(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
穴あけ工具を形成するために穴あけ工具ホルダに取り付けるよう構成されたドリルヘッドにおいて、当該ドリルヘッドはドリルヘッドの中心軸の周囲に正反対に対向する少なくとも2つの本体部分を有するように形成されており、
前記本体部分はそれぞれ、少なくとも1の切削刃を有する穴あけ部と、前記ドリルヘッドを前記穴あけ工具ホルダに固定すべく前記穴あけ工具ホルダの固定部材の少なくとも一部を中に収容するよう構成されたテーパ状のドリルヘッド穿孔部と共に形成された取付け部と、を具えており、
前記ドリルヘッドが底面を具え、前記本体部分はそれぞれ前記底面に対して角度をなす少なくとも1の側面と共に形成され、これにより、前記ドリルヘッドが前記穴あけ工具ホルダに取り付けられた場合に、前記底面は前記穴あけ工具ホルダの台座の底表面に合わせられ、前記側面はそれぞれ前記穴あけ工具ホルダの台座の対応する側面に合わせられ、
前記ドリルヘッドが前記穴あけ工具ホルダの台座に取り付けられ、各本体部分がそれぞれの固定部材によって固定され、前記本体部分の側面が前記穴あけ工具ホルダの台座の側面に対して対向配置された場合に、前記ドリルヘッドは、前記穴あけ工具ホルダの台座の対向配置された対応する側面との配置によって前記中心軸の周りを第1の方向に回転するのを防げられ、それぞれの固定部材との係合によって前記中心軸の周りを前記第1の方向とは反対の第2の方向に回転するのを防げられることを特徴とするドリルヘッド。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は切削工具とそのための切削インサートとを提供することであり、切削インサートの割出しが最小の時間、及び最小の労力で得られることが可能となる。本発明の別の目的は、切削工具とその切削インサートとを提供することであり、切削インサートの切除工具の上への取付け、ならびに、割出し動作中の切削インサートの着脱を可能にするために、挿入及び脱離させるための別個の締結具の使用を要求しない。
【0005】
本発明のある態様によると、上面、底面を有し、かつ、前記上面と前記底面との間で延在する内表面を有するインサートの穿孔部とともに形成される切削インサートを上部に取付けるように構成される切削工具ホルダが提供され、当該ホルダが、底表面と、当該底表面に対し傾斜した少なくとも1の側壁とによって規定される台座と、当該台座の底表面で開放端を有する穿孔軸を伴う台座の穿孔部と、前記台座に前記切削インサートを固定するための固定機構と、を具え、当該固定機構が、前記台座の穿孔部内に収容され、本体を有する固定ピンであって、外表面が前記本体の近位端と遠位端との間で延在し、長手方向にピンの軸を規定する固定ピンと、前記台座の穿孔部の穿孔軸に沿って、少なくとも、前記台座の穿孔部の内側から、前記台座内の前記底表面を通って、第1の範囲まで、前記切削インサートを前記台座内に配置可能にし、前記底面を前記底表面に対向して整列させるように、前記遠位端が突出する第1の取付け位置と、前記台座の穿孔部の内側から、前記台座内の前記底表面を通って、前記第1の範囲よりも大きな第2の範囲まで、前記インサートの穿孔部の内表面に係合させて、これによって定位置に前記インサートを固定するように、前記遠位端が突出する第2の固定位置と、の間で、前記固定ピンを軸方向に変位するよう構成された変位機構と、を具える。
【0006】
「整列される(aligned)」という用語は、前記底面及び前記底表面が互いに一般的に平行である構造のことであると理解すべきである。更に、前記底面及び底表面は互いに接触した状態である必要はなく、すなわち、互いに間隔を開けていてもよいことは理解すべきであろう。
【0007】
更に、「取付け位置(mounting position)」という用語は以降の明細書で切削インサートのホルダ上への取付けだけではなく、そこからの切削インサートの脱離、ならびにその配置を変更するのを可能にする特定の範囲への切削インサートの解放を可能にする位置を定義するのに用いられることは理解すべきである。
【0008】
本発明の特定の実施例によると、前記機構は双方の位置において、前記近位端が前記台座の穿孔部内に配置できるようにする。代替的に、別の実施例によると、前記台座の穿孔部が、前記固定ピンを受けるように構成される穿孔部を有する媒介機構を受けるべく構成でき、双方の位置において、前記近位端が前記媒介機構の穿孔部内に配置される。
【0009】
前記切削インサートは更に側面とともに形成でき、前記切削インサートが前記切削工具ホルダの台座内に固定された場合、前記固定ピンは、前記少なくとも1の側面の、前記台座の前記少なくとも1の側壁との堅固な接合を促進するように、前記インサートの穿孔部の内表面に圧力を印加すべく構成される。前記切削インサートは切削刃を具える別の側面とともに更に形成されてもよい。
【0010】
前記固定ピンの機構、及び前記切削インサートの内表面は、ピンの軸が前記切削インサートの内表面に対して斜角となり、これによって、圧力を前記少なくとも1の側壁の方向の前記内表面に印加するように、すなわち、前記内表面と、前記台座の側壁に面する前記少なくとも1の側面との間に規定される切削インサートの一部が前記固定ピンの遠位端と前記側壁との間で固定されるようにできる。このような機構は以下の構造のいずれかによって得られうる:
−固定ピンが表面部を有し、ピンの軸が前記台座の底表面に対し垂直であり、前記切削インサートの内表面がその底面に対し斜角である;
−ピンの軸が底表面に対し斜角である、すなわちそれに対し垂直ではなく、前記切削インサートの内表面が前記底面に対して垂直である;
−前記ピンの軸及び前記内表面の双方が斜角である、すなわち、それぞれ台座の底表面及び切削インサートの底面に対して垂直ではない。
【0011】
この接合部において、前記台座の底表面と前記少なくとも1の側壁との間の角度は鋭角に限定されず、直角(straight angle(90°))であってもよく、鈍角であってもよいことは更に留意すべきである。
【0012】
前記変位機構は、機構の変位が軸方向に前記固定ピンの変位を引き起こすような、固定ピン又はその近位端に機械的に接合されるように構成される固定ピンと別個の機構であってもよい。このような機構の実施例は付勢ばね、ボルト又は固定ピンに対して押下されるように構成されるウェッジであってもよい。
【0013】
特に、付勢ばねが上に示唆したように用いられる場合、固定ピンが付勢ばねによって前記固定位置に一定に付勢されるように配置されてもよい。従って、前記固定ピンの位置を前記取付け位置に切り替えることは前記付勢ばねの一回の押下によってなされてもよい。
【0014】
特に、切削インサートをホルダから解放するために、付勢ばねの押下は固定ピン上に圧力を印加することによってなされてもよい。ある実施例によると、切削インサートはインサートの穿孔部が双方の端部で、すなわち、上面及び底面で開口するように形成してもよく、圧力手段がインサートの上面を通って穿孔部に挿入されて、付勢ばねの押下のために固定ピンの遠位端へ圧力を印加できる。別の実施例によると、前記固定ピンが隅部(nook)とともに形成され、前記ホルダ又は前記切削インサートは溝部とともに形成され、前記固定位置で前記隅部に整列すべく構成される。従って、圧力手段は前記溝部に挿入して、前記隅部内に収容されてもよく、付勢ばねの押下に対して前記固定ピンに圧力を印加してもよい。
【0015】
代替的に、固定ピンは、特定の方向における前記ピンの変位がその軸方向移動を引き起こすように変位機構とともに一体化して形成されてもよい。このような機構の一実施例は、ピンの回転が軸方向に沿ったその前進を引き起こすように前記台座の穿孔部の内側のねじ山に収容可能な外側のねじ山とともに前記固定ピンが形成されることであってもよい。固定ピンは、固定ピンの回転のために適用される、ねじ回しのような回転手段を受けるように構成されるボルトヘッドとともにその端部のうちの1つで形成されうる。
【0016】
特に、前記固定ピンはその遠位端がボルトヘッドとともに形成されるように設計されてもよく、前記回転手段は上部から固定ピンに接合されるように、すなわち、まず前記切削インサートを通過して、ボルトヘッドに接合するように構成される。このような場合においては、インサートの穿孔部は上面及び底面の双方で開口部を有してもよい。代替的に、前記近位端は前記ボルトヘッドとともに形成されてもよく、前記回転手段は底部から固定ピンに接合させるように、すなわち、まずホルダを通過してボルトヘッドに接合させるように構成される。
【0017】
しかしながら、前に規定されるように、取付け位置と固定ピンとの間の前記固定ピンの変位においては、ボルトヘッドとともに形成される、又はされないにかかわらず、底表面から台座内に更に離れて変位される。
【0018】
上の実施例について、切削インサートを取付け、脱離又は反転するのに必要な時間は、従来の切削工具(ボルト付けした)の同様の動作より一般的にわずかな時間の消費であり、このことはとりわけ、固定ピンの位置を変更する簡単な方法(例えば、ばねの押下)、及び固定ピンが総ての時間で台座の穿孔部で維持されるという事実の結果であることに留意すべきである。この後者の特徴は、例えば動作中のボルトの紛失のリスクを低減できる。上の動作を行うのに要求される時間量を低減する重要性は切削工具で用いられる切削インサートの量に正比例して増加することは更に留意すべきである。
【0019】
前記工具ホルダが2の隣接する側壁とともに形成され、前記台座は、前記切削インサートの2の隣接する側面が前記台座の2の隣接する側壁に整列するように、前記切削インサートを受けるべく構成できる。前記切削インサートの2の隣接する側面に形成される、合致するインサートの固定部に堅固に接合させるように構成された台座の固定部とともに、前記台座の2の隣接する側壁が更に形成できる。前記台座及び側壁の固定部は、オス/メス型接合部として形成してもよい。例えば、前記底表面に一般的に平行な前記側面に沿って延在し、第1及び第2の溝表面によって規定され、互いに傾斜する溝部とともに前記側面が形成でき、かつ、同様に延在し、第1及び第2の突出表面によって規定され、前記溝部内に収容されるように互いに傾斜が一致する、対応する突起部とともに前記側壁が形成してもよい。前記溝表面間の角度が30°ないし150°の範囲であってもよい。
