特許第5885311号(P5885311)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5885311
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】ヒストンデアセチラーゼの阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 207/12 20060101AFI20160301BHJP
   C07D 207/14 20060101ALI20160301BHJP
   C07D 401/04 20060101ALI20160301BHJP
   C07D 405/12 20060101ALI20160301BHJP
   A61K 31/402 20060101ALI20160301BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20160301BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20160301BHJP
   A61K 31/4025 20060101ALI20160301BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160301BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
   C07D207/12CSP
   C07D207/14
   C07D401/04
   C07D405/12
   A61K31/402
   A61K31/5377
   A61K31/4439
   A61K31/4025
   A61P43/00 111
   A61P43/00 105
   A61P35/00
【請求項の数】33
【全頁数】87
(21)【出願番号】特願2014-24898(P2014-24898)
(22)【出願日】2014年2月12日
(62)【分割の表示】特願2009-552982(P2009-552982)の分割
【原出願日】2008年3月12日
(65)【公開番号】特開2014-159417(P2014-159417A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2014年2月12日
(31)【優先権主張番号】60/906,733
(32)【優先日】2007年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/043,450
(32)【優先日】2008年3月6日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】311000498
【氏名又は名称】メチルジーン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フレシェット、シルヴィー
(72)【発明者】
【氏名】イサコヴィッチ、ルボ
(72)【発明者】
【氏名】パキン、イザベル
(72)【発明者】
【氏名】ロイ、シモン
(72)【発明者】
【氏名】モラディー、オスカー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイスバーグ、アルカジー
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/092899(WO,A1)
【文献】 特表2005−530748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D207/00−207/50
C07D401/00−421/14
A61K 31/33− 33/44
A61P 1/00− 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

の化合物、又はそのN−オキシド、水和物、溶媒和物若しくは薬学的に許容される塩、又はそれらのラセミ若しくはスカレミック混合物、ジアステレオマー、エナンチオマー若しくは互変異性体
[式中、
Tは、NHであり、
Aは、任意選択で置換されたアリーレンであり、及び
Xは、
【化2】

(式中、
Y=N又はCHであり、
=0〜4であり、及び、
は、R13−C(O)−、R13−C(S)−、R−N(R)−、R−O−、R10−S−、R13−S(O)1−2−、R−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−S−、R15−S−C(O)−、R11−C(O)−N(R)−、R13−N(R)−C(O)−、R15−C(S)−O−、R15−O−C(S)−、R15−C(S)−S−、R15−S−C(S)−、R15−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−、R15−O−C(O)−S−、R15−S−C(O)−O−、R12−O−C(O)−N(R)−、R−N(R)−C(O)−O−、R15−O−C(S)−S−、R15−S−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−S−C(O)−S−、R15−S−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−S−、R15−S−C(S)−S−、R15−N(R)−C(S)−S−、R15−S−C(S)−N(R)−、R−NH−C(N(R))−NH−、R−S(O)0−2−N(R)−又はR15−N(R)−S(O)0−2−N(R)−である)
であり、
各Rは、独立に、H−、(C〜Cアルキル)−、Hca−(C〜Cアルキル)−、Cak−(C〜Cアルキル)−、R14−CO−、R14−SO−、R14−CO−NH−及びR14−CO−O−からなる群から独立に選択され、各アルキルは任意選択で置換されており、
各Rは、独立に、H−、任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−又はCak−(C〜Cヒドロカルビル)−であり、
各Rは、独立に、H−、置換(C〜Cヒドロカルビル)−(ただし、(C〜Cヒドロカルビル)が1つの置換基のみを有する場合、置換基はハロ又はアミノではない)、Hca−(C〜C又はC〜Cヒドロカルビル)−又はCak−(C〜Cヒドロカルビル)−であり、
各Rは、独立に、H、任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜C又はC〜Cヒドロカルビル)−又はCak−(C〜Cヒドロカルビル)−であり、
各Rは、独立に、任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−又はCak−(C〜Cヒドロカルビル)−であり、ただし、Rは、2−(モルホリン−4−イル)エチルではない、
各R10は、独立に、H−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−又はCak−(C〜Cヒドロカルビル)−であり、
各R11は、独立に、H−、(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−又はCak−(C〜Cヒドロカルビル)−であり、
各R12は、独立に、任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−又はCak−(C〜Cヒドロカルビル)−であり、
各R13は、独立に、H−、任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−又はCak−(C〜Cヒドロカルビル)−であり、
各R15は、独立に、H−、任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−又はCak−(C〜Cヒドロカルビル)−であり、
任意の(C〜Cヒドロカルビル)−部分は、任意選択で置換されており、各Hcaは、独立に、任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルであり、各Cakは、独立に、任意選択で置換されたシクロアルキルである]。
【請求項2】
Aが、非置換若しくは任意選択で置換されたフェニレンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aが、6員環であり、X−及びカルボニル部分が、前記環上で互いに1,4−様式で配置されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Aが、非置換フェニレンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Xが、
【化3】

である、請求項1に記載の化合物
(式中、
=0〜4であり、
は、R13−C(O)−、R13−C(S)−、R−N(R)−、R−O−、R10−S−、R13−S(O)1−2−、R−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−S−、R15−S−C(O)−、R11−C(O)−N(R)−、R13−N(R)−C(O)−、R15−C(S)−O−、R15−O−C(S)−、R15−C(S)−S−、R15−S−C(S)−、R15−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−、R15−O−C(O)−S−、R15−S−C(O)−O−、R12−O−C(O)−N(R)−、R−N(R)−C(O)−O−、R15−O−C(S)−S−、R15−S−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−S−C(O)−S−、R15−S−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−S−、R15−S−C(S)−S−、R15−N(R)−C(S)−S−、R15−S−C(S)−N(R)−、R−NH−C(N(R))−NH−、R−S(O)0−2−N(R)−又はR15−N(R)−S(O)0−2−N(R)−である)。
【請求項6】
が、R−C(O)−O−、R12−O−C(O)−N(R)−、R11−C(O)−N(R)−、R15−C(S)−N(R)−、R15−S−C(O)−N(R)−、R−N(R)−C(O)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−S−C(S)−N(R)−、R−N(R)−C(S)−O−、R−O−C(S)−N(R)−又はR−S(O)0〜2−N(R)−である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
が、R−C(O)−O−、R12−O−C(O)−N(R)−、R11−C(O)−N(R)−、R−N(R)−C(O)−O−、R−N(R)−C(S)−O−、R−O−C(S)−N(R)−、R−O−又はR−N(R)−である、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
が、R12−O−C(O)−N(R)−である、請求項5に記載の化合物。
【請求項9】
が、(C〜Cヒドロカルビル)−O−C(O)−N(R)−であり、(C〜Cヒドロカルビル)が任意選択で置換されている、請求項5に記載の化合物。
【請求項10】
が、R16−O−C(O)−N(R)−(式中、R16は、任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−、任意選択で置換されたHca−(C〜Cヒドロカルビル)−又は任意選択で置換されたCak−(C〜Cヒドロカルビル)−である)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
=1である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
が結合している炭素において(S)−立体化学配置を有する、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
Aが、フェニレンであり、
Xが、
【化4】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
Aが、フェニレンであり、
Xが、
【化5】

である、請求項1に記載の化合物
(式中、
=1であり、
は、R−N(R)−、R−O−、R11−C(O)−N(R)−、R15−C(S)−N(R)−、R12−O−C(O)−N(R)−、R−N(R)−C(O)−O−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−又はR−S(O)0〜2−N(R)−である)。
【請求項15】
Aが、フェニレンであり、
Xが、
【化6】

である、請求項1に記載の化合物
(式中、
=1であり、
は、R−N(R)−、R−O−、R11−C(O)−N(R)−、R15−C(S)−N(R)−、R12−O−C(O)−N(R)−、R−N(R)−C(O)−O−、R15−N(R)−C(S)−O−、又はR15−O−C(S)−N(R)−である、
は、H−又は任意選択で置換された(C〜Cアルキル)−であり、
は、H−であり、
は、H−又は任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−であり、
は、任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−であり、
11は、任意選択で置換されたHca−(C〜Cヒドロカルビル)−又は任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−であり、
12は、(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−又はCak−(C〜Cヒドロカルビル)−(それらの各々は任意選択で置換されている)であり、
15は、任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−又は任意選択で置換されたHca−(C〜Cヒドロカルビル)−である)。
【請求項16】
Aが、フェニレンであり、
Xが、
【化7】

である、請求項1に記載の化合物
(式中、
=1であり、
は、R−N(R)−、R11−C(O)−N(R)−又はR12−O−C(O)−N(R)−である)。
【請求項17】
Aが、フェニレンであり、
Xが、
【化8】

である、請求項1に記載の化合物
(式中、
=1であり、
は、R−N(R)−、R11−C(O)−N(R)−又はR12−O−C(O)−N(R)−であり、
は、H−又は任意選択で置換された(C〜Cアルキル)−であり、
は、H−又は任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−であり、
11は、任意選択で置換されたHca−(C〜Cヒドロカルビル)−又は任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−であり、
12は、それらの各々は任意選択で置換されている(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−又はCak−(C〜Cヒドロカルビル)−である)。
【請求項18】
Aが、フェニレンであり、
Xが、
【化9】

である、請求項1に記載の化合物
(式中、
=1であり、
は、R12−O−C(O)−N(R)−であり、
は、H−であり、
12は、それらの各々は任意選択で置換されている(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−又はCak−(C〜Cヒドロカルビル)−である)。
【請求項19】
Aが、フェニレンであり、
Xが、
【化10】

である、請求項1に記載の化合物
(式中、
=1であり、
は、R12−O−C(O)−N(R)−であり、
は、H−であり、
12は、それらの各々は、アルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジ−アルキルアミノ、アルコキシ、−CF及びハロからなる群から選択される置換基で任意選択で置換されている(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−又はCak−(C〜Cヒドロカルビル)−である)。
【請求項20】
Aが、フェニレンであり、
Xが、
【化11】

である、請求項1に記載の化合物
(式中、
=1であり、
は、R12−O−C(O)−N(R)−であり、
は、H−であり、
12は、アルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジ−アルキルアミノ、アルコキシ、−CF及びハロからなる群から選択される置換基で任意選択で置換されている(C〜Cヒドロカルビル)−である)。
【請求項21】
【表1-1】

【表1-2】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
(S)−エチル1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート(化合物121)
【化12】

若しくは
(S)−2−メトキシエチル−1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート(化合物129)
【化13】

又は前出のいずれかの薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項23】
S)−イソプロピル1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート;
(S)−シクロプロピルメチル1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート;
(S)−テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート、若しくは
(R)−N−(2−アミノフェニル)−4−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)ベンズアミド、
又はこれらの薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の化合物と、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤とを含む、医薬組成物。
【請求項25】
前記化合物が、少なくとも30%のエナンチオマー又はジアステレオマー過剰率で存在する、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記化合物が、少なくとも50%のエナンチオマー又はジアステレオマー過剰率で存在する、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記化合物が、少なくとも80%のエナンチオマー又はジアステレオマー過剰率で存在する、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記化合物が、少なくとも90%のエナンチオマー又はジアステレオマー過剰率で存在する、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項29】
実質的にラセミ混合物として存在する請求項1〜23のいずれか一項に記載の化合物と、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤とを含む、医薬組成物。
【請求項30】
in vitroで又はヒトではない動物中で細胞においてヒストンデアセチラーゼを阻害する方法であって、前記細胞を請求項1に記載の1種若しくは複数の化合物又はその組成物と接触させるステップを含む、上記方法。
【請求項31】
ヒトを含まない動物に治療有効量の請求項1に記載の1種若しくは複数の化合物又はその組成物を投与するステップを含む、このような治療を必要としている動物において細胞増殖性疾患又は状態を治療する方法。
【請求項32】
細胞においてヒストンデアセチラーゼを阻害するための、請求項1〜23のいずれか一項に記載の化合物又は請求項24〜29のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
動物において細胞増殖性疾患又は状態を治療するための、請求項1〜23のいずれか一項に記載の化合物又は請求項24〜29のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年3月13日に出願した米国特許仮出願第60/906,733号及び2008年3月6日に出願した米国特許非仮出願第12/043,450号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、一般にヒストンデアセチラーゼの阻害剤に関する。本発明はより具体的には、N−(2−アミノ−及びヒドロキシフェニル)アミド化合物及びその医薬組成物、並びにヒストンデアセチラーゼの阻害におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
真核細胞において、核DNAは、ヒストンと会合して、クロマチンと称されるコンパクトな複合体を形成する。ヒストンは、真核生物種に亘って一般に高度に保存されている塩基性タンパク質のファミリーを構成する。H2A、H2B、H3、及びH4と称されるコアヒストンは会合し、タンパク質コアを形成する。DNAはこのタンパク質コアに巻きつき、ヒストンの塩基性アミノ酸はDNAの負に帯電しているリン酸基と相互に作用する。約146塩基対のDNAがヒストンコアに巻きつき、クロマチンの繰り返し構造モチーフであるヌクレオソーム粒子を形成する。
【0004】
Csordas、Biochem.J.、265:23〜38(1990)は、ヒストンが、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT1)によって触媒される反応である、N−末端リシン残基のε−アミノ基の翻訳後アセチル化を受けると教示している。アセチル化は、リシン側鎖の正の電荷を中和し、クロマチン構造に影響を与えると考えられる。実際に、Tauntonら、Science、272:408〜411(1996)は、クロマチン鋳型への転写因子のアクセスが、ヒストンの過剰アセチル化によって増強されることを教示している。Tauntonらは、低アセチル化ヒストンH4における濃縮がゲノムの転写的にサイレントな領域において見出されたことをさらに教示している。
【0005】
ヒストンアセチル化は、可逆的修飾であり、脱アセチル化はヒストンデアセチラーゼ(HDAC)と称される酵素のファミリーによって触媒される。HDAC活性を有するタンパク質をコードする遺伝子配列の分子クローニングによって、一組の別個のHDAC酵素アイソフォームの存在が確立された。Grozingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、96:4868〜4873(1999)は、HDACが2つのクラス(第1のクラスは、酵母Rpd3様タンパク質によって代表され、第2のクラスは酵母Hd1様タンパク質によって代表される)に分けることができることを教示している。Grozingerらはまた、ヒトHDAC−1、HDAC−2、及びHDAC−3タンパク質がHDACの第1のクラスのメンバーであることを教示しており、HDACの第2のクラスのメンバーであるHDAC−4、HDAC−5、及びHDAC−6と称される新規なタンパク質を開示している。Kaoら、Gene & Development14:55〜66(2000)は、HDAC−7と称されるこの第2のクラスのさらなるメンバーを開示している。より最近では、Hu,E.ら、J.Bio.Chem.275:15254〜13264(2000)は、ヒストンデアセチラーゼの第1のクラスの最も新規なメンバーであるHDAC−8を開示している。Zhouら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、98:10572〜10577(2001)は、新規なヒストンデアセチラーゼであるHDAC−9のクローニング及び特性決定を教示している。Kaoら、J.Biol.Chem.、277:187〜93(2002)は、新規なヒストンデアセチラーゼである哺乳動物のHDAC−10の単離及び特性決定を教示している。Gaoら、J.Biol.Chem.277(28):25748〜55(2002)は、ヒトヒストンデアセチラーゼファミリーの新規なメンバーであるHDAC−11のクローニング及び機能的特性決定を教示している。Shore、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、97:14030〜2(2000)は、デアセチラーゼ活性の他のクラスであるSir2タンパク質ファミリーを開示している。これらの個々のHDAC酵素が果たしている役割は不明確であった。
【0006】
公知のHDAC阻害剤を用いた研究により、アセチル化と遺伝子発現との間の関連が確立された。Tauntonら、Science、272:408〜411(1996)は、酵母の転写制御因子と関連するヒトHDACを開示している。Cressら、J.Cell.Phys.、184:1〜16(2000)は、ヒト癌との関連で、HDACの役割を転写コリプレッサーとして開示している。Ngら、TIBS、25(3月):121〜26(2000)は、HDACを転写抑制因子系の広範囲な特徴として開示している。Magnaghi−Jaulinら、Prog.Cell Cycle Res.、4:41〜47(2000)は、細胞周期進行のために重要な転写コレギュレーターとしてHDACを開示している。
【0007】
Richonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95:3003〜3007(1998)は、HDAC活性が、ストレプトマイセスハイグロスコピカスから単離された天然物であるトリコスタチンA(TSA)(ヒストンデアセチラーゼ活性を阻害し、G1及びG2期において細胞における細胞周期進行を停止することが示されてきた)によって(Yoshidaら、J.Biol.Chem.、265:17174〜17179(1990);Yoshidaら、Exp.Cell Res.、177:122〜131(1988)、並びに合成化合物であるスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)によって阻害されることを開示している。Yoshida及びBeppu、Exper.Cell Res.、177:122〜131(1988)は、TSAが細胞周期のG及びG期におけるラット線維芽細胞の停止をもたらすことを教示しており、細胞周期調節におけるHDACについて関係付けている。実際に、Finninら、Nature、401:188〜193(1999)は、TSA及びSAHAが細胞増殖を阻害し、最終分化を誘導し、マウスにおいて腫瘍の形成を防止することを教示している。Suzukiら、米国特許第6,174,905号、EP0847992、及びJP258863/96は、細胞分化を誘導し、HDACを阻害するベンズアミド誘導体を開示している。とりわけ、WO03/087057、WO03/092686、WO03/024448、WO2004/069823、WO00/71703、WO01/38322、WO01/70675、WO2004/035525、WO2005/030705、及びWO2005/092899は、HDAC阻害剤としての機能を果たすさらなる化合物を開示している。トラポキシン、デプデシン、FR901228(藤沢薬品工業)、及びブチレートを含めた、ヒストンデアセチラーゼ活性の他の阻害剤は、細胞において細胞周期進行を同様に阻害することが見出された(Tauntonら、Science272:408〜411、(1996);Kijimaら、J.Biol.Chem.、268(30):22429〜22435(1993);Kwonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA95(7):3356〜61(1998))。
【0008】
これらの知見は、HDAC活性の阻害が細胞周期調節に介入する新規なアプローチであり、HDAC阻害剤が細胞増殖性疾患又は状態の治療において大きな治療上の可能性を有することを示唆している。したがって、さらなるHDAC阻害剤を同定し、強力なHDAC阻害活性のために必要な構造的特徴を同定することが求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、式(1)
【化1】

の化合物、又はそのN−オキシド、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、複合体若しくはプロドラッグ、並びにそのラセミ若しくはスカレミック混合物、ジアステレオマー、エナンチオマー又は互変異性体に関し、
式中、
Tは、NH又はOHであり、
Aは、アリーレン、ヘテロアリーレン、シクロアルキレン及びヘテロシクリレン(それらの各々は任意選択で置換されている)からなる群から選択され、
Xは、
【化2】

