(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般的に流量計は高価であり、システムのコストアップの要因になる。また、流量計に所定の精度を発揮させるには比較的長い直管部が必要なので、設置スペースが大きくなりがちであるとともに、工事費も増大する可能性がある。
【0005】
本発明は上記の問題に着目してなされたものであり、迂回路を有した流体システムにおいて、流量計を用いなくても総流量の制御ができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、第1の態様は、
落差を有して流体が流れる管路系(1)に設置される流体機械(W)と、
上記流体機械(W)の回転軸(9)に連結された回転電気機械(G)と、
上記流体機械(W)と並列に接続された迂回路(5)の途中に設けられた流量調整弁(6)と、
上記回転電気機械(G)に関する検出可能な特性であって、上記流体機械(W)における流量(Q)と有効落差(H)とに相関する上記特性に基づいて、上記流体機械(W)における上記流量(Q)と上記有効落差(H)とを推定するとともに、上記有効落差(H)と管路系(1)における総流量(QT)との関係を示す流動抵抗特性線(S)と、推定した上記流量(Q)と上記有効落差(H)に基づいて、上記管路系(1)における上記総流量(QT)を推定し、該総流量(QT)の推定値が上記管路系(1)における総流量(QT)の目標流量(QT
*)に近づくように上記流体機械(W)と上記流量調整弁(6)とを協調制御する制御装置(20)と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成では、推定された総流量(QT)を用いて、流体機械(W)と流量調整弁(6)とがその目標流量(QT
*)に近づくように、流体機械(W)と流量調整弁(6)とが協調制御される。
【0008】
また、第2の態様は、第1の態様において、
上記制御装置(20)は、上記回転電気機械(G)の複数の運転点における総流量(QT)と上記有効落差(H)を取得して、上記流動抵抗特性線(S)を構築することを特徴とする。
【0009】
この構成では、制御装置(20)が流動抵抗特性線(S)を構築する機能を有する。
【0010】
また、第3の態様は、第2の態様において、
上記制御装置(20)は、構築した上記流動抵抗特性線(S)を更新する機能を有することを特徴とする。
【0011】
この構成では、制御装置(20)が流動抵抗特性線(S)を更新する機能を有する。
【0012】
また、第4の態様は、第1から第3の態様の何れかにおいて、
上記制御装置(20)は、上記推定値が上記目標流量(QT
*)に収束するように、上記協調制御を繰り返すことを特徴とする。
【0013】
この構成では、推定値が上記目標流量(QT
*)に収束する。
【0014】
また、第5の態様は、第1から第4の態様の何れかにおいて、
上記制御装置(20)は、上記回転電気機械(G)を発電機とする流体システムとして最大発電量となる運転状態、上記回転電気機械(G)の効率が最大となる運転状態、及び上記流体機械(W)の効率が最大となる運転状態の何れかの運転状態となるように、上記協調制御を行うことを特徴とする。
【0015】
この構成では、高効率な運転状態となるように、流体機械(W)と流量調整弁(6)とが協調制御される。
【発明の効果】
【0016】
第1の態様によれば、迂回路を有した流体システムにおいて、流量計を用いなくても総流量の制御が可能になる。したがって、流量計を用いて総流量を制御するものと比べ、低コスト化と省スペース化が期待できる。
【0017】
また、第2の態様によれば、容易に流動抵抗特性線を構築することができる。
【0018】
また、第3の態様によれば、流動抵抗特性線が適宜更新されるので、流量の推定精度を高精度に保つことが可能になる。
【0019】
また、第4の態様によれば、確実に必要な総流量を得ることが可能になる。
【0020】
