(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリマーAとポリマーBと有機溶媒とを溶解混合したときに、ポリマーAを主成分とする溶液相と、ポリマーBを主成分とする溶液相の2相に相分離する系において、ポリマーAとポリマーBと有機溶媒を含むエマルションと、ポリマーAの貧溶媒を容器に連続的に添加し、ポリマーAを析出させ、ポリマーA微粒子を容器から連続的に取り出すポリマー微粒子の製造方法。
ポリマーAを有機溶媒に溶かした液とポリマーBを有機溶媒に溶かした液をそれぞれ混合装置に連続的に供給して形成したエマルションを容器に添加する請求項1〜2のいずれか記載のポリマー微粒子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明につき、詳細に説明する。
【0023】
本発明は、ポリマーAとポリマーBと有機溶媒を溶解混合させ、ポリマーAを主成分とする溶液相(以下、ポリマーA溶液相と称することもある)と、ポリマーBを主成分とする溶液相(以下、ポリマーB溶液相と称することもある)の2相に相分離する系において、管状混合装置内でエマルションを連続的に形成させた後、ポリマーAの貧溶媒を連続的に接触させることにより、ポリマーAを析出させるポリマー微粒子の製造方法である。
【0024】
上記において、「ポリマーAとポリマーBと有機溶媒を溶解混合させ、ポリマーAを主成分とする溶液相と、ポリマーBを主成分とする溶液相の2相に相分離する系」とは、ポリマーAとポリマーBと有機溶媒を混合したときに、ポリマーAを主として含む溶液相と、ポリマーBを主として含む溶液相の2相に分かれる系をいう。
【0025】
このような相分離をする系を用いることにより、相分離する条件下で混合して、乳化させ、エマルションを形成させることができる。
【0026】
なお、上記において、ポリマーが溶解するかどうかについては、本発明を実施する温度、即ちポリマーAとポリマーBを溶解混合して、2相分離させる際の温度において、有機溶媒に対し1質量%超溶解するかどうかで判別する。
【0027】
このエマルションは、ポリマーA溶液相が分散相に、ポリマーB溶液相が連続相になり、そしてこのエマルションに対し、ポリマーAの貧溶媒を接触させることにより、エマルション中のポリマーA溶液相から、ポリマーAが析出し、ポリマーAで構成されるポリマー微粒子を得ることが出来る。
【0028】
本発明の製造方法においては、ポリマーA、ポリマーB、これらを溶解する有機溶媒およびポリマーAの貧溶媒を用い、本発明のポリマー微粒子が得られる限り、その組合せに特に制限はないが、本発明において、ポリマーAとは、高分子重合体のことを指し、好ましくは、天然には存在しない合成ポリマーであり、さらに好ましくは非水溶性ポリマーであり、その例として熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0029】
熱可塑性樹脂としては、具体的には、ビニル系重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリアリーレンエーテル、ポリアリーレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、シリコーンおよびこれらの共重合体などが挙げられる。
【0030】
本発明におけるポリマーAとしては、熱硬化性樹脂を用いてもよく、具体的には、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、マレイミド樹脂、シアン酸エステル樹脂および尿素樹脂などが挙げられる。
【0031】
これらの中で、エポキシ樹脂が耐熱性、接着性が高いことから好ましく用いられる。エポキシ樹脂としては、例えば、分子内に水酸基を有する化合物とエピクロロヒドリンから得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、分子内にアミノ基を有する化合物とエピクロロヒドリンから得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、分子内にカルボキシル基を有する化合物とエピクロロヒドリンから得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、分子内に二重結合を有する化合物を酸化することから得られる脂環式エポキシ樹脂、あるいはこれらから選ばれる2種類以上のタイプの基が分子内に混在するエポキシ樹脂などが用いられる。
【0032】
また、エポキシ樹脂と組み合わせて硬化剤を用いることができる。エポキシ樹脂と組み合わせて用いられる硬化剤としては、例えば、芳香族アミン、脂肪族アミン、ポリアミドアミン、カルボン酸無水物およびルイス酸錯体、酸系硬化触媒、塩基系硬化触媒などが挙げられる。
【0033】
本発明におけるポリマーAとして用いる好ましい樹脂としては、耐熱性の高いポリマーであり、ガラス転移温度または融解温度が100℃を超える樹脂である。具体的に例示するならば、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリエステル、非晶ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、エポキシ樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなどが挙げられ、より好ましくは結晶性熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0034】
上述したポリマーAは1種以上で用いることができる。
【0035】
これら好ましい樹脂は、熱的および/または機械的な性質に優れ、それを用いて得られる微粒子は、粒子径分布も小さくすることが可能であり、従来の微粒子で用いることができなかった用途への適用も可能となる点で好ましい。
【0036】
ポリマーAの好ましい重量平均分子量の上限は、好ましくは100,000,000、より好ましくは10,000,000、さらに好ましくは1,000,000であり、特に好ましくは500,000であり、最も好ましくは100,000である。また、ポリマーAの好ましい重量平均分子量の下限は、好ましくは1,000、より好ましくは、2,000、さらに好ましくは、5,000、特に好ましくは10,000である。
【0037】
ここでいう重量平均分子量とは、有機溶媒としてジメチルホルムアミドを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレンで換算した重量平均分子量をさす。
