(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記設定部は、前記フィルタ処理のゲインを第1のゲインに設定した場合の前記受信データと前記クロックとの第1の位相差よりも、前記フィルタ処理のゲインを前記第1のゲインに対して第1方向の差を有する第2のゲインに変更した後の前記受信データと前記クロックとの第2の位相差が小さければ、前記第2のゲインに対して前記第1方向の差を有する第3のゲインを前記フィルタ処理のゲインに設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の受信装置。
前記設定部は、前記フィルタ処理のゲインを第1のゲインに設定した場合の前記受信データと前記クロックとの第1の位相差よりも、前記フィルタ処理のゲインを前記第1のゲインに対して第1方向の差を有する第2のゲインに変更した後の前記受信データと前記クロックとの第2の位相差が大きければ、前記第2のゲインを前記第1方向とは反対方向の第2方向に変化させた第4のゲインを前記フィルタ処理のゲインに設定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の受信装置。
受信データに基づいてクロックを生成するクロックデータリカバリ回路において前記受信データと前記クロックとの位相差をフィルタするフィルタ処理のゲインを、前記受信データのジッタ量に応じて設定し、
複数の前記位相差の平均値を前記ジッタ量としてモニタし、前記平均値を基準値と比較することにより前記フィルタ処理のゲインを設定する、
ことを特徴とするゲイン設定方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態を
図1〜
図4に従って説明する。
受信装置は、レシーバ回路1と、クロックデータリカバリ回路(CDR回路)2と、ゲイン設定部3と、D−フリップフロップ回路(D−FF回路)4と、ロジック部5とを含む。
【0013】
レシーバ回路1は、送信装置(図示略)から差動シリアルデータを受信する。このレシーバ回路1は、受信した差動シリアルデータの入力レベルからH/L判定して2値化したシリアルデータD1を生成するとともに、そのシリアルデータD1をCDR回路2とD−FF回路4に出力する。
【0014】
CDR回路2は、シリアルデータ(受信データ)D1から抽出した抽出クロックCLKを生成する。なお、この抽出クロックCLKは、受信データD1に同期したクロックである。また、CDR回路2は、生成した抽出クロックCLKをD−FF回路4及びロジック部5に出力する。
【0015】
ゲイン設定部3は、受信データD1のジッタ量に応じて、CDR回路2内のフィルタ回路11のゲインパラメータ(ゲイン)G1を設定する。なお、このゲインパラメータG1が変更されると、CDR回路2の追従特性(受信データD1に対する追従特性)も変更される。すなわち、ゲイン設定部3は、受信データD1のジッタ量に応じて、CDR回路2の追従特性を設定する。
【0016】
D−FF回路4は、そのデータ端子にはレシーバ回路1から受信データD1が入力されるとともに、クロック端子にはCDR回路2から抽出クロックCLKが入力される。このD−FF回路4は、抽出クロックCLKの立ち上がりエッジに同期して受信データD1をサンプリングし、そのサンプリングしたデータをリタイミングデータとしてロジック部5に出力する。
【0017】
ロジック部5は、D−FF回路4からのリタイミングデータやCDR回路2からの抽出クロックCLKに基づいて各種処理を実行する。
次に、CDR回路2の内部構成について説明する。
【0018】
CDR回路2は、位相比較回路10と、フィルタ回路11と、位相補正制御回路12とを含む。
位相比較回路10は、受信データD1の位相と、位相補正制御回路12からフィードバックされる抽出クロックCLKの位相とを比較することにより、受信データD1と抽出クロックCLKとの位相差を示す位相差情報D2を生成する。この位相比較回路10は、生成した位相差情報D2をフィルタ回路11とゲイン設定部3に出力する。具体的には、位相比較回路10は、受信データD1とその受信データD1から抽出した抽出クロックCLKとの間の位相進み/遅れを判定する。また、位相比較回路10は、その判定結果に基づいて、位相が進んでいる場合には+1、遅れている場合には−1というようにデータ化する。そして、位相比較回路10は、そのデータ化したデータを、内蔵する加算器で抽出クロックCLKの所定周期分(例えば10周期分)だけ加算したものをデジタルの位相差情報(位相コード)D2としてフィルタ回路11とゲイン設定部3に出力する。なお、この所定周期は、通信レート等に応じて設定される。
【0019】
フィルタ回路11は、位相差情報D2を累積平均化(フィルタリング)して位相制御コードD3を生成するとともに、その位相制御コードD3を位相補正制御回路12に出力する。なお、フィルタ回路11は、上記ゲイン設定部3にて設定されるゲインパラメータG1によって、その応答感度が設定される。また、このフィルタ回路11の応答感度がCDR回路2の追従特性に反映される。すなわち、フィルタ回路11のゲインパラメータG1によってCDR回路2の追従特性が決定される。
【0020】
位相補正制御回路12は、位相制御コードD3から0〜2πの任意の位相を持つ抽出クロックCLKを生成する。すなわち、位相補正制御回路12は、位相制御コードD3に基づいて抽出クロックCLKの位相を決定する。例えば位相制御コードD3が64通りのコードを取り得る場合、位相補正制御回路12は、このコードに応じて、0〜2πを64分割した位相条件のうち1つの位相条件のクロックを抽出クロックCLKとして生成する。そして、CDR回路2では、この抽出クロックCLKを位相比較回路10にフィードバックし、その抽出クロックCLKと受信データD1とを随時位相比較することで、抽出クロックCLKの位相が最適になるように制御している。
【0021】
なお、CDR回路としてはPLL(Phase Locked Loop)が用いられることが多いが、上述した位相比較回路10、フィルタ回路11及び位相補正制御回路12は、PLLとは異なり、受信データD1から抽出クロックCLKを生成するための特有の回路である。特に、PLLの場合には抽出クロックCLKを生成するために発振回路(例えばVCO)が用いられるが、上記位相補正制御回路12は、フィルタ回路11の出力に応じて抽出クロックCLKの位相を決定する回路であり、発振回路とは異なる。
【0022】
次に、上記フィルタ回路11の内部構成例を
図2に従って説明する。
図2に示すように、フィルタ回路11は、デジタルフィルタである。このフィルタ回路11は、乗算器31,32と、加算器33,34と、D−FF回路35,36とを含む。
【0023】
乗算器31には、位相比較回路10からの位相差情報D2と、固定のゲインパラメータGとが入力される。この乗算器31は、位相差情報D2にゲインパラメータGを乗算した乗算値を加算器33に出力する。加算器33は、乗算器31からの乗算値にD−FF回路35の出力信号を加算するとともに、その加算値をD−FF回路35のデータ端子に出力する。このD−FF回路35のクロック端子には、抽出クロックCLKを所定周期分(例えば10周期分)分周したクロック信号CLKDFが入力される。このため、D−FF回路35は、加算器33から入力する加算値をクロック信号CLKDFに同期して加算器33,34に出力する。
【0024】
一方、乗算器32には、位相比較回路10からの位相差情報D2と上記ゲイン設定部3によって設定されるゲインパラメータG1とが入力される。この乗算器32は、位相差情報D2にゲインパラメータG1を乗算した乗算値を加算器34に出力する。
【0025】
加算器34には、D−FF回路35の出力信号及び乗算器32からの乗算値と併せて、D−FF回路36の出力信号が入力される。この加算器34は、これらD−FF回路35,36の出力信号と乗算器32からの乗算値とを加算するとともに、その加算値をD−FF回路36のデータ端子に出力する。このD−FF回路36のクロック端子には上記クロック信号CLKDFが入力される。このため、D−FF回路36は、加算器34からの加算値を、クロック信号CLKDFに同期して上記位相制御コードD3として位相補正制御回路12に出力する。
【0026】
このように構成されたフィルタ回路11は、ゲインパラメータG,G1によって設定される応答感度に従って、位相差情報D2を抽出クロックCLKの所定周期分(本例では10周期分)で累積平均化して位相制御コードD3を生成する。ここで、ゲイン設定部3によってゲインパラメータG1が高く設定されると、フィルタ回路11の応答感度が高くなる。これに伴って、CDR回路2の追従特性も大きくなる。この点について詳述すると、フィルタ回路11では、ゲインパラメータG1に応じて、乗算器32の乗算値が変化し、位相制御コードD3も変化する。すなわち、フィルタ回路11に入力される位相差情報D2が同じ値であっても、ゲインパラメータG1が高いほど、位相制御コードD3が大きくなる。これに伴って位相補正制御回路12において、1回の位相制御における抽出クロックCLKの位相変動量が大きくなる。このため、フィルタ回路11のゲインパラメータG1が高くなるほど、CDR回路2の追従特性が大きくなる。同様に、フィルタ回路11のゲインパラメータG1が低くなるほど、CDR回路2の追従特性が小さくなる。
