(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る液体塗布装置の例として、フラックス塗布装置100及びフラックス塗布装置100によって形成されるフラックスコートプリフォームはんだの実施の形態について説明する。
【0021】
[フラックス塗布装置100の構成例]
図1に示すフラックス塗布装置100は、一例として所定の幅を有する長尺状に成形された被覆対象物であるはんだの表面に、均一膜厚で液体のフラックス3を塗布する装置である。はんだの搬送方向に対して、長尺状に成形されたはんだを繰り出し(供給)、フラックス槽30に投入する側、すなわち、図中左側が上流である。一方、フラックス槽30から排出し、はんだを巻き取る側、すなわち、右側が下流である。はんだは、上流から下流に搬送される。
【0022】
フラックス塗布装置100は、はんだ供給部1、はんだ9aにフラックス3(図中梨地)を塗布する液体塗布室2、フラックス3塗布後のはんだ9を搬送する搬送部4、はんだ9の搬送速度を計測するレーザ・センサ63、搬送されたはんだ9を巻き取る巻取り部6、及びフラックス塗布装置100の各動作を制御する制御部5を備える。フラックス塗布装置100には、フラックス3塗布後のはんだ9の膜厚を測定する膜厚計40を設けてもよい。はんだ9aは、はんだ供給部1で供給され、液体塗布室2内でフラックス3を塗布されてはんだ9となり、レーザ・センサ63、搬送部4を経由して巻取り部6で巻き取られる。本例では、このはんだ9、9aの搬送を行う部材を搬送手段とする。
【0023】
はんだ供給部1は、例えば、ロール状にはんだ9aが巻きつけられた繰り出しローラー11を有する。
【0024】
繰り出しローラー11は、はんだ9aが繰り出される際にはんだ9aにはんだの搬送方向逆側に負荷(バックテンション)を掛ける手段であり、所定の速度で搬送されるはんだ9a、9に所定のテンションを付与するためのものである。
そのために、繰り出しローラー11には予め設定されたトルクが付与されており、一例として公知のパウダーブレーキを用いることができる。また、繰り出しローラー11には、金属ローラーや、耐熱性のゴムローラー、炭素ローラー、樹脂ローラー等のローラー部材を使用することができる。なお、本例の場合、繰り出しローラー11はそれ自体では駆動源を持たずに、搬送手段の他の駆動源によって従動されつつ、パウダーブレーキ等の手段によってはんだ9aにバックテンションを付与するものであるが、
図1に示すように、繰り出しモーター11aで駆動するようにしても良い。そのように構成した場合には、繰り出しローラー11に巻きつけられたはんだ9aを繰り出しローラー11に対するはんだ9aの巻径(巻量)に拘わらず周速度一定で繰り出すように予めプログラムされるとともに、後述するレーザ・センサ63ではんだ9、9aの搬送速度を測定し、一定の搬送速度または所定のバックテンションをはんだ9、9aに付与するために一定の搬送速度より若干遅い搬送速度となるように後述する制御手段により、はんだ9aの繰り出し速度を繰り出しモーター11aに命令するようにすれば良い。
【0025】
はんだ9、9aの搬送速度が変わると、はんだ9aに塗布されるフラックス3の量が変わるため、搬送速度にムラがあると、はんだ9aに均一の厚さでフラックス3が塗布されない。例えば、はんだ9aの搬送速度が速くなると、フラックス3がはんだ9aに厚く塗布される。また、はんだ9aの搬送速度が遅くなると、フラックス3がはんだ9aに薄く塗布される。すなわち、はんだ9aに均一のフラックス3を塗布するには、はんだ9、9aを定速で搬送する必要がある。
【0026】
制御部5が、レーザ・センサ63ではんだ9、9aの搬送速度を測定し、一定の搬送速度となるようにはんだ9aの繰り出しローラー11のトルクを制御するようしても良い。
【0027】
液体塗布室2は、筐体を成している。液体塗布室2の上流側(図中左)の壁の下方には、はんだ9aを搬入するための搬入口38を設ける。液体塗布室2の下流側(図中右)の壁の上方は、搬出口39を設ける。搬出口39を境にした液体塗布室2の内外にかけて、はんだ9を搬送部4に搬出するための搬送ローラー41を設ける。液体塗布室2の内部には、はんだ9の通る順(図中の下から上)に、フラックス槽30、加熱乾燥炉20、遮熱エアカーテン24、排気口25、クーラー26、はんだ用温度センサ27、室内温度センサ28及びはんだ用の引き上げローラー37を備える。液体塗布室2の外部には、操作部14、表示装置15等のユーザ・インタフェースを備える。
