速度は、出力軸Oの回転速度と変速機構13において形成された変速段の変速比との積算値として算出可能である(以下同様)。第一クラッチC1の直結係合状態では、中間軸Mと変速中間軸Sとが一体回転するので第二差回転速度ΔN2がない(第二差回転速度ΔN2がゼロの)状態となる。一方、第一クラッチC1のスリップ係合状態又は解放状態では、中間軸Mと変速中間軸Sとが相対回転するので第二差回転速度ΔN2を有する(第二差回転速度ΔN2がゼロより大きい)状態となる。
【0051】
本実施形態においては、スリップ発電制御は、所定の低車速状態で実行される。ここで、本実施形態では、変速機構13において第1速段が形成されている場合において発進クラッチCS及び第一クラッチC1の双方が直結係合状態であると仮定した場合における入力軸I(内燃機関11)の推定回転速度が、所定の第一判定閾値X1以下となる状態を「低車速状態」としている。本例では、出力軸回転速度センサSe3により検出される出力軸Oの回転速度と第1速段の変速比との乗算値として導出される中間軸M及び入力軸Iの推定回転速度が第一判定閾値X1以下である場合に、低車速状態であると判定される。入力軸Iと一体回転するように駆動連結された内燃機関11は、所定の内燃機関トルクTeを出力して自立運転を継続するためには一定速度以上で回転する必要がある。また、こもり音や振動の発生を抑制する点からも、内燃機関11は一定速度以上で回転する必要がある。そのため、上記の点を考慮して第一判定閾値X1が設定されている。このような第一判定閾値X1は、例えば800〜1200〔rpm〕等の値とすることができる。
【0052】
また、本実施形態においては、低車速状態のうちでも更に低速の特定低車速状態では、特定スリップ発電制御が実行される。ここで、本実施形態では、変速機構13において第1速段が形成されている場合において第一クラッチC1が直結係合状態であると仮定した場合における中間軸M(回転電機12)の推定回転速度が、第一判定閾値X1未満の所定の第二判定閾値X2未満となる状態を「特定低車速状態」としている。本例では、出力軸回転速度センサSe3により検出される出力軸Oの回転速度と第1速段の変速比との乗算値として導出される中間軸Mの推定回転速度が第二判定閾値X2以下である場合に、特定低車速状態であると判定される。中間軸Mと一体回転するように駆動連結された回転電機12は、出力可能なトルク(正トルク及び負トルクの双方を含む)の大きさには上限があるので、一定の発電量(ここでは、要求発電量決定部47により決定される要求発電量Gd)を確保するためには一定速度以上で回転する必要がある。そのため、上記の点を考慮して第二判定閾値X2が設定されている。このような第二判定閾値X2は、例えば400〜800〔rpm〕等の値とすることができる。本実施形態では、特定低車速状態が本発明における「第一特定走行状態」に相当し、特定低車速状態を除く低車速状態が本発明における「第二特定走行状態」に相当する。また、
第一判定閾値X1が本発明における「必要回転速度」に相当
し、第二判定閾値X2が本発明における「基準回転速度」に相当する。
【0053】
本実施形態では、例えば車両6の発進時等、車速がゼロに近い極低車速での走行時は、上記の中間軸Mの推定回転速度が第二判定閾値X2未満となって特定スリップ発電制御が実行される。車速の上昇に伴って上記の中間軸M及び入力軸Iの推定回転速度が第二判定閾値X2以上且つ第一判定閾値X1未満となると、通常スリップ発電制御が実行される。以下では、停車中に発電を行っている状態から車両6が発進する場合を一例として、各制御内容について時間軸に沿って順に説明する。
【0054】
1−3−1.停車発電制御(時刻T01〜T02)
停車発電制御は、停車発電モードの選択時に実行される制御である。
図2に示すように、停車発電モードの選択時には、発進クラッチCSが直結係合状態、第一クラッチC1が解放状態とされ、内燃機関トルクTeにより回転電機12が発電する。停車発電制御中は、内燃機関11はトルク制御され、回転電機12は回転速度制御される。
図3に示す例では、一体回転する内燃機関11及び回転電機12はアイドル回転数Niで回転している。また、要求発電量決定部47により決定される要求発電量Gdとアイドル回転数Niとに基づいて、回転電機12に提供されるトルク(発電トルクTg)が決定され、発電トルクTgに一致する内燃機関トルクTeを出力するように内燃機関11が制御される。このようにして停車発電制御中は、内燃機関トルクTeの全部により、回転電機12は要求発電量Gdを賄うだけの発電を行っている。なお、要求発電量Gdに応じて、一体回転する内燃機関11及び回転電機12の回転速度を変更しても良い。
【0055】
また、停車発電制御中は、発進クラッチCSは直結係合状態に維持され、第一差回転速度ΔN1がない状態に維持されている。一方、第一クラッチC1は解放状態に維持され、駆動力の伝達が遮断された状態で大きな第二差回転速度ΔN2を有している。なお、このときの第二差回転速度ΔN2は、一体回転する内燃機関11及び回転電機12の回転速度であるアイドル回転数Niに等しくなっている。この状態で、ドライバにより発進操作(本例では、アクセルペダル17の踏み込みに伴うアクセル開度上昇)がなされると、スリップ発電制御が開始される。
【0056】
1−3−2.特定スリップ発電制御(時刻T02〜T06)
スリップ発電制御の初期段階では、第一スリップ発電モードが選択されて特定スリップ発電制御が実行される。
図2に示すように、第一スリップ発電モードの選択時には、発進クラッチCS及び第一クラッチC1の双方がスリップ係合状態とされ、内燃機関トルクTeにより回転電機12が発電しつつ車両6が走行する。
図3に示すように、本実施形態では、特定スリップ発電制御では、プレ制御領域DP、第一制御領域D1、及び第二制御領域D2の3つの制御領域をこの順に有する。
【0057】