【0027】
次に、ゲイン設定部3の内部構成例について
図1に従って説明する。
ゲイン設定部3は、受信データD1と抽出クロックCLKとの位相差量を監視(モニタ)することで、上記ゲインパラメータG1に対する受信データD1のジッタ量の大小を判断し、そのジッタ量に応じたゲインパラメータG1を設定する。具体的には、ゲイン設定部3は、位相差量が所定の基準値以上の場合に、ゲインパラメータG1の初期値に基づいて上記位相差が小さくなるようにゲインパラメータG1を変更する。このゲイン設定部3は、演算回路21と、比較回数レジスタ22と、基準値レジスタ23と、判定回路24とを含む。
【0028】
演算回路21には、上記位相比較回路10から位相差情報D2が入力されるとともに、比較回数レジスタ22から設定回数Mが入力される。この演算回路21は、設定回数M回(例えば10回)分の位相差情報D2の平均値AVEを算出するとともに、その平均値AVEを判定回路24に出力する。なお、演算回路21は、内蔵のカウンタ21aのカウント動作に基づいて、位相比較回数が上記設定回数Mに達したか否かを判定する。
【0029】
基準値レジスタ23には、予め設定された位相差量の基準値T1が格納されている。この基準値T1は、上記位相差情報D2の平均値AVEがゲインパラメータG1を変更するレベルか否かを判定するための閾値である。
【0030】
判定回路24は、位相差情報D2の平均値AVEと、基準値レジスタ23からの基準値T1とを比較した比較結果に基づいて、上記フィルタ回路11のゲインパラメータG1を設定する。具体的には、判定回路24は、平均値AVEが基準値T1未満の場合にはゲインパラメータG1を変更しない。その一方で、判定回路24は、平均値AVEが基準値T1以上の場合には、その平均値AVEが小さくなるようにゲインパラメータG1を変更する。そして、判定回路24は、設定したゲインパラメータG1をフィルタ回路11に出力する。なお、本実施形態におけるゲインパラメータG1の初期値は、CDR回路2の追従特性が小さくなるように低い値に設定されている(
図4(a)参照)。
【0031】
ところで、位相比較回路10における受信データD1と抽出クロックCLKとの位相差量(位相差情報D2)は、受信データD1のジッタ量と、ゲインパラメータG1で決定されるCDR回路2の追従特性との関係が適切でない場合に、その値が大きくなる。具体的には、受信データD1のジッタ量が大きいにも関わらず、ゲインパラメータG1が低い場合(CDR回路2の追従特性が小さい場合)に、位相差情報D2が大きくなる。反対に、受信データD1のジッタ量が小さいにも関わらず、ゲインパラメータG1が高い場合(CDR回路2の追従特性が大きい場合)にも、位相差情報D2が大きくなる。
【0032】
このため、上記判定回路24は、位相差情報D2の平均値AVEが基準値T1以上か否かを判定することによって、受信データD1のジッタ量とゲインパラメータG1で決定されるCDR回路2の追従特性との関係が適切であるか否かを判定している。このとき、上述のようにゲインパラメータG1の初期値が低く設定されているため、位相差情報D2の平均値AVEが基準値T1以上になった場合には、それが受信データD1のジッタ量が大きいことに起因していると判定することができる。すなわち、低く設定されたゲインパラメータG1(の初期値)に対する受信データD1のジッタ量が大きいために、平均値AVEが基準値T1以上になっていると判断することができる。そこで、本実施形態の判定回路24は、平均値AVEが基準値T1以上の場合には、その平均値AVE(位相差量)が小さくなるようにゲインパラメータG1を上げる。この変更に伴ってCDR回路2の追従特性が大きくなるように変更されるため、その追従特性が受信データD1のジッタ量に対して適切な値に近づくことになる。
【0033】
次に、このように構成された受信装置におけるゲインパラメータG1(CDR回路2の追従特性)の設定方法を
図3及び
図4に従って説明する。
まず、通信を開始する前に、演算回路21と、カウンタ21aと、ゲインパラメータG1の初期化が行われる(ステップS1)。このときのゲインパラメータG1の初期値は、CDR回路2の追従特性が小さくなるように低い値に設定される。その後、通信が開始されるまで待ち(ステップS2)、通信が開始されると(ステップS2でYES)、位相比較回路10において受信データD1の位相と抽出クロックCLKの位相とが比較される(ステップS3)。
【0034】
次に、その位相比較の回数が設定回数M回未満である場合には(ステップS4でNO)、カウンタ21aをカウントアップし(ステップS5)、ステップS3に戻る。一方、位相比較の回数が設定回数M回に達した場合には(ステップS4でYES)、演算回路21において、そのM回分の位相差情報D2(位相差量)の平均値AVEが算出される(ステップS6)。
【0035】
続いて、判定回路24において、上記平均値AVEが基準値T1以上か否かが判定される(ステップS7)。換言すると、ステップS7において、受信データD1のジッタ量に対する現在のゲインパラメータG1(ここでは初期値)が適切な値であるか否かが判定される。このとき、平均値AVEが基準値T1以上の場合には、判定回路24は、ゲインパラメータG1の初期値に対する受信データD1のジッタ量が大きいと判定する、つまり受信データD1のジッタ量に対するゲインパラメータG1が低いと判定する。この点について以下に詳述する。
【0036】
本実施形態では、ゲインパラメータG1の初期値を低く設定し、位相差情報D2の平均値AVEをジッタ量としてモニタすることで、その設定したゲインパラメータG1と受信データD1のジッタ量との関係が適切であるか否かを判定している。言い換えれば、ゲインパラメータG1の初期値を低く設定することで、受信データD1のジッタ量に対して位相差情報D2が比例的に変化するようにし、位相差情報D2を受信データD1のジッタ量としてモニタすることができるようにしている。具体的には、ゲインパラメータG1の初期値を低く設定しているため、受信データD1のジッタ量が大きくなると位相差情報D2が大きくなる一方で、受信データD1のジッタ量が小さくなると位相差情報D2が小さくなる。このため、平均値AVEが基準値T1以上の場合には、上述のように、ゲインパラメータG1の初期値に対する受信データD1のジッタ量が大きいと判定する、つまり受信データD1のジッタ量に対するゲインパラメータG1が低いと判定することができる。
【0037】
そこで、上記平均値AVEが基準値T1以上の場合には(ステップS7でYES)、判定回路24は、
図4(a)の破線矢印のようにゲインパラメータG1を上げる(ステップS8)ことで、CDR回路2の追従特性を大きくする。これにより、受信データD1のジッタ量に対してCDR回路2の追従特性が適切な値に近づくため、受信データD1と抽出クロックCLKとの位相差量(平均値AVE)が小さくなる。このように、判定回路24は、平均値AVEが基準値T1以上の場合には、その平均値AVEが小さくなるようにゲインパラメータG1を変更する。その後、演算回路21及びカウンタ21aがリセットされ(ステップS9)、ステップS3に戻る。
【0038】
すると、ステップS3〜S6が再度実行され、受信データD1と上記ステップS8で変更されたゲインパラメータG1で決定されるCDR回路2の追従特性に従って生成された抽出クロックCLKとの位相差量(位相差情報D2)の平均値AVEが算出される。続いて、この算出された平均値AVEが基準値T1以上か否かが判定される(ステップS7)。すなわち、上記ステップS8で変更されたゲインパラメータG1と受信データD1のジッタ量との関係が適切であるか否かが判定される。このとき、平均値AVEが基準値T1以上の場合には、判定回路24は、現在のゲインパラメータG1に対する受信データD1のジッタ量が大きいために両者の関係が適切でないと判定する。そこで、判定回路24は、位相差情報D2の平均値AVEが小さくなるように、
図4(a)の破線矢印のようにゲインパラメータG1を更に上げる(ステップS8)。
【0039】
これ以降も、ステップS7において位相差量の平均値AVEが基準値T1未満となるまで、ステップS3〜S9の処理が繰り返し実行される。すなわち、位相差量の平均値AVEの算出(ステップS3〜S6)、平均値AVEと基準値T1との比較(ステップS7)、及びゲインパラメータG1を上げる(ステップS8,S9)という処理が繰り返し実行される。このような一連の処理によって、ゲインパラメータG1が徐々に高くなるように変更され、CDR回路2の追従特性が受信データD1のジッタ量に対する適切な値に徐々に近づくとともに、位相差量の平均値AVEが徐々に小さくなる。
