(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5885216
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】洗濯機用防水パン
(51)【国際特許分類】
E03C 1/20 20060101AFI20160301BHJP
E03C 1/306 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
E03C1/20 A
E03C1/306
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-14998(P2014-14998)
(22)【出願日】2014年1月29日
(65)【公開番号】特開2015-140601(P2015-140601A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2015年10月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509053363
【氏名又は名称】株式会社タイコー
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】米村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】木下 福之
【審査官】
藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−054919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12 − 1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の排水口及び第二の排水口を備えた洗濯機用防水パンであって、
前記第一の排水口は、排水トラップを介して第一の排水管に接続され、
前記第二の排水口は、前記第一の排水管から分岐した第二の排水管に接続されている洗濯機用防水パン。
【請求項2】
前記第二の排水管は、前記第一の排水管に接続されている請求項1記載の洗濯機用防水パン。
【請求項3】
底面が略四角形状であって、四隅に脚置部が形成されている請求項1記載の洗濯機用防水パン。
【請求項4】
前記第二の排水口の上端が、前記脚置部の高さよりも1cm以上低い請求項3記載の洗濯機用防水パン。
【請求項5】
底面が略四角形状であって、前記第一の排水口に最も近い前記底面の辺と、前記第二の排水口に最も近い前記底面の辺は、角を挟んで接続されている関係にある請求項1記載の洗濯機用防水パン。
【請求項6】
前記底面の周囲に縁高部が形成されており、前記第二の排水口に最も近い前記底面の辺の前記縁高部の高さは、前記脚置部よりも低い請求項3記載の洗濯機用防水パン。
【請求項7】
前記第一の排水口は、洗濯機からの排水を排水管に排出させるためのものであって、
前記第二の排水口は、高圧洗浄のためのホース導入のためのものである請求項1記載の洗濯機用防水パン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機用防水パンに関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯機用防水パンとは、住宅において、洗濯機から排出される水を受けて排水管に導くとともに、床等への水漏れを防ぐために重要な設備である。一般の洗濯機用防水パンは略四角形状であって、この上に洗濯機を配置し、洗濯機の排水ノズルを排水口の排水栓に接続することで、洗濯機の排水を排水管に導くことができる。
【0003】
ところで、洗濯機の排水を流す排水管は、洗剤や汚れ等を含む水を流すものであり、管内は汚れやすい状況にある。したがって、定期的な清掃を欠かすことができない。
【0004】
一般に、配管の清掃は、ホースを排水口から挿入し、ホースの先端から高圧の水を排水管内において噴出させ、排水管内の汚れ等を除去する方法を採用する。しかしながら、排水管には臭い等の逆流を防止するために比較的複雑な構造の排水トラップを排水口と排水管の間に配置していることが多く、配水管清掃の際、この排水トラップをホースが挿入できる程度まで外した上でホースを導入しなければならない場合が多い。
【0005】
しかしながら、排水トラップ等を外すためには洗濯機を動かさなければならず、非常に手間がかかるといった問題がある。また、近年、ドラム式洗濯機等の登場による洗濯機自体の重量増加もあり、洗濯機を動かすのは更に困難な作業となりつつある。加えて、マンション等の集合住宅の場合、多数の配管清掃を短時間で行う必要があるため、各戸に対して割くことのできる時間は更に短くなり、状況によっては作業を行えないこともある。
【0006】
このような問題に対しては、例えば、下記特許文献1で示されるように、略四角形状であって、四隅に載置部が形成されている洗濯機用防水パンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4691132号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
確かに、上記特許文献1において開示される載置部を用いることで洗濯機の底面を床面から高くし、排水トラップ等を外しやすくできる。しかしながら、清掃作業時に排水トラップ等を外す複雑な作業の必要性はそのままであって、未だ煩雑さが残る。
【0009】
そこで、本発明は上記課題を解決し、より容易に配水管洗浄が可能となる洗濯機用防水パンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の一観点にかかる洗濯機用防水パンは、第一の排水口及び第二の排水口を備えたものである。