プレ制御領域DP(時刻T02〜T03)は、実質的な特定スリップ発電制御を開始するための準備段階の制御領域である。プレ制御領域DPでは、第一クラッチC1への油圧指令値Pc1が一旦予備充填圧に対応する値とされてから解放境界圧に対応する値に維持される。また、発進クラッチCSへの油圧指令値Pcsが解放境界圧よりも大きい値から一定の時間変化率で次第に低下される。プレ制御領域DPでは、第一差回転速度ΔN1はゼロの状態に維持され、第二差回転速度ΔN2はアイドル回転数Niに等しい状態に維持される。この状態でスリップ発電制御部46は、発進クラッチCSがスリップ係合状態となったか否か、すなわち第一差回転速度ΔN1がゼロよりも大きくなったか否かを監視している。発進クラッチCSがスリップ係合状態となると、実質的な特定スリップ発電制御(本実施形態においては、第一制御領域D1及び第二制御領域D2)が開始される。
【0058】
第一制御領域D1及び第二制御領域D2では、内燃機関11はトルク制御され、回転電機12は回転速度制御され、発進クラッチCS及び第一クラッチC1はトルク制御される。
【0059】
第一制御領域D1(時刻T03〜T04)では、回転電機制御部43は、回転電機12に目標回転速度Nmtを指令して、回転電機12の回転速度をその目標回転速度Nmtに追従させる回転速度制御を実行する。より具体的には、回転電機制御部43は、回転電機12の回転速度を目標回転速度Nmtに一致させるように目標トルクを増減させるフィードバック制御を行う。本実施形態では、この回転電機12の回転速度制御における目標回転速度Nmtは、主に入力軸I及び出力軸Oの回転速度、要求発電量Gd、並びに回転電機12の発熱量及びその冷却性能に基づいて決定される。
【0060】
本実施形態では、回転電機12の目標回転速度Nmtは、少なくとも入力軸Iの回転速度よりも低く且つ出力軸Oの回転速度よりも高い値に設定される。これにより、発進クラッチCS及び第一クラッチC1の双方のスリップ係合状態を適切に実現できる。また、目標回転速度Nmtは、少なくとも上述した第二判定閾値X2以上の値に設定される。これにより、回転電機12が出力可能な負の回転電機トルクTm(<0)の大きさの制約によらずに、要求発電量Gdを適切に確保できる。
【0061】
また、
図4は、目標回転速度Nmtの決定手法の一例を示す図である。この
図4には、回転電機12の回転速度に応じた、経過時間と回転電機12(ロータやステータコイル等を含む)の温度との関係を示している。この図に示すように、時間の経過と共に回転電機12の温度は上昇し、十分な時間が経過することにより回転電機12は所定温度に収束する。その際、回転電機12の回転速度が低くなるに従って回転電機12の収束温度は高くなる。これは、回転電機12の発熱量は回転電機12のステータコイルを流れる電流に比例するところ、一定の発電量(ここでは、要求発電量Gd)を確保するためには回転電機12の回転速度が低くなるに従って負の回転電機トルクTmの絶対値(発電トルクTg)が大きくなり、回転電機12のステータコイルを流れる電流値が高くなるからである。なお、回転速度を特定の値とした場合、回転電機12に供給される冷却媒体(油、空気等)の温度及び量等に基づいて決まる回転電機12の冷却性能に応じて、回転電機12の収束温度は異なる。また、回転電機12の収束温度は、回転電機12の体格等によっても異なる。
【0062】
ここで、回転電機12には、当該回転電機12を連続動作可能とするために許容される許容上限温度U1が設定されている。この許容上限温度U1は、回転電機12の過熱による性能低下(例えば、回転電機12のロータが永久磁石埋込型の構成を備えている場合には、永久磁石の不可逆減磁等)を防止し得る温度に設定されている。本実施形態では、この回転電機12の許容上限温度U1に基づいて目標回転速度Nmtが決定される。すなわち、その状態を維持したまま十分な時間が経過したとしても回転電機12の収束温度が許容上限温度U1を超えることがないような回転電機12の回転速度が算出され、その値が目標回転速度Nmtとして決定される。回転電機制御部43は、第一制御領域D1では、上記のようにして決定された目標回転速度Nmtを回転電機12に指令して回転速度制御を実行し、回転電機12の回転速度をその目標回転速度Nmtに追従させる。
【0063】
なお、第一制御領域D1では、回転電機12の回転速度は目標回転速度Nmtとは不一致の状態となっている。そのため第一制御領域D1では、回転電機トルクTmは、その絶対値が、要求発電量Gdに基づいて導出される発電トルクTgと、回転電機12の回転速度を目標回転速度Nmtに向かって低下させるためのイナーシャトルクTiとの和に一致するように設定される。なお、発電トルクTgは、要求発電量Gdを目標回転速度Nmtで除算した値として導出される。このようにして、回転電機制御部43は、第一制御領域D1では、発電トルクTgとイナーシャトルクTiとの和に対応する負の回転電機トルクTm(<0)を出力するように回転電機12を制御する。
【0064】
第一制御領域D1では、内燃機関制御部31は、内燃機関11に目標トルクを指令して、内燃機関トルクTeをその目標トルクに追従させるトルク制御を実行する。ここで、本実施形態では、内燃機関11の目標トルク(内燃機関トルク指令)は、車両要求トルクTdと発電トルクTgとの和に設定される。よって、内燃機関制御部31は、内燃機関11に車両要求トルクTdと発電トルクTgとの和に等しい目標トルクを指令してトルク制御を実行し、車両要求トルクTdと発電トルクTgとの和に等しい内燃機関トルクTe(=Tg+Td)を内燃機関11に出力させる(第二制御領域D2においても同様)。なお、図示の例における第一制御領域D1では、ドライバによるアクセルペダル17の踏み込み操作に応じて車両要求トルクTdが増大し、これらからやや遅れて内燃機関トルクTeが増大している。
【0065】
