(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記嵌合凸部の一部が、前記パイプの曲げ加工開始位置に対し前記パイプの進行方向の前方側に位置し、前記嵌合凸部の他の部分が、前記パイプの曲げ加工開始位置に対し前記パイプの進行方向に対して後方側に位置している
請求項1記載のパイプ曲げ型ユニット。
前記嵌合凹部に嵌合される前記嵌合凸部の嵌合部が、前記パイプの曲げ加工開始位置に対し前記パイプの進行方向の前方側に位置し、前記把持部材の前記第1の溝部と前記対圧部材の前記第2の溝部との当接部が、前記パイプの曲げ加工開始位置に対し前記パイプの進行方向の後方側に位置している
請求項1記載のパイプ曲げ型ユニット。
前記嵌合凸部の一部が、前記パイプの曲げ加工開始位置に対し前記パイプの進行方向の前方側に位置し、前記嵌合凸部の他の部分が、前記パイプの曲げ加工開始位置に対し前記パイプの進行方向に対して後方側に位置している
請求項8記載のパイプ曲げ加工装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1においては積極的にしわが形成されるように構成されているが、一般的に、回転引き曲げ加工にはしわを無くすために、しわおさえが用いられ、特許文献2乃至4においてはワイパーが設けられている。このうち、特許文献2及び4に記載のワイパーは先端部が楔形状に形成されており、特許文献2では先端のエッジ部の摩耗が懸念され、その対策が講じられている。特に、ワイパーと曲げダイとの間には、パイプの曲げ開始線(通常は、曲げダイの回転軸を含む面が曲げダイの溝内面と交差する線)に沿って段差が存在するので、この段差に起因するしわを回避することはできない。これを最小減に抑えるにはワイパー先端部の楔形状の維持が必須であり、特に先端部を極力薄くする必要があるため脆弱であり、耐久性に乏しい。また、定期的な摩耗対策が不可避であり、頻繁な交換が必要とされている。しかも、曲げ加工の初期設定が困難であるので、熟練した技術が要求される。従って、大量の曲げ加工を連続して行うことは困難である。
【0008】
これに対し、特許文献3に一実施形態として記載されたワイパーは、上下方向に三分割された曲げダイのうちの中央ダイ部の一部を構成し、断面円弧状の凹部が形成されており(特許文献3の段落〔0025〕乃至〔0030〕に記載)、これにより「エッジ構造を有する先端部を形成する必要がなく、曲げダイとの間に段差が生じる虞れもない」と記載されているが(同段落〔0032〕)、この間の説明は不明である。仮に、加工対象のパイプに対し、曲げ加工の開始から終了まで、パイプ軸に平行な三つの平面で分割された曲げダイのうち、上下のサイドダイ部が曲げ加工に寄与し、中央部がワイパーとして機能するという分離作動が行われるというのであれば、しわの発生を防止することが困難というだけでなく、曲げ加工自体も適切に行うことは困難であり、所望の曲げ加工を可能とする構成の開示は見当たらない。
【0009】
一方、特許文献4には、異なる寸法の管を曲げるために、または、異なる形式の管曲げ作業のために、曲げダイ、クランプダイ及び圧力ダイが予め組立てられたダイセットを交換し得るように構成されているが、ワイパーダイは必ずしも必須とされていない(特許文献4の第11頁に記載)。従って、特許文献4においては、段替え機能に着目されているものの、しわの発生を適切に防止し得る機能を含めて交換可能なダイセットが開示されているものではなく、パイプの曲げ加工に好適なパイプ曲げ型ユニット及びこれを備えた装置が示唆されているものでもない。
【0010】
更に、特許文献5及び6にはワイパ型及びワイパーダイの退避装置が開示されているが、何れも所謂ワイパを対象とするものであり、その退避機構も構造が複雑であり、精度が期待できず、再現性に乏しい。
【0011】
そこで、本発明は、しわの発生を懸念することなくパイプに対する曲げ加工を適切に行い得るパイプ曲げ型ユニットを提供することを課題とする。また、当該曲げ加工に好適なパイプ曲げ型ユニットを備えたパイプ曲げ加工装置を提供することを課題とする。
【0012】
更に、本発明は、しわの発生を懸念することなくパイプに対する曲げ加工を適切に行い、且つ、段替えを容易に行い得るパイプ曲げ型ユニット、及び該ユニットを備えたパイプ曲げ加工装置を提供することを別の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を達成するため、本発明は、外周面に断面半円状のパイプ受溝を有し回転軸を中心に回転駆動される曲げ型を備え、該曲げ型が、外周面に断面半円状の第1の溝部を有すると共に、該第1の溝部に形成され、前記回転軸に対し直交する平面内で周方向に第1の所定距離延在する嵌合凹部を有する把持部材と、外周面に断面半円状の第2の溝部を有すると共に、該第2の溝部の先端部から周方向に第2の所定距離延出する嵌合凸部を有し、該嵌合凸部が前記嵌合凹部に嵌合し前記第1の溝部及び前記第2の溝部を結合して前記断面半円状のパイプ受溝を形成する対圧部材とを具備し、該対圧部材と前記把持部材が前記回転軸を中心とする蝶番結合によって連結され、前記回転軸を中心に相対的に回転可能に支持されると共に、前記対圧部材が、前記パイプに対する曲げ加工開始位置から離隔する方向に、前記回転軸を中心として回転可能に支持され、前記パイプに対する曲げ加工開始位置から離隔した所定の退避位置と前記曲げ加工開始位置との間で保持されるように構成したものである。
