特許第5884973号(P5884973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5884973
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】半田付け装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20160301BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20160301BHJP
   B23K 3/00 20060101ALI20160301BHJP
   B23K 101/42 20060101ALN20160301BHJP
【FI】
   H05K3/34 507N
   H05K3/34 505A
   B23K1/00 A
   B23K3/00 310A
   B23K101:42
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-268672(P2011-268672)
(22)【出願日】2011年12月8日
(65)【公開番号】特開2013-120869(P2013-120869A)
(43)【公開日】2013年6月17日
【審査請求日】2014年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】397065767
【氏名又は名称】株式会社パラット
(74)【代理人】
【識別番号】100135781
【弁理士】
【氏名又は名称】西原 広徳
(74)【代理人】
【識別番号】100109472
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 直之
(72)【発明者】
【氏名】波多野 正一
(72)【発明者】
【氏名】中 岩男
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開平 6−182538(JP,A)
【文献】 特開2004−314079(JP,A)
【文献】 特開昭62−212057(JP,A)
【文献】 特開2009−200196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 3/00
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の半田ごてが搭載されたヘッドユニットと、上記ヘッドユニットに対してその自重に逆らった力を加えることによりフローティング状態にするフローティングユニットと、上記フローティングユニットを少なくとも上下方向に搬送する搬送ユニットとを備え、
上記フローティングユニットは、空気圧によって上記ヘッドユニットをフローティング状態にするエアシリンダと、所定の高さ範囲内で上記ヘッドユニットの上下移動をガイドするガイド機構とを含んで構成され、
上記フローティングユニットによりロック状態にした上記ヘッドユニットを上記搬送ユニットにより半田付け位置近傍まで搬送し、上記フローティングユニットによりフローティング状態にした上記ヘッドユニットを上記搬送ユニットにより半田付け位置近傍から半田付け位置まで下降させて筒状の半田ごての先端を基板上のスルーホールの周囲に押し付けるようエアシリンダを制御する制御手段をさらに備えたことを特徴とする
半田付け装置。
【請求項2】
上記半田付け位置では、
スルーホールを通過した導線が筒状の半田ごての中空路に侵入した状態で、筒状の半田ごての先端がスルーホールの周囲に押し付けられていることを特徴とする請求項1記載の半田付け装置。
【請求項3】
上記フローティングユニットは上記ヘッドユニットの高さ位置を検知するセンサを備え、
上記制御手段は、上記センサが検知した上記ヘッドユニットの高さ位置が所定の適正範囲を外れていたときに異常を認識する
請求項1または2記載の半田付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を半田付けするための半田付け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント基板に対して電子部品を機械的にハンダ付する方法として、『フロー半田付け法』や『リフロー半田付け法』が行われている。
【0003】
『フロー半田付け法』は、加熱溶融した半田を半田槽に満たし、スルーホールに電子部品の端子導線を差し込んだプリント基板を半田槽の上で移動させ、半田の液面と基板表面を接触させて半田付けを行なう方法である。この方法は、加熱溶融した半田の液面にプリント基板を接触させて半田付けするため、プリント基板の接触で半田が固まってしまうと半田付け不良となる。それを避けるためには、半田槽の半田を十分に加熱しておく必要がある。ところが、最近多様される鉛フリー半田のように溶融点が高い半田では、加熱温度もそれだけ高くしなければならないため、電子部品に対して熱ストレスを与えやすいという問題がある。