第一制御領域D1では、発進クラッチ動作制御部44は、発進クラッチCSの伝達トルク容量Tcsを所定の目標伝達トルク容量とするトルク制御を実行する。本実施形態においては、伝達トルク容量Tcsの目標値は、内燃機関トルクTeに一致するように設定される。すなわち、発進クラッチ動作制御部44は、第一制御領域D1では、発進クラッチCSの伝達トルク容量Tcsを内燃機関トルクTe(すなわち、車両要求トルクTdと発電トルクTgとの和)に応じた容量とするように発進クラッチCSの係合圧を制御する。発進クラッチCSをこのようにトルク制御することで、入力軸Iに伝達される内燃機関トルクTeの全部が、発進クラッチCSを介して回転電機12側に伝達されることになる(第二制御領域D2においても同様)。
【0066】
第一制御領域D1では、第一クラッチ動作制御部45aは、第一クラッチC1の伝達トルク容量Tc1を所定の目標伝達トルク容量とするトルク制御を実行する。本実施形態においては、伝達トルク容量Tc1の目標値は、要求トルク決定部42により決定される車両要求トルクTdに一致するように設定される。すなわち、第一クラッチ動作制御部45aは、第一制御領域D1では、第一クラッチC1の伝達トルク容量Tc1を車両要求トルクTdに応じた容量とするように第一クラッチC1の係合圧を制御する。このように、第一クラッチC1をトルク制御することで、中間軸Mに伝達された内燃機関トルクTeのうち、車両要求トルクTdに相当する大きさのトルクが、第一クラッチC1を介して車輪15側となる出力軸Oに伝達されることになる(第二制御領域D2においても同様)。
【0067】
図3から理解できるように、この第一制御領域D1では、発進クラッチCSのスリップ係合状態で第一差回転速度ΔN1が次第に増大されると共に、第二差回転速度ΔN2が次第に減少される。また、第一制御領域D1では、スリップ発電制御部46は、回転電機12と一体回転する中間軸Mの回転速度が上記の目標回転速度Nmtに到達したか否かを監視している。第一制御領域D1は、中間軸Mの回転速度が目標回転速度Nmtに到達するまで実行され、中間軸Mの回転速度が目標回転速度Nmtに等しくなると、次に第二制御領域D2が開始される。
【0068】
第二制御領域D2(時刻T04〜T06)では、第一制御領域D1に引き続き、回転電機制御部43は、回転電機12に目標回転速度Nmtを指令して、回転電機12の回転速度をその目標回転速度Nmtに追従させる回転速度制御を実行する。但し、第二制御領域D2では回転電機12の回転速度は既に目標回転速度Nmtに一致しているので、第一制御領域D1におけるイナーシャトルクTiは解消されて発電トルクTgに対応する負の回転電機トルクTm(<0)のみを出力する状態となる。また、第二制御領域D2では、内燃機関制御部31、発進クラッチ動作制御部44、及び第一クラッチ動作制御部45aは、内燃機関11、発進クラッチCS、及び第一クラッチC1を、それぞれ第一制御領域D1と同様の態様で制御する。
【0069】
すなわち、第二制御領域D2では、発電トルクTgと車両要求トルクTdとの和に一致する内燃機関トルクTeを出力するように内燃機関11が制御され、発進クラッチCSの伝達トルク容量Tcsが発電トルクTgと車両要求トルクTdとの和に一致するように発進クラッチCSが制御される。また、目標回転速度Nmtで回転するように回転電機12が制御されると共に回転電機12に発電トルクTgが提供され、回転電機12は要求発電量Gdを賄う分だけの発電を行う。更に、第一クラッチC1の伝達トルク容量Tc1が車両要求トルクTdに一致するように第一クラッチC1が制御される。これにより、内燃機関トルクTeを利用して要求発電量Gdを確保しつつ、第一クラッチC1及び出力軸Oを介して車両要求トルクTdを車輪15に伝達させて車両6を適切に走行させることができる。
【0070】
また、本実施形態では、特定スリップ発電制御中(プレ制御領域DPを除く)は、発進クラッチCS及び第一クラッチC1の双方がスリップ係合状態に維持されるので、入力軸Iの回転速度及び出力軸Oの回転速度がそれぞれ同一の条件下では、発進クラッチCSの両側の係合部材間の第一差回転速度ΔN1、及び第一クラッチC1の両側の係合部材間の第二差回転速度ΔN2をそれぞれ小さくすることができる。よって、例えば発進クラッチCSが直結係合状態とされて第一クラッチC1のみがスリップ係合状態とされる場合と比較して、第一クラッチC1の発熱量を低減することができる。これにより、第一クラッチC1が過熱するのを抑制して当該第一クラッチC1の耐久性を向上させることができる。なお、この場合、発進クラッチCSもスリップ係合状態とされるので、発進クラッチCSの発熱量は、当該発進クラッチCSが直結係合状態とされる場合と比較して増加する。しかし、本実施形態では、発進クラッチCSは、例えばその全体がクラッチハウジング内において常時油に浸っている構成とされる等、冷却性能及び耐熱性の少なくとも一方が第一クラッチC1よりも高くなるように構成されているので、特に問題はない。
【0071】
図3から理解できるように、この第二制御領域D2では、出力軸Oの回転速度及びこれに比例する変速中間軸Sの回転速度が上昇する状態で、中間軸Mの回転速度が一定の値に設定された目標回転速度Nmtに維持されて第二差回転速度ΔN2が次第に減少される。なお、本例では、入力軸Iの回転速度の変化に応じて、第一差回転速度ΔN1は当初増大し、ほぼ一定に維持された後、次第に減少される。また、第二制御領域D2では、スリップ発電制御部46は、第二差回転速度ΔN2がなくなったか(本例では、第二差回転速度ΔN2がゼロに近い所定値以下となった)否かを監視している。第二制御領域D2は、第二差回転速度ΔN2が所定値以下となるまで実行され、時刻T05において第二差回転速度ΔN2が所定値以下となると、第一クラッチ動作制御部45aは油圧制御装置25を介して第一クラッチC1への供給油圧を一定の時間変化率で次第に上昇させる。そして、第一クラッチ動作制御部45aは時刻T06において第一クラッチC1への供給油圧を完全係合圧までステップ的に上昇させて当該第一クラッチC1を定常的な直結係合状態とする。ここで、「定常的な直結係合状態」とは、係合装置に伝達されるトルクの変動によっても係合部材間のスリップが生じない係合圧で、係合装置の両側の係合部材が一体回転するように係合されている状態(完全係合状態)を表す。これにより、第一スリップ発電モードから第二スリップ発電モードへとモード遷移して第三制御領域D3が開始される。
