(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
路面上を転動する車両タイヤの物理的挙動をコンピュータを実行してシミュレートする方法であって、前記タイヤのトレッドが、路面と接触領域を有し、前記接触領域は、前記タイヤと路面との間の滑りが発生しない摩擦接触領域、及び滑り接触領域を含み、前記方法は、少なくとも、タイヤのスリップ角及び縦方向のスリップ率を含むタイヤの物理的転動条件及び動作条件に関連づけられた動的パラメータに基づくと共に前記タイヤに特有の物理的パラメータに基づいて、前記路面と前記車両との間で前記タイヤにより伝達される、前記物理的挙動である、縦力(Fx)及び横力(Fy)を計算することから成るステップを有する、方法において、
前記方法は、
−既知の物理的法則及び/又は実験により確立された法則を適用することにより、第1のモデルとして、前記縦力(Fx)、前記横力(Fy)、及び、前記接触領域内におけるこれらの強度分布に関連づけられたセルフアライニングトルクのモデル、及び摩擦接触領域と滑り接触領域との境界である推定された固有の通過点(b)において、前記タイヤの剪断力とスリップを発生させる力が等しくなるとしたモデルを構築する予備段階を有し、前記第1のモデルは、前記タイヤのスリップ角及びスリップ率を含む前記動的パラメータ、前記トレッドの縦剛性及び横剛性を含む前記特有パラメータ、及び前記固有の通過点(b)の横座標と関連して表されたそれぞれの方程式であり、
−ディジタル用途を目的として値を前記動的パラメータ及び前記特有の物理的パラメータに割り当てるステップ(4)を有し、
−一連のコンピュータ処理サイクルから成るディジタル用途反復段階(8〜10)であって、逐次近似法により、少なくとも前記通過点の横座標(bo)、横力(Fyo)及びセルフアライニングトルク(Mzo)の既知の値又は推定値から、前記動的パラメータ及び前記特有の物理的パラメータに割り当てられた前記値に関する前記第1のモデルの方程式を解き、前記通過点の前記横座標(b)、前記横力(Fy)、及び前記セルフアライニングトルク(Mz)についての新たな値を計算する反復段階を有し、その結果、前記車両の走行中における前記縦力、前記横力、及び前記セルフアライニングトルクをコンピュータで計算することができ、前記縦力が、少なくとも前記スリップ角及び前記縦方向のスリップ率に基づいて計算される、シミュレーション方法。
前記方法は、各反復段階の終了後に実施されるステップであって、前記反復段階の実行により得られた前記動的パラメータの受ける変化により、且つ、新たな反復段階(8〜10)を開始するために、少なくとも前記動的パラメータを更新するステップ(4)から成るステップを更に有する、請求項1記載のシミュレーション方法。
前記第1のモデルは、少なくとも、前記路面に対する前記タイヤゴムの摩擦係数(μ)の値に対する前記接触温度(Tc)の変化の影響を考慮に入れることにより高度化される、請求項4記載のシミュレーション方法。
前記第1のモデルは、前記タイヤトレッドの前記ゴム配合物の剪断弾性率(C*)の値に対する前記タイヤ内部温度(Ti)の影響を考慮に入れることにより高度化される、請求項4又は請求項5に記載のシミュレーション方法。
第2のモデルは、前記接触表面に入るときの前記接触温度(Tc)をコンピュータ処理するよう前記タイヤの前記周辺トレッド温度(Ts)を用いる、請求項4乃至6の何れか1項に記載のシミュレーション方法。
各反復段階に先立って、予備段階(7)が実施され、前記予備段階中、前記接触領域の寸法を含む不確定な量が、前記第1のモデルの方程式のうちの幾つかの方程式並びに前記動的パラメータ及び前記特有の物理的パラメータに割り当てられた値に基づいてコンピュータ処理され、各不確定量は、前記逐次近似法により計算するステップにおいて、前記モデルを構築するステップにおいて割り当てられた値と共に用いられる、請求項1乃至7の何れか1項に記載のシミュレーション方法。
シャーシ及び路面上を転動する数本のタイヤを備えた車両の物理的挙動をコンピュータを実行してリアルタイムでシミュレートする方法であって、請求項1〜8の何れか1項に記載の方法を有し、少なくとも第1のモデルが各タイヤについて用いられ、各タイヤについて、前記シャーシモデルは、少なくとも前記第1のモデルに、前記動的パラメータのうちの少なくとも幾つかの値を与え、各タイヤについて、前記シャーシモデルは、少なくとも前記第1のモデルを実施することにより得られた前記縦力、前記横力、及び前記セルフアライニングトルクの値を用いる、方法。
請求項9に記載の方法であって、請求項4に記載されたタイヤの物理的挙動をシュミレートする方法を有し、前記第1のモデル、第2のモデル、及び第3のモデルの各々が、各タイヤについて用いられると共に所与の動的シャーシモデルと関連し、各タイヤについて、前記シャーシモデルは、前記モデルに前記動的パラメータのうちの少なくとも幾つかの値を与え、各タイヤについて、前記シャーシモデルは、前記第1のモデル、前記第2のモデル、及び前記第3のモデルを実施することにより得られた前記縦力、前記横力、及び前記セルフアライニングトルクの値を用いる、方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上述したように、本発明は、特に、路面上を転動している車両タイヤの物理的挙動をシミュレートする方法に関する。