【0038】
ジメチルホルムアミドで測定できない場合については、テトラヒドロフランを用い、さらに測定できない場合は、ヘキサフルオロイソプロパノールを用い、ヘキサフルオロイソプロパノールでも測定できない場合は、2−クロロナフタレンを用いて測定を行う。
【0039】
本発明において、ポリマーAとしては、本発明が、貧溶媒と接触する際に微粒子を析出させることを要点とすることから、貧溶媒に溶けないものが好ましく、後述する貧溶媒に溶解しないポリマーが好ましく、特に非水溶性ポリマーが好ましい。
【0040】
ここで、非水溶性ポリマーとしては、室温での水に対する溶解度が1質量%以下、好ましくは、0.5質量%以下、さらに好ましくは、0.1質量%以下のポリマーを示す。
【0041】
結晶性熱可塑性樹脂とは、ポリマー内部の結晶相と非晶相のうち、結晶部分を有するものをいい、これらは示差走査熱量測定法(DSC法)により判別することが出来る。即ち、DSC測定において、融解熱量が測定されるものを指す。融解熱量の値としては、1J/g以上、好ましくは、2J/g以上、より好ましくは5J/g以上、さらには、10J/g以上であるポリマーであることが好ましい。この際、DSC測定は、30℃から、当該ポリマーの融点よりも30℃超える温度までの温度範囲を、20℃/分の昇温速度で1回昇温させた後に、1分間保持した後、20℃/分で0℃まで降温させ、1分間保持した後、再度20℃/分で昇温させた時に測定される融解熱量のことを指す。
【0042】
本発明におけるポリマーBとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられるが、本発明で用いるポリマーAを溶解する有機溶媒およびポリマーAの貧溶媒に溶解するものが好ましく、なかでも、上記溶媒に溶解し、アルコール系溶媒または水に溶解するものが工業上取り扱い性に優れる点でより好ましく、さらに有機溶媒に溶解し、メタノール、エタノールまたは水に溶解するものが特に好ましい。
【0043】
ポリマーBを具体的に例示するならば、ポリ(ビニルアルコール)(完全ケン化型や部分ケン化型のポリ(ビニルアルコール)であってもよい)、ポリ(ビニルアルコールーエチレン)共重合体(完全ケン化型や部分ケン化型のポリ(ビニルアルコールーエチレン)共重合体であってもよい)、ポリビニルピロリドン、ポリ(エチレングリコール)、ショ糖脂肪酸エステル、ポリ(オキシエチレン脂肪酸エステル)、ポリ(オキシエチレンラウリン脂肪酸エステル)、ポリ(オキシエチレングリコールモノ脂肪酸エステル)、ポリ(オキシエチレンアルキルフェニルエーテル)、ポリ(オキシアルキルエーテル)、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリビニルピロリジニウムクロライド、ポリ(スチレン−マレイン酸)共重合体、アミノポリ(アクリルアミド)、ポリ(パラビニルフェノール)、ポリアリルアミン、ポリビニルエーテル、ポリビニルホルマール、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(オキシエチレンアミン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリアミノスルホン、ポリエチレンイミン等の合成樹脂、マルトース、セルビオース、ラクトース、スクロースなどの二糖類、セルロース、キトサン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セルロースエステル等のセルロース誘導体、アミロースおよびその誘導体、デンプンおよびその誘導体、デキストリン、シクロデキストリン、アルギン酸ナトリウムおよびその誘導体等の多糖類またはその誘導体、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、アルブミン、フィブロイン、ケラチン、フィブリン、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、アラビアゴム、寒天、たんぱく質等が挙げられ、好ましくは、ポリ(ビニルアルコール)(完全ケン化型や部分ケン化型のポリ(ビニルアルコール)であってもよい)、ポリ(ビニルアルコールーエチレン)共重合体(完全ケン化型や部分ケン化型のポリ(ビニルアルコールーエチレン)共重合体であってよい)、ポリエチレングリコール、ショ糖脂肪酸エステル、ポリ(オキシエチレンアルキルフェニルエーテル)、ポリ(オキシアルキルエーテル)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セルロースエステル等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドンであり、より好ましくは、ポリ(ビニルアルコール)(完全ケン化型や部分ケン化型のポリ(ビニルアルコール)であってよい)、ポリ(ビニルアルコールーエチレン)共重合体(完全ケン化型や部分ケン化型のポリ(ビニルアルコールーエチレン)共重合体)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セルロースエステル等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドンであり、特に好ましくは、ポリ(ビニルアルコール)(完全ケン化型や部分ケン化型のポリ(ビニルアルコール)であってよい)、ポリ(エチレングリコール)、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドンである。
【0044】
ポリマーBの好ましい重量平均分子量の上限は、好ましくは100,000,000、より好ましくは10,000,000、さらに好ましくは1,000,000であり、特に好ましくは500,000であり、最も好ましくは100,000である。また、ポリマーBの好ましい重量平均分子量の下限は、好ましくは1,000、より好ましくは2,000、さらに好ましくは5,000、特に好ましくは10,000である。
【0045】
ここでいう重量平均分子量とは、溶媒として水を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリエチレングリコールで換算した重量平均分子量を指す。
【0046】
水で測定できない場合においては、ジメチルホルムアミドを用い、それでも測定できない場合においては、テトラヒドロフランを用い、さらに測定できない場合においては、ヘキサフルオロイソプロパノールを用いる。
【0047】
ポリマーAとポリマーBを溶解させる有機溶媒としては、用いるポリマーA、ポリマーBを溶解し得る溶媒であり、各ポリマーの種類に応じて選択される。