【0004】
『リフロー半田付け法』は、あらかじめパターンに合わせてクリーム半田を印刷をしたプリント基板に部品を実装し、そのプリント基板に対して直接熱を加えてクリーム半田を溶かして半田付けを行う方法である。この方法は、クリーム半田を印刷するためにスクリーン印刷等を行わなければならず、大量生産品には適するが小ロット品への適用はコスト面で極めて不利である。
【0005】
そこで、筒状半田ごてを使用することにより、半田付け箇所にそれぞれ必要十分な加熱処理を行う半田付け装置として、下記の特許文献1の装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−200196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の半田付け装置は、配線基板のスルーホールに挿入した端子導線を半田鏝側に突き出した形で治具に固定する固定用の治具と、この治具を前後左右に移動可能とする移動手段と、筒状の半田ごてと半田供給装置が搭載されるとともに昇降駆動機構を備えた連結プレートとを備え、ばねの牽引力によって連結プレートを上方に牽引するフローテイング機構が設けられたものである。
【0008】
上記特許文献1の装置において、フローテイング機構は、ばねの牽引力を利用して連結プレートを上方に牽引する。半田付けを行う際は、上述したフローティング状態で連結プレートを搬送する。半田付けは、まず原点位置にあった連結プレートを半田位置の近傍まで高速で搬送し、その後、基板に対して半田ごてを接触させるまで低速で連結プレートを下降させる必要がある。しかしながら、上述したように、連結プレートをフローティング状態で搬送すると、高速搬送の際に極めて不安定である。不安定状態での搬送を繰り返すと、部品の摩滅や損傷を引き起こしやすく、精度の低下を早め、安定性や信頼性の点で問題が生じやすい。また、フローテイング機構にばねの牽引力を利用すると、基板の高さ位置が変動すると半田付けのときの基板に対する半田ごての押し付け力が変動し、押し付け力が不足して半田不良となったり、反対に押し付け力が強すぎて基板へのストレスが過多となり、損傷原因になったりする問題がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、半田ごてを搬送する際の安定性を高めた半田付け装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明半田付け装置は、筒状の半田ごてが搭載されたヘッドユニットと、上記ヘッドユニットに対してその自重に逆らった力を加えることによりフローティング状態にするフローティングユニットと、上記フローティングユニットを少なくとも上下方向に搬送する搬送ユニットとを備え、上記フローティングユニットは、空気圧によって上記ヘッドユニットをフローティング状態にするエアシリンダと、所定の高さ範囲内で上記ヘッドユニットの上下移動をガイドするガイド機構とを含んで構成され、上記フローティングユニットによりロック状態にした上記ヘッドユニットを上記搬送ユニットにより半田付け位置近傍まで搬送し、上記フローティングユニットによりフローティング状態にした上記ヘッドユニットを上記搬送ユニットにより半田付け位置近傍から半田付け位置まで下降させて筒状の半田ごての先端を基板上のスルーホールの周囲に押し付けるようエアシリンダを制御する制御手段をさらに備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明により、フローティングユニットを半田付け位置近傍まで搬送するときに、上記ヘッドユニットをロック状態にして損傷を防止し、上記ヘッドユニットを下降させるときに、上記ヘッドユニットをフローティング状態にして半田付け位置近傍から半田付け位置まで下降させて、筒状の半田ごての先端を基板上のスルーホールの周囲に押し付けることができ、かつ、基板に対する半田ごての押し付け力を一定にできる
【0012】
【0013】
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態の半田付け装置を示す図である。
図2】半田付けを行う状態を説明する図である。
図3】切断機構を説明する図である。
図4】フローティングユニットを説明する図である。
図5】フローティングユニットおよび搬送ユニットの制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態の半田付け装置を示す図である。