【0021】
タイヤが路面上を転動している状況では、タイヤトレッドは、少なくとも1つの密着接触領域及び少なくとも1つの滑り接触領域によって形成される地面との接触領域を有する。
【0022】
この方法の目的は、或る特定の数の重要な量に基づいて、路面と車両との間でタイヤによって伝達される種々の力の値を提供することにある。
【0023】
本発明の一層の理解のために、本明細書は、以下の記載上の慣習を用い、これらのうちの幾つかは、当業者には既に知られており、既存のタイヤモデルで用いられている。
【0024】
〔表1〕
δ スリップ角
δ′ブレーカストリップのところのスリップ角
α
1 プライステア
γ 傾斜角(キャンバ)
τ 縦スリップ率
Fx 縦力
Fy 横力
Fz 荷重
V 路面上箇所の速度
W
X クラウン上箇所のその軸線に沿う速度
Mz 自動調心トルク
Ny 力Fyに関連づけられた自動調心トルクの成分
Nx 接触領域の力Fxの幅方向分布状態に関連づけられた自動調心トルクの成分
R
L タイヤの横剛性
R
LL タイヤの縦剛性
k
T タイヤのねじり剛性
S
Z ドームブロックの縁部のところの曲げ柔軟性
μ タイヤゴムと路面との間の動的密着係数:μ(P,Vg,Ts)
μ
0 静的粘着係数
Lx 接触面積の固有長さ
Ly 接触面積の幅
ent トレッドのグルービング率
AssX トレッドの縦弛緩係数
AssY トレッドの横弛緩係数
G
* タイヤトレッドのゴム配合物の剪断弾性率
e
KM タイヤトレッドの厚さ
a 接触面積の長さの半分
b 接触領域における初期滑り横座標
Ti タイヤ表面とブレーカストリップとの間のゴムの内部温度プロフィール
Ts トレッドの平均表面温度
Tc ゴムと路面との間のインタフェースのところの滑り温度
Vg タイヤと路面との間のスリップ速度
X
N,Y
N タイヤクラウン上箇所の座標(タイヤの底部のところで接触領域の真上のタイヤトレッドの内部領域)
X
k,Y
k 路面とのインタフェースの高さ位置におけるタイヤトレッド上箇所の座標
【0025】
図1〜
図3は、基準として用いられる座標系を定めている。
【0026】
この座標系は、以下によって定められる。
【0027】
O:接触領域の中心のところの基準点の原点
OX:速度ベクトルに平行な軸線
LY:OXに垂直であり、キャンバとは無関係に路面の平面に平行な軸線
【0028】
この座標系では、符号に関する慣例上、τ>0の場合、縦力が軸線OXの方向に生じ、δ>0の場合、横力が軸線OYの方向に生じ、γ>0の場合、いわゆる負の自動調心トルクM
2が生じ、それにより負の横スラストが生じる(即ち、OYとは逆の方向に向いたスラスト)ことが必要である。
【0029】
路面と車両との間でタイヤによって伝達される力は、縦力Fx、横力Fy及び自動調心トルクMzを含み、この自動調心トルクは、縦力及び横力の強度並びに接触領域におけるこれらの分布状態に関連づけられる。
【0030】
影響量としては、代表的には、一方において、動的パラメータ、即ち、少なくとも時間に関連して変化し、タイヤの物理的転動及び使用条件と関連した動的パラメータ、他方において、問題のタイヤに特有の物理的パラメータが挙げられる。
【0031】
動的パラメータとしては、スリップ角、スリップ率、キャンバ角、荷重、速度、インフレーション圧力、空気温度、路面温度、初期タイヤ温度及び時間が挙げられる。
【0032】
特有パラメータとしては、接触面積の寸法(長さ、幅、形状係数)、接触領域に沿う圧力プロフィールp(x)、トレッドの縦剛性Kx及び横剛性Ky、タイヤ構造体の剛性、即ち、横剛性R
L、縦剛性R
LL、半径方向剛性R
rr、ねじり剛性k
T、ドームブロックの剛性1/S2、ゴム/路面対の密着の法則μ、タイヤの隆起表面(「リブ」)相互間の長さ方向伝達パラメータが挙げられ、これら特有パラメータは、例として以下に与えられた式によって考慮に入れることができる特定の実験によって確立された関係式により動的パラメータに関連づけられる。
【0033】
横剛性は、次式のように、横力の作用下において車輪の平面に対する接触領域(
図4を比較参照されたい)のオフセットdyに相当している。
【数1】
上式においてR
LO[N/m]は、構造的部分を表し、R
LP[N/m/バール]は、タイヤ部分を表し、pは、バールで表された圧力である。
【0034】
縦剛性は、縦力Fxの存在下において車輪の長手方向軸線に関する接触領域(
図5を比較参照されたい)のオフセットdxに相当している。
【数2】
上式において、R
LL0[N/m]は、構造的部分を表し、R
LLp[N/m/バール]は、タイヤ部分を表し、pは、バールで表された圧力である。
【0035】
自動調心トルクMzの発生により、リム平面に対してZ軸回りに次式で表されるタイヤカバーの角度Δδを有するねじりが生じる(
図6を比較参照されたい)。
【数3】
【0036】
タイヤカバーのねじり剛性は、構造的成分k
T0[N・m/rad]及び例えば荷重につれてねじり剛性の変化を表す成分k