(式中、
Y=N又はCHであり、
=0〜4であり、
は、R−、R13−C(O)−、R13−C(S)−、R−N(R)−、R−O−、R10−S−、R13−S(O)1−2、R−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−S−、R15−S−C(O)−、R11−C(O)−N(R)−、R13−N(R)−C(O)−、R15−C(S)−O−、R15−O−C(S)−、R15−C(S)−S−、R15−S−C(S)−、R15−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−、R−O−C(O)−O−、R15−O−C(O)−S−、R15−S−C(O)−O−、R12−O−C(O)−N(R)−、R−N(R)−C(O)−O−、R−O−C(S)−O−、R15−O−C(S)−S−、R15−S−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−S−C(O)−S−、R15−S−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−S−、R15−S−C(S)−S−、R−N(R)−C(O)−N(R)−、R−N(R)−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−S−、R15−S−C(S)−N(R)−、R−NH−C(N(R))−NH−、R−S(O)0−2−N(R)−、R−N(R)−S(O)0−2−及びR15−N(R)−S(O)0−2−N(R)−からなる群から選択され、
ただし、nが、1又は2であり、Zが、R−、R13−C(O)−、R−N(R)−、R−O−、R10−S−、R13−S(O)1〜2−、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R11−C(O)−N(R)−、R13−N(R)−C(O)−、R12−O−C(O)−N(R)−、R−N(R)−C(O)−O−、R−S(O)−N(R)−又はR−N(R)−S(O)−である場合、Aは、チエニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジル、トリアジニル又はテトラジニルではない)、
【化3】

(式中、
Y=N又はCHであり、
=0又は2〜4であり、
は、R15−、R15−C(O)−、R15−C(S)−、R15−N(R)−、R15−O−、R15−S−、R15−S(O)1−2−、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−S−、R15−S−C(O)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−、R15−C(S)−O−、R15−O−C(S)−、R15−C(S)−S−、R15−S−C(S)−、R15−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−、R15−O−C(O)−O−、R15−O−C(O)−S−、R15−S−C(O)−O−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−O−C(S)−O−、R15−O−C(S)−S−、R15−S−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−S−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−S−、R15−S−C(O)−S−、R15−S−C(S)−S−、R15−N(R)−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−S−、R15−S−C(S)−N(R)−、R15−NH−C(N(R))−NH−、R15−S(O)0−2−N(R)−、R15−N(R)−S(O)0−2−及びR15−N(R)−S(O)0−2−N(R)−からなる群から選択され、
ただし、nが、2であり、Zが、R15−、R15−C(O)−、R15−N(R)−、R15−O−、R15−S−、R15−S(O)1〜2、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−S(O)−N(R)−又はR15−N(R)−S(O)−である場合、Aは、チエニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジル、トリアジニル又はテトラジニルではない)、
【化4】

(式中、
=0〜4であり、
は、R15−、R15−C(O)−、R15−C(S)−、R15−N(R)−、R15−O−、R15−S−R15−S(O)1−2、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−S−、R15−S−C(O)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−、R15−C(S)−O−、R15−O−C(S)−、R15−C(S)−S−、R15−S−C(S)−、R15−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−、R15−O−C(O)−O−、R15−O−C(O)−S−、R15−S−C(O)−O−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−O−C(S)−O−、R15−O−C(S)−S−、R15−S−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−S−C(O)−S−、R15−S−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−S−、R15−S−C(S)−S−、R15−N(R)−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−S−、R15−S−C(S)−N(R)−、R15−NH−C(N(R))−NH−、R15−S(O)0−2−N(R)−、R15−N(R)−S(O)0−2−及びR15−N(R)−S(O)0−2−N(R)−からなる群から選択され、
ただし、nが、2であり、Zが、R15−、R15−C(O)−、R15−N(R)−、R15−O−、R15−S−、R15−S(O)1〜2、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−S(O)−N(R)−又はR15−N(R)−S(O)−である場合、Aは、フェニル、チエニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジル、トリアジニル又はテトラジニルではない)、
【化5】

(式中、
=0、2、3又は4であり、
は、R15−、R15−C(O)−、R15−C(S)−、R15−N(R)−、R15−O−、R15−S−R15−S(O)1−2、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−S−、R15−S−C(O)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−、R15−C(S)−O−、R15−O−C(S)−、R15−C(S)−S−、R15−S−C(S)−、R15−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−、R15−O−C(O)−O−、R15−O−C(O)−S−、R15−S−C(O)−O−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−O−C(S)−O−、R15−O−C(S)−S−、R15−S−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−S−C(O)−S−、R15−S−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−S−、R15−S−C(S)−S−、R15−N(R)−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−S−、R15−S−C(S)−N(R)−、R15−NH−C(N(R))−NH−、R15−S(O)0−2−N(R)−、R15−N(R)−S(O)0−2−及びR15−N(R)−S(O)0−2−N(R)−からなる群から選択され、
ただし、nが、2であり、Zが、R15−、R15−C(O)−、R15−N(R)−、R15−O−、R15−S−、R15−S(O)1〜2、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−S(O)−N(R)−又はR15−N(R)−S(O)−である場合、Aは、フェニル、チエニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジル、トリアジニル又はテトラジニルではない)、
【化6】

(式中、
=1〜4であり、
=1〜4であり、
=1〜4であり、
は、R15−、R15−C(O)−、R15−C(S)−、R15−N(R)−、R15−O−、R15−S−、R15−S(O)1−2、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−S−、R15−S−C(O)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−、R15−C(S)−O−、R15−O−C(S)−、R15−C(S)−S−、R15−S−C(S)−、R15−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−、R15−O−C(O)−O−、R15−O−C(O)−S−、R15−S−C(O)−O−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−O−C(S)−O−、R15−O−C(S)−S−、R15−S−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−S−C(O)−S−、R15−S−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−S−、R15−S−C(S)−S−、R15−N(R)−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−S−、R15−S−C(S)−N(R)−、R15−NH−C(N(R))−NH−、R15−S(O)0−2−N(R)−、R15−N(R)−S(O)0−2−及びR15−N(R)−S(O)0−2−N(R)−からなる群から選択され、
は、R15−、R15−C(O)−、R15−C(S)−、R15−N(R)−、R15−O−、R15−S−、R15−S(O)1−2、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−S−、R15−S−C(O)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−、R15−C(S)−O−、R15−O−C(S)−、R15−C(S)−S−、R15−S−C(S)−、R15−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−、R15−O−C(O)−O−、R15−O−C(O)−S−、R15−S−C(O)−O−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−O−C(S)−O−、R15−O−C(S)−S−、R15−S−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−S−C(O)−S−、R15−S−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−S−、R15−S−C(S)−S−、R15−N(R)−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−S−、R15−S−C(S)−N(R)−、R15−NH−C(N(R))−NH−、R15−S(O)0−2−N(R)−、R15−N(R)−S(O)0−2−及びR15−N(R)−S(O)0−2−N(R)−;及び
からなる群から選択され、
は、R15−、R15−C(O)−、R15−C(S)−、
15−N(R)−、R15−O−、R15−S−、R15−S(O)1−2、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−S−、R15−S−C(O)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−、R15−C(S)−O−、R15−O−C(S)−、R15−C(S)−S−、R15−S−C(S)−、R15−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−、R15−O−C(O)−O−、R15−O−C(O)−S−、R15−S−C(O)−O−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−O−C(S)−O−、R15−O−C(S)−S−、R15−S−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−S−C(O)−S−、R15−S−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−S−、R15−S−C(S)−S−、R15−N(R)−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−S−、R15−S−C(S)−N(R)−、R15−NH−C(N(R))−NH−、R15−S(O)0−2−N(R)−、R15−N(R)−S(O)0−2−及びR15−N(R)−S(O)0−2−N(R)−;又は
からなる群から選択される)、
【化7】