【0048】
具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、n−デカン、n−ドデカン、n−トリデカン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレンカーボネート、トリメチルリン酸、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸等のカルボン酸溶媒、アニソール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、ジグライム、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、あるいはこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、非プロトン性極性溶媒、カルボン酸溶媒であり、さらに好ましいものとしては、水溶性溶媒であるアルコール系溶媒、非プロトン性極性溶媒、カルボン酸溶媒であり、著しく好ましいのは、非プロトン性極性溶媒、カルボン酸溶媒であり、入手が容易で、かつ広範な範囲のポリマーを溶解し得る点でポリマーAへの適用範囲が広く、かつ水やアルコール系溶媒等など後述する貧溶媒として好ましく用い得る溶媒と均一に混合し得る点から、最も好ましくは、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレンカーボネート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ギ酸、酢酸である。
【0049】
これらの有機溶媒は、複数種用いてもよいし、混合して用いても良いが、粒子径が比較的小さく、かつ、粒子径分布の小さい微粒子が得られるという観点、使用済みの有機溶媒のリサイクル時の分離の工程のわずらわしさを避け、製造上のプロセス負荷低減という観点で、単一の有機溶媒であるほうが好ましく、さらにポリマーA、およびポリマーBの両方を溶解する単一の有機溶媒であることが好ましい。
【0050】
本発明におけるポリマーAの貧溶媒とは、ポリマーAを溶解させない溶媒のことをいう。溶解させない溶媒とは、ポリマーAの貧溶媒に対する溶解度が1質量%以下のものであり、より好ましくは、0.5質量%以下であり、さらに好ましくは、0.1質量%以下である。
【0051】
本発明の製造方法において、ポリマーAの貧溶媒を用いるが、かかる貧溶媒としてはポリマーAの貧溶媒でありかつ、ポリマーBを溶解する有機溶媒であることが好ましい。これにより、ポリマーAで構成されるポリマー微粒子を効率よく析出させることができる。また、ポリマーAおよびポリマーBを溶解させる有機溶媒とポリマーAの貧溶媒とは均一に混合することが好ましい。
【0052】
ポリマーAを効率良く析出させるためには、ポリマーAとポリマーAの貧溶媒の溶解度パラメーター(以下、SP値と称することもある)の差が大きい方が好ましい。その下限としては、1(J/cm
3)
1/2以上が好ましく、2(J/cm
3)
1/2以上がより好ましく、3(J/cm
3)
1/2以上がさらに好ましく、4(J/cm
3)
1/2以上が特に好ましい。また、上限としては、特に制限はないが、ポリマーAおよびポリマーBを溶解させる有機溶媒との親和性の観点から、20(J/cm
3)
1/2以下が好ましく、より好ましくは、18(J/cm
3)
1/2以下であり、さらに好ましくは16(J/cm
3)
1/2以下であり、特に好ましくは、14(J/cm
3)
1/2以下である。
【0053】
本発明における貧溶媒は有機溶媒又は水であり、用いるポリマーAの種類、望ましくは用いるポリマーA、B両方の種類によって、様々に変わる。具体的に例示するならば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、n−デカン、n−ドデカン、n−トリデカン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トリメチルリン酸、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸等のカルボン酸溶媒、アニソール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、ジグライム、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、水の中から選ばれる、少なくとも1種類以上を含む溶媒などが挙げられる。
【0054】
ポリマーAを効率的に微粒子化させる観点から好ましくは、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、水であり、最も好ましいのは、アルコール系溶媒、水であり、特に好ましくは、水である。
【0055】
なお、本発明を実施する際、使用する溶媒の沸点以上で実施することも可能であり、その際は、耐圧容器内にて加圧条件下で実施することが好ましい。
【0056】
本発明において、ポリマーA、ポリマーB、これらを溶解する有機溶媒およびポリマーAの貧溶媒を適切に選択して組み合わせることにより、効率的にポリマーAを析出させてポリマー微粒子を得ることが出来る。
本発明において、ポリマーA、ポリマーB、これらを溶解する有機溶媒およびポリマーAの貧溶媒を適切に選択して組み合わせることにより、効率的にポリマーAを析出させてポリマー微粒子を得ることが出来る。
【0057】
ポリマーA、B、これらを溶解する有機溶媒を混合溶解させた液は、ポリマーAを主成分とする溶液相と、ポリマーBを主成分とする溶液相の2相に相分離することが必要である。この際、ポリマーAを主成分とする溶液相の有機溶媒と、ポリマーBを主成分とする有機溶媒とは、同一でも異なっていても良いが、実質的に同じ有機溶媒であることが好ましい。
【0058】
2相分離の状態を形成する条件は、ポリマーA、Bの種類、ポリマーA、Bの分子量、有機溶媒の種類、ポリマーA、Bの濃度、発明を実施しようとする温度、圧力によって異なってくる。
相分離状態になりやすい条件を得るためには、ポリマーAとポリマーBのSP値の差が離れていた方が好ましい。
【0059】
この際、SP値の差としては1(J/cm
3)
1/2以上、より好ましくは2(J/cm
3)
1/2以上、さらに好ましくは3(J/cm
3)
1/2以上、特に好ましくは5(J/cm
3)
1/2以上、極めて好ましくは8(J/cm
3)
1/2以上である。SP値がこの範囲であれば、容易に相分離しやすくなる。
【0060】