TZ[m/rad]を含み、次式が成り立つ。
【数4】
【0037】
接触領域の取る実際のスリップ角δ′は、次のように車輪の軸線のところでのスリップ角に関連して表される。
【数5】
【0038】
クラウンの変形は、例えば次のように表される接触領域の中心のところの曲率で二次法則によってモデル化できる。
【数6】
上式において、S
2は、縁方向の曲げ柔軟性を表すパラメータである。
【0039】
半径方向剛性は、荷重Fzをリムに関連してクラウンの撓みに関連づける。これは、圧力に依存しており、2つの項、即ち、圧力がゼロの状態におけるタイヤの半径方向剛性に相当する構造的項R
R0[N/m]及びタイヤ項R
RP[N/m/バール]に分けられる。
【数7】
【0040】
接触面積の長さは、次式によって定義される。
【数8】
この公式により、荷重及びインフレーション圧力の影響を考慮に入れることができる。
【0041】
接触領域の幅は、次式によって定義される。
【数9】
上式において、Ly
cは、タイヤの中心のところのリブの幅であり、Ly
eは、以下の公式によって計算されるショルダ部のところのリブの幅である。
【数10】
【0042】
接触領域の有効表面は、グルービング及び形状係数によって重みづけされた幅と長さの積として定義される。
【数11】
【0043】
形状係数C
formは、荷重に対する接触領域の形状の変化を考慮に入れている。
【0044】
タイヤ構造体が撓むと、クラウンは、結成された構造体の固有の量である傾きα
1を呈する。
【0045】
接触領域の開始(入)と終了(出)との間の圧力プロフィールは、次のように定められる。
【数12】
【0046】
この圧力分布は、次のようなものである。
【数13】
【0047】
荷重が小さい場合、このプロフィールは、性状が放物線状(n=1)である。荷重が大きい場合、圧力プロフィールは、ほぼ一様である。
【0048】
好ましくは、nは、接触領域の長さLxに比例して変化する実数である。荷重が小さい場合にnが小さすぎるようになる(又は、場合によっては負になる)のを阻止するため、次のようにnの下限は、1に設定される。
【数14】
【0049】
本発明の方法は、好ましくは熱的モデル(第2のモデル)に結合された少なくとも1つの機械的モデル(第1モデル)を使用する。
【0050】
これらモデルの各々は、本方法の予備段階中に構築され、方程式系の形態を取る。
【0051】
これらモデルは、幾つかの仕方で、特に、当業者に知られている物理学的法則を用いることにより又は特定の実験によって確立された多少類似している法則を用いることにより構築でき、それにより、これらモデルを表現する方程式は、多数の形態を取ることができる。
【0052】
したがって、これらモデルは、実質的に、これらの入力変数、これらの出力変数及びこれらのモデルの各々が、定量化可能な物理的性質に基づく観察可能な物理的現象を考慮に入れた方程式系の形態を取るという事実によって特徴づけられる。
【0053】
機械的モデルの出力変数は、縦力Fx、横力Fy及び自動調心トルクMzである。
【0054】
熱的モデルの出力変数は、タイヤトレッドの周辺又は表面温度及びタイヤトレッドの内部温度Tiである。
【0055】
2つのモデルの全ての入力変数及び出力変数が、
図7に示されている。
【0056】
熱的モデルは、更に、一方において接触領域が2つの範囲又は領域(
図8)、即ち、力がタイヤトレッドの剪断によって制御され、運動が課される密着接触範囲又は領域及び力がゴムと路面との間の摩擦係数によって制御される滑り接触領域を有すると見なすと共に他方において密着接触領域と滑り接触領域との間の通路をマーク付けする横座標“b”の単一の点Nが存在すると見なすことによってこの熱的モデルが構築されるという特徴を有している。
【0057】
方程式は、この原理に従って表現され、それにより、迅速に解くことができる数式を得ることができる。
【0058】
例示の機械的モデルが、以下に提供される。
【0059】
この例では、接触領域の動作のモデル化は、接触領域の開始時の第1の剪断段階及び第2のスリップ段階を含む「ブラシ剛毛(brush bristle )」方式に基づいている。これら2つの段階は、別々であり、特有であり、互いに関連づけられ、又、滑り段階では望ましくない剪断力回収機構が存在しないと見なされる。
【0060】
以下の構成例の全ては、スリップ角がほどほど(約20°以下)のままであり、その結果、近似値tan(δ)≒δが有効であり、日常的に実施される。Kx及びKyは、以下の方程式に従ってゴムの弾性率及び好ましいトレッドパターンの特性に関連づけることができるタイヤトレッドの剛性を表している。
【数15】
上式において、h
screは、トレッドパターンの厚さであり、h
scは、下層(サブレーヤ)の厚さであり、したがって、e
KM=h
scre+h
scである。
【0061】
図9は、接触領域のブロック図である。線分NKは、タイヤトレッドの要素(「ブラシ剛毛」)を定める。Nは、クラウンの高さ位置に位置する箇所又は点であり、Kは、路面の高さ位置にあるタイヤトレッドの箇所又は点である。横座標点bは、密着接触と滑り接触との間の移行を表している。
【0062】
接触領域の開始時(