(式中、
は、R15−、R15−C(O)−、R15−C(S)−、R15−N(R)−、R15−O−、R15−S−、R15−S(O)1−2、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−S−、R15−S−C(O)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−、R15−C(S)−O−、R15−O−C(S)−、R15−C(S)−S−、R15−S−C(S)−、R15−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−、R15−O−C(O)−O−、R15−O−C(O)−S−、R15−S−C(O)−O−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−O−C(S)−O−、R15−O−C(S)−S−、R15−S−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−S−C(O)−S−、R15−S−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−S−、R15−S−C(S)−S−、R15−N(R)−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−S−、R15−S−C(S)−N(R)−、R15−NH−C(N(R))−NH−、R15−S(O)0−2−N(R)−、R15−N(R)−S(O)0−2−及びR15−N(R)−S(O)0−2−N(R)−からなる群から選択され、
ただし、Zが、R15−、R15−C(O)−、R15−N(R)−、R15−O−、R15−S−、R15−S(O)1〜2、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−S(O)−N(R)−又はR15−N(R)−S(O)−である場合、Aは、フェニル、チエニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジル、トリアジニル又はテトラジニルではない)
であり、
各Rは、水素、(C〜Cアルキル)−、Ar−(C〜Cアルキル)−、Het−(C〜Cアルキル)−、Hca−(C〜Cアルキル)−、Cak−(C〜Cアルキル)−、R14−CO−、R14−SO2−、R14−CO−NH−及びR14−CO−O−からなる群から独立に選択され、各アルキルは任意選択で置換されており、
各Rは、H−、任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−、Ar−(C〜Cヒドロカルビル)−、Het−(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−及びCak−(C〜Cヒドロカルビル)−からなる群から独立に選択され、
各Rは、H−、置換(C〜Cヒドロカルビル)−(ただし、(C〜Cヒドロカルビル)が1つの置換基のみを有する場合、置換基はハロ又はアミノではない)、Hca−(C〜C又はC〜Cヒドロカルビル)−及びCak−(C〜Cヒドロカルビル)−からなる群から独立に選択され、
各Rは、H、任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜C又はC〜Cヒドロカルビル)−及びCak−(C〜Cヒドロカルビル)−からなる群から独立に選択され、
各Rは、任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−、Ar−(C〜Cヒドロカルビル)−、Het−(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−及びCak−(C〜Cヒドロカルビル)−からなる群から独立に選択され、ただし、Rは、2(モルホリン−4−イル)エチルではない、
各Rは、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−及びCak−(C〜Cヒドロカルビル)−からなる群から独立に選択され、
各R10は、H−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−及びCak−(C〜Cヒドロカルビル)−からなる群から独立に選択され、
各R11は、H−、(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−及びCak−(C〜Cヒドロカルビル)−からなる群から独立に選択され、
各R12は、任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−、Ar−(C〜Cヒドロカルビル)−、Het−(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−、Cak−(C〜Cヒドロカルビル)−からなる群から独立に選択され、
各R13は、H−、任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−及びCak−(C〜Cヒドロカルビル)−からなる群から独立に選択され、
各R14は、Ar−及び任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−からなる群から独立に選択され、
各R15は、H−、任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−、Ar−(C〜Cヒドロカルビル)−、Het−(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−及びCak−(C〜Cヒドロカルビル)−からなる群から独立に選択され、
任意の(C〜Cヒドロカルビル)−部分は、任意選択で置換されており、各Arは、独立に、任意選択で置換されたアリールであり、各Hetは、独立に、任意選択で置換されたヘテロアリールであり、各Hcaは、独立に、任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルであり、各Cakは、独立に、任意選択で置換されたシクロアルキルである。
【0010】
本明細書において式(I)の化合物(すなわち、第1の態様による化合物、又は本発明による化合物など)への言及は、別段の指示がない限り、そのN−オキシド、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、プロドラッグ及び複合体、並びにそのラセミ及びスカレミック混合物、ジアステレオマー、エナンチオマー及び互変異性体への参照を含むことが理解される。
【0011】
本発明による化合物の好ましい実施形態では、ヒドロカルビルはアルキルである。
【0012】
本発明による化合物の好ましい実施形態では、C〜Cヒドロカルビルは、アミノ、アルキルアミノ、ジ−アルキルアミノ、アルコキシ及びハロからなる群から選択される部分で置換されている。
【0013】
本発明の他の態様は、式(1)による化合物、又はそのN−オキシド、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、複合体若しくはプロドラッグ、又はそのラセミ混合物、ジアステレオマー、エナンチオマー若しくは互変異性体と、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤とを含む医薬組成物に関する。
【0014】
本発明の他の態様は、細胞を、1種又は複数の式(1)の化合物、又はそのN−オキシド、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、複合体若しくはプロドラッグ、又はそのラセミ混合物、ジアステレオマー、エナンチオマー若しくは互変異性体と接触させるステップを含む、好ましくは細胞においてヒストンデアセチラーゼを阻害する方法に関する。
【0015】
本発明の他の態様は、動物に、治療有効量の1種又は複数の式(1)の化合物、又はそのN−オキシド、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、複合体若しくはプロドラッグ、又はそのラセミ混合物、ジアステレオマー、エナンチオマー若しくは互変異性体を投与するステップを含む、このような治療を必要としている動物において細胞増殖性疾患又は状態を治療する方法に関する。
【0016】
上記は、本発明の特定の態様のほんの要約であり、事実上限定的なものではない。これらの態様及び他の態様及び実施形態を、下記でより詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、ヒストンデアセチラーゼ酵素活性を阻害するための化合物、組成物及び方法を提供する。本発明はまた、細胞増殖性疾患及び状態を治療するための化合物、組成物並びに方法を提供する。本明細書において参照される特許及び科学文献は、当業者が利用できる知識を確立する。本明細書において引用した発行された特許、特許出願、及び参考文献は、各々が参照により明確に個々に組み込まれていることを示すのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれている。不整合がある場合、本開示が優位である。
【0018】
本発明の目的のために、(他に明確に述べられていない場合)下記の定義を使用する。
【0019】
本明細書で使用する場合、「ヒストンデアセチラーゼ」及び「HDAC」という用語は、ヒストンのN末端でリシン残基のε−アミノ基からアセチル基を除去する酵素のファミリーの任意の1種を意味することを意図する。文脈によって別段の指示がない限り、「ヒストン」という用語は、任意の種からのH1、H2A、H2B、H3、H4、及びH5を含めた任意のヒストンタンパク質を意味することを意図する。好ましいヒストンデアセチラーゼには、クラスI及びクラスII酵素が挙げられる。好ましいヒトHDACの例には、それだけに限らないが、HDAC−1、HDAC−2、HDAC−3、HDAC−4、HDAC−5、HDAC−6、HDAC−7、HDAC−8、HDAC−9、HDAC−10、HDAC−11、SirT1、SirT2、SirT3、SirT4、SirT5、SirT6及びSirT7が挙げられる。本発明のいくつかの他の好ましい実施形態では、ヒストンデアセチラーゼは、植物、原生動物又は真菌源に由来する。
【0020】
「ヒストンデアセチラーゼ阻害剤」及び「ヒストンデアセチラーゼの阻害剤」という用語は、ヒストンデアセチラーゼと相互作用し、その酵素活性を阻害することのできる化合物を同定するために使用される。
【0021】
「ヒストンデアセチラーゼ酵素活性を阻害する」という用語は、ヒストンからアセチル基を除去するヒストンデアセチラーゼの能力を減少させることを意味するために使用される。例えば、ヒストンデアセチラーゼ活性の阻害は、少なくとも約10%の場合がある。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、このようなヒストンデアセチラーゼ活性の減少は、少なくとも約50%、さらに好ましくは、少なくとも約75%、よりさらに好ましくは、少なくとも約90%である。他の好ましい実施形態では、ヒストンデアセチラーゼ活性は、少なくとも95%、またさらに好ましくは、少なくとも99%減少する。IC50値は、ヒストンデアセチラーゼの活性を阻害されていない酵素の50%まで減少させるヒストンデアセチラーゼ阻害剤の濃度である。
【0022】
「阻害有効量」という用語は、ヒストンデアセチラーゼ活性の阻害をもたらすのに十分な投与量を表すことを意味する。ヒストンデアセチラーゼは、細胞中にある場合があり、これはひいては多細胞生物中にある場合がある。多細胞生物は、例えば、植物、真菌又は動物、好ましくは、哺乳動物、さらに好ましくは、ヒトの場合がある。真菌は、植物又は哺乳動物、好ましくは、ヒトに感染している場合があり、したがって植物又は哺乳動物中及び/又はその上にある場合がある。ヒストンデアセチラーゼが多細胞生物中にある場合、本発明のこの態様による方法は、生物体に、本発明による化合物又は組成物を投与するステップを含む。投与は、これらだけに限定されないが、非経口、経口、舌下、経皮的、局所的、鼻腔内、気管内、又は直腸内を含めた任意の経路によってでよい。特定の特に好ましい実施形態では、本発明の化合物は、病院環境において静脈内投与される。特定の他の好ましい実施形態では、投与は、好ましくは経口経路によってでよい。
【0023】
好ましくは、このような阻害は特異的であり、すなわち、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、他の関連のない生物学的作用を生じさせるのに必要な阻害剤の濃度よりも低い濃度で、ヒストンからアセチル基を除去するヒストンデアセチラーゼの能力を減少させる。好ましくは、ヒストンデアセチラーゼ阻害活性のために必要な阻害剤の濃度は、関係のない生物学的作用を生じるのに必要な濃度の、2分の1以下、さらに好ましくは、5分の1以下、よりさらに好ましくは、10分の1以下、最も好ましくは、20分の1以下である。
【0024】
本明細書において「式(I)の化合物」(すなわち、「第1の態様による化合物」、又は「本発明の化合物」など)への言及は、別段の指示がない限り、そのN−オキシド、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、プロドラッグ及び複合体、並びにそのラセミ混合物、ジアステレオマー、エナンチオマー及び互変異性体への参照を含むことが理解される。
【0025】
簡単にするために、化学部分は、主として一価の化学部分(例えば、アルキル、アリールなど)として一貫して定義され言及される。それにもかかわらず、このような用語はまた、当業者には明らかな適切な構造的状況下で相当する多価部分を表すために使用される。例えば、「アルキル」部分は一価の基(例えば、CH−CH−)を一般に意味するのに対して、特定の状況では二価連結部分が「アルキル」である場合があり、この場合、アルキルは「アルキレン」という用語と同等である二価の基(例えば、−CH−CH−)であることを当業者であれば理解するであろう。(同様に、二価の部分が必要であり、「アリール」であると述べられている状況では、「アリール」という用語は、相当する二価の部分であるアリーレンを意味することを当業者であれば理解するであろう。)全ての原子は、結合形成のためのそれらの通常の原子価数を有すると理解される(すなわち、炭素については4、Nについては3、Oについては2、Sについては、Sの酸化状態によって2、4、又は6)。場合によっては、部分は、例えば、(A)−B−(式中、aは0又は1である)として定義される場合がある。このような場合、aが0である場合、部分はB−であり、aが1である場合、部分はA−B−である。
【0026】
簡単にするために、「C〜C」ヘテロシクリル又は「C〜C」ヘテロアリールへの言及は、「n」〜「m」個の環構成原子(「n」及び「m」は整数である)を有するヘテロシクリル又はヘテロアリールを意味する。したがって、例えば、C〜C−ヘテロシクリルは、少なくとも1個のヘテロ原子を有する5員又は6員環であり、ピロリジニル(C)並びにピペラジニル及びピペリジニル(C)を含み、C−ヘテロアリールは、例えば、ピリジル及びピリミジルを含む。
【0027】
「ヒドロカルビル」という用語は、直鎖状、分岐状、又は環状アルキル、アルケニル、又はアルキニル(各々は本明細書に記載されている通りである)を意味する。「C」ヒドロカルビルは、共有結合を意味するために使用される。したがって、「C〜Cヒドロカルビル」には、共有結合、メチル、エチル、エテニル、エチニル、プロピル、プロペニル、プロピニル、及びシクロプロピルが挙げられる。
【0028】
「アルキル」という用語は、1〜12個の炭素原子、好ましくは、1〜8個の炭素原子、さらに好ましくは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐状脂肪族基を意味することを意図する。他の好ましいアルキル基は、2〜12個の炭素原子、好ましくは、2〜8個の炭素原子、さらに好ましくは、2〜6個の炭素原子を有する。好ましいアルキル基には、これらだけに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられる。(「C〜Cアルキル」におけるように)「C」アルキルは、共有結合である。
【0029】
「アルケニル」という用語は、2〜12個の炭素原子、好ましくは、2〜8個の炭素原子、さらに好ましくは、2〜6個の炭素原子を有する、1つ又は複数の炭素−炭素二重結合を伴う不飽和の直鎖又は分岐状脂肪族基を意味することを意図する。好ましいアルケニル基には、これらだけに限定されないが、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、及びヘキセニルが挙げられる。
【0030】
「アルキニル」という用語は、2〜12個の炭素原子、好ましくは、2〜8個の炭素原子、さらに好ましくは、2〜6個の炭素原子を有する、1つ又は複数の炭素−炭素三重結合を伴う不飽和直鎖又は分岐状脂肪族基を意味することを意図する。好ましいアルキニル基には、これらだけに限定されないが、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、及びヘキシニルが挙げられる。
【0031】
「アルキレン」、「アルケニレン」又は「アルキニレン」という用語は、本明細書で使用する場合、各々、2個の他の化学基の間に位置し、それらを結合する役目を果たす、本明細書に上記されているようなアルキル、アルケニル、又はアルキニル基を意味することを意図する。好ましいアルキレン基には、これらだけに限定されないが、メチレン、エチレン、プロピレン、及びブチレンが挙げられる。好ましいアルケニレン基には、これらだけに限定されないが、エテニレン、プロペニレン、及びブテニレンが挙げられる。好ましいアルキニレン基には、これらだけに限定されないが、エチニレン、プロピニレン、及びブチニレンが挙げられる。
【0032】
「シクロアルキル」という用語は、約3〜15個の炭素を有する、好ましくは、3〜12個の炭素、好ましくは、3〜8個の炭素、さらに好ましくは、3〜6個の炭素、さらにより好ましくは、5個又は6個の炭素を有する、飽和又は不飽和の単環式、二環式、三環式又は多環式炭化水素基を意味することを意図する。特定の好ましい実施形態では、シクロアルキル基は、アリール、ヘテロアリール又は複素環基に縮合している。好ましいシクロアルキル基には、これらだけに限定されないが、シクロペンテン−2−エノン、シクロペンテン−2−エノール、シクロヘキサ−2−エノン、シクロヘキサ−2−エノール、シクロプロピル、シクロブチル、シクロブテニル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどが挙げられる。
【0033】
「ヘテロアルキル」という用語は、飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐状脂肪族基(基中の1個又は複数の炭素原子は、独立に、O、S、及びNからなる群から選択されるヘテロ原子で置き換えられている)を意味することを意図する。
【0034】
「アリール」という用語は、好ましくは1〜3個の芳香環を含む、単環式、二環式、三環式又は多環式芳香族部分、好ましくは、C〜C14芳香族部分を意味することを意図する。好ましくは、アリール基は、C〜C10アリール基、さらに好ましくは、Cアリール基である。好ましいアリール基には、これらだけに限定されないが、フェニル、ナフチル、アントラセニル、及びフルオレニルが挙げられる。
【0035】
「アラルキル」又は「アリールアルキル」という用語は、アルキル基に共有結合しているアリール基を含む基を意味することを意図する。アラルキル基が「任意選択で置換されている」と記載されている場合、アリール及びアルキル部分のどちらか又は両方が、独立に、任意選択で置換されていてもよく、非置換であってもよいことを意図する。好ましくは、アラルキル基は、これらだけに限定されないが、ベンジル、フェネチル、及びナフチルメチルを含めた、(C〜C)アルキル(C〜C10)アリールである。簡単にするために、「アリールアルキル」として記載された場合、この用語及びそれに関連する用語は、化合物における基の順序を「アリール−アルキル」として示すことを意図する。同様に、「アルキル−アリール」は、化合物における基の順序を「アルキル−アリール」として示すことを意図する。
【0036】
「ヘテロシクリル」、「複素環式」又は「複素環」という用語は、約3〜約14個の原子(1個又は複数の原子は、N、O、及びSからなる群から独立に選択される)を有する単環式、二環式、又は多環式構造である基を意味することを意図する。環式構造は、飽和、不飽和又は部分不飽和であってよい。特定の好ましい実施形態では、複素環基は、非芳香族であり、この場合、この基はまたヘテロシクロアルキルとして公知である。二環式又は多環式構造において、1つ又は複数の環は、芳香族であってよい。例えば、二環式複素環の1つの環、又は三環式複素環の1つ若しくは2つの環は、インダン及び9,10−ジヒドロアントラセンにおけるように、芳香族であってよい。好ましい複素環基には、これらだけに限定されないが、エポキシ、アジリジニル、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、チアゾリジニル、オキサゾリジニル、オキサゾリジノニル、及びモルホリノが挙げられる。特定の好ましい実施形態では、複素環基は、アリール、ヘテロアリール、又はシクロアルキル基に縮合している。このような縮合複素環の例には、これらだけに限定されないが、テトラヒドロキノリン及びジヒドロベンゾフランが挙げられる。この用語の範囲から特に除外されるものは、環構成O又はS原子が他のO又はS原子と隣接している化合物である。
【0037】
特定の好ましい実施形態では、複素環基は、ヘテロアリール基である。本明細書で使用する場合、「ヘテロアリール」という用語は、5〜14個の環原子、好ましくは、5個、6個、9個、又は10個の環原子を有し、環状配列において共有される6個、10個、又は14個のπ電子を有し、且つ炭素原子に加えて、N、O、及びSからなる群から独立に選択される1個又は複数のヘテロ原子を有する単環式、二環式、三環式又は多環式基を意味することを意図する。例えば、ヘテロアリール基は、ピリミジニル、ピリジニル、ベンゾイミダゾリル、チエニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル及びインドリニルであってよい。好ましいヘテロアリール基には、これらだけに限定されないが、チエニル、ベンゾチエニル、フリル、ベンゾフリル、ジベンゾフリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、インドリル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、テトラゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、及びイソオキサゾリルが挙げられる。
【0038】
「アリーレン」、「ヘテロアリーレン」又は「ヘテロシクリレン」という用語は、各々、2個の他の化学基の間に位置し、それらを結合する役目を果たす、本明細書に上記されているようなアリール、ヘテロアリール、又はヘテロシクリル基を意味することを意図する。
【0039】
好ましいヘテロシクリル及びヘテロアリールには、それだけに限らないが、アゼピニル、アゼチジニル、アクリジニル、アゾシニル、ベンジドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾフリル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾピラニル、カルバゾリル、4aH−カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、クマリニル、デカヒドロキノリニル、1,3−ジオキソラン、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3−b]テトラヒドロフラン、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロキナゾリニル(3,4−ジヒドロ−4−オキソ−キナゾリニル等)、フラニル、フロピリジニル(フロ[2,3−c]ピリジニル、フロ[3,2−b]ピリジニル又はフロ[2,3−b]ピリジニル等)、フリル、フラザニル、ヘキサヒドロジアゼピニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、インダゾリル、1H−インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H−インドリル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリジニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリニル、イソオキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、オキセタニル、2−オキソアゼピニル、2−オキソピペラジニル、2−オキソピペリジニル、2−オキソピロロジニル、ピリミジニル、フェナンスリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4−ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、ピロロピリジル、2H−ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H−キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロ−1、1 −ジオキソチエニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロピラニル、テトラゾリル、チアゾリジニル、6H−1,2,5−チアジアジニル、チアジアゾリル(例えば、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル)、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、トリアジニル、トリアジニルアゼピニル、トリアゾリル(例えば、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,5−トリアゾリル、1,3,4−トリアゾリル)、及びキサンテニルが挙げられる。
【0040】
本明細書において用いられる場合、及び特に断りのない限り、部分(例えば、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリルなど)が「任意選択で置換されている」として記載されている場合、基が、1〜4個、好ましくは、1〜3個、さらに好ましくは、1個又は2個の、独立に選択された非水素置換基を任意選択で有することを意味する。適切な置換基には、これらだけに限定されないが、ハロ、ヒドロキシ、オキソ(例えば、オキソで置換されている環構成−CH−は、−C(O)−である)ニトロ、ハロヒドロカルビル、ヒドロカルビル、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アシルアミノ、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、アミノアルキル、アシル、カルボキシ、ヒドロキシアルキル、アルカンスルホニル、アレーンスルホニル、アルカンスルホンアミド、アレーンスルホンアミド、アラルキルスルホンアミド、アルキルカルボニル、アシルオキシ、シアノ、及びウレイド基が挙げられる。(他に明確に述べられていない場合)それら自体はさらに置換されていない好ましい置換基は、
(a)ハロ、シアノ、オキソ、カルボキシ、ホルミル、ニトロ、アミノ、アミジノ、グアニジノ、
(b)C〜Cアルキル又はアルケニル又はアリールアルキルイミノ、カルバモイル、アジド、カルボキサミド、メルカプト、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルアミノ、C〜Cアルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C〜Cアシル、C〜Cアシルアミノ、C〜Cアルキルチオ、アリールアルキルチオ、アリールチオ、C〜Cアルキルスルフィニル、アリールアルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、C〜Cアルキルスルホニル、アリールアルキルスルホニル、アリールスルホニル、C〜CN−アルキルカルバモイル、C〜C15N,N−ジアルキルカルバモイル、C〜Cシクロアルキル、アロイル、アリールオキシ、アリールアルキルエーテル、アリール、シクロアルキル若しくは複素環若しくは他のアリール環に縮合したアリール、C〜C複素環、C〜C15ヘテロアリール、又はシクロアルキル、ヘテロシクリル若しくはアリールに縮合若しくはスピロ縮合しているこれらの環のいずれか(上記の各々は、上記の(a)において一覧表示されているもう1つの部分で任意選択でさらに置換されている)、並びに
(c)−(CR3233−NR3031(式中、sは、0(この場合、窒素は置換された部分に直接結合している)から6であり、R32及びR33は、各々独立に、水素、ハロ、ヒドロキシル又はC〜Cアルキルであり、R30及びR31は、各々独立に、水素、シアノ、オキソ、ヒドロキシル、C−Cアルキル、C−Cヘテロアルキル、C−Cアルケニル、カルボキサミド、C−Cアルキル−カルボキサミド、カルボキサミド−C−Cアルキル、アミジノ、C−Cヒドロキシアルキル、C−Cアルキルアリール、アリール−C−Cアルキル、C−Cアルキルヘテロアリール、ヘテロアリール−C−Cアルキル、C−Cアルキルヘテロシクリル、ヘテロシクリル−C−CアルキルC−Cアルキルシクロアルキル、シクロアルキル−C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cアルコキシ−C−Cアルキル、C−Cアルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリール−C−Cアルコキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロアリール−C−Cアルコキシカルボニル、C−Cアシル、C−Cアルキルカルボニル、アリール−C−Cアルキル−カルボニル、ヘテロアリール−C−Cアルキル−カルボニル、シクロアルキル−C−Cアルキル−カルボニル、C−Cアルキル−NH−カルボニル、アリール−C−Cアルキル−NH−カルボニル、ヘテロアリール−C−Cアルキル−NH−カルボニル、シクロアルキル−C−Cアルキル−NH−カルボニル、C−Cアルキル−O−カルボニル、アリール−C−Cアルキル−O−カルボニル、ヘテロアリール−C−Cアルキル−O−カルボニル、シクロアルキル−C−Cアルキル−O−カルボニル、C−Cアルキルスルホニル、アリールアルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールアルキルスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、C−Cアルキル−NH−スルホニル、アリールアルキル−NH−スルホニル、アリール−NH−スルホニル、ヘテロアリールアルキル−NH−スルホニル、ヘテロアリール−NH−スルホニルアロイル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アリール−C−Cアルキル−、シクロアルキル−C−Cアルキル−、ヘテロシクリル−C−Cアルキル−、ヘテロアリール−C−Cアルキル−、又は保護基であり(上記の各々は、上記の(a)において一覧表示されているもう1つの部分で任意選択でさらに置換されている)、或いは
30及びR31は、それらが結合しているNと一緒になって、ヘテロシクリル又はヘテロアリールを形成し、それらの各々は、上記の(a)、保護基、及び(X30−Y31−)からなる群から選択される1〜3個の置換基で任意選択で置換されており、前記ヘテロシクリルはまた、架橋していてもよく(メチレン、エチレン又はプロピレン架橋と共に二環式部分を形成する)、
30は、C−Cアルキル、C−Cアルケニル−、C−Cアルキニル−、−C−Cアルキル−C−Cアルケニル−C−Cアルキル、C−Cアルキル−C−Cアルキニル−C−Cアルキル、C−Cアルキル−O−C−Cアルキル−、HO−C−Cアルキル−、C−Cアルキル−N(R30)−C−Cアルキル−、N(R30)(R31)−C−Cアルキル−、N(R30)(R31)−C−Cアルケニル−、N(R30)(R31)−C−Cアルキニル−、(N(R30)(R31))−C=N−、C−Cアルキル−S(O)0−2−C−Cアルキル−、CF−C−Cアルキル−、C−Cヘテロアルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アリール−C−Cアルキル−、シクロアルキル−C−Cアルキル−、ヘテロシクリル−C−Cアルキル−、ヘテロアリール−C−Cアルキル−、N(R30)(R31)−ヘテロシクリル−C−Cアルキル−からなる群から選択され、
アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール及びヘテロシクリルは、1〜3個の(a)からの置換基で任意選択で置換されており、Y31は、直接結合、−O−、−N(R30)−、−C(O)−、−O−C(O)−、−C(O)−O−、−N(R30)−C(O)−、−C(O)−N(R30)−、−N(R30)−C(S)−、−C(S)−N(R30)−、−N(R30)−C(O)−N(R31)−、−N(R30)−C(NR30)−N(R31)−、−N(R30)−C(NR31)−、−C(NR31)−N(R30)−、−N(R30)−C(S)−N(R31)−、−N(R30)−C(O)−O−、−O−C(O)−N(R31)−、−N(R30)−C(S)−O−、−O−C(S)−N(R31)−、−S(O)0−2−、−SON(R31)−、−N(R31)−SO−及び−N(R30)−SON(R31)−からなる群から選択される)
である。
【0041】
置換されている部分は、1個又は複数(好ましくは、1〜4個、好ましくは、1〜3個、さらに好ましくは、1個又は2個)の水素が、独立に、他の化学置換基で置き換えられている部分である。非限定的例として、置換フェニルには、2−フルオロフェニル、3,4−ジクロロフェニル、3−クロロ−4−フルオロ−フェニル、2−フルオロ−3−プロピルフェニルが挙げられる。他の非限定的例として、置換n−オクチルには、2,4−ジメチル−5−エチル−オクチル及び3−シクロペンチル−オクチルが挙げられる。この定義の中に含められるのは、酸素で置換されカルボニル−CO−を形成するメチレン(−CH−)である。
【0042】
例えばフェニル、チオフェニル、又はピリジニルなど、環式構造における隣接する原子に結合している2個の任意選択の置換基がある場合、置換基は、それらが結合している原子と一緒になって、1個、2個、又は3個の環構成ヘテロ原子を有する5員又は6員のシクロアルキル又は複素環を任意選択で形成する。
【0043】
好ましい実施形態では、ヒドロカルビル、ヘテロアルキル、複素環式及び/又はアリール基は、非置換である。
【0044】
他の好ましい実施形態では、ヒドロカルビル、ヘテロアルキル、複素環式及び/又はアリール基は、1〜3個の独立に選択された置換基で置換されている。
【0045】
アルキル基上の好ましい置換基には、それだけに限らないが、ヒドロキシル、ハロゲン(例えば、単一のハロゲン置換基又は複数のハロ置換基;後者の場合は、CFなどの基又はClを担持するアルキル基)、オキソ、シアノ、ニトロ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、アリール、−OR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−P(=O)、−S(=O)OR、−P(=O)OR、−NR、−NRS(=O)、−NRP(=O)、−S(=O)NR、−P(=O)NR、−C(=O)OR、−C(=O)R、−C(=O)NR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−NRC(=O)OR、−NRC(=O)NR、−NRS(=O)NR、−NRP(=O)NR、−NRC(=O)R又は−NRP(=O)が挙げられ、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環若しくはアリールであり、R、R及びRは、独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、複素環若しくはアリールであり、又は前記R及びRは、それらが結合しているNと一緒になって、複素環を任意選択で形成し、Rは、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環若しくはアリールである。上記の例示的置換基において、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルケニル、複素環及びアリールなどの基は、それら自体が任意選択で置換されていてもよい。
【0046】
アルケニル及びアルキニル基上の好ましい置換基には、それだけに限らないが、アルキル又は置換アルキル、及び、好ましいアルキル置換基として列挙されたそれらの基が挙げられる。
【0047】
シクロアルキル基上の好ましい置換基には、それだけに限らないが、ニトロ、シアノ、アルキル又は置換アルキル、及び、好ましいアルキル置換基として列挙されたそれらの基が挙げられる。他の好ましい置換基には、それだけに限らないが、スピロ結合若しくは縮合環式置換基、好ましくは、スピロ結合シクロアルキル、スピロ結合シクロアルケニル、スピロ結合複素環(ヘテロアリールを除いて)、縮合シクロアルキル、縮合シクロアルケニル、縮合複素環、又は縮合アリールが挙げられ、上記のシクロアルキル、シクロアルケニル、複素環及びアリール置換基は、それら自体が任意選択で置換されていてもよい。
【0048】
シクロアルケニル基上の好ましい置換基には、それだけに限らないが、ニトロ、シアノ、アルキル又は置換アルキル、及び、好ましいアルキル置換基として列挙されたそれらの基が挙げられる。他の好ましい置換基には、それだけに限らないが、スピロ結合若しくは縮合環式置換基、特に、スピロ結合シクロアルキル、スピロ結合シクロアルケニル、スピロ結合複素環(ヘテロアリールを除いて)、縮合シクロアルキル、縮合シクロアルケニル、縮合複素環、又は縮合アリールが挙げられ、上記のシクロアルキル、シクロアルケニル、複素環及びアリール置換基は、それら自体が任意選択で置換されていてもよい。
【0049】
アリール基上の好ましい置換基には、それだけに限らないが、ニトロ、シクロアルキル又は置換シクロアルキル、シクロアルケニル又は置換シクロアルケニル、シアノ、アルキル又は置換アルキル、及び、好ましいアルキル置換基として上記で列挙されたそれらの基が挙げられる。他の好ましい置換基には、それだけに限らないが、縮合環式基、特に、縮合シクロアルキル、縮合シクロアルケニル、縮合複素環、又は縮合アリールが挙げられ、上記のシクロアルキル、シクロアルケニル、複素環及びアリール置換基は、それら自体が任意選択で置換されていてもよい。アリール基(非限定的例として、フェニル)上の他のより好ましい置換基には、それだけに限らないが、ハロアルキル及び好ましいアルキル置換基として列挙されたそれらの基が挙げられる。
【0050】
複素環基上の好ましい置換基には、それだけに限らないが、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ニトロ、オキソ(すなわち、=O)、シアノ、アルキル、置換アルキル、及び、好ましいアルキル置換基として列挙したそれらの基が挙げられる。複素環基上の他の好ましい置換基には、それだけに限らないが、任意の利用可能な1つ又は複数の結合点におけるスピロ結合又は縮合環式置換基、さらに好ましくは、スピロ結合シクロアルキル、スピロ結合シクロアルケニル、スピロ結合複素環(ヘテロアリールを除いて)、縮合シクロアルキル、縮合シクロアルケニル、縮合複素環及び縮合アリールが挙げられ、上記のシクロアルキル、シクロアルケニル、複素環及びアリール置換基は、それら自体が任意選択で置換されていてもよい。
【0051】
特定の好ましい実施形態では、複素環基は、1つ又は複数の位置で炭素、窒素及び/又は硫黄上で置換されている。窒素上の好ましい置換基には、それだけに限らないが、アルキル、アリール、アラルキル、アルキルカルボニル、アルキルスルホニル、アリールカルボニル、アリールスルホニル、アルコキシカルボニル、又はアラルコキシカルボニルが挙げられる。硫黄上の好ましい置換基には、それだけに限らないが、オキソ及びC1〜6アルキルが挙げられる。特定の好ましい実施形態では、窒素及び硫黄ヘテロ原子は、独立に、任意選択で酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は、独立に、任意選択で四級化されていてもよい。
【0052】
アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル及びヘテロシクリルなどの環式基上の特に好ましい置換基には、ハロゲン、アルコキシ及びアルキルが挙げられる。
【0053】
アルキル基上の特に好ましい置換基には、ハロゲン及びヒドロキシが挙げられる。
【0054】
「ハロゲン」又は「ハロ」という用語は、本明細書において用いられる場合、塩素、臭素、フッ素、又はヨウ素を意味する。本明細書において用いられる場合、「アシル」という用語は、アルキルカルボニル又はアリールカルボニル置換基を意味する。「アシルアミノ」という用語は、窒素原子で結合しているアミド基(すなわち、R−CO−NH−)を意味する。「カルバモイル」という用語は、カルボニル炭素原子で結合しているアミド基(すなわち、NH−CO−)を意味する。アシルアミノ又はカルバモイル置換基の窒素原子は、さらに任意選択で置換されている。「スルホンアミド」という用語は、硫黄又は窒素原子によって結合しているスルホンアミド置換基を意味する。「アミノ」という用語は、NH、アルキルアミノ、アリールアミノ、及び環状アミノ基を含むことを意味する。「ウレイド」という用語は、本明細書において用いられる場合、置換又は非置換の尿素部分を意味する。
【0055】
「遊離基」という用語は、本明細書で使用する場合、1つ又は複数の不対電子を含む化学部分を意味する。
【0056】
任意選択の置換基が「1個又は複数の」基から選択される場合、この定義は、全ての置換基が特定の基の1つから選択され、又は置換基が特定の基の2つ以上から選択されることを含むことを理解すべきである。
【0057】
さらに、環式部分(すなわち、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール)上の置換基には、親環式部分に縮合して二環式又は三環式縮合環系を形成する、5〜6員の単環式及び9〜14員の二環式部分が含まれる。環式部分上の置換基にはまた、親環式部分に共有結合によって結合して二環式又は三環式の重環系を形成する、5〜6員の単環式及び9〜14員の二環式部分が含まれる。例えば、任意選択で置換されたフェニルには、これらだけに限らないが、下記が挙げられる。
【表1】
【0058】
上記定義のような「非置換」部分(例えば、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロアリールなど)は、上記定義のような部分が、部分(上記)の定義が別段に定められている任意選択の置換基のいずれかを有さないことを意味する。したがって、例えば、「非置換アリール」は、部分(上記)の定義が別段に定められている任意選択の置換基のいずれかで置換されているフェニルは含まない。
【0059】
化合物
本発明の一態様は、式(1)
【化8】