【0028】
フラックス槽30には、有機酸等の活性剤成分と溶剤(イソプロピル・アルコール等)等を含む液状のフラックス3が入れられる。フラックス槽30は、はんだ9aをフラックス3に浸漬してはんだ9aの表面にフラックス3を塗布する浸漬塗布手段であって、本例の場合、その断面は、長方形の下2角を左右対称な斜辺で切り落とした六角形をしている。この形状としたのは、フラックス槽30内に貯留するフラックス3の量を削減するためであるが、これに限らず、長方形や正方形であってもよい。
【0029】
フラックス槽30には、図示しないチラー及びヒーターが接続される。チラーとヒーターの稼動が制御されることにより、フラックス3の温度は、一例として常温の25℃程度に保たれる。フラックス3の温度が変化すると、粘度が変化するので、はんだ9aへのフラックス塗布量が変化してしまい、はんだ9aに塗布するフラックス3が不均一な膜厚となる。フラックス3を25℃程度の一定温度に保つのは、これを防ぐためである。フラックス3の温度を一定に保つことで、フラックス3を安定した状態で貯留することができる。
【0030】
また、フラックス3の揮発性成分が揮発すると比重が変化する。この比重の変化によってもはんだ9aへの塗布量が変化してしまい、はんだ9aに塗布するフラックス3が不均一な膜厚となる原因となるから、フラックス槽30内のフラックス3の比重管理も重要である。
【0031】
この例で、フラックス槽30の上部には、上蓋32が設けられており、上蓋32には、開口部33、34が設けられる。開口部33は、はんだ9aのフラックス槽30への入口部を構成し、開口部34は、はんだ9のフラックス槽30への出口部を構成する。
【0032】
上蓋32の左上には、従動式の搬送ローラー31が設けられる。搬送ローラー31は、はんだ9aがフラックス槽30に進入する際に上蓋32やフラックス槽30等に接触しないように、はんだ9aの進行方向を変える。
【0033】
フラックス槽30の内部には、はんだ9の搬送に従動する搬送ローラー36が設けられる。軸受部材36aが、フラックス槽30の上蓋32から懸垂する形態で設けられ、搬送ローラー36を軸支する。搬送ローラー36は、フラックス槽30に浸漬したはんだ9の搬送方向を、下方向から上方向にUターンさせる。搬送ローラー36によって上向きに搬送方向を変えられたはんだ9は、接点36bから搬送ローラー36から離れる。
【0034】
引き上げローラー37は、液体塗布室2内の天井部から軸受部材37aが懸垂する形態で設けられる。引き上げローラー37は、はんだ9の搬送に従動するローラーである。引き上げローラー37は、フラックス槽30に浸漬したはんだ9を垂直に引き上げるため、搬送ローラー36の上部に設けられる。接点36bから搬送ローラー36を離れたはんだ9は、引き上げローラー37との接点37bから引き上げられる。接点37bは、接点36bの鉛直上向きに位置する。
【0035】
搬送ローラー36と引き上げローラー37は、浸漬塗布手段であるフラックス槽30に浸漬し、フラックス3を塗布されたはんだ9をフラックス3の液面に対して垂直に引き上げる。
【0036】
加熱乾燥炉20は、フラックス3を塗布されたはんだ9を加熱・乾燥する乾燥手段である。加熱乾燥炉20は、フラックス槽30の上方に設けられる縦長の筐体であり、加熱乾燥炉20の天井部と底部の中心には、はんだ9の通路孔20a、20bを有する。フラックス3を塗布されたはんだ9は、通路孔20bから加熱乾燥炉20内に進入し、加熱乾燥炉20内で加熱・乾燥され、通路孔20aから排出される。
【0037】
加熱乾燥炉20の加熱温度は、フラックス3に含まれる溶剤を揮発させるために90〜110℃に保たれる。加熱乾燥炉20の筐体の壁内には、図示しない断熱材が備えられる。この断熱材により、熱を逃さず、効率良くはんだ9を加熱乾燥することができる。
【0038】