図9参照)、タイヤトレッドのゴム要素は、剪断作用を受けない(X
N=X
K)。
【0063】
ゴムの剪断は、事実、2つの源、即ち、角度δの車輪のドリフト、クラウンの点Nの速度と路面上箇所の通過速度の差を有する。
【0064】
タイヤトレッドの厚さ方向における変形が一様であると仮定すると、このトレッドの要素の剪断力により生じる基本的な力を次のように表すことができる。
【数16】
上式において、dSは、トレッドの要素NKの基本的表面である。
【0065】
クラウン上箇所の軌道の方程式は、以下の関係式によって近似できる。
【数17】
上式において、δ′は、クラウンのスリップ角であり、これは、タイヤ構造のねじりに起因したスリップ角とは異なり、次の方程式を満足する。
【数18】
【0066】
関係式Y
K(a)=Y
N(a)が接触領域の開始時に満足されると仮定すると、次式(方程式1)が成り立つ。
【数19】
【0067】
Vが路面上箇所の速度であり、W
Xがクラウンの軸線に沿うクラウン上箇所の速度であり且つ
【数20】
であるとすれば、表現X
K−X
Nは、次式(方程式2)となる。
【数21】
【0068】
定義により、τは、縦スリップ率に相当している。
【0069】
滑り速度の成分は、次式によって与えられる。
【数22】
【0070】
転動領域の滑り部分では、基本的な力は、ゴムと路面との間の摩擦によって生じ、力の方向は、剪断ベクトルと同一直線方向に向き、このことは、次式によって表される。
【数23】
【数24】
に着目することにより、次式が得られる。
【数25】
【0071】
摩擦領域における基本的な力は、次のように表される。
【数26】
【0072】
タイヤの滑りが路面上で生じると見なされる点Nの横座標bは、基本剪断力と密着力との釣合いに対応しており、この釣合いは、次の方程式3によって表される。
【数27】
上式において、μ
0は、横座標点bのところで表される静的密着係数である。
【0073】
元来、接触領域には密着範囲と滑り範囲との間に数個の移行点が存在する場合があるが、本発明の好ましい実施形態で用いられる機械的モデルは、有利には、この移行点の1つしか存在しないという仮定に基づいている。換言すると、滑りが接触領域でいったん現われると、この滑りは、この接触領域の終了まで続く。
【0074】
通過点が1つしか存在しないというこの仮定を除き、力の釣合いを表す方程式は、以下に与えられる。
【0075】
しかしながら、数個の通過点が接触領域に存在するかもしれない場合に対応した方程式の一般的な形態を提供することが可能である。
【0076】
問題のタイヤを備えた車輪の中心に加えられる力は、次式のように接触領域の表面のところで生じる基本的力を積分することにより得られる。
【数28】
【0077】
積分の結果として、それぞれ以下の方程式4,5が得られる。
【数29】
【0078】
自動調心トルクMzが、2つの構成成分、即ち、スラストの中心が接触領域の中心に対してオフセットした力F
Yと関連したモーメントN
Y及び接触領域の幅方向における力F
Xの分布と関連したトルクN
Xを有する。一般に、トルクN
Xは、高エンジントルクの特定の場合を除き、復元トルクである。
【0079】
上述したのと同じ仮定の枠組の範囲内において、トルクN
Yを次の方程式6により直接計算することができる。
【数30】
【0080】
トルクN
Xは、接触領域の幅方向における力F
Xの非一様な分布によって生じ、この非一様な分布状態は、接触領域がオフセット又はキャンバの影響を受けて台形になると増幅される傾向がある。単一の隆起タイヤトレッドに関するモデル化方式では、接触領域における幅方向の力F
Xの分布は、直接接近できるわけではない。かくして、トルクN
Xは、その場限りの関係によってモデル化され、かかる関係の数学的公式化が、モーメントN
Y及びキャンバに関してガイダンスのために以下に提供されている(方程式7)。
【数31】
【0081】
幾つかの公式がパラメータβ
1及びβ
2について存在する。
【0082】
例示の熱的モデルの一例が、以下に提供される。
【0083】
このモデルは、実質的に接触領域におけるタイヤトレッドと路面の接触及び接触領域の一部分におけるタイヤトレッドの相対的滑りに関連づけられた熱的現象を考慮に入れた局所熱的モデル並びに1回の車輪回転中におけるタイヤ温度上昇及び熱伝達現象の全てを考慮に入れた全域熱的モデルを含む。
【0084】
タイヤの全域的力に関する公式化は、タイヤトレッドの剪断力と摩擦力への分解に基づいている。摩擦力は、ゴムと路面との間の密着係数μの関数であり、この密着係数は、圧力、滑り速度及び接触温度に依存している。
【0085】
接触領域における接触温度は、次のようにモデル化される(局所熱的モデル)。
【0086】
ゴムが接触領域に入ると、接触温度は、ゴムと路面との間の熱伝導及び摩擦に基づいて変化する。接触領域の温度を当業者に知られている種々の仕方で、例えば打ち切り(discretization)の有限差分法によって計算できる。
【0087】
以下に説明する手法は、計算(コンピュータ処理)時間を最適化する一方で、結果的に、高い妥当な精度が得られる。
【0088】