【0072】
1−3−3.通常スリップ発電制御(時刻T06〜T08)
スリップ発電制御の後期段階では、第二スリップ発電モードが選択されて通常スリップ発電制御が実行される。
図2に示すように、第二スリップ発電モードの選択時には、発進クラッチCSがスリップ係合状態、第一クラッチC1が直結係合状態とされ、内燃機関トルクTeにより回転電機12が発電しつつ車両6が走行する。
図3に示すように、本実施形態では、通常スリップ発電制御中は第三制御領域D3の1つの制御領域を有する。
【0073】
第三制御領域D3(時刻T06〜T08)では、内燃機関11はトルク制御され、発進クラッチCSはトルク制御される。第三制御領域D3では、第一クラッチC1が直結係合状態とされるので、中間軸Mと変速中間軸Sとが一体回転する状態で、車速(又は出力軸Oの回転速度)に応じた回転速度で回転電機12が回転する。また、第三制御領域D3では、内燃機関制御部31及び発進クラッチ動作制御部44は、内燃機関11及び発進クラッチCSを、それぞれ第二制御領域D2と同様の態様で制御する。
【0074】
すなわち、第三制御領域D3では、発電トルクTgと車両要求トルクTdとの和に一致する内燃機関トルクTeを出力するように内燃機関11が制御され、発進クラッチCSの伝達トルク容量Tcsが発電トルクTgと車両要求トルクTdとの和に一致するように発進クラッチCSが制御される。また、目標回転速度Nmt以上の回転速度で回転する回転電機12に発電トルクTgが提供され、回転電機12は要求発電量Gdを超える分の発電を行う。
【0075】
図3から理解できるように、この第三制御領域D3では、第二差回転速度ΔN2がない状態で出力軸Oの回転速度が上昇して第一差回転速度ΔN1が次第に減少する。なお、第三制御領域D3では、第一クラッチC1の直結係合状態で第二差回転速度ΔN2がゼロに維持されるので、第一クラッチC1では発熱が生じないという利点がある。また、第三制御領域D3では、スリップ発電制御部46は、第一差回転速度ΔN1がなくなったか(本例では、第一差回転速度ΔN1がゼロに近い所定値以下となったか)否かを監視している。第三制御領域D3は、第一差回転速度ΔN1が所定値以下となるまで実行され、時刻T07において第一差回転速度ΔN1が所定値以下となると、発進クラッチ動作制御部44は油圧制御装置25を介して発進クラッチCSへの供給油圧を完全係合圧までステップ的に上昇させて当該発進クラッチCSを定常的な直結係合状態(完全係合状態)とする。これにより、その後遅滞なく第一差回転速度ΔN1がゼロとなって発進クラッチCSが直結係合状態となり、第二スリップ発電モードからパラレル発電モードへとモード遷移する。その後、パラレル発電モードで、内燃機関トルクTeにより発電を行いつつ車両6が走行する。
【0076】
1−4.スリップ発電制御を含む車両発進制御の処理手順
次に、本実施形態に係るスリップ発電制御の処理手順について、
図5及び
図6のフローチャートを参照して説明する。本例では、
図3のタイムチャートに対応させて、車両6の停車中に発電している状態から発進する際の車両制御(車両発進制御)における処理手順を示している。なお、
図5はその全体の処理手順を示すフローチャートであり、
図6は
図5のステップ#03におけるスリップ発電制御の詳細な処理手順を示すフローチャートである。以下に説明するスリップ発電制御を含む車両発進制御の各手順は、制御装置3の各機能部により実行される。各機能部がプログラムにより構成される場合には、制御装置3が備える演算処理装置は、上記の各機能部を構成するプログラムを実行するコンピュータとして動作する。
【0077】
本実施形態では、
図3及び
図5に示すように、時刻T01〜T02の期間、停車発電モードが選択されて車両6の停止状態で回転電機12が発電を行っている(ステップ#01)。停車発電モード中は、運転者による発進操作がなされたか否か、すなわち、本例ではアクセル開度検出センサSe4により検出されるアクセル開度が所定量以上まで上昇したか否かが判定されている(ステップ#02)。そして、時刻T02においてアクセル開度が上昇したことが判定されると(ステップ#02:Yes)、スリップ発電制御が実行される(ステップ#03)。
【0078】
スリップ発電制御ではまず第一スリップ発電モードが選択され、
図3及び
図6に示すように、時刻T02〜T03のプレ制御領域DPにおいて、第一クラッチC1への供給油圧が予備充填されると共に発進クラッチCSへの供給油圧が一定の時間変化率で次第に低下される(ステップ#11)。この状態で、第一差回転速度ΔN1がゼロよりも大きくなったか否かが判定されている(ステップ#12)。そして、時刻T03において第一差回転速度ΔN1の発生が判定されると(ステップ#12:Yes)、プレ制御領域DPを終了して第一制御領域D1が開始される。
【0079】
第一制御領域D1では、回転電機12の回転速度制御が実行される(ステップ#13)。ここでは、回転電機12の回転速度が目標回転速度Nmtに一致するまで(時刻T03〜T04)は、回転電機12は発電トルクTgに加えてイナーシャトルクTiをも出力するように制御される。また、車両要求トルクTdと発電トルクTgとの和に一致する内燃機関トルクTeを出力するように内燃機関11が制御され(ステップ#14)、発進クラッチCSの伝達トルク容量Tcsが内燃機関トルクTeに一致するように、すなわち車両要求トルクTdと発電トルクTgとの和に一致するように、発進クラッチCSの係合圧が制御される(ステップ#15)。また、第一クラッチC1の伝達トルク容量Tc1が車両要求トルクTdに一致するように第一クラッチC1の係合圧が制御される(ステップ#16)。この状態で、回転電機12と一体回転する中間軸Mの回転速度が目標回転速度Nmtに一致したか否かが判定されている(ステップ#17)。そして、時刻T04において中間軸Mの回転速度が目標回転速度Nmtに一致したことが判定されると(ステップ#17:Yes)、第一制御領域D1を終了して第二制御領域D2が開始される。