加熱乾燥炉20は、ダクト22を介して液体塗布室2の外に設置されたヒーター21と接続している。ヒーター21は、ダクト22を介して熱風を加熱乾燥炉20に送る。熱風がはんだ9に直接当たってフラックス3の膜厚を変えないようにするため、ダクト22の吹出口には、防風壁23が取り付けられている。
【0039】
遮熱エアカーテン24は、加熱乾燥炉20から排出する熱気及び揮発した溶剤を遮って、遮熱エアカーテン24よりも上部へ流れることを防止する。遮熱エアカーテン24は、加熱乾燥炉20の上方に、はんだ9の通路を中心として左右に設けられる。遮熱エアカーテン24は、通路孔20aから出る加熱された気体に向けて(図中白抜き矢印の方向)空気を送る。この気圧は、一例として380L/min、0.56MPa程度である。
【0040】
クーラー26は、加熱乾燥されたはんだ9を冷却する冷却手段であって、遮熱エアカーテン24の上方にはんだ9の通路を中心として左右に1つずつ設けられる。クーラー26には、ヒートポンプ式のクーラーやボルテックスクーラー等が使用される。クーラー26は、搬送されるはんだ9(図中黒矢印の方向)に風を送り、加熱された状態のはんだ9を(例えば40℃以下に)冷却する。クーラー26の風圧は、一例として250L/Min、0.2MPa程度である。このようにフラックス3を加熱乾燥し、冷却する工程を経ることで、はんだ9aに塗布されたフラックス3が他の部材へ付着したり固着したりすることがなくなる。そのため、はんだ9aへのフラックス塗布を安定して継続することができる。
【0041】
排気口25は、乾燥手段である加熱乾燥炉20の外かつ液体塗布室2内の熱気を排出する排気手段である。排気口25は、排気用の孔が液体塗布室2の上下3箇所に設けられ、液体塗布室2の外に連通する。排気口25は、筐体の液体塗布室2内でかつ加熱乾燥炉20の外の熱気や揮発した溶剤等を、液体塗布室2外に排出するために設けられる。排気口25は、図示しないファン及びファンを回転させるモーターを備える。モーターが回転制御されるとファンが回転して、液体塗布室2内の熱気や揮発した溶剤等が吸い出される。排気口25には、防火ダンパーを備えても良い。排気口25は、3箇所に限られないが、複数箇所設けられることにより、加熱乾燥炉20内の気体の循環を促し、温度を均一に保つことができる。
【0042】
はんだ用温度センサ27は、非接触型のセンサであって、液体塗布室2内のクーラー26の上方に設けられる。はんだ用温度センサ27は、冷却後のはんだ9の表面温度を測定する。例えば、はんだ9の表面温度が40℃以上の場合、はんだ用温度センサ27は、制御部5に警報信号S27を送る。
【0043】
室内温度センサ28は、液体塗布室2内の上部に設けられる。室内温度センサ28は、液体塗布室2内の温度を測定する。例えば、液体塗布室2内の温度が60℃以上の場合、室内温度センサ28は、制御部5に警報信号S28を送る。
【0044】
操作部14は図示しないテンキーやタッチパネル等の入力部を有する。操作部14は、フラックス塗布装置100におけるフラックス3の膜厚制御条件等を設定するためものである。膜厚制御条件には、はんだ9a及びフラックス3の夫々の組成、大きさ、温度等が含まれる。
【0045】
搬送ローラー41は、はんだ9の搬送に従動する従動ローラーである。搬送ローラー41は、液体塗布室2の搬出口39から液体塗布室2の内外にかけて図示しない軸受部材に軸支されて設けられる。本例の搬送ローラー41には、上下2つのローラー部材を設ける構成としているがこれに限られない。上下2つのローラー部材として、後述するローラー部材45、46を利用することができる。
【0046】
搬送部4は、フラックス塗布されたはんだ9を搬送する。搬送部4は、上下2つのローラー部材を有する搬送ローラー42、43と、1つのローラー部材を有する搬送ローラー44を備える。本例では、搬送ローラー42、43、44は従動ローラーとするが、モーター駆動されても良い。モーター駆動される場合には、はんだ9の定速搬送を行うための搬送ローラーとして使用しても良い。さらに、搬送部4に備える搬送ローラーの個数及び各搬送ローラーのローラー部材の個数は、これに限られない。
【0047】
搬送ローラー42、43は、上下のローラー部材がはんだ9の両幅端を挟持して、はんだ9の搬送速度に合わせて回転する従動ローラーである。
【0048】