の化合物、又はそのN−オキシド、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、複合体若しくはプロドラッグ、又はそのラセミ若しくはスカレミック混合物、ジアステレオマー、エナンチオマー若しくは互変異性体を提供する。
【0060】
式(1)の化合物では、Tは、NH又はOHであってもよい。本発明の特定の好ましい実施形態では、Tは、NHである。他の本発明の好ましい実施形態では、Tは、OHである。
【0061】
式(1)の化合物では、Aは、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル及びヘテロシクロアルキル(それらの各々は任意選択で置換されている)からなる群から選択される。本発明の一態様では、Aは、非置換又は任意選択で置換されたアリーレンである。例えば、Aは、任意選択で置換されたフェニレン又はナフチレンであってもよい。本発明の特定の望ましい実施形態では、Aは、非置換フェニレンである。本発明の他の態様では、Aは、非置換ヘテロアリーレン又は任意選択で置換されたヘテロアリーレンである。例えば、Aは、非置換若しくは任意選択で置換されたピリジレン、ピラジニレン、ピリミジレン又はピラジニレンであってもよく、又は非置換若しくは任意選択で置換されたチアジニレンチエニレン、フリレン、セレノフェニレン、ピロリレン、イミダゾリレン、ピラゾリレン、ピリジレン、ピラジニレン、ピリミジニレン、テトラゾリレン、オキサゾリレン、チアゾリレン、ピラゾリレン、トリアゾリレン、イソチアゾリレン、オキサジアゾリレン、ピロリレン及びイソオキサゾリレンであってもよい。本発明の特定の望ましい実施形態では、Aは、非置換若しくは任意選択で置換されたフェニレン、チエニレン、チアジアゾリレン、チアゾリレン、ピリミジレン、ピラジニレン、ピリダジニレン、トリアジニレン又はテトラジニレンである。Aが6員環である場合、X−及びカルボニル部分は、好ましくは環上で互いに1,4−様式で配置されている。Aが5員環である場合、X−及びカルボニル部分は、好ましくは環上で互いに1,3−様式で配置されている。
【0062】
本発明の一態様では、式(1)の化合物において、Xは、構造
【化9】

を有する。
【0063】
本発明のこの態様では、n=0〜4である。本発明の特定の望ましい実施形態では、nは、1又は2であり、好ましくは、1である。本発明の他の実施形態では、nは、0又は3〜4である。nが1である場合、化合物は、Zが結合している炭素において(S)−立体化学配置を有することが望ましい。下記の実施例においてより詳細を示すように、n=1及びZの(S)−立体化学的結合を有する化合物は、HDAC阻害に関して非常に良好な結果を提供することを本発明者らは見出した。しかし、本発明の他の実施形態では、化合物は、Zが結合している炭素において(R)−立体化学配置を有し、又はラセミ若しくはスカレミック混合物として存在する。nが2〜4である場合、化合物は、Zが結合している炭素において、(S)−立体化学配置を有し、(R)−立体化学配置を有し、又はラセミ若しくはスカレミック混合物として存在してもよい。
【0064】
本発明のこの態様では、Zは、R−、R13−C(O)−、R13−C(S)−、R−N(R)−、R−O−、R10−S−、R13−S(O)1−2−、R−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−S−、R15−S−C(O)−、R11−C(O)−N(R)−、R13−N(R)−C(O)−、R15−C(S)−O−、R15−O−C(S)−、R15−C(S)−S−、R15−S−C(S)−、R15−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−、R−O−C(O)−O−、R15−O−C(O)−S−、R15−S−C(O)−O−、R12−O−C(O)−N(R)−、R−N(R)−C(O)−O−、R−O−C(S)−O−、R15−O−C(S)−S−、R15−S−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−S−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−S−、R15−S−C(O)−S−、R15−S−C(S)−S−、R−N(R)−C(O)−N(R)−、R−N(R)−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−S−、R15−S−C(S)−N(R)−、R−NH−C(N(R))−NH−、R−S(O)0−2−N(R)−、R−N(R)−S(O)0−2−及びR15−N(R)−S(O)0−2−N(R)−からなる群から選択され、
しかし、nが、1又は2であり、Zが、R−、R13−C(O)−、R−N(R)−、R−O−、R10−S−、R13−S(O)1〜2、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R11−C(O)−N(R)−、R13−N(R)−C(O)−、R12−O−C(O)−N(R)−、R−N(R)−C(O)−O−、R−S(O)−N(R)−又はR−N(R)−S(O)−である場合、Aは、チエニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジル、トリアジニル又はテトラジニルではない。
【0065】
本発明のこの態様による特定の望ましい実施形態では、Zは、R−C(O)−O−、R12−O−C(O)−N(R)−、R11−C(O)−N(R)−、R15−C(S)−N(R)−、R15−S−C(O)−N(R)−、R−N(R)−C(O)−N(R)、R−N(R)−C(S)−N(R)−、R−N(R)−C(O)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−S−C(S)−N(R)−、R−N(R)−C(S)−O−、R−O−C(S)−N(R)−、R−S(O)0〜2−N(R)−又はR−N(R)−S(O)0〜2−からなる群から選択される。好ましくは、Zは、R−C(O)−O−、R12−O−C(O)−N(R)−、R11−C(O)−N(R)−、R−N(R)−C(O)−N(R)、R−N(R)−C(S)−N(R)−、R−N(R)−C(O)−O−、R−N(R)−C(S)−O−、R−O−C(S)−N(R)−、R−O−又はR−N(R)−である。例えば、Zは、R12−O−C(O)−N(R)−、(C〜Cヒドロカルビル)−O−(C〜Cヒドロカルビル)−O−C(O)−N(R)−、(C〜Cヒドロカルビル)−O−C(O)−N(R)−、又はR16−O−C(O)−N(R)−であってよく、R16は、任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−、任意選択で置換されたAr−(C−Cヒドロカルビル)−、任意選択で置換されたHet−(C−Cヒドロカルビル)−、任意選択で置換されたHca−(C−Cヒドロカルビル)−又は任意選択で置換されたCak−(C−Cヒドロカルビル)である。
【0066】
本発明の他の態様では、式(1)の化合物において、Xは、構造
【化10】

を有する。
【0067】
本発明のこの態様では、nは、0又は2〜4である。本発明の特定の望ましい実施形態では、nは2である。本発明の他の実施形態では、nは、0又は3〜4である。nが、0、3又は4である場合、化合物は、Zが結合している炭素において、(S)−立体化学配置を有し、(R)−立体化学配置を有し、又はラセミ若しくはスカレミック混合物として存在してもよい。
【0068】
本発明のこの態様では、Zは、R15−、R15−C(O)−、R15−C(S)−、R15−N(R)−、R15−O−、R15−S−、R15−S(O)1−2、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−S−、R15−S−C(O)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−、R15−C(S)−O−、R15−O−C(S)−、R15−C(S)−S−、R15−S−C(S)−、R15−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−、R15−O−C(O)−O−、R15−O−C(O)−S−、R15−S−C(O)−O−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−O−C(S)−O−、R15−O−C(S)−S−、R15−S−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−S−C(O)−S−、R15−S−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−S−、R15−S−C(S)−S−、R15−N(R)−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−S−、R15−S−C(S)−N(R)−、R15−NH−C(N(R))−NH−、R15−S(O)0−2−N(R)−、R15−N(R)−S(O)1−2−及びR15−N(R)−S(O)0−2−N(R)−からなる群から選択され、
しかし、nが、2であり、Zが、R15−、R15−C(O)−、R15−N(R)−、R15−O−、R15−S−、R15−S(O)1〜2、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−S(O)−N(R)−又はR15−N(R)−S(O)−である場合、Aは、チエニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジル、トリアジニル又はテトラジニルではない。
【0069】
本発明のこの態様による特定の望ましい実施形態では、Zは、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−N(R)、R15−N(R)−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−O−又はR15−N(R)−である。
【0070】
本発明の他の態様では、式(1)の化合物において、Xは、構造
【化11】

を有する。
【0071】
本発明のこの態様では、nは、0〜4である。本発明の特定の望ましい実施形態では、nは、1又は2である。本発明の他の実施形態では、nは、0又は3〜4である。nが、1〜4である場合、化合物は、カルボニル部分が結合している炭素において、(S)−立体化学配置を有し、(R)−立体化学配置を有し、又はラセミ若しくはスカレミック混合物として存在してもよい。
【0072】
本発明のこの態様では、Zは、R15−、R15−C(O)−、R15−C(S)−、R15−N(R)−、R15−O−、R15−S−、R15−S(O)1−2、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−S−、R15−S−C(O)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−、R15−C(S)−O−、R15−O−C(S)−、R15−C(S)−S−、R15−S−C(S)−、R15−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−、R15−O−C(O)−O−、R15−O−C(O)−S−、R15−S−C(O)−O−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−O−C(S)−O−、R15−O−C(S)−S−、R15−S−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−S−C(O)−S−、R15−S−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−S−、R15−S−C(S)−S−、R15−N(R)−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−S−、R15−S−C(S)−N(R)−、R15−NH−C(N(R))−NH−、R15−S(O)0−2−N(R)−、R15−N(R)−S(O)1−2−及びR15−N(R)−S(O)0−2−N(R)−からなる群から選択され、
しかし、nが、2であり、Zが、R15−、R15−C(O)−、R15−N(R)−、R15−O−、R15−S−、R15−S(O)1〜2、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−S(O)−N(R)−又はR15−N(R)−S(O)−である場合、Aは、フェニル、チエニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジル、トリアジニル又はテトラジニルではない。本発明のこの態様による特定の実施形態では、nは、1であり、Zは、R15−、R15−C(O)−、R15−N(R)−、R15−O−、R15−S−、R15−S(O)1〜2、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−S(O)−N(R)−又はR15−N(R)−S(O)−であり、Aは、フェニル、チエニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジル、トリアジニル又はテトラジニルではない。
【0073】
本発明のこの態様による特定の望ましい実施形態では、Zは、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−N(R)、R15−N(R)−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−O−又はR15−N(R)−である。
【0074】
本発明の他の態様では、式(1)の化合物において、Xは、構造
【化12】

である。
【0075】
本発明のこの態様では、n4は、0又は2〜4である。本発明の特定の望ましい実施形態では、nは、2である。本発明の他の実施形態では、nは、0又は3〜4である。nが、0、3又は4である場合、化合物は、カルボニル部分が結合している炭素において、(S)−立体化学配置を有し、(R)−立体化学配置を有し、又はラセミ若しくはスカレミック混合物として存在してもよい。
【0076】
本発明のこの態様では、Zは、R15−、R15−C(O)−、R15−C(S)−、R15−N(R)−、R15−O−、R15−S−、R15−S(O)1−2、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−S−、R15−S−C(O)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−、R15−C(S)−O−、R15−O−C(S)−、R15−C(S)−S−、R15−S−C(S)−、R15−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−、R15−O−C(O)−O−、R15−O−C(O)−S−、R15−S−C(O)−O−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−O−C(S)−O−、R15−O−C(S)−S−、R15−S−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−S−C(O)−S−、R15−S−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−S−、R15−S−C(S)−S−、R15−N(R)−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−S−、R15−S−C(S)−N(R)−、R15−NH−C(N(R))−NH−、R15−S(O)0−2−N(R)−、R15−N(R)−S(O)1−2−及びR15−N(R)−S(O)0−2−N(R)−からなる群から選択され、
しかし、nが、2であり、Zが、R15−、R15−C(O)−、R15−N(R)−、R15−O−、R15−S−、R15−S(O)1〜2、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−S(O)−N(R)−又はR15−N(R)−S(O)−である場合、Aは、フェニル、チエニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジル、トリアジニル又はテトラジニルではない。
【0077】
本発明のこの態様による特定の望ましい実施形態では、Zは、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−N(R)、R15−N(R)−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−O−又はR15−N(R)−である。
【0078】
本発明の他の態様では、式(1)の化合物において、Xは、構造
【化13】

を有する。
【0079】
本発明のこの態様では、nは、1〜4である。本発明の特定の望ましい実施形態では、nは、1又は2である。
【0080】
本発明のこの態様では、nは、1〜4である。本発明の特定の望ましい実施形態では、nは、1又は2である。
【0081】
本発明のこの態様では、nは、1〜4である。本発明の特定の望ましい実施形態では、nは、1又は2である。
【0082】
本発明のこの態様では、Zは、R15−、R15−C(O)−、R15−C(S)−、R15−N(R)−、R15−O−、R15−S−、R15−S(O)1−2、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−S−、R15−S−C(O)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−、R15−C(S)−O−、R15−O−C(S)−、R15−C(S)−S−、R15−S−C(S)−、R15−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−、R15−O−C(O)−O−、R15−O−C(O)−S−、R15−S−C(O)−O−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−O−C(S)−O−、R15−O−C(S)−S−、R15−S−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−S−C(O)−S−、R15−S−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−S−、R15−S−C(S)−S−、R15−N(R)−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−S−、R15−S−C(S)−N(R)−、R15−NH−C(N(R))−NH−、R15−S(O)0−2−N(R)−、R15−N(R)−S(O)1−2−及びR15−N(R)−S(O)0−2−N(R)−からなる群から選択され、
本発明のこの態様による特定の望ましい実施形態では、Zは、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−N(R)、R15−N(R)−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−O−又はR15−N(R)−である。
【0083】
本発明のこの態様では、Zは、R15−、R15−C(O)−、R15−C(S)−、R15−N(R)−、R15−O−、R15−S−、R15−S(O)1−2、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−S−、R15−S−C(O)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−、R15−C(S)−O−、R15−O−C(S)−、R15−C(S)−S−、R15−S−C(S)−、R15−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−、R15−O−C(O)−O−、R15−O−C(O)−S−、R15−S−C(O)−O−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−O−C(S)−O−、R15−O−C(S)−S−、R15−S−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−S−C(O)−S−、R15−S−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−S−、R15−S−C(S)−S−、R15−N(R)−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−S−、R15−S−C(S)−N(R)−、R15−NH−C(N(R))−NH−、R15−S(O)0−2−N(R)−、R15−N(R)−S(O)1−2−及びR15−N(R)−S(O)0−2−N(R)−からなる群から選択され、
本発明のこの態様による特定の望ましい実施形態では、Zは、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−N(R)、R15−N(R)−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−O−又はR15−N(R)−である。
【0084】
本発明のこの態様では、Zは、R15−、R15−C(O)−、R15−C(S)−、R15−N(R)−、R15−O−、R15−S−、R15−S(O)1−2、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−S−、R15−S−C(O)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−、R15−C(S)−O−、R15−O−C(S)−、R15−C(S)−S−、R15−S−C(S)−、R15−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−、R15−O−C(O)−O−、R15−O−C(O)−S−、R15−S−C(O)−O−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−O−C(S)−O−、R15−O−C(S)−S−、R15−S−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−S−C(O)−S−、R15−S−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−S−、R15−S−C(S)−S−、R15−N(R)−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−S−、R15−S−C(S)−N(R)−、R15−NH−C(N(R))−NH−、R15−S(O)0−2−N(R)−、R15−N(R)−S(O)1−2−及びR15−N(R)−S(O)0−2−N(R)−からなる群から選択され、
本発明のこの態様による特定の望ましい実施形態では、Zは、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−N(R)、R15−N(R)−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−O−又はR15−N(R)−である。
【0085】
本発明の他の態様では、式(1)の化合物において、Xは、構造
【化14】