【0020】
動作においては、多様な負荷が切削インサートに、とりわけ底表面からの底面の脱離を生じさせうる前記底表面に対して一般的に垂直な方向の軸方向負荷が印加される。しかしながら、台座の側壁の固定部と切削インサートの側面の固定部との間の上述の接合は、前記切削インサートの底面が、前記側壁から外方を向く方向の前記台座の底表面に対する変位の摺動を防ぐ間に、前記軸方向負荷に対向して支持すべく、前記切削インサートが構成されるようにできる。言い換えると、側面の固定部の、側壁の固定部からの脱離が防がれる場合、切削インサートは軸方向負荷に抵抗でき、底面の底表面からの脱離を防ぐことができる。
【0021】
この目的のために、前記工具ホルダは静止部材とともに形成してもよく、前記切削インサートは前記変位の摺動を防ぐ方法で、前記工具ホルダの台座へ取付けられた場合、前記静止部材に係合されるべく構成される静止部とともに形成してもよい。本発明の一実施例によると、前記固定ピンは前記静止部材を更に構成してもよく、それによって、切削インサートの内表面に印加される圧力は前記変位の摺動を防ぐようになる。
【0022】
更に、前記切削工具は、接線方向の負荷、すなわち、それぞれ工具ホルダ及び切削インサートの底表面及び底面に対し平行な方向に印加される負荷に耐えるように構成され、前記台座の側壁に対向して圧力を印加する。特定の実施例によると、側壁は底表面に対して鋭角の斜角でもよく、前記側面は底面に対して鋭角の、対応する斜角であってもよい。このような機構は、接線方向の負荷により側面へ印加される圧力が、切削インサートの底面を台座の底表面へ堅固に加圧する切削インサートで下方の圧力を引き起す、ウェッジの効果を引き起こすのに提供できる。角度はウェッジ効果が側面と側壁との間で生成される静止摩擦に打ち勝つほどにすることは留意すべきである。
【0023】
前記切削工具ホルダは、粉砕、穿孔、旋削等のような多数の切削動作のために用いてもよく、同時に複数の切削インサートを受けるように構成されてもよい。
【0024】
本発明の1の特定の設計の様態によると、前記切削工具ホルダは粉砕動作用に用いてもよく、この場合においては前記切削インサートは粉砕インサートである。前記工具ホルダは複数の粉砕インサートを受けるように構成されてもよい。
【0025】
別の特定の設計の様態によると、前記切削工具は中心軸周りの回転用に構成される穴あけ工具であり、前記切削インサートはドリルヘッドの形態である。前記ドリルヘッドは、少なくとも1の切削刃を具える穿孔部と固定機構と係合するように構成される取付け部とを有するドリルヘッド本体と、配置部材とを具えることができる。前記ドリルヘッド本体は、複数の本体部分とともに形成でき、各々が穿孔部と取付け部とを具える。従って、前記工具ホルダは、前記固定機構をそこに堅固に受けるべく構成される複数の台座部分とともに形成してもよい。
【0026】
固定機構は切削工具の固定ピンを受けるように構成されるインサートの穿孔部と、前述したのと同様の方法で対応する底表面及び側壁に対向して整列するように構成される底面及び側面とともに形成してもよい。特に、機構は前記工具ホルダの側壁が対向配置されるようにしてもよく、ドリルヘッドが定位置に堅固に保持され、側壁によって一方向(例えば、CW)及び固定ピンによる他方向(CCW)への回転を防ぐ。
【0027】
更に、切削工具の台座の底表面はその中心軸に対し円錐構造、例えば、外縁部及び内縁部を有してもよく、外縁部は内縁部に対して軸方向下方に配置される。ドリルヘッドの穿孔部の底面は、対応する逆位の構造、すなわち、外縁部及び内縁部を有してもよく、外縁部は内縁部に対して軸方向上方に配置される。このような構造は工具ホルダに対してドリルヘッドの自身による自動的な中心配置を促進してもよい。
【0028】
前記配置部材は前記工具ホルダの対応する位置決定部に整列するように構成してもよい。例えば、前記配置部材は前記工具ホルダの対応する穿孔部内に収容可能な延在部であってもよい。ドリルヘッド及び工具ホルダの位置決定部は差込機構とともに形成してもよく、更に、工具ホルダからの脱離からドリルヘッドを固定する。
【0029】
別の実施例によると、切削工具はその中心軸周りを回転するように、かつ、前記中心軸周りに外周配置された少なくとも2の切削インサートを受けるように構成された可変口径式の切削工具である。前記切削工具は、前記切削工具の外周包絡面を増加/減少させるように、前記中心軸に対して前記切削インサートを半径方向に変位するように構成される直径制御機構を更に具えてもよい。
【0030】
特に、前記直径制御機構は、その一部分に前記台座の側壁を構成し、前記底表面に対して前記中心軸から外側に傾斜させてもよい。従って、前記側壁は、前記底表面に隣接し、かつ、前記中心軸から半径r1の間隔で配置された近位端と、前記底表面から離れ、かつ、r1より大きな、前記中心軸から半径r2の間隔で配置された遠位端との間で延在してもよい。同様に、切削インサートはその底面に対して傾斜する側面とともに形成してもよく、前記上面に隣接する上端と前記底面に隣接する下端との間で延在してもよい。側面と底面との間の角度は、直径制御機構の側壁とと切削インサートの側面を整列させるのを可能にするようにしてもよい。
【0031】
前記直径制御機構は前記底表面に対して変位するように特に、前記側壁の遠位端が底表面に対して軸方向位置を変更するように変位するように構成されてもよい。
【0032】
従って、直径制御機構の変位のために、各切削インサートは、上端が前記直径制御機構の側壁の遠位端に隣接する第1の完全重畳位置と、上端が前記直径制御機構の側壁の近位端に隣接する第2の部分重畳位置との間で変位可能してもよい。前記完全重畳位置と部分重畳位置との間の多様な中間位置を呈してもよいことは留意すべきである。
【0033】
例えば、前記可変直径部材は側壁を構成する円錐形状のヘッドを有するねじであってもよく、ボルトのねじの着脱によって、そのヘッドの軸方向変位と、結果的には切削インサートの半径方向の変位を生じ、ウェッジ効果によって促進される。
【0034】
別の設計の様態によると、前記切削インサートは、切削刃が上面と円柱型の側面との間で規定されるように、回転軸を規定する円柱形状、すなわち、その上面と底面との間に延在する円柱型の側面を有してもよい。前記切削インサートは、切削動作中に前記回転軸周りの回転用に構成されてもよい。
【0035】
動作においては、切削インサートが素材と接触して、それによって切削される場合、切削インサートに印加される負荷は、切削インサートの底面と前記台座の底表面との間の静止摩擦力の増加によって特に、切削インサートの回転を防ぐ。しかしながら、切削インサートの素材からの脱離で、すなわち、切削インサートが素材から離れた場合に、切削インサートの負荷は非常に減少する。特定の例では、切削インサートが工具ホルダ及び固定ピンに対して素材と接触しない最小時間間隔が存在する。特定の時間間隔で、インサートの穿孔部の内表面で固定ピンに印加される圧力においてわずかな減少があり、切削インサートをその回転軸周りのわずかな回転動作を行うことが可能となる。
【0036】
上述の時間間隔は極端に短く、切削インサートが回転軸周りで非常に短い角回転を行うことを可能にする。例えば、切削工具が1分あたり約3000回転(RPM)を行う間に、切削インサートは全旋削を終了するのに15分かかる、すなわち、切削工具の各45,000の回転で1の旋削を実行できる。
【0037】
このような機構は、操作者の介入なく切削刃の一定の動的変化を提供できる。切削刃を一定に変更することは、切削工具の有効動作時間を延ばすのを助けることができる。
【0038】
循環式切削インサートは、その上面(レーキとして作用する)に配置された突起部とともに更に形成でき、切削動作中に切削インサートが一方向にのみ付勢されるように配置される。
【0039】
この点においては、循環式切削インサートの回転が本発明による特定の取付け配置により促進されることは留意すべきである。言い換えると、ねじ締結具を用いた従来の取付けにおいては、切削インサートはその動作において非常に制限され、その軸周りの一定の動的回転を行うことができる見込みはわずかである。
【0040】
本発明の別の態様によると、本発明の前の態様の切削工具ホルダで用いるように構成された切削インサートが提供される。
【0041】
特に、前記切削インサートは、本発明の前の態様の切削工具ホルダの固定機構と協働して動作するように構成してもよい。
【0042】
本発明の更に別の態様によると、底表面と、そこから延在する少なくとも2の隣接する側壁とを有する切削工具の台座上へ取り付けられるように構成される切削インサートが提供され、前記切削インサートが、中心軸を間に規定する上面と底面とを有し、前記台座上へ取付けられた場合に、前記底面が前記底表面と整列するように、少なくとも2の隣接する側面が前記上面と前記底面との間で延在し、前記2の隣接する側面の各々は、前記切削インサートが前記台座上へ取付けられた場合に、前記2の隣接する側壁の各々に形成される対応する台座固定部に堅固に接合されて、それによって前記底面の前記底表面に対する軸方向における変位を防ぐように構成されるインサート固定部とともに形成され、前記切削インサートは、前記切削インサートが前記台座上へ取付けられた場合に、前記底面の前記底表面に対する変位の摺動を防ぎ、それによって前記インサート固定部と前記台座固定部との間の堅固な接合を保証すべく、前記切削工具ホルダの対応する静止部材に係合させるように構成される静止部とともに更に形成される。
【0043】
本発明の更に別の態様によると、本発明の前の態様による切削工具ホルダと切削インサートとを具える切削工具が提供される。
【0044】
