(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、回転電機の温度が上昇すると、回転電機で駆動される車両の走行性能が低下し、燃費性能が悪化する。このため、回転電機に冷媒を供給する冷媒ポンプの吐出量を増大させ、回転電機の冷却性能を向上させることが好ましい。また、回転電機の冷却性を向上させるために冷媒の温度を低下させるのが好ましいが、冷媒ポンプの吐出側に水や空気等の他の流体と冷媒とを熱交換させる熱交換器を設ける場合に、熱交換器を通過する冷媒量が少ないと熱交換後の冷媒の温度を十分に低下させることができない可能性がある。この面からも、冷媒ポンプの吐出量を大きくすることが好ましい。
【0006】
一方、回転電機とエンジンとを車両の駆動源として搭載するハイブリッド車両において、エンジンにより駆動される機械式のオイルポンプの冷媒の吐出量は単位時間当たりのエンジン回転数(「エンジン回転数」について本願の明細書全体で同じである。)に大きく影響される。このため、エンジン回転数が低い低速領域にある等の条件にかかわらず、機械式オイルポンプと電動式オイルポンプとの吐出量の比較をせずに駆動した、いずれかのオイルポンプからの冷媒を回転電機に供給するのでは、回転電機を十分に冷却できない可能性がある。例えば、電動式オイルポンプは駆動時に一定回転数で駆動するため、状況により電動式オイルポンプと機械式オイルポンプとで冷媒吐出量の大小関係が変化する可能性がある。このため、電動式オイルポンプ及び機械式オイルポンプの吐出量の大小関係の変化にかかわらず回転電機の冷却性能を高くできる構成の実現が望まれている。
【0007】
本発明の目的は、回転電機冷却システムにおいて、電動式オイルポンプ及び機械式オイルポンプの吐出量の大小関係の変化にかかわらず回転電機の冷却性能を高くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る回転電機冷却システムは、内燃機関により駆動される機械式冷媒ポンプと、電源により駆動される電動式冷媒ポンプと、前記機械式冷媒ポンプ及び前記電動式冷媒ポンプの一方を駆動する場合に他方を駆動しないように、前記冷媒ポンプの駆動を制御する冷媒ポンプ駆動制御部と、
前記内燃機関の回転数を検出する回転数検出部と、を備え、前記機械式冷媒ポンプ及び前記電動式冷媒ポンプの一方から吐出された冷媒を回転電機に供給して前記回転電機を冷却し、前記冷媒ポンプ駆動制御部は、
前記回転電機の温度が予め定めた閾値温度以上である場合において、前記回転数検出部により検出された前記内燃機関の回転数が予め定めた閾値回転数以下であるか否かにより、前記機械式冷媒ポンプ及び前記電動式冷媒ポンプの冷媒吐出量を比較し
、冷媒吐出量の大きい方の前記冷媒ポンプを、駆動側冷媒ポンプとして駆動することを特徴とする回転電機冷却システムである。
また、本発明に係る回転電機冷却システムは、内燃機関により駆動される機械式冷媒ポンプと、電源により駆動される電動式冷媒ポンプと、前記機械式冷媒ポンプ及び前記電動式冷媒ポンプの一方を駆動する場合に他方を駆動しないように、前記冷媒ポンプの駆動を制御する冷媒ポンプ駆動制御部と、前記内燃機関の回転数を検出する回転数検出部と、を備え、前記機械式冷媒ポンプ及び前記電動式冷媒ポンプの一方から吐出された冷媒を回転電機に供給して前記回転電機を冷却し、前記冷媒ポンプ駆動制御部は、前記回転電機の温度が予め定めた閾値温度以上である場合において、前記回転数検出部により検出された前記内燃機関の回転数が予め定めた閾値回転数を越えている場合に、前記機械式冷媒ポンプを駆動側冷媒ポンプとして駆動することを特徴とする回転電機冷却システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る回転電機冷却システムによれば、冷媒吐出量を比較して前記機械式冷媒ポンプまたは前記電動式冷媒ポンプを駆動側冷媒ポンプとして駆動するので、電動式冷媒ポンプ及び機械式冷媒ポンプの吐出量の大小関係の変化にかかわらず回転電機の冷却性能を高くできる。
【0010】
また、回転電機冷却システムにおいて、冷媒ポンプ駆動制御部は