【0011】
なお、本観点において、限定されるわけではないが、第一の排水口は、排水トラップを介して第一の排水管に接続され、第二の排水口は、第一の排水管から分岐した第二の排水管に接続されていることが好ましい。
【0012】
なお、本観点において、限定されるわけではないが、第二の排水管は、第一の排水管に接続されていることが好ましい。
【0013】
なお、本観点において、限定されるわけではないが、底面が略四角形状であって、四隅に脚置部が形成されていることが好ましい。
【0014】
なお、本観点において、限定されるわけではないが、第二の排水口の上端が、脚置部の高さよりも1cm以上低いことが好ましい。
【0015】
なお、本観点において、限定されるわけではないが、底面が略四角形状であって、第一の排水口に最も近い前記底面の辺と、第二の排水口に最も近い底面の辺は、角を挟んで接続されている関係にあることが好ましい。
【0016】
なお、本観点において、限定されるわけではないが、底面の周囲に縁高部が形成されており、第二の排水口に最も近い底面の辺の縁高部の高さは、脚置部よりも低いことが好ましい。
【0017】
なお、本観点において、限定されるわけではないが、第一の排水口は、洗濯機からの排水を排水管に排出させるためのものであって、第二の排水口は、高圧洗浄のためのホース導入のためのものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
以上、本発明により、より容易に配水管洗浄が可能となる洗濯機用防水パンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る洗濯機用防水パンの上図面を示す図である。
【
図2】実施形態に係る洗濯機用防水パンの底図面を示す図である。
【
図3】実施形態に係る洗濯機用防水パンの左側面を示す図である。
【
図4】第一の排水口近傍の概略端面図を示す図である。
【
図6】第二の排水管の他の例を示す概略端面図である。
【
図7】実施形態に係る洗濯機用防水パンの配管の角度の他の一例を示す図である。
【
図8】実施形態に係る第二の排水口と脚高部との関係を示す図である。
【
図9】実施形態に係る第二の排水口と縁高部との関係を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態の例にのみ限定されるわけではない。
【0021】
図1乃至
図3は、本実施形態に係る洗濯機用防水パン(以下「本防水パン」という。)の概略を示す図である。
図1は、本防水パンの上面図であり、
図2は本防水パンの底面図であり、
図3は、本防水パンの左側面図である。
【0022】
これらの図で示すとおり、本防水パン1は、第一の排水口2及び第二の排水口3を備えている。より具体的に説明すると、本防水パン1は、底面が略四角形状であり、この底面を形成する主要な部材である底面部材11を備え、この底面部材11に第一の排水口2が備えられるとともに、第二の排水口3も備えている。ここで「略四角形状」とは、完全に四角であることを含みつつ、四辺で囲まれつつも角が丸みを帯びている四角形(角丸四角形)も含む。
【0023】
本防水パン1において、第一の排水口2は、洗濯機からの排水を本防水パン1の背面側(下側)に備えられる排水管に排出させるためのものであって、第二の排水口3は、高圧洗浄のためのホースを導入するためのものである。詳細な効果については後述の説明から明らかとなるが、本防水パン1によると、第二の排水口3を設けることで、排水管洗浄の際、排水トラップを取り出す必要がなく、第二の排出口3からホースを挿入するだけで排水管を洗浄することが可能となる。
【0024】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、排水口には「第一の」及び「第二の」という文言が付されているが、これは二つある排水口を区別するためだけに用いる言葉であって、「第一」及び「第二」の言葉自体が特別な意味を有するものではない。またこのことは「第一の排水管」「第二の排水管」において同様である。
【0025】
また本防水パン1において、第一の排水口2は、排水トラップ4を介して第一の排水管5に接続されたものとなっている。より具体的に説明すると、本防水パン1における第一の排水口2は、底面部材11に形成された開口部111に設置される排水トラップ4の排水ノズル41の先端に形成された開口部となっている。第一の排水口2近傍の概略端面図を
図4に示しておく。本防水パン1は、この構成によって、洗濯機からの排水を排水トラップ4及び第一の排水管5を通じ、住居外の共通の排水管へと排出できるようになっている。なお、本実施形態において、排水トラップ4の構造や形状は特に限定されず、公知の排水トラップを採用することができる。なお、本実施形態では、説明のため、第一の排水口2を排水ノズル41の開口部としているが、排水ノズル41を設けていないような構成の場合であれば、排水トラップ4の開口部自体(または底面部材11に形成された開口部111自体)のみが排水口であるといえる。すなわち、排水口とは、洗濯機からの排水を第一の排水管に排出するための入り口を意味する。
【0026】
また本防水パン1において、第一の排水口2は、中心位置から外れた位置に配置されている。より具体的には、略四角形状の底面のいずれか一辺に近い位置に配置されている。ただし第一の排水口2の位置は適宜調整可能であって、略四角形状の底面の中心にあっても良く、位置は限定されるものではない。
【0027】
また本防水パン1において、第一の排水管5は、上記のとおり、排水トラップ4に接続され、第一の排水口2から供給される排水を住居外の共通の排水管へと排出するためのものである。
【0028】