図2A〜
図2Cを参照して、上下2つのローラー部材を有する搬送ローラー42の構成例及び動作例を説明する。本例における搬送ローラー41、43も同じ構成となされる。
図2Aに示す搬送ローラー42は、上下のローラー部材45、46で、はんだ9の両幅端を挟んで、はんだ9を搬送するものである。
【0049】
ローラー部材45は、フランジ45a、45b及び回転軸42aを有する。ローラー部材46は、その左右端に大フランジ46a、46bを有する。ローラー部材46の大フランジ46a、46bの内側には、大フランジ46a、46bよりも小さい小フランジ46c、46dを有する。
【0050】
ローラー部材45、46及び回転軸42a、42bの直径は任意である。ローラー部材45、46の全幅w1は同一であることが好ましい。フランジ45aの端からフランジ45bの端までの幅w2は、小フランジ46cの端から小フランジ46dの端までの幅と同じことが好ましい。フランジ45a、45bの幅w3は、小フランジ46c、46dの幅と同じことが好ましい。これによって、フランジ45aと小フランジ46cとが噛合い、フランジ45bと小フランジ46dと噛合う。そのため、フランジ45aと小フランジ46cとがはんだ9の幅の一端を挟持し、フランジ45bと小フランジ46dとがはんだ9の幅の他端を挟持しながらはんだ9を搬送するようになる。
【0051】
搬送ローラー42の軸受部材47は、矩形の上下に支持凸部47’、47”を有する形状である。支持凸部47’は、孔47aを有する。軸受部材47は、その側面の上下に2箇所、貫通孔47b、47cを有する。貫通孔47b、47cは、ローラー部材45、46の回転軸42a、42bを貫通させるためのものである。
図2Cに示す貫通孔47bは縦長の角丸長方形である。貫通孔47bの幅w4は回転軸42aより一周り大きい。貫通孔47bの縦の長さは、ローラー部材45がローラー部材46に対して離接方向に移動できる任意の長さにすることができる。軸受部材47の底部には、台等に軸受部材47を取り付けるためのネジ孔47dを設ける。貫通孔47cの直径φは、ローラー部材46の回転軸42bよりも一周り大きい。
【0052】
軸受部材48は軸受部材47と同形状の部材を左右反転して配置したものであって、矩形の上下に支持凸部48’、48”を有する。支持凸部48’は、孔48aを有する。軸受部材48は、その側面の上下2箇所に貫通孔48b、48cを有する。貫通孔48b、48cは、ローラー部材45、46の回転軸42a、42bを貫通させるためのものである。軸受部材48の底部には、台等に軸受部材48を取り付けるためのネジ孔48dを設ける。
【0053】
ローラー部材45の回転軸42aの両端は、その半径方向にネジ孔42c、42dを有する。ネジ45cは、軸受部材47の孔47aを通って回転軸42aのネジ孔42cに締結される。支持凸部47’と回転軸42aとの間のネジ45cがバネ42e内に入れられる。ネジ45dは、軸受部材48の孔48aを通って回転軸42aのネジ孔42dに締結される。支持凸部48’と回転軸42aとの間のネジ45dがバネ42f内に入れられる。これにより、ローラー部材45が、ネジ45c、45d、バネ42e、42fを腕にして懸垂する形態で設けられる。
【0054】
図2Bにおいて、はんだ9がローラー部材45、46の間を通過するとき、はんだ9の幅方向の一端がローラー部材45のフランジ45bとローラー部材46の小フランジ46dとの間に挟持される。はんだ9が左から右に(図中黒矢印方向)搬送され、ローラー部材46の円周外を通って上から下に搬送されるとき、はんだ9の搬送に伴って、図中矢印に示すようにローラー部材45が反時計回りに、ローラー部材46が時計回りに回転する。
【0055】
図2Aにおいて、はんだ9がローラー部材45、46の間を通過するとき、はんだ9の厚さと同じだけローラー部材45が持ち上げられる。ローラー部材45が持ち上げられた分、バネ42e、42fがローラー部材45に下向きの弾性力を与える。これによって、搬送するはんだ9を弾性的に挟持しながら、はんだ9を搬送することができるようになる。更に、1つの円柱状のローラーで搬送するときと比べて、搬送中にローラーが触れるはんだ9の面積が小さくなるため、はんだ9の伸びや変形を防ぎ、品質維持しながら搬送することができる。