、機械式冷媒ポンプ及び電動式冷媒ポンプの冷媒吐出量を比較して冷媒吐出量の大きい方の冷媒ポンプを、駆動側冷媒ポンプとして駆動する構成において、内燃機関の回転数を検出する回転数検出部を備え、冷媒ポンプ駆動制御部は
、回転数検出部により検出された内燃機関の回転数に応じて、冷媒吐出量の大きい方の冷媒ポンプを駆動側冷媒ポンプとして駆動する構成によれば、内燃機関の回転数が低い場合でも冷媒吐出量の大きい冷媒ポンプの駆動により回転電機の冷却性能を高くできる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、車両として、エンジンと2つの回転電機とを搭載するハイブリッド車両に本発明を適用する場合を説明するが、本発明は回転電機を搭載する車両を限定するものではない。例えば、内燃機関であるエンジンを搭載しない電気自動車に本発明の回転電機冷却システムを搭載することもできる。また、ハイブリッド車両の動力装置として、エンジンと2つの回転電機とその間に設けられる動力伝達機構を有する構成を説明するが、これも説明のための例示である。ここでは、ハイブリッド車両としてエンジンと回転電機を有するものであればよく、エンジンの出力と回転電機の出力との間の関係は、車両の仕様に応じ、適宜変更が可能である。また、車両に搭載される回転電機が2つ設けられ、各回転電機は電動モータ及び発電機の両方の機能を有するモータジェネレータである場合を説明するが、これも例示であって、電動モータまたは発電機として機能する1つの回転電機が車両に搭載される場合であってもよい。
【0013】
また、以下では、回転電機を冷却する冷媒として潤滑油としても用いられるATF(オートマチックトランスミッションフルード)を説明するが、これは例示であって、これ以外の冷却用流体でもよい。これに伴い、冷媒を循環する冷媒ポンプにオイルポンプの表記を用いるが、これもATFを用いる場合に合わせたものである。
【0014】
また、電動式オイルポンプの駆動回路の電源としては、回転電機の電源装置とは独立の低電圧電源を説明するが、これは説明のための例示である。例えば、回転電機の高電圧の電源装置から低電圧に電圧変換された電力を電動式オイルポンプの駆動回路に供給するものも採用できる。
【0015】
また、以下では、回転電機と動力伝達機構とが1つのケースに収容され、そのケースとオイルポンプとを含む循環経路に冷媒が循環する構成を説明するが、これは説明のための例示である。例えば、回転電機と動力伝達機構とを1つのケースに収容せず、回転電機と動力伝達機構とオイルポンプとを含む循環経路に冷媒が循環する構成としてもよい。
【0016】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0017】
図1は、ハイブリッド車両についての回転電機冷却システム10の構成を示す図である。この回転電機冷却システム10は、ハイブリッド車両に搭載される回転電機駆動冷却構造12と、制御部80とを含んでいる。
【0018】
回転電機駆動冷却構造12では、ハイブリッド車両の駆動源である動力装置14が、エンジン16と、
図1でMG2として示される回転電機である第2モータジェネレータ20と、第2モータジェネレータ20に接続されるM/G駆動回路30と、M/G駆動回路30用の高電圧電源32とを含む。回転電機駆動冷却構造12は、さらに、第2モータジェネレータ20を内部に含むケース24と、ケース24の内部に冷媒26を供給する機械式オイルポンプ42及び電動式オイルポンプ44とを含む。機械式オイルポンプ42は、
図1ではMOPとして示され、電動式オイルポンプ44は、
図1ではEOPとして示される。
【0019】
動力装置14は、内燃機関であるエンジン16と、第2モータジェネレータ20と、エンジン16及び第2モータジェネレータ20を動力伝達可能に接続する動力伝達機構18とを含む。また、第2モータジェネレータ20は、M/G駆動回路30から電力が供給されるときは電動モータとして機能し、エンジン16による駆動時、あるいはハイブリッド車両の制動時には発電機として機能する三相同期型回転電機である。ただし、第2モータジェネレータ20は誘導電動機等、他の構成であってもよい。