【0014】
上記のパイプ曲げ型ユニットにおいて、前記嵌合凸部の一部が、前記パイプの曲げ加工開始位置に対し前記パイプの進行方向の前方側に位置し、前記嵌合凸部の他の部分が、前記パイプの曲げ加工開始位置に対し前記パイプの進行方向に対して後方側に位置している構成とするとよい。あるいは、前記嵌合凹部に嵌合される前記嵌合凸部の嵌合部が、前記パイプの曲げ加工開始位置に対し前記パイプの進行方向の前方側に位置し、前記把持部材の前記第1の溝部と前記対圧部材の前記第2の溝部との当接部が、前記パイプの曲げ加工開始位置に対し前記パイプの進行方向の後方側に位置している構成とするとよい。
【0015】
前記対圧部材は、前記回転軸に回転可能に軸支される環状の回転支持部を有し、該回転支持部の一部が前記嵌合凸部を構成し、当該回転支持部の外周面が、前記断面半円状のパイプ受溝の一部を形成する曲面である構成とするとよい。更に、前記対圧部材と前記把持部材は、前記嵌合凹部を挿通する中心軸を有する軸部材によって蝶番結合されている構成としてもよい。
【0016】
上記のパイプ曲げ型ユニットにおいて、前記パイプに対する曲げ加工開始位置が、前記対圧部材の所望の初期位置に設定される構成とするとよい。更に、上記のパイプ曲げ型ユニットは、前記対圧部材を駆動し、前記曲げ加工開始位置と前記退避位置との間の所望の位置で保持する駆動装置を備えたものとしてもよい。
【0017】
また、本発明は、外周面に断面半円状のパイプ受溝を有し回転軸を中心に回転駆動される曲げ型と、該曲げ型のパイプ受溝に配置される加工対象のパイプを把持する把持型と、
前記パイプを前記曲げ型方向に押圧する圧力型とを備え、前記曲げ型が、外周面に断面半円状の第1の溝部を有すると共に、該第1の溝部に形成され、前記回転軸に対し直交する平面内で周方向に第1の所定距離延在する嵌合凹部を有する把持部材と、外周面に断面半円状の第2の溝部を有すると共に、該第2の溝部の先端部から周方向に第2の所定距離延出する嵌合凸部を有し、該嵌合凸部が前記嵌合凹部に嵌合し前記第1の溝部及び前記第2の溝部を結合して前記断面半円状のパイプ受溝を形成する対圧部材とを具備し、該対圧部材と前記把持部材が前記回転軸を中心とする蝶番結合によって連結され、前記回転軸を中心に相対的に回転可能に支持されると共に、前記対圧部材が、前記パイプに対する曲げ加工開始位置から離隔する方向に、前記回転軸を中心として回転可能に支持され、前記パイプに対する曲げ加工開始位置から離隔した所定の退避位置と前記曲げ加工開始位置との間で保持されてパイプ曲げ型ユニットが構成されているパイプ曲げ加工装置を提供するものである。
【0018】
上記のパイプ曲げ加工装置において、前記嵌合凸部の一部が、前記パイプの曲げ加工開始位置に対し前記パイプの進行方向の前方側に位置し、前記嵌合凸部の他の部分が、前記パイプの曲げ加工開始位置に対し前記パイプの進行方向に対して後方側に位置している構成とするとよい。
【0019】
更に、前記対圧部材は、前記回転軸に回転可能に軸支される環状の回転支持部を有し、該回転支持部の一部が前記嵌合凸部を構成し、当該回転支持部の外周面が、前記断面半円状のパイプ受溝の一部を形成する曲面である構成とするとよい。
【0020】
上記のパイプ曲げ加工装置において、前記パイプに対する曲げ加工開始位置は、前記対圧部材の所望の初期位置に設定されるとよい。更に、前記対圧部材を駆動し、前記曲げ加工開始位置と前記退避位置との間の所望の位置で保持する駆動装置を備えたものとしてもよい。
【0021】
更に、上記のパイプ曲げ加工装置において、前記パイプ内に先端部が挿入され、前記曲げ型の所定の回転範囲で前記先端部が前記圧力型に対向するように駆動される芯金を備えたものとしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上述のように構成されているので以下の効果を奏する。即ち、本発明のパイプ曲げ型ユニットにおいては、これを構成する曲げ型が、外周面に断面半円状の第1の溝部を有すると共に、第1の溝部に形成され、回転軸に対し直交する平面内で周方向に第1の所定距離延在する嵌合凹部を有する把持部材と、外周面に断面半円状の第2の溝部を有すると共に、第2の溝部の先端部から周方向に第2の所定距離延出する嵌合凸部を有し、嵌合凸部が嵌合凹部に嵌合し第1の溝部及び第2の溝部を結合して断面半円状のパイプ受溝を形成する対圧部材とを具備し、対圧部材と把持部材が回転軸を中心とする蝶番結合によって連結され、回転軸を中心に相対的に回転可能に支持されているので、しわの発生を懸念することなくパイプに対する曲げ加工を適切に行なうことができる。しかも、加工対象のパイプの形状に応じて複数のパイプ曲げ型ユニットを用意しておけば、種々のパイプ形状に対する曲げ加工に際し、その形状に応じたパイプ曲げ型ユニットを選択して交換するだけでよいので、段替えが容易で段替え後の調整も不要なパイプ曲げ型ユニットを提供することができる。