【0056】
図1に示す搬送ローラー44は、はんだ9の搬送に従動するローラーである。
図3Aに示す搬送ローラー44は、ローラー部材46と同一形状で、円柱状のローラー本体44a、大フランジ44b、44c、各大フランジの内側の小フランジ44d、44e、回転軸44fを備える。搬送ローラー44の回転軸44fは、軸受部材49a、49bの回転軸挿入用の孔49c、49dに挿通される。軸受部材49a、49bは、矩形の底部に支持凸部49a’、49b’を有する。支持凸部49a’、49b’のネジ孔49e、49fは、軸受部材49a、49bを台などに取り付けるために設けられる。
【0057】
搬送ローラー44は、小フランジ44d、44e上にはんだ9の両幅端を乗せてはんだ9を搬送するため、搬送中にローラーが触れるはんだ9の面積を小さくする。これにより、はんだ9を、品質を維持した状態で搬送することができる。
【0058】
図3Bに示す搬送ローラー44の変形例としての搬送ローラー44’は、ローラー本体44a’、フランジ44b’、44c’、回転軸44f’を備え、図示しない軸受部材に軸支される。ローラー本体44a’は、略砂時計状を有する。すなわちローラー本体44a’は、両端部が広く中心に行くほど次第に径が小さくなり、中間部分の径が最も小さい形状となっている。
【0059】
搬送ローラー44’は、搬送ローラー44’上にはんだ9の両幅端を乗せてはんだ9を搬送する。そのため、ローラー本体44a’に触れるはんだ9の面積が小さくなる。これにより、はんだ9の品質を維持した状態ではんだ9を搬送することができる。更に、
図3Aに示した小フランジ44d、44e上にはんだ9を乗せる構成の搬送ローラー44とは異なり、ローラー本体44a’の形状を工夫してはんだ9に触れる面積を少なくした。このため、小フランジ44d、44eの幅と関係なく、ローラー本体44a’の全長よりも狭いあらゆる幅のはんだ9を搬送することができるようになった。搬送ローラー44、44’の構成は、搬送ローラー31、36、速度検知ローラー64、引き上げローラー37にも利用することができる。
【0060】
図1に示すように、巻取り器66の上流に、搬送速度を計測するレーザ・センサ63、及び速度検知ローラー64が搬送されるはんだ9を挟みこむようにして備えられる。
【0061】
レーザ・センサ63は、はんだ9の搬送速度vを計測する搬送速度計測手段であり、計測結果としてパルス信号を制御手段に送信する非接触型のセンサである。速度検知ローラー64は、レーザ・センサ63の下部に設けられ、はんだ9の搬送に従動して回転する。速度検知ローラー64は、その円周上の1点にレーザ・センサ63からのレーザ光を反射する反射体64aを設ける。
【0062】
速度検知ローラー64の回転に伴って反射体64aがレーザ・センサ63から照射されたレーザ光を反射する。レーザ・センサ63は、反射光がレーザ・センサ63に入射したことを検知して、制御部5にパルス信号として伝える。制御部5は、受信したパルス信号の回数から、1分毎の速度検知ローラー64の回転数を計算する。制御部5は、この1分毎の回転数からはんだ9の搬送速度v’を計算する。制御部5は、この情報に基づいて巻取り器66の回転速度を制御し、はんだ9を均一な搬送速度vで搬送させる。はんだ9が一定の搬送速度vで垂直に引き上げられることにより、はんだ9aとフラックス3との間に界面張力が働くため、はんだ9aの表裏に搬送速度vに応じた均一膜厚のフラックス3が残留する。
【0063】
図1に示す巻取り部6は、はんだ9の巻取り器66、巻取り器66に取り付けられて巻取り器66を回転させる巻取りモーター66a、層間紙供給ローラー65を備える。
【0064】
巻取り器66は、はんだ9を搬送速度vで搬送するように回転して巻き取る。巻取り器66は、フラックス槽30の上流側で繰り出しローラー11により所定の負荷を与えられた状態でフラックス槽30から引き上げられたはんだ9を巻き取る。これにより、安定したはんだ9の搬送速度vが実現する。
【0065】
より詳しくは、巻取りモーター66aが制御部5に接続して回転駆動され、巻取りモーター66aの回転速度が制御されることにより、巻取り器66が、巻取りモーター66aの回転と連動して、所定の速度ではんだ9を巻き取るように回転する。