2種類の半無限材料が均一の温度を有していると仮定すると(ゴムについてはTs、路面についてはTsol)、表面温度は、2つの物質が完全な接触状態に突然置かれた場合、次のように表される。
【数32】
上式において、e
g及びe
solは、それぞれ、ゴムの温度滲出率及び路面の温度滲出率である。
【0089】
ゴムと路面との間に滑りがある場合、摩擦流束ψ
Fは、表面温度の増加を生じさせ、かかる増加は、摩擦流束が一定の場合、次式によって表される。
【数33】
上式において、αは、ゴムに侵入する流束の比率を決定する分配係数である。完全な接触の場合、この分配係数は、次式によって表される。
【数34】
【0090】
ゴム‐路面密着法則に関し、
図10は、パラメータVg及びTcに関する依存性を示しており、当業者には自明な数個の数学的関数により、温度、速度及び圧力に関する漸進的な変化を特定の実験に基づいて再現することができる。
【0091】
例えば、次の公式を用いることができる。
【数35】
上式において、μ
1、μ
2、T
0、a、a
1、a
2、e
1、e
2、e
3、V
0は、モデルの定数である。
【0092】
図10に示されているように、密着係数μは、温度及び滑り速度と共に複雑な漸進的な変化を呈し、低い温度では、この密着係数は、温度と共に増大し、高い温度では、その逆である。したがって、密着係数μは、温度につれて最大値を横切る。この最大値は、滑り速度の値に応じて異なる。滑り速度が高ければ高いほど、高い温度で得られるこの密着係数の最大値はそれだけ一層大きくなる。
【0093】
全域熱的モデルは、車輪の1回転ごとの平均値としてゴムの厚さ方向及びタイヤトレッドの幅方向における温度プロフィールを計算する。このモデルにより、タイヤトレッドの内部の温度Tiを求めることができ、この温度は、接触領域の開始時におけるタイヤトレッドの剛性G
*(Ti)並びに表面(又は周辺)温度Tsを定め、かかる表面温度は、接触領域における熱的計算に用いられる(局所熱的モデル)。
【0094】
剛性を温度に関連づける例示の法則が、
図11に示されている。事実、この法則は、用いられる各材料に固有であり、タイヤのゴムを構成する配合物の処方で決まる。一般に、配合物の温度が高くなると、その剛性は低くなる。
【0095】
全域熱的モデルは、以下の仕組み、即ち、
‐ゴム中の伝導、
‐ゴムと路面との間の摩擦による温度上昇、
‐ゴム中の損失と関連した温度上昇、及び
‐路面伝導及び空気対流による冷却を考慮に入れる。
【0096】
図12は、これら仕組みの全てを概略的にまとめている。
【0097】
温度がタイヤトレッドの幅方向に且つ車輪の1回転を通じて一定であると仮定すると、車輪に関連づけられた極座標系で熱の一次元方程式を得ることができる。
【数36】
上式において、Tは、タイヤトレッドの厚さ方向における温度分布[K°]であり、
λは、ゴムの熱伝導率[W/m/°K]であり、
ρは、密度[kg/m
3]であり、
C
pは、ゴムの比熱容量[J/kg/°K]であり、
qは、単位[W/m
3]で表されたゴム中の損失に起因した発熱効果であり、 xは、半径方向(即ち、タイヤトレッドの厚さ方向)を表す。
熱的滲出性:
【数37】
熱的拡散率:
【数38】
【0098】
しかしながら、制限条件は、タイヤの外面を考慮に入れるかタイヤトレッドとタイヤブレーカストリップとの間のインタフェースを考慮に入れるかに応じて異なる。
【0099】
第1の場合、タイヤ表面の制限条件は、車輪の1回転にわたって変化し、即ち、接触領域の外部では、周囲空気の対流による表面流束が存在し、接触領域の内部では、路面との伝導ゴムと路面との間の摩擦に関連した表面流束が存在する。ゴム/(路面+空気)インタフェースのところでは、タイヤの表面のところに生じる宣言流束条件を次のように公式によって表すことができる。
【数39】
上式において、ψは、後で説明する表面流束である。
【0101】
しかしながら、タイヤトレッドとタイヤのブレーカストリップとの間のインタフェースのところでは、流束がゼロであるという仮定を行うことができる(断熱条件)。
【0102】
ゴム中の損失に起因する発熱効果に関する項
の計算を次のように行うことができる。
【0103】
ゴムが接触領域に入ると、ゴムは、圧縮歪及び剪断歪を受け、かかる歪は、熱源である。車輪の1回転中にゴム中に消散される内部パワーは、接触領域Wfに入ったときに供給されるエネルギーと車輪回転回数の積として損失関数Pによって次のように計算される。
【数40】
【0104】
ゴムが接触領域で受ける弾性歪エネルギー密度は、縦力及び横力並びにタイヤの荷重に関して説明され、それにより次のように最終的な公式を得ることができる。
【数41】
上式において、P(W
f,T)は、損失関数であり、これは、温度及び加えられた力の大きさにおけるゴムのステップ点を考慮に入れると共に特定の実験により特徴付け可能である。
【0105】
温度Tは、配合物の特性温度に対応しており、とりわけ、損失のレベル及び弾性率のレベルを決定する。損失及び弾性率の法則が例えば10Hzの周波数で測定されると仮定すると、温度Tは、事実、WLF法則の意味の範囲内で等価温度であり、したがって、次のように互いに異なる応力周波数について損失及び弾性率の推定値が得られる。
