(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンの駆動力をクラッチの断接状態に応じて変速機に伝達可能に構成され、シフトレバーの走行位置への切換に基づく車両の発進時に、クラッチ駆動手段によりクラッチを接続状態から切断状態へ切換操作した上で、シフト駆動手段により変速機をニュートラルから走行段に切り換え、その後に上記クラッチ駆動手段によりクラッチを接続操作して車両を発進させる自動変速機の制御装置において、
停車中の上記車両の発進時に、上記クラッチを接続状態から切断状態へ切換操作したにも拘わらず、上記エンジンと上記クラッチとの回転差が略0のままで予め設定された張付き判定時間が経過したときにクラッチ張付き判定を下すクラッチ張付き判定手段と、
上記クラッチ張付き判定手段によりクラッチ張付き判定が下された場合、運転者によりブレーキ操作が行われないときには上記変速機の走行段への切換を禁止し、クラッチ張付き判定が下されてから予め設定された待機時間が経過する以前に上記運転者によりブレーキ操作が行われたときには、クラッチ張付き解消のための強制ギヤ入れとして上記走行段への切換を許可する強制ギヤ入れ可否判定手段と、
上記強制ギヤ入れ可否判定手段により上記許可判定が下されたとき、上記シフト駆動手段により上記変速機を走行段に切換操作する強制ギヤ入れ実行手段と
を備えたことを特徴とする自動変速機の制御装置。
上記強制ギヤ入れ可否判定手段は、上記待機時間が経過する以前に、上記運転者によりブレーキ操作が行われ、且つ上記シフトレバーが上記走行位置から他のシフト位置を経て再び走行位置に切り換えられたときに、上記強制ギヤ入れとして走行段への切換を許可することを特徴とする請求項1記載の自動変速機の制御装置。
上記クラッチ張付き判定手段は、上記クラッチ張付き判定を下したときに、報知手段により運転者にクラッチ張付きを報知することを特徴する請求項1または2記載の自動変速機の制御装置。
上記強制ギヤ入れ実行手段は、上記許可判定が下されたとき、上記強制ギヤ入れとして発進段よりも高速ギヤ側の走行段への切換操作を実行することを特徴とする請求項1乃至3の何れか記載の自動変速機の制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、張付き防止手段を設けることによりクラッチの構造が複雑化して、製造コストを高騰させる要因になる上に、クラッチ張付きを完全に防止できるものでもない。
そして、何らかの要因でクラッチ張付き状態に陥ると、例えば手動変速機では、車両発進に際してクラッチペダルが切断操作されてもクラッチは接続状態のままとなる。このため、変速段がニュートラルから発進段に切り換えられると、エンジンが急激な負荷を受けて停止(エンスト)するか、或いはクラッチ張付きが急激なトルク伝達により解消される。
【0005】
ところが、何れの場合でも運転者はクラッチ張付きを認識していないことから、急激なトルク伝達に伴う唐突なショックにより違和感を抱いてしまう。従って、クラッチ張付きは事前に運転者に認識させるべき事項であるが、クラッチ張付きの機構的な対策である特許文献1の技術では、何ら対処できなかった。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、製造コストの高騰を防止した上で、クラッチ張付きが発生したときに、いち早く状況を運転者に認識させることができ、もって運転者に違和感を与えることなくクラッチ張付きを解消するための制御を実行することができる自動変速機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、エンジンの駆動力をクラッチの断接状態に応じて変速機に伝達可能に構成され、シフトレバーの走行位置への切換に基づく車両の発進時に、クラッチ駆動手段によりクラッチを接続状態から切断状態へ切換操作した上で、シフト駆動手段により変速機をニュートラルから走行段に切り換え、その後にクラッチ駆動手段によりクラッチを接続操作して車両を発進させる自動変速機の制御装置において、