【0020】
また、第2モータジェネレータ20にレゾルバ等の回転角センサ27が設けられる。回転角センサ27により検出された検出角度θmは制御部80に入力される。制御部80は、モータ回転数算出部(図示せず)を有し、検出角度θmから単位時間当たり(例えば毎分当たり)のモータ回転数を算出する。回転角センサ27とモータ回転数算出部部とによりモータ回転数検出部が形成される。また、第2モータジェネレータ20とM/G駆動回路30とを接続する三相(U相、V相、W相)の動力線L1、L2、L3が設けられており、三相のうち、いずれか二相の動力線L1,L2を流れる電流を検出する電流センサ82が設けられている。各電流センサ82の検出信号が制御部80に入力される。三相の動力線L1,L2,L3に対応する三相のステータコイル(図示せず)は中性点で接続されるため、いずれか二相の電流値が取得されれば残りの一相の電流値も制御部80での算出により求められる。ただし、三相分の電流値を電流センサで検出し、制御部80に入力することもできる。
【0021】
また、
図2、
図3にのみ図示するが、回転電機駆動冷却構造12には第2モータジェネレータ20と同様の機能を有する回転電機である第1モータジェネレータ(MG1)21が設けられている。第1モータジェネレータ21は動力伝達機構18に動力伝達可能に接続され、主として発電機として使用されるが、電動モータとして使用される場合もある。動力伝達機構18は、ハイブリッド車両に供給する動力をエンジン16の出力と第2モータジェネレータ20の出力との間で分配する機能を有する。このような動力伝達機構18としては、エンジン16の出力軸と、第2モータジェネレータ20の出力軸と、第1モータジェネレータ21の回転軸との3つの軸に接続される遊星歯車機構を用いることができる。また、第2モータジェネレータ20の出力軸は、図示しない駆動輪に連結された車軸に作動的に接続することができる。
図1で動力伝達機構18とエンジン16とを接続する軸がエンジン16の出力軸22である。この出力軸22に機械式オイルポンプ42が動力伝達可能に接続されている。例えば出力軸22と同軸上で出力軸22と共通の回転軸、または出力軸22に歯車(またはベルト及びプーリ)を含む動力伝達機構を介して作動的に接続された回転軸により、機械式オイルポンプ42を駆動することができる。
【0022】
M/G駆動回路30は、高電圧電源32の直流電力と第2モータジェネレータ20を駆動するための交流電力との間の電力変換を行うインバータを含む回路である。インバータは、複数のスイッチング素子のオンオフタイミングを適切に調整するPWM(Pulse Width Modulation)制御によって三相駆動信号を生成して、第2モータジェネレータ20に供給する回路である。PWM制御は、第2モータジェネレータ20の回転周期に応じた周期を有する基本波信号と、鋸歯状波形を有するキャリア信号との比較で、パルス幅を変調する制御である。インバータは、このPWM制御によって、第2モータジェネレータ20の出力または回転数を所望値に制御可能である。
【0023】
高電圧電源32は、充放電可能な高電圧用二次電池である。具体的には、約200Vから約300Vの端子電圧を有するリチウムイオン組電池で構成することができる。組電池は、単電池または電池セルと呼ばれる端子電圧が1Vから数Vの電池を複数個組み合わせて、上記の所定の端子電圧を出力可能とする。高電圧電源32としては、その他に、ニッケル水素組電池、大容量キャパシタ等を用いることができる。なお、高電圧電源32とM/G駆動回路30との間に、高電圧電源32の電圧を昇圧してM/G駆動回路30に供給するDC/DCコンバータを設けることもできる。
【0024】
このような回転電機駆動冷却構造12は、上記の制御部80とともに回転電機冷却システム10(
図1)を構成し、ハイブリッド車両に搭載される。ハイブリッド車両は、エンジン16と第2モータジェネレータ20との一方を主駆動源として駆動する図示しない駆動輪を備える。
【0025】