【0040】
そして、平均値AVEが基準値T1よりも小さくなると(ステップS7でNO)、判定回路24は、現在のゲインパラメータG1と受信データD1のジッタ量との関係が適切であると判定し、ゲインパラメータG1を変更せずに処理を終了する。すなわち、このときに受信データD1のジッタ量に応じた適切なゲインパラメータG1が設定され、受信データD1のジッタ量に対して適切なCDR回路2の追従特性が設定されたことになる。例えば
図4(b)に示すように、受信データD1のジッタ量が大きくなるほどゲインパラメータG1が高く設定されることになる。このように受信データD1のジッタ量に応じてゲインパラメータG1が設定されると、
図4(c)に示すように、受信データD1のジッタ量に関わらず、位相差量の平均値AVEが常に基準値T1よりも小さくなる(ハッチング参照)。
【0041】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)従来のCDR回路の場合には、
図4(d)に示すように、応答感度(ゲイン)が受信データD1と抽出クロックCLKとの位相差量に対して一対一で対応づけられている。すなわち、従来のCDR回路のゲインは、
図4(e)、(f)に示すように、受信データのジッタ量に関わらず、位相差量のみに応じて設定されている。このため、
図4(e)に示すように、受信データのジッタ量が同じであっても(破線参照)、位相差量が変動すればゲインも変動することになる。このような従来のCDR回路では、受信データのジッタ量が小さいとき(
図4(f)の破線矢印参照)にゲインが高く設定されていることに起因して位相差量が大きくなっている場合(一点鎖線矢印参照)であっても、その位相差量に応じてゲインが更に高く設定されることになる(太矢印参照)。すると、受信データのジッタ量とゲインとの関係が益々悪化し、位相差量が更に大きくなるという問題がある。なお、この問題は、仮にゲインと位相差量とが
図4(d)の破線で示すような非線形の関係であっても同様に生じる。
【0042】
これに対し、本実施形態のゲイン設定部3では、受信データD1のジッタ量に応じてCDR回路2内のフィルタ回路11のゲインパラメータG1を設定するようにした。これにより、受信データD1のジッタ量に適したゲインパラメータG1を設定することができる。ひいては、受信データD1のジッタ量に適したCDR回路2の追従特性を設定することができる。これにより、ジッタ量に関わらず、受信データD1を正常に受信することができ、受信特性(ジッタ耐性)を向上させることができる。
【0043】
さらに言えば、上記構成によれば、従来のCDR回路のようにジッタ量が大きいにも関わらずゲインパラメータG1が低く設定されたり、ジッタ量が小さいにも関わらずゲインパラメータG1が高く設定されたりすることが抑制される。このため、上述した従来のCDR回路で発生するいずれの問題についても、その発生を抑制することができる。
【0044】
(2)受信データD1と抽出クロックCLKとの位相差量をジッタ量としてモニタし、その位相差量に応じてフィルタ回路11のゲインパラメータG1を設定するようにした。これによれば、従来のCDR回路にも含まれる位相比較回路で生成される位相差情報D2に基づいて、ゲインパラメータG1を設定することができる。したがって、ジッタ量をモニタするための回路規模の増大を抑制することができる。
【0045】
(3)受信データD1と抽出クロックCLKの位相差量をジッタ量としてモニタし、ゲインパラメータG1の初期値に基づいてその位相差量が小さくなるようにゲインパラメータG1を変更するようにした。ここで、上記位相差量は、受信データD1のジッタ量とゲインパラメータG1(CDR回路2の追従特性)との関係が適切であればその値が小さくなる。このため、位相差量が小さくなるようにゲインパラメータG1を変更すれば、自ずとゲインパラメータG1がジッタ量に対して適切な値に設定されることになる。したがって、この構成によれば、簡便な制御構成によってゲインパラメータG1を適切に設定することができる。
【0046】
(4)CDR回路2の追従特性が小さくなるようにゲインパラメータG1の初期値を低く設定することで、受信データD1のジッタ量に対して位相差情報D2が比例的に変化するようにした。これにより、位相差情報D2を受信データD1のジッタ量としてモニタすることができる。
【0047】
(5)位相差情報D2の平均値AVEを算出し、その平均値AVEと基準値T1とを比較するようにした。これにより、位相差情報D2と基準値T1とを比較する場合に比べて、ゲインパラメータG1の変更制御の精度を向上させることができる。すなわち、位相差情報D2と基準値T1とを直接比較する場合には、位相差情報D2が単発的に基準値T1よりも大きくなった場合であってもゲインパラメータG1を変更することになるが、平均値AVEを算出する場合にはこのような問題を回避することができる。
【0048】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、
図5〜
図8に従って説明する。この実施形態の受信装置は、ゲイン設定部3aの内部構成が上記第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお、先の
図1〜
図4に示した部材と同様の部材にはそれぞれ同一の符号を付して示し、それら各要素についての詳細な説明は省略する。
【0049】
ゲイン設定部3aは、受信データD1と抽出クロックCLKとの位相差量をモニタすることで、上記ゲインパラメータG1に対する受信データD1のジッタ量の大小を判断し、そのジッタ量に応じたゲインパラメータG1を設定する。さらに、ゲイン設定部3aは、装置の動作状態等によって受信データD1のジッタ量が変動した場合に、その変動したジッタ量に応じたゲインパラメータG1を設定する。具体的には、ゲイン設定部3aは、位相差量が基準値T1以上の場合に、ゲインパラメータG1の変更前後における上記位相差量の変化に基づいてその位相差量が小さくなるようにゲインパラメータG1を変更する。
【0050】
このゲイン設定部3aは、
図5に示すように、演算回路21と、比較回数レジスタ22と、基準値レジスタ23と、第1判定回路25と、カレントレジスタ26と、プレレジスタ27と、第2判定回路28と、セレクタ29とを含む。
【0051】
演算回路21は、位相差情報D2の平均値AVEを算出するとともに、その平均値AVEを第1判定回路25とカレントレジスタ26に出力する。
第1判定回路25は、位相差情報D2の平均値AVEと、基準値レジスタ23からの基準値T1とを比較した比較結果に基づいて、ゲインパラメータG1aを設定するとともに、そのゲインパラメータG1aをセレクタ29に出力する。具体的には、第1判定回路25は、平均値AVEが基準値T1以上の場合にはゲインパラメータG1aを変更する一方で、平均値AVEが基準値T1未満の場合にはゲインパラメータG1aを変更しない。また、第1判定回路25は、平均値AVEが基準値T1以上か否かを示す判定信号JSを第2判定回路28に出力する。なお、ゲインパラメータG1aの初期値は、任意の値(例えば設定範囲の中心値)に設定されている。
【0052】
カレントレジスタ26は、直近の位相差情報D2の平均値AVEを保持するレジスタである。このカレントレジスタ26には、演算回路21において平均値AVEが算出されるたびに、その算出された平均値AVEが書き込まれる。カレントレジスタ26は、保持した直近の平均値AVEをカレント平均値AVE1としてプレレジスタ27と第2判定回路28に出力する。
【0053】
プレレジスタ27は、1つ前の位相差情報D2の平均値AVEを保持するレジスタである。このプレレジスタ27には、演算回路21において平均値AVEが算出されるたびに、カレントレジスタ26から出力されるカレント平均値AVE1が書き込まれる。プレレジスタ27は、保持した平均値AVE1(1つ前の平均値AVE)をプレ平均値AVE2として第2判定回路28に出力する。
【0054】
第2判定回路28は、第1判定回路25からの判定信号JSと、カレント平均値AVE1と、プレ平均値AVE2と、ゲインパラメータG1の前回制御情報とに基づいて、ゲインパラメータG1bを設定する。そして、第2判定回路28は、設定したゲインパラメータG1bをセレクタ29に出力する。なお、第2判定回路28は、ゲインパラメータG1(ゲインパラメータG1a,G1b)が前回どのように変更制御されたかを示す前回制御情報を保持するレジスタ28aを含む。
【0055】
この第2判定回路28は、その時々で変動する受信データD1のジッタ量に応じて、そのジッタ量に適するようにゲインパラメータG1bを設定する。詳述すると、第2判定回路28は、受信データD1のジッタ量に対してゲインパラメータG1が適切に設定されている場合には、ゲインパラメータG1bを変更しない。具体的には、第2判定回路28は、平均値AVE(カレント平均値AVE1)が基準値T1未満であることを示す判定信号JSが入力される場合には、ゲインパラメータG1bを変更しない。