また、第5の態様によれば、流体システムを効率的に運用することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、又はその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0023】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1の流体システム(A)を含む管路系(1)の全体概略構成を示す。同図において、管路系(1)の上流端には水(流体)の貯留槽(2)が配置され、下流端には受水槽(3)が配置されている。管路系(1)の途中には、流体システム(A)の水車(W)が配置されている。すなわち、管路系(1)は、落差を有して流体が流れるものであり、この水車(W)は、本発明の流体機械の一例である。この水車(W)の回転軸(9)には回転電気機械(G)が接続されている。また、管路系(1)には、水車(W)を迂回する迂回路(5)が接続され、この迂回路(5)の途中に電磁式の流量調整弁(6)が配置されている。すなわち、流量調整弁(6)は、管路系(1)に水車(W)と並列に接続されており、例えば貯留槽(2)から管路系(1)に供給すべき水量が水車(W)の最大処理流量を超えるときに開制御されて、貯留槽(2)からの水量の一部を、迂回路(5)を経て水車(W)の下流側の管路系(1)に戻すために使用する。
【0024】
図1の管路系(1)では、貯留槽(2)の水面から受水槽(3)の水面までの落差が総落差(Ho)であり、貯留槽(2)の水が管路系(1)を経て受水槽(3)に至るまでの管路抵抗に相当する落差を総落差(Ho)から減じた落差が水車(W)での有効落差(H)である。
【0025】
図2は、回転電気機械(G)の制御系及び電源連系を示す。同図において、回転電気機械(G)は、発電機であり、その発電出力はコンバータ部(13)により直流出力に変換された後、平滑コンデンサ(12)により平滑され、系統連系装置(11)に出力されて、電源(10)に戻される。
【0026】
また、制御系には、制御装置(20)が設けられている。制御装置(20)はコンバータ部(13)を介して回転電気機械(G)の運転状態を制御する。この例では制御装置(20)は、マイクロコンピュータとそれを動作させるプログラムを格納したメモリディバイスを有しており、内部には、予め、
図3に示す特性マップ(M)が記憶されている。この特性マップ(M)は、縦軸を管路系(1)の有効落差(H)、横軸を水車(W)に供給される流量(Q)としたH−Qマップ上に、回転電気機械(G)において検出可能で且つ水車(W)における流量(Q)と有効落差(H)とに相関する特性を記録したものである。この例では、流量(Q)と有効落差(H)とに相関する特性は、回転電気機械(G)のトルク値(T)、回転速度、発電力(P)ある。より具体的に本実施形態の特性マップ(M)は、複数の等トルク曲線と、複数の等速度曲線をH−Qマップ上に記録したものであり、テーブル(数表)や、プログラム内の数式(関数)という形で、制御装置(20)を構成するメモリディバイスに格納されている。
【0027】
この特性マップ(M)において、回転電気機械(G)に負荷をかけずトルク零値(T=0)とした場合の無拘束速度曲線と回転数零値(N=0)の等速度曲線との間の領域は、水車(W)が水流により回転する水車領域(運転可能領域)であり、回転電気機械(G)は、この水車領域において、水車(W)により回転駆動されて発電機として運転されるのを基本とする。上記無拘束速度曲線よりも左側の領域は、水車ブレーキ領域(力行領域)である。
【0028】
上記水車領域において、複数の等トルク曲線は上記無拘束速度曲線(T=0)に沿い、マップ上、流量(Q)の増大に応じてトルク値も増大する。また、複数の等速度曲線は回転数零値(N=0)の等速度曲線に沿い、有効落差(H)が大きくなるほど回転数も上昇する。更に、破線で示した等発電力曲線は下に凸な曲線であって、有効落差(H)及び流量(Q)の増大に応じて発電力も増大する。この複数の等発電力曲線の頂点を結ぶ曲線(E)は、回転電気機械(G)が発電機として最大発電力を得る最大発電力曲線である。このH−Qマップ上に回転電気機械(G)のトルク値(T)、回転速度(N)、発電力(P)を記録した特性マップ(M)は、流体システム(A)に接続される管路系(1)とは無関係であり、流体システム(A)に固有の特性マップである。