【0080】
第二制御領域D2では、回転電機12は目標回転速度Nmtで回転しつつ発電トルクTgに対応する負の回転電機トルクTm(<0)のみを出力するように制御される(ステップ#18)。また、第二制御領域D2では、第二差回転速度ΔN2が次第に減少する状態で、第二差回転速度ΔN2が所定値以下となったか否かが判定されている(ステップ#19)。そして、時刻T05において第二差回転速度ΔN2が所定値以下となったことが判定されると(ステップ#19:Yes)、時刻T05〜T06にかけて第一クラッチC1が完全係合状態とされ(ステップ#20)、第二制御領域D2を終了して第三制御領域D3が開始される。
【0081】
第三制御領域D3では第二スリップ発電モードが選択され、第一差回転速度ΔN1が次第に減少する状態で、第一差回転速度ΔN1が所定値以下となったか否かが判定されている(ステップ#21)。そして、時刻T07において第一差回転速度ΔN1が所定値以下となったことが判定されると(ステップ#21:Yes)、発進クラッチCSが直ちに完全係合状態とされ(ステップ#22)、時刻T08において第一差回転速度ΔN1が完全にゼロになると第三制御領域D3を終了すると共にスリップ発電制御を終了して、メインフローに戻る。その後、
図3及び
図5に示すようにパラレル走行モード(ここでは、パラレル発電モード)が選択されて、内燃機関トルクTeにより発電を行いつつ車両6を走行させる。
【0082】
2.第二の実施形態
本発明に係る制御装置の第二の実施形態について、図面を参照して説明する。
図7は、本実施形態に係るスリップ発電制御を実行する際の各部の動作状態の一例を示すタイムチャートである。本実施形態では、スリップ発電制御のうちの特定スリップ発電制御における具体的な制御内容が上記第一の実施形態と一部相違している。それ以外の構成に関しては、基本的には上記第一の実施形態と同様である。以下では、本実施形態に係る制御装置3について、上記第一の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、特に明記しない点については、上記第一の実施形態と同様とする。
【0083】
本実施形態においては、特定スリップ発電制御中の回転電機12の回転速度制御における目標回転速度Nmtが、主に入力軸I及び出力軸Oの回転速度、要求発電量Gd、並びに回転電機12の発熱量及びその冷却性能に加えて、更に第一クラッチC1の発熱量及びその冷却性能にも基づいて決定される。
【0084】
図8は、目標回転速度Nmtの決定手法の一例を示す図である。この
図8には、第一クラッチC1の両側の係合部材間の差回転速度(第二差回転速度ΔN2)の大きさに応じた、経過時間と第一クラッチC1の温度との関係を示している。この図に示すように、時間の経過と共に第一クラッチC1の温度は上昇し、十分な時間が経過することにより第一クラッチC1は所定温度に収束する。その際、第二差回転速度ΔN2が大きくなるに従って第一クラッチC1の収束温度は高くなる。これは、第一クラッチC1のスリップ係合状態での発熱量は、当該第一クラッチC1を介して伝達されるトルク(伝達トルク容量Tc1に等しい)と第二差回転速度ΔN2との積に比例するからである。なお、第二差回転速度ΔN2を特定の値とした場合、第一クラッチC1に供給される油の油温及び温量等に基づいて決まる第一クラッチC1の冷却性能に応じて、第一クラッチC1の収束温度は異なる。
【0085】
ここで、第一クラッチC1には、当該第一クラッチC1を連続動作可能とするために許容される許容上限温度U2が設定されている。この許容上限温度U2は、第一クラッチC1の過熱による性能低下(例えば、係合圧に対する伝達トルク容量Tc1の特性変化等)を防止し得る温度に設定されている。本実施形態では、この第一クラッチC1の許容上限温度U2に基づいて、第二差回転速度ΔN2の目標値である目標差回転速度ΔNtが決定される。すなわち、その状態を維持したまま十分な時間が経過したとしても第一クラッチC1の収束温度が許容上限温度U2を超えることがないような第二差回転速度ΔN2が算出され、その値が目標差回転速度ΔNtとして決定される。そして、少なくともそのようにして決定された目標差回転速度ΔNtに基づいて、目標回転速度Nmtが決定される。
【0086】
具体的には、本実施形態では
図7に示すように、出力軸回転速度センサSe3により検出される出力軸Oの回転速度から導出される変速中間軸Sの回転速度と目標差回転速度ΔNtとの和として、第一目標回転速度Nmt1が決定される。また、この第一目標回転速度Nmt1とは別に、上記第一の実施形態と同様にして回転電機12の許容上限温度U1に基づく目標回転速度が算出され、その値が第二目標回転速度Nmt2として決定される。そして、本実施形態では、第一目標回転速度Nmt1及び第二目標回転速度Nmt2のうちのいずれか小さい方を目標回転速度Nmtとして決定する。なお、車両6が発進した直後で出力軸Oの回転速度が極めて低い状態等では、第一目標回転速度Nmt1は第二目標回転速度Nmt2よりも小さくなる。回転電機制御部43は、第一制御領域D1では、上記のようにして決定された目標回転速度Nmt(第一目標回転速度Nmt1及び第二目標回転速度Nmt2を包括する概念)を回転電機12に指令して回転速度制御を実行し、回転電機12の回転速度をその目標回転速度Nmtに追従させる。
【0087】