【0056】
その一方で、第2判定回路28は、受信データD1のジッタ量に対してゲインパラメータG1が適切に設定されていない場合には、位相差情報D2(ジッタ量)に応じて、その位相差情報D2が小さくなるようにゲインパラメータG1bを変更する。具体的には、第2判定回路28は、平均値AVEが基準値T1以上であることを示す判定信号JSが入力される場合には、
図6に示すように、カレント平均値AVE1とプレ平均値AVE2との比較結果と、ゲインパラメータG1の前回制御情報とに基づいて、ゲインパラメータG1bを増減する。なお、以下の説明において、ゲインパラメータG1(ゲインパラメータG1a又はG1b)を上げる制御をUP変更とし、ゲインパラメータG1を下げる制御をDOWN変更とする。
【0057】
図5に示すセレクタ29は、第1判定回路25からのゲインパラメータG1aと第2判定回路28からのゲインパラメータG1bとのいずれかを選択し、その選択したパラメータをゲインパラメータG1としてフィルタ回路11に出力する。具体的には、セレクタ29は、通信開始後1回目の変更制御ではゲインパラメータG1aを選択する一方、通信開始後2回目以降の変更制御ではゲインパラメータG1bを選択する。このため、ゲインパラメータG1aは、通信開始後1回目のゲインパラメータG1の変更制御のみに使用される。そして、通信開始後2回目以降のゲインパラメータG1の変更制御には、ゲインパラメータG1bが使用される。
【0058】
次に、このように構成された受信装置におけるゲインパラメータG1(CDR回路2の追従特性)の設定方法を
図6〜
図8に従って説明する。
まず、
図7に示すステップS11〜S16まで上記第1実施形態のステップS1〜S6と同様の処理が実行される。これにより、通信開始後1回目における位相差情報D2の平均値AVEが演算回路21で算出される(ステップS16)。
【0059】
次に、上記ステップS16で算出された平均値AVEがカレントレジスタ26に書き込まれる(ステップS17)。続いて、第1判定回路25において、上記ステップS16で算出された平均値AVEが基準値T1以上であるか否かが判定される(ステップS18)。このとき、上記平均値AVEが基準値T1以上である場合には、ゲインパラメータG1aの初期値がジッタ量に対して適切でないため、第1判定回路25はゲインパラメータG1aに対して固定の変更制御、ここではUP変更を実行する(ステップS19)。なお、通信開始後1回目のゲインパラメータG1の変更制御においては、このゲインパラメータG1aが使用されるため、ゲインパラメータG1aが変更されることによってゲインパラメータG1が変更されることになる。その後、
図8に示すステップS20に移る。
【0060】
一方、ステップS16で算出された平均値AVEが基準値T1未満である場合には(ステップS18でNO)、ゲインパラメータG1aの初期値がジッタ量に対して適切な値であるため、ゲインパラメータG1aを変更せずにステップS20に移る。なお、このゲインパラメータG1aがどのように変更制御(ここでは、UP変更又は変更なし)されたかを示す情報が前回制御情報として第2判定回路28内のレジスタ28aに格納される。
【0061】
次に、
図8に示すステップS20において、演算回路21及びカウンタ21aが一旦リセットされる。続いて、ステップS21〜S24まで上記ステップS13〜S16と同様の処理が実行される。これにより、通信開始後2回目以降における位相差情報D2の平均値AVEが演算回路21で算出される(ステップS24)。
【0062】
すると、カレントレジスタ26に保持されたカレント平均値AVE1がプレレジスタ27に書き込まれる(ステップS25)。すなわち、1つ前の平均値AVE、ここでは通信開始後1回目における位相差情報D2の平均値AVEがプレレジスタ27に書き込まれる。続いて、上記ステップS24で算出された直近の平均値AVE、ここでは通信開始後2回目における位相差情報D2の平均値AVEがカレントレジスタ26に書き込まれる。
【0063】
次に、ゲインパラメータG1、ここではゲインパラメータG1bを変更させるか否かが判定される(ステップS27)。具体的には、第1判定回路25において、上記平均値AVEが基準値T1未満であると判定された場合には、現在のゲインパラメータG1がジッタ量に対して適切な値であるため、ゲインパラメータG1,G1bを変更せずにステップS20に戻る。
【0064】
一方、第1判定回路25において、上記ステップS24で算出された平均値AVEが基準値T1以上であると判定された場合には、第2判定回路28は、
図6に従ってゲインパラメータG1bを変更する(ステップS28)。すなわち、この場合の第2判定回路28は、ゲインパラメータG1の前回制御情報と、カレント平均値AVE1とプレ平均値AVE2との比較結果とに基づいて、平均値AVEが小さくなるようにゲインパラメータG1bを変更する。なお、通信開始後2回目以降のゲインパラメータG1の変更制御においては、このゲインパラメータG1bが使用されるため、ゲインパラメータG1bが変更されることによってゲインパラメータG1が変更されることになる。このため、以下の説明では、説明の便宜上、第2判定回路28がゲインパラメータG1を変更すると説明する。
【0065】
ここで、上記第2判定回路28におけるゲインパラメータG1の変更制御について
図6を参照して詳述する。
まず、ゲインパラメータG1の前回制御(例えば
図7に示すステップS19における変更制御)がUP変更の場合について説明する。このときの第2判定回路28は、そのUP変更前の位相差量であるプレ平均値AVE2よりもUP変更後の位相差量であるカレント平均値AVE1が大きくなった場合には、上記UP変更によってCDR回路2の追従特性が劣化する方向に変化したものと判定する。ここで、「追従特性が劣化する方向に変化する」とは、変更制御されたゲインパラメータG1の値が、受信データD1のジッタ量に対する適切な値から遠ざかることである。そこで、この場合の第2判定回路28は、位相差量が小さくなるようにゲインパラメータG1を変更する。具体的には、第2判定回路28は、ゲインパラメータG1に対して前回のUP変更とは反対方向のDOWN変更を実行する。より具体的には、UP変更前のゲインパラメータG1を第1のゲインとし、第1のゲインに対してUP方向(第1方向)の差を有する第2のゲインをUP変更後のゲインパラメータG1とすれば、第2判定回路28は、その第2のゲインから上記第1のゲインに対してDOWN方向(第2方向)の差を有するゲインに変更する。すなわち、この場合の第2判定回路28は、前回のUP変更前のゲインパラメータG1よりも低くなるように該ゲインパラメータG1に対してDOWN変更を実行する。このような変更制御により、CDR回路2の追従特性が良化する方向に変化することになり、位相差情報D2の平均値AVEが小さくなる。なお、「追従特性が良化する方向に変化する」とは、変更制御されたゲインパラメータG1の値が、受信データD1のジッタ量に対する適切な値に近づくことである。
【0066】
一方、第2判定回路28は、UP変更前の位相差量であるプレ平均値AVE2よりもUP変更後の位相差量であるカレント平均値AVE1が小さくなった場合には、上記UP変更によってCDR回路2の追従特性が良化する方向に変化したものと判定する。そこで、この場合の第2判定回路28は、位相差量が更に小さくなるようにゲインパラメータG1に対して前回と同様のUP変更を実行する。具体的には、第2判定回路28は、UP変更前及び変更後のゲインパラメータG1をそれぞれ上記第1のゲイン及び上記第2のゲインとすれば、第2判定回路28は、その第2のゲインから該第2のゲインに対してUP方向(第1方向)の差を有するゲインに変更する。すなわち、この場合の第2判定回路28は、前回のUP変更後のゲインパラメータG1よりも更に高くなるように該ゲインパラメータG1に対してUP変更を実行する。このような変更制御により、CDR回路2の追従特性がさらに良化する方向に変化し、位相差情報D2の平均値AVEが更に小さくなる。
【0067】
同様に、第2判定回路28は、ゲインパラメータG1の前回制御がDOWN変更であって、プレ平均値AVE2よりもカレント平均値AVE1が大きくなった場合には、ゲインパラメータG1に対して上記DOWN変更とは反対方向のUP変更を実行する。また、第2判定回路28は、ゲインパラメータG1の前回制御がDOWN変更であって、プレ平均値AVE2よりもカレント平均値AVE1が小さくなった場合には、ゲインパラメータG1をさらにDOWN変更する。
【0068】