【0017】
本実施形態の半田付け装置1は、半田ごて20が搭載されたヘッドユニット2と、上記ヘッドユニット2に対してその自重に逆らった力を加えることによりフローティング状態にするフローティングユニット3と、上記フローティングユニット3を少なくとも上下方向に搬送する搬送ユニット4とを備えている。
【0018】
上記ヘッドユニット2に搭載された半田ごて20は筒状であり、リール22から引き出された糸半田21が、切断機構10で所定寸法に切断されて中空路内に供給される。上記ヘッドユニット2は、糸半田21を切断する切断機構10および筒状の半田ごて20を加熱する加熱機構(図示せず)を備えている。
【0019】
上記フローティングユニット3は、空気圧によってヘッドユニット2をフローティング状態にするエアシリンダ30と、所定の高さ範囲内でヘッドユニット2の上下移動をガイドするガイド機構31とを含んで構成されている。この例では、上記エアシリンダ30により、上記ヘッドユニット2に対してその自重に逆らった牽引力を加える。例えば、ヘッドユニット2の自重の90%の力で上方に引き上げることにより、ヘッドユニット2は見かけ上自重の10%の荷重となる。このように見かけ上自重よりも小さい荷重となる状態をフローティング状態という。
【0020】
上記搬送ユニット4は、フローティングユニット3を上下方向(以下「Z方向」という)に搬送するためのZ方向搬送部41と、フローティングユニット3をヘッドユニット2を正面から見て左右方向(以下「X方向」という)に搬送するためのX方向搬送部42と、フローティングユニット3をヘッドユニット2を正面から見て前後方向(以下「Y方向」という)に搬送するためのY方向搬送部43とを備えて構成されている。
【0021】
図2は、半田付けを行う状態を説明する図である。
【0022】
この半田付け装置1は、プリント基板5上のスルーホール8に電子部品7の導線6を挿入した状態でスルーホール8と導線6を糸半田片21aで接合するものである。先端が、スルーホール8を通過した導線6を筒状の半田ごて20の中空路に侵入させた状態で、筒状の半田ごて20の先端がスルーホール8の周囲に押し付けられる。この状態で、糸半田片21aが、筒状の半田ごて20の中空路に供給され、先端部で加熱溶融して半田付けが行われるのである。図において符号9は、切断機構10で切断されて得られた糸半田片21aを筒状の半田ごて20に案内するガイド管9である。
【0023】
図3は、ヘッドユニット2の切断機構10を説明する図である。
【0024】
切断機構10は、受け刃11を有する切断プレート16と、複数の切り刃12を有する切断ギヤ15と、上記切断ギヤ15を回転駆動するためのモータ13とを含んで構成されている。受け刃11は送りローラ14の直下に位置し、糸半田21の供給を受ける供給孔11aを有する筒状である。切り刃12は糸半田21を保持する保持孔12aを有する筒状である。切断ギヤ15には、回転軸を中心として対称な位置に、この例では2つの切り刃12が配置されている。一方の切り刃12が受け刃11と同軸位置になるところに切断ギヤ15が停止した状態で、他方の切り刃12と同軸位置になるところに排出孔11cおよび半田ごて20が配置されている。
【0025】
まず、一方の切り刃12が受け刃11と同軸位置になるところに切断ギヤ15が停止した状態で、切れ刃12の保持孔12aに糸半田21の先端が供給される。そこから切断ギヤ15を回転させるときに、糸半田21の先端部が切断されて糸半田片(図示していない)が生成される。ついで、切断ギヤ15を初期位置から半回転させると、切れ刃12の保持孔12aと排出孔11cの位置が一致し、糸半田片が排出孔11cから排出されて筒状の半田ごて20に供給される。筒状の半田ごて20に糸半田片が供給されると、上述したように半田付けが行われる。
【0026】
図4は、フローティングユニット3を説明する図である。
【0027】
上記フローティングユニット3は、ヘッドユニット2が搭載される昇降ブロック32と、上記昇降ブロック32の上下方向へのスライド移動をガイドする二本のガイドバー33と、上記昇降ブロック32とガイドバー33が収容されるケーシング34とを備えて構成されている。
【0028】
上記ケーシング34は、前面が開放した箱状であり、上壁と下壁に渡ってガイドバー33が固定されている。上記ケーシング34の内部空間で昇降ブロック32が上下移動するようになっている。上記ケーシング34は、昇降ブロック32の上壁に当たる上端位置と下壁に当たる下端位置との間で上下に移動可能である。このように、上記ケーシング34は、上下移動の移動範囲を規制する規制部材としても機能する。
【0029】
上記昇降ブロック32、ガイドバー33、ケーシング34等は、所定の高さ範囲内でヘッドユニット2の上下移動をガイドするガイド機構31として機能する。