ポリマーAとポリマーBの両者が有機溶媒に溶けるのであれば、特に制限はないが、SP値の差の上限として好ましくは20(J/cm
3)
1/2以下、より好ましくは、15(J/cm
3)
1/2以下であり、さらに好ましくは10(J/cm
3)
1/2以下である。
【0061】
ここでいう、SP値とは、Fedorの推算法に基づき計算されるものであり、凝集エネルギー密度とモル分子容を基に計算されるもの(以下、計算法と称することもある。)である(「SP値 基礎・応用と計算方法」山本秀樹著、株式会社情報機構、平成17年3月31日発行)。
【0062】
本方法により、計算できない場合においては、溶解度パラメーターが既知の有機溶媒に対し溶解するか否かの判定による、実験法によりSP値を算出(以下、実験法と称することもある。)し、それを代用する(「ポリマーハンドブック 第4版(Polymer Handbook Fourth Edition)」ジェー・ブランド(J.Brand)著、ワイリー(Wiley)社1998年発行)。
【0063】
また、ゴム質重合体を含むビニル系重合体などについては、マトリックス樹脂のSP値を上記の手法により入手し、それを用いるものとする。
【0064】
相分離状態になる条件を選択するためには、ポリマーA、ポリマーBおよびこれらを溶解する有機溶媒の3成分の比率を変化させた状態の観察による簡単な予備実験で作成できる、3成分相図で判別が出来る。
【0065】
相図の作成は、ポリマーA、Bおよび溶媒を任意の割合で混合溶解させ、静置を行った際に、界面が生じるか否かの判定を少なくとも3点以上、好ましくは5点以上、より好ましくは10点以上の点で実施し、2相に分離する領域および1相になる領域を峻別することで、相分離状態になる条件を見極めることが出来るようになる。
【0066】
この際、相分離状態であるかどうかを判定するためには、ポリマーA、Bを、本発明を実施しようとする温度、圧力にて、任意のポリマーA、Bおよび溶媒の比に調整した後に、ポリマーA、Bを、完全に溶解させ、溶解させた後に、十分な攪拌を行い、3日放置し、巨視的に相分離をするかどうかを確認する。
【0067】
しかし、十分に安定なエマルションになる場合においては、3日放置しても巨視的な相分離をしない場合がある。その場合は、光学顕微鏡・位相差顕微鏡などを用い、微視的に相分離しているかどうかを確認して、相分離を判別する。
【0068】
相分離は、溶媒中でポリマーAを主とするポリマーA溶液相と、ポリマーBを主とするポリマーB溶液相に分離することによって形成される。この際、ポリマーA溶液相は、ポリマーAが主として分配された相であり、ポリマーB溶液相はポリマーBが主として分配された相である。この際、ポリマーA溶液相とポリマーB溶液相は、ポリマーA、Bの種類と使用量に応じた体積比を有するようである。
【0069】
相分離の状態が得られ、且つ工業的に実施可能な濃度として、有機溶媒に対するポリマーA、Bそれぞれの濃度は、有機溶媒に溶解する可能な限りの範囲内であることが前提であるが、好ましくは、1質量%超〜50質量%、より好ましくは、1質量%超〜30質量%、さらに好ましくは、2質量%〜20質量%である。
【0070】
本発明における、ポリマーA溶液相とポリマーB溶液相の2相間の界面張力は、両相とも有機溶媒であることから、その界面張力が小さく、その性質により、形成するエマルションが安定に維持できることから、粒子径分布が小さくなるようである。特に、ポリマーA相とポリマーB相の有機溶媒が同一である時は、その効果が顕著である。
【0071】
本発明における2相間の界面張力は、界面張力が小さすぎることから、通常用いられる溶液に異種の溶液を加えて測定する懸滴法などでは直接測定することは出来ないが、各相の空気との表面張力から推算することにより、界面張力を見積もることが出来る。各相の空気との表面張力をr
1、r
2とした際、その界面張力r
1/2は、r
1/2=r
1−r
2の絶対値で推算することができる。この際、このr
1/2の好ましい範囲は、0超〜10mN/mであり、より好ましくは0超〜5mN/mであり、さらに好ましくは、0超〜3mN/mであり、特に好ましくは、0超〜2mN/mである。
【0072】
本発明における2相間の粘度は、平均粒子径および粒子径分布に影響を与え、粘度比が小さい方が、粒子径分布が小さくなる傾向にある。粘度比を本発明を実施しようとする温度条件下でのポリマーA溶液相/ポリマー溶液相Bと定義した場合において、好ましい範囲としては、0.1以上10以下、より好ましい範囲としては、0.2以上5以下、さらに好ましい範囲としては、0.3以上3以下、特に好ましい範囲としては、0.5以上1.5以下であり、著しく好ましい範囲としては、0.8以上1.2以下である。
【0073】
本発明を実施するにふさわしい温度は、使用するポリマーAおよびポリマーBが溶解する温度であれば特に限定されないが、工業的な実現性の観点から −50℃〜300℃の範囲であり、好ましくは、−20℃〜280℃であり、より好ましくは、0℃〜260℃であり、さらに好ましくは、10℃〜240℃であり、特に好ましくは、20℃〜220℃であり、最も好ましくは、20℃〜200℃の範囲である。本発明を実施するにふさわしい圧力は、工業的な実現性の観点から、減圧状態から100気圧の範囲であり、好ましくは、1気圧〜50気圧の範囲であり、さらに好ましくは、1気圧〜30気圧であり、特に好ましくは、1気圧〜20気圧である。
【0074】
80℃以上の条件下で微粒子化を行う場合、場合によっては高圧下もあり得るため、ポリマーA、ポリマーBや有機溶媒の熱分解を促進しやすい状態にあることから、極力酸素濃度が低い状態で行うことが好ましい。この際、溶解槽の雰囲気の酸素濃度は、5体積%以下が好ましく、より好ましくは、1体積%以下、より好ましくは、0.1体積%以下、さらに好ましくは、0.01体積%以下、特に好ましくは、0.001体積%以下である。
【0075】
なお、微量酸素濃度の測定は、実質的には難しいため、酸素濃度は、溶解槽内の容積、不活性ガスの酸素体積濃度、容器内の置換圧力及びその回数から理論的に算出するものとする。
【0076】
また、微粒子化に使用する原料の酸化劣化を防止する観点から、酸化防止剤を添加剤として使用しても良い。
【0077】
酸化防止剤としては、ラジカルを補足する目的で添加することから、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0078】