【0023】
特に、対圧部材が、パイプに対する曲げ加工開始位置から離隔する方向に、回転軸を中心として回転可能に支持され、パイプに対する曲げ加工開始位置から離隔した所定の退避位置と曲げ加工開始位置との間で保持されるように構成されており、パイプに対し曲げ加工を行う際に、例えばパイプ前進駆動機構が対圧部材と干渉するおそれがある場合には、容易に対圧部材を退避させて所望の位置に保持することができるので、長尺のパイプに曲げ加工を行った後に不要部分を切除するといった対応の必要がなくなり、切除工程が不要となるだけでなく、パイプを構成する部材の歩留まりが向上する。しかも、対圧部材の退避位置を高精度で設定し、良好な再現性を確保することができる。
【0024】
上記のパイプ曲げ型ユニットにおいて、嵌合凸部の一部が、パイプの曲げ加工開始位置に対しパイプの進行方向の前方側に位置し、嵌合凸部の他の部分が、パイプの曲げ加工開始位置に対しパイプの進行方向に対して後方側に位置している構成、あるいは、嵌合凹部に嵌合される嵌合凸部の嵌合部が、パイプの曲げ加工開始位置に対しパイプの進行方向の前方側に位置し、把持部材の第1の溝部と対圧部材の第2の溝部との当接部が、パイプの曲げ加工開始位置に対しパイプの進行方向の後方側に位置している構成とすれば、パイプにしわが発生することなく、円滑な曲げ加工を行うことができる。
【0025】
対圧部材は、回転軸に回転可能に軸支される環状の回転支持部を有するものとすれば、確実に回転軸を中心に回転可能に支持することができる。特に、把持部材に対し容易に蝶番結合することができ、回転支持部の一部が嵌合凸部を構成し、回転支持部の外周面が、断面半円状のパイプ受溝の一部を形成する曲面となるように構成すれば、対圧部材を単一部品で適切な形状に形成することができる。また、対圧部材と把持部材が、嵌合凹部を挿通する中心軸を有する軸部材によって蝶番結合されている構成とすれば、パイプにしわが発生することなく、円滑な曲げ加工を行うことができる。
【0026】
上記のパイプ曲げ型ユニットにおいて、パイプに対する曲げ加工開始位置が、対圧部材の所望の初期位置に設定される構成とすれば、曲げ加工開始位置を容易に調整することができる。更に、対圧部材を駆動し、曲げ加工開始位置と退避位置との間の所望の位置で保持する駆動装置を備えたものとすれば、この駆動装置によって曲げ加工開始位置や退避位置のみならず、曲げ加工中の位置関係も容易に調整することができる。
【0027】
そして、本発明のパイプ曲げ加工装置は、前述のように構成されたパイプ曲げ型ユニットと、その曲げ型のパイプ受溝に配置される加工対象のパイプを把持する把持型と、パイプを曲げ型方向に押圧する圧力型とを備え、この圧力型によってパイプを曲げ型方向に押圧しながら把持型及び曲げ型を回転させてパイプに対し曲げ加工を行うように構成されているので、しわの発生を懸念することなくパイプに対する曲げ加工を適切に行なうことができる。特に、対圧部材が、パイプに対する曲げ加工開始位置から離隔する方向に、回転軸を中心として回転可能に支持され、パイプに対する曲げ加工開始位置から離隔した所定の退避位置と曲げ加工開始位置との間で保持されるように構成されており、パイプに対し曲げ加工を行う際に、例えばパイプ前進駆動機構が対圧部材と干渉するおそれがある場合には、容易に対圧部材を退避させて所望の位置に保持することができるので、長尺のパイプに曲げ加工を行った後に不要部分を切除するといった対応の必要がなくなり、切除工程が不要となるだけでなく、パイプを構成する部材の歩留まりが向上する。しかも、対圧部材の退避位置を高精度で設定し、良好な再現性を確保することができる。
【0028】
更に、加工対象のパイプの形状に応じて複数のパイプ曲げ型ユニットを用意しておけば、種々のパイプ形状に対する曲げ加工に際し、その形状に応じたパイプ曲げ型ユニットを選択して交換するだけでよいので、容易に段替えを行うことができ、段替え後の調整も不要である。従って、ロボットによる自動段替えも可能となる。
【0029】
上記のパイプ曲げ加工装置において、嵌合凸部の一部が、パイプの曲げ加工開始位置に対しパイプの進行方向の前方側に位置し、嵌合凸部の他の部分が、パイプの曲げ加工開始位置に対しパイプの進行方向に対して後方側に位置している構成、あるいは、嵌合凹部に嵌合される嵌合凸部の嵌合部が、パイプの曲げ加工開始位置に対しパイプの進行方向の前方側に位置し、把持部材の第1の溝部と対圧部材の第2の溝部との当接部が、パイプの曲げ加工開始位置に対しパイプの進行方向の後方側に位置している構成とすれば、円滑な曲げ加工を行うことができる。