停車中の車両の発進時に、クラッチを接続状態から切断状態へ切換操作したにも拘わらず、エンジンとクラッチとの回転差が略0のままで予め設定された張付き判定時間が経過したときにクラッチ張付き判定を下すクラッチ張付き判定手段と、クラッチ張付き判定手段によりクラッチ張付き判定が下された場合、運転者によりブレーキ操作が行われないときには変速機の走行段への切換を禁止し、クラッチ張付き判定が下されてから予め設定された待機時間が経過する以前に運転者によりブレーキ操作が行われたときには、クラッチ張付き解消のための強制ギヤ入れとして走行段への切換を許可する強制ギヤ入れ可否判定手段と、強制ギヤ入れ可否判定手段により許可判定が下されたとき、シフト駆動手段により変速機を走行段に切換操作する強制ギヤ入れ実行手段とを備えたものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、強制ギヤ入れ可否判定手段が、待機時間が経過する以前に、運転者によりブレーキ操作が行われ、且つシフトレバーが上記走行位置から他のシフト位置を経て再び走行位置に切り換えられたときに、強制ギヤ入れとして走行段への切換を許可するものである。
請求項3の発明は、請求項1または2において、クラッチ張付き判定手段が、クラッチ張付き判定を下したときに、報知手段により運転者にクラッチ張付きを報知するものである。
請求項4の発明は、請求項1乃至3において、強制ギヤ入れ実行手段が、許可判定が下されたとき、強制ギヤ入れとして発進段よりも高速ギヤ側の走行段への切換操作を実行するものである。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように請求項1の発明の自動変速機の制御装置によれば、
停車中の車両
の発進に際してシフトレバーの走行位置への切換に応じてクラッチが切断操作されたときに、エンジンとクラッチとの回転差及び張付き判定時間に基づくクラッチの張付き判定を実行し、クラッチ張付きが判定されたときに、待機時間が経過する以前にブレーキ操作が行われたことを条件として、クラッチ張付き解消のための強制ギヤ入れとして走行段への切換を許可し、この許可判定に基づき走行段への切換操作を実行するようにした。
【0009】
従って、クラッチ張付きが発生しているときには、シフトレバーの走行位置への切換にも拘わらず、張付き判定時間が経過しても車両が発進しないことから、運転者は自ずと車両の異常をいち早く察知して、その原因がクラッチ張付きにあることを認識する。このようにクラッチ張付きを運転者に認識させた上で強制ギヤ入れとして走行段への切換を行うことから、運転者は急激なトルク伝達により唐突なショックを受けたとしても違和感を抱かない。また、クラッチ張付き判定から強制ギヤ入れまでの一連の操作が自動的に行われるため、運転者が操作する必要は一切ない。結果として運転者に負担を強いることなく強制ギヤ入れを円滑に実行することができる。
一方、例えば特許文献1の技術のようにクラッチ自体の構成を変更する必要がないため、製造コストを高騰させることなく容易に実現することができる。
【0010】
請求項2の発明の自動変速機の制御装置によれば、請求項1に加えて、待機時間が経過する以前に、ブレーキ操作が行われ、且つシフトレバーが走行位置から他のシフト位置を経て再び走行位置に切り換えられたときに、強制ギヤ入れとして走行段への切換を許可するようにした。従って、条件としてブレーキ操作のみならずシフトレバー操作も加えたため、より確実に強制ギヤ入れの可否を判定することができる。
請求項3の発明の自動変速機の制御装置によれば、請求項1または2に加えて、報知手段により運転者にクラッチ張付きを報知するようにした。従って、クラッチ張付きをより確実に運転者に認識させることができる。
請求項4の発明の自動変速機の制御装置によれば、請求項1乃至3に加えて、強制ギヤ入れとして発進段よりも高速ギヤ側の走行段への切換操作を実行するようにした。
高速段側の走行段では車両がより発進し難くなるため、強制ギヤ入れによるトルク伝達のショックを直接的にクラッチに作用させることができ、クラッチ張付きを解消できる可能性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、本発明を具体化した自動変速機の制御装置の第1実施形態を説明する。
図1は本実施形態の自動変速機の制御装置が適用されたトラックの駆動系を示す全体構成図である。
車両には走行用動力源としてディーゼルエンジン(以下、エンジンという)1が搭載されている。エンジン1の出力軸1bにはクラッチ装置2を介して自動変速機(以下、単に変速機という)3の入力軸3aが接続され、クラッチ装置2の接続時にエンジン1の回転が変速機3に伝達されるようになっている。当該変速機3は、前進6段及び後退1段を備えた手動式変速機をベースとしたものであり、以下に述べるように、その変速操作及び変速に伴うクラッチ装置2の断接操作を自動化したものである。