これら酸化防止剤の具体例としては、フェノール、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ベンゾキノン、1,2−ナフトキノン、クレゾール 、カテコール、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、6−t−ブチル−m−クレゾール 、2,6−ジ−t−ブチル −p−クレゾール 、4−t−ブチルカテコール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2−t−ブチルハイドロキノン、2−t−ブチル −4−メトキシフェノール等が挙げられる。
【0079】
酸化防止剤の濃度については、特に限定されないが、ポリマーBの質量に対して0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がさらに好ましく、0.05〜3質量%が最も好ましい。また、微粒子化に使用する原料の着色抑制および変性防止の観点から、酸化合物を添加して使用しても良い。
【0080】
酸化合物としては、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、乳酸、リンゴ酸、フマル酸、フタル酸、酒石酸、ギ酸、クエン酸、グリコール酸、サリチル酸、マレイン酸、マロン酸、グルタル酸、シュウ酸、アジピン酸、コハク酸、ヒドロコハク酸、ポリアクリル酸、L−グルタミン酸、アスパラギン酸、アデノシン、アルギニン、オルニチン、グアニン、サルコシン、システイン、セリン、チロシン等のアミノ酸、塩酸、硫酸、燐酸、硝酸、ピロリン酸、トリポリ燐酸等の無機酸が使用可能である。中でもクエン酸、酒石酸、マロン酸、シュウ酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、フタル酸、コハク酸、ポリアクリル酸を好ましく用いることができる。
【0081】
酸化合物の濃度については、特に限定されないが、ポリマーBの質量に対して0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がさらに好ましく、0.05〜3質量%が最も好ましい。
【0082】
エマルションの形成に際しては、ポリマーA溶液相が微粒子状の液滴になるようにエマルションを形成させるが、一般に相分離させた際、ポリマーB溶液相の体積がポリマーA溶液相の体積より大きい場合に、このような形態のエマルションを形成させやすい傾向にあり、特にポリマーA溶液相の体積比が両相の合計体積1に対して0.4以下であることが好ましく、0.4〜0.1の間にあることが好ましい。上記相図を作成する際に、各成分の濃度における体積比を同時に測定しておくことにより、適切な範囲を設定することが可能である。
【0083】
本発明では、このような、ポリマーAとポリマーBと有機溶媒とを混合したときに、ポリマーAを主成分とする溶液相とポリマーBを主成分とする溶液相の2相に分離する系において、ポリマーAとポリマーBと有機溶媒を、ポリマーAを主成分とする溶液相とポリマーBを主成分とする溶液相の2相に分離するような比率でエマルションを形成させる。
【0084】
本製造法で得られる微粒子は、粒子径分布の小さい微粒子になるが、これは、エマルション形成の段階において、非常に均一なエマルションが得られるからである。この傾向はポリマーA、ポリマーBの両方を溶解する単一溶媒を用いる際に顕著である。このため、連続的にエマルションを形成させるに十分な混合性能を得るためには、混合装置を使用することが好ましい。
【0085】
混合装置に原料を供給するには、ポリマーAを有機溶媒に溶解させたものとポリマーBを有機溶媒に溶解させたものをそれぞれ供給しても良いが、ポリマーA、ポリマーB、有機溶媒をそれぞれ供給しても良く、さらにポリマーA、ポリマーBを有機溶媒に溶解させたものを供給しても良い。
【0086】
このように、ポリマーAとポリマーBと有機溶媒とを溶解混合したときに、ポリマーAを主成分とする溶液相と、ポリマーBを主成分とする溶液相の2相に相分離する系を用い、エマルション化させた後に、ポリマーAの貧溶媒を容器に連続添加することで、ポリマーAを析出させ、ポリマーAからなるポリマー微粒子を連続的に取り出すことが重要である。このような製造方法を実施するための、管状混合装置及び管状容器を用いた一例の概略図を
図1に示す。
【0087】
ポリマーAを有機溶媒に溶かした溶液を入れた溶解槽1及びポリマーBを有機溶媒に溶かした溶液を入れた溶解槽2はそれぞれ供給ポンプ3を介して管状混合装置4に供給される。管状混合装置内で供給液はエマルション化が進み、その液は管状容器7に供給される。管状容器には貧溶媒添加ライン6が接続されており、貧溶媒添加ライン6では貧溶媒を添加ポンプ5を用いて複数の箇所から管状容器内に連続的に添加することでポリマーAを微粒子化させることができる。管状容器7の出口から、微粒子が析出した分散液を連続的に回収する。
【0088】
混合装置はポリマーA溶液とポリマーB溶液がエマルションを形成させるに十分な剪断力を得ることができれば特に形状は限定されず、槽状であっても管状であっても良い。
【0089】
槽状混合装置の形状はポリマーAとポリマーBと有機溶媒とを溶解混合したときにエマルション化できれば角型でも円筒型でも良いが、円筒型のほうが好ましい。円筒型の槽状混合装置を使用する場合、縦に置いても横に置いても良いが、工業的には直径が0.2m〜10mの間にあることが好ましい。
【0090】
槽状混合装置としては攪拌機構を備えたものが好ましく、攪拌機構には攪拌羽による液相攪拌法、連続2軸混合機による攪拌法、ホモジナイザーによる混合法、超音波照射、静的混合構造物を格納した槽状混合装置等通常公知の方法が挙げられ、設備費用や汎用性の観点から攪拌羽や連続2軸混合機、ホモジナイザーのような動的混合構造物を格納した槽状混合装置が好ましい。
【0091】
動的混合構造物を格納した槽状混合装置としては、可動部分のある1つ以上のミキシングエレメントが内部で回転し、内容物の混合を促進させる槽状混合装置が挙げられる。
【0092】
1つ以上のミキシングエレメントとして攪拌羽を使用する場合、具体的には、プロペラ型、パドル型、フラットパドル型、タービン型、ダブルコーン型、シングルコーン型、シングルリボン型、ダブルリボン型、スクリュー型、ヘリカルリボン型などが挙げられるが、系に対して十分に剪断力をかけられるものであれば、これらに特に限定されるものではない。また、効率的な攪拌を行うために、槽内に邪魔板等を設置してもよい。
【0093】
管状混合装置の形状は槽状混合装置と同様にポリマーAとポリマーBと有機溶媒とを溶解混合したときにエマルション化できればどのような形状でも良く、特に限定されないが、工業的には直径が0.002m〜1mの間にあることが好ましい。また長さと内径の比は3〜1000の間にあることが好ましい。さらに好ましくは、10〜500である。