【0030】
上記のパイプ曲げ加工装置に供される対圧部材は、回転軸に回転可能に軸支される環状の回転支持部を有し、該回転支持部の一部が嵌合凸部を構成し、当該回転支持部の外周面が、断面半円状のパイプ受溝の一部を形成する曲面とするように構成すれば、確実に回転軸を中心に回転可能に支持することができ、把持部材に対し容易に蝶番結合することができる。対圧部材を単一部品で適切な形状に形成することができる。
【0031】
更に、パイプに対する曲げ加工開始位置が、対圧部材の所望の初期位置に設定される構成とすれば、曲げ加工開始位置を容易に調整することができる。また、上記の駆動装置を備えたものとすれば、曲げ加工開始位置や退避位置のみならず、曲げ加工中の位置関係も容易に調整することができる。
【0032】
上記のパイプ曲げ加工装置において、更に、パイプ内に先端部が挿入され、曲げ型の所定の回転範囲で先端部が圧力型に対向するように駆動される芯金を備えたものとすれば、曲げ半径が小さな曲げ加工を容易に行うことができ、パイプに対する曲げ限界を大幅に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態に係るパイプ曲げ加工装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るパイプ曲げ型ユニットの正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るパイプ曲げ型ユニットに供する把持部材を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るパイプ曲げ型ユニットに供する対圧部材を示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るパイプ曲げ型ユニットの分解斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るパイプ曲げ加工装置の曲げ加工終了時の状態を示す断面斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に供する対圧部材の平面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るパイプ曲げ型ユニットの曲げ加工開始時の状態を示す部分断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るパイプ曲げ型ユニットの曲げ加工開始時の状態を示す斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るパイプ曲げ型ユニットの曲げ加工開始時の溝底部中央の断面を示す部分断面斜視図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るパイプ曲げ型ユニットの曲げ加工開始時の溝底部中央から離隔した位置の断面を示す部分断面斜視図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係るパイプ曲げ型ユニットの曲げ加工開始後の溝底部中央から離隔した位置の断面を示す部分断面斜視図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係るパイプ曲げ型ユニットの曲げ加工終了時の溝底部中央から離隔した位置の断面を示す部分断面斜視図である。
【
図14】本発明の一実施形態においてパイプに対する曲げ加工開始位置の把持型、圧力型、把持部材及び対圧部材の配置を示す部分断面平面図である。
【
図15】本発明の一実施形態においてパイプに対する曲げ加工開始位置の把持型、圧力型、把持部材及び対圧部材の配置を示す部分断面斜視図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係るパイプ曲げ加工装置の作動状態を示す部分断面斜視図である。
【
図17】本発明の一実施形態に係るパイプ曲げ加工装置の作動状態を示す部分断面斜視図である。
【
図18】本発明の一実施形態に係るパイプ曲げ加工装置の作動状態を示す部分断面斜視図である。
【
図19】本発明の一実施形態に係るパイプ曲げ加工装置の作動状態を示す部分断面斜視図である。
【
図20】本発明の一実施形態に係るパイプ曲げ加工装置の作動状態を示す部分断面斜視図である。
【
図21】本発明の一実施形態に係るパイプ曲げ加工装置の作動状態を示す部分断面斜視図である。
【
図22】本発明の一実施形態に係るパイプ曲げ加工装置の作動状態を示す部分断面斜視図である。
【
図23】本発明の一実施形態に係るパイプ曲げ加工装置の作動状態を示す部分断面斜視図である。