を有する。
【0086】
本発明のこの態様では、Zは、R15−、R15−C(O)−、R15−C(S)−、R15−N(R)−、R15−O−、R15−S−、R15−S(O)1−2、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−S−、R15−S−C(O)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−、R15−C(S)−O−、R15−O−C(S)−、R15−C(S)−S−、R15−S−C(S)−、R15−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−、R15−O−C(O)−O−、R15−O−C(O)−S−、R15−S−C(O)−O−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−O−C(S)−O−、R15−O−C(S)−S−、R15−S−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−S−C(O)−S−、R15−S−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−S−、R15−S−C(S)−S−、R15−N(R)−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(S)−S−、R15−S−C(S)−N(R)−、R15−NH−C(N(R))−NH−、R15−S(O)0−2−N(R)−、R15−N(R)−S(O)1−2−及びR15−N(R)−S(O)0−2−N(R)−からなる群から選択され、
しかし、Zが、R15−、R15−C(O)−、R15−N(R)−、R15−O−、R15−S−、R15−S(O)1〜2、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−S(O)−N(R)−又はR15−N(R)−S(O)−である場合、Aは、フェニル、チエニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジル、トリアジニル又はテトラジニルではない。
【0087】
本発明のこの態様による特定の望ましい実施形態では、Zは、R15−C(O)−O−、R15−O−C(O)−N(R)−、R15−C(O)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−N(R)、R15−N(R)−C(S)−N(R)−、R15−N(R)−C(O)−O−、R15−N(R)−C(S)−O−、R15−O−C(S)−N(R)−、R15−O−又はR15−N(R)−である。
【0088】
式(1)の化合物では、各Rは、水素、(C〜Cアルキル)−、Ar−(C〜Cアルキル)−、Het−(C〜Cアルキル)−、Hca−(C〜Cアルキル)−、Cak−(C〜Cアルキル)−、R14−CO−、R14−SO2−、R14−CO−NH−及びR14−CO−O−からなる群から独立に選択され、各アルキル、Ar、Het、Hca及びCakは、任意選択で置換されている。
【0089】
式(1)の化合物では、各Rは、H−、(C〜Cヒドロカルビル)−、Ar−(C〜Cヒドロカルビル)−、Het−(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−及びCak−(C〜Cヒドロカルビル)−からなる群から独立に選択され、ここで任意の(C〜Cヒドロカルビル)−部分、Ar、Het、Hca及びCakは、任意選択で置換されている。
【0090】
式(1)の化合物では、各Rは、H−、任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−(ただし、(C〜Cヒドロカルビル)−が1つの置換基のみを有する場合、置換基はハロ又はアミノではない)、Hca−(C〜C又はC〜Cヒドロカルビル)−及びCak−(C〜Cヒドロカルビル)−からなる群から独立に選択され、ここで任意の(Cヒドロカルビル)−、C〜Cヒドロカルビル部分、−(C〜Cヒドロカルビル)−部分、Hca及びCakは、任意選択で置換されている。
【0091】
式(1)の化合物では、各Rは、H、(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜C又はC〜Cヒドロカルビル)−及びCak−(C〜Cヒドロカルビル)−からなる群から独立に選択され、ここで任意の(C〜Cヒドロカルビル)−部分、(Cヒドロカルビル)−、C〜Cヒドロカルビル部分、Hca及びCakは、任意選択で置換されている。
【0092】
式(1)の化合物では、各Rは、(C〜Cヒドロカルビル)−、Ar−(C〜Cヒドロカルビル)−、Het−(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−及びCak−(C〜Cヒドロカルビル)−からなる群から独立に選択され、ここで任意の(C〜Cヒドロカルビル)−部分、Ar、Het、Hca及びCakは、任意選択で置換されており、ただし、Rは、2(モルホリン−4−イル)エチルではない。
【0093】
式(1)の化合物では、各Rは、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−及びCak−(C〜Cヒドロカルビル)−からなる群から独立に選択され、ここで任意の(C〜Cヒドロカルビル)−部分、Hca及びCakは、任意選択で置換されている。
【0094】
式(1)の化合物では、各R10は、H−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−及びCak−(C〜Cヒドロカルビル)−からなる群から独立に選択され、ここで任意の(C〜Cヒドロカルビル)−部分、Hca及びCakは、任意選択で置換されている。
【0095】
式(1)の化合物では、各R11は、H−、(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−及びCak−(C〜Cヒドロカルビル)−からなる群から独立に選択され、ここで任意の(C〜Cヒドロカルビル)−部分、Hca及びCakは、任意選択で置換されている。
【0096】
式(1)の化合物では、各R12は、(C〜Cヒドロカルビル)−、Ar−(C〜Cヒドロカルビル)−、Het−(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−、Cak−(C〜Cヒドロカルビル)−からなる群から独立に選択され、ここで任意の(C〜Cヒドロカルビル)−部分、Ar、Het、Hca及びCakは、任意選択で置換されている。
【0097】
式(1)の化合物では、各R13は、H−、(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−及びCak−(C〜Cヒドロカルビル)−からなる群から独立に選択され、ここで任意の(C〜Cヒドロカルビル)−部分、Hca及びCakは、任意選択で置換されている。
【0098】
式(1)の化合物では、各R14は、任意選択で置換されたAr−及び任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−からなる群から独立に選択される。
【0099】
式(1)の化合物では、各R15は、H−、(C〜Cヒドロカルビル)−、Ar−(C〜Cヒドロカルビル)−、Het−(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−及びCak−(C〜Cヒドロカルビル)−からなる群から独立に選択され、ここで任意の(C〜Cヒドロカルビル)−部分、Ar、Het、Hca及びCakは、任意選択で置換されている。
【0100】
本発明による化合物の好ましい実施形態では、
Tは、−NHであり、
Aは、フェニルであり、
Xは、
【化15】

である。
【0101】
本発明による化合物の好ましい実施形態では、
Tは、−NHであり、
Aは、フェニルであり、
Xは、
【化16】

であり、
式中、
=1であり、
は、R−N(R)−、R−O−、R11−C(O)−N(R)−、R15−C(S)−N(R)−、R12−O−C(O)−N(R)−、R−N(R)−C(O)−O−、R15−N(R)−C(S)−O−、R−N(R)−C(O)−N(R)−、R−N(R)−C(S)−N(R)−、R15−O−C(S)−N(R)−及びR−S(O)0〜2−N(R)−からなる群から選択される。
【0102】
本発明による化合物の好ましい実施形態では、
Tは、−NHであり、
Aは、フェニルであり、
Xは、
【化17】

であり、
式中、
=1であり、
は、R−N(R)−、R−O−、R11−C(O)−N(R)−、R15−C(S)−N(R)−、R12−O−C(O)−N(R)−、R−N(R)−C(O)−O−、R15−N(R)−C(S)−O−、R−N(R)−C(O)−N(R)−、R−N(R)−C(S)−N(R)−、R15−O−C(S)−N(R)−及びR−S(O)0〜2−N(R)−からなる群から選択され、
は、H、任意選択で置換された(C〜Cアルキル)−、又は任意選択で置換されたHet−(C〜Cアルキル)−、好ましくは、Hであり、
は、任意選択で置換されたHet−(C〜Cヒドロカルビル)−であり、
は、Hであり、
は、H又は任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−であり、
は、任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−であり、
11は、任意選択で置換されたHca−(C〜Cヒドロカルビル)−又は任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−であり、
12は、(C〜Cヒドロカルビル)−、Ar−(C〜Cヒドロカルビル)−、Het−(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−又はCak−(C〜Cヒドロカルビル)−(それらの各々は任意選択で置換されている)であり、
15は、任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−又は任意選択で置換されたHca−(C〜Cヒドロカルビル)−である。
【0103】
本発明による化合物の好ましい実施形態では、
Tは、−NHであり、
Aは、フェニルであり、
Xは、
【化18】

であり、
式中、
=1であり、
は、R−N(R)−、R11−C(O)−N(R)−及びR12−O−C(O)−N(R)−からなる群から選択される。
【0104】
本発明による化合物の好ましい実施形態では、
Tは、−NHであり、
Aは、フェニルであり、
Xは、
【化19】

であり、
式中、
=1であり、
は、R−N(R)−、R11−C(O)−N(R)−及びR12−O−C(O)−N(R)−からなる群から選択され、
は、H、任意選択で置換された(C〜Cアルキル)−、又は任意選択で置換されたHet−(C〜Cアルキル)−、好ましくは、Hであり、
は、H又は任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−であり、
11は、任意選択で置換されたHca−(C〜Cヒドロカルビル)−又は任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−であり、
12は、(C〜Cヒドロカルビル)−、Ar−(C〜Cヒドロカルビル)−、Het−(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−又はCak−(C〜Cヒドロカルビル)−(それらの各々は任意選択で置換されている)である。
【0105】
本発明による化合物の好ましい実施形態では、
Tは、−NHであり、
Aは、フェニルであり、
Xは、
【化20】

であり、
式中、
=1であり、
は、R12−O−C(O)−N(R)−であり、
は、H又は任意選択で置換されたHet−(C〜Cアルキル)−、好ましくは、Hであり、
12は、(C〜Cヒドロカルビル)−、Ar−(C〜Cヒドロカルビル)−、Het−(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−又はCak−(C〜Cヒドロカルビル)−、好ましくは(C〜Cヒドロカルビル)−(それらの各々は任意選択で置換されている)である。
【0106】
本発明による化合物の好ましい実施形態では、
Tは、−NHであり、
Aは、フェニルであり、
Xは、
【化21】

であり、
式中、
=1であり、
は、R12−O−C(O)−N(R)−であり、
は、H又は任意選択で置換されたHet−(C〜Cアルキル)−、好ましくは、Hであり、
12は、(C〜Cヒドロカルビル)−、Ar−(C〜Cヒドロカルビル)−、Het−(C〜Cヒドロカルビル)−、Hca−(C〜Cヒドロカルビル)−又はCak−(C〜Cヒドロカルビル)−、好ましくは(C〜Cヒドロカルビル)−であり、それらの各々は、アルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジ−アルキルアミノ、アルコキシ、−CF及びハロからなる群から選択される置換基で任意選択で置換されている。
【0107】
本発明による化合物の好ましい実施形態では、
Tは、−NHであり、
Aは、フェニルであり、
Xは、
【化22】

であり、
式中、
=1であり、
は、R12−O−C(O)−N(R)−であり、
は、H又は任意選択で置換されたHet−(C〜Cアルキル)−、好ましくは、Hであり、
12は、アルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジ−アルキルアミノ、アルコキシ、−CF及びハロからなる群から選択される置換基で任意選択で置換されている(C〜Cヒドロカルビル)−である。
【0108】
本発明による化合物の好ましい実施形態では、
Tは、−NHであり、
Aは、フェニルであり、
Xは、
【化23】

であり、
式中、
=1であり、
は、R−N(R)−であり、
は、任意選択で置換されたHet−(C〜Cアルキル)−であり、
は、H又は任意選択で置換された(C〜Cヒドロカルビル)−である。
【0109】
上記のR及びR〜R15の定義において、各Arは、独立に任意選択で置換されたアリールであり、各Hetは、独立に任意選択で置換されたヘテロアリールであり、各Hcaは、独立に任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルであり、各Cakは、独立に任意選択で置換されたシクロアルキルである。
【0110】
本発明の好ましい一実施形態において、化合物は、
(S)−2−(ジメチルアミノ)エチル−1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)−フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート;
(S)−メチル1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート;
(S)−エチル1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート;
(S)−tert−ブチル1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート;
(S)−イソブチル1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート;
(S)−ベンジル1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート;
(S)−N−(1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イル)モルホリン−4−カルボキサミド;
((S)−ピリジン−3−イルメチル−1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート;
(S)−N−(2−アミノフェニル)−4−(3−(3−(ピリジン−3−イルメチル)ウレイド)ピロリジン−1−イル)ベンズアミド;
(S)−2−メトキシエチル−1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート;
(R)−2−メトキシエチル1−(5−(2−アミノフェニルカルバモイル)ピリジン−2−イル)ピロリジン−3−イルカルバメート;
(S)−N−(2−アミノフェニル)−4−(3−(3−(ピリジン−3−イルメチル)チオウレイド)ピロリジン−1−イル)ベンズアミド;
(S)−O−メチル1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバモチオアート;
(S)−2,2,2−トリフルオロエチル1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)−ピロリジン−3−イルカルバメート;
(S)−N−(2−アミノフェニル)−4−(3−(2−(ジメチルアミノ)アセトアミド)ピロリジン−1−イル)ベンズアミド;
(S)−ピリジン−4−イルメチル1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート;
(S)−ピリジン−2−イルメチル1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート;
(S)−3−(ジメチルアミノ)プロピル1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート;
(S)−フラン−3−イルメチル1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート;
(R)−1−メチルピロリジン−3−イル(S)−1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート;
(S)−1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルアセテート;
(S)−N−(2−アミノフェニル)−4−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)ベンズアミド;
(S)−1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルエチルカルバメート;
(S)−O−1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イル2−モルホリノエチルカルバモチオエート;
(S)−N−(2−アミノフェニル)−4−(3−(ジメチルアミノ)ピロリジン−1−イル)ベンズアミド;
(S)−N−(2−アミノフェニル)−4−(3−(フェニルメチルスルホンアミド)ピロリジン−1−イル)ベンズアミド;
(S)−2−モルホリノエチル1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート;
(S)−メチル1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イル(ピリジン−3−イルメチル)カルバメート;
(S)−ベンジル1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イル(3,4,5−トリメトキシベンジル)カルバメート;
(S)−イソプロピル1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート;
(S)−シクロプロピルメチル1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート;
(S)−テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート、
(R)−N−(2−アミノフェニル)−4−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)ベンズアミド、
(S)−N−(2−アミノフェニル)−4−(3−(ピリジン−2−イルアミノ)ピロリジン−1−イル)ベンズアミド及び(S)−N−(2−アミノフェニル)−4−(3−(ピリジン−4−イルアミノ)ピロリジン−1−イル)ベンズアミド
からなる群から選択される。
【0111】
本発明の他の好ましい実施形態では、化合物は、
(S)−エチル1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート、
(S)−2−メトキシエチル−1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート、及び
(S)−N−(2−アミノフェニル)−4−(3−(ピリジン−2−イルアミノ)ピロリジン−1−イル)ベンズアミド
からなる群から選択される。
【0112】
明細書を通して、1つ又は複数の化学基の好ましい実施形態が同定される。また好ましいのは、好ましい実施形態の組合せである。本発明のありとあらゆる実施形態を、任意の他の実施形態と併せて、本発明のさらなるさらにより好ましい実施形態を説明することができることが理解される。例えば本発明は、化合物における基Aの好ましい実施形態を説明し、基Zの好ましい実施形態を説明する。したがって、一例として、本発明の範囲内としてまた意図するものは、基Aの好ましい例が説明した通りであり、基Zの好ましい例が説明した通りである化合物である。本発明は、その精神又は本質的な特性から逸脱することなしに、他の特定の形態において具体化することができる。さらに、一実施形態の任意の要素を、実施形態のいずれかからのありとあらゆる他の要素と合わせて、さらなる実施形態を説明することが意図されている。
【0113】
本発明のいくつかの化合物は、キラル中心及び/又は幾何異性中心を有する(E−及びZ−異性体)場合があり、本発明は、全てのこのような光学、エナンチオマー、ジアステレオマー及び幾何異性体を包含することを理解すべきである。本発明はまた、本明細書において開示されている化合物の全ての互変異性型を含む。本発明の化合物がキラル中心を含む場合、本発明は、このような化合物の鏡像異性的及び/又はジアステレオマー的に純粋な異性体、このような化合物の鏡像異性的及び/又はジアステレオマー的に濃縮した混合物、並びにこのような化合物のラセミ及びスカレミック混合物を包含する。例えば、組成物は、式(1)の化合物のエナンチオマー又はジアステレオマーの混合物を、少なくとも約30%のジアステレオマー又は鏡像体過剰率で含むことができる。本発明の特定の実施形態では、化合物は、少なくとも約50%のエナンチオマー若しくはジアステレオマー過剰率、少なくとも約80%のエナンチオマー若しくはジアステレオマー過剰率、又はさらに少なくとも約90%のエナンチオマー若しくはジアステレオマー過剰率で存在する。本発明の特定のより好ましい実施形態では、化合物は、少なくとも約95%、よりさらに好ましくは、少なくとも約98%のエナンチオマー又はジアステレオマー過剰率、最も好ましくは、少なくとも約99%のエナンチオマー又はジアステレオマー過剰率で存在する。
【0114】
本発明のキラル中心は、S又はR立体配置を有することができる。ラセミ体は、例えば、分別結晶、ジアステレオマー誘導体の分離若しくは結晶化、又はキラルカラムクロマトグラフィーによる分離などの物理的方法によって分割することができる。個々の光学異性体は、これらだけに限定されないが、例えば、光学活性な酸との塩の形成、それに続く結晶化などの、従来の方法を含めた任意の適切な方法によって、キラル前駆体/中間体から、又はラセミ化合物から出発することによって得ることができる。
【0115】
本発明の他の態様は、上記の式(1)の化合物のN−オキシド、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、複合体及びプロドラッグを提供する。
【0116】
本発明の化合物は塩を形成し、これもまた本発明の範囲内である。本明細書において式(I)の化合物への言及は、別段の指示がない限りその塩への言及を含むと理解される。
【0117】
「塩(複数可)」という用語は、本明細書において用いられる場合、無機及び/又は有機の酸及び塩基と形成される酸性塩及び/又は塩基性塩を表す。さらに、本発明の化合物が、これらに限定されないがピリジン又はイミダゾールなどの塩基性部分、及びこれらに限定されないがカルボン酸などの酸性部分の両方を含有する場合、双性イオン(「分子内塩」)が形成される場合があり、本明細書で使用する場合、「塩(複数可)」という用語内に含まれる。例えば、調製の間に用いられ得る単離又は精製ステップにおいて他の塩もまた有用であるが、薬学的に許容される(すなわち、無毒性(最小の望ましくない毒性学的影響を示す又は毒性学的影響を示さない)で生理学的に許容できる)塩が好ましい。本発明の化合物の塩は、例えば、本発明の化合物を、塩が沈殿する媒体などの媒体中又は水性媒体中で、当量などのある量の酸又は塩基と反応させることによって、続いて凍結乾燥することによって形成させることができる。特定の場合、1当量を超える酸(塩基)を使用して、それによって例えば、二塩又は三塩を提供することができる。
【0118】
これらに限定されないがアミン又はピリジン又はイミダゾール環などの塩基性部分を含有する本発明の化合物は、種々の有機酸及び無機酸と塩を形成することができる。例示的な酸付加塩には、酢酸塩(酢酸又はトリハロ酢酸、例えば、トリフルオロ酢酸と形成されるものなど)、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、ヒドロキシエタンスルホン酸塩(例えば、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩(例えば、2−ナフタレンスルホン酸塩)、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩(例えば、3−フェニルプロピオン酸塩)、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩(硫酸と形成されるものなど)、スルホン酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩(トシレート、ウンデカノエートなど)などが挙げられる。
【0119】
これらに限定されないがカルボン酸などの酸性部分を含有する本発明の化合物は、種々の有機塩基及び無機塩基と塩を形成することができる。例示的な塩基性塩には、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(ナトリウム、リチウム及びカリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム及びマグネシウム塩など)、有機塩基(例えば、有機アミン)との塩(ベンザチン、ジシクロヘキシルアミン、ヒドラバミン(N,N−ビス(デヒドロアビエチル)エチレンジアミンと共に形成される)、N−メチル−D−グルカミン、N−メチル−D−グリカミド、t−ブチルアミンなど)、及びアミノ酸(アルギニン、リシンなど)との塩が挙げられる。塩基性窒素含有基は、低級ハロゲン化アルキル(例えば、塩化、臭化及びヨウ化メチル、エチル、プロピル及びブチル)、硫酸ジアルキル(例えば、硫酸ジメチル、ジエチル、ジブチル及びジアミル)、長鎖ハロゲン化物(例えば、塩化、臭化及びヨウ化デシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリル)、ハロゲン化アラルキル(例えば、臭化ベンジル及びフェネチル)、並びにその他などの薬剤によって四級化されていてもよい。
【0120】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、上記で同定した化合物の所望の生物活性を保持し、望ましくない毒性学的影響が非常に小さい又は全く示さない塩を意味する。このような塩の例には、それだけに限らないが、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、及び硝酸))と形成される酸付加塩、及び有機酸(酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パモン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタリンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、及びポリガラクツロン酸など)と形成される塩が挙げられる。化合物はまた、当業者には公知の薬学的に許容される第四級塩として投与することができ、これには特に、式(−NR)+Z(式中、Rは、水素、アルキル、又はベンジルであり、Zは、塩素、臭素、ヨウ素、−O−アルキル、トルエンスルホネート、メチルスルホネート、スルホネート、ホスフェート、又はカルボキシレート(ベンゾエート、スクシネート、アセテート、グリコレート、マレエート、マレート、シトレート、タルトレート、アスコルベート、ベンゾエート、シンナモエート、マンデロエート、ベンジロエート、又はジフェニルアセテートなど)を含めた対イオンである)の第四級アンモニウム塩が含まれる。
【0121】
本発明はまた、本発明の化合物のプロドラッグを含む。「プロドラッグ」という用語は、担体に共有結合した化合物を表すことを意図し、このプロドラッグは、プロドラッグが哺乳動物対象に投与された場合、プロドラッグの活性成分を放出することができる。活性成分の放出は、in vivoで起こる。プロドラッグは、当業者には公知の技術によって調製することができる。これらの技術は、所与の化合物において適切な官能基を一般に修飾する。しかし、これらの修飾された官能基は、本来の官能基を通常の操作によって又はin vivoで再生させる。本発明の化合物のプロドラッグは、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシル又は同様の基が修飾されている化合物を含む。プロドラッグの例には、それだけに限らないが、エステル(例えば、酢酸エステル、ギ酸エステル、及び安息香酸エステル誘導体)、本発明の化合物におけるヒドロキシ又はアミノ官能基のカルバメート(例えば、N,N−ジメチルアミノカルボニル)、アミド(例えば、トリフルオロアセチルアミノ、アセチルアミノなど)などが挙げられる。
【0122】
本発明の化合物は、in vivo加水分解性エステル又はin vivo加水分解性アミドの形態で投与してもよい。カルボキシ又はヒドロキシ基を含有する本発明の化合物のin vivo加水分解性エステルは、例えば、ヒト又は動物体において加水分解され、親酸又はアルコールが生成される薬学的に許容されるエステルである。カルボキシについての適切な薬学的に許容されるエステルは、C1〜6−アルコキシメチルエステル(例えば、メトキシメチル)、C1〜6−アルカノイルオキシメチルエステル(例えば、例えば、ピバロイルオキシメチル)、フタリジルエステル、C3〜8−シクロアルコキシカルボニルオキシC1〜6−アルキルエステル(例えば、1−シクロヘキシルカルボニルオキシエチル);1,3−ジオキソレン−2−オニルメチルエステル(例えば、5−メチル−1,3−ジオキソレン−2−オニルメチル;及びC1〜6−アルコキシカルボニルオキシエチルエステル(例えば、1−メトキシカルボニルオキシエチル)を含み、本発明の化合物において任意のカルボキシ基において形成することができる。
【0123】
ヒドロキシ基を含有する本発明の化合物のin vivo加水分解性エステルには、リン酸エステル及びα−アシルオキシアルキルエーテル、及びエステルのin vivo加水分解の結果として分解して親ヒドロキシ基を生じさせる関連する化合物などの、無機エステルが挙げられる。α−アシルオキシアルキルエーテルの例には、アセトキシメトキシ及び2,2−ジメチルプロピオニルオキシ−メトキシが挙げられる。ヒドロキシについてのin vivo加水分解性エステル形成基の選択には、アルカノイル、ベンゾイル、フェニルアセチル及び置換ベンゾイル及びフェニルアセチル、アルコキシカルボニル(アルキルカルボネートエステルを生じさせる)、ジアルキルカルバモイル及びN−(N,N−ジアルキルアミノエチル)−N−アルキルカルバモイル(カルバメートを生じさせる)、N,N−ジアルキルアミノアセチル及びカルボキシアセチルが挙げられる。ベンゾイル上の置換基の例には、環窒素原子からメチレン基を介してベンゾイル環の3位又は4位に結合しているモルホリノ及びピペラジノが挙げられる。カルボキシ基を含有する本発明の化合物のin vivo加水分解性アミドについての適切な値は、例えば、N−C〜Cアルキル又はN,N−ジ−C〜Cアルキルアミド(N−メチル、N−エチル、N−プロピル、N,N−ジメチル、N−エチル−N−メチル又はN,N−ジエチルアミドなど)である。
【0124】
対象に投与されると、プロドラッグは、代謝過程又は化学過程によって化学変換を受け、本発明の化合物、又はその塩及び/若しくは溶媒和物を生じさせる。本発明の化合物の溶媒和物には、例えば水和物が挙げられる。
【0125】
本発明の化合物は、下記の実施例において記載されている合成法を使用して調製することができる。特定の化合物はまた、各々が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2005/0245518号、国際特許出願公開第WO03/092686号、及び国際特許出願公開第WO03/087057号において記載されているものなどの、当業者には知られた方法を使用して作製することができる。
【0126】
本発明の他の態様は、上記のような式(1)の化合物、N−オキシド、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、複合体若しくはプロドラッグ、又はそのラセミ混合物、ジアステレオマー、エナンチオマー若しくは互変異性体を含む組成物を提供する。例えば、本発明の一実施形態では、組成物は、少なくとも約30%のエナンチオマー若しくはジアステレオマー過剰率で存在する式(1)の化合物、N−オキシド、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、複合体又はプロドラッグを含む。本発明の特定の望ましい実施形態では、式(1)の化合物、N−オキシド、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、複合体又はプロドラッグは、少なくとも約50%、少なくとも約80%、又はさらに少なくとも約90%のエナンチオマー若しくはジアステレオマー過剰率で存在する。本発明の特定の他の望ましい実施形態では、式(1)の化合物、N−オキシド、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、複合体又はプロドラッグは、少なくとも約95%、さらに好ましくは、少なくとも約98%、またさらに好ましくは、少なくとも約99%のエナンチオマー若しくはジアステレオマー過剰率で存在する。本発明の他の実施形態では、式(1)の化合物、N−オキシド、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、複合体又はプロドラッグは、実質的にラセミ混合物として存在する。
【0127】
本発明の他の態様は、式(2)を有する化合物、そのN−オキシド、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、複合体若しくはプロドラッグ、又はそのラセミ混合物、ジアステレオマー、エナンチオマー若しくは互変異性体を含む組成物を提供し、
【化24】