このように、第2判定回路28は、ゲインパラメータG1の変更の前後で位相差情報D2の平均値が大きくなった場合(AVE2<AVE1)には、ゲインパラメータG1に対して前回とは反対方向の変更制御(UP→DOWN又はDOWN→UP)を実行する。具体的には、この場合の第2判定回路28は、前回制御がUP変更である場合には、そのUP変更前のゲインパラメータG1よりも低くなるようにDOWN変更を実行し、前回制御がDOWN変更である場合には、そのDOWN変更前のゲインパラメータG1よりも高くなるようにUP変更を実行する。一方、第2判定回路28は、ゲインパラメータG1の変更の前後で位相差情報D2の平均値が小さくなった場合(AVE2>AVE1)には、ゲインパラメータG1に対して前回と同方向の変更制御(UP→UP又はDOWN→DOWN)を実行する。これらの変更制御により、ゲインパラメータG1(CDR回路2の追従特性)が受信データD1のジッタ量に対する適切な値に近づき、位相差情報D2の平均値AVEが小さくなる。なお、このようなゲインパラメータG1の変更制御が、位相差情報D2の平均値AVEが基準値T1未満になるまで繰り返し実行される(上記ステップS20〜S28)。
【0069】
次に、ゲインパラメータG1を前回変更していない場合、すなわち前回の位相差量であるプレ平均値AVE2が基準値T1未満である場合について説明する。このときの第2判定回路28は、基準値T1未満のプレ平均値AVE2よりもカレント平均値AVE1が大きくなった場合には、受信データD1のジッタ量が変動したと判断する。すなわち、受信データD1のジッタ量の変動によってCDR回路2の追従特性が劣化する方向に変化したものと判断する。但し、この場合には、受信データD1のジッタ量がどのように変動したか(大きくなったのか小さくなったのか)を知ることができない。そこで、この場合の第2判定回路28は、ゲインパラメータG1に対して予め設定された固定の変更制御(UP変更又はDOWN変更)を実行する。なお、この変更制御によりCDR回路2の追従特性が劣化する方向に変化した場合には、次の変更制御においてゲインパラメータG1に対して反対方向の変更制御を実行することにより、CDR回路2の追従特性が良化する方向に変化するように制御できる。これによって、位相差情報D2の平均値AVEを小さくすることができる。
【0070】
続いて、プレ平均値AVE2とカレント平均値AVE1とが等しい場合について説明する。このときの第2判定回路28は、ゲインパラメータG1の前回の変更制御に関わらず、ゲインパラメータG1に対して予め設定された固定の変更制御(UP変更、DOWN変更又は前回と同じ変更制御)を実行する。すなわち、プレ平均値AVE2とカレント平均値AVE1とが等しい場合には、前回の変更制御が適切であったかが不明であるため、第2判定回路28は、ゲインパラメータG1に対して固定の変更制御を実行する。なお、この変更制御によりCDR回路2の追従特性が劣化する方向に変化した場合にも、次の変更制御においてゲインパラメータG1に対して反対方向の変更制御を実行することにより、CDR回路2の追従特性が良化する方向に変化するように制御できる。これによって、位相差情報D2の平均値AVEを小さくすることができる。
【0071】
以上のように、ステップS28において、位相差情報D2の平均値AVEが小さくなるようにゲインパラメータG1が増減される。その後、ステップS20に戻り、通信が終了するまでステップS20〜S28が繰り返し実行される。そして、このような一連の処理によって、位相差情報D2の平均値AVEが基準値T1よりも小さくなった場合には、その時の受信データD1のジッタ量に対して適切なCDR回路2のジッタ量が設定されたことになる。
【0072】
以上説明した実施形態によれば、第1実施形態の(1)、(2)、(5)の作用効果に加えて以下の効果を奏する。
(6)受信データD1と抽出クロックCLKの位相差量をジッタ量としてモニタし、ゲインパラメータG1の変更前後における位相差量の変化に基づいて上記位相差量が小さくなるようにゲインパラメータG1を増減するようにした。これにより、装置の動作状態等によってジッタ量が変動(増減)しても、そのジッタ量の変動に合わせてゲインパラメータG1を増減させることができる。したがって、その時々で変動するジッタ量に適したゲインパラメータG1を設定することができ、そのジッタ量に適したCDR回路2の追従特性を設定することができる。
【0073】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態を
図9に従って説明する。先の
図1〜
図8に示した部材と同一の部材にはそれぞれ同一の符号を付し、それら各要素についての詳細な説明は省略する。
【0074】
図9に示すように、受信装置は、レシーバ回路1と、複数(本例ではn個)のCDR回路C2i(i=1,2,…,n)と、ゲイン設定部3bとを含む。
複数のCDR回路C2iの各々は、上記第1実施形態のCDR回路2と同様に、位相比較回路10iと、フィルタ回路11iと、位相補正制御回路12iとを含む。これら各CDR回路C2i内のフィルタ回路11iには、互いに異なる固定のゲインパラメータG1iが設定されている。このため、これらCDR回路C2iの各々は、レシーバ回路1からの受信データD1に基づいて、互いに異なる位相を有するクロック信号CLKiを生成する。具体的には、第1CDR回路C21はゲインパラメータG11で決定される追従特性に従ってクロック信号CLK1を生成するとともに、第2CDR回路C22はゲインパラメータG12で決定される追従特性に従ってクロック信号CLK2をする。なお、これらクロック信号CLKiは、ゲイン設定部3b内のセレクタ52に供給される。
【0075】
また、各位相補正制御回路12iで生成される上記クロック信号CLKiの位相が互いに異なるため、位相比較回路10iの各々は、互いに異なる位相差を示す位相差情報D2iを生成する。具体的には、第1CDR回路C21内の位相比較回路101は、受信データD1とクロック信号CLK1との位相差を示す位相差情報D21を生成する。また、第2CDR回路C22内の位相比較回路102は、受信データD1とクロック信号CLK2との位相差を示す位相差情報D22を生成する。なお、これら位相差情報D2iは、ゲイン設定部3b内の演算回路21iにそれぞれ供給される。
【0076】
ゲイン設定部3bは、複数のCDR回路C2iからの位相差情報D2iに基づいて、最も位相差量が小さくなるCDR回路C2iを選択し、その選択したCDR回路C2iが生成するクロック信号CLKiを抽出クロックCLKとして出力する。なお、この抽出クロックCLKが
図1に示すD−FF回路4やロジック部5に供給される。
【0077】
上記ゲイン設定部3bは、各CDR回路C2iに対応するn個の演算回路21iと、比較回数レジスタ22と、判定回路51と、セレクタ52とを含む。
各演算回路21iには、対応するCDR回路C2i内の位相比較回路10iから位相差情報D2iが入力されるとともに、比較回数レジスタ22から設定回数Mが入力される。これら演算回路21iは、上記演算回路21と同様に、設定回数M回(例えば10回)分の位相差情報D2iの平均値AEiをそれぞれ算出するとともに、その平均値AEiを判定回路51に出力する。具体的には、演算回路211は、第1CDR回路C21内の位相比較回路101からの位相差情報D21の設定回数M回分の平均値AE1を算出する。また、演算回路212は、第2CDR回路C22内の位相比較回路102からの位相差情報D22の設定回数M回分の平均値AE2を算出する。そして、それら平均値AE1,AE2が判定回路51に供給される。
【0078】
判定回路51は、各演算回路21iから入力する複数の平均値AEiを比較することにより、最も位相差量が小さい平均値AEiを判定する。そして、判定回路51は、その判定結果に基づいて、最も位相差量が小さい平均値AEiを生成した演算回路21iに対応するCDR回路C2iを選択するための選択信号S1を生成するとともに、その選択信号S1をセレクタ52に出力する。セレクタ52は、選択信号S1に応じて、CDR回路C2iからのクロック信号CLKiのうちのいずれか1つを選択して抽出クロックCLKとして出力する。
【0079】
具体的には、上記判定回路51において、平均値AE1〜AEnのうち平均値AE1が最も位相差量が小さいと判定された場合には、セレクタ52には、第1CDR回路C21を選択するための選択信号S1が供給される。セレクタ52は、この選択信号S1に応答して、クロック信号CLK1〜CLKnの中から第1CDR回路C21によって生成されたクロック信号CLK1を選択し、そのクロック信号CLK1を抽出クロックCLKとして出力する。これにより、位相差量が最も小さくなるゲインパラメータG11を持つ第1CDR回路C21で生成されたクロック信号CLK1を抽出クロックCLKとして出力することができる。すなわち、その時の受信データD1のジッタ量に対して最も適したゲインパラメータG11で決定される追従特性に従って生成されるクロック信号CLK1を抽出クロックCLKとして出力することができる。
【0080】