本実施形態では、第一制御領域D1中における内燃機関11、回転電機12、発進クラッチCS、及び第一クラッチC1の制御内容は上記第一の実施形態と同様である。但し、本実施形態では、回転電機12の目標回転速度Nmtが上記のように決定されることに対応して、第一制御領域D1では、スリップ発電制御部46は、回転電機12と一体回転する中間軸Mの回転速度が上記の第一目標回転速度Nmt1に到達したか否かを監視している。言い換えれば、スリップ発電制御部46は、第二差回転速度ΔN2が減少している状態で、第二差回転速度ΔN2が目標差回転速度ΔNtに到達したか否かを監視している。第一制御領域D1は、第二差回転速度ΔN2が目標差回転速度ΔNtに到達するまで実行され、第二差回転速度ΔN2が目標差回転速度ΔNtに等しくなると、次に第四制御領域D4が開始される。
【0088】
第四制御領域D4(時刻T14〜T15)では、回転電機制御部43は、回転電機12に第一目標回転速度Nmt1を指令して、回転電機12の回転速度をその第一目標回転速度Nmt1に追従させる回転速度制御を実行する。すなわち、スリップ発電制御部46は、第四制御領域D4では、出力軸Oの回転速度及びこれに比例する変速中間軸Sの回転速度が上昇する状態で、当該出力軸Oの回転速度及び変速中間軸Sの回転速度の上昇に応じて中間軸Mの回転速度を上昇させ第二差回転速度ΔN2を目標差回転速度ΔNtに維持させる。また、第四制御領域D4では、スリップ発電制御部46は、回転電機12と一体回転する中間軸Mの回転速度が上記の第二目標回転速度Nmt2に到達したか否かを監視している。第四制御領域D4は、中間軸Mの回転速度が第二目標回転速度Nmt2に到達するまで実行され、中間軸Mの回転速度が第二目標回転速度Nmt2に等しくなると、次に第二制御領域D2が開始される。このように、本実施形態に係る特定スリップ発電制御では、第一制御領域D1と第二制御領域D2との間に第四制御領域D4を有する。すなわち、本実施形態に係る特定スリップ発電制御では、プレ制御領域DP、第一制御領域D1、第四制御領域D4、及び第二制御領域D2の4つの制御領域をこの順に有する。
【0089】
特定スリップ発電制御における第二制御領域D2や、通常スリップ発電制御における第三制御領域D3における制御内容は上記第一の実施形態と同様である。よって、ここでは詳細な説明は省略する。
【0090】
本実施形態でも、内燃機関トルクTeを利用して要求発電量Gdを確保しつつ、第一クラッチC1及び出力軸Oを介して車両要求トルクTdを車輪15に伝達させて車両6を適切に走行させることができる。また、第一クラッチC1の発熱量を低減することで過熱を抑制し、当該第一クラッチC1の耐久性を向上させることができる。また、本実施形態においては、第四制御領域D4において回転電機12の回転速度を一旦第一目標回転速度Nmt1に追従させ、第二差回転速度ΔN2を目標差回転速度ΔNtに維持することにより、比較的早期に第二差回転速度ΔN2を低下させている。従って、本実施形態に係る特定スリップ発電制御によれば、第一クラッチC1の発熱量を効果的に低減して当該第一クラッチC1の耐久性を良好に維持することができる。そして、回転電機12及び第一クラッチC1の双方の適切な保護を図りながら、低車速で車両6を走行させる場合等の特定の走行状態(特に、本実施形態における特定低車速状態)においても所望の要求発電量Gdを確保することができる。
【0091】
3.その他の実施形態
最後に、本発明に係る制御装置の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0092】
(1)上記の各実施形態においては、目標回転速度Nmtが、入力軸I及び出力軸Oの回転速度に加えて要求発電量Gd等にも基づいて決定される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、目標回転速度Nmtは、少なくとも入力軸Iの回転速度よりも低く且つ出力軸Oの回転速度よりも高い値とされていれば良く、当該範囲内の任意の値に設定される構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、例えば目標回転速度Nmtが、中間軸Mと一体回転するように駆動連結されたオイルポンプにより発進クラッチCS及び第一クラッチC1の双方に必要とされる供給油圧を確保可能な回転速度に設定される構成を採用することができる。このような構成を採用することにより、特定スリップ発電制御の第二制御領域D2において、目標回転速度Nmtで回転駆動されるオイルポンプにより、発進クラッチCS及び第一クラッチC1の双方に必要とされる供給油圧を確保することができる。この場合、車両6の駆動力源である内燃機関11及び回転電機12とは独立して動作可能な他の油圧源としての電動式オイルポンプの設置を省略して、駆動装置1の製造コストの低減を図ることができる。なお、発進クラッチCS及び第一クラッチC1を含む全ての係合装置に必要とされる供給油圧を確保することも考慮して目標回転速度Nmtを決定する構成としても好適である。
【0093】
(2)上記第一の実施形態においては、回転電機12を連続動作可能とするために許容される回転電機12の許容上限温度U1に基づいて目標回転速度Nmtが決定される場合を例として説明した。また、上記第二の実施形態においては、回転電機12の許容上限温度U1及び第一クラッチC1を連続動作可能とするために許容される第一クラッチC1の許容上限温度U2の双方に基づいて目標回転速度Nmtが決定される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えばインバータ装置27に当該インバータ装置27を連続動作可能とするために許容される許容上限温度U3が設定されている場合に、そのインバータ装置27の許容上限温度U3に基づいて目標回転速度Nmtが決定される構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、インバータ装置27が本発明における「制御器」に相当する。また、これらの許容上限温度U1,U2,U3のうちの任意の1つ又は任意の2つ以上の組み合わせに基づいて目標回転速度Nmtが決定される構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0094】