【
図24】本発明の一実施形態に係るパイプ曲げ加工装置の作動状態を示す部分断面斜視図である。
【
図25】本発明の一実施形態に係るパイプ曲げ加工装置の作動状態を示す部分断面斜視図である。
【
図26】本発明の一実施形態に係るパイプ曲げ加工装置の作動状態を示す部分断面斜視図である。
【
図27】本発明の他の実施形態に係るパイプ曲げ加工ユニットを示す斜視図である。
【
図28】本発明の他の実施形態に係るパイプ曲げ加工装置を示す斜視図である。
【
図29】本発明の実施形態に係るパイプ曲げ型ユニットを用いて曲げ加工が行われたパイプを示す斜視図である。
【
図30】本発明のパイプ曲げ型ユニット及びパイプ曲げ加工装置に供する対圧部材の他の態様を示す斜視図である。
【
図31】
図30の対圧部材を二分割して断面を示す断面斜視図である。
【
図32】
図30の対圧部材を有するパイプ曲げ型ユニットの分解斜視図である。
【
図33】
図32のパイプ曲げ型ユニットを備えたパイプ曲げ加工装置の制御例を示すフローチャートである。
【
図34】本発明の実施形態に係るパイプ曲げ型ユニットを用いたパイプ曲げ加工装置におけるパイプの曲げ加工状態を示す断面図である。
【
図36】従来の曲げ型及びワイパーを備えた回転引き曲げ加工装置におけるパイプの曲げ加工状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の望ましい実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るパイプ曲げ型ユニット、並びに、これに加え把持型200及び圧力型300等を含む一実施形態に係るパイプ曲げ加工装置を示すもので、パイプ曲げ型ユニットは、外周面に断面半円状のパイプ受溝(後述する第1及び第2の溝部11、21によって構成)を有し回転軸(A)を中心に回転駆動される曲げ型100を備えている。そして、パイプ曲げ加工装置においては、加工対象のパイプPが、曲げ型100と把持型200との間に把持され、圧力型300によって曲げ型100方向に押圧されながら前進駆動され、圧縮荷重及び軸押し荷重によってパイプPに対し曲げ加工が行われるように構成されている。
【0035】
本実施形態の曲げ型100は把持部材10及び対圧部材20を備えており、
図1及び
図2に示すように、把持部材10には断面半円状の第1の溝部11が形成されると共に、この第1の溝部11に、回転軸(A)に対し直交する平面内で周方向に所定距離延在するように所定幅の嵌合凹部12が形成されている。また、把持部材10には基部13が一体的に形成されており、回転軸(A)を構成する軸部材60が基部13に固定されると共に、保持部材70が把持部材10に固定される。更に、基部13の所定位置にノックピン80が固定されるが、これについては後述する。
【0036】
上記の把持部材10は、
図3に示すように、断面半円状の第1の溝部11を構成する環状凹部10bを有すると共に、回転軸(A)に直交する平面内で周方向に延在する所定幅の嵌合凹部12を具備している。この嵌合凹部12は環状凹部10bの底中心に配置されている。而して、断面半円状の第1の溝部11は、嵌合凹部12の一部を含み環状凹部10bに連続している。即ち、把持部材10は、パイプPを把持する把持部10a(把持型200との接合面は平面)と、これに連続して形成される環状凹部10bを有し、把持部10a及び環状凹部10bと一体的に基部13が形成されている。
【0037】
而して、第1の溝部11は、把持部10aに形成される断面半円状の溝部11aと、環状凹部10bに形成される断面半円状の溝部11bの、連続した半円状断面を有する。更に、溝部11aには、パイプPの把持を確実に行うため、把持型200の内周面と同様、溝部11aの周方向に複数の把持条が並設されている。
【0038】
上記の把持部10aは把持部材10に一体的に形成されているが、把持部10a部分を別体(
図5等に10yで示す)とし、環状凹部10bを構成する本体10(
図5等に10xで示す)に接合することとしてもよい。例えば、
図5に示すように、回転軸(A)に対して直交する面で分割された上型40及び下型50によって本体10xを構成し、これに別体の把持具10yを接合して把持部材10を構成することができる。即ち、
図5に組み付け状態を示すように、軸部材60が、上型40の中央孔42、対圧部材20の回転支持部23及び下型50の中央孔52を挿通するように配置され、軸部材60の上部が保持部材70の中央孔71に挿通された後、保持部材70が上型40に固定される。把持具10yは取付孔14及び15から螺子(図示せず)が挿入され、夫々上型40及び下型50の螺子孔41及び51に螺合されて、本体10x(上型40及び下型50)に固定される。
【0039】
而して、