【0094】
管状混合装置としては攪拌機構を備えたものが好ましく、攪拌機構には攪拌羽による液相攪拌法、連続2軸混合機による攪拌法、ホモジナイザーによる混合法、超音波照射、静的混合構造物を格納した管状混合装置等通常公知の方法が挙げられ、設備費用や設置スペースの観点から静的混合構造物を格納した管状混合装置が好ましい。
【0095】
静的混合構造物を格納した管状混合装置としては、可動部分のないミキシングエレメントが内部に固定されている管状混合装置が挙げられる。
【0096】
ミキシングエレメントとしては、管内に流入した溶液の流れの分割と流れの方向を変え、分割と合流を繰り返すことにより、溶液を混合するものが挙げられ、このような管状反応器としては、例としてSMX型、SMR型のスルザー式のラインミキサー、東レ静止型管内混合器方式のラインミキサーなどが挙げられる。
ミキシングエレメントはポリマーAを主成分とする溶液相が目的の粒子径状の液滴を形成するエマルションが形成できれば、どのような装置を使用してもよく、単独で用いても複数用いても異なるタイプを組み合わせて用いてもよい。
【0097】
前項により形成したエマルションと貧溶媒を容器に連続的に添加することでポリマーAを連続的に析出させて取り出すことが重要である。ここで容器は供給口と取り出し口を持つ容器である必要がある。容器の形状は貧溶媒が連続的に添加でき、連続的に微粒子を取り出すことができれば特に限定されず、槽状であっても管状であっても良い。
【0098】
槽状容器の形状は貧溶媒が添加できればどのような形状でも良く、特に限定されないが、工業的には直径が0.2m〜10mの間にあることが好ましい。
【0099】
槽状容器としては攪拌機構を備えたものが好ましく、その場合は前記記載の槽状混合装置の撹拌機構と同様の構造を用いることができる。
【0100】
管状容器の形状は槽状容器と同様に貧溶媒が添加できればどのような形状でも良く、特に限定されないが、工業的には直径が0.002m〜1mの間にあることが好ましい。また、長さと内径の比は3〜1000の間にあることが好ましい。さらに好ましくは、10〜500である。
【0101】
管状容器の内部には攪拌機構を備えたものでも良いし、攪拌機構のない配管であっても良い。攪拌機構がある場合は前記記載の槽状混合装置の攪拌機構と同様の構造を用いることができる。
【0102】
管状容器に貧溶媒を連続的に添加するには、2箇所以上で添加するのが好ましく、3〜10箇所から添加することがより好ましい。貧溶媒を2箇所以上から添加をする際も、エマルションと貧溶媒の混合部分は攪拌機構を備えたものでも良いし、攪拌機構のない配管であっても良い。
【0103】
このように混合装置の後段に容器を接続し、貧溶媒を連続的に添加することにより、エマルションの形成及びポリマー微粒子の析出を連続的に実施することが可能となる。
【0104】
エマルションを形成する混合装置と貧溶媒を添加する容器の両方に管状のものを用いる場合、連続した管状容器を用いてエマルションの形成と貧溶媒の添加を同時に実施することができる。この場合、1つ以上の管状容器内の前段でエマルションを形成させ、後段で貧溶媒を添加する必要がある。
【0105】
加える貧溶媒の量は、エマルションの状態にもよるが、好ましくは、エマルション総質量1質量部に対して、0.1から10質量部、より好ましくは、0.1から5質量部、さらに好ましくは、0.2から3質量部であり、特に好ましくは、0.2質量部から2質量部であり、最も好ましくは、0.2から1.0質量部である。
【0106】
貧溶媒を2箇所以上から添加する場合、それぞれの箇所から添加する貧溶媒の量は等量ずつ添加しても等量でなくとも良い。エマルションの状態にもよるが等量でない場合は、添加量の最大量と最小量の比は50/1以下、好ましくは10/1以下である。
【0107】
貧溶媒とエマルションとの接触時間は、微粒子が析出するのに十分な時間であればよいが、十分な析出を引き起こしかつ効率的な生産性を得るためには、貧溶媒添加終了後5分から50時間であり、より好ましくは、5分以上10時間以内であり、さらに好ましくは10分以上5時間以内であり、特に好ましくは、20分以上4時間以内である。この好ましい時間の範囲内で行うことにより、エマルションからポリマー微粒子に転換する際に、微粒子間の凝集を抑制することができ、粒子径分布の小さいポリマー微粒子を得ることができる。
【0108】
このようにして作られたポリマー微粒子分散液は、ろ過、減圧濾過、加圧ろ過、遠心分離、遠心ろ過、スプレードライ等の通常公知の方法で固液分離することにより、微粒子粉体を回収することが出来る。
【0109】
固液分離したポリマー微粒子は、必要に応じて、溶媒等で洗浄を行うことにより、付着または含有している不純物等の除去を行い、精製を行う。
【0110】
本発明の方法においては、微粒子粉体を得る際に行った固液分離工程で分離された有機溶媒及びポリマーBを再度活用するリサイクル化を行うことが可能である。
【0111】
固液分離で得た有機溶媒は、ポリマーB、有機溶媒および貧溶媒の混合物である。この有機溶媒から、貧溶媒を除去することにより、エマルション形成用の有機溶媒として再利用することが出来る。貧溶媒を除去する方法としては、通常公知の方法で行われ、具体的には、単蒸留、減圧蒸留、精密蒸留、薄膜蒸留、抽出、膜分離などが挙げられるが、好ましくは単蒸留、減圧蒸留、精密蒸留による方法である。
【0112】
単蒸留、減圧蒸留等の蒸留操作を行う際は、ポリマー微粒子製造時と同様、系に熱がかかり、ポリマーBや有機溶媒の熱分解を促進する可能性があることから、極力酸素のない状態で行うことが好ましく、より好ましくは、不活性雰囲気下で行う。具体的には、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素条件下で実施する。また、酸化防止剤としてフェノール系化合物を再添加しても良い。
【0113】
リサイクルする際、貧溶媒は、極力除くことが好ましいが、具体的には、貧溶媒の残存量が、リサイクルする有機溶媒及びポリマーBの合計量に対して、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは、3質量%以下、特に好ましくは、1質量%以下である。貧溶媒の残存量がこの好ましい範囲であれば、微粒子の粒子径分布が十分に小さく、微粒子が凝集したりすることもない。
【0114】
リサイクルで使用する有機溶媒中の貧溶媒の量は、通常公知の方法で測定でき、ガスクロマトグラフィー法、カールフィッシャー法などで測定できる。
【0115】