【0013】
クラッチ装置2は、フライホイール4にクラッチ板5をプレッシャスプリング6により圧接させて接続される一方、フライホイール4からクラッチ板5を離間させることにより切断される摩擦式クラッチとして構成されている。クラッチ板5にはアウタレバー7を介してエアシリンダ8が連結され、エアシリンダ8には電磁弁9が介装されたエア通路10を介して圧縮エアを充填したエアタンク11が接続されている。
電磁弁9の開弁時にはエアタンク11からエア通路10を介してエアシリンダ8(クラッチ駆動手段)に圧縮エアが供給され、エアシリンダ8が作動してアウタレバー7を介してクラッチ板5をフライホイール4から離間させ、これによりクラッチ装置2が接続状態から切断状態に切り換えられる。一方、電磁弁9が閉弁すると、圧縮エアの供給中止によりエアシリンダ8が作動しなくなることから、クラッチ板5はプレッシャスプリング6によりフライホイール4に圧接され、これによりクラッチ装置2は切断状態から接続状態に切り換えられる。このように電磁弁9の開閉に応じてエアシリンダ8が作動して、クラッチ装置2を自動的に断接操作可能になっている。
【0014】
変速機3には変速段を切り換えるためのギヤシフトユニット14が設けられ、図示はしないがギヤシフトユニット14(シフト駆動手段)は、変速機3内の各変速段に対応するシフトフォークを作動させる複数のエアシリンダ、及び各エアシリンダを作動させる複数の電磁弁を内蔵している。ギヤシフトユニット14はエア通路12を介して上記したエアタンク11と接続されており、各電磁弁の開閉に応じてエアタンク11からの圧縮エアが対応するエアシリンダに供給され、そのエアシリンダが作動して対応するシフトフォークを切換操作すると、切換操作に応じて変速機3の変速段が切り換えられる。このようにギヤシフトユニット14の電磁弁の開閉に応じてエアシリンダが作動して、変速機3を自動的に変速操作可能になっている。
【0015】
車室内には、図示しない入出力装置、制御プログラムや制御マップ等の記憶に供される記憶装置(ROM,RAMなど)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタなどを備えたECU(制御ユニット)21が設置されており、エンジン1、クラッチ装置2、変速機3の総合的な制御を行う。
ECU21の入力側には、エンジン1の回転速度Neを検出するエンジン回転速度センサ22、変速機3の入力軸3aの回転速度(クラッチ回転速度Nc)を検出するクラッチ回転速度センサ23、運転席に設けられたシフトレバー13の切換位置を検出するレバー位置センサ24、変速機3のギヤ位置を検出するギヤ位置センサ25、アクセルペダル26の操作量Accを検出するアクセルセンサ27、変速機3の出力軸3bに設けられて出力軸回転速度Vss(車速Vと相関する)を検出する車速センサ28、及びフットブレーキ29の操作を検出するブレーキスイッチ30、クラッチ装置2のクラッチストロークSTを検出するストロークセンサ31、車両のパーキングブレーキの作動状態を検出するパーキングブレーキスイッチ32などのセンサ類が接続されている。
【0016】
また、ECU21の出力側には、上記したクラッチ装置2の電磁弁9、ギヤシフトユニット14の各電磁弁、車両の運転席に設けられた変速段を表示するギヤ段表示部33(報知手段)などが接続されると共に、図示はしないが、エンジン1の燃料噴射弁などが接続されている。なお、このように単一のECU21で総合的に制御することなく、例えばECU21とは別にエンジン制御専用のECUを備えるようにしてもよい。
【0017】
そして、例えばECU21は、エンジン回転速度センサ22により検出されたエンジン回転速度Ne及びアクセルセンサ27により検出されたアクセル操作量Accに基づき、図示しないマップからエンジン1の各気筒への燃料噴射量を算出すると共に、エンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qに基づき図示しないマップから燃料噴射時期を算出する。そして、これらの算出値に基づき各気筒の燃料噴射弁を駆動制御しながらエンジン1を運転する。