また、回転電機駆動冷却構造12には、車体に支持されたケース24が設けられており、ケース24は、内部に動力伝達機構18と第1、第2各モータジェネレータ21,20とを含んでいる。ケース24の内部空間には、動力伝達機構18と第1、第2各モータジェネレータ21,20との回転部分の潤滑と、動力伝達機構18及び第1、第2各モータジェネレータ21,20の冷却とを行う冷媒26が貯留される。冷媒26としては、ATFと呼ばれる潤滑油を用いることができる。
【0026】
さらに、回転電機駆動冷却構造12には、エンジン16の毎分当たりの回転数を検出する回転数検出部である回転数センサ84と、ケース24に設けられ、ケース24内に貯留された冷媒の温度を検出する温度検出部である温度センサ28と、車両の車速を検出する車速検出部である車速センサ29とが設けられている。各センサ84,28,29の検出値は、図示しない適当な信号線を用いて、制御部80に入力されている。
【0027】
また、回転電機駆動冷却構造12には、冷媒循環路40が設けられている。冷媒循環路40は、ケース24の下部に上流端が接続され、下流端が分岐部を介して機械式オイルポンプ42及び電動式オイルポンプ44のそれぞれの吸入側に接続される第1冷媒路60と、機械式オイルポンプ42及び電動式オイルポンプ44のそれぞれの吐出側に上流端が接続され、下流端が集合部で集合する2本の第2冷媒路62と、各第2冷媒路62に集合部で接続され、下流端が冷媒熱交換器であるオイルクーラ50に接続される第3冷媒路64と、上流端がオイルクーラ50に接続され、下流端がケース24の上部に接続される第4冷媒路66とを含む。すなわち、機械式オイルポンプ42及び電動式オイルポンプ44の吐出側と、第2モータジェネレータ20を収容したケース24との間にオイルクーラ50が接続されている。また、各第2冷媒路62に冷媒の逆流を防止する逆止弁46,48が設けられている。各オイルポンプ42,44の一方のオイルポンプ42(または44)が駆動することで冷媒が冷媒循環路40を循環する。この循環に伴って、第4冷媒路66の下流端からケース24内に噴出された冷媒26は各モータジェネレータ20,21に供給される。各冷媒路60,62,64,66は管により形成される。機械式オイルポンプ42と電動式オイルポンプ44とは、冷媒26の流れ方向に関して互いに並列の関係で接続される。
【0028】
オイルクーラ50は、冷媒26と空気または第2冷媒(例えばLLCと呼ばれる冷却水)とを熱交換させるもので、冷媒26の温度を空冷あるいは水冷等により低下させる。機械式オイルポンプ42は、駆動軸がエンジン16の出力軸22に作動的に接続され、エンジン16が動作するときにエンジン16により駆動される。すなわち、エンジン16の始動に伴って機械式オイルポンプ42は駆動が開始され、エンジン16が停止すると機械式オイルポンプ42の駆動が停止する。
【0029】
電動式オイルポンプ44は、制御部80からの制御信号によりEOP駆動回路72によって駆動される。EOP駆動回路72には、低電圧電源74から直流電力が供給される。低電圧とは、高電圧電源32の電圧に比較して低電圧という意味で、例えば約12Vから16Vの電圧を用いることができる。電動式オイルポンプ44の駆動軸を回転させるモータとしては、三相同期型モータを用いることができる。この場合には、EOP駆動回路72は、直流交流変換機能を有するインバータを含んで構成される。また、インバータのPWM制御におけるオン・オフデューティを変更することによって、電動式オイルポンプ44の出力を可変にすることもできる。このように電動式オイルポンプ44は、低電圧電源74により駆動される。
【0030】
なお、電動式オイルポンプ44を駆動するモータとして、三相同期型モータの代わりに三相誘導型モータや単相交流モータを用いることもでき、あるいは直流モータを用いることもできる。電動式オイルポンプ44を駆動するモータの形式に応じて、EOP駆動回路72の内容が変更される。
【0031】