式中、Tは、NH又はOHであり、Xは、式(1)に関して上記の通りである。式(2)の化合物は、X部分が結合している炭素において(S)−立体化学配置を有する。例えば、本発明の一実施形態では、組成物は、少なくとも約30%のエナンチオマー又はジアステレオマー過剰率で存在する、式(2)の化合物、N−オキシド、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、複合体又はプロドラッグを含む。本発明の特定の望ましい実施形態では、式(2)の化合物、N−オキシド、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、複合体又はプロドラッグは、少なくとも約50%、少なくとも約80%、又はさらに少なくとも約90%のエナンチオマー又はジアステレオマー過剰率で存在する。本発明の特定の他の望ましい実施形態では、式(2)の化合物、N−オキシド、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、複合体又はプロドラッグは、少なくとも約95%、さらに好ましくは、少なくとも約98%、さらに好ましくは、少なくとも約99%のエナンチオマー又はジアステレオマー過剰率で存在する。
【0128】
医薬組成物
本発明の他の態様は、化合物、そのN−オキシド、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、複合体若しくはプロドラッグ、又はそのラセミ混合物、ジアステレオマー、エナンチオマー若しくは互変異性体、又は上記及び下記の実施例に記載の本発明の組成物と、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤とを含む、医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、当技術分野で周知の任意の方法によって製剤することができ、これらだけに限定されないが、非経口、経口、舌下、経皮的、局所的、鼻腔内、気管内、又は直腸内を含めた任意の経路によって投与するために調製することができる。特定の好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、病院環境において静脈内に投与される。特定の他の好ましい実施形態では、投与は、好ましくは経口経路によるものであってよい。医薬組成物は、それだけに限らないが、溶液剤又は懸濁剤が挙げられる任意の形態であってよい。経口投与のために、製剤は、錠剤又はカプセル剤の形態であってよい。鼻腔内投与のために、医薬組成物は、散剤、点鼻薬、又はエアゾール剤の形態であってよい。医薬組成物は、局所的又は全身的に投与することができる。
【0129】
担体の特性は、投与経路にによって決まるであろう。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」という用語は、細胞、細胞培養物、組織、又は生物体などの生体系と適合性があり、活性成分(複数可)の生物活性の有効性を妨げない無毒性物質を意味する。したがって、本発明による組成物は、阻害剤に加えて、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤、及び当技術分野で周知の他の物質を含有してもよい。薬学的に許容される製剤の調製は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、(編)A.Gennaro、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1990において記載されている。
【0130】
化合物、N−オキシド、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、複合体、プロドラッグ若しくは混合物、又はそのラセミ混合物、ジアステレオマー、エナンチオマー若しくは互変異性体は、薬学的に許容される担体又は希釈剤中に、治療される患者において重篤な毒作用をもたらすことなく、患者に治療有効量を送達するのに十分な量で含まれる。上記の状態の全てのための活性化合物の好ましい用量は、約0.01〜300mg/kg、好ましくは、0.1〜100mg/kg/日、より一般には0.5〜約25mg/レシピアントの体重(キログラム)/日の範囲である。典型的な局所投与量は、適切な担体中の0.01〜3%wt/wtの範囲であろう。薬学的に許容される誘導体の有効量範囲は、送達される親化合物の重量に基づいて計算することができる。誘導体がそれ自体で活性を示す場合、誘導体の重量を使用して、又は当業者には公知の他の手段によって、有効量を上記のように推定することができる。
【0131】
治療される特定の状態又は疾患によって、その状態又は疾患を治療するために通常投与することができるさらなる治療剤もまた、本発明の組成物中に存在することができる。代わりに、このような薬剤の投与は、本発明による組成物の投与と順次に又は同時に行ってもよい。すなわち、本発明の化合物は、単独の医薬品として、又は1種若しくは複数の他のさらなる治療剤(医薬品)と組み合わせて投与することができ、組合せは許容されない有害な作用をもたらさない。これは、癌などの過剰増殖性疾患の治療に特に関連することがある。この場合には、本発明の化合物は、公知の抗癌剤(複数可)、並びにこれらの混合物及び組合せと共に合わせることができる。本明細書で使用する場合、特定の疾患又は状態を治療するために通常投与されるさらなる治療剤は、「治療される疾患又は状態に対して適切」であるとして知られている。本明細書で使用する場合、「さらなる治療剤」は、例えば、化学療法剤及び他の抗増殖剤を含むことを意味する。本発明の特定の好ましい実施形態では、組成物は、1種又は複数の本発明による化合物(複数可)を含む。本発明の特定の好ましい実施形態では、組成物は、1種若しくは複数の本発明による化合物(複数可)及び/又は当技術分野において公知の若しくは発見されるであろう他のHDAC阻害剤を含む。このような組成物の活性成分は、好ましくは相乗的に作用して治療効果を生じさせる。
【0132】
特定の実施形態では、公知のHDAC阻害剤は、これらだけに限定されないが、トリコスタチンA、デプデシン、トラポキシン、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、FR901228、MS−27−275、CI−994酪酸ナトリウム、MGCD0103、並びにWO2003/024448、WO2004/069823、WO2001/038322、US6,541,661、WO01/70675、WO2004/035525及びWO2005/030705において見出されるそれらの化合物からなる群から選択される。
【0133】
本発明の第2の態様の特定の好ましい実施形態では、さらなる薬剤は、ヒストンデアセチラーゼ遺伝子の発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。核酸レベル阻害剤(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)及びタンパク質レベル阻害剤(すなわち、ヒストンデアセチラーゼ酵素活性の阻害剤)を合わせた使用は、改善された阻害作用をもたらし、それによって、どちらかが個別に使用された場合に必要な量と比較して、所与の阻害作用を得るのに必要な阻害剤の量を減少させる。本発明のこの態様によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、HDAC−1、HDAC−2、HDAC−3、HDAC−4、HDAC−5、HDAC−6、HDAC−7、HDAC−8、HDAC−9、HDAC−10、HDAC−11、SirT1、SirT2、SirT3、SirT4、SirT5、SirT6及びSirT7の1つ又は複数をコードするRNA又は二本鎖DNAの領域と相補的である(例えば、HDAC−1についてGenBankアクセッション番号U50079、HDAC−2についてGenBankアクセッション番号U31814、及びHDAC−3についてGenBankアクセッション番号U75697を参照されたい)。
【0134】
ヒストンデアセチラーゼの阻害
他の態様では、本発明は、1種又は複数のヒストンデアセチラーゼを、阻害有効量の本発明による化合物、又はその組成物と接触させるステップを含む、1種又は複数のヒストンデアセチラーゼの活性を阻害する方法を提供する。
【0135】
本発明の他の態様は、ヒストンデアセチラーゼの阻害が所望である細胞と、阻害有効量の上記のような式(1)による化合物、又はその組成物を接触させるステップを含む、細胞においてヒストンデアセチラーゼを阻害する方法を提供する。本発明の化合物はヒストンデアセチラーゼを阻害するため、それらは生物学的過程におけるヒストンデアセチラーゼの役割のin vitro研究のために有用な研究ツールである。したがって、本発明の一態様では、細胞を接触させるステップは、in vitroで行われる。
【0136】
「阻害有効量」という用語は、細胞(この細胞は多細胞生物中にある場合がある)において1種又は複数のヒストンデアセチラーゼの活性の阻害をもたらすのに十分な投与量を表すことを意味する。多細胞生物は、植物、真菌又は動物、好ましくは、哺乳動物、さらに好ましくは、ヒトである場合がある。真菌は、植物又は哺乳動物、好ましくは、ヒトに感染している場合があり、したがって植物又は哺乳動物中及び/又はその上にある場合がある。ヒストンデアセチラーゼが多細胞生物中にある場合、本発明のこの態様による方法は、生物体に、本発明による化合物又は組成物を投与するステップを含む。例えば、ヒストンデアセチラーゼが真菌ヒストンデアセチラーゼであり、真菌が、植物又は哺乳動物、好ましくは、ヒトに感染している場合、この方法は、植物又は哺乳動物に、本発明による化合物又は組成物を投与するステップを含む。投与は、これらだけに限定されないが、非経口、経口、舌下、経皮的、局所的、鼻腔内、気管内、又は直腸内を含めた任意の適切な経路によるものであってよい。特定の特に好ましい実施形態では、本発明の化合物は、病院環境において静脈内に投与される。特定の他の好ましい実施形態では、投与は、好ましくは経口経路によるものであってよい。
【0137】
本発明のこれらの態様の特定の好ましい実施形態では、この方法は、ヒストンデアセチラーゼ酵素又はヒストンデアセチラーゼ活性を発現している細胞を、さらなる阻害剤と接触させるステップ、又は生物体にさらなる阻害剤を投与するステップをさらに含む。別々の薬剤を合わせて使用することは、改善された阻害作用をもたらし、それによって、どちらかが単独で使用される場合に必要な量と比較して、所与の阻害作用を得るのに必要な個々の阻害剤の量を減少させる。このような別々の薬剤の投与は、順次に又は同時に行うことができる。同時投与される場合、別々の薬剤は、好ましくは相乗的に作用して治療効果を生じさせる。
【0138】
ヒストンデアセチラーゼの酵素活性の測定は、公知の方法を使用して達成することができる。例えば、Yoshidaら、J.Biol.Chem.、265:17174〜17179(1990)は、トリコスタチンAで処理された細胞においてアセチル化ヒストンを検出することによるヒストンデアセチラーゼ酵素活性の評価について記載している。Tauntonら、Science、272:408〜411(1996)は、内在性及び組換えHDAC−1を使用したヒストンデアセチラーゼ酵素活性の測定方法を同様に記載している。他の方法には、例えばUS2006/0063210において記載されているものが挙げられる。
【0139】
いくつかの好ましい実施形態では、式(1)による化合物は、細胞において全てのヒストンデアセチラーゼと相互作用し、その活性を減少させる。本発明のこの態様によるいくつかの他の好ましい実施形態では、式(1)による化合物は、細胞において全てより少ないヒストンデアセチラーゼと相互作用し、その活性を減少させる。特定の好ましい実施形態では、化合物は、1種のヒストンデアセチラーゼ(例えば、HDAC−1)又はヒストンデアセチラーゼサブグループ(例えば、HDAC−1、HDAC−2、及びHDAC−3)と相互作用し、他のヒストンデアセチラーゼよりもより大きい程度に、その活性を減少させる。化合物がヒストンデアセチラーゼのサブグループの活性を優先的に減少させる場合、サブグループの各メンバーの活性の減少は、同一でも異なってもよい。下記で議論するように、式(1)による特定の特に好ましい化合物は、腫瘍化に関係するヒストンデアセチラーゼと相互作用し、その酵素活性を減少させる化合物である。式(1)による特定の他の化合物は、真菌ヒストンデアセチラーゼと相互作用し、その酵素活性を減少させる。
【0140】
好ましくは、本発明のこの態様による方法は、接触した細胞の細胞増殖の阻害をもたらす。「細胞増殖の阻害」という句は、接触していない細胞と比較して阻害剤と接触した細胞の増殖を遅延させる式(1)による化合物の能力を表すために使用される。細胞増殖の評価は、Coulter細胞カウンター(Coulter、Miami、FL)又は血球計を使用して接触した細胞及び接触していない細胞を数えることによって行うことができる。細胞が充実性増殖(例えば、固形腫瘍又は器官)内にある場合、細胞増殖のこのような評価は、増殖をカリパスで測定し、接触した細胞の増殖の大きさを接触していない細胞と比較することによって行うことができる。
【0141】
好ましくは、化合物と接触した細胞の増殖は、接触していない細胞の増殖と比較して、少なくとも50%遅延される。さらに好ましくは、細胞増殖が100%阻害される(すなわち、接触した細胞の数は増加しない)。最も好ましくは、「細胞増殖の阻害」という句は、接触していない細胞と比較した接触した細胞の数又は大きさの減少を含む。したがって、接触した細胞において細胞増殖を阻害する式(1)による化合物は、接触した細胞が、増殖遅延を起こし、増殖停止を起こし、プログラム細胞死(すなわち、アポトーシスする)を起こし、又は壊死性細胞死を起こすことを誘導する場合がある。
【0142】
式(1)による化合物の細胞増殖を阻害する能力は、非同期的に増殖する細胞の集団の同期化を可能にする。例えば、本発明の式(1)による化合物は、細胞周期のG1又はG2期においてin vitroで増殖する非新生細胞の集団を停止するために使用することができる。このような同期化は、例えば、細胞周期のG1又はG2期の間に発現する遺伝子及び/又は遺伝子産物の同定を可能にする。培養細胞のこのような同期化はまた、新規なトランスフェクションプロトコルの有効性を試験するのに有用である場合があり、トランスフェクション効率は変動し、トランスフェクトされる細胞の特定の細胞周期に左右される。式(1)による化合物の使用は、細胞の集団の同期化を可能にし、それによって増強したトランスフェクション効率の検出を助ける。
【0143】
いくつかの好ましい実施形態では、接触した細胞は新生細胞である。「新生細胞」という用語は、異常な細胞増殖を示す細胞を表すために使用される。好ましくは、新生細胞の異常な細胞増殖は、増加した細胞増殖である。新生細胞は、過形成細胞(in vitroでの増殖の接触阻止の消失を示す細胞、in vivoで転移することができる良性腫瘍細胞、又はin vivoで転移することができ、除去の試み後に再発する場合がある癌細胞)である場合がある。「腫瘍化」という用語は、新生物増殖の成長をもたらす細胞増殖の誘導を表すために使用される。いくつかの実施形態では、式(1)による化合物は、接触した細胞において細胞分化を誘導する。したがって、新生細胞は、ヒストンデアセチラーゼの阻害剤と接触した場合、分化を誘導され、接触した細胞よりも系統的により進歩した非新生娘細胞の産生がもたらされる。
【0144】
いくつかの好ましい実施形態では、接触した細胞は、動物内にある。したがって、本発明は、このような治療を必要としている動物に治療有効量の式(1)による化合物又はその組成物を投与するステップを含む、動物において真菌性感染又は細胞増殖性疾患若しくは状態を治療する方法を提供する。好ましくは、動物は、哺乳動物であり、さらに好ましくは、飼い慣らされた哺乳動物である。最も好ましくは、動物は、ヒトである。
【0145】
「細胞増殖性疾患又は状態」という用語は、異常な細胞増殖、好ましくは、異常に増加した細胞増殖によって特徴付けられる任意の状態を意味することを意図する。このような細胞増殖性疾患又は状態の例には、それだけに限らないが、癌、再狭窄、及び乾癬が挙げられる。特に好ましい実施形態では、本発明は、その体内にある少なくとも1つの新生細胞を有する動物に、治療有効量の式(1)による化合物、又はその組成物を投与するステップを含む、動物において新生細胞増殖を阻害する方法を提供する。
【0146】
本発明のいくつかの化合物は、原生動物源からのヒストンデアセチラーゼに対して阻害活性を有することが意図されている。したがって、本発明はまた、このような治療を必要としている動物に治療有効量の式(1)による化合物を投与するステップを含む、原虫症又は感染症を治療又は予防する方法を提供する。好ましくは、動物は哺乳動物、さらに好ましくは、ヒトである。好ましくは、本発明のこの実施形態によって使用される化合物は、哺乳動物ヒストンデアセチラーゼ、特に、ヒトヒストンデアセチラーゼを阻害するよりもより大きい程度に、原生動物ヒストンデアセチラーゼを阻害する。
【0147】
本発明は、このような治療を必要としている動物に、治療有効量の式(1)による化合物を投与するステップを含む、真菌病又は感染症の治療方法をさらに提供する。好ましくは、動物は、哺乳動物、さらに好ましくは、ヒトである。好ましくは、本発明のこの実施形態によって使用される化合物は、哺乳動物ヒストンデアセチラーゼ、特に、ヒトヒストンデアセチラーゼを阻害するよりもより大きい程度に、真菌ヒストンデアセチラーゼを阻害する。
【0148】
「治療有効量」という用語は、その用語が本明細書において使用される場合、所望の治療効果を引き出す量を意味する。治療効果は、治療される疾患及び所望の結果次第である。それ自体として、治療効果は、疾患と関連する症状の重症度の減少及び/又は疾患の進行の(部分的若しくは完全な)阻害、又は病態の回復若しくは軽減、好ましくは、疾患の解消又は治癒である場合がある。他の実施形態では、治療効果は、特に、動物が病態に罹患しやすいが、まだ罹患していると診断されていない場合、病態が起こるのを防止することができる。さらに、治療効果は、細胞におけるヒストンデアセチラーゼ活性の阻害である場合があり、この細胞は、好ましくは多細胞生物中にある。多細胞生物は、植物、真菌又は動物、好ましくは、哺乳動物、さらに好ましくは、ヒトの場合がある。治療効果を引き出すのに必要な量は、患者の年齢、健康、サイズ及び性別に基づいて決定することができる。最適な量はまた、治療に対する患者の反応のモニタリングに基づいて決定することができる。投与は、これらだけに限定されないが、非経口、経口、舌下、経皮的、局所的、鼻腔内、気管内、又は直腸内を含めた任意の経路による場合がある。特定の特に好ましい実施形態では、本発明の化合物は、病院環境において静脈内に投与される。特定の他の好ましい実施形態では、投与は、好ましくは経口経路による場合がある。
【0149】
全身投与される場合、化合物は好ましくは、約0.01μM〜約100μM、さらに好ましくは、約0.05μM〜約50μM、さらにより好ましくは、約0.1μM〜約25μM、さらにいっそうより好ましくは、約0.5μM〜約25μMの阻害剤の血中濃度を得るために十分な投与量で投与される。局所投与のために、これよりかなり低い濃度が有効である場合があり、かなりより高い濃度が許容される場合がある。治療効果を生じさせるのに必要なヒストンデアセチラーゼ阻害剤の投与量は疾患、組織、器官、又は治療される特定の動物若しくは患者によって著しく変化する場合があることを、当業者であれば理解するであろう。
【0150】
特定の疾患又は状態を治療する方法の特定の好ましい実施形態では、この方法は、治療を必要としている生物体にさらなる治療剤を投与するステップをさらに含む。別々の薬剤の合わせた使用は、改善された治療効果をもたらし、それによって、どちらかが単独で使用される場合に必要な量と比較して、所与の治療効果を得るのに必要な個々の治療剤の量を減少させる。このような別々の薬剤の投与は、順次に又は同時に行うことができる。同時投与される場合、別々の薬剤は、好ましくは相乗的に作用して治療効果を生じさせる。
【0151】
本発明のこの態様の特定の好ましい実施形態では、さらなる治療剤は、ヒストンデアセチラーゼの発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。核酸レベル阻害剤(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)及びタンパク質レベル阻害剤(すなわち、ヒストンデアセチラーゼ酵素活性の阻害剤)を合わせた使用は、改善された治療効果をもたらし、それによって、どちらかが個別に使用された場合に必要な量と比較して、所与の治療効果を得るのに必要な阻害剤の量を減少させる。本発明のこの態様によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、HDAC−1、HDAC−2、HDAC−3、HDAC−4、HDAC−5、HDAC−6、HDAC−7、HDAC−8、HDAC−9、HDAC−1、HDAC−11、SirT1、SirT2、SirT3、SirT4、SirT5、SirT6及び/又はSirT7をコードするRNA又は二本鎖DNAの領域と相補的である(例えば、HDAC−1についてGenBankアクセッション番号U50079、HDAC−2についてGenBankアクセッション番号U31814、及びHDAC−3についてGenBankアクセッション番号U75697を参照されたい)。
【0152】
本発明の目的のために、「オリゴヌクレオチド」という用語は、2つ以上のデオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、又は2’−置換リボヌクレオシド残基、又は任意のこれらの組合せのポリマーを含む。好ましくは、このようなオリゴヌクレオチドは、約6〜約100個のヌクレオシド残基、さらに好ましくは、約8〜約50個のヌクレオシド残基、最も好ましくは、約12〜約30個のヌクレオシド残基を有する。ヌクレオシド残基は、多数の公知のヌクレオシド間結合のいずれかによって互いに結合している場合がある。このようなヌクレオシド間結合には、これらだけに限定されないが、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホネート、アルキルホスホノチオエート、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、シロキサン、カルボネート、カルボキシメチルエステル、アセトアミデート、カルバメート、チオエーテル、架橋ホスホロアミデート、架橋メチレンホスホネート、架橋ホスホロチオエート及びスルホンヌクレオシド間結合が挙げられる。特定の好ましい実施形態では、これらのヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、ホスホロチオエート、又はホスホロアミデート結合、又はこれらの組合せの場合がある。オリゴヌクレオチドという用語はまた、化学修飾された塩基若しくは糖を有する、且つ/又はこれらだけに限定されないが親油性基、挿入剤、ジアミン及びアダマンタンを含めたさらなる置換基を有するこのようなポリマーを包含する。
【0153】
本発明の目的のために、「2’−置換リボヌクレオシド」という用語は、ヒドロキシル基がペントース部分の2’位で置換され、2’−O−置換リボヌクレオシドを生じるリボヌクレオシドを含む。好ましくは、このような置換は、1〜6個の飽和又は不飽和の炭素原子を含有する低級アルキル基と、又は2〜6個の炭素原子を有するアリール若しくはアリル基との置換であり、このようなアルキル、アリール若しくはアリル基は、非置換の場合があり、又は例えば、ハロ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、カルボキシル、カルボアルコキシル、若しくはアミノ基で置換されている場合がある。「2’−置換リボヌクレオシド」という用語はまた、2’−ヒドロキシル基がアミノ基又はハロ基、好ましくは、フルオロで置き換えられているリボヌクレオシドを含む。
【0154】
本発明のこの態様において用いられる特に好ましいアンチセンスオリゴヌクレオチドは、キメラオリゴヌクレオチド及びハイブリッドオリゴヌクレオチドを含む。
【0155】
本発明の目的のために、「キメラオリゴヌクレオチド」は、複数のタイプのヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドを意味する。このようなキメラオリゴヌクレオチドの1つの好ましい例は、好ましくは約2〜約12個のヌクレオチドを含む、ホスホロチオエート、ホスホジエステル又はホスホロジチオエート領域と、アルキルホスホネート又はアルキルホスホノチオエート領域とを含む、キメラオリゴヌクレオチドである(例えば、Pedersonら、米国特許第5,635,377号及び同第5,366,878号を参照されたい)。好ましくは、このようなキメラオリゴヌクレオチドは、ホスホジエステル及びホスホロチオエート結合、又はこれらの組合せから選択される少なくとも3個の連続したヌクレオシド間結合を含有する。
【0156】
本発明の目的のために、「ハイブリッドオリゴヌクレオチド」とは、複数のタイプのヌクレオシドを有するオリゴヌクレオチドを意味する。このようなハイブリッドオリゴヌクレオチドの好ましい一例は、リボヌクレオチド又は2’−置換リボヌクレオチド領域を含み、好ましくは、約2〜約12個の2’−置換ヌクレオチド、及びデオキシリボヌクレオチド領域を含む。好ましくは、このようなハイブリッドオリゴヌクレオチドは、少なくとも3個の連続したデオキシリボヌクレオシドを含有し、リボヌクレオシド、2’−置換リボヌクレオシド、好ましくは、2’−O−置換リボヌクレオシド、又はこれらの組合せもまた含有する(例えば、Metelev及びAgrawal、米国特許第5,652,355号を参照されたい)。
【0157】
本発明において用いられるアンチセンスオリゴヌクレオチドの正確なヌクレオチド配列及び化学構造は、オリゴヌクレオチドが、対象の遺伝子の発現を阻害するその能力を保持する限り、変化させることができる。これは、特定のアンチセンスオリゴヌクレオチドが活性であるかを試験することによって、容易に決定される。この目的のための有用なアッセイには、遺伝子の産物をコードするmRNAの定量化、遺伝子の産物についてのウエスタンブロッティング分析アッセイ、酵素的に活性な遺伝子産物についての活性アッセイ、又は軟寒天増殖アッセイ、又はレポーター遺伝子コンストラクトアッセイ、又はin vivo腫瘍増殖アッセイ(それらの全ては、本明細書又はRamchandaniら、(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA94:684〜689において詳細に記載されている)が挙げられる。
【0158】
本発明において用いられるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、H−ホスホネート化学、ホスホラミダイト化学、又はH−ホスホネート化学及びホスホラミダイト化学の組合せ(すなわち、いくつかのサイクルについてはH−ホスホネート化学、及び他のサイクルについてはホスホラミダイト化学)を含めた周知の化学的アプローチを使用して、適切な固体支持体上で便利に合成することができる。適切な固体支持体には、制御細孔性ガラス(CPG)(例えば、Pon,R.T.(1993)Methods in Molec.Biol.20:465〜496を参照されたい)などの固相オリゴヌクレオチド合成のために使用される標準的な固体支持体のいずれかが含まれる。
【0159】
特に好ましいオリゴヌクレオチドは、例えば、それらの両方が参照により本明細書中に組み込まれているUS2003/0078216及びUS2002/0061860において記載されているヌクレオチド配列を含む、約13〜約35個のヌクレオチドのヌクレオチド配列を有する。まださらに特に好ましいオリゴヌクレオチドは、約15〜約26個のヌクレオチドのヌクレオチド配列を有する。
【0160】
上記は、本発明の様々な態様、及びその例を単に要約するものであり、本質的に限定的なものではない。本発明の特定の態様及び実施形態を、下記の実施例においてより詳細に説明する。
【実施例】
【0161】
合成例
スキーム1
【化25】
【0162】
(実施例1)
(S)−2−(ジメチルアミノ)エチル−1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)−フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート(119)
出発物質:(S)−tert−ブチル4−(3−アミノピロリジン−1−イル)ベンゾエート(17)
tert−ブチル4−フルオロベンゾエート(1、1.00g、5.1mmol)、(S)−3−アミノピロリジン(1.5当量)及びKCO(0.84g、6.1mmol、1.2当量)の混合物を、4mLの無水DMSOに懸濁させる。懸濁液を、密封したフラスコ内でN下135℃にて16時間撹拌し、室温に冷却し、ジクロロメタン(300mL)で希釈し、飽和水性NaHCO及び水で連続的に洗浄し、MgSO上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮し、表題化合物17(1.22g、91%収率)を得る。
【化26】
【0163】
ステップ1:(S)−tert−ブチル4−(3−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)ピロリジン−1−イル)ベンゾエート(115)
化合物17(4.37g、16.72mmol)のTHF(30mL)溶液を、0℃に冷却し、EtN(4.6mL、3.38g、33mmol)及びクロロギ酸ベンジル(2.8mL、3.42g、20mmol)で連続的に処理した。反応混合物を0℃で2時間撹拌し、水性飽和NHCl溶液(30mL)を加えることによってクエンチし、EtOAcで抽出した。抽出物をNaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物を、ヘキサン中の30%EtOAcを溶離液として使用してフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、表題化合物115(3g、45%収率)を得た。LRMS(ESI):(計算値)396.20(実測値)397.2(MH)+。
【0164】
ステップ2:(S)−tert−ブチル2−(2−(4−(3−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)ピロリジン−1−イル)ベンズアミド)フェニル)カルバメート(116)
化合物115(3g、7.57mmol)のジクロロメタン(100mL)懸濁液に、トリフルオロ酢酸(30mL)を加えた。溶液を室温で1.5時間撹拌し、真空中で濃縮した。残渣をピリジン(20mL)に溶解し、BOP(3.67g、8.32mmol)を加えた。混合物を10分間撹拌し、(2−アミノ−フェニル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(22)(Seto,C.T.;Mathias,J.P.;Whitesides,G.M.;J.Amer.Chem.Soc.、(1993)、115、1321〜1329)(1.73g、8.38mmol)で処理し、室温で一晩撹拌した。ピリジンを減圧下除去し、粗生成物を、ヘキサン中50〜100%EtOAcの勾配を溶離液として使用してフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、表題化合物116(2.2g、55%収率)を得た。LRMS(ESI):(計算値)530.25(実測値)531.4(MH)+。
【0165】
ステップ3:(S)−tert−ブチル2−(4−(3−アミノピロリジン−1−イル)ベンズアミド)フェニルカルバメート(117)
116(2.2g、4.15mmol)及びPd/C(300mg、木炭上10%)のMeOH(10mL)溶液を、水素雰囲気下にて5時間撹拌した。反応混合物をCelite(登録商標)パッドで濾過し、濃縮し、表題化合物117(1.5g、91%収率)を得て、これをさらに精製せずに次のステップで使用した。
【化27】