貧溶媒を除去する操作において、現実的には、有機溶媒、ポリマーBなどをロスすることもあるので、適宜、初期の組成比に調整し直すのが好ましい。
【0116】
このようにして得られた微粒子の粒径は、通常1000μm以下、好ましい態様によれば、500μm以下であり、より好ましい態様によれば、300μm以下、さらに好ましい態様によれば、100μm以下、特に好ましい態様によれば、50μm以下のものを製造することが可能である。下限としては、通常50nm以上、好ましい態様によれば100nm以上であり、より好ましい態様によれば500nm以上、さらに好ましい態様によれば1μm以上、特に好ましい態様によれば1μm超、著しく好ましい態様によれば2μm以上、最も好ましい態様によれば10μm以上のものを製造することが可能である。
【0117】
微粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡写真から任意の100個の微粒子直径を特定し、その算術平均を求めることにより算出することが出来る。真円状でない場合、即ち楕円状のような場合は、微粒子の最大径をその粒子径とする。粒子径を正確に測定するためには、少なくとも1000倍以上、好ましくは、5000倍以上の倍率で測定する。
【0118】
本方法は、ポリマーA溶液相とポリマーB溶液相からなるエマルションを経由した微粒子の製造法であることから、特にこれまで製造が困難であった、粒子径分布が小さく、かつ平均粒子径が10nm以上の耐熱性の高いポリマー、即ちガラス転移温度あるいは融点が100℃以上を有するポリマー微粒子を製造するのに好適である。
【0119】
しかし、本発明の製造法は、高耐熱のポリマーAの微粒子を製造するのに好適であるが、必ずしも高耐熱のポリマーAの微粒子に限定されるものではない。すなわち耐熱性の指標となる、ガラス転移温度や融点が比較的低くても溶解性が十分でなく、高温下での溶解が必要な樹脂などにおいても、本方法は好適に用いられる。よってポリマーの中でも、ガラス転移温度または融点が50℃以上のものについても適用可能であり、好ましくは、100℃以上のもの、さらに好ましくは、150℃以上のものに対して好適であり、その上限は、溶解性の観点から、400℃以下のものについて、好適である。
【0120】
特に、近年ポリマー微粒子には、粒子径分布を小さくすることと同時に、材質の高耐熱化が要求される用途が多数あり、ビニル系ポリマーでは、一般的に架橋を行ったり、特殊なモノマーを用いたりすることによりかかる課題の解決がなされているが、本発明によりかかる特別なポリマー設計を要せずとも、高耐熱性のポリマーをそのままのポリマー設計で微粒子化するができるので、好適である。
【0121】
ここでいう、ガラス転移温度とは、示差走査熱量測定法(DSC法)を用いて、30℃から予測されるガラス転移温度よりも30℃高い温度以上まで、昇温速度、20℃/分の昇温条件で昇温し、1分間保持した後、20℃/分の降温条件で0℃まで一旦冷却し、1分間保持した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観察されるガラス転移温度(Tg)を指す。また、融点は、二度目の昇温時に融解熱量を示した際のピークトップの温度のことを指す。
【0122】
また本発明は、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ビニル系ポリマー、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンなどのような熱可塑性樹脂のポリマー微粒子で、特に耐熱性の高いポリマー微粒子を得るのに好適である。
【0123】
このように本発明の方法で作製された微粒子は、数平均粒子径の平均値からのずれが3.0%以内であり、且つ粒子径分布指数が2.0以内の均一性の高い微粒子が得られることや、ポリマーでの微粒子化、特に耐熱性に優れるポリマーの微粒子を品質よく、安定的に製造できることから、産業上、各種用途で、極めて実用的に利用することが可能である。
【実施例】
【0124】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)微粒子の数平均粒子径および粒子径分布指数測定方法−1
微粒子の数平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡JSM−6301NF)写真から無作為に選択された100個の粒子の直径を測定し、その算術平均を求めることにより算出することが出来る。上記写真において、粒子の形状が真円状でない場合、即ち楕円状のような場合は、粒子の最大径をその粒子径とする。粒子径を正確に測定するためには、少なくとも1000倍以上、好ましくは、5000倍以上の倍率で測定する。
【0125】
また、粒子径分布指数は、上記測定で得られた粒子直径の測定値を用いて、下記数値変換式に基づき算出する。
【0126】
【数1】
【0127】
尚、Ri:粒子個々の粒子径、n:測定数(=100)、Dn:数平均粒子径、Dv:体積平均粒子径、PDI:粒子径分布指数とする。
(2)微粒子の数平均粒子径および粒子径分布指数測定方法−2
微粒子の数平均粒子径の測定において、走査型電子顕微鏡での実体観察による計測が困難な場合、水に分散させた微粒子を、レーザー回折・光散乱方式の粒度分布計 日機装株式会社製Microtrac MT3300EXIIを用いて測定したものを数平均粒子径とした。また、粒子径分布指数は、測定した体積平均粒子径を数平均粒子径で除して得られる数値とした。
【0128】
測定条件は、下記のとおりである。
【0129】
使用装置:日機装株式会社製、Microtrac MT3300EXII
同社解析ソフトDMS Ver.11.0.0−246K
測定分散媒:イオン交換水
溶媒屈折率:1.333
測定時間 :10秒
測定回数 :1回
粒子屈折率:1.60
透過性 :透過
形状 :非球形。
実施例1<ポリエーテルスルホン微粒子の製造方法>