また、ECU21は、レバー位置センサ24によりシフトレバー13のDレンジへの切換が検出されているときには自動変速モードを実行し、アクセル操作量Acc及び車速センサ28により検出された車速Vに基づき、図示しないシフトマップから目標変速段を算出する。そして、クラッチ装置2の電磁弁9を開閉してエアシリンダ8によりクラッチ装置2を断接操作させながら、ギヤシフトユニット14の所定の電磁弁を開閉してエアシリンダにより対応するシフトフォークを切換操作して変速段を目標変速段に切り換え、これにより常に適切な変速段をもって車両を走行させる。
【0018】
ところで、車両の停車中に何らかの要因でクラッチ装置2がクラッチ張付き状態に陥ると、発進段への切換のためにエアシリンダ8によりクラッチ装置2を切断操作してもクラッチ装置2は接続状態のままとなる。このためギヤシフトユニット14により変速機3を発進段に切り換えたときに、エンジン1が急激な負荷を受けて停止するか、或いはクラッチ張付きが急激なトルク伝達により解消されるが、何れにしても唐突なショックにより運転者に違和感を与えるという問題があった。そこで、本実施形態では、クラッチ張付きの発生を運転者にいち早く認識させると共に、クラッチ張付き判定から強制ギヤ入れまでの一連の操作を自動的に実行する対策を講じており、以下、当該対策のためにECU21により実行されるクラッチ張付き解消処理を説明する。
【0019】
図2はECU21により実行されるクラッチ張付き解消ルーチンを示すフローチャートであり、車両の停車中にECU21は当該ルーチンを所定の制御インターバルで実行する。
まず、ステップS2でシフトレバー13の位置がNレンジからDレンジに切り換えられたか否かを判定し、判定がNo(否定)のときには一旦ルーチンを終了する。ステップS2の判定がYes(肯定)になるとステップS4に移行し、電磁弁9を開閉制御してエアシリンダ8によりクラッチ装置2を切断側に操作する。続くステップS6では、ギヤ段表示部33に発進段である2速を示す「2」を点滅させ、ステップS8でエンジン回転速度Neとクラッチ回転速度Ncとの回転差ΔNが0であるか否かを判定する。なお、ステップS6のギヤ段表示部33の点滅は、発進段への切換を試行中であることを意味する。
【0020】
図3はクラッチ張付き解消処理の実行状況を示すタイムチャートである。この図に示すように、クラッチ装置2が正常で張付きしていなければ、クラッチストロークSTの切断側への変化に伴ってクラッチ装置2が切断側に操作され、アイドル相当のエンジン回転速度Neに対してクラッチ回転速度Ncは次第に低下して0となる。よって、クラッチ装置2が正常なときの回転差ΔNがアイドル相当の値になる。これに対してクラッチ張付きの発生時には、
図3に示すようにクラッチストロークSTが変化してもクラッチ回転速度Ncが低下せずに、回転差ΔNは0に維持される。
ステップS8の判定がYesのときはステップS10に移行して、クラッチ装置2を切断側に操作し始めてから予め設定された張付き判定時間T1が経過したか否かを判定する。張付き判定時間T1が経過する以前にステップS8でNoの判定を下したときには、クラッチ装置2が正常であると見なし(クラッチ張付き判定手段)、ステップS12に移行して通常ギヤ入れとして発進段への切換を行う。その後、ステップS12で発進段への切換完了を示すべく、ギヤ段表示部33に表示中の「2」を点滅から点灯に切り換えてルーチンを終了する。従って、その後は別の制御ルーチンによりクラッチ装置2が接続操作されて、アクセル操作に応じて車両が発進する。
【0021】
一方、ステップS8の判定がYesのまま張付き判定時間T1が経過したときには、クラッチ装置2に張付きが発生していると見なしてクラッチ張付き判定を下す(クラッチ張付き判定手段)。このときにはステップS10からステップS16に移行し、ギヤ段表示部33に「N」を点滅させる(報知手段)。「N」の点滅はクラッチ張付きを示すものである。この場合の運転者は、Dレンジへの切換操作にも拘わらず張付き判定時間T1が経過しても車両が発進しないことから、自ずと車両の異常を察知できる。さらにギヤ段表示部33の「N」点滅により、異常の原因がクラッチ張付きにあることを認識できることになる。
なお、本実施形態では、クラッチ装置2を切断側に操作し始めた時点で張付き判定時間T1のカウントを開始したが、これに限ることはない。例えば、切断側への操作によりクラッチストロークSTが切断側に到達したか否かを判定し、この到達判定を下した時点で判定時間T1のカウントを開始するようにしてもよい。