(3)上記第一の実施形態においては、目標回転速度Nmtが、入力軸I及び出力軸Oの回転速度、要求発電量Gd、並びに回転電機12の発熱量及びその冷却性能に基づいて決定される場合を例として説明した。また、上記第二の実施形態においては、目標回転速度Nmtが、更に第一クラッチC1の発熱量及びその冷却性能にも基づいて決定される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、目標回転速度Nmtが、これらに加えて更に発進クラッチCSの発熱量及びその冷却性能にも基づいて決定される構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。上記の各実施形態のように、特定スリップ発電制御中、発進クラッチCSの伝達トルク容量Tcsが第一クラッチC1の伝達トルク容量Tc1よりも発電トルクTg相当分だけ大きい値とされる構成では、差回転速度ΔN1,ΔN2が同一の条件下では発進クラッチCSの方が発熱量が大きくなる。一方、上記の各実施形態では発進クラッチCSは第一クラッチC1と比較して冷却性能又は耐熱性が高い。よって、これらの点も考慮して、発進クラッチCS及び第一クラッチC1の双方の過熱をバランス良く抑制できるような目標回転速度Nmtが決定される構成とすると好適である。
【0095】
(4)上記第二の実施形態においては、第一クラッチC1を連続動作可能とするために許容される第一クラッチC1の許容上限温度U2に基づいて目標差回転速度ΔNtが決定され、この目標差回転速度ΔNtに基づいて第一目標回転速度Nmt1が決定される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば車両6に備えられる補機の消費電力(例えば、各補機の定格消費電力に基づいて予め設定された合計定格消費電力等)に基づいて目標差回転速度ΔNt及び第一目標回転速度Nmt1が決定される構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0096】
(5)上記の各実施形態においては、車両6の走行中に当該車両6に備えられる補機が消費すると予測される電力を賄える電力量を容易に確保することを可能とするべく、要求発電量決定部47が、各補機の定格消費電力に基づいて予め設定された合計定格消費電力として要求発電量Gdを決定する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば車両6に備えられる補機の、車両6の走行中の実際の消費電力である実消費電力に基づいて要求発電量Gdが設定される構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。このようにすれば、車両6の走行中に補機が実際に消費している電力を賄える電力量を確実に確保することができる。この場合、制御装置3は、車両6の走行中における補機の実消費電力を算出する実消費電力算出部を備える。実消費電力算出部は、車両6に備えられる補機のそれぞれの動作状態を監視して、各補機の実消費電力を算出する。実消費電力算出部は、例えばコンプレッサやポンプ類等に関しては、それらの駆動軸を駆動するためのトルク及び回転速度等に基づいて実消費電力を算出する。また、実消費電力算出部は、例えば灯火類に関しては、それらに供給される電流及び電圧等に基づいて実消費電力を算出する。そして、実消費電力算出部は、全ての補機についての実消費電力を積算することにより、補機全体の実消費電力を算出する。
【0097】
(6)上記の各実施形態においては、要求発電量決定部47が、各補機の定格消費電力に基づいて予め設定された合計定格消費電力をそのまま要求発電量Gdとして決定する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、上記のようにして決定される要求発電量Gdが、例えば蓄電装置28の蓄電量等に基づいて補正される構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0098】
(7)上記の各実施形態においては、特定スリップ発電制御の第一制御領域D1及び第二制御領域D2において、発進クラッチCSがトルク制御される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、発進クラッチCSが回転速度制御される構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。なお、発進クラッチCSの回転速度制御では、例えば入力軸Iと一体回転する内燃機関11の回転速度を一定に維持するように発進クラッチCSの係合圧が制御される。
【0099】
(8)上記の各実施形態においては、制御装置3による制御対象となる駆動装置1に備えられる「第一係合装置」としての発進クラッチCSや「第二係合装置」としての第一クラッチC1が、供給される油圧に応じて係合圧が制御される、油圧駆動式の係合装置とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、第一係合装置及び第二係合装置は、係合圧の増減に応じて伝達トルク容量を調整可能であれば良く、例えばこれらのうちの一方又は双方が、発生される電磁力に応じて係合圧が制御される、電磁式の係合装置として構成されることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0100】