【数42】
上式において、Tiは、全域熱計算から導き出される配合物の内部温度であり、f=V/(2πR
0)は、回転周期数である。
【0106】
本明細書を読むと当業者であれば容易に理解されるように、同じ関係は、ゴムの剪断弾性率を内部温度Tiに関連づけるために用いられる。その目的は、車輪回転回数が増大した場合に配合物の剛性化機構を考慮に入れるためである。
【0107】
路面伝導流束を計算するため、タイヤトレッド及び路面を時間間隔t
adcの間、接触状態に置かれる2つの半無限壁に同化させることができる。完全な接触を仮定すると、伝導流束は次のように表される。
【数43】
上式において、Tsは、ゴムの表面温度である。
【0108】
空気対流流束の計算は、空気との熱交換がタイヤの周りの空気の流れの性状に大幅に依存しているということにより困難になる。一般的に言って、対流交換のモデル化は、半経験的な公式化に基づいている。タイヤの特定の場合、以下の公式を用いることができる。
【数44】
上式において、C
airは、強制対流の効果を考慮に入れた定数である。
【0109】
摩擦流束の計算は、路面上におけるゴムの滑りから成る摩擦が熱発生源であることを考慮に入れなければならない。厳密な論理的説明では、エネルギーは、1ミリメートル未満の厚さにわたりゴムの塊の中で消散される。乾燥接触の場合、エネルギーは、極めて外側の表面のところで消散され、これは、摩擦流束によってモデル化されると仮定できる。接触領域の滑り領域における平均摩擦流束は、次のように表される。
【数45】
上式において、αは、ゴムと路面との間の流束分配係数であり、値α=1は、摩擦流束全体がゴムの方に向けられていることを意味し、値α=0は、摩擦流束全体が路面の方に向けられていることを意味し、
F
μは、ゴムと路面との間の摩擦により引き起こされる力の成分であり、Vgは、滑り速度であり、ppaは、接触領域における密着点の割合である。
【0110】
タイヤトレッドの表面のところの平均熱流束は、種々の流束が車輪の回転の際に効果的な固有周期により重みづけされた種々の流束の平均として定義され、これは、次の関係式によって示される。
【数46】
上式において、t
adcは、接触領域中の一タイヤトレッド要素の滞留時間の長さに相当し、t
Hadcは、接触領域の外部に位置する一タイヤトレッド要素の滞留時間であり、(1−ppa)t
adcは、一タイヤトレッドの要素が接触領域中で滑る期間である。
【0111】
図13は、全体として、本発明の最も完全な実施形態としての方法の動作的具体化例を示している。
【0112】
かかる方法は、この方法の動作的具体化例の上流側に(前に)予備段階を有し、この予備段階中、機械的モデル又は第1モデル、局所熱的モデル又は第2モデル及び車輪回転全域熱的モデル又は第3モデルが構築される。
【0113】
各モデルは、既知であると共に(或いは)特定の実験により確立される物理的法則を適用することによって構築され、例えば各モデルについて上記において示した方程式系の形態を取っている。
【0114】
上述したことを思い起こすと、機械的モデルは、路面と車両との間でタイヤにより伝達される縦力及び横力、これら力の強度及び接触領域中におけるこれらの分布状態と関連した自動調心トルク、及び密着接触領域と滑り接触領域との間の推定通過点Nのところにおけるタイヤの基本剪断力及び滑り力の釣合いの表現を提供し、これら表現は、タイヤの物理的転動及び使用条件と関連した動的パラメータ、タイヤの特有パラメータ及び通過点の横座標bに基づいて与えられる。
【0115】
局所熱的モデルは、接触領域の開始から終了までの路面とのタイヤトレッドの接触温度の変化に関する表現を提供し、かかる変化は、特に、タイヤの周辺温度、路面の温度及び路面に対するタイヤトレッドの滑りに依存している。
【0116】
全域熱的モデルは、特に、周辺温度及び内部温度のあらかじめ既知の値又は推定値、タイヤトレッドの熱伝導率のあらかじめ既知の値又は推定値、熱力学的成分現象、例えばタイヤの受ける内部変形のあらかじめ既知の値又は推定値、タイヤとその環境との間の熱的交換及び路面に対するタイヤトレッドの滑りに関連して、タイヤトレッドの厚さ方向における温度プロフィール並びにタイヤトレッドの周辺温度及びタイヤの内部温度の車輪1回転の周期にわたる変化を提供する。
【0117】
予備段階の結果を利用すると共に
図13に示されている方法の作用段階は、第1に、時間を測定するために用いられるカウント指数nの初期化から成るステップ1を含む。
【0118】
ステップ2では、初期値Tso及びTioは、例えばタイヤが当初、周囲空気と熱的平衡状態にあると仮定して、タイヤトレッドの周辺温度及びタイヤの内部温度に割り当てられる。
【0119】
ステップ3は、少なくとも以下に説明するように次の計算を実行するのに必要な時間間隔に相当する時間間隔だけクロノメータによりカウントされた時間をインクリメントする。
【0120】
次に、あらかじめ測定され又は記憶された値を動的パラメータ(ステップ4)及び特有パラメータ(ステップ5)に割り当てる。
【0121】
ステップ6では、以下に説明する反復ループの内部で実行された連続コンピュータ処理(計算)サイクルの数をカウントするために用いられるカウント指数kを初期化する。