【0029】
そして、特性マップ(M)に、実際の運転で測定した管路系(1)のシステムロスカーブ(S)を記録する。このシステムロスカーブ(S)の測定動作の詳細は後述する。このシステムロスカーブ(S)は、
図1に示した管路系(1)に固有の流動抵抗特性線であって、流量(Q)=0のときの有効落差(H)が総落差(Ho)であり、流量(Q)の増大に応じて有効落差(H)が二次曲線的に減少する特性を持ち、その曲率は
図1の管路系(1)固有の値を持つ。流体システム(A)を含む管路系(1)における総流量(QT)とその際の有効落差(H)とは、システムロスカーブ(S)上の点に対応する。例えば、流量調整弁(6)を全閉状態にして、水車(W)にのみ水を流したとすると、水車(W)における流量が、流体システム(A)を含む管路系(1)の総流量(QT)であり、その際の水車(W)の流量(Q)と有効落差(H)に対応する点がシステムロスカーブ(S)上にある。換言すると、水車(W)の運転点は、システムロスカーブ(S)上にある。
【0030】
また、水車(W)と迂回路(5)の両方に水を流したとすれば、水車(W)における流量と迂回路(5)における流量(すなわち流量調整弁(6)における流量)との合計値が、流体システム(A)を含む管路系(1)の総流量(QT)であり、総流量(QT)とその際の有効落差(H)がシステムロスカーブ(S)上の点に対応し、水車(W)の運転点はシステムロスカーブ(S)上にはない。
【0031】
なお、測定したシステムロスカーブ(S)もテーブル(数表)や、プログラム内の数式(関数)という形で、制御装置(20)を構成するメモリディバイスに格納する。
【0032】
図2に戻って、制御装置(20)の内部には、速度検出器(21)と、最適運転制御装置(22)と、速度制御器(23)と、トルク制御器(24)と、電流制御器(25)と、選択器(26)とが備えられる。速度検出器(21)は、回転電気機械(G)の出力電流を検出する電流センサ(27)の出力と電流制御器(25)の出力とを受けて回転電気機械(G)の回転速度を検出する。
【0033】
最適運転制御装置(22)は、速度検出器(21)で検出した回転速度(N)と、トルク制御器(24)からのトルク値(T)とに基づいて、これ等の回転速度(N)及びトルク値(T)に対応する特性マップ(M)上の水車(W)の運転点(有効落差(H)及び流量(Q))を演算(すなわち推定)し、この水車(W)の運転点から、最大発電力となる最大発電力曲線(E)上の運転点に移行するように、トルク指令値(T
*)又は回転速度指令値を演算する。また、最適運転制御装置(22)は、運転状態に応じて速度制御かトルク制御かを選択器(26)で切り替える。
【0034】
制御装置(20)の最適運転制御装置(22)の内部構成を
図4に示す。最適運転制御装置(22)は、流量演算部(30)と、有効落差演算部(31)と、最適運転指令演算器(32)とを有する。流量演算部(30)は、
図2の速度検出器(21)からの回転速度(N)と、トルク制御器(24)からのトルク値(T)とを受けて、
図3の特性マップ(M)上のこれ等の回転速度(N)及びトルク値(T)で決まる回転電気機械(G)の運転点での流量(Q)を演算する。また、有効落差演算部(31)は、流量演算部(30)の内部演算値(すなわち、流量(Q)の推定値)と速度検出器(21)からの回転速度(N)とを受け、この流量(Q)及び回転速度(N)で決まる特性マップ(M)上の運転点での有効落差(H)を演算する。すなわち、有効落差演算部(31)は、有効落差(H)を推定する。更に、最適運転指令演算器(32)は、流量演算部(30)で演算された流量(Q)と有効落差演算部(31)で演算された有効落差(H)とに基づいて、演算で求めた流量(Q)と有効落差(H)とで決まる特性マップ(M)上の水車(W)の運転点から最大発電力曲線(E)上の最大発電力となる運転点に移動するためのトルク指令値又は回転速度指令値を演算する。