【0066】
層間紙供給ローラー65は、はんだ9の搬送に従動して回転する。巻取り器66がはんだ9を巻き取る際、層間紙67は、巻き取ったはんだ9同士が触れないように、はんだ9に挟まれる位置に供給される。層間紙67には、はんだ9と同一幅の長尺状の紙が使用される。
【0067】
本例における繰り出しローラー11は、フラックス槽30よりも上流側に設けられ、巻取り手段の巻取り器66と協働してはんだに搬送方向に沿った所定の負荷を与える負荷手段である。繰り出しローラー11及び巻取り器66が、協働してはんだ9、9aに負荷を与えることで張力を与えて、フラックス3を塗布されたはんだ9を、一定の搬送速度vで垂直に引き上げる。搬送速度vで垂直に引き上げられたはんだ9には、フラックス3が均一な膜厚で被覆する。
【0068】
なお、本例において、繰り出しローラー11を負荷手段としたが、繰り出しローラー11と別に負荷手段を設けてもよい。その場合、負荷手段は、液体塗布室2内の温度変化や湿度変化の影響を受けないように、液体塗布室2の外に設けられることが好ましいが、フラックス槽30よりも上流側であれば液体塗布室2の中に設けられていてもよい。
【0069】
[はんだ9の搬送速度制御について]
続いて、
図4を参照して、フラックス塗布装置100の制御手段の構成及び制御ステップについて説明する。制御部5は、搬送手段を制御してはんだ9の搬送速度を制御するために、操作部14、表示装置15、巻取りモーター66a、レーザ・センサ63、速度検知ローラー64等に接続する。
【0070】
制御部5は、システム全体を制御するために、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、CPU(Central Processing Unit)及びメモリ部を有する。ROMには、例えば、フラックス塗布装置100の全体を制御するためのシステム・プログラムが格納される。
【0071】
制御部5は、はんだ9を垂直に引き上げ、且つフラックス3の組成に対応した搬送速度vを制御する。これにより、はんだ9から一定にフラックス3の余剰分を落とし、はんだ9へのフラックス3の膜厚を制御するようになされる。
【0072】
作業者は、操作部14で膜厚制御条件等を入力する。制御部5は、入力された膜厚制御条件に基づき、はんだ9の搬送速度vの搬送速度制御データを生成する。
【0073】
制御部5は、搬送速度制御データに基づいて、巻取りモーター66a、レーザ・センサ63、速度検知ローラー64、等の入出力を制御する。以下、搬送速度制御データに基づく搬送速度vの制御ステップである。
【0074】
制御部5は、はんだ9aが所定の速度で繰り出されるように、巻取りモーター66aを回転させる。巻取り器66に巻きつけられるはんだ9は巻取り器66に対するはんだ9の巻径(巻量)に拘わらず周速度一定で巻き取るように予めプログラムされるとともに、後述するレーザ・センサ63ではんだ9、9aの搬送速度を測定し、一定の搬送速度となるように後述する制御手段により、はんだ9の巻き取り速度を巻取りモーター66aに命令する。
【0075】
繰り出しローラー11が、繰り出しモーター11aの回転に連動して、所定の速度ではんだ9aを繰り出す。制御部5は、はんだ9aの厚みから、繰り出しローラー11が一回転する毎に減る、最外周のはんだ9aの長さを演算する。これにより、繰り出しローラー11の回転によるはんだ9aの繰り出し速度が、一定となる。
【0076】
制御部5は、巻取り器66内に装備された巻取りモーター66aを回転させる。巻取り器66と繰り出しローラー11とが協働して、はんだ9に所定の負荷を与えることで張力を与えながら回転する。はんだ9に所定の張力が加わることで、フラックス槽30に浸漬したはんだ9は、搬送速度v(v=700[mm/min])を維持しながらフラックス槽30から引き上げられる。はんだ9の搬送速度vは、繰り出しローラー11からフラックス槽30を経由して巻取り器66に巻き取られるまで一定となされる。
【0077】
制御部5は、はんだ9、9aの搬送速度をレーザ・センサ63で検知し、搬送速度が遅くなった場合には、巻取りモーター66aの回転速度を速くする。また、搬送速度が速くなった場合、巻取りモーター66aの回転を遅くする。