図5の態様においては、上型40及び下型50によって構成される本体10x及び把持具10yによって把持部材10が構成され、把持具10yの切欠、及び上型40と下型50との間の間隙によって嵌合凹部12が構成され、この嵌合凹部12に対圧部材20の嵌合凸部22が介装されて、曲げ型100が構成されている。以下において、把持部材10という場合には、特にことわらない限り、本体10x及び把持具10yで構成されるものを含む。
【0040】
一方、対圧部材20には、
図1及び
図2に示すように、外周面に断面半円状の第2の溝部21が形成されると共に、この第2の溝部21の先端部から周方向に所定距離延出するように嵌合凸部22が形成されており、この嵌合凸部22が上記の嵌合凹部12に嵌合すると、把持部材10の第1の溝部11と対圧部材20の第2の溝部21によって断面半円状のパイプ受溝が形成される。
【0041】
上記の対圧部材20は、
図4に示すように、環状凹部10bに当接し得るように配置される曲面部(対圧部)20aと、回転軸(A)に回転可能に軸支される回転支持部23が一体的に形成されており、この回転支持部23の一部によって嵌合凸部22が構成されている。従って、回転支持部23の外周面が曲面に形成されており、把持部材10の第1の溝部11と共に断面半円状のパイプ受溝を形成するように構成されている。即ち、対圧部材20には断面半円状の第2の溝部21が形成されており、把持部材10の第1の溝部11に当接する第2の溝部21の端面形状は、
図2に当接部(R)で示すように、正面視で湾曲している。
【0042】
そして、嵌合凸部22の外周側面22a(即ち、回転支持部23の外周側面)は、
図4に示すように曲面に形成されており、嵌合凸部22が把持部材10の嵌合凹部12に嵌合されると把持部材10の第1の溝部11の半円状断面の一部を構成し、両者によって断面半円状のパイプ受溝が形成されるように設定されている。尚、本実施形態の回転支持部23は環状に形成されているが、嵌合凸部22以外の部分を空隙として回転支持部23をC字状に形成してもよい。
【0043】
上記のように構成された把持部材10と対圧部材20は、回転軸(A)を中心とする蝶番結合によって連結され、軸部材60(回転軸(A))を中心に相対的に回転可能に支持されている。本実施形態では、図示しない支持装置の所定位置に固定される対圧部材20に対して、把持部材10が回転駆動されるように支持されている。
図2に示すように、把持部材10と対圧部材20は、パイプPに対し曲げ加工を行うときの曲げ加工開始位置(
図2に鉛直方向の一点鎖線Sで示す)を基準に、嵌合凹部12における回転軸(A)に対し直交する平面(
図2に示す(H)を含み
図2の紙面に垂直な面に平行な二平面)に包含されない嵌合凸部22との嵌合部(F)がパイプPの進行方向の前方側(
図2においてSの右側)に位置し、把持部材10の第1の溝部11と対圧部材20の第2の溝部21との回転方向の当接部(R)がパイプPの進行方向に対して後方側(
図2においてSの左側)に位置するように、連結されている。換言すれば、嵌合凹部12に嵌合される嵌合凸部22の回転方向の嵌合部(F)が、パイプPの曲げ加工開始位置に対しパイプPの進行方向の前方側に位置し、把持部材10の第1の溝部11と対圧部材20の第2の溝部21との回転方向の当接部(R)が、パイプPの曲げ加工開始位置に対しパイプPの進行方向の後方側に位置している。
【0044】
本実施形態の対圧部材20は、環状凹部10bの底中心を含む回転軸(A)に直交する平面、即ち、
図2に示す(H)を含み
図2の紙面に垂直な平面(以下、単に「平面(H)」という)の両側に形成され、環状凹部10bに当接するように構成された曲面部20aであって、その平面(H)に直交し且つ回転軸(A)から離隔する方向にオフセットした軸に円弧中心を有する曲面部20aを具備している。また、上記の平面(H)を底中心とする断面半円状の第2の溝部21が外周面に形成され、その第2の溝部21の先端部から周方向に所定距離延出する嵌合凸部22を有し、嵌合凸部22が嵌合凹部12に嵌合すると、把持部材10の第1の溝部11と対圧部材20の第2の溝部21によって断面半円状のパイプ受溝が形成されるように構成されている。以下、回転支持部23を含む対圧部材20の構成について、
図7等を参照して説明する。
【0045】
図7に示すように、曲面部20aは、
図7の紙面に対応する上記の平面(H)の両側に形成され、その平面(H)に直交し且つ回転軸(A)から離隔する方向にオフセットした軸(OC)を円弧中心とするものであり、
図7に示す軸(RC)が上記回転軸(A)に対応している。
図7において、破線で示すように対圧部材20に形成された断面半円状の第2の溝部21には、二点鎖線で示す中心軸(PC)を有するパイプPが配置され、パイプPに対する加工開始位置(S)を含む垂直(上下)方向の一点鎖線(V)に上記の軸(RC)及び軸(OC)が位置し、両者間の距離がオフセット量(d)となっている。
図7には、上記の平面(H)の一方側に形成された曲面部20aが表れているが、他方側(即ち、