【0035】
<管路系(1)のシステムロスカーブ(S)の測定>
システムロスカーブ(S)の測定の詳細は次の通りである。
図5は、システムロスカーブ(S)の構築と、後述の協調制御を説明するフローチャートである。管路系(1)の流量調整弁(6)が閉じた状態において(ステップS01参照)、回転電気機械(G)が、当初、特性マップ(M)上の水車領域内の任意の運転点、例えば、
図6の特性マップ(M)上の最大発電力曲線(E)上の運転点(Y)で運転されている場合を例示して説明する(以下、この運転点(Y)を発電出力最大点とも呼ぶ)。この時、回転電気機械(G)は、制御装置(20)によって、最大発電力曲線(E)上の運転点(Y)になるように、その回転速度(N)又はトルク値(T)が逐次探索制御(MPPT制御、Maximum Power Point Track制御)されている(ステップS02)。なお、MPPT制御では、制御装置(20)は、回転電気機械(G)の負荷、すなわちコンバータ部(13)を制御する。
【0036】
そして、制御装置(20)は、流量調整弁(6)の閉状態を維持したまま、運転点を変更する(ステップS03参照)。例えば、トルク制御器(24)へのトルク指令値(T
*)を、最初は、現在のトルク値(To)の所定%値、例えば30%値に設定して、回転電気機械(G)を運転する。この運転状態が安定するまで所定時間待った後、この運転点における流量(Q)及び有効落差(H)を推定する(ステップS04)。具体的に制御装置(20)は、速度検出器(21)で検出した回転電気機械(G)の回転速度(N)と、トルク制御器(24)からのトルク値(T)をモニタして、これ等の回転速度(N)及びトルク値(T)の情報で決まる特性マップ(M)上の運転点の流量(Q)及び有効落差(H)に変換する。そして、変換して得た流量(Q)及び有効落差(H)を制御装置(20)内のメモリディバイスに格納する(ステップS05)。
【0037】
その後、制御装置(20)は、トルク制御器(24)へのトルク指令値(T
*)を、当初のトルク値(To)の例えば60%値、90%値、120%値に順次設定して、各々、回転電気機械(G)を上記と同様に運転し、各運転状態での回転電気機械(G)の回転速度(N)とトルク値(T)をモニタして、これ等の回転速度(N)及びトルク値(T)の情報で決まる特性マップ(M)上の運転点の流量(Q)及び有効落差(H)に変換する。尚、トルク指令値(T
*)は無拘束速度曲線のT=0以上の値に設定する。なお、回転電気機械(G)の運転状態の変更は、トルク指令値(T
*)の変更に代えて、回転速度(N)を変更したり、これ等を組み合わせて変更しても良い。
【0038】
そして、制御装置(20)は、システムロスカーブ(S)の構築に必要な、2点以上の運転点の情報を取得できたかどうかを確認する(ステップS06)。もし、必要な点数のデータが得られていない場合には、ステップS03に戻って運転点を変更し、運転点変更後の流量(Q)及び有効落差(H)を特性マップ(M)に基づいて推定する。
【0039】
一方、十分な数の運転点の情報が得られたら、制御装置(20)は、システムロスカーブ(S)を構築する(ステップS07)。この例では、
図6に示したように、複数(上記説明では4点)の運転点(Z1)〜(Z4)が得られたので、これ等の運転点のデータを用いて管路系(1)のシステムロスカーブ(S)を推定する。このシステムロスカーブ(S)の推定については、具体的には、予め記憶した配管モデルを使用して算出する。この配管モデルは、