本発明の更に別の態様によると、本発明の別の態様による切削工具ホルダの台座上へ、本発明のある態様による切削インサートを取付るための方法を提供し、当該方法が、
−前記台座の穿孔部の内側から、前記台座内の前記底表面を通って、第1の範囲まで、その遠位端が突出する第1の取付け位置内で前記工具ホルダの固定ピンを変位するステップと、
−前記底面が前記台座の底表面に整列するように、前記台座上へ前記切削インサートを配置するステップと、
−前記台座の穿孔部の内側から、前記台座内の前記底表面を通って、前記第1の範囲よりも大きな第2の範囲まで、前記インサートの穿孔部の内表面に係合させて、これによって定位置に前記インサートを固定するように、前記遠位端が突出する第2の固定位置内へ固定ピンを変位させるステップと、を具える。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1によって、切削工具ホルダと切削インサートとを具えた従来技術による一般的な切削工具が示される。本図面中に示された構成は、複数の切削刃を有する切削インサート4を受けるための台座3とともに形成される切削工具ホルダ2を含むことが確認され、切削刃のうちの1つが符号5で示される。切削インサート4は更に、逆円錐形(enlarged conical)のヘッド部8を有するねじ締結具7を受けるための中心穿孔部6とともに形成される。締結具7は実質的には、穿孔部6に挿入され、上側から通過させ、かつ台座3の底表面に形成されたねじ込みソケット9内に装着されるボルトである。
【0048】
このような従来技術の構造においては、切削動作用の新しい切削刃5を配置するために切削インサート4が取付けられ、脱離され、反転させ、又は回転させるべき場合は、その度に、締結具7を脱離し、切削インサート4を脱離し、部分ローテーションで回転させ(例えば、上面に4の切削刃、及び底面に4の切削刃を有する方形の切削インサートにおいては90°)、穿孔部6を通して切削工具のソケット9内に締結具7を再適用する必要のあることが確認される。「脱離する(remove)」という用語は本明細書では締結具7が完全に係合されず、工具ホルダ2と接触しないことを規定するものである。この一連の動作は、割出しすべき各切削インサートのためにかなりの労働力と時間を要求し、それは切削工具で用いられるこのような切削インサートの数で乗算される。更に、締結具7が一度脱離されると誤配置又は紛失されうるため、更なる貴重な時間を浪費しうる。
【0049】
図2Aによると、切削工具は符号10と一般的に指定されて、切削工具ホルダ11と、固定機構11’によってそこに固定的に収容される切削インサート13を具えて示される。
【0050】
切削工具ホルダ11は、底表面12aによって規定される台座12、及び、底表面12aに対して鋭角に傾斜した側壁11aとともに形成される。台座12は同様に、軸Yを規定する台座の穿孔部18とともに形成され、そこに固定機構11’を収容するように構成される。
【0051】
固定機構11’は中空の固定ピン16と、それと係合するように収容される付勢ばね17とを具える。固定ピン16は台座の穿孔部18内に収容される近位の開放端peと、穿孔部18から底表面12aを通って台座12内へ軸方向に突出する遠位の閉止端deとを有する。その配置で、付勢ばねが固定ピン18の遠位端を付勢して、底表面12aから突出するようになる。
【0052】
固定ピン18は更にその遠位端deに隣接する固定部を有し、円錐形の固定面16aを規定するテーパ形状を有する。遠位端deは更にインデント16bとともに形成されるが、その目的は
図4Aないし4Cに述べられよう。
【0053】
切削インサート13はそれぞれ、上面13aと、底面13bと、その間に延在する4の側面13cとを有する。切削インサート13は、側面13cと、それぞれの上面13a及び底面13bとの間の交差部で規定される複数の切削刃14とともに形成される。切削インサート13は更に、固定機構11’の固定部を受けるように構成される円錐形のインサートの穿孔部15とともに形成され、内表面15aは固定機構11’の固定部を係合するように構成される。
【0054】
アセンブリにおいて、切削インサート13が工具ホルダ11の台座12へ取付けられる場合、その底面13bは台座12の底表面12aに対向して同一平面にあり、その側面13cは台座12の側壁11aに対向して同一平面にある。この位置において、付勢ばね17の力は固定ピン16を上方に付勢し、これによって固定部16の円錐面16aはインサートの穿孔部15の円錐面15aに接合する。インサートの穿孔部15の円錐形状と円錐面16aとによって、切削インサート13は側壁13に対し押圧されて、定位置に硬く保持される。固定ピン16と側壁13に対向する内表面15aの側面との間にギャップnがあることは更に留意されよう。
【0055】
固定ピン16の上方への軸方向変位が側壁11a方向への切削インサート13の横変位を引き起こすが、逆側の横方向に、すなわち側壁11aから離れる切削インサート13の変位の企図が台座の穿孔部18に戻る固定ピン16の下方への軸方向変位を引き起こさないことは更に留意すべきである。これはインサートの穿孔部15のテーパ角によるものであり、ほぼ0°である。この特定の場合においては、角度βは約10°である。このような配置は台座12内部の切削インサート13の非常に堅固な固定を提供する。
【0056】
特に
図2Bに見られるように、異なる設計の切削インサート13が側面13cが傾斜した更なる表面13gを規定する切抜部とともに形成されて示され、工具ホルダの台座12は対応する形状を有する側壁11aとともに形成される。この特定の設計において、切削インサート13は底面13bが底表面12aに対向して同一平面にあるように固定ピン16によって側壁11aへ横方向に押圧されるとともに、表面13gは合致する表面11gに対向して同一平面となる。このように、この側面の表面13cは側壁11aと接触せず、周知のように圧力を開放するのに用いられうる。
【0057】
図4Aないし4Cは、このような構造が切削インサート13を切削工具ホルダ11に適用することと、別個の締結部材を適用及び除去する必要なくそこに固定することとをどのように可能にするかを示す。
【0058】
図4Aに示した初期位置において、固定ピン16は固定位置にあり、その遠位端deは、ばね17の付勢力のもとで底表面12aから範囲P
1まで突出する。更にこの位置においては、固定ピン16の近位端peは台座の穿孔部18内に配置される。
【0059】
切削インサート13を台座12に取付けるために、固定ピン16は、その遠位端deを底表面12aからP
1未満の範囲P
2まで突出させる取付け位置にまず変位されなければならず、それによって前述のように切削インサート13が台座12内に配置可能になる。固定ピン16を取付け位置に変位することは、付勢ばね17を押下することを要求し、固定ピン16が台座の穿孔部18に軸方向に変位するのを可能にする。このような押下は装置を用いてさなれうるが(図示せず)、切削インサート13の底面13bを用いて、
図4Bに示すように固定ピン16を押下することによってもなされうる。固定ピン16が十分な範囲まで押下される時点で、すなわち範囲P
2又はそれ未満までその遠位端deが突出している場合、切削インサート13は定位置に摺動できる。
【0060】
切削インサート13が台座12に摺動された時点で、固定ピン16はインサートの穿孔部15内に収容されるように、付勢ばね17の力の下で軸方向上方に自由に変位できる。固定ピン16はその固定部16aがインサートの穿孔部15の内表面15aに接合するまで上方に配置される。接合するとすぐに、固定ピン16の上方への軸方向変位は、切削インサート13が
図4Cに示した位置に到達するまで、側壁11a方向に切削インサート13の横変位を引き起こす。この位置においては前に開示されたように、切削インサート13は、台座12の底表面12a及び側壁11aに対向して堅固に押圧される。
【0061】
切削インサート13を台座12から開放するために、固定ピン16を取付け位置に戻して変位すること、すなわち、切削インサート13が脱離するのを可能にするために底表面12aから十分に小さな範囲でその遠位端deが突出するよう固定ピン16を押下することが必要である。これは例えば、インサートの穿孔部15に工具を挿入して、固定ピン16のV形状の溝部16bに接合し、そこに圧力を印加することによってなされうる。このような圧力によって、固定ピン16の固定面16aは切削インサートの各表面15aから分離させ、それによって切削インサート13を切削工具ホルダ11から脱離するのを可能にする。実際の脱離は手動によって、磁石によって、又はピンセット型の手段によってなされうる。
【0062】
上に関して、「取付け位置(mounting position)」という用語は最も広範な意味で理解すべきであり、切削インサート13の着脱ならびに切削刃14を切り替える目的での切削インサート13の回転を可能にする位置のことであり、取付け位置及び固定位置の双方において、固定ピン16の近位端peは台座の穿孔部12内に収容されることに留意すべきである。
【0063】
上に開示した切削工具10、及び切削インサート13の切削工具ホルダ11への取付け/取外し動作の段階は簡単であり、このような動作を行う際にかなりの時間を節約できる。更に、固定ピン16は総ての時間で台座の穿孔部18内にあるため、従来技術で既知のねじで起こりうるような、それを紛失する又は誤位置するリスクをわずかにする。
【0064】
図5及び6は改良物を示し、切削インサート13の脱離は、固定ピン16の押下によって開放された場合に切削インサート13と、切削工具ホルダ11中に形成される第2の穿孔部19aの底部との間に挿入される排出ばね19によって影響を与えられる。
図6に示されるように、切削工具ホルダ11中の対応する段部に連結する段部とともに形成された切削インサートの2の側面の接合部に、穿孔部19a中の排出ばね19は配置される。
【0065】