ポリマーAとしてポリエーテルスルホン2.5g(重量平均分子量67,000、住友化学株式会社製“スミカエクセル”(登録商標)5003P)とN−メチル−2−ピロリドン22.5g(三菱化学株式会社製)、ポリマーBとしてポリビニルアルコール2.5g(日本合成化学工業株式会社製、“ゴーセノール”(登録商標)GL−05)とN−メチル−2−ピロリドン22.5gをそれぞれ50mLのフラスコの中に加え、80℃に加熱してポリマーが溶解するまで攪拌し、室温に戻した。なお、それぞれの液を等量混合後に静置すると2相に分離することを確認している。ポリマーAの溶液とポリマーBの溶液はそれぞれ供給ポンプ(富士テクノ工業株式会社製 HYM−08P、配管径:2mm)にて静的混合構造物を格納した管状混合装置(東レエンジニアリング株式会社製、MHM−0.7−10−S、内径:1/8inch、長さ83mm)に供給できるようになっている。マイクロミキサーの2次側に接続された配管(配管径2mm、長さ2000mm)では4箇所から貧溶媒を送液ポンプにて添加できるようになっており、マイクロミキサーと1箇所目の貧溶媒添加口までの距離は100mm、2箇所目以降の貧溶媒添加口間距離は500mmの距離(配管径:2mm)である。ポリマーAの溶解液とポリマーBの溶解液をそれぞれ0.2mL/分で静的混合構造物を格納した管状混合装置に供給した後、貧溶媒にはイオン交換水を用い、流量をそれぞれ0.1mL/分にて4箇所から配管中に貧溶媒添加ポンプ(日本精密科学株式会社製 NP−KX−120)を用いて添加した。得られた懸濁液を30分毎に3つのビーカーに取り分けた後、それぞれをろ過し、イオン交換水50gで洗浄し、濾別したものを80℃、10時間真空乾燥を行い、それぞれ0.6gの白色固体を得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、数平均粒子径はぞれぞれ90nm、90nm、90nm、粒子径分布指数はそれぞれ1.12、1.20、1.09の微粒子であった。
実施例2<ポリ乳酸微粒子の製造方法>
ポリマーAとしてポリ乳酸 3.5g(D体1.2%、重量平均分子量(PMMA換算)16万、融点168℃)とアセト酢酸エチル22.0g、ポリマーBとしてポリビニルピロリドン3.5g(株式会社日本触媒製、重量平均分子量844,000)とアセト酢酸エチル22.0gをそれぞれ50mLのフラスコの中に加え、95℃に加熱してポリマーが溶解するまで攪拌した。なお、それぞれの液を等量混合後に静置すると2相に分離することを確認している。ポリマーAの溶液とポリマーBの溶液は、それぞれ供給ポンプ(山善株式会社製 QG150、配管径:2mm)にて、ヘリカルリボン型の攪拌翼を備えた200mlセパラブルフラスコに供給できるようになっている。セパラブルフラスコの出口側の配管に設置した供給ポンプ(山善株式会社製 QG150、配管径:2mm)の吐出口には、貧溶媒添加ポンプ(日本精密科学株式会社製 NP−KX−120)にて貧溶媒を添加できるようになっており、続いて静的混合構造物を格納した管状容器としてスタティックミキサー(株式会社ノリタケカンパニーリミテド製 T3、内径:3.4mm、長さ:100mm)が接続されている。ポリマーAの溶解液とポリマーBの溶解液をそれぞれ3g/分でヘリカルリボン型の攪拌翼を備えた200mlセパラブルフラスコに供給した後、30分撹拌を実施してエマルションを形成させた。その後、系の温度を40℃に下げて、セパラブルフラスコの出口側の配管に設置した供給ポンプにて6g/分、貧溶媒としてエタノールを6g/分の速度で管状容器の入口に添加した。
【0130】
管状容器の出口から得られた懸濁液を2分毎に3つのビーカーに取り分けた後、それぞれをろ過し、エタノール50gで洗浄し、濾別したものを50℃、10時間真空乾燥を行い、それぞれ0.8gの白色固体を得た。得られた粉体を粒度分布計で分析したところ、数平均粒子径はそれぞれ7.6μm、7.7μm、7.6μm、粒子径分布指数はそれぞれ1.42、1.44、1.44の微粒子であった。
比較例1<バッチ式によるポリエーテルスルホン微粒子の製造>
100mlの4口フラスコの中に、ポリマーAとしてポリエーテルスルホン2.50g(重量平均分子量67,000、住友化学株式会社製“スミカエクセル”(登録商標)5003P)、有機溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン45g、ポリマーBとしてポリビニルアルコール2.50g(日本合成化学工業株式会社製“ゴーセノール”(登録商標)GL−05)を加え、80℃に加熱し、ポリマーが溶解するまで攪拌を行った。系の温度を室温に戻した後に、450rpmで攪拌しながら、貧溶媒として50.0gのイオン交換水を、送液ポンプを経由して、0.410g/分のスピードで滴下した。約12.0gのイオン交換水を加えた時点で、系が白色に変化した。全量の水を入れ終わった後に、30分間攪拌し、得られた懸濁液を、ろ過し、イオン交換水100gで洗浄し、濾別したものを、80℃、10時間真空乾燥を行い、白色固体を2.0g得た。これらの操作においてポリエーテルスルホンの仕込み量を2.48gおよび2.52gに変更し、それ以外は同じ条件にて合計3回実施した。それぞれ得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、数平均粒子径はそれぞれ14.6μm、15.3μm、14.4μm、粒子径分布指数はそれぞれ1.29、1.36、1.30の微粒子であった。
比較例2<バッチ式によるポリ乳酸微粒子の製造方法>
200mlの4口フラスコの中に、ポリマーAとしてポリ乳酸 3.5g(D体1.2%、重量平均分子量(PMMA換算)16万、融点168℃)、有機溶媒としてアセト酢酸エチル44.0g、ポリマー(B)としてポリビニルピロリドン3.5g(株式会社日本触媒製、重量平均分子量844,000)を加え、内温が95℃になるまで加熱し、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌を行った。その後、攪拌を継続しながら、系の温度を40℃に下げた。この際、系内はエマルションが形成されていた。引き続き、貧溶媒としてエタノール25gを一括添加した。全量のエタノールを入れ終わった後に、さらに10分間攪拌し、続いてエタノール25gを一括添加した。全量のエタノールを入れ終わった後に、さらに10分間攪拌し、室温まで降温した。得られた懸濁液を、ろ過し、エタノール50gで洗浄し、濾別した。得られたケークを50℃ 10時間真空乾燥を行い、粉体状の白色固体を3.2g得た。これらの操作においてポリ乳酸の仕込み量を3.47gおよび3.53gに変更し、それ以外は同じ条件にて合計3回実施した。それぞれ得られた粉体を粒度分布計で分析したところ、数平均粒子径はそれぞれ6.9μm、7.4μm、8.7μm、粒子径分布指数はそれぞれ2.02、1.92、2.30の微粒子であった。
ポリマーAとポリマーBと有機溶媒とを溶解混合したときに、ポリマーAを主成分とする溶液相と、ポリマーBを主成分とする溶液相の2相に相分離する系において、ポリマーAとポリマーBと有機溶媒を混合装置に連続供給することでエマルションを形成させた後に容器に供給し、容器内でポリマーAの貧溶媒を連続添加し、ポリマーAを析出させ、ポリマーA微粒子を連続的に取り出すことを特徴とするポリマー微粒子の製造方法。