制御部80は、上記の各要素を全体として制御する機能を有するが、特にここでは、制御部80は、機械式オイルポンプ42及び電動式オイルポンプ44の一方を駆動する場合に他方を駆動しないように、オイルポンプ42,44の駆動を制御するオイルポンプ駆動制御部68を有する。すなわち、オイルポンプ駆動制御部68は、走行中にエンジン16を常に駆動させ、少なくともエンジン16の動力により駆動輪を駆動する「HV走行モード」と、走行中でもエンジン16を停止させ、高電圧電源32からの電力で駆動する第2モータジェネレータ20により駆動輪を駆動し、予め設定した条件の成立では低電圧電源74により電動式オイルポンプ44を駆動する「EV走行モード」とを選択的に切り換えることで、機械式オイルポンプ42及び電動式オイルポンプ44の一方を駆動する場合に他方を駆動しないように、オイルポンプ42,44の駆動を制御する。このような制御部80は、ハイブリッド車両搭載に適したコンピュータで構成することができる。このため、オイルポンプ駆動制御部68は、機械式オイルポンプ42及び電動式オイルポンプ44のうち、駆動するオイルポンプ42(または44)を選択して、機械式オイルポンプ42及び電動式オイルポンプ44のうち、選択された一方のオイルポンプ42(または44)から吐出された冷媒26を各モータジェネレータ20,21に供給して各モータジェネレータ20,21を冷却できる。
【0032】
また、制御部80はモータ出力算出部70を有し、電流センサ82により検出または算出された各相電流の検出値と、回転角センサ27により検出された第2モータジェネレータ20の回転角度の検出値等に基づく第2モータジェネレータ20の回転数の取得値とから、第2モータジェネレータ20の出力を算出する。なお、モータ出力算出部70は、第2モータジェネレータ20のトルク目標値と回転角度の検出値とから、第2モータジェネレータ20の出力を算出するように構成することもできる。
【0033】
図2は、
図1の回転電機冷却システムにおいて、機械式オイルポンプを駆動する場合に冷媒により回転電機を冷却する様子を示す概略図である。
図3は、
図1の回転電機冷却システムにおいて、電動式オイルポンプを駆動する場合に冷媒により回転電機を冷却する様子を示す概略図である。なお、
図2、
図3で冷媒循環路40で実線で示す部分は冷媒26が流れることを、破線で示す部分は冷媒26の流れが停止していることを示している。
図2に示すように、機械式オイルポンプ42が駆動される場合、電動式オイルポンプ44が停止し、機械式オイルポンプ42から吐出された冷媒により各モータジェネレータ20,21が冷却される。
【0034】
逆に、
図3に示すように、電動式オイルポンプ44が駆動される場合、機械式オイルポンプ42が停止し、電動式オイルポンプ44から吐出された冷媒により各モータジェネレータ20,21が冷却される。なお、
図2、
図3では、
図1の例の場合と異なり、ケース24の下部と各オイルポンプ42,44の吸入側とを互いに別の2つの第1冷媒路61で接続した例を示しているが、勿論、
図1のように1つの第1冷媒路60でケース24と各オイルポンプ42,44とを接続することもできる。逆に、
図1の例で
図2、
図3の例と同様に構成することもできる。また、
図2、
図3に示すように、第1冷媒路61の上流端部でケース24に接続する部分の周辺部にストレーナ86を設けることもできる。
【0035】
また、オイルポンプ駆動制御部68は、機械式オイルポンプ42及び電動式オイルポンプ44の冷媒吐出量を比較して機械式オイルポンプ42または電動式オイルポンプ44を「駆動側冷媒ポンプ」として決定し、「駆動側冷媒ポンプ」を駆動する。すなわち、各オイルポンプ42,44の冷媒吐出量の大小関係は、例えばエンジン回転数により変化する。
【0036】
図4は、本実施の形態において、機械式オイルポンプ(MOP)及び電動式オイルポンプ(EOP)の吐出油量とエンジン回転数との関係の1例を示す図である。
図4に示すように、電動式オイルポンプ44は駆動時に一定回転数で回転するため、ポンプ吐出油量も一定になり、エンジン回転数に影響されない。これに対して、機械式オイルポンプ42はエンジン16(