【0030】
上記ケーシング34の内部には、昇降ブロック32の高さ位置を検知するセンサ35が設けられている。上記センサ35は、昇降ブロック32の高さ位置が所定の適正範囲に入っているか外れているかを検知する。これにより、センサ35は、装置稼働中のヘッドユニット2の高さ位置を検知する。具体的には、半田付けを行うときのヘッドユニット2の高さ位置、後述するフローティング状態のときのヘッドユニット2の高さ位置、後述するロック状態のときのヘッドユニット2の高さ位置をそれぞれ検知する。
【0031】
上記フローティングユニット3は、空気圧によってヘッドユニット2をフローティング状態にするエアシリンダ30とを含んで構成されている。上記エアシリンダ30は、ケーシング34の上壁に対して支持部材36によって取り付けられている。
【0032】
上記ケーシング34には、上壁の中央付近に貫通穴37が形成され、この貫通穴37にエアシリンダ30のシリンダロッド38が挿通されている。上記シリンダロッド38の先端は、昇降ブロック32の上端面に固定されている。
【0033】
上記エアシリンダ30には、シリンダ上側の空気圧を制御する上側バルブ30aと、シリンダ下側の空気圧を制御する下側バルブ30bとが接続され、それぞれポンプ39からの加圧空気が供給される。
【0034】
このような構造により、ヘッドユニット2のフローティング状態を実現するには、シリンダ下側の空気圧をシリンダ上側よりも大きくするようエアシリンダ30の空気圧を制御する。具体的には、シリンダ下側には常に一定の空気圧を与えておいて、シリンダ上側の空気圧を切る(大気圧まで下げる)ことにより行うことができる。このようにすることにより、ヘッドユニット2に対しては、ヘッドユニット2の自重(この例ではヘッドユニット2と昇降ブロック32を合わせた重さになる)に抗した力を加えることとなる。
【0035】
一方、シリンダ上側の空気圧をシリンダ下側よりも大きくするようエアシリンダ30の空気圧を制御する。具体的には、シリンダ下側には常に一定の空気圧を与えておいて、シリンダ上側にそれを超える空気圧をかけることにより行うことができる。これにより、ヘッドユニット2に対しては、ヘッドユニット2の自重(この例ではヘッドユニット2と昇降ブロック32を合わせた重さになる)を超える力を加えることとなる。この状態では、昇降ブロック32がケーシング34の下端位置に固定されて上から押し付けられ、後述するロック状態を実現することができる。
【0036】
上記搬送ユニット4は、上述したように、Z方向搬送部41、X方向搬送部42およびY方向搬送部43を備えて構成されている。
【0037】
Z方向搬送部41は、上下方向に沿うよう支持部材45に固定されたボールねじ44に対し、ボールねじ44の回転に応じて昇降する昇降ユニット46が取り付けられて構成されている。上記昇降ユニット46には、上述したフローティングユニット3が取り付けられている。ボールねじ44を回転駆動させることにより、昇降ユニット46が上下移動し、これによってフローティングユニット3をZ方向に搬送する。フローティングユニット3がZ方向に搬送されると、それに取り付けられたヘッドユニット2もZ方向に搬送される。
【0038】
X方向搬送部42は、上記Z方向搬送部41の支持部材45が載置され、支持部材45をX方向にスライド移動可能にするスライドレール機構を備えている。スライド移動は、例えば図示しないボールねじ機構によって実現することができる。スライドレール機構を駆動することにより、Z方向搬送部41をX方向に搬送する。Z方向搬送部41がX方向に搬送されると、それに取り付けられたフローティングユニット3およびヘッドユニット2もX方向に搬送される。
【0039】
Y方向搬送部43は、上記X方向搬送部42が載置され、X方向搬送部42をY方向にスライド移動可能にするスライドレール機構を備えている。スライド移動は、例えば図示しないボールねじ機構によって実現することができる。スライドレール機構を駆動することにより、X方向搬送部42をY方向に搬送する。X方向搬送部42がY方向に搬送されると、それに取り付けられたZ方向搬送部41、フローティングユニット3およびヘッドユニット2もY方向に搬送される。
【0040】
図5は、フローティングユニット3および搬送ユニット4の制御を説明するための図である。
【0041】
この半田付け装置1は、上記搬送ユニット4によりフローティングユニット3を初期位置から半田付け位置近傍まで搬送するときに、ヘッドユニット2を下端位置でロック状態にするようエアシリンダ30を制御する制御手段50をさらに備えている。
【0042】
上記制御手段50について詳しく説明する。
【0043】