(9)上記の各実施形態においては、制御装置3による制御対象となる駆動装置1において、変速機構13に備えられる複数の摩擦係合装置のうちの1つである変速用の第一クラッチC1が「第二係合装置」とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば変速機構13に備えられる他のクラッチ、ブレーキ等の摩擦係合装置が「第二係合装置」とされた構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。なお、第二係合装置が変速機構13内のブレーキとされる場合には、当該ブレーキの一方の係合部材には駆動装置ケース等の非回転部材が連結され、当該一方の係合部材の回転速度は常にゼロとなる。
【0101】
(10)上記の各実施形態においては、制御装置3による制御対象となる駆動装置1において、変速機構13に備えられる変速用の第一クラッチC1が「第二係合装置」とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、入力軸Iと出力軸Oとを結ぶ動力伝達経路上で回転電機12と出力軸Oとの間に設けられた係合装置であれば、変速機構13に備えられる変速用の係合装置とは別の係合装置を「第二係合装置」とすることも可能である。例えば
図9に示すように、回転電機12と変速機構13との間にトルクコンバータ21等の流体伝動装置を備える場合において、当該トルクコンバータ21が有するロックアップクラッチCLが「第二係合装置」とされた構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、制御装置3は、ロックアップクラッチCLの動作を制御するロックアップクラッチ動作制御部51を備えている。そして、上記の各実施形態における第一クラッチ動作制御部45aが第一クラッチC1の動作を制御するのと同様の態様で、ロックアップクラッチ動作制御部51がロックアップクラッチCLの動作を制御することで、上記の各実施形態で説明した各種の作用効果を得ることが可能である。
【0102】
(11)或いは、例えば
図10に示すように、回転電機12と変速機構13との間に設けられる伝達クラッチCTが「第二係合装置」とされた構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、制御装置3は、伝達クラッチCTの動作を制御する伝達クラッチ動作制御部52を備えている。そして、上記の各実施形態における第一クラッチ動作制御部45aが第一クラッチC1の動作を制御するのと同様の態様で、伝達クラッチ動作制御部52が伝達クラッチCTの動作を制御することで、上記の各実施形態で説明した各種の作用効果を得ることが可能である。
【0103】
(12)なお、制御装置3による制御対象となる駆動装置1において、ロックアップクラッチCL又は伝達クラッチCTが「第二係合装置」とされた構成では、変速機構13を、例えば変速比を無段階に変更可能な自動無段変速機構や、変速比の異なる複数の変速段を手動で切替可能に備えた手動有段変速機構、固定変速比(「1」を含む)の変速段を1つだけ有する固定変速機構等として構成することも可能である。また、入力軸Iと出力軸Oとを結ぶ動力伝達経路上に、少なくとも発進クラッチCS、回転電機12、及び第二係合装置の順に設けられているのであれば、変速機構13の位置は任意に設定することが可能である。
更に、制御装置3による制御対象となる駆動装置1にロックアップクラッチCL又は伝達クラッチCTが備えられる場合であっても、当該ロックアップクラッチCL又は伝達クラッチCTではなく、変速機構13に備えられる変速用の第一クラッチC1等を「第二係合装置」として、上記の各実施形態で説明したスリップ発電制御を実行する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0104】
(13)上記の各実施形態においては、変速機構13が、複数の摩擦係合装置を備えると共に変速比の異なる複数の変速段(変速形態の一種)を切替可能に有する自動有段変速機構として構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、変速機構13としては少なくとも1つの摩擦係合装置を備えると共に複数の変速形態を切替可能なものとして構成されていれば良く、当該摩擦係合装置を選択的に駆動連結することにより前進段(変速形態の一種)と後進段(変速形態の一種)とが切替可能な機構として変速機構13が構成されていることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、変速機構13において、当該摩擦係合装置とは無関係に変速比が変更可能に構成されていても好適である。
【0105】
(14)上記の各実施形態においては、制御装置3が、主に内燃機関11を制御するための内燃機関制御ユニット30と、主に回転電機12、発進クラッチCS、及び変速機構13を制御するための駆動装置制御ユニット40とを備えている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば単一の制御装置3が内燃機関11、回転電機12、発進クラッチCS、及び変速機構13等の全てを制御する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。或いは、制御装置3が、内燃機関11、回転電機12、及びそれ以外の各種構成、を制御するためのそれぞれ個別の制御ユニットを備える構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、上記の各実施形態で説明した機能部の割り当ては単なる一例であり、複数の機能部を組み合わせたり、1つの機能部をさらに区分けしたりすることも可能である。
【0106】
(15)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載されていない構成に関しては、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。