【実施例1】
【0015】
実施例1に係るコンデンサにつき、
図1から
図4を参照して説明する。
図1の符号1は、本発明の適用された電解コンデンサである。この電解コンデンサ1は、略有底円筒形状をなす外装ケース2を有し、外装ケース2の一端に開口部3が形成され、この開口部3を合成樹脂製の略円柱形状をなす封口体4が閉塞している。なお、外装ケース2は、アルミニウム等の金属材料で形成されており、封口体4は、樹脂ゴム等の弾性を有する弾性材料で形成されている。
【0016】
図1に示すように、この電解コンデンサ1は、アルミニウムで形成された複数の電極箔をセパレータを介して巻回または積層したコンデンサ素子5を有しており、このコンデンサ素子5を電解液とともに外装ケース2に収納している。コンデンサ素子5には、陽極及び陰極の2本のリード端子6が接続されている。
【0017】
また、リード端子6は、コンデンサ素子5に接続されるアルミニウム線7と、外部に導出される金属線8(CP線)と、が互いに溶接されることにより形成されている。アルミニウム線7及び金属線8は略円柱形状をなし、アルミニウム線7の直径は金属線8の直径よりも大きい径となっている。なお、アルミニウム線7の下端には、プレス加工等により略扁平形状に形成された扁平部(図示略)が設けられており、この扁平部がコンデンサ素子5の電極箔に接続されるようになっている。
【0018】
金属線8は、軟鋼線が心材とされており、この軟鋼線の外周に金属材料としての銅を厚くめっきした銅被覆層(金属めっき層)が形成されている。更に、その外周に金属材料としての錫100%からなる錫めっき層(金属めっき層)が形成されている。この金属線8を構成する材質には、鉛が一切使用されていないとともに、アルミニウム線7やコンデンサ素子5などを構成する材質にも、鉛が一切使用されておらず、本実施例における電解コンデンサは、鉛を含まずに自然環境に対する悪影響を与えない鉛フリーの電子部品となっている。
【0019】
なお、リード端子6の溶接部9では、Al,Sn,Cu,Feなどが混在し、特にアルミニウム層が外気に晒されると、水和や酸化反応などによりSn層(錫層)に応力が働き、ウィスカと呼ばれるヒゲ状の結晶体が発生することが知られている。即ちリード端子6における金属線8とアルミニウム線7との溶接部9は、ウィスカの発生部位となっている。
【0020】
図2に示すように、封口体4には、各リード端子6が挿設される2つの挿通孔10が貫通されている。なお、
図2における紙面上方側を封口体4の表面側とし、紙面下方側を封口体4の裏面側として説明する。リード端子6は、コンデンサ素子5に接続された後に、封口体4の裏面側から挿通孔10に挿通され、リード端子6の金属線8が封口体4の表面側に導出されるようになっている。
【0021】
また、挿通孔10の内部空間には、リード端子6の溶接部9を収納する収納部11が形成されており、溶接部9にて発生するウィスカは、この収納部11に封じ込められるようになっている。なお、挿通孔10の形状は、収納部11から挿通孔10の開口部12側(封口体4の表面側)に向かって窄まる形状となっている。
【0022】
図3に示すように、封口体4の表面側における挿通孔10の開口部12の形状は、略円形状をなしているが、リード端子6における金属線8の断面視形状と相異する形状に形成されている。金属線8の断面視形状が真円形状であるのに対して、挿通孔10の開口部12の形状は、真円形状の一部が切り欠かれた形状となっている。
【0023】
具体的には、この挿通孔10の開口部12には、この開口部12における封口体4の端縁T側を封口体4の中心C側に向かって肉盛りにする肉盛部13が形成されている。更に、肉盛部13の縁辺は、平面視で略直線状に形成されている。この肉盛部13が形成されていることにより、金属線8の断面視形状と相異する形状になっている。なお、挿通孔10の開口部12の直径は、金属線8の直径よりも若干小さい寸法となっている。
【0024】
なお、リード端子6が封口体4に形成された挿通孔10に挿設されると、挿通孔10の開口部12の形状がリード端子6の金属線8の断面視形状に合うように拡径されるが、この状態では、挿通孔10の肉盛部13が金属線8を押圧する状態となる。
【0025】
図2に示すように、リード端子6が封口体4に形成された挿通孔10に挿設された状態で、コンデンサ素子5を外装ケース2の一端に形成された開口部3から挿入して、コンデンサ素子5を外装ケース2内に収納する。そして、外装ケース2の開口部3を封口体4により閉塞するとともに、外装ケース2の開口部3の端縁14近傍を加締めるようになっている。
【0026】