(溶媒のシグナルとの重複によって、1Hに相当するシグナルは見当たらない)。LRMS(ESI)(計算値)396.22(実測値)397.2(MH)+。
【0166】
ステップ4:S−tert−ブチル2−(2−(4−(3−((2−(ジメチルアミノ)エトキシ)カルボニルアミノ)ピロリジン−1−イル)ベンズアミド)フェニル)カルバメート(118)
2−(ジメチルアミノ)エタノール(57μL、55mg、0.52mmol)のTHF(1.5mL)溶液を0℃に冷却し、カルボニルジイミダゾール(84mg、0.52mmol)で処理し、0℃で1時間撹拌した。次いで、反応混合物に化合物117(50mg、0.13mmol)を加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌し、濃縮し、残渣を、フラッシュクロマトグラフィーによって精製し(ジクロロメタン中5〜10%MeOH)、表題化合物118(52mg、76%収率)を得た。LRMS(ESI):(計算値)511.28(実測値)512.3(MH)+。
【0167】
代わりに、市販のクロロホルメート又はチオカルボニルジイミダゾールを、化合物118と類似の合成において使用して、最終的に表2において示される標的分子がもたらされた。
【0168】
ステップ5:(S)−2−(ジメチルアミノ)エチル1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート(119)
化合物118(92mg、0.18mmol)のジクロロメタン(5mL)及びTFA(2mL)溶液を、室温で1時間撹拌し、濃縮した。残渣をEtOAc(5mL)で希釈し、飽和NaHCO溶液(5mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物を、ジクロロメタン中の30%MeOHを溶離液として使用してフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、表題化合物119(44mg、59%収率)を得た。
【化28】

(溶媒のシグナルとの重複によって、1Hに相当するシグナルは見当たらない)。LRMS(ESI):(計算値)411.23(実測値)412.2(MH)+。
【0169】
化合物119について説明した手順と類似した手順を使用して、表2における化合物を調製した。
表2
【化29】

【表2-1】

【表2-2】

【表2-3】

【表2-4】

【表2-5】

【表2-6】
【0170】
スキーム2
【化30】
【0171】
(実施例14)
(S)−2,2,2−トリフルオロエチル1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)−ピロリジン−3−イルカルバメート(140)
ステップ1:(S)−tert−ブチル4−(3−((2,2,2−トリフルオロエトキシ)カルボニルアミノ)ピロリジン−1−イル)ベンゾエート(139)
化合物17(400mg、1.52mmol)及びEtN(850ml、6.10mmol)を、撹拌したトリホスゲン(181mg、0.61mmol)のジクロロメタン(8mL)溶液に−60℃で加えた。反応混合物を室温に温め、さらに2時間撹拌した。2,2,2−トリフルオロエタノール(133μl、1.82mmol)を加え、反応混合物を16時間撹拌し、ジクロロメタンで希釈し、飽和水性NHCl、NaHCO及びブラインで洗浄し、MgSO上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。固体残留物をフラッシュクロマトグラフィー(溶離液0.5〜1%MeOH−ジクロロメタン)によって精製し、表題化合物139を白色固体(375mg、64%収率)として得た。
【化31】
【0172】
ステップ2及び3:(S)−2,2,2−トリフルオロエチル1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルカルバメート(140)
ジクロロメタン−トリフルオロ酢酸(0.95mmolの139当たり5mL)の混合物中の139(0.404g、0.95mmol)の溶液を、室温で16時間撹拌し、濃縮し、相当する中間体カルボン酸をそのトリフルオロ酢酸塩(その構造は、スキーム2において示されていない)として得て、それを真空下で保存し、さらに精製せずに使用した(想定した定量的収率)。
【0173】
カルボン酸のピリジン(4mL)溶液、1,2−フェニレンジアミン(1.7当量)及びBOP試薬(1.4当量)を、室温で24時間撹拌し、水(1mL)で処理し、さらに20分間撹拌した。生成した混合物を酢酸エチルで希釈し、炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、MgSO上で乾燥させ、濃縮した。残渣を、シリカゲル上でフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製し(溶離液:ジクロロメタン中3%〜7%イソプロピルアルコールの勾配)、次いで逆相分取HPLC(Aquasil C18カラム、水中15%〜95%MeOHの勾配による溶出)によって、表題化合物140をオフホワイトの固体として61%収率で得た。
【化32】
【0174】
トリエチルアミンなどの適切な塩基が加えられる場合、ピリジンの代わりに、DMFなどの他の溶媒を使用することができることを当業者であれば理解するであろう。
【0175】
化合物140について説明した手順と類似した手順を使用して、表3における化合物を調製した。
表3
【化33】