図3に示したシステムロスカーブ(S)から判るように流量(Q)の2乗に比例して有効落差(H)が減少する特性、すなわち、流量(Q)の2乗に比例して管路抵抗が増大する特性に基づいており、特性曲線がテーブル又は数式で表現されている。そして、取得した複数の運転点のデータと上記特性曲線で示された配管モデルとに基づいて、管路系(1)の総落差(Ho)及び配管抵抗係数を推定すると共に、取得した複数の運転点間のデータを補間して、管路系(1)の新たなシステムロスカーブ(S)を導出する。このシステムロスカーブ(S)の導出は、上記水車領域、水車ブレーキ領域、及び回転数零値(N=0)の等速度曲線の右側の領域(以下、説明の便宜のため大流量領域と呼ぶ)で行う。なお、この例では、水車領域については、実際に水車(W)を運転して測定を行い、上記大流量領域については、水車領域の測定結果に基づいて得た数式(或いは数値)を用いて、上記大流量領域に点を外挿する。それにより、水車(W)を運転させることができない上記大流量領域におけるシステムロスカーブ(S)を得ることができる。このように構築した管路系(1)のシステムロスカーブ(S)を
図3の特性マップ(M)に記録する。具体的に制御装置(20)は、特性マップ(M)と関連づけたテーブルや数式として制御装置(20)内のメモリディバイスに格納する。尚、システムロスカーブ(S)の構築は、少なくとも2つの運転点のデータを取得すれば可能である。
【0040】
本実施形態では、システムロスカーブ(S)の推定について、既述の通り、回転電気機械(G)の運転点(トルク値(T)と回転速度(N))を複数回変更し、それ等の運転点での特性マップ(M)上の流量(Q)及び有効落差(H)を各々把握した。すなわち、管路系(1)に高価な流量センサや圧力センサなどのセンサ類を配置しないで、管路系(1)のシステムロスカーブ(S)を構築した。
【0041】
また、システムロスカーブ(S)の構築のタイミングは、流体システム(A)を管路系(1)に設置するシステム構築時に行っても良いし、構築した流動抵抗特性線(S)を更新する機能を制御装置(20)に設けておいて、流体システム(A)の稼働後に必要に応じて、制御装置(20)によって適宜更新しても良い。
【0042】
<水車(W)と流量調整弁(6)との協調運転>
この流体システム(A)では、流量調整弁(6)を操作すると水車(W)の運転点が変動し、水車(W)の運転点を変更すると迂回路(5)の流量が変動することになる。そこで、この流体システム(A)では、水車(W)と流量調整弁(6)の協調制御、すなわち、水車(W)の状態と、流量調整弁(6)の状態の双方を考慮した制御が必要になる。
【0043】
以下では、管路系(1)に流す総流量(QT)の目標流量(QT
*)が水車(W)の最大処理流量(Qm)を超える場合を例にして、水車(W)と流量調整弁(6)との協調運転(制御装置(20)による水車(W)と流量調整弁(6)の協調制御)を説明する。
【0044】
図5のフローチャートでは、ステップS08〜ステップS12が上記協調制御に対応する。水車(W)の当初の運転状態として、何れの運転点(目標流量(QT
*)としては、水車領域の値でもでもよいし、大流量領域の値でもよい)から制御を初めてもよいが、
図7の特性マップ(M)で例えばシステムロスカーブ(S)上の流量(Qa)及び有効落差(Ha)の運転点(Pa)、すなわち、システムロスカーブ(S)と最大発電力曲線(E)との交点で運転されて、回転電気機械(G)が最大発電電力で運転されている場合を例に挙げて説明する。この時、流量調整弁(6)は全閉状態である。なお、制御装置(20)は、このときの流量(Qa)及び有効落差(Ha)を特性マップ(M)に基づいて推定することができる。流量調整弁(6)が全閉状態の場合は、水車(W)における流量(Qa)が、管路系(1)の総流量(QT)ということになる。
【0045】
いま、管路系(1)に流す総流量(QT)の目標流量(QT
*)として水車(W)の最大処理流量(Qm)を越える流量を要求されたとする。この目標流量(QT
*)は、
図7の特性マップ(M)では、例えば、水車(W)の最大処理流量(Qm)(すなわち水車領域の図中右側境界(回転数零値(N=0)の等速度曲線上の流量)を越えたシステムロスカーブ(S)上の点に対応した流量であるものとする。
【0046】