図7は一般的に符号21で示された切削工具の別の様態を示し、切削インサート23は切削刃24及び中心穿孔部25とともに形成され、固定ピン26は穿孔部25内に収容可能である。この場合においては、固定ピン26の遠位端deの一部のみが26aで示されるように、切削インサート23中に形成される、穿孔部25のテーパに適合するテーパ面とともに形成される。固定ピン26の残りの部分は26bで示されるように円柱型である。環状の段部26cとともに、及び、台座23を規定する切削工具21中に形成される環状の段部21aと接合可能な外側に延在する輪縁部26dとともに固定ピンの近位端は形成される。
図7は切削インサート23の動作中の位置を示し、
図4Cに対応している。
【0066】
図7に更に示されるように、穿孔部28の底部は固定ピン26とそのばね27を収容し、締結具29aによって切削工具21へ固定される遮蔽板29によって閉止される。締結具29aは切削工具及びそのばねで付勢された固定ピン26の構築を容易にするためだけに設けられ、当然ながら、切削インサートを脱離する場合、あるいは割出しして、新しい切削刃を使用できるようにする場合に、脱離する必要はない。
【0067】
図7においては、切削インサート23の底面及び側壁によって規定される角度はαと表わされ、穿孔部25を規定する切削インサート23の内表面の切削インサートの底表面での角度はβで表わされる。角度αは角度βと等しくしてもよいが、好ましくは角度β未満である。例えば、角度αは75°であってもよく、角度βは82.5°であってもよく、切削インサートの反対面の各々は15mm×15mmであってもよく、切削インサートの厚さは7.5mmであってもよい。
【0068】
図8は変形物を示し、切削工具31は、複数の切削刃34を有する切削インサート33を受けるための台座32とともに形成され、その固定位置へ外側方向にばね37によって付勢される固定ピン36を受ける穿孔部35とともに形成される。
図8で示された改良物においては、切削インサート33に形成された穿孔部35はテーパ型であり、固定ピン36は均一直径又は円柱型である。
【0069】
この場合においては、固定ピン16とインサートの穿孔部35との間の接合は、固定ピン16の頂縁部とインサートの穿孔部35の内表面との間に生じる。
【0070】
図9は更なる改良物を示し、切削インサート43中の穿孔部45は円柱型である一方、固定ピン46の遠位部はテーパ型である。
【0071】
図10は更なる改良物を示し、切削インサート53中の穿孔部55と、固定ピン56の遠位端deとの双方がテーパ型であるが、切削インサート53と切削工具ホルダ51との間の連結面は切削工具ホルダ51の側壁51’に形成される突起部51aの形態であり、溝部53aは切削インサート53に形成される。
【0072】
図11は更なる改良物を示し、切削インサートの固定位置において、切削インサート63に形成される段部63aに接合するように構成される段部61aとともに、切削工具ホルダ61は形成される。
図11における別の改良物は、外側方向に固定ピン66を付勢するために穿孔部68内に収容されるばね67に加えて、切削工具61において、固定ピン66の押下で切削インサート63を台座の外へ付勢するための穿孔部69a内の第2のばね69が更に提供され、
図5に開示されたものと同様である。
【0073】
図12ないし16では、本発明に記載の様態においては、固定ピンは外側方向にばねで付勢されず、台座の底部に固定される。
【0074】
図12ないし14に示された様態について、切削工具71は、複数の切削刃74とともに形成される切削インサート73を受けるべく、台座72とともに形成されることが分かるであろう。
図1に関し上述したように、切削インサートを切削工具に取付けるための締結具(
図1の符号7)を受けるのに通常用いられる穿孔部75とともに、切削インサート73は更に形成される。前述の様態においては、穿孔部75は外側方向にばねで付勢された固定ピン(例えば、
図2の符号16)を受けるために用いられる。しかしながら
図12ないし14の様態においては、本図面中に符号76で示された固定ピンは、統合形成されることによって台座の底表面に対し斜角で、台座72の底部に固定される。
【0075】
固定ピン76の傾斜に対応するために、切削インサート73中の穿孔部75は、切削インサートの外表面上に延在部又は拡張部とともに形成される。
図12ないし14は構造を示し、切削インサートが4の位置に割出されて、切削動作のために2の側面の各々に4の切削刃74を用いることを可能にしうる。従って、
図13に示すように切削インサート中の穿孔部75はこのような4の延在部又は拡張部を具え、各々が隣の延在部又は拡張部の軸に対し90°変位する軸を有する。
図14は斜角に延在する固定ピン76を受けた後の切削インサート73を示す。
【0076】
図12に更に示したように、切削インサート73は例えば、
図2について上述したのと同様の構成であり、すなわち、インサートの各側面に4の切削刃74、又は切削動作のための合計8の切削刃を提供するように、平らな上面及び下面の方形構造及び4の側壁の斜方構造を具える。
【0077】
図12において、角度α及びβは
図7におけるそれぞれの角度α及びβと同一でよい。すなわち、αは好ましくはβと等しいかそれ未満である。例えば、αは75°であってもよく、βは82.5°であってもよく、切削インサート73は15mm×15mm×7.5mmであってもよい。
【0078】
図15によると、本発明による切削工具の別の様態が示されており、符号80で一般的に示される。この様態においては、台座の穿孔部は支持体86を具える固定構造85を受け、その遠位端にピンの穿孔部89aが固定ピン89を受けるように構成されて形成される。固定構造は更に固定ピン89について横断配置され、ばね88によって付勢される固定部材87を具える。
【0079】
支持体86がねじ締結具86aによって切削工具81に固定されることにより、固定構造全体は定位置に固定され、
図7に示した構造と同様である。
図15に明確に示したように、支持体86は穿孔部85と同軸であり、双方の軸は台座82の底表面に対し斜角である。
【0080】
固定ピン89は、固定部材87のカム面87cと係合可能なカム面89bとともに形成され、固定部材は、切削インサートの対応する段部83bに係合するように構成される固定段部87bとともに形成される。その配置は固定ピン89が押下された場合、2のカム面によって固定部材87が台座82の側壁81aから横方向に離れて変位するようになる。この横変位はインサートの固定段部83bから固定突出部89bを開放するのを可能にし、これによって切削インサートを台座82から脱離するのを可能にする。
【0081】
従って、固定ピン89が固定位置にある場合、その遠位端deはピンの穿孔部89aから第1の範囲まで突出し、固定ピン89が第2の位置にある場合、ピンの穿孔部89aから第2のわずかな範囲まで突出し、切削インサートを工具ホルダ81に取付けるのを可能にすることとなる。
【0082】
図16は
図15のものと同様の構成を示し、ひいては理解を促進するために、対応部分は同一の引用番号によって同定されている。
図16に示された構造において、固定ピン89を押下して、固定段部87bの段部83bからの分離によって切削工具81の台座82から切削インサートを脱離のために開放する場合、そこから都合良く脱離すべく、排出ばねが切削インサートを台座82の外側に押し出すように、2つのピン91、92の形態で排出ばねとともに切削工具は提供され、その各々が切削インサート83の下面と接合するばね93、94によって付勢される。
【0083】
固定ピンが切削インサートの穿孔部内で固定位置まで、あるいは取付け位置まで手動で移動可能になる、本発明による切削工具のいくつかの様態を示す
図17ないし21の試みをここに示す。
【0084】
従って、
図17に示されるように、切削工具101は、切削動作用の1又はそれ以上の切削刃104を規定する切削インサート103を受ける台座102とともに形成される。切削インサート103は、切削インサートが台座102に挿入される場合に固定ピン106を受ける穿孔部105とともに形成される。
【0085】
図17に示した構造においては、固定ピン106は、その遠位端でのテーパヘッド部106aとともに、及び、切削工具101を通って延在し内側にねじ山のある穿孔部107に通された、外側にねじ山のある柄部106bとともに形成される。穿孔部107の外側に突出する固定ピン106の近位端は、各方向に手動で回転できるノブ109を有する。固定ピン106の軸は切削インサート103における穿孔部105の軸と実質的には平行である。
【0086】
従って、固定ピン106がノブ109によって一方向に回転する場合、その穿孔部105を規定する切削インサート103の内表面105aと堅固に接触するテーパヘッド部106aを動かすように軸方向上方に移動し、それによって切削工具101の台座102内に堅固に固定すべく横方向に切削インサートを変位することが分かるであろう。他方、ノブ109が逆方向に回転する場合、固定ピン106は穿孔部105内で下方に移動し、これによって固定ピンのテーパヘッド部106aを穿孔部105を規定するインサート103の内表面105bから分離させ、脱離のために切削インサートを解放し、あるいは台座に新しい切削インサートを取付けさせる。
【0087】
図18は
図17の改良物を示し、固定ピン116をその各々の固定及び取付け位置に対し回転させるために、穿孔部115の開放端を介して工具によってアクセス可能な切欠き部116bとともに、遠位部の拡張型ヘッド部116aが形成され、それとともに固定ピン116が形成される。
【0088】
しかしながら、双方の場合において、定位置に切削インサートを固定するために、固定ピンの遠位端は軸方向上方に、すなわち底表面から離れて、及び台座の中へ変位すべきであることにはより留意すべきである。
【0089】
図19は別の構造を示し、固定ピン126は外部に通されるのではなく、台座122を規定する切削工具121の壁部129に形成される穿孔部128に通された移動式ピン127によって、穿孔部125内を軸方向に移動する。