【表3-1】

【表3-2】

【表3-3】
【0176】
スキーム3
【化34】
【0177】
(実施例21)
(S)−2−メトキシエチル1−(5−(2−アミノフェニルカルバモイル)ピリミジン−2−イル)ピロリジン−3−イルカルバメート(151)
ステップ1:エチル2−(メチルチオ)ピリミジン−5−カルボシレート(148)
147(3.00g、12.9mmol)及びNaHCO(1.08g、12.9mmol)のEtOH(60ml)溶液を、Pd/C10%(2.3g、11.6mmol)上で2日間水素付加した。懸濁液をセライト(登録商標)パッドで濾過した(濾過後にMeOHですすぐ)。濾液及び洗液を集め、蒸発させ、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(溶離液5〜85(AcOEt/ヘキサン)によって精製し、表題化合物148を透明な油(1.79g、70%収率)として得た。LRMS(ESI):(計算値)198.1;(実測値)199.1(M+H)
【0178】
ステップ2:エチル2−(メチルスルホニル)ピリミジン−5−カルボシレート(149)
mCPBA(5.47g、31.68mmol)のジクロロメタン(30ml)懸濁液を、148(1.57g、7.92mmol)のジクロロメタン(20ml)溶液に0℃で加えた。反応混合物を室温に温め、さらに3時間撹拌し、Naの水溶液でクエンチした。混合物をジクロロメタンで抽出し、抽出物を飽和水性NaHCO及びブラインで洗浄し、MgSO上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。固体残留物をフラッシュクロマトグラフィー(溶離液0.5〜1%MeOH/ジクロロメタン)によって精製し、表題化合物149を白色固体(1.23g、67%収率)として得た。
【化35】
【0179】
ステップ3:(S)−エチル2−(3−アミノピロリジン−1−イル)ピリミジン−5−カルボシレート(150)
メチルスルホン149(450mg、1.95mmol)を、3−(S)(−)アミノピロリジン(253mg、2.93mmol)のDME(10ml)溶液に加えた。反応混合物を室温で10分間撹拌し、溶媒を蒸発させた。残った固体をジクロロメタンに溶解し、溶液を飽和水性NaHCO及びブラインで洗浄し、MgSO上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮し、表題化合物150を黄色の固体(416mg、90%収率)として得た。
【化36】
【0180】
ステップ4〜6:(S)−2−メトキシエチル1−(5−(2−アミノフェニルカルバモイル)ピリミジン−2−イル)ピロリジン−3−イルカルバメート(151)
化合物140の合成(実施例14、スキーム2)について上記で説明した手順に従って(しかし、化合物150を化合物17で、2−メトキシエタノールを2,2,2−トリフルオロエタノールで置換する)、表題化合物151を得た。
【化37】
【0181】
化合物151について説明した手順と類似した手順を使用して、表4における化合物を調製した。
表4
【化38】

【表4】
【0182】
スキーム4
【化39】
【0183】
(実施例23)
(S)−2−メトキシエチル1−(5−(2−アミノフェニルカルバモイル)ピリジン−2−イル)ピロリジン−3−イルカルバメート(154)
ステップ1:tert−ブチル2−(6−クロロニコチンアミド)フェニルカルバメート(94)
(2−アミノ−フェニル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(22)(Seto,C.T.;Mathias,J.P.;Whitesides,G.M.;J.Amer.Chem.Soc.、(1993)、115、1321〜1329.)(1.56g、7.49mmol)のMeCN(40mL)溶液に、トリエチルアミン(2.60mL、18.7mmol)及び6−クロロニコチン酸(1.42g、8.99mmol)を加える。混合物を室温で18時間撹拌する。反応が完了すると、溶媒を真空中で除去し、残渣をEtOAcとNHCl溶液に分配する。有機相を集め、次いで水層をEtOAcで抽出する。合わせた有機層をブラインで洗浄し、MgSO上で乾燥させ、蒸発させる。残渣を、EtOAc/ヘキサン(20:80〜50:50の勾配)を溶離液として使用してフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、表題化合物94(2.39g、92%収率)を得る。
【化40】
【0184】
ステップ2:(S)−tert−ブチル2−(6−(3−アミノピロリジン−1−イル)ニコチンアミド)フェニルカルバメート(153)
化合物94(1.00g、2.88mmol)及び3−(S)(−)アミノピロリジン(495mg、5.75mmol)のDMSO(5ml)溶液を、80℃に3時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、さらに16時間撹拌し、水で希釈した。水溶液をAcOEt/ジクロロメタン混合物で抽出し、飽和水性NaHCO及びブラインで洗浄し、MgSO上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮し、表題化合物153をオレンジ色の固体(981mg、86%収率)として得た。
【化41】
【0185】
ステップ3及び4:(S)−2−メトキシエチル1−(5−(2−アミノフェニルカルバモイル)ピリジン−2−イル)ピロリジン−3−イルカルバメート(154)
化合物119(スキーム1、実施例1、ステップ4及び5)の合成について上記で説明した手順に従って(しかし、化合物117を化合物153で置き換え、HCl/ジオキサンをTFAで置き換える)、表題化合物154をベージュ色の固体として得た。
【化42】
【0186】
化合物154について説明した手順と類似した手順を使用して、表5における化合物を調製した。
表5
【化43】

【表5】
【0187】
スキーム5
【化44】
【0188】
(実施例26)
(S)−1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルアセテート(159)
【0189】
(実施例27)
(S)−N−(2−アミノフェニル)−4−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)ベンズアミド(160)
【0190】
(実施例28)
(S)−1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルエチルカルバメート(162)
ステップ1:(S)−tert−ブチル4−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)ベンゾエート(157):
tert−ブチル4−フルオロベンゾエート(1g、5.1mmol)及び(S)−ピロリジン−3−オール(462mg、5.3mmol)のDMSO(10mL)溶液に、粉末炭酸カリウム(705mg、5.1mmol)を加えた。混合物を130℃で4時間撹拌し、室温に冷却した。混合物をEtOAc(300mL)で希釈し、溶液を水(2×100mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、表題化合物157(1.23g、88%収率)を得て、それを次のステップでさらに精製せずに使用した。LRMS(ESI):(計算値)263.15(実測値)264.1(MH)。
【0191】
ステップ2:(S)−tert−ブチル4−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)ベンゾエート(158):
157(1.23g、4.67mmol)のピリジン(20mL)溶液に、無水酢酸(10mL)を加え、反応混合物を室温で2.5時間撹拌した。次いで、混合物を真空中で濃縮し、残渣をトルエンに再溶解した。トルエン溶液を真空中で蒸発させ、表題化合物158(1.47g、定量的収率)を得て、それを次のステップでさらに精製せずに使用した。LRMS(ESI):(計算値)305.16(実測値)306.1(MH)。
【0192】
ステップ3:(S)−1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルアセテート(159)
化合物116(スキーム1、実施例1、ステップ2)の合成について説明したのと同じ手順に従って(しかし、化合物158を化合物115で、ベンゼン−1,2−ジアミンを化合物22で置換する)、表題化合物159を得た。
【化45】
【0193】
ステップ4:(S)−N−(2−アミノフェニル)−4−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)ベンズアミド(160)
アンモニアガスを、化合物159(300mg、0.88mmol)のメタノール(10mL)溶液中に0℃で5分間泡立てた。次いで、反応混合物を室温で3時間撹拌し、濃縮した。残渣を、ヘキサン中75〜100%EtOAcの勾配を溶離液として使用してフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、表題化合物160(135mg、51%収率)を得た。
【化46】
【0194】
ステップ5:(S)−tert−ブチル2−(4−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)ベンズアミド)フェニルカルバメート(161):
159(3.7g、10.9mmol)及びBoc無水物(3.6g、16.4mmol)のTHF(20mL)溶液を、室温で1時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、粗生成物を、ヘキサン中の60%EtOAcを溶離液として使用してフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。得られた物質をMeOH(20mL)に溶解し、アンモニアガスを泡立てた。反応混合物を一晩撹拌し、濃縮し、表題化合物161(2.5g、57%収率)を得て、それを次のステップでさらに精製せずに使用した。LRMS(ESI):(計算値)397.20(実測値)398.1(MH)。
【0195】
ステップ6:(S)−1−(4−(2−アミノフェニルカルバモイル)フェニル)ピロリジン−3−イルエチルカルバメート(162)
161(100mg、0.25mmol)及びイソシアン酸エチル(29μL、28mg、0.375mmol)のジクロロメタン(5mL)溶液を、スズ(II)2−エチルヘキサノエート(44μL、55mg、0.135mmol)で処理した。反応混合物を室温で窒素下一晩撹拌し、濃縮し、ヘキサン中70〜90%EtOAcの勾配を溶離液として使用して、残渣をフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。次いで、得られた物質を、ジクロロメタン及びTFA(3mL)の2:1混合物に溶解し、30分間撹拌し、濃縮した。次いで、残渣をEtOAc(5mL)に溶解し、飽和NaHCO溶液(5mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、表題化合物162(39mg、42%収率)を得た。
【化47】
【0196】
表6
化合物162について説明したのと同じ手順を使用して化合物163(実施例29)を調製した。
【化48】

【表6】
【0197】
スキーム6
【化49】
【0198】
(実施例30)
(S)−N−(2−アミノフェニル)−4−(3−(ジメチルアミノ)ピロリジン−1−イル)ベンズアミド(165)
ステップ1:(S)−tert−ブチル2−(4−(3−(ジメチルアミノ)ピロリジン−1−イル)ベンズアミド)カルバミン酸フェニル(164):
117(スキーム1)(50mg、0.13mmol)及びホルムアルデヒド(40μL、37%水溶液、0.50mmol)の1,2−ジクロロエタン(1mL)溶液を、NaBH(OAc)(82mg、0.39mmol)で処理し、室温で1時間撹拌した。反応混合物を、飽和NaHCO溶液(5mL)を加えることによってクエンチし、次いでジクロロメタン(2×5mL)で抽出した。有機抽出物をNaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣を、ジクロロメタン中の5%MeOHを溶離液として使用してフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、表題化合物164(40mg、75%収率)を得た。LRMS(ESI):(計算値)424.25(実測値)425.2(MH)。
【0199】
ステップ2:(S)−N−(2−アミノフェニル)−4−(3−(ジメチルアミノ)ピロリジン−1−イル)ベンズアミド(165)
化合物119(スキーム1、実施例1、ステップ5)の合成について上記のような同じ手順に従うことによって表題化合物165を46%収率で得た。粗生成物を、ジクロロメタン中の5%MeOHを溶離液として使用してフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【化50】
【0200】
上記で概説した手順と類似した手順を使用して、表7における化合物もまた調製した。
表7
【表7-1】

【表7-2】

【表7-3】

【表7-4】
【0201】
スキーム7
【化51】
【0202】
(実施例40)
(S)−N−(2−アミノフェニル)−4−(3−(ピリジン−2−イルアミノ)ピロリジン−1−イル)ベンズアミド(14)
ステップ1a:(R)−tert−ブチル4−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)ベンゾエート(11)
化合物157(スキーム5、ステップ1)の合成について上記で説明した手順に従うことによって(しかし、(R)−3−ヒドロキシピロリジンを(S)−ヒドロキシピロリジンで置換する)、表題化合物11を91%収率で得た。
【化52】
【0203】
ステップ1:4−ニトロ−N−(ピリジン−2−イル)ベンゼンスルホンアミド(10)
撹拌した2−アミノピリジン9(2.00g、21.3mmol)のTHF(45mL)溶液に、ジクロロメタン(88mL)、塩化4−ニトロベンゼンスルホニル(9.89g、44.6mmol)、及びトリエチルアミン(6.51mL、46.75mmol)を連続的に加えた。溶液を2時間加熱還流し、生成した淡黄色の固体を濾過によって集めた。この物質を200mLのメタノール中で懸濁し、非常に過剰な(>10当量)ナトリウムメトキシドを加えた。混合物を室温で6時間撹拌し、1NのHCl(2mL)で処理し、真空中で80℃にて50mLの容量に濃縮した。この溶液をErlenmeyerフラスコ中に移し、1NのHClでさらに中和した。沈殿物が形成し、これを濾過によって集め、水で洗浄し、乾燥させ、表題化合物10(2.8g、47%収率)を得た。
【化53】
【0204】
ステップ2:(S)−tert−ブチル4−(3−(4−ニトロ−N−(ピリジン−2−イル)フェニルスルホンアミド)ピロリジン−1−イル)ベンゾエート(12)
化合物10(2.54g、9.11mmol)のTHF(45mL)懸濁液に、化合物11(2.64g、10.03mmol)、トリフェニルホスフィン(3.11g、11.84mmol)及びジエチルアゾジカルボキシレート(1.72mL、10.93mmol)を連続的に加えた。混合物を0℃で2時間、室温でさらに2時間撹拌し、次いで過剰なトリフェニルホスフィン(3.11g、11.84mmol)及びジエチルアゾジカルボキシレート(1.72mL、10.93mmol)の両方で処理した。16時間撹拌した後、別の部分のジエチルアゾジカルボキシレート(1.72mL、10.93mmol)を加え、溶液を室温で4時間撹拌した。溶媒を真空中で除去し、残渣をEtOAcとHOに分配した。有機層を集め、MgSO上で乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣を、EtOAc/ヘキサン(30:70)を使用してフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、表題化合物12(1.60g、33%収率)を得た。
【化54】
【0205】
ステップ3:(S)−tert−ブチル4−(3−(ピリジン−2−イルアミノ)ピロリジン−1−イル)ベンゾエート(13)
化合物12(1.41g、2.68mmol)のDMF(13mL)溶液に、水酸化リチウム(382mg、9.09mmol)及びチオグリコール酸(274μL、3.94mmol)を連続的に加えた。混合物を室温で18時間撹拌し、溶媒を80℃にて真空中で除去し、残渣をEtOAcとHOに分配した。有機層を集め、ブラインで洗浄し、MgSO上で乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣を、EtOAc/ヘキサン(40:60)を溶離液として使用してフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、表題化合物13(511mg、47%収率)を淡黄色の油として得た。
【化55】
【0206】
ステップ4及び5:(S)−N−(2−アミノフェニル)−4−(3−(ピリジン−2−イルアミノ)ピロリジン−1−イル)ベンズアミド(14)
スキーム2、実施例14(ステップ2及び3)において記載されているように同じ手順に従って(しかし、化合物13を化合物139で置換する)、表題化合物14を36%収率で得た。
【化56】
【0207】
スキーム8
【化57】
【0208】
(実施例41)
(S)−N−(2−アミノフェニル)−4−(3−(ピリジン−4−イルアミノ)ピロリジン−1−イル)ベンズアミド
ステップ1:(S)−tert−ブチル4−(3−(ピリジン−4−イルアミノ)ピロリジン−1−イル)ベンゾエート(18)
公知の手順(Harris,M.C.;Geis,O.;Buchwald,S.L.;J.Org.Chem.、1999、64、6019〜6022)に従って、4−ブロモピリジン塩酸塩(16)(356mg、1.83mmol)及び化合物17(400mg、1.52mmol)から出発し、表題化合物18を得た(398mg、77%収率)。
【化58】
【0209】
ステップ2及び3:(S)−N−(2−アミノフェニル)−4−(3−(ピリジン−4−イルアミノ)ピロリジン−1−イル)ベンズアミド(19)
スキーム7、実施例40(ステップ4及び5)において説明したのと同じ手順に従うことによって(しかし、化合物18を化合物13で置換する)、表題化合物19を得た。
【化59】
【0210】
化合物14(実施例40)はまた、スキーム8によって化合物19(実施例41)と同様に得ることができる。
【0211】
アッセイ実施例
アッセイ実施例I
ヒストンデアセチラーゼ酵素活性の阻害
ヒストンデアセチラーゼ酵素(HDAC−1)活性の阻害
本発明の化合物をアッセイするために下記のプロトコルを使用する。アッセイにおいて、使用した緩衝液は、25mMのHEPES(pH8.0)、137mMのNaCl、2.7mMのKCl、1mMのMgClであり、基質は、DMSO中の50mMのストック溶液中のBoc−Lys(Ac)−AMCである。酵素ストック溶液は、緩衝液中4.08μg/mLである。
【0212】
化合物(アッセイプレートへ移動するために、DMSO中の2μlを緩衝液中13μlに希釈)を、酵素(4.08μg/mlで20μl)と共に室温で10分間プレインキュベートする(35μl、プレインキュベーション容量)。混合物を室温で5分間プレインキュベートする。温度を37℃にし、15μlの基質を加えることによって反応を開始する。総反応容量は50μlである。Biomolによる指示によって調製した50μlの展開剤(Fluor−de−Lys展開剤、カタログ#KI−105)を加えることによって、20分後に反応を停止させる。読み取りの前にプレートを室温にて暗闇で10分間インキュベートする(λEx=360nm、λEm=470nm、カットオフフィルター、435nm)。同様のアッセイを行い、HDAC−2阻害活性を測定する。
【0213】
アッセイ実施例II
MTTアッセイ
HCT116細胞(2000個/ウェル)を、化合物処理の1日前に96ウェル組織培養プレート中に蒔く。様々な濃度の代表的な化合物を、細胞に加えた。5%COのインキュベーター中で細胞を37℃で72時間インキュベートする。1容の可溶化緩衝液(50%N,N−ジメチルホルムアミド、20%SDS、pH4.7)を培養細胞上に加える前に、MTT(3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5ジフェニルテトラゾリウムブロミド、Sigma)を0.5mg/mlの最終濃度で加え、細胞と共に4時間インキュベートする。一晩のインキュベーション後、630nMでの参照を使用して、570nMで比色読み取りによって可溶化色素を定量化する。関連する細胞系の標準増殖曲線によって、OD値を細胞数に変換する。細胞数を溶媒処理細胞の細胞数の50%に減少させる濃度を、MTT IC50として決定する。同様のアッセイをHMEC細胞上で行う。
【0214】
これらのアッセイについてのIC50値を表8に示す。表8において、「a」は、≦0.1μMの活性を示し、「b」は、≦0.5μMの活性を示し、「c」は、≦1μMの活性を示し、「d」は、≦5μMの活性を示し、「e」は、≦10μMの活性を示し、「f」は、≦50μMの活性を示し、「g」は、>50μMの活性を示す。
【表8】
【0215】
本発明をその特定の実施形態に関連して説明してきたが、それはさらに改変することが可能であり、一般に本発明の原理に従って、本開示からのこのような逸脱を、本発明が関連する当技術分野において公知又は慣行内にあるものとして、且つ上記した本質的特徴に当てはまり、添付の特許請求の範囲において下記の通りに当てはまり得るものとして含みながら、本出願は、本発明の任意の変形形態、使用、又は適応を包含することを意図していることが理解されるであろう。