上記制御手段50は、上記Z方向搬送部41を駆動するためのZ方向駆動モータ41a、X方向搬送部42を駆動するためのX方向駆動モータ42aおよびY方向搬送部43を駆動するためのY方向駆動モータ43aをそれぞれ駆動制御して、ヘッドユニット2をZ方向、X方向およびY方向に搬送する動作を制御する。
【0044】
これにより、上記制御手段50は、上記フローティングユニット3を初期位置から半田付け位置近傍まで相対的に高速な第1の搬送速度で搬送し、半田付け位置近傍から半田付け位置までを相対的に低速な第2の搬送速度で搬送するよう搬送ユニット4を制御する。
【0045】
ここで、半田付け位置近傍とは、ヘッドユニット2の半田ごて20の先端が、プリント基板5における目的とするスルーホール8のすぐ上に対面する位置をいう。具体的には、目的とするスルーホール8の直上数mm程度のところに半田ごて20の先端が位置するところである。半田付け位置近傍までヘッドユニット2を高速搬送し、半田付け位置近傍から半田付け位置までを低速搬送し、半田ごて20とプリント基板5を接触させて半田付けを行ない、半田付けが終了するとふたたび半田付け位置近傍まで低速搬送して半田ごて20をプリント基板5から離す。
【0046】
このとき、制御手段50はヘッドユニット2がフローティング状態となるよう上側バルブ30aおよび下側バルブ30bを制御し、エアシリンダ30のシリンダ上側とシリンダ下側の空気圧をそれぞれ制御する。
【0047】
すなわち、上記エアシリンダ30のシリンダ下側の空気圧をシリンダ上側よりも高くなるよう制御し、昇降ブロック32およびヘッドユニット2に対してその自重に逆らった牽引力を加える。例えば、ヘッドユニット2と昇降ブロック32の自重の90%の力が加わるよう空気圧を制御することで、ヘッドユニット2と昇降ブロック32を上方に引き上げ、ヘッドユニット2と昇降ブロック32は見かけ上自重の10%の荷重となる。
【0048】
この状態で、半田付け位置近傍から半田付け位置までフローティングユニット3およびヘッドユニット2を低速搬送で下降させ、半田ごて20とプリント基板5を接触させて半田付けを行なう。このとき、フローティングユニット3が下降して半田ごて20の先端がプリント基板5の表面に接触する。さらに少しフローティングユニット3が下降したときに、ヘッドユニット2の高さ位置は変わらないで、昇降ブロック32がガイドバーに沿ってケーシング34に対して相対的に上昇することになる。そうすると、プリント基板5に対しては、ヘッドユニット2と昇降ブロック32の自重の10%の荷重しかかからないのである。このように、プリント基板5を必要以上の力で押さえつけないことにより、プリント基板5や半田ごて20の損傷を防止することができる。
【0049】
初期位置から半田付け位置近傍までフローティングユニット3およびヘッドユニット2を高速搬送することにより、タクトタイムを短縮できる。また、半田付け位置近傍から半田付け位置までを低速搬送することにより、例えばプリント基板5の位置に多少のばらつきがあった場合でも、プリント基板5と半田ごて20先端の急激な干渉を防止し、プリント基板5、半田ごて20、電子部品の損傷その他のトラブルが発生するのを防止する。
【0050】
また、初期位置とは、例えばヘッドユニット2の待機位置である。あるいは、プリント基板5に対して2箇所目以降の半田付けの場合には、前回の半田付けが終了した位置を初期位置と位置づけて制御することもある。
【0051】
また、上記制御手段50は、エアシリンダ30のシリンダ上側の空気圧を制御する上側バルブ30aの制御を行う。同様に、エアシリンダ30のシリンダ上側の空気圧を制御する下側バルブ30bの制御を行う。このように、上側バルブ30aおよび下側バルブ30bの制御により、エアシリンダ30のシリンダ上側および下側の空気圧をそれぞれ制御し、シリンダロッド38を介して昇降ブロック32に与える力の方向や強さを制御する。
【0052】
これにより、上記制御手段50は、上記搬送ユニット4によりフローティングユニット3を初期位置から半田付け位置近傍まで搬送するときに、ヘッドユニット2を下端位置でロック状態にするようエアシリンダ30を制御する。
【0053】
すなわち、第1の搬送速度で高速搬送するときには、エアシリンダ30のシリンダ上側の空気圧をフローティング状態より高くするか、あるいは反対に、シリンダ下側の空気圧をフローティング状態より低くする。これにより、ヘッドユニット2および昇降ブロック32を上方に牽引する力が弱くなるかあるいは消失し、場合によっては下方に押し下げる力が加わる。このようにすることにより、ヘッドユニット2を下端位置でロック状態にすることができる。
【0054】
このように、第1の搬送速度で高速搬送するときにヘッドユニット2を下端位置でロック状態にすることにより、高速搬送時のガタツキを防止し、部品の摩滅や損傷を防止する。