以上説明した実施形態によれば、第1実施形態の(1)及び(5)の作用効果に加えて以下の効果を奏する。
(7)平均値AEi(位相差量)が最も小さくなるCDR回路C2iにて生成されたクロック信号CLKiを抽出クロックCLKとして出力するようにした。ここで、位相差量が最も小さいということは、その時の受信データD1のジッタ量とゲインパラメータG1i(CDR回路C2iの追従特性)との関係が最も適切であると言える。このため、上記構成によれば、装置の動作状態等によってジッタ量が変動(増減)しても、抽出クロックCLKを、その時のジッタ量に対して最も適したゲインパラメータG1iを持つCDR回路にて生成されるクロック信号CLKiに変更することができる。そして、この変更(更新)は設定回数M回ごとに実行されるため、常に最適な抽出クロックCLKを生成することができる。
【0081】
さらに、平均値AEiが最も小さくなるCDR回路C2iを選択するだけで、ゲインパラメータG1iやCDR回路C2iの追従特性を変更することができる。このため、受信データD1のジッタ量が変動した場合に、その変動後のジッタ量に対して最適なゲインパラメータG1iやCDR回路C2iの追従特性を迅速に設定することができる。
【0082】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態を
図10〜
図15に従って説明する。先の
図1〜
図8に示した部材と同一の部材にはそれぞれ同一の符号を付して示し、それら各要素についての詳細な説明は省略する。
【0083】
図10に示すように、受信装置は、レシーバ回路1と、CDR回路2と、D−FF回路4と、ロジック部5と、ジッタ測定回路6と、タイマ7とを含む。
レシーバ回路1から出力される受信データD1は、CDR回路2と、D−FF回路4と、ジッタ測定回路6とに供給される。ジッタ測定回路6には、タイマ7から所定の測定期間Taも入力される。
【0084】
このジッタ測定回路6は、受信データD1のジッタ量を測定し、そのジッタ量に応じてCDR回路2内のフィルタ回路11のゲインパラメータG1を設定する。具体的には、ジッタ測定回路6は、測定期間Taにおける最大のジッタ量を測定し、その最大のジッタ量に対して適切な追従特性となるようにゲインパラメータG1を設定する。
【0085】
次に、ジッタ測定回路6の内部構成例を
図11に従って説明する。
ジッタ測定回路6は、CDR回路61と、複数(ここではm個)のD−FF回路Aj(j=1,2,…,m)と、直列に複数段(ここではm−1段)接続されたバッファ回路Bk(k=2,3,…,m)とを含む。また、ジッタ測定回路6は、m−1個の排他的論理和(EOR)回路Cxy(x=1,2,…,m−1、y=2,3,…,m)と、m−1個のD−FF回路Exyと、最大ジッタ量判定回路62と、最大ジッタ量記憶回路63と、変換テーブル64とを含む。
【0086】
CDR回路61は、図示は省略するが、位相比較回路と、固定のゲインパラメータが設定されたフィルタ回路と、位相補正制御回路とを備える。このCDR回路61は、レシーバ回路1からの受信データD1に基づいて、位相の異なる2つのクロック信号CK1,CK21を生成する。具体的には、CDR回路61は、
図12に示すように、受信データD1に対しセットアップ時間及びホールド時間を確保できるように、受信データD1の中央位置にエッジ(本例では、立ち上がりエッジ)が来るようなクロック信号CK1を生成する。また、CDR回路61は、
図12に示すように、受信データD1のデータ遷移点に立ち上がりエッジが来るようなクロック信号CK21を生成する。このようにCDR回路61は、互いに位相が略180度ずれたクロック信号CK1,CK21を生成する。そして、CDR回路61は、
図11に示すように、クロック信号CK1をD−FF回路Exyのクロック端子に出力するとともに、クロック信号CK2jとしてクロック信号CK21をD−FF回路A1のクロック端子及びバッファ回路Bkの初段のバッファ回路B2に出力する。
【0087】
上記バッファ回路B2は、クロック信号CK21を所定時間だけ遅延させたクロック信号CK22を生成するとともに、そのクロック信号CK22をD−FF回路A2のクロック端子と次段のバッファ回路B3に出力する。以降のバッファ回路Bkは、前段のバッファ回路B(k−1)から入力するクロック信号CK2(j−1)を所定時間だけ遅延させたクロック信号CK2jを生成し、そのクロック信号CK2jをD−FF回路Ajのクロック端子と次段のバッファ回路B(k+1)に出力する。そして、最終段のバッファ回路
Bmは、前段のバッファ回路B(m−1)から入力するクロック信号CK2(m−1)を所定時間だけ遅延させたクロック信号CK2mを生成し、そのクロック信号CK2mをD−FF回路Amのクロック端子に出力する。このように、CDR回路61及び複数のバッファ回路Bkによって所定時間ずつ位相の遅延されたm段階のクロック信号CK2jが生成される。なお、これらクロック信号CK2jは、最終段のバッファ回路Bmにて生成されるクロック信号CK2mが上記クロック信号CK1の立ち上がりエッジよりも早く立ち上がるように生成される(
図12参照)。
【0088】
D−FF回路Ajは各々、そのデータ端子に受信データD1が入力される一方、クロック端子にクロック信号CK2jが入力される。このD−FF回路Ajは、クロック信号CK2jの立ち上がりエッジに同期してデータ端子に入力する受信データD1のレベルを持つ信号をデータD1jとして出力する。すなわち、これらD−FF回路Ajは、所定の遅延時間ずつ位相のずれたクロック信号CK2jで受信データD1をサンプリングし、そのサンプリングしたデータをデータD1jとして出力する。そして、D−FF回路Ajのうちの隣り合うD−FF回路Ax,Ay(y=x+1)の出力端子が1つのEOR回路Cxyの第1及び第2入力端子にそれぞれ接続されている。このため、隣り合うD−FF回路Ax,Ayから出力されるデータD1x,D1yが1つのEOR回路Cxyに供給される。換言すると、クロック信号CK2xでサンプリングされたデータD1xと、クロック信号CK2yでサンプリングされたデータD1yとが1つのEOR回路Cxyに供給される。より具体的には、D−FF回路A1から出力される(クロック信号CK21でサンプリングされる)データD11と、D−FF回路A2から出力される(クロック信号CK22でサンプリングされる)データD12とがEOR回路C12に供給される。また、D−FF回路A2から出力されるデータD12と、D−FF回路A3から出力されるデータD13とがEOR回路C23に供給される。
【0089】
EOR回路Cxyは、隣り合うD−FF回路Ax,Ayから入力するデータD1x,D1yを比較する。そして、EOR回路Cxyは、両データD1x,D1yの値が一致している場合にはLレベルの信号CMxyをD−FF回路Exyのデータ端子に出力する一方、両データD1x,D1yの値が異なる場合にはHレベルの信号CMxyをD−FF回路Exyのデータ端子に出力する。
【0090】
D−FF回路Exyは各々、そのデータ端子にEOR回路Cxyからの信号CMxyが入力される一方、クロック端子に上記CDR回路61からのクロック信号CK1が入力される。このD−FF回路Exyは、クロック信号CK1の立ち上がりエッジに同期してデータ端子に入力する信号CMxyのレベルを持つ信号CMRxyを最大ジッタ量判定回路62に出力する。
【0091】
ここで、受信データD1にデータ遷移がある場合、受信データD1のジッタ量に応じてD−FF回路Ajの出力値が変化する、つまりジッタ量に応じたタイミング前後で立ち上がるクロック信号CK2x,CK2yでサンプリングされるD−FF回路Ax,Ay間で出力値が変化する。このため、隣り合うD−FF回路Ax,Ayの出力データD1x,D1yの値が一致するか否かを判定することにより、クロック信号CK2x及びクロック信号CK2yのエッジ間でデータ遷移が生じたか否かを判定することができる。さらに、クロック信号CK21の立ち上がりからデータ遷移が生じたクロック信号CK2yの立ち上がりまでの時間がジッタ量に相当すると判定することができる。
【0092】
この点について、
図12及び
図13を参照して説明する。なお、
図12は、受信データD1にジッタが含まれない場合のジッタ測定回路6の動作を示し、
図13は、受信データD1にジッタが含まれる場合のジッタ測定回路6の動作を示している。なお、同図において、縦軸及び横軸は、説明を簡潔にするため、適宜拡大、縮小して示している。
【0093】
図13を参照して、受信データD1にジッタが含まれることによって、クロック信号CK22とクロック信号CK23とのエッジ間に、受信データD1が(N−1)から(N)にデータ遷移する場合について説明する。
【0094】
この場合には、