図7の紙面の反対側)にも、同形状の曲面部20aが形成されている。
【0046】
特に、曲面部20aは、
図7に示すように、軸(OC)を円弧中心とする半径(ra)の最大円弧と半径(rb)の最小円弧を有し、(加工開始位置で)断面半円状の第1の溝部11に当接し得る曲面に膨出形成されている。即ち、パイプPに対する加工開始位置(S)では、
図8に示すように、嵌合凸部22及び曲面部20aが環状凹部10b(第1の溝部11)に対し全面に亘って当接し、上記の平面(H)から離隔した位置では、曲面部20aと環状凹部10bとの間に間隙(
図8にGで示す)が形成されるように設定されている。尚、
図8は、上記の平面(H)から所定距離離隔した位置(
図7の中心軸(PC)を含む面から裏面側(
図2の下方)に所定距離離隔した位置)での断面を示している。
【0047】
而して、対圧部材20の曲面部20aは、パイプPに対する加工開始位置(S)の先端部では、把持部材10の環状凹部10bに密着し、それ以外の部分では、上述のように、曲面部20aと環状凹部10bとの間に間隙(
図8のG)が形成される。このため、対圧部材20を、環状凹部10bに干渉することなく容易且つ適切に把持部材10(ここでは上型40及び下型50)に組み付けることができる。また、対圧部材20は上記の先端部以外の部分では、環状凹部10bを摺動することはないので、摩耗するおそれがなく、特に、対圧部材20の耐久性が向上する。尚、上記の曲面部20aの形成時に、上記の軸(OC)以外の円弧中心を用いると適切な当接状態とならないので、回避すべきである。例えば、上記の平面(H)に直交し且つ回転軸(A)から離隔する方向にオフセットすると共に、更に、これに直交する方向にもオフセットした軸(図示せず)を円弧中心とすると、適切な間隙を確保することはできない。
【0048】
図9乃至
図13は、
図5と同様の態様の曲げ型100に関し、把持部材10と対圧部材20の相対移動時の状態を示すもので、
図9は加工開始時の状態を示し、
図10は、上記の平面(H)での断面を示し、
図11乃至
図13は、当該平面(H)から所定距離離隔した位置(即ち、
図7の中心軸(PC)を含む面から裏面側(
図2の下方)に所定距離離隔した位置)での断面を示している。
図10に示すように、対圧部材20の曲面部20aは把持部材10の環状凹部10bに密着しているが、それ以外の部分(上記の所定距離離隔した位置)では、
図11乃至
図13に示すように、把持部材10と対圧部材20の相対回転角度が変化しても、対圧部材20の曲面部20aと環状凹部10bとの間に間隙(G)が存在している。而して、対圧部材20を、環状凹部10bに干渉することなく容易且つ適切に把持部材10に組み付けることができると共に、対圧部材20の耐久性が向上する。
【0049】
上記のように構成された対圧部材20は
図5に示すように組み付けられ、その嵌合凸部22が把持部材10の嵌合凹部12に嵌合された状態で、回転軸(A)を構成する軸部材60が回転支持部23を挿通して基部13に固定されると共に、保持部材70に固定されると、
図1に示す曲げ型100が構成される。更に、把持部材10の基部13の所定位置にノックピン80が固定され、このノックピン80に対圧部材20が当接する位置が把持部材10と対圧部材20の初期相対位置、即ち、曲げ加工開始位置(
図2のS)となるように設定される。
【0050】
本実施形態の対圧部材20は、パイプPに対する曲げ加工開始位置(S)から離隔する方向に、回転軸(A)を中心として回転可能に支持されており、パイプPに対する曲げ加工開始位置から離隔した所定の退避位置と曲げ加工開始位置との間で保持されるように構成されている。そして、
図1に示す駆動装置DRによって、対圧部材20が回転軸(A)を中心とする所望の位置、特に、曲げ加工開始位置と退避位置との間の所望の位置に保持されるように構成されている。而して、パイプPに対する曲げ加工開始位置を、駆動装置DRによって対圧部材20の所望の初期位置に設定することができる。尚、ノックピン80によって対圧部材20を初期位置で停止させることができるが、駆動装置DRによれば対圧部材20を初期位置で停止させ、その位置で保持することができる。
【0051】
一方、把持型200及び圧力型300は
図1に示すように配置され、夫々曲げ型100に対して近接離隔するように配設されており、一部断面の平面図及び斜視図で示すと、
図14及び
図15に示すようになり(但し、視認性を考慮しハッチングは省略)、把持部材10及び対圧部材20とパイプPとの関係が明らかとなる。特に、曲げ加工開始位置(
図2のS)における対圧部材20とパイプPとの関係は、
図14に示すように設定されている。即ち、曲げ加工開始位置(S)において対圧部材20の第2の溝部がパイプPの外周面に確実に当接するように、対圧部材20の第2の溝部の底中心は曲げ加工開始位置(S)ではパイプPの外周面と当接するが、その位置から離隔するに従い微小間隙が形成され、第2の溝部の底中心とパイプPの外周面とが1°未満の傾斜角度(γ)を成すように設定されている。逆に、例えば対圧部材20が