図19に示されたように、内部に通されるピン127は固定ピン126を切削インサート123の内表面に対向して堅固に支持し、それによって定位置に固定できるようにする一方、逆方向に回転するピン127は切削インサート123に対する固定位置から固定ピン126の遠位部を解放するように、移動式ピン127の内側端部は符号127aで示されるようにテーパされ、固定ピン126の下面は符号126aで示されるようにテーパされる。
【0090】
図20は更なる構造を示し、固定ピン136の軸が切削インサート133中の穿孔部135の軸に対して傾斜している。この場合においては、固定ピン136の遠位部136aは、ノブ139の回転が
図17に関して上述したのと同一の方法で固定ピン136を更に固定及び解放するため、テーパする必要がないが、微小な部分についてテーパしてもよい。
【0091】
図21は、手動式のノブによって固定及び解放位置に固定ピンを移動させるのではなく、本図面中に符号146で示された固定ピンは、その固定位置へばね147によって付勢され、解放位置まで固定ピンの上面に接合する工具によって押下可能であることを除いては、
図20のものと同様の構造を示している。
【0092】
図17ないし19の様態が固定ピンをその固定位置まで押下するばねを含むことによって、及び、固定ピンをその解放位置まで移動させるために、工具を用いてその上面に接合することによって、更に改良されうることは分かるであろう。
【0093】
図22によって、複数の切削刃154を有する切削インサート153を受けるための台座152とともに形成され、中心穿孔部155とともに形成される切削工具151が示される。切削工具151は穿孔部155内に配置され、穿孔部及び台座152の軸に対して傾斜する軸を有する固定ピン156を具える。ピン156は切削工具においては穿孔部158内のばね157によって矢印の方向に付勢され、切削インサート153の穿孔部155の壁部と接合可能な遠位端で、テーパされた外表面156aを具える。
【0094】
穿孔部155が前述の構造と逆方向にテーパされ、すなわち外側方向に直径を増加させること、更には切削工具151の側壁151a及び底壁151bが切削刃154の逆側で切削インサート153を受けるための台座152を規定し、互いに垂直である、すなわちα=90°であることが分かるであろう。
【0095】
台座152の底壁に対する固定ピン156の軸(β)は、台座の底壁に対する穿孔部153の内表面の角度(γ)より角度が小さく、更にはピン156は切削インサート153に対して固定位置まで外側にばね157によって付勢されるが、切削動作用に新しい切削刃154を割出すべく切削インサートを解放するために外側に手動で押下してもよいことは更に分かるであろう。
【0096】
図23は同様の構成を示し、切削工具161は、切削刃164とともに形成される切削インサート163を受けるための台座162、及び、穿孔部165を規定する切削インサート163の内表面と接合可能な上方のテーパ面166aを有する固定ピン166を受けるための中心穿孔部165とともに更に形成される。
図23においてはしかしながら、固定ピン166は固定位置までばねで付勢されず、ねじ山166bと、台座162内の切削インサートを固定すべく一方向に、又は台座からの脱離用に切削インサートを解放すべく逆方向に回転可能なノブ166cとを具える。
【0097】
図23の構造における別の差異は、側壁161a及び底壁161bが切削刃164と逆位の台座162を規定し、鈍角であること、すなわち、角度αが90°より大きいことである。しかしながら、固定ピン166の軸の傾斜角δはαより大きいため、切削インサートは更に、取付け位置に堅固に配置されて維持される。
【0098】
図24によると、
図22と更に同様の構成が示され、差異は切削工具171の側壁171a及び底壁171bが切削インサート173を受けるための台座172を規定し、互いに鋭角であること、すなわち角度αが90°未満であることである。
【0099】
図25によると、切削工具の更なる構造が示され、切削工具ホルダ181は切削刃184と中心穿孔部185とを有する切削インサート183を受けるための台座182とともに形成される。この場合においては、しかしながら、切削インサート183が反転可能であり、穿孔部185が中間部185aからの2のテーパされた区画とともに形成される。従って、一方の区画185bは中間部185aから外側に切削インサートの一方の面(内側面)へテーパされる一方、他方の区画185cは中間部185aから外側に切削インサートの逆位の面(外側面)の方向にテーパされる。
【0100】
図25中の固定ピン186は穿孔部185の長軸と平行な長軸を有し、穿孔部185の内表面と接触して、穿孔部188中のばね187によって付勢される、上方のテーパ面186aを具える。
【0101】
従って、
図25に示された構造によって、切削インサート183が台座182の底部に面する切削インサートのいずれかの面で台座182内に挿入可能であり、これによって切削インサートの2の逆位の面の各々にある切削刃184の総てが切削動作中に使用のために配置可能であることが分かるであろう。例えば、切削インサート183が各面に4の刃部184を具える場合、この配置によって8の切削刃が切削動作用に使用可能となる。
【0102】
図26Aは
図25で示された構造の上面図であり、切削工具ホルダの側壁181a及び底壁181bは、切削インサート183を受けるための台座182を規定し、隣接する2の側面で互いに鋭角であり、これによって切削工具の台座182内に切削インサート183を固定するための2の突起部189a、189bを規定する。
図26Bはある変形物を示し、台座182を規定する切削工具の2の壁部181a及び181bは切削インサートの片側のみで鋭角となり、これによって切削インサートの固定位置に単一の突起部189aを規定する。
図26Cはある変形物を示し、2の壁部181a及び181bは突起部が切削インサートの固定位置に形成されないように互いに垂直であるが、切削インサートはピン186によって切削インサートに印加される横方向の力により、切削工具内の定位置に固定される。
【0103】
上述の様態のほとんどにおいては、固定ピンは円形断面のものである。
図27Aないし27Cは生成されうる更なるいくつかの変形物を示す。
【0104】
図27Aは長円形断面の固定ピン196を受ける切削インサート193を示し、
図27Bは方形断面の固定ピン206を受けるための切削インサート203を示し、
図27Cは2の固定ピン216a、216bを受けるための切削インサート213を示す。
【0105】
図28Aないし28Gは
図25及び26Aないし26Cと同様の切削工具を示すが、
図25及び26Aないし26Cの構造における円柱型の穿孔部185及び固定ピン186ではなく、多角形形状、特に矩形構造(
図28C)の、切削インサート223の穿孔部225と、固定ピン226とを具える。
【0106】
従って、
図28Aに示したように、切削工具ホルダ221は、
図25及び26Aないし26Cの切削インサート183と同様に方形構造の切削インサート223を受けるための台座222とともに形成される。切削インサート223は複数の切削刃224、及び、多角形構造の、この場合においては、上に示したような円形構造ではなく方形構造(
図28C)の中心穿孔部225とともに更に形成される。
【0107】
従って、
図28Eないし28Gにおいて特に示されるように、切削インサート223は4の平らな側面223aないし223dで規定される方形穿孔部とともに形成される。方形穿孔部225を規定する切削インサート223は更に、4の直径の小さな円形穿孔部223cないし223hとともに形成され、その2の平らな側面のうちの接合部の各々である。穿孔部223cないし223hがより小さくなると、方形穿孔部225の生成を促進し、平らな側面の接合部での圧力を更に分散及び解放する。
【0108】
更にかつ
図28Aに示すように、穿孔部225は更に
図25にあるように、その中間部225aからの2のテーパされた区画とともに形成され、一方の部分225bは中間部225aから外側に切削インサートの一方の面(内側面)へテーパされ、他方の区画225cは中間部225aから外側に切削インサートの逆位の面(外側面)方向にテーパされる。
【0109】
固定ピン226は穿孔部225の長軸に平行な長軸を有し、上方のテーパ面226a(その平らな側面のうちの1つに)を含み、その側面は切削インサート221中の穿孔部225の内表面と接触して、穿孔部228中のばね227によって付勢される。
【0110】
従って、
図28Aないし28Gに示される構造によって、同様に切削インサート223を、台座222の底部に面する切削インサートのいずれかの面とともに台座222内へ挿入するのを可能にし、これによって切削インサートの2の逆位の面の各々にある切削刃224の総てが、切削動作中の使用のために配置するのを可能にすることが分かるであろう。一方、
図25及び26Aないし26Cにおいては、切削インサート183中の穿孔部185、及び穿孔部の側面と協働可能な固定ピンの上方部分は、双方とも円形構造であり、
図28Aないし28Gに示された構造においては、双方とも多角形構造、特異的には方形構造である。
図28Aないし28Dに明白に見られるように、切削インサート223と協働する固定ピン226の平らな側面226aはテーパ型であり、その外側面に向かって長さが低減する一方、残りの3の側面226bないし226dは非テーパ型であることは更に分かるであろう。
【0111】
図29Aないし29Cによると、
図28Aないし28Gの固定ピンと同様の構造の固定ピン226が示され、ひいては、対応する部分は理解を促進するために、同一の引用番号によって同定される。
図29Aないし29Cの構造における主要な差異は、固定ピンの遠位端226でテーパされた面は平らではなく、符号226a’(