協調制御を開始すると、制御装置(20)は、流量調整弁(6)の開度を予め設定した微小開度(ステップ幅)だけ開制御して、迂回路(5)に流体(ここでは水)を流し始める(ステップS08)。更に、制御装置(20)は、流量調整弁(6)の開度をそのままの状態に維持しつつ、回転電気機械(G)の運転状態(回転速度(N)又はトルク値(T)、或いはその双方)を最大発電力曲線(E)上の運転点になるように逐次探索制御(MPPT制御)し、その運転点の収束を待つ(ステップS09)。勿論、発電出力最大点以外の運転点に制御しても、総流量の制御は可能であり、ここで発電出力最大点に制御したのは例示にすぎない。
【0047】
これらの制御により、管路系(1)の総流量(QT)は増量し、当初の流量(Qa)から、システムロスカーブ(S)上の点(Pb)に対応した流量(例えば流量Qb)になる。この時、総流量(QT)の増量に伴い、管路系(1)の配管抵抗に相当する落差分も増大して、有効落差は有効落差(Ha)から有効落差(Hb)に減少する。一方、水車(W)を流れる流量は、当初の流量(Qa)から、有効落差(Hb)に対応する最大発電力曲線(E)上の運転点における流量(Q1)(Q1<Qa)に収束している。従って、流量調整弁(6)に流れる流量は、現在の管路系(1)の総流量(QT)であるQbと、水車(W)を流れる流量(Q1)との差の流量(Qb−Q1)である。
【0048】
そして、制御装置(20)はその運転点における流量(Q)及び有効落差(H)の推定を行う(ステップS10)。制御装置(20)では、現在の回転速度(N)及びトルク値(T)を把握できるので、制御装置(20)は、把握したこれらの値と特性マップ(M)に基づいて、水車(W)における流量(Q1)、有効落差(Hb)、すなわち水車(W)の運転点を推定するのである(ステップS10)。このようにして、水車(W)の運転点が求まると、制御装置(20)は、ステップS10において推定した有効落差(Hb)及びシステムロスカーブ(S)に基づいて、その有効落差(Hb)に対応する総流量(QT)であるQbを推定することができる(ステップS11)。
【0049】
以上のように、管路系(1)の総流量(QT)は、制御装置(20)が、水車(W)と流量調整弁(6)とを協調制御することにより、流量(Qa)から流量(Qb)に増量しつつ、水車(W)の流量自体は、水車領域(水車(W)の運転可能領域)内において、最大発電力曲線(E)上の運転点に対応した流量(Q1)に調整されるので、回転電気機械(G)ではより高効率で最大発電量を得ることが可能である。つまり、制御装置(20)は、回転電気機械(G)を発電機とする流体システム(A)として最大発電量となる運転状態に、該回転電気機械(G)を制御するのである。
【0050】
そして、制御装置(20)は、現在の総流量(QT)と目標流量(QT
*)とを比較し(ステップS12)、総流量(QT)が目標流量(QT
*)に収束した場合(例えば両者が等しくなった場合)にはステップS10の処理に戻り、そうでない場合には、制御装置(20)は、流量調整弁(6)の開度を更に上記微小開度(ステップ幅)だけ開制御することを順次繰り返し、その微小開度増大する毎に、上記と同様に回転電気機械(G)の運転状態を最大発電力曲線(E)上の運転点になるように逐次探索制御(MPPT制御)し、その運転点の収束を待つ(ステップS08〜ステップS12)。
【0051】
これらの制御により、流量調整弁(6)を流れる流量は次第に増量し、管路系(1)の総流量(QT)は流量(Qb)から、水車(W)の最大処理流量(Qm)を越える、目標流量(QT
*)に向って増量する。一方、水車(W)における流量は最大発電力曲線(E)上を
図7中左斜め下方に向って減少して行く。つまり、制御装置(20)は、管路系(1)の総流量(QT)の推定値が、管路系(1)における総流量(QT)の目標流量(QT
*)に近づくように水車(W)と流量調整弁(6)とを協調制御しているのである。
【0052】
総流量(QT)が目標流量(QT