また本防水パン1において第二の排水口3は、限定されるわけではないが、底面部材に固定された第二の排水管6の開口部となっている。第二の排水管6の概略端面図を
図5に示しておく。また、第二の排水口3の開口部には栓61が配置されるとともに、第二の排水口3の第二の排水管6は第一の排水管に接続されている。清掃業者は、洗浄の際、栓61を外し、高圧水を供給するためのホースを挿入し、第一の排水管、第二の排水管を洗浄することができる。
【0029】
なお、本実施形態では、本図で示すように、栓61の内側にねじ溝を形成するとともに、このねじ溝に対応したねじ溝を第二の排水管の開口部(排水口)の近傍周囲に形成し、これらをはめ合わせることで密封させる構造とすることが簡便であり好ましいが、単なるキャップであってもよく、構成は限定されない。
【0030】
また、本実施形態において、第二の排水口3は、第二の排水管6をそのまま用いて排水口を備えさせる構成としている。より具体的には、第二の配水管を、ボルト62及びナット63等の締付具によって締め付けて底面部材11に固定し、その開口部分を排水口とする構成を採用しているが、管状の部材の開口部であれば第二の排水管そのものでなくても良く、例えば第二の排水管6の先に他の部材を接続して排水口を別途供えさせる構成とすることも当然に可能である。すなわち、排水口とは、ホースを挿入するための入り口を意味するものである。従って、例えば、洗濯機用防水パンが第二の排水口3を備えているといえる限りにおいて限定されず、例えば、底面部材自体に、栓が可能な管状の部分14を備えるよう形成し、この管状の部分に第二の排水管を接続するようにしても良く、限定されるものではない。この場合の例を例えば
図6に示しておく。
【0031】
また、本実施形態において第二の排水管6は、第一の排水管5から分岐した状態で接続されている。第一の排水管5が洗濯機からの排水を外部に排出させる本来の管であるため、第二の排水管6は、この第一の排水管5から分岐した状態となっていることが好ましい。
【0032】
また本実施形態において、第二の排水管6の延伸方向と、第一の排水管の延伸方向とは、限定されるわけではないが、
図2で示すように、接続部分において略直行していることが好ましい。このようにすることで、第二の排水管に挿入するホースの進行方向を、ホースを軽く回転させる等の手順だけで排水トラップ方向又は共通の排水管方向のいずれにもすることができる。ホースを排水トラップ方向に挿入すると、排水トラップの洗浄を行うことができ、ホースを共通の排水管方向に挿入すると、本来の排水管ない洗浄を行うことができるようになる。なおここで「略直行」とは、完全に直行していることを含むものであるが、許容範囲の誤差を含んでもよいことを意味する。具体的には10度程度の誤差、より具体的には第一の排水管の延伸方向と第二の排水管の延伸方向のなす角が80度以上100度以下にあることが好ましい。なお、排水トラップの洗浄を当該洗浄作業中では不要とし、確実に共通の排水管にホースを導入する必要がある場合は、第一の排水管の延伸方向と第二の排水管の延伸方向の角度が鋭角となっていることも好ましい。この場合のイメージ図を
図7に示しておく。
【0033】
また、本実施形態において、底面は略四角形状であって、第一の排水口に最も近い底面の辺と、第二の排水口に最も近い前記底面の辺は、角を挟んで接続されている関係にある。すなわち第一の排水口及び第二の排水口に近い辺を異ならせることで、排水口自体を洗浄する作業、排水管を洗浄する作業をそれぞれ最も行い辺で行うことができるようになる。
【0034】
また、本実施形態において、底面部材11の四隅には脚置部12が形成されている。脚置部は、本防水パンの上に洗濯機の脚を置くための部分であって、この上に洗濯機の脚を置くことで、底面部材11の面と洗濯機の底面とを離し、排水管の洗浄の有無を問わず排水トラップを外すなどの作業をしやすくすることができるといった利点があるとともに、第二の排水口の配置空間を確保することができるといった利点がある。洗濯機の脚置部の高さとしては特に限定されるわけではないが、例えば3cm以上10cm以下の範囲内にあることが好ましい。
【0035】
また本実施形態において、第二の排水口3の上端の高さは、脚置部12の高さよりも1cm以上低くなっている。この部分の概略を
図8に示しておく。このようにすることで、第二の排水口を底面よりも高くして作業をしやすくすることができる一方、脚置部よりも低くしておくことでこの上に設置される洗濯機の底面との距離を確保でき、栓の開閉、ホースの挿入を行いやすくできるといった効果がある。
【0036】
また本実施形態において、底面の周囲には縁高部13が形成されており、第二の排水口に最も近い底面の辺の縁高部の高さは、他の縁高部の高さより低い部分が設けられている、より好ましくは脚置部以下の高さとなる部分を有していることが好ましい(この点については
図3、
図9参照。
図9は、第二の排出口を底面中心側から見た場合の断面外略図である。)。縁高部は底面の周囲に配置され、底面周囲全体を覆う壁となっている。縁高部を形成することで、洗濯機から排出される排水が何らかの原因によって第一の排水口によって処理しきれずに多少あふれ出たとしてもこの縁高部が壁となり、住宅の床面にまであふれ出てしまうことを防止することができる。また、本実施形態では、第二の排水口3に最も近い前記底面の辺の前記縁高部の高さのうち、他の縁高部の高さ(最高の高さ)より低くなっている部分131が設けられていることが好ましく、より好ましくは脚置部以下の高さとなる部分を有していることが好ましい。このようにすることで、排水管洗浄の際、この低くなっている部分から手を挿入して栓の開閉、ホースの挿入を行いやすくできるといった効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、洗濯機用防水パンとして産業上の利用可能性がある。