続くステップS18ではパーキングブレーキスイッチ32がオフからオンに切り換えられたか否かを判定する。予め運転者は車両のサービスマニュアルにより、クラッチ張付きの発生時にはパーキングブレーキの作動を条件として、張付き解消のための強制ギヤ入れが自動的に実行されることを理解しており、通常であれば当該パーキングブレーキ操作が実行される。なお、ステップS18の判定はパーキングブレーキに限ることはなく、例えばフットブレーキの操作状態を判定するようにしてもよい。
【0022】
ECU21はステップS18の判定がNoのときにはステップS20に移行し、クラッチ張付き判定を下してから待機時間T2が経過したか否かを判定する。待機時間T2が経過する以前にステップS18でYesの判定を下したときには強制ギヤ入れを許可し(強制ギヤ入れ可否判定手段)、ステップS22で強制ギヤ入れとして発進段への切換を行う(強制ギヤ入れ実行手段)。即ち、このときの運転者は強制ギヤ入れの実行を意図してパーキングブレーキ操作したものと見なせ、このため強制ギヤ入れを許可しているのである。
従って、変速機3の変速段はニュートラルから発進段に切り換えられ、エンジン1が急激な負荷を受けて停止するか、或いはクラッチ張付きが急激なトルク伝達により解消される。
図3ではクラッチ張付きが解消された場合を示し、発進段への切換に伴ってクラッチ回転速度Ncが次第に低下して0となっている。
【0023】
ECU21は、その後にステップS24で回転差ΔNが0のままである否かを判定する。判定がYesのときには、クラッチ張付きが解消されなかったと見なし、そのままルーチンを終了する。このときギヤ段表示部33は「N」の点滅のままのため、この表示に基づき運転者はクラッチ張付きが解消されなかったことを認識し、例えば販社への修理依頼などの対処を行う。
また、ステップS24の判定がNoのときにはクラッチ張付きが解消されたと見なし、ステップS26でギヤ段表示部33に表示中の「2」を点滅から点灯に切り換えてルーチンを終了する。即ち、この場合には通常ギヤ入れと同様の表示となるため、この表示に基づき運転者はクラッチ張付きが解消されたことを認識し、通常通りに車両を発進させる。
一方、ステップS18の判定がNoのままで待機時間T2が経過して、ステップS20の判定がNoになると強制ギヤ入れを禁止し(強制ギヤ入れ可否判定手段)、そのままルーチンを終了する。この場合、運転者はパーキングブレーキ操作により強制ギヤ入れを実行可能なことを認識していないか、或いは何らかの理由で意図的に強制ギヤ入れしない意向と考えられる。このような状況での強制ギヤ入れは運転者に違和感を与える要因になることを鑑みて、発進段への切換を禁止すべくルーチンを終了しているのである。
【0024】
以上のように実施形態の自動変速機3の制御装置によれば、車両を発進させるべくシフトレバー13がNレンジからDレンジに切り換えられたとき、クラッチ装置2の接続操作にも拘わらずエンジン回転速度Neとクラッチ回転速度Ncとの回転差ΔNが0のままで張付き判定時間T1tが経過すると、クラッチ張付き判定を下す。そして、その後に運転者によりパーキングブレーキ操作が行われないときには発進段への切換を禁止し、待機時間T2が経過する以前にパーキングブレーキ操作が行われたときには、強制ギヤ入れとして発進段への切換を行う。
従って、クラッチ張付きが発生しているときには、Dレンジへの切換操作にも拘わらず張付き判定時間T1が経過しても車両が発進しない。このため、運転者は自ずと車両の異常をいち早く察知できるし、さらにギヤ段表示部33の「N」点滅によって異常がクラッチ張付きにあることを認識できる。
【0025】
そして、このようにクラッチ張付きを運転者に認識させた上で強制ギヤ入れとして発進段への切換を行うことから、運転者は急激なトルク伝達により唐突なショックを受けたとしても違和感を全く抱かない。また、クラッチ張付き判定から強制ギヤ入れまでの一連の操作がECU21により自動的に行われることから、運転者が操作する必要は一切ない。よって、運転者に負担を強いることなくクラッチ張付き解消のための強制ギヤ入れを円滑に実行でき、もってクラッチ張付きの解消により車両を走行可能とすることができる。
また、強制ギヤ入れの実行条件としてパーキングブレーキ操作が設定されているため、車両に制動力を作用させた状態で発進段への切換が実行される。この要因は、車両の発進による運転者の違和感を防止できるだけでなく、クラッチ張付き解消の確率を向上できるという効果がある。即ち、発進段への切換によるトルク伝達の瞬間に車両が僅かでも発進すると、その分だけクラッチ装置2へのショックが弱まる。これに対して制動力で車両発進を規制していれば、トルク伝達のショックが直接的にクラッチ装置2に作用するため、クラッチ張付きを解消できる可能性を高めることができる。