この加締め加工は、外装ケース2の開口部3近傍の側面を全周に渡って絞り込む横加締め(絞り加工)と、外装ケース2の開口部3側の端縁14を全周に渡って内側に屈曲させて外装ケース2の開口部3側の端縁14を封口体4の端縁T近傍に押し付ける縦加締め(カーリング加工)と、により行われる。なお、横加締めによって外装ケース2の気密性を確保し、縦加締めによって封口体4の抜けを防止している。
【0027】
図2及び
図4に示すように、縦加締めによって外装ケース2の内側に屈曲された端縁14の先端部は、封口体4の端縁Tの近傍に食い込むようになり、この食い込みによる押圧力によって、封口体4の表面側は、その中心C側から端縁T側に引っ張られるようになる。この引っ張り力により前述した肉盛部13が封口体4の端縁T側に移動し、挿通孔10の開口部12の形状がリード端子6の金属線8の断面視形状と略同一の形状となる。そして、挿通孔10の開口部12とリード端子6の金属線8との間に隙間を生じさせないようにできる。なお、挿通孔10の肉盛部13が金属線8を押圧することも無くなる。さらに、肉盛部13の寸法については、封口体4の弾性や加締め加工の際の押圧力等に合わせて適宜設定するようになっている。
【実施例2】
【0028】
次に、実施例2に係るコンデンサにつき、
図6を参照して説明する。なお、前記実施例1と同一構成で重複する構成を省略する。
【0029】
図6に示すように、封口体4aには、各リード端子6が挿設される2つの挿通孔10aが貫通されている。挿通孔10aは、封口体4aの端縁T近傍に形成されている。なお、実施例2に用いられるリード端子6の金属線8の断面視形状は、前記実施例1と同様に真円形状をなす。
【0030】
また、封口体4の端縁T近傍に形成された挿通孔10aの開口部12aの形状は、略円形状をなしているが、リード端子6における金属線8の断面視形状と相異する形状に形成されている。金属線8の断面視形状が真円形状であるのに対して、挿通孔10aの開口部12aの形状は、真円形状の一部の曲率が変化している。
【0031】
具体的には、この挿通孔10aの開口部12aには、この開口部12aにおける封口体4aの端縁T側を封口体4aの中心C側に向かって肉盛りにする肉盛部13aが形成されている。更に、肉盛部13aは、平面視で三日月形状に形成されている。この肉盛部13aが形成されていることにより、挿通孔10aの開口部12aは、金属線8の断面視形状と相異する形状になっている。
【0032】
実施例2において加締め加工が施されると、縦加締めによって封口体4aの表面側は、その中心C側から端縁T側に引っ張られるようになる。この引っ張り力によって、封口体4aの端縁T近傍に形成された挿通孔10aの開口部12aの肉盛部13aが封口体4aの端縁T側に移動し、挿通孔10aの開口部12aの形状がリード端子6の金属線8の断面視形状と略同一の形状となる。
【0033】
肉盛部13aの寸法は、封口体4aにおける挿通孔10aの貫通位置に応じて適宜変更され、肉盛部13aの寸法は、封口体4aの中心Cから離れるに行くに従って大きくなるように設定される。
【0034】
以上、本実施例1〜2にあっては、挿通孔10の開口部12の形状は、リード端子6の金属線8の断面視形状と相異する形状に形成されており、この挿通孔10の開口部12の形状は、封口体4の端縁T近傍が加締めにより変形されることで、リード端子6の金属線8の断面視形状と略同一の形状となることで、外装ケース2を加締めて封口体4を封止する際に、リード端子6を挿通させる挿通孔10が加締めによる押圧力によって変形された際に、リード端子6の金属線8の断面視形状と相異する形状であった挿通孔10の開口部12の形状が、リード端子6の金属線8の断面視形状と略同一の形状となり、挿通孔10の開口部12とリード端子6の金属線8との間に隙間が生じずにリード端子6の溶接部9の露出を防止し、この溶接部9から発生するウィスカの飛散を防止できる。
【0035】
また、前述した加締め加工は、外装ケース2の開口部3の端縁14を内側に屈曲させて、外装ケース2の開口部3の端縁14を封口体4の端縁T近傍に押し付ける縦加締めとなっていることで、この縦加締めによって封口体4は、その中心C側から端縁T側に引っ張られるようになり、この引っ張り力により挿通孔10の開口部12の形状をリード端子6の金属線8の断面視形状と略同一の形状とすることができ、挿通孔10の開口部12とリード端子6の金属線8との間に隙間を生じさせないようにできる。
【0036】