図29A)で示されたように円形にされることである。このような構造は従って、面接触ではなく、固定ピンのテーパされた側面226a’と切削インサートの対応する表面との間の線接触を提供し、これによって摩擦を低減させる。
【0112】
図30Aないし30Cは、切削刃234と、固定ピン236を受ける中心穿孔部235とを有する切削インサート233を受けるための台座232とともに形成される、本発明による切削工具231の更なる構成を示す。前の構成と同様に、固定ピン234の遠位部236aは切削インサート233と協働する一方、固定ピンの近位端236bは、切削インサートに対し遠位端を固定位置に付勢するばね237を具える。
【0113】
この場合においては、しかしながら、穿孔部238内に収容された固定ピン236の内側部分236bは、切削インサート233と協働可能な固定ピンの上方部分236aに対し返信性である。更に、固定ピン236の内側端部236bは円板部236cで、台座238の底部に対して取り付け可能に、及び台座と同一直径で終端される。更には、固定ピン236は、内側区画236b及び底面円板部236cと同軸性であり、ひいては固定ピンの上方部分236aに対し偏心性である中間円柱型区画236dを含む。中間部分236dは穿孔部238の遠位端と協働し、穿孔部と同一直径である。
【0114】
ばね237は固定ピン236の内側区画236bを囲むコイルばねである。コイルばねの一方の端部237aは、固定ピン236の内側部分236bへ固定され、逆位の端部237bは、その穿孔部238に隣接する切削工具23a中の開口部(図示せず)内に収容されるべく構成される。
【0115】
従って、固定ピン236がインサート233の穿孔部235、及び切削インサートを受ける台座232にある穿孔部238内で回転可能であることは分かるであろう。ばね237による一方向の固定ピンの回転によって、固定ピン236の上方部分236aを切削インサート233の穿孔部の内表面に対向し堅固に支持して、切削動作用の切削工具231内に堅固に切削インサートを固定するように、底面円板部236c及び中間部分236dは、固定ピン236の上方部分236aに対して偏心性の軸受部材として作用することは、更に分かるであろう。切削動作用の新しい切削刃を配置するために切削インサートを再割出しすることが所望された場合は常に、固定ピン236はレンチ開口部236e内に挿入されたレンチによって、逆方向に(ばね237の力に反して)手動で回転させて、切削インサートに対し、固定ピンの上方部分236aを取付け位置に移動させうることが分かるであろう。
【0116】
図31Aないし31Cは本発明の更なる様態を示し、切削工具ホルダ241は、複数の切削刃244を有する切削インサート243を受けるべく台座242とともに形成される。切削インサート243は、切削動作用の選択された切削刃244を配置すべく切削インサート243を切削工具ホルダ241に堅固に固定するよう、固定ピン246を受ける穿孔部245とともに形成される。
【0117】
図31Cに特に示されたように、固定ピン246が、切削インサート243中の穿孔部245の側面と係合可能な外側端部246aと、切削工具中の台座242にある内側にねじ山のある穿孔部248内に外部から通し収容可能な内側端部246bとを含む。
【0118】
図31Aないし31Cに示した構造は従って、
図1に示した従来技術とある程度同様の構成であるが、下記のような重要な差異を有する。従来技術の構造において、切削インサート(4)中の穿孔部(6)はねじ締結具7と同一の直径であり、ねじ締結具のヘッド8はねじ締結具7の柄部、及び締結具を受けるねじ山のある穿孔部9と同軸である。新規の構造においては、しかしながら、
図31Aないし31Cに示したように、切削インサート243内の穿孔部245は固定ピン246の上方部分246aよりも直径が大きい。固定ピンの上方部分246aは、固定ピンのねじ山部分246に対し偏心性である。後者は特に
図31B及び31Cに示され、固定ピンの下方のねじ山部分246bの軸はa1によって表わされ、固定ピンの上方部分246の軸は、軸a2によって表わされる。
【0119】
従って、従来の構成においては、固定部材の切削工具ホルダへの回転は、台座の底表面の方向での下方圧力の切削インサートへの印加を引き起こす一方、この構成においては、固定ピン246の回転は切削工具ホルダ241の側壁の方向に横方向の圧力を引き起こすことは理解すべきである。
【0120】
従って、
図1の従来技術においては、固定ピンは、新しい切削刃用に切削インサートを割出すために脱離し、次いで切削インサートを再固定するのに再挿入しなければならないが、
図31Aないし31Cに示した構造においては、固定ピン246は、切削インサート243を再割出しするために切削工具241から脱離する必要がないことは留意されよう。むしろ、切削工具241に対し切削インサート243を固定位置に移動させるために一方向に、あるいは、切削動作用の別の切削刃244を配置すべく、切削工具241に対し切削インサート243を解放位置へ移動させるために逆方向に回転(例えば、半回転)させることのみが必要である。示された構造は従って、前述の構造と同様に、
図1に示した従来技術の構造において要求されるような固定ピンを脱離及び最挿入する必要なく、切削インサート243が別の切削刃を手動割出しするように解放することが可能となる。
【0121】
図32Aないし32Eに示した構造は、固定ピン256の外側端部256aと、切削工具251の台座252との間に挿入された円錐円板部259(
図32A及び32C)を含むことを除けば、
図31Aないし31Cと同様である。円錐円板部259は開口部259aとともに形成されて固定ピン256を受け、固定ピンのねじ山のある端部256bが切削工具251のねじ山のある穿孔部258に堅固に通されて、外方向の圧力を切削インサート253の穿孔部254内に収容される固定ピン256へ印加する場合に圧縮される。このような構造はそれによって、切削インサート253に対するその固定位置から、解放位置への固定ピン256の不意の回転に対する更なる保護を提供する。従って、
図32Aないし32Dに示した構造は、切削インサート253に対し固定位置から解放位置へピンを解放するために、まず固定ピン256を内側に押下し、次いで回転することを要求する。
【0122】
図32Aないし32Eに示した構造における別の差異は、
図32Cではっきりと示したように、固定ピン256の上方部分256aが円柱型である一方、固定ピン246の上方部分246aが
図31Cに特異的に見られるように、円錐構造である。
【0123】
総ての他の点において、
図32Aないし32Eに示した切削工具によって提供される構造、動作及び利点は、基本的には
図31Aないし31Cについて上述したものと同様である。
【0124】
図33ないし39によると、
図25に示された構造と同様の切削工具が示されているが、切削インサートが割り出され、あるいは置換されて、切削動作用に新しい切削刃を提供した後に、固定ピンと切削工具との間に切削インサートより堅固にウェッジするのを可能にするよう改良される。
【0125】
従って、
図33に示され、一般的に符号261で表された切削工具ホルダは、切削刃264と中心穿孔部265とを有する切削インサート263を受けるように台座262とともに形成される。
図25と同様に、穿孔部265は中間部265aからの2のテーパされた区画とともに形成され、一方の部分265bは切削インサートの内側面へ外側にテーパされ、他方の部分265cは切削インサートの外側面へ外側にテーパされる。
【0126】
図33における固定ピン266は穿孔部265の長軸に対し平行な長軸を有し、穿孔部268中のばね267によって、穿孔部265の下方の内表面265bと接触して付勢される符号266aの上方のテーパ面を有する。
【0127】
図33に示した構造においては、しかしながら、固定ピン266中に一体化して形成される軸266cを受けるように構成される中心開口部とともに、切削工具261中の穿孔部の底壁261aは形成される。ばね267は固定ピン266を外側に付勢することは分かるであろう。好ましくは、軸266cは切削インサート261の内表面と実質的に同一平面になるか、
図33に示されるように、そこからわずかにくぼんでいる長さである。
【0128】
固定ピン266の軸266cの目的は、鋭い衝撃を外側方向に固定ピンへ印加するのを可能にすることであり、それによって固定ピンと切削工具261との間で切削インサート263を堅固にウェッジすることである。好ましくは、衝撃は軸266cの外側先端部266bに対して衝突可能な先端部267aを一方の端部に有するインパクトピン267を介して印加され、それによって、固定ピン266と切削工具ホルダ261との間の台座262内に切削インサート263を堅固にウェッジする。この目的のために、軸266cの外側先端部226bは、V形状の切欠き部のような押下部とともに形成され、インパクトピン267の対応する端部の符号267aは、押下部226bの台座に対して相補的に形成される。インパクトピン267は逆位の端部に、ハンマ269又は他の衝撃生成部材によって衝撃を受ける拡張型ヘッド部267bを具える。
【0129】
従って、切削インサート263が割出され、あるいは、置換されて、切除目的用の新しい切削刃264を提供した後に、ばね267は通常、結合ピン266を外側に付勢し、それによって特に
図25で上述したように、切削インサート263に対向して堅固に支持することが分かるであろう。しかしながら、
図33に示した構造が用いられた場合、外側方向に固定ピン266に対する鋭い衝撃を印加するようにインパクトピン267を衝突させて、切削工具261の台座262内に切削インサート263をより堅固にウェッジできる。
【0130】
図33に示した切削工具ホルダは、上述した最初の構造に対する総ての利点を提供し、更なる利点は、切削インサートが切削工具に堅固にウェッジされることをより良好に保証する。ばね267のみが切削工具内に切削インサート263を堅固に保持するのに用いられる場合、切削インサート264に対する素材によって印加された負荷は迅速な振動で切削工具ホルダ261を設定できる。このような振動は、時間の経過中に切削工具ホルダ261から切削インサート263をゆるみやすく、切削工具によって生ずる金属疲労(metal fatigue)の速度を増加させ、それによって使用寿命を実質的に減少させる傾向にある。しかしながら、切削インサートが、