*)に収束したとき、流量調整弁(6)を流れる流量は、目標流量(QT
*)と水車(W)を流れる流量(QE)との差の流量(QT−QE)である。このように、上記大流量領域において総流量(QT)を制御できるのは、システムロスカーブ(S)をこの領域にまで外挿したからである。勿論、制御装置(20)によって水車領域における総流量(QT)の推定ができることは言うまでもない。
【0053】
<本実施形態の効果>
以上の通り、本実施形態によれば、迂回路を有した流体システムにおいて、流量計を用いなくても総流量の制御が可能になる。したがって、流量計を用いて総流量を制御するものと比べ、低コスト化と省スペース化を期待できる。また、この総流量の制御は、上記水車領域における運転でも、上記大流量領域でも可能である。
【0054】
また、本実施形態では、水車(W)と流量調整弁(6)を協調制御することにより、管路系(1)の総流量(QT)を目標流量(QT
*)に維持しつつ、該総流量(QT)の下で可能な最大発電量を得ることが可能になる。つまり、高効率な運転が可能になる。この高効率な運転は、水車領域及び大流量領域の双方で可能である。したがって、本実施形態では、例えば、総流量(QT)の目標流量(QT
*)として水車領域内の値が与えられた場合に、制御装置(20)によって、例えば流量調整弁(6)を開く制御を行って、最大発電力曲線(E)上の点に水車(W)の運転点が近づくように制御することも可能である。
【0055】
また、流体システム(A)の稼働後に、必要に応じてシステムロスカーブ(S)を制御装置(20)によって更新すれば、流量及び有効落差の推定精度を高精度に保つことが可能になる。
【0056】
《発明の実施形態2》
実施形態2では、システムロスカーブ構築フローの他の例を説明する。
【0057】
図8は、実施形態2に係るシステムロスカーブ(S)の構築を説明するフローチャートである。このフローには、ステップS21〜ステップS25、ステップS07〜ステップS12が含まれ、ステップS08〜ステップS12が上記協調制御のフローであり、実施形態1で説明したものと同じである。一方、ステップS21〜ステップS25、及びステップS07がシステムロスカーブ(S)の構築フローであり、とりわけステップS21〜ステップS25が実施形態1と異なっている。以下では、この相異箇所を中心にフローを説明する。
【0058】
本実施形態でも、
図8に示すように、制御装置(20)は、流量調整弁(6)を全閉状態として、水車(W)等の運転を開始する(ステップS21)。その状態で、制御装置(20)は、適当な初期状態に運転点を設定する(ステップS22)。そして、制御装置(20)は、その運転点での運転状態が安定するまで所定時間待った後、運転点の推定を行う(ステップS23)。ここでの運転点の推定でも、速度検出器(21)で検出した回転電気機械(G)の回転速度(N)と、トルク制御器(24)からのトルク値(T)をモニタして、これ等の回転速度(N)及びトルク値(T)の情報で決まる特性マップ(M)上の運転点の流量(Q)及び有効落差(H)に変換する。そして、変換して得た流量(Q)及び有効落差(H)を制御装置(20)内のメモリディバイスに格納する(ステップS24)。
【0059】
次に、制御装置(20)は、現在の運転点が発電出力最大点か否かを確認する(ステップS25)。確認の結果、例えば、発電出力最大点に到達していなかったら、ステップS22に戻って運転点を変更した後に、変更後の運転点における流量(Q)及び有効落差(H)の推定を行うとともに、それにより得た流量(Q)及び有効落差(H)をメモリディバイスに格納する(ステップS23〜ステップS24)。なお、システムロスカーブ(S)の構築(推定)は、少なくとも2つの運転点のデータを取得すれば可能であるが、一般的には、発電出力最大点に収束するまで運転点の変更を繰り返せば、システムロスカーブ(S)の推定に十分な数のデータを得ることができる。
【0060】