また、挿通孔10の開口部12の形状は、リード端子6の金属線8の断面視形状と略同一の形状に対して封口体4の端縁T側を封口体4の中心C側に向かって肉盛りにする肉盛部13を有することで、リード端子6の金属線8の断面視形状と相異する形状となっていることで、外装ケース2を加締めて封口体4を封止する際に、リード端子6を挿通させる挿通孔10が加締めによる押圧力によって変形されても、肉盛部13により挿通孔10の開口部12とリード端子6との接触を維持できるようになる。かつこの肉盛部13の寸法を適宜設定することにより、封口体4の弾性率や加締めによる押圧力等に応じて最適な挿通孔10の開口部12の形状とすることができる。
【0037】
また、前記実施例1及び2にあっては、挿通孔10の開口部12の形状は、略円形状をなし、かつ挿通孔10の開口部12における封口体4の端縁T側を封口体4の中心C側に向かって肉盛りにする肉盛部13を有することで、リード端子6の金属線8の断面視形状と相異する形状が形成されることで、挿通孔10の開口部12の形状が角部を有する角形状等の形状である場合と比較して、挿通孔10の開口部12の形状が略円形状であることで、外装ケース2の加締めによって挿通孔10の開口部12がいずれの方向に引っ張られても、挿通孔10の開口部12とリード端子6の金属線8との間に隙間が生じ難くなり、かつ挿通孔10を封口体4のいかなる位置に貫通させても、挿通孔10の開口部12における封口体4の端縁T側を肉盛部13にすればよく、肉盛部13を形成する部位を設定し易くなる。
【0038】
また、挿通孔10は、リード端子6の溶接部9を収納する収納部11を有し、この挿通孔の形状が収納部11から挿通孔10の開口部12に向かって窄まる形状となっていることで、挿通孔10がリード端子6の金属線8の断面視形状と相異する形状であっても、リード端子6を収納部11側から挿通孔10の開口部12に向かって挿通し易くなり、挿通時にリード端子を通してコンデンサ素子に加わる機械的ストレスを低減することができる。また、溶接部が覆われるため、ウィスカの発生部位となるリード端子の溶接部が外気に晒されないため、水和や酸化反応などが起こり難く、ウィスカの発生を抑制することができる。
【0039】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0040】
例えば、前記実施例では、コンデンサとして電解コンデンサ例示しているが、本発明が適用されるコンデンサはこれに限らず、電気2重層コンデンサ、電気化学キャパシタなどの各種コンデンサ、キャパシタに適用できる。
【0041】
また、前記実施例では、金属線8に施される錫めっき層が100%となっているが、めっき層における錫の含有量は100%に限らず、少なくとも錫90%以上からなる錫めっき層であればよい。さらに、金属めっき層としては、錫めっき層のみならず、銀めっき層、金めっき層などの他の金属材料にてめっき層を形成してもよい。また、前記めっき層に他の金属材料を添加することもできる。例えば、錫にビスマス等の金属を添加しためっき層が挙げられる。なお、金属めっき層における錫、銀、または金の含有量は、半田付け可能な範囲で適宜設定できる。
【0042】
また、前記実施例では、開口部12とリード端子6との接触を維持しているが、これに限らず、開口部12とリード端子6の金属線8の間にウィスカが落下しない程度の隙間を設けてもよい。例えば、加締め後の開口部12とリード端子6との間が、40μm程度以下であれば、ショートを生じさせるウィスカの基板への落下を防ぐことができる。
【0043】
また、前記実施例では、いずれもリード端子6の導出部を封口体4の中心部Cを中心に対称となる端縁側に配置したがこれに限らず、中心部Cに配置したり、非対称となる位置に配置してもよい。その場合の開口部12の肉盛部13の寸法は、配置位置によって変えればよい。
【0044】
また、前記実施例では、挿通孔10の開口部12のみに肉盛部13が形成されており、
図5に示すように、挿通孔10内面には肉盛部13が形成されていないが、これに限らず、挿通孔10全体に開口部12と同様に肉盛部15を形成してもよい。例えば、
図7の変形例1に示すように、開口部12の肉盛部13と同様に封口体4の端縁側のみに肉盛部15を形成してもよい。また、これに限らず、
図8の変形例2に示すように、挿通孔10内面全体に肉盛部15,16を形成してもよい。この際、挿通孔10内面における封口体4の端縁側の肉盛部15と、そのほかの挿通孔10内面に形成する肉盛部16とを分割して形成してもよい。
【0045】
さらには、前記実施例では、断面視円形の封口体を用いたが、これに限らず、断面視四角形状としてもよい。また、金属線8を断面視形状を真円形状としているが、これに限らず、断面視形状を角形状としてもよい。