【0055】
さらに、上記制御手段50は、センサ35が検知した昇降ブロック32の高さ位置の情報を得て、上記センサ35が検知したヘッドユニット2の高さ位置が所定の適正範囲内にあるか適性範囲を外れているかを判断し、適性範囲を外れていたときに異常を認識する。そして、異常を認識した場合には、警報を発して異常を報知し、搬送ユニット4を制御してヘッドユニット2を待機位置に戻すことが行われる。
【0056】
具体的には、フローティングユニット3を半田付け位置まで搬送した際に、上記センサ35が検知したヘッドユニット2の高さ位置が所定の適正範囲内にあるか適性範囲を外れているかを判断することにより、半田付けの際の半田ごて20の状態やプリント基板5の高さ位置の異常を検知することができる。また、フローティングユニット3をフローティング状態にした際に、上記センサ35が検知したヘッドユニット2の高さ位置が所定の適正範囲内にあるか適性範囲を外れているかを判断することにより、フローティング状態のときのヘッドユニット2の高さ位置の異常を検知することができる。また、フローティングユニット3をロック状態にした際に、上記センサ35が検知したヘッドユニット2の高さ位置が所定の適正範囲内にあるか適性範囲を外れているかを判断することにより、ロック状態のときのヘッドユニット2の高さ位置の異常を検知することができる。
【0057】
このようにすることにより、半田付けのときに、例えばプリント基板5が供給されていない、プリント基板5が正常な位置にセットされていない、半田ごて20と導線6の位置がずれている、半田ごて20側に損傷等が生じている、ヘッドユニット2が正常な位置までに搬送されなかった等の異常を、ヘッドユニット2の高さ位置の異常で検知し、トラブルの発生を未然に防ぐようになっている。
【0058】
本実施形態の半田付け装置1は、半田ごて20を搭載したフローティングユニット3を搬送するときには、ヘッドユニット2が下端位置でロック状態になるため、安定した状態で搬送を行なうことができる。特に、初期位置から半田付け位置近傍までの搬送は、タクトタイムを短縮するために可能な限り高速で行われるため、ヘッドユニット2をロック状態として安定させることが極めて有効である。このようにすることにより、部品の摩滅を低減するとともに早期の損傷を防止し、精度を安定させて信頼性を向上することができる。また、空気圧を利用してフローティング状態にすることから、プリント基板5の高さ位置が変動したとしても、半田付けの際のプリント基板5に対する半田ごて20の押し付け力が一定になる。したがって、従来のような押し付け力不足による半田不良や押し付け力過多による損傷を防止できる。
【0059】
また、上記制御手段50は、上記フローティングユニット3を初期位置から半田付け位置近傍まで相対的に高速な第1の搬送速度で搬送し、半田付け位置近傍から半田付け位置までを相対的に低速な第2の搬送速度で搬送するよう搬送ユニット4を制御するため、
初期位置から半田付け位置近傍までは高速搬送にしてタクトタイムを短縮し、半田付け位置近傍から半田付け位置までは低速搬送にすることにより、半田ごて20の状態や基板位置に不具合があったときに半田ごて20とプリント基板5が急激に干渉することによる損傷等のトラブルを防止する。
【0060】
また、上記フローティングユニット3はヘッドユニット2の高さ位置を検知するセンサ35を備え、上記制御手段50は、上記センサ35が検知したヘッドユニット2の高さ位置が所定の適正範囲を外れていたときに異常を認識するため、
半田ごて20の状態や基板位置、ロック位置、フローティング高さ等に不具合があったときには、ヘッドユニット2の高さ位置が所定の適正範囲を外れて異常として認識される。不具合があるまま稼動し続けてトラブルが発生するのを防止する。
【符号の説明】
【0061】
1:半田付け装置
2:ヘッドユニット
3:フローティングユニット
4:搬送ユニット
5:プリント基板
6:導線
7:電子部品
8:スルーホール
9:ガイド管
10:切断機構
11:受け刃
11a:供給孔
11c:排出孔
12:切り刃
12a:保持孔
13:モータ
14:送りローラ
15:切断ギヤ
16:切断プレート
20:半田ごて
21:糸半田
22:リール
30:エアシリンダ
30a:上側バルブ
30b:下側バルブ
31:ガイド機構
32:昇降ブロック
33:ガイドバー
34:ケーシング
35:センサ
36:支持部材
37:貫通穴
38:シリンダロッド
39:ポンプ
41:Z方向搬送部
41a:Z方向駆動モータ
42:X方向搬送部
42a:X方向駆動モータ
43:Y方向搬送部
43a:Y方向駆動モータ
44:ボールねじ
45:支持部材
46:昇降ユニット
50:制御手段
図1
図2
図3
図4
図5