図1)で駆動されるのでエンジン16の回転数の上昇に応じてある値まで、ポンプ吐出油量も上昇する。このため、エンジン回転数のある閾値回転数NAを境に電動式オイルポンプ44と機械式オイルポンプ42とで吐出油量の大小関係が逆転する。すなわち、閾値回転数NA未満で機械式オイルポンプ42よりも電動式オイルポンプ44の吐出油量が大きくなり、閾値回転数NAを越えると電動式オイルポンプ44よりも機械式オイルポンプ42の吐出油量が大きくなる。このため、各オイルポンプ42,44の吐出油量を比較し、大きい吐出油量のオイルポンプ42(または44)を駆動することで冷媒吐出量を高くして各モータジェネレータ20,21に供給する冷媒量を多くでき、さらにオイルクーラ50を通過する冷媒量を多くすることで冷媒の温度を低下させることができる。したがって、各モータジェネレータ20,21の冷却性能の向上を図れる。なお、
図4で機械式オイルポンプ42の吐出油量がある上限値でエンジン回転数にかかわらず一定に推移しているのは、ある上限値で冷媒循環路40に接続されたリリーフバルブ(図示せず)を作動させ、部品の保護等を図るようにしているためである。
【0037】
本実施形態は、このような知見により発明されたものであって、
図5に示すようなフローチャートで示される制御方法により機械式オイルポンプ42及び電動式オイルポンプ44のいずれを駆動させるかを制御部80で決定する。
図5は、
図1の回転電機冷却システムにおいて、電動式オイルポンプ44を駆動するための初期条件が成立した場合に、電動式オイルポンプ44を駆動させるかまたは機械式オイルポンプ42を駆動させるかを決定する方法を示すフローチャートである。
【0038】
なお、
図5のフローチャートでは、電動式オイルポンプ44を駆動する、すなわちEV走行で、かつ、電動式オイルポンプ44を駆動するポンプ駆動モードに移行させるための初期条件、例えば高電圧電源の充電量であるSOC(State Of Charge)が予め設定した所定量以上であり、予め設定した走行条件が成立する等の初期条件が成立したことを前提とし、初期条件が成立したらステップS10(以下、ステップSは単にSという。)に移行する。
図5のフローチャートで機械式オイルポンプ42を駆動することが決定されると、強制的にHV走行に移行、またはHV走行を維持し、エンジン16により機械式オイルポンプ42を駆動する。以下のフローチャートの実行はオイルポンプ駆動制御部68で行われる。
【0039】
まず、
図5のS10で、温度センサ28で検出された冷媒温度である、ATF温度が予め定めた閾値温度TA以上であると判定された場合に、予め設定した所定条件が成立したと決定し、S12に移行する。これに対して、S10でATF温度が閾値温度TA未満である場合には、S14に移行し、HV走行モードを実行し機械式オイルポンプ42を駆動するか、またはEV走行モードの電動式オイルポンプ44を駆動しないポンプ駆動なしモードを実行する。これらのいずれのモードを実行するかは、予め設定した条件に応じて決定する。
【0040】
すなわち、電動式オイルポンプ44を駆動するためには少なくともATF温度が閾値温度TA以上であることが要求され、ATF温度が低い場合に電動式オイルポンプ44の駆動により冷媒が過度に温度低下することが阻止される。
【0041】
また、S12では、回転数センサ84により検出されたエンジン16の回転数が予め定めた閾値回転数NA以下であるか否かを判定する。そしてエンジン回転数が閾値回転数NA以下では、S16、S20のように、車速センサ29で検出された車速が閾値速度VA以下であることと、制御部80のモータ出力算出部70で取得された第2モータジェネレータ20の出力が閾値出力RA以下であることとの少なくとも一方が成立した場合に、S18で電動式オイルポンプ44を「駆動側オイルポンプ」として決定し、EV走行モードのポンプ駆動モードを実行する。これにより、電動式オイルポンプ44が駆動側オイルポンプとして駆動される。
【0042】
上記の