図33で上述したように衝撃を印加することによって切削工具ホルダに対して堅固にウェッジされる場合、切削インサートの緩み、及び金属疲労の発生は双方とも実質的に減少し、これによって、切削インサートのより良好な切削動作とより長い使用寿命とを生成する。
【0131】
図34Aないし34Cは
図33と同様の別の切削工具を示すが、
図33にあるような工具印加型の衝撃動作によるものではなく、簡単な手動動作によって、切削工具と固定ピンとの間で切削インサートを堅固にウェッジするように構成される。簡略化のために、
図33中の部品に一般的に対応する
図34Aないし34C中の部品は、同一の引用番号で同定される。
【0132】
図34Aないし34Cに示した構造においては、固定ピン266のテーパ面266a、及び、切削インサート263中の穿孔部265の接合面265bは、
図34Aないし34Cでそれぞれ例示されたステップの列によって示されるように切削インサートが適用された場合に、固定ピンと工具ホルダとの間で切削インサートを堅固にウェッジするように構成される。従って、
図34Aに示されるように、切削インサート263は切削インサート263の底表面の部分によって固定ピン266の上面に接合されるように固定ピン266を覆って配置され(
図34A)、次いで、切削インサート263は固定ピン266を押下すべく下方に押され(
図34B)、最終的には、切削インサート263は、固定ピンが切削インサートの穿孔部265内に外側に飛び出るまで固定ピンの頂部を横切って横向きに摺動される(
図34C)。固定ピンのテーパ面266aは、切削インサート263内の穿孔部265のテーパ面265aに接合し、固定ピンと、切削工具ホルダ261の台座262の側壁との間で切削インサートを堅固にウェッジする。実施例のために、このようなテーパ面は約5ないし15°、好ましくは10°にしてもよい。
【0133】
総ての前述の動作は1の連続的な移動において手動でなすことができ、従って、
図33中の符号267、269のような衝撃部材を不必要にする。切削インサートを自由にするために、金属素材の表面にくぼみを生成して用いられるような衝撃工具は、工具の先端を固定ピン266の上面へ適用し、それを下方に押し込むことによって用いることができ、それによって、テーパ面265bに対して下方にテーパ面266aを移動させて、切削動作用に新しい切削刃を提供することが所望される場合に回転、置換等で切削インサートを解放できる。
【0134】
図35は別の構造を示し、
図33及び34Aないし34Cと同様であり、ひいては簡略化のために、同一の引用番号が対応する部分を同定するように用いられる。
図35に示した構造は、切削工具ホルダ261に形成される台座262の側壁262aが凸面構造であり、切削インサート263の外表面263aが相補形の凹面構造である点で前述の構造とは異なる。このような構造は既述の様態にあるように、切削インサートと工具ホルダとの間で結合形態を生成するだけではなく、凹型傾斜面での切削インサートによって削りくずの処理を容易にする。従って、
図36に示したように、素材270に対する切削動作中に、切削インサート263の凸面263aは、切削インサートの外側の切削刃264によって生成される削りくず271を偏向させるのに有効であり、それによって、このような削りくずが切削動作と干渉する可能性を低減する。。
【0135】
最初に示したように、切削インサートは三角形、四辺形、六角形、八角形等のようないずれかの多角形構造にしてもよい。
図37は実施例を示し、切削工具361は三角形状の台座362に設けられ、切削インサート363は同様の三角形形状である。切削インサートは、切削動作用に選択的に割出されうる3の切削刃364を具える。切削インサート363は、固定ピン366をそこで受けるように構成される穿孔部365とともに更に形成され、上述の構造のいずれかにして、切削動作中に定位置に切削インサートを固定し、切削動作用の新しい切削刃を提供するように脱離又は回転でそれを解放できる。
【0136】
更に、各側面367はV形状の溝部368の形態で固定部とともに形成され、切削工具ホルダ361の側壁に形成される、対応するV形状の突起部に係合するように構成される。V形状の溝部の目的は
図38に対し更に述べることはない。
【0137】
図38は
図10と同様の構造を示し、方形構造の切削インサート373を受ける方形台座372とともに形成される切削工具371を具え、その上方側面に4の切削刃374、ならびに、その下方側面に更なる4の切削刃を含む。切削インサートは切削工具の台座372の中心にピン376を受けるように構成される中心穿孔部375とともに更に形成される。
図10の構造のように、
図38で示した構造は台座372を規定する2の側壁に突起部371aを更に具え、切削インサート373の4つの外側面は切削インサートが固定ピン376によって台座372内に堅固に固定される場合、突起部371aを受けるべく4の溝部373aを具える。
【0138】
図10の構造と区別されるように、しかしながら、切削インサート373を受ける切削工具の台座372の2つの側面371bは、
図10に示したような傾斜ではなく、台座の底壁に対して垂直に延在する。同様に、切削インサート373の4つの外側面373eは切削インサートの底壁に対して垂直に同様に形成される。総てのその他の点においては、
図38に示した構造、及びこのような構造の動作は、
図10に対して上述したのと実質的に同一である。
【0139】
V形状の溝部373aとV形状の突起部371aとの間の連結接合は、切削インサートの底面の台座の底表面372からの脱離を防ぐように、切削動作中に印加される軸方向負荷に対する抵抗を切削インサートに提供することはここでは留意すべきである。切削インサートがその底面と台座の底表面との間の横方向の変位の摺動を防ぐ間、言い換えると、その側面が台座の側壁と整列し、V形状の溝部373aがV形状の突起部371aと連結している間は、軸方向負荷に対する抵抗が提供されることは更に留意すべきである。
【0140】
この実施例においては、固定ピン376は溝部373aの突起部371aからの脱離を防ぐ静止部材を更に構成する。しかしながら、切削工具ホルダがこのような脱離を防ぐ静止部材とともに形成してもよいことは理解すべきである。
【0141】
図39A及び39Bによると、
図10と同様の切削工具及び切削インサートが示されるが、テーパされた穿孔部を生成する必要がなく、標準的な作成手順を用いて生成するのは難しい。
図39Aの理解を促進するために、図の対応する部分は、
図10で用いたものに対応する引用番号によって同定されるが、「500」だけ増加している。
【0142】
従って、インサート553の中心に形成される穿孔部555は、
図10に(符号55で)示したようなテーパ型ではなく、円柱型で非テーパ型である。更に、切削工具551中の突起部551a、及び、切削インサート553中の相補的な溝部553aは、
図10の台形構造ではなく三角形構造であり、切削工具551、及び、切削工具中の台座552の底壁に対して垂直に延在する切削インサート553、の2の各壁部を介して形成される。
【0143】
図39Aに更に示されるように、固定ピン556及び付勢ばね557用の台座552の底壁に形成される底壁は、
図10のように垂直ではなく、台座552の底壁に対し斜角である。
【0144】
図39Aに示した切削インサートは、
図34Aないし34Cで上述したのと同一方法で切削工具551に対して脱着可能であり、
図34Aないし34Cで述べたように、簡単な手動動作で切削工具551の台座552に切削インサート553を堅固にウェッジする同一の利点を提供する。
図39Aの構造はしかしながら、穿孔部55及び、切削工具551及び切削インサート553の内部接合可能な壁部がそれぞれ、テーパ型にこれらの壁部を形成する必要及び犠牲を要しない点で、
図10及び
図34Aないし34Cを超える有意な利点を有している。
【0145】
図39Bになされるように、本発明の切削工具に対する更なる改良物は、固定ピン566を押下するために、その遠位端deから圧力を印加することが要求されずに示されている。特に、切削工具ホルダ561はレバー570の端部574を受けて、その近位端peに隣接する固定ピン566に形成されるように、対応する溝部569内に収容されるべく構成される側面穿孔部562とともに形成される。
【0146】
レバー370の端部は偏心突出部576とともに形成され、突出部576が溝部569内に収容される場合、レバー370の回転が固定ピン566の軸方向変位を引き起こす。
【0147】
図40は切削工具ヘッド部を示し、一般的には符号380で表され、4の切削インサート383を解放可能に受けるように4の台座382とともに構成され、構造の各々が
図38に示される。従って、
図39に示されるように、各切削インサート383は、各側面で4の切削刃384とともに、及び切削工具ヘッド部380の各台座382の中心に配置されたコイルばね387によって外側に付勢された固定ピン386を受けるようにその中心の穿孔部385とともに形成される。
図39Aの構造図において、台座の2の隣接する側面の隅部は、応力を解放するために
図28Eに示した構造と同様に、円形切抜部388とともに形成される。
【0148】
図38、39A、及び39Bに示した構造は、これらの図に示されるように2の隣接する側壁の各々にではなく、台座382の一方の側壁にのみ突起部381bを含んでもよいことが分かるであろう。
【0149】
図41ないし44によると、上述の構造の構造の総てにおいて、切削インサートはその側面の各々に切削刃を有する多角形構造である。
図41ないし44は多角形構造ではなく、円形構造の切削インサート453を担持するように設計された切削工具ヘッド部460を具える構造を示している。