そして、ステップS25における確認の結果、運転点が発電出力最大点に到達していた場合には、制御装置(20)は、システムロスカーブ(S)の推定を行う(ステップS07)。本実施形態でもシステムロスカーブ(S)の推定は、実施形態1と同様にして行う。この際、上記大流量領域についても、実施形態1と同様に、水車領域の測定結果に基づいて得た数式(或いは数値)を用いて、上記大流量領域に点を外挿し、上記大流量領域におけるシステムロスカーブ(S)を推定する。
【0061】
上記のようにして推定したシステムロスカーブ(S)も、上記協調制御に利用できる(ステップS08〜ステップS12)。
図8に示したステップS08〜ステップS12は、実施形態1のものと同様であり、本実施形態でも流量計を用いなくても総流量の制御が可能になる。すなわち、本実施形態でも実施形態1と同様の効果を得ることが可能になる。
【0062】
《その他の実施形態》
なお、上記実施形態では、回転電気機械(G)の運転状態が最大発電量の状態になるように制御したが、本発明はこれに限定されず、回転電気機械(G)を所定の運転状態に制御すれば良い。例えば、最大発電力曲線(E)に代えて、回転電気機械(G)の効率を示す曲線、水車(W)の効率を示す曲線、或いはコンバータ部(13)の効率を示す曲線を特性マップ(M)内の情報として制御装置(20)に格納し、この曲線で求めた効率が最大となる運転点で運転するのである。すなわち、制御装置(20)によって回転電気機械(G)と流量調整弁(6)とを協調制御する場合の指標として、回転電気機械(G)の効率が最大となる運転状態、流体機械(W)の効率が最大となる運転状態、或いはコンバータ部(13)の効率が最大となる運転状態を用いるのである。
【0063】
また、管路系(1)の流動抵抗特性線として、
図3に示したように、縦軸に有効落差(H)、横軸に流量(Q)をとったシステムロスカーブ(S)を採用したが、有効落差(H)と水車(W)前後の圧力差とは比例関係にあるので、縦軸に水車(W)前後の圧力差(有効圧力差)をとったシステムロスカーブは、縦軸に有効落差(H)をとったシステムロスカーブ(S)と等価である。すなわち、縦軸に水車(W)前後の圧力差、横軸に流量(Q)をとったシステムロスカーブを用いてもよい。
【0064】
加えて、上記実施形態では、回転電気機械(G)の特性マップ(M)上の運転点の把握は回転速度(N)とトルク値(T)との組合せにより行ったが、その他、回転速度(N)と発電力(P)との組合せや、トルク値(T)と発電力(P)との組合せであっても良い。つまり、特性マップ(M)に用いる回転電気機械(G)の特性は、水車(流体機械)における流量(Q)と有効落差(H)とに相関する回転電気機械(G)の特性で、且つそれが検出可能な特性であれば、回転速度(N)とトルク値(T)には限定されないのである。
【0065】
また、水車(W)における流量(Q)と有効落差(H)とに、回転電気機械(G)の特性(検出可能なもの)を対応づけることが可能であれば、流体システム(A)を構成する水車(W)や回転電気機械(G)の形式は特には限定されない。例えば、回転電気機械(G)により水車(W)の運転を可変できない場合でも、上記実施形態のようにして流量(Q)と有効落差(H)の推定が可能である。
【0066】
また、上記実施形態では、制御装置(20)は、回転電気機械(G)と流量調整弁(6)との双方を制御したが、回転電気機械(G)を制御する第1の制御装置と、流量調整弁(6)を制御する第2の制御装置とを設けて、両制御装置の間で回転電気機械(G)の運転状態と流量調整弁(6)の弁開度の情報を入出力して、この第1及び第2の制御装置により本発明の制御装置を構成しても良いのは勿論である。
【解決手段】回転電気機械(G)に関する検出可能な特性であって、流体機械(W)における流量(Q)と有効落差(H)とに相関する特性に基づいて、流体機械(W)の流量(Q)と有効落差(H)を制御装置(20)で推定する。制御装置(20)では推定したこれらの値と流動抵抗特性線(S)とに基づいて管路系(1)における総流量(QT)を推定し、総流量(QT)の推定値が管路系(1)における総流量(QT)の目標流量(QT