【0122】
ステップ7は、特に同一の反復ループの種々のコンピュータ処理サイクルについて値が一定であると考えることができる不確定な量のコンピュータ処理を可能にするようになった予備段階から成り、それにより、これらのコンピュータ処理の反復実行を同一反復ループの各コンピュータ処理サイクルでは回避することができる。
【0123】
特に、予備段階7は、接触領域の寸法Lx,Ly、その表面S
ADC、表面領域に沿う圧力プロフィールp(x)並びにタイヤトレッドの剛性Kx,Kyを先の時点n−1での内部温度Ti、即ち、Tin−1に関して計算するために用いられる。
【0124】
推定値Fyo、Mzo及びboも又、横力Fy、自動調心トルクMz及び密着接触領域と滑り接触領域との間の通過点Nの横座標bに割り当てられる。
【0125】
入力パラメータが時間に関連して僅かに変化する場合、推定値Fyo,Mz,boを先の時点で計算された値にしても良い。
【0126】
逆の場合、初期滑り横座標boは、接触領域の長さ方向における圧力プロフィールが放物線状であると仮定し、ねじり剛性及びクラウン剛性を無視することによって求められる。
【0127】
この場合、滑り方程式(方程式3)は、次のように閉じられた形の解を有する。
【数47】
【0128】
b
0が分かると、力F
yo及びトルクM
zoは、方程式5〜7を用いて計算される。
【0129】
さらに、通過点について得られた初期位置がタイヤトレッドの横剪断の符号に関する束縛条件、即ち(Y
K−Y
N)δ′>0を満足していることを確認することが必要である。もしそうでなければ、推定される解は、物理的意味を提供しない。この場合、Y
K−Y
N=0であることが必要な場合があり、自動調心トルクの初期値M
zoは、ゼロに設定される。
【0130】
ステップ8は、カウント指数kをインクリメントし、反復段階の最初の又は新たなコンピュータ処理段階(ステップ9,10)を開始させることができる。
【0131】
逐次近似法を用いると共に通過点横座標b、横力Fy及び自動調心トルクMzのあらかじめ既知の値又は推定値に基づき、この反復段階により、動的パラメータ及び特有パラメータに割り当てられた値について上記において与えられた方程式1〜7を解く新たな値をこれら量b,Fy,Mzについて求めることが可能である。
【0132】
これら方程式は、密着接触領域と滑り接触領域との間の通過点の横座標bを示すことにより公式化され、接触領域の力は、2つの構成成分、即ち、ゴム、クラウン及びタイヤのカーカスの剛性に依存する剪断力及び摩擦(μ)の法則に依存する摩擦力に分けられる。
【0133】
横座標bは、方程式1〜3及び先の反復で推定された値Fy,Mzから計算される。これは、解が限定される(−a≦b≦a)スカラー方程式である。横座標bの計算は、例えば、分割法とセカント法を組み合わせることによって行われる。
【0134】
セカント法により提案される運動が下側且つ外側限度を超えている場合、本発明の方法は、分割法に切り替わる。
【0135】
横座標bに関する数個の解が元来可能であるので、採用される解は、条件(Y
K−Y
N)δ′1>0を満足する解である。路面に対するタイヤトレッドのゴムの摩擦と関連した積分、即ち
【数48】
は、例えば、ガウス求積法公式を用いることにより計算される。
【0136】
方程式4、方程式5及び方程式6+7により構成される系の残部を計算するため且つ収束を計算するためには、n個の未知の量の非線形方程式を公式により次のように、即ち、F(x)=0により解くことが重要である。
【0137】
幾つかの反復法が可能であるが、最適プロセスは、混合型ニュートン‐ラフソン/ブロイデン(Newton-Raphson/Broyden)反復法であるように思われる。
【0138】
ニュートン‐ラフソン法は、タンジェントリニアモデルによってFの局所近似値に基づいている。この近似の結果として、次の形態を有する反復法が得られる。
【数49】
【0139】
ニュートン‐ラフソン法を反復することによりコストを軽減するために、ブロイデン法を用いるのが良い。この方法では、2つの連続した反復値s
k-1,x
k相互間のFのセカント近似を仮定し、ジャコビアンJの計算をそれにより回避する。
【0140】
ブロイデン反復法は、次の形態、即ち、x
k+1=x
k−B
k-1F(x
k)を有している。
【0141】
ニュートン法との差は、行列Bレベルのところにあり、これは、ジャコビアンJの近似値である。従来型ブロイデン法は、次式を用いることによって各反復時に行列Bを更新する。
【数50】
【0142】
ベクトルs,yは、s
k=x
k+1−x
k及びy
k=F(x
k+1−F(x
k)によって定められる。
【0143】
この方法は、初期点が解に十分近い場合、超線形収束法である。Bの初期推定値を有することが必要であり、最善の選択は、B
0=J
0である。
【0144】
実際には、ニュートン‐ラフソン法で第1の反復を進め、収束が十分であると見なされると、ブロイデン法にシフトすることが望ましい。
【0145】
ニュートン‐ラフソン法からブロイデン法にシフトする基準は、次式によって与えられる。
【数51】