【0078】
制御部5は、レーザ・センサ63及び速度検知ローラー64から得られたパルス信号に基づいて、速度検知ローラー64の1分毎の回転数を計算し、この回転数に基づいて、はんだ9の実際の搬送速度v’を計算する。計算したはんだ9の搬送速度v’を搬送速度v=700[mm/min]に維持するように、制御部5は、巻取りモーター66aの回転速度を調整する。これにより、一例として片面10μmの薄い均一な膜厚のフラックス3をはんだ9aに塗布することができる。
【0079】
また、制御部5は、温度制御も行う。制御部5は、フラックス槽30に装備された図示しない温度調整装置を駆動し、フラックス槽内のフラックス3の温度を一定(例えば25℃)に維持する。
【0080】
制御部5は、加熱乾燥炉20に接続されたヒーター21を駆動する。ヒーター21は、加熱乾燥炉20内の温度を90〜110℃となるように加熱・乾燥する。
【0081】
制御部5は、遮熱エアカーテン24を駆動し、通路孔20aから出る加熱された気体の方向に空気を吹き付けて、加熱乾燥炉20からの熱風及び揮発した溶剤が液体塗布室2に拡がらないようにする。
【0082】
制御部5は、排気口25に設けられる図示しないファンを駆動し、排気口25が加熱乾燥炉20から液体塗布室2内に出た熱気を液体塗布室2外へ排出させる。
【0083】
制御部5は、排気口25のファン(図示せず)を駆動し、排気口25のファンと接続するモーターを回転させる。モーターが回転制御されるとファンが回転し、液体塗布室2内の熱気が、排気口25に吸い込まれる。
【0084】
制御部5は、クーラー26を駆動し、加熱乾燥後のはんだ9に冷風を吹き付けて冷却させる。このとき、クーラー26によってはんだ9を40℃以下に冷却することが好ましい。
【0085】
制御部5は、はんだ用温度センサ27に接続される。はんだ用温度センサ27は、はんだ9の温度を常時測定する。はんだ9が一定温度(例えば40℃)を超えた場合、はんだ用温度センサ27は、制御部5に警報信号S27を送る。制御部5が警報信号S27を受け取ると、制御部5は、はんだ9の温度が一定温度に下がるまで巻取りモーター66a等の回転を停止させる。
【0086】
制御部5は、液体塗布室2の室内温度センサ28に接続される。室内温度センサ28は、液体塗布室2内の温度を常時測定する。液体塗布室2内が一定温度(例えば60℃)を超えた場合、室内温度センサ28は、制御部5に警報信号S28を送る。制御部5が警報信号S28を受け取ると、制御部5は、液体塗布室2の温度が一定温度に下がるまでヒーター21及びはんだ9の搬送を停止させる。また、液体塗布室2内の温度が一定温度に下がるまで、液体塗布室2の扉(図示せず)を開かないようにする。
【0087】
上述した制御ステップの順序はこれに限られず、制御部5は、複数の制御ステップを同時に実行してもよい。なお、制御部5内又は外に記憶装置を設け、膜厚制御条件や制御データ等を記憶してもよい。
【0088】
図1に示す非接触型の膜厚計40を利用して、リアルタイムにはんだ9へのフラックス3の塗布量(膜厚量)を検知し、フラックス3の塗布量検知に基づくフィードバック制御により膜厚制御を実行してもよい。フィードバック制御によれば、はんだ9へのフラックス3の膜厚が多い場合は、はんだ9の搬送速度vを遅く設定してはんだ9に塗布するフラックス3を減らす。反対に、はんだ9へのフラックス3の膜厚が少ない場合は、はんだ9の搬送速度vを速く設定してはんだ9に塗布するフラックス3を多くする。
【0089】
[はんだ9の構成例]
続いて、
図5A及び
図5Bを参照して、フラックス塗布されたはんだ9の構成例について説明する。
図5Aに示すはんだ9は、所定の幅t(t=約15mm〜40mm)、図示しない所定の厚み(約0.25mm)のフラックス塗布前のはんだ9aと、そのはんだ9aの表裏を被覆する膜厚Δtのフラックス3とを備えている。
【0090】