図41ないし44に示された構造は、切削インサート453が切削動作中にゆっくりと、かつ自動的に回転するようなものであり、切削動作用に配置された切削刃について切削インサートを持続的に再割出しすることを必要としない。
【0150】
従って、
図41に特に示したように、各切削インサート453は円形構造であり、相補的な円形構造の台座451内に収容される。各切削インサート453はその外側周縁部周りの、隣接する円形切削刃454とともに、及び、穿孔部455に対し外側方向にばね457によって付勢された固定ピン456を受けるための中心穿孔部455とともに形成される。
【0151】
図44に特に示されるように、各切削インサート453の外表面はこのように円柱型の側壁を規定し、テーパされた溝部、あるいはインサートの2の末端壁部の間の周縁の溝部453aとともに形成される。
図42に示したように、切削インサート453を受けるようにその台座451の各々を規定する切削工具ヘッド部の側壁が、相補的なテーパ型の円形突起部451aとともに形成され、切削インサートのくぼんだ溝部453a内に収容される。
【0152】
図44に特に、更に示されるように、各切削インサート453の外表面は、切削インサートの切削刃454によって切削動作中に素材から切削される削りくず(例えば、
図36の符号271)と接合可能な複数の突起部458とともに形成され、削りくずを切削インサートの外側に偏向する。突起部458は循環式切削インサートの半径方向の線分に対し斜めに形成される。このことにより、これらの突起部が別の機能を行うこと、すなわち、切削動作中に切削インサートのゆっくりとした回転を生成することが可能となる。従って、斜角の突起部458は切削動作中に素材と接合可能な切削刃を連続的に偏向する。
【0153】
固定ピン456のテーパ面456a、及び、切削インサート453に形成される穿孔部455の対応する表面は、切削工具と固定ピンとの間で切削インサートを軽く固定するためだけに、及び、これによって、削りくずの斜角の突起部458との接合によって切削動作中に、切削インサートのゆっくりとした回転を与えるために設計されるであろう。
【0154】
更に、切削動作中に切削インサート453の切削刃が素材内にある場合、切削インサート453への負荷及び圧力は高い静止摩擦を生じさせ、切削インサート453がその軸周りに回転するのを防ぐことに留意すべきである。しかしながら、切削インサートの素材からの脱離の場合は、圧力は短間隔で解放され、切削インサート453は回転動作を行うことができる。切削インサート453によって行われる回転動作は微小であり、例えば、その中心軸周りを3000RPMの速度で回転する粉砕ヘッドに対し、切削インサートは15分ごとに1回転、すなわち、粉砕ヘッドの45,000回転ごとに1回転行うことができる。
【0155】
図41ないし44に示したような構造は従って、切削動作中の切削刃の連続的な変更を生成し、それによって、切削動作間の切削インサートの切削刃を再割出しすることを必要としないだけではなく、切削刃の過度の加温を防ぎ、連続変更し、これによって切削インサートの使用寿命を実質的に増加させる。
【0156】
図45Aないし45Gによると、符号600で一般的に表される穴あけ工具は、ドリル本体610とそこに取付けられるドリルヘッド620とを具えて示される。ドリル本体610はその一方の端部で、固定手段でドリルヘッド620を受けるように構成されるホルダ部611とともに形成される。
【0157】
ホルダ部611は底表面616Bとともに形成され、2の段部614a、614bは底表面616Bから軸方向に延在し、中心軸Xに対して2の正反対の逆位置に配置される。各段部614は底表面616Bに対して傾斜される側壁616Sとともに形成され、既に開示した様態の多数と同様である。
【0158】
ホルダ部611は中心軸と一致し、底表面616Bで開放端を有する中心の位置決定穿孔部618とともに更に形成される。ホルダ部611は2の台座の穿孔部636(
図45Fに示す)とともに更に形成され、各々がそこで固定機構630を受けるように構成される。
【0159】
固定機構630は固定ピン632と付勢ばね634とを具え、前の様態のいくつかに開示したものと同様である。
【0160】
図45Hないし45Lによると、ホルダ部611の台座に取付けられるように構成されるドリルヘッドは、互いに正反対に対向する右面620R及び左面620Lとともに形成され、各側面は穿孔部620D及び取付け部620Mとともに形成される。各穿孔部620Dは切削刃621を具える。各取付け部620Mはテーパ型のインサートの穿孔部626及び側面627とともに形成される。更に、ドリルヘッド620は中央の位置決定突起628とともに形成され、位置決定穿孔部618内に収容されるように構成される。
【0161】
図45Aないし45Gに戻ると、ドリルヘッド620がホルダ部611の上へ取付けられた場合、固定ピン632は前の様態について記載したのと同様の方法でインサートの穿孔部626の内表面626iに対向して支持されることが分かるであろう。しかしながら、この様態においては、ドリルヘッド620の正反対の対向する部分620L、620Rは段部614L、614Rに対して固定されるため、固定ピン632の圧力は逆方向に、あるいは代替的に、CW方向の正接の方向に印加される。このことにより、穴あけ工具600がCCW方向に回転でき、それによってのみ、固定機構630とドリルヘッド620との間の接合を締結するため、穿孔に関わる場合の利点とわかる。
【0162】
アセンブリにおいて、ドリルヘッド620は位置決定突起628が位置決定穿孔部618の上に配置され、ドリルヘッド620の各々の部分の底面は、各々の固定ピン632上に静止するようにホルダ部611の台座上へ置かれる。この位置から、ドリルヘッドは圧力を固定ピン632へ印加するように下方に押下でき、これによって、取付け位置に押下し、その遠位端は底表面616Bから、ドリルヘッド620の台座への挿入を可能にする範囲まで突出する。取付け位置にある場合、ドリルヘッド620は各左及び右面627を持ってくるように回転して、側壁616Sに接合でき、それによって定位置にドリルヘッドを固定する。
【0163】
特に
図46によると、ドリルヘッドの同様の様態が示されるが、この様態においては、底表面616B’は下方にテーパされた円錐形状であり、これにより、ホルダ部611内に有される穿孔の簡単かつ正確な中央集中化を促進する。
【0164】
図47Aないし48Cによると、本発明の別の様態が一般的に符号700で表される可変口径式の切削工具を表して図示され、ホルダ本体710と、複数の固定機構730を用いてそこに取付けられる3の切削インサート720と、直径制御機構740とを具える。
【0165】
各切削インサート720は、前の様態について開示したものと同様の方法でホルダ本体710上へ取付けられ、差異は固定ピン732が圧力を印加できる支持側壁とともに、ホルダ本体710が形成されないことである。代わりに、ホルダ本体710はヘッドが円錐形状である制御部材742をそこで受ける用に構成される中心穿孔部746とともに形成され、底表面716Bとともにインサートの台座を規定するように側壁を構成する。
【0166】
特に
図47Cの記載に注目すると、固定ピン732はインサートの穿孔部726の内表面726iに接合されて、固定ピン732の遠位端deと、側壁として用いられる制御部材742のヘッドとの間で切削インサート720を固定する。
図47Cに示した位置においては、制御部材は底表面716Bの上で距離h1に延在し、切削工具はD1の動作直径を有する。
【0167】
制御部材742はねじ山を用いて穿孔部746内に収容され、制御部材742を穿孔部に沿って軸方向に変位させるのを可能にし、底表面716Bの上へ所望の距離で多数配置される。更に、制御部材742のヘッドと、側面726Sとの間の接合により、底表面716Bの上の制御部材742の延在部が低くなると、インサート720が互いに遠くなり、切削工具700の動作直径が大きくなる。制御部材742は更に、直径の所望の増加を示すように符号747に示すように指標を示してもよい。
【0168】
しかしながら、
図2Aで前に説明したように、固定ピンの変位は台座の側壁の方へ切削インサートの横変位を生じさせるが、その逆は起こらない(切削インサートの横変位の結果としての固定ピンの軸方向変位)。従って、制御部材742を軸方向に変位することは切削インサートの横変位を生じさせず、直径を増加させる。
【0169】
従って、動作において動作直径を増加させることを所望する場合、以下のいずれかが生じる。
a.切削インサート720が
図48Aないし48Cに示したような、切削工具ホルダ710の上へ取付けられない場合、制御部材742は所望の量まで自由に軸方向に変位でき、その後初めて、切削インサート720は前の様態について述べたのと同様の方法で、工具ホルダ710上へ取付けられる。
b.切削インサート720が工具ホルダ710上へ取付けられた場合、固定ピン732は最初に、横方向に特定の自由度で切削インサート720を提供するように押下されなければならず、その後初めて制御部材は軸方向に変位できる。一度変位すると、固定ピン732は押下されず、定位置に切削インサート720を堅固に固定するための固定位置を呈することができる。
【0170】
固定ピン732の押下はその上面からインサートの穿孔部726に挿入され、固定ピン732へ圧力を印加するように構成された3組のピン部材(図示せず)を用いてなされうる。
【0171】
図49Aないし49Cによると、
図47Aないし48Cに示したのと同様の切削工具の様態が符号800で一般的に表されて示され、差異は2の切削インサート820を具えることのみである。その他の手段において、動作は
図47Aないし48Cと同様である。
【0172】
本発明が属する当該技術分野の当業者は、数多くの変更物、変形物、及び改良物が、本発明の範囲を離れることなく準用してなされうることが容易に分かるであろう。