上式において、η>0は、小さい値のパラメータである。
【0146】
b=aであることが真であることが証明された場合、滑り方程式は、一般的には回避することが望ましい自明な解を有する。これを達成するため、この等号は、例えばb
min=0.9995×aを課すことによって滑り点に関する検討中、回避される。
【0147】
次数kの各コンピュータ処理サイクルでは、ステップ9は、特に、基本的な力に関する釣合い方程式1〜3並びに横力及び自動調心トルクに既知の値又は推定値F
YK-1及びM
ZK-1を用いて通過点横座標の新しい一時的な値b
kを計算するステップを含む。
【0148】
機械的モデルが局所熱的モデルによって質的に向上し、特に、路面に対するタイヤゴムの摩擦係数の値に対する接触温度の変化の影響を考慮に入れた好ましい実施形態では、ステップ9は、同様に、滑り接触領域の各点に関し、通過点横座標について新たに計算された一時的値b
x、先の時点で知られている周辺温度T
sn-1及び路面の温度T
solに基づく接触温度Tc及び摩擦係数μの計算を更に含み、タイヤの周辺温度T
sn-1は、接触表面の開始時の接触温度を計算するために用いられる。
【0149】
最後に、ステップ9は、通過点の横座標の新たな一時的値b
k、先の時点で知られている内部温度Tin−1についてのタイヤトレッドの剛性Kx,Kyの値、摩擦係数μの値及び方程式1〜7から、横力及び自動調心トルクに関するそれぞれの新たな値F
yk及びM
zkを計算することから成るステップを含み、かかる新たな値F
yk,M
zkは、将来実施される可能性のあるコンピュータ処理サイクルに使用できる。
【0150】
ステップ10は、反復段階の収束を試験することから成る。
【0151】
例えば、先のコンピュータ処理サイクルで得られた新たな値b
k,F
YK,M
ZK及び一時的値b
k-1,F
YK-1及びM
ZK-1相互のそれぞれの偏差がそれぞれの限度、例えばεを下回っている場合、反復段階を中断する。逆の場合、ステップ8の上流側にループバックすることによりこの反復段階を続行する。
【0152】
反復段階の中断の際、熱力学的成分現象の全て、例えばタイヤの受ける内部変形の影響を受けた状態での先の反復段階の終了からの周辺温度及び内部温度の変化、タイヤとその環境(空気、路面)との間の熱交換及び路面上でのタイヤトレッドの滑りを考慮に入れた上で、周辺温度及び内部温度の新たな更新された値T
sn及びT
inを計算するために車輪回転全域熱的モデルを用いる(ステップ11)。
【0153】
温度Tsは、タイヤの幅方向と円周方向の両方向においてタイヤトレッドの平均表面温度であり、温度Ti,Tsの計算は、タイヤトレッドの厚さ内での一方向モデル化を利用していることを思い起こすことができる。
【0154】
ゴムの厚さ内に空間格子(グリッド)を用いる従来の有限差分法及びルンゲ・クッタによる2次形式の時間解答法により全域熱的モデルの方程式を解く。
【0155】
反復段階の終わりに実施されるステップ12は、時点nに関し、縦力Fxn、横力Fyn、自動調心トルクMzn、タイヤの内部温度Tin及びタイヤトレッドの周辺温度Tsnの値を生じさせることから成る。
【0156】
本方法は、次に、クロノメータインクリメンテーションステップ3のすぐ上流側で且つ動的パラメータを更新するステップ4の前にループバックされ、かかるステップ4により、ちょうど終了した反復段階の実行中にこれらのパラメータによってなされた変化を考慮に入れることができる。
【0157】
タイヤの内部温度の新たな値Tinは、剛性Kx,Kyの値に影響を与えるタイヤのゴムを構成する配合物の剛性G
*の新たな値を推定することを目的として、特有パラメータを更新するステップ5について又は予備段階7の実施中に用いられる。
【0158】
さらにタイヤトレッドの周辺温度の新たな値Tsnは、タイヤトレッドの開始接触温度Tcを計算するためにステップ9で用いられることになる。
【0159】
したがって、力を求めるプロセスと温度を求めるプロセスの結合は、2つのレベルで、即ち、タイヤトレッドの平均温度Tiが配合物の剛性G
*に影響を及ぼし、したがって、タイヤトレッドの剛性Kx,Kyに影響を及ぼすということを考慮に入れると共に接触領域におけるタイヤトレッドの周辺温度Tsがゴムと路面との間の密着係数に影響を及ぼすということを考慮に入れることによって威力を発揮することは理解されるべきである。
【0160】
上述のシミュレーション方法は、特に、シャーシ及び路面上を転動する数本のタイヤを備えた車両の動的挙動のリアルタイムシミュレーションに利用できる。
【0161】
例えばこのような用途では、機械的モデル、局所熱的モデル及び全域熱的モデルの各々又はこれらのうちの少なくとも最初のもの、即ち機械的モデルは、各タイヤについて用いられ、動的シャーシモデルと関連している。
【0162】
タイヤモデルの各々は、一方においてシャーシモデルから動的パラメータの値又はこれらのうちの少なくとも幾つかの値を受け取るために、他方においてシャーシモデルが各タイヤについて、タイヤモデルの具体化によって得られた縦力、横力及び自動調心トルクの値を用いることができるようにするために、このシャーシモデルと協働する。