図5Bに示すはんだ9は、フラックス塗布装置100において、フラックス3の膜厚が制御されてなるものである。フラックス3は、所定の温度(例えば25℃)でフラックス槽30に入れられる。はんだ9aは、所定の速度で搬送され、フラックス槽30内に浸漬される。フラックス槽30内に浸漬したはんだ9aは、フラックス槽30から図中二点鎖線で示すフラックス3の液面に対して垂直(図中黒矢印方向)に搬送速度vで引き上げられる。一定の搬送速度vで垂直に引き上げられることにより、はんだ9aとフラックス3との間に界面張力が働くため、はんだ9aの表裏に搬送速度vに応じた均一膜厚のフラックス3が残留する。垂直に引き上げられたはんだ9は、加熱乾燥工程、冷却工程を経る。更にはんだ9の温度及びフラックス3の膜厚が測定されて搬送され、巻き取られることで完成する。フラックス塗布装置100では、はんだ9、9aの搬送速度vを制御することができるため、均一な膜厚のフラックス3で被覆されたはんだ9を製造することができる。
【0091】
このように実施形態としてのフラックス塗布装置100によれば、フラックス槽30から引き上げられたはんだ9aの表面に、フラックス3を均一な膜厚で塗布するものであって、フラックス槽30、繰り出しローラー11、引き上げローラー37、加熱乾燥炉20、遮熱エアカーテン24、クーラー26、搬送ローラー31、36、37、41、42〜44、レーザ・センサ63、速度検知ローラー64、巻取り器66を備えるものである。
【0092】
この構成によって、はんだ9、9aを均一な搬送速度vで搬送することができるので、はんだ9aを被覆するフラックス3の膜厚を均一かつ10μm厚以下に制御できるようになった。これにより、従来方式に比べて膜厚の極めて薄いフラックス塗布を実現できるようになった。また、余剰のフラックス3を削ぎ落とすための特別な部材が不要となるため、生産コストの低減化、メンテナンスの容易化を図ることができた。
【0093】
また、実施形態としてのはんだ9は、フラックス3が入ったフラックス槽30から垂直に引き上げられ、かつ均一な搬送速度vで搬送される。
【0094】
これにより、はんだ9に被覆するフラックス3の膜厚が一定になされる。従来方式に比べて、はんだ9に、コート面の安定性及び平坦性に優れた膜厚の薄いフラックス3を塗布することができる。
【0095】
本例のフラックス塗布装置100は、はんだ9を1条製造する場合について説明したが、2条以上のはんだ9を同時に製造する構成となされてもよい。その場合、一度に多くのはんだ9を製造できるようになるので、稼働コストを減らすことが出来るようになる。
【0096】
なお、はんだ9を、繰り出しローラー11で負荷を与えられた状態で制御部5の制御によって所定の速度で搬送するために、引き上げローラー37、搬送ローラー31、36、41〜44は、従動ローラーでなく、制御部5に接続する図示しないモーターを設け、所望の搬送速度vに応じて一定の速度で回転制御されるてもよい。フラックス槽30は、貯留するフラックス3の液量を制御するフラックスコントローラーやフラックス3を貯留するサブタンクに接続されてもよく、フラックス槽30に貯留されるフラックス3の成分及び量が一定となされてもよい。
【0097】
本実施形態では、はんだ9aにフラックス3を塗布するフラックス塗布装置100として液体塗布装置を例示したが、はんだ9aを金属や樹脂などの母材に、フラックス3を塗料などの液体に置き換えて、長尺状の金属や樹脂からなる母材の表面に塗料などの液体を塗布する液体塗布装置としてもよい。この場合も、液体塗布装置の構成は同一とすることができ、長尺状の金属や樹脂などの母材が、負荷をかけられながら均一な搬送速度vで搬送され、塗料などの液体の液面に対して垂直に引き上げられるため、金属屋樹脂などの母材の表面に均一な塗料などの被覆部材を製造することができる。
【解決手段】長尺状の被覆対象物を液体に浸漬して被覆対象物の表面に液体を塗布する浸漬塗布手段と、浸漬塗布手段により液体を塗布されて液体の液面に対して垂直に引き上げられる被覆対象物を、所定の速度で搬送する搬送手段と、被覆対象物を浸漬塗布手段に投入する側を上流側、被覆対象物を浸漬塗布手段から排出する側を下流側としたとき、浸漬塗布手段より上流側に設けられ、搬送手段で搬送される被覆対象物に所定の負荷を与える負荷手段と、液体を塗布された被覆対象物を乾燥させる乾燥手段と、乾燥された被覆対象物を冷却する冷却手段と、被覆対象物の搬送速度を計測する搬送速度計測手段と、この搬送速度計測手段の計測結果に基づき搬送手段を制御する制御手段とを備える液体塗布装置。