図13に示すように、受信データD1の実際のデータ遷移点である時刻t2よりも前にクロック信号CK21,CK22が立ち上がり、時刻t2よりも後にクロック信号CK23〜CK2mが立ち上がる。このため、D−FF回路A1は、クロック信号CK21の立ち上がりエッジに同期してその時の受信データD1のレベル(N−1)を持つデータD11をEOR回路C12に出力する。また、D−FF回路A2は、クロック信号CK22の立ち上がりエッジに同期してその時の受信データD1のレベル(N−1)を持つデータD12をEOR回路C12,C23に出力する。一方、D−FF回路A3は、クロック信号CK23の立ち上がりエッジに同期してその時の受信データD1のレベル(N)を持つデータD13をEOR回路C23,C34に出力する。
【0095】
このため、EOR回路C12は、レベル(N−1)であるデータD12が入力された後は、入力する両データD11,D12の値が一致するため、Lレベルの信号CM12をD−FF回路E12に出力する。
【0096】
一方、EOR回路C23には、レベル(N)であるデータD13が入力された後は、レベル(N−1)であるデータD12とレベル(N)であるデータD13とが入力される。このため、EOR回路C23は、入力する両データD12,D13の値が一致しないため、Hレベルの信号CM23をD−FF回路E23に出力する。このHレベルの信号CM23は、両データD12,D13のレベルが変化する次のデータ遷移点付近まで出力される。なお、上記EOR回路C23の次段以降のEOR回路Cxyは、レベル(N)であるデータD1yが入力された後は、入力する両データD1x,D1yの値が一致するため、Lレベルの信号CMxyをD−FF回路Exyに出力する。
【0097】
続いて、D−FF回路Exyでは、Hレベルの信号CM23がデータ端子に入力されるD−FF回路E23のみが、クロック信号CK1の立ち上がりエッジに同期してHレベルの信号CMR23を出力する。なお、そのD−FF回路E23以外のD−FF回路Exyは、クロック信号CK1の立ち上がり時にLレベルの信号CMxyが入力されているため、その立ち上がりエッジに同期してLレベルの信号CMRxyを出力する。
【0098】
本例のように、クロック信号CK22とクロック信号CK23とのエッジ間に受信データD1のデータ遷移がある場合には、そのクロック信号CK22,CK23でサンプリングされるD−FF回路A2,A3の出力データD12,D13の値が異なるようになる。換言すると、隣り合うD−FF回路A2,A3の出力データD12,D13の値が異なる場合には、対応するクロック信号CK22,CK23のエッジ間で受信データD1のデータ遷移があったと判定することができる。反対に、隣り合うD−FF回路Ax,Ayから出力されるデータD1x,D1yの値が一致する場合には、対応するクロック信号CK2x,CK2yのエッジ間で受信データD1のデータ遷移がなかったと判定することができる。
【0099】
ここで、D−FF回路Exyでは、隣り合うD−FF回路Ax,Ayから出力されるデータD1x,D1yの値が異なるためにHレベルの信号CMxyを出力するEOR回路Cxyと接続されるD−FF回路Exyのみから、Hレベルの信号CMRxyが出力される。このため、Hレベルの信号CMRxyを検出することによって、クロック信号CK2xとクロック信号CK2yとのエッジ間で受信データD1の遷移があったと判定することができる。したがって、本例では、Hレベルの信号CMR23が検出されるため、クロック信号CK22とクロック信号CK23とのエッジ間で受信データD1の遷移があったと判定することができる。さらに、このように受信データD1にデータ遷移がある場合には、受信データD1のジッタ量に応じたタイミング前後で立ち上がるクロック信号CK22,CK23でサンプリングされるD−FF回路A2,A3間で出力値が変化する。このため、本例では、クロック信号CK21の立ち上がりからクロック信号CK23の立ち上がりまでの時間がジッタ量に略相当すると判定することができる。
【0100】
なお、受信データD1にジッタが含まれない場合には(
図12参照)、受信データD1の実際のデータ遷移点と、クロック信号CK21の立ち上がりエッジとのタイミングが略一致するため、全てのEOR回路Cxyに入力される両データD1x,D1yの値が一致する。もしくは、初段のEOR回路C12に入力されるデータD11,D12の値のみが異なる。このため、この場合には、全D−FF回路ExyからLレベルの信号CMRxyが出力されるか、初段のD−FF回路E12からのみHレベルの信号CMR12が出力される。
【0101】
図11に示す上記最大ジッタ量判定回路(判定回路)62には、各D−FF回路Exyから出力される信号CMRxyと併せて、最大ジッタ量記憶回路(記憶回路)63に記憶された最大ジッタ量が供給される。この判定回路62は、複数の信号CMRxyのうちHレベルとなる信号を検出し、その信号に基づいてジッタ量を判定する。具体的には、判定回路62は、上述のようにEOR回路C23から入力する信号CMR23がHレベルの場合には、クロック信号CK21の立ち上がりからクロック信号CK23の立ち上がりまでの時間をジッタ量と判定する。そして、判定回路62は、Hレベルの信号CMRxyから判定したジッタ量と、記憶回路63からの最大ジッタ量とを比較し、前者が後者よりも大きい場合には前者のジッタ量を新たな最大ジッタ量として記憶回路63に出力する。
【0102】
記憶回路63は、
図10に示すタイマ7から供給される測定期間Taが経過する毎に、その時に記憶している最大ジッタ量を変換テーブル64に出力するとともに、その記憶している情報(最大ジッタ量)をリセットする。
【0103】
なお、
図13の時刻t1〜t4までを測定期間Taとすると、時刻t2〜t3において、Hレベルの信号CMR23によって判定されたジッタ量が最大ジッタ量として記憶回路63に最初に記憶される。その後、時刻t3〜t4において、クロック信号CK23とクロック信号CK24とのエッジ間で受信データD1のデータ遷移が生じる(時刻t3)ため、隣り合うD−FF回路A3,A4の出力データD13,D14の値が異なるようになる。すると、EOR回路C34からHレベルの信号CM34が出力され、第1クロック信号CK1の立ち上がりエッジに同期してD−FF回路E34からHレベルの信号CMR34が出力される。この場合の判定回路62は、Hレベルの信号CMR34に基づいて、クロック信号CK21の立ち上がりからクロック信号CK24の立ち上がりまでの時間をジッタ量と判定する。さらに、判定回路62は、記憶回路63から入力する最大ジッタ量(Hレベルの信号CMR23に基づくジッタ量)よりもHレベルの信号CMR34に基づくジッタ量の方が大きいと判定し、そのジッタ量を新たな最大ジッタ量として記憶回路63に出力する。このため、本例の記憶回路63は、Hレベルの信号CMR34に基づくジッタ量を最大ジッタ量として変換テーブル64に出力することになる。
【0104】
図11に示す変換テーブル64は、記憶回路63から出力される最大ジッタ量をゲインパラメータG1に変換し、そのゲインパラメータG1を
図10に示すCDR回路2内のフィルタ回路11に出力する。詳述すると、変換テーブル64には、受信データD1のジッタ量とゲインパラメータG1とを対応付けたテーブルが格納されている。例えば変換テーブル64には、
図4(b)に示すように受信データD1のジッタ量が大きくなるほど、ゲインパラメータG1が大きくなるように両者を対応付けたテーブルが格納されている。これにより、その時々で変動する受信データD1のジッタ量に応じてゲインパラメータG1を変更(更新)することができる。
【0105】
次に、このように構成された受信装置におけるゲインパラメータG1(CDR回路2の追従特性)の設定方法を
図14に従って説明する。
まず、通信を開始する前に、ゲインパラメータG1と、ジッタ測定回路6と、タイマ7の初期化が行われる(ステップS31)。その後、通信が開始されるまで待ち(ステップS32)、通信が開始されると(ステップS32でYES)、測定期間Taをカウントするタイマのカウント動作を開始する(ステップS33)。
【0106】
続いて、ジッタ測定回路6において受信データD1のジッタ量の測定が開始される(ステップS34)。次に、測定期間Taが経過したか否かが判定され(ステップS35)、測定期間Taが経過するまで受信データD1の最大ジッタ量の測定が継続される(ステップS34,S35)。一方、測定期間Taが経過すると(ステップS35でYES)、その測定期間Taにおける最大ジッタ量に応じたゲインパラメータG1が設定される(ステップS36)。すなわち、変換テーブル64において、記憶回路63から出力される最大ジッタ量がゲインパラメータG1に変換される。そして、そのゲインパラメータG1がフィルタ回路11に設定される。これにより、受信データD1のジッタ量に適したゲインパラメータG1を設定することができる。ひいては、受信データD1のジッタ量に適したCDR回路2の追従特性を設定することができる。
【0107】