【0026】
一方、以上の説明から明らかなように、本実施形態では、クラッチ装置2自体の構成を変更することなく、回転差ΔNに基づきクラッチ張付きを判定し、張付き発生時には、発進段への切換を強制的に実行する強制ギヤ入れによりクラッチ張付きを解消している。そして、これらのクラッチ張付きの判定及び強制ギヤ入れの操作は、全てECU21の処理で行われるものである。従って、ECU21の制御プログラムを変更だけで、製造コストを高騰させることなく容易に実現することができる。
加えて、クラッチ張付きの発生時には、その状況をギヤ段表示部33の「N」点滅により運転者に報知している。このときの運転者はDレンジへの切換操作にも拘わらず車両が発進しないことで異常を察知しているが、その原因がクラッチ張付きにあることを突き止めるには多少の時間を要する。しかし、このようにギヤ段表示部33に表示がされると、クラッチ張付きをより確実に運転者に認識させることができる。
【0027】
[第2実施形態]
次に本発明を具体化した自動変速機3の制御装置の第2実施形態を説明する。本実施形態の自動変速機3の制御装置の全体的な構成は、
図1に示した第1実施形態のものと同様であり、上記のように相違点はECU21によるクラッチ張付き解消ルーチンの制御内容にある。そこで、共通する構成箇所は同一部材番号を付して説明を省略し、相違点を重点的に述べる。
図4はECU21により実行されるクラッチ張付き解消ルーチンを示すフローチャートである。
図2に示す第1実施形態のものとの相違点は、ステップS18とステップS20との間に、ステップS32の処理を加えたことにある。
【0028】
従って、ステップS10でクラッチ張付き判定を下すと、ステップS16を経てステップS18でパーキングブレーキスイッチ32がオフからオンに切り換えられたか否かを判定する。そして、ステップS18の判定がYesになるとステップS32に移行し、シフトレバー位置がDレンジからNレンジを経て再びDレンジに切り換えられたか否かを判定する。待機時間T2が経過する以前にパーキングブレーキ操作及び一連のシフトレバー操作の実行によりステップS18、20の判定がYesになると、強制ギヤ入れを許可してステップS22で強制ギヤ入れとして発進段への切換を実行し(強制ギヤ入れ可否判定手段、強制ギヤ入れ実行手段)、以降は第1実施形態と同様の処理を行う。
従って、
図5のタイムチャートに示すように、パーキングブレーキ操作が行われただけでは強制ギヤ入れは実行されず、その後に待機時間T2が経過する以前に上記した一連のシフトレバー操作が行われたことを条件に、強制ギヤ入れが実行されることになる。このように条件としてパーキングブレーキ操作のみならずシフトレバー操作も加えたため、より確実に強制ギヤ入れの可否を判定することができる。
【0029】
しかも、パーキングブレーキは若干の作動遅れが存在するため、第1実施形態のようにパーキングブレーキ操作のみに基づき強制ギヤ入れを実行した場合、制動力が完全に立ち上がる前に強制ギヤ入れが開始されることがある。この場合には車両発進によりクラッチ装置2に作用するショックが弱まり、クラッチ張付きを解消できない可能性が高まる。本実施形態では、一連のシフトレバー操作を条件に加えたことにより、当該条件が満足するまで強制ギヤ入れの開始が多少遅延されるため、その間にパーキングブレーキの制動力が立ち上がる。よって、車両発進が規制され、トルク伝達のショックを直接的にクラッチ装置2に作用させて一層確実にクラッチ張付きを解消することができる。
【0030】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態ではトラックに適用したが、これに限ることはなくバスや乗用車に適用したりしてもよい。
また、上記実施形態では、強制ギヤ入れとして発進段への切換を行ったが、これに限るものではない。通常の車両発進であれば発進段を用いることが最適であるが、クラッチ張付き解消を目的とした強制ギヤ入れでは、寧ろ車両を発進させない方がクラッチ装置2へのショックの観点から望ましい。そこで強制ギヤ入れとして、あえて車両の発進が困難になる高速ギヤ側の変速段(例えば4速や5速)への切換を実行するようにしてもよい(強制ギヤ入れ実行手段)。このように構成すれば、強制ギヤ入れ時に車両がより発進し難くなるため、トルク伝達のショックを直接的にクラッチ装置2に作用させてクラッチ張付きを一層確実に解消することができる。