図4のようにエンジン回転数が低い場合には電動式オイルポンプ44の吐出油量が機械式オイルポンプ42の吐出油量よりも高い。これに対して、HV走行モード時にS12で肯定の判定結果が得られた場合にS16,S20を介さずにEV走行の電動式オイルポンプ44を駆動するポンプ駆動モードを実行させることもできる。ただし、S12の判定の実行時にEV走行モードにある場合もあり、この場合、エンジン16が駆動停止されているので、EV走行モードを変更できない可能性がある。
【0043】
これに対して、
図5のフローチャートのように、S12の判定結果が肯定である場合でも、車速と第2モータジェネレータ20の出力との少なくとも一方を考慮に入れることで、場合によりHV走行モードに移行させることができる。なお、S20で第2モータジェネレータ20の出力が閾値出力RA以下であることを条件とするのは、EV走行モードの実行時でも、
図4のエンジン回転数に対応する第2モータジェネレータ20の出力で機械式オイルポンプ42と電動式オイルポンプ44とのいずれを駆動するかを決定できるようにするためである。また、S16で車速が閾値速度VAを超えて、かつ、第2モータジェネレータ20の出力が閾値出力RAを越える場合にはS22でHV走行モードに移行し、機械式オイルポンプ42を駆動側オイルポンプとして駆動する。
【0044】
これに対して、S12で回転数センサ84により検出されたエンジン16の回転数が予め定めた閾値回転数NAを越えている場合、エンジン16が駆動されており、かつ、その回転数が高いので、機械式オイルポンプ42の吐出油量が電動式オイルポンプ44の吐出油量よりも高いと判断し、S22でHV走行モードに移行し、機械式オイルポンプ42を駆動側オイルポンプとして駆動する。
【0045】
このようにオイルポンプ駆動制御部68は、予め設定した所定条件の成立を前提として、機械式オイルポンプ42及び電動式オイルポンプ44の冷媒吐出量を比較して冷媒吐出量の大きい方のオイルポンプ42(または44)を、駆動側オイルポンプとして駆動する。より具体的には、オイルポンプ駆動制御部68は、予め設定した所定条件の成立を前提として、回転数センサ84により検出されたエンジン16の回転数に応じて、すなわちエンジン16の回転数が予め定めた閾値回転数NA以下であるか否かにより、冷媒吐出量の大きい方のオイルポンプ42(または44)を、駆動側オイルポンプとして駆動する。このような制御部80の少なくとも一部の機能は、ソフトウェアを実行することで実現できる。
【0046】
このような回転電機冷却システム10によれば、冷媒吐出量を比較して機械式オイルポンプ42または電動式オイルポンプ44を駆動側オイルポンプとして駆動するので、電動式オイルポンプ44及び機械式オイルポンプ42の吐出量の大小関係の変化にかかわらず、オイルクーラ50を通過する冷媒量及びケース24内に供給される冷媒量をいずれも高くでき、各モータジェネレータ20,21の冷却性能を高くできる。
【0047】
また、オイルポンプ駆動制御部68は、予め設定した所定条件の成立を前提として、機械式オイルポンプ42及び電動式オイルポンプ44の冷媒吐出量を比較して冷媒吐出量の大きい方のオイルポンプ42(または44)を、駆動側オイルポンプとして駆動し、しかも、エンジン16の回転数を検出する回転数センサ84を備え、オイルポンプ駆動制御部68は、予め設定した所定条件の成立を前提として、回転数センサ84により検出されたエンジンの回転数に応じて、冷媒吐出量の大きい方のオイルポンプ42(または44)を駆動側オイルポンプとして駆動する。このため、エンジン16の回転数が低い場合でも冷媒吐出量の大きいオイルポンプ42(または44)の駆動により各モータジェネレータ20,21の冷却性能をより高くできる。
【0048】
なお、本実施形態では、冷媒循環路40にオイルクーラ50を設けた場合を説明したが、ケース24の下部等、他の部分で冷媒を十分に冷却できればオイルクーラを省略することもできる。また、本実施形態では、エンジン回転数が閾値回転数NA以上で電動式オイルポンプ44の吐出量が機械式オイルポンプ42の吐出量よりも低くなる場合を説明した。ただし、エンジン回転数が閾値回転数NA以上で電動式オイルポンプ44の吐出量が機械式オイルポンプ42の吐出量よりも高くなる構成を採用することもできる。本発明は、このような構成でも実施できる。