次に、ジッタ測定回路6とタイマ7とがリセットされ(ステップS37)、ステップS33に戻る。すると、タイマ7のカウント動作が再び開始され(ステップS33)、測定期間Taにおける最大ジッタ量に応じたゲインパラメータG1が再度設定される(ステップS34〜S37)。このような一連の処理によって、測定期間Taごとに、その時のジッタ量に応じてゲインパラメータG1が変更される。これにより、装置の動作状態により変動するジッタ量に対して常に最適なCDR回路2の追従特性を設定することができる。
【0108】
なお、例えばIEEE1394−2008のようなシリアルインタフェースでは、
図15に示すように、実際のデータ通信は125Mbpsから4Gbpsといった高速で行われる。その一方で、データ通信を開始する前に、トーン信号の送受信による装置間の接続確認や通信速度確認などが低速で行われる。このような低速で行われる通信期間に、上記ジッタ測定回路6によるジッタ測定(ステップS3〜S5)を行うことにより、その受信データD1のジッタ量の測定及びゲインパラメータG1(ステップS6)の設定を確実に実行することができる。なお、上記低速の通信は、48MHzから64MHzのクロック信号が使用されるため、この場合のジッタ測定回路6内のCDR回路61は、48MHzから64MHzのクロック信号CK1,CK21を生成する回路となる。
【0109】
以上説明した実施形態によれば、第1実施形態の(1)の作用効果に加えて以下の効果を奏する。
(8)受信データD1に基づいて該受信データD1のジッタ量を測定し、その測定したジッタ量に応じたゲインパラメータG1を設定するようにした。これによれば、受信データD1のジッタ量そのものに応じてゲインパラメータG1が変更されるため、そのゲインパラメータG1の変更制御の精度を向上させることができる。
【0110】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記第1実施形態では、CDR回路2の追従特性が小さくなるようにゲインパラメータG1の初期値を低く設定した。これに限らず、例えばCDR回路2の追従特性が大きくなるようにゲインパラメータG1の初期値を高く設定してもよい。なお、この場合の判定回路24は、平均値AVEが基準値T1以上の場合には、その平均値AVEが小さくなるようにゲインパラメータG1を下げるようにする。
【0111】
・上記第2実施形態におけるゲインパラメータG1aの初期値を、CDR回路2の追従特性が小さくなるように低く設定してもよく、CDR回路2の追従特性が大きくなるように高く設定してもよい。
【0112】
・上記第1〜第3実施形態では、位相比較回路10,10iで生成した位相差情報D2,D2iの平均値AVE,AEiを受信データD1のジッタ量としてモニタするようにした。すなわち、上記第1及び第2実施形態では、位相比較回路10で生成した位相差情報D2の平均値AVEを基準値T1と比較するようにした。これに限らず、例えば位相比較回路10で生成した位相差情報D2を基準値T1と比較するようにしてもよい。
【0113】
また、第3実施形態では、位相比較回路10iで生成した位相差情報D2iの平均値AEiを比較することにより、最も位相差量が小さくなるCDR回路C2iを判定するようにした。これに限らず、位相比較回路10iで生成した位相差情報D2iを比較することにより、最も位相差量が小さくなるCDR回路C2iを判定するようにしてもよい。
【0114】
・上記第1及び第2実施形態におけるゲインパラメータG1の変更制御において、そのゲインパラメータG1を変更する際の変更幅(増加又は減少させる割合)を変更するようにしてもよい。例えば位相差情報D2の平均値AVE(もしくは位相差情報D2)の大きさ、具体的には基準値T1との差分量に応じてゲインパラメータG1の変更幅を変更するようにしてもよい。第1実施形態で言えば、判定回路24において、平均値AVEが基準値T1以上の場合に、その平均値AVEと基準値T1との差分量が大きいほど、ゲインパラメータG1を上げる際の変更幅を大きくするようにしてもよい。これにより、ゲインパラメータG1を迅速に適切な値に近づけることができる。
【0115】
あるいは、上述のゲインパラメータG1の変更幅を、通信相手に応じて変更するようにしてもよい。
・上記各実施形態における基準値T1、設定回数Mや測定期間Taを装置外部から設定するようにしてもよい。
【0116】
・上記第4実施形態におけるジッタ測定回路6の内部構成は
図11に示した回路に特に限定されない。ジッタ測定回路6は、受信データD1のジッタ量を測定することのできる回路であれば、上記第4実施形態の(8)と同様の効果を奏することができる。
【0117】
・上記各実施形態におけるCDR回路2,2iの内部構成は特に制限されない。例えばフィルタ回路11,11iをアナログフィルタに変更してもよい。
・上記各実施形態のレシーバ回路1に入力されるデータは差動シリアルデータに限定されない。例えばレシーバ回路1にシングルエンドシリアルデータが入力されるようにしてもよい。
【0118】
上記各実施形態に関し、以下の付記を開示する。
(付記1)
受信データに基づいてクロックを生成するクロックデータリカバリ回路と、
前記受信データのジッタ量に応じて、前記クロックデータリカバリ回路において前記受信データと前記クロックとの位相差をフィルタするフィルタ処理のゲインを設定する設定部と
を有することを特徴とする受信装置。
(付記2)
前記設定部は、前記位相差を前記ジッタ量としてモニタし、前記フィルタ処理のゲインを設定することを特徴とする付記1に記載の受信装置。
(付記3)
前記設定部は、所定回数分の前記位相差の平均値を前記ジッタ量としてモニタし、前記フィルタ処理のゲインを設定することを特徴とする付記1に記載の受信装置。
(付記4)
前記設定部は、前記位相差が基準以上の場合に、前記フィルタ処理のゲインの初期設定に基づいて前記位相差が小さくなるように前記フィルタ処理のゲインを変更することを特徴とする付記2又は3に記載の受信装置。
(付記5)
前記設定部は、前記位相差が基準以上の場合に、前記フィルタ処理のゲインの変更前後における前記受信データと前記クロックとの位相差の変化に基づいて前記位相差が小さくなるように前記フィルタ処理のゲインを変更することを特徴とする付記2又は3に記載の受信装置。
(付記6)
前記設定部は、前記フィルタ処理のゲインを第1のゲインに設定した場合の前記受信データと前記クロックとの第1の位相差よりも、前記フィルタ処理のゲインを前記第1のゲインに対して第1方向の差を有する第2のゲインに変更した後の前記受信データと前記クロックとの第2の位相差が小さければ、前記第2のゲインに対して前記第1方向の差を有する第3のゲインを前記フィルタ処理のゲインに設定することを特徴とする付記5に記載の受信装置。
(付記7)
前記設定部は、前記フィルタ処理のゲインを第1のゲインに設定した場合の前記受信データと前記クロックとの第1の位相差よりも、前記フィルタ処理のゲインを前記第1のゲインに対して第1方向の差を有する第2のゲインに変更した後の前記受信データと前記クロックとの第2の位相差が大きければ、前記第2のゲインを前記第1方向とは反対方向の第2方向に変化させた第4のゲインを前記フィルタ処理のゲインに設定することを特徴とする付記5又は6に記載の受信装置。
(付記8)
前記第4のゲインは、前記第1のゲインに対して前記第2方向の差を有するゲインであることを特徴とする付記7に記載の受信装置。
(付記9)
前記クロックデータリカバリ回路は、前記フィルタ処理のゲインが互いに異なる複数のクロックデータリカバリ回路を有し、
前記設定部は、前記複数のクロックデータリカバリ回路のうち、前記位相差が最も小さくなるクロックデータリカバリ回路が生成するクロックを選択する選択回路を有することを特徴とする付記2又は3に記載の受信装置。
(付記10)
前記設定部は、前記受信データに基づいて該受信データのジッタ量を測定し、その測定したジッタ量に応じた前記フィルタ処理のゲインを設定するジッタ測定回路を有することを特徴とする付記1に記載の受信装置。
(付記11)
前記ジッタ測定回路は、
前記受信データに基づいて第1クロック及び第2クロックを出力するクロックデータリカバリ回路と、
前記第2クロックを所定時間ずつ遅延させた複数のクロックでそれぞれ前記受信データをサンプリングする複数のフリップフロップ回路と、
隣り合う前記フリップフロップ回路の出力値を排他的論理和演算する論理回路と、
前記論理回路の出力値を前記第1クロックでサンプリングすることで、前記隣り合うフリップフロップ回路の出力値が変化するタイミングを検出し、その検出したタイミングに基づいてジッタ量を測定する回路と、
前記測定したジッタ量を前記フィルタ処理のゲインに変換する変換テーブルとを有することを特徴とする付記10に記載の受信装置。
(付記12)
受信データに基づいてクロックを生成するクロックデータリカバリ回路において前記受信データと前記クロックとの位相差をフィルタするフィルタ処理のゲインを、前記受信データのジッタ量に応じて設定することを特徴とするゲイン設定方法。