図14と逆方向に傾斜していると、曲げ加工開始位置(S)では対圧部材20の第2の溝部がパイプPの外周面に当接せず、微小ではあるが新たなしわの発生原因となる。
【0052】
而して、
図1及び
図2に示すように、把持部材10と対圧部材20が上記の初期相対位置に配置された曲げ型100によってパイプ曲げ型ユニットが構成されるので、加工対象のパイプPの形状に応じて複数のパイプ曲げ型ユニットを用意しておけば、種々のパイプ形状に対する曲げ加工に際しては、その形状に応じたパイプ曲げ型ユニットを選択して交換するだけでよく、所謂段替えを容易に行うことができる。特に、駆動装置DR及び/又はノックピン80によって対圧部材20の曲げ加工開始位置を容易且つ確実に設定することができるので、段替え後の調整が不要であり、熟練を要することなく容易に段替えを行うことができる。更に、上記のパイプ曲げ型ユニットに把持型200及び圧力型300を含めてユニットを構成すれば、段替え及び調整が容易なパイプ曲げ工具アセンブリを提供することができる。
【0053】
上記のパイプ曲げ型ユニットを備えたパイプ曲げ加工装置の全体作動について
図1、
図2、
図6並びに
図16乃至
図26を参照して説明する。先ず、
図1、
図2及び
図6において、対圧部材20がノックピン80に当接する所期相対位置で保持された状態で、パイプPの胴体部の曲げ加工対象部分が、曲げ型100の曲げ加工開始位置(
図2のS)に配置され、パイプP内に従前と同様の芯金(マンドレルとも呼ばれ、
図1及び
図6にMで示す)が挿入される。芯金Mは、
図6にその断面を示す(但し、視認性を考慮しハッチングは省略)ように、先端部に傾動自在に支持された玉芯金M1及びM2を有し、これらの玉芯金M1及びM2がパイプP内に挿入され、曲げ型100の所定の回転範囲で曲げ型100と把持型200及び圧力型300との間に介在するように駆動される。次に、把持型200及び圧力型300が曲げ型100方向に駆動され、パイプPの先端部が曲げ型100の把持部材10と把持型200との間に把持されると共に、パイプPの胴体部が曲げ型100の対圧部材20と圧力型300との間に押接される。
【0054】
続いて、パイプPの先端部が把持部材10と把持型200との間に把持された状態で、パイプPの胴体部が圧力型300によって対圧部材20に押圧されながら、パイプPが前進駆動されると共に、把持型200及び把持部材10が回転軸(A)を中心に回転駆動されると、パイプPは回転支持部23の外周側面(嵌合凸部22の外周側面22a)に順次巻きつけられるように屈曲され、
図6に示すように曲げられたパイプPが形成される。この間、パイプPの軸方向及び径方向に大きな圧力が加えられるが、本実施形態のパイプ曲げ型ユニットを用いれば、曲げに伴うパイプPの曲げ内側部分の圧縮変形による厚肉化を制御し、パイプPの曲げ外側部分に対する増肉を行うと共に、パイプPの曲げ外側部分の薄肉化を防止し、屈曲部においても適切な管厚に維持することができる。
【0055】
前述のように、本実施形態のパイプ曲げ型ユニットに供される曲げ型100は、把持部材10と対圧部材20を備え、これらは回転軸(A)を中心とする蝶番結合によって連結されており、回転軸(A)を中心に相対的に回転可能に支持されているので、パイプPの屈曲に伴い、対圧部材20が(パイプPを介して)圧力型300に押圧された状態で、把持部材10は、対圧部材20に対して回転軸(A)を中心に相対的に回転し得る。従って、把持部材10は、パイプPに対する曲げ加工開始位置(
図2のS)から、対圧部材20に対して離隔する周方向に回転作動する。
【0056】
そして、曲げ加工開始位置Sを基準に、嵌合凹部12における回転軸(A)に対し直交する平面に包含されない嵌合凸部22との嵌合部(
図2のF)がパイプPの進行方向の前方側に位置し、把持部材10の第1の溝部11と対圧部材20の第2の溝部21との回転方向の当接部(
図2のR)がパイプPの進行方向に対して後方側に位置するように、把持部材10と対圧部材20が連結されており、把持部材10と対圧部材20との間に生じ得る段差が小さく抑えられている。このため、パイプPに対して従前に比し大きな軸押し荷重及び圧縮荷重が加えられても、曲げ加工に伴う塑性変形を適切に制御することができる。
【0057】
而して、本実施形態のパイプ曲げ型ユニットを用いて曲げ加工が行われたパイプPには、
図29に示すように、嵌合凹部12と嵌合凸部22の嵌合部分に対応する位置に若干の厚肉部(コブ状部)が形成されるものの、これに連続する部分は滑らかな曲面となる。具体的には、
図29に細線で示す部分で厚さが緩やかに変化し、流動する肉が嵌合部(
図2のF)に嵌まり込んで厚肉部TP1が形成されると共に、当接部(
図2のR)に沿って厚肉部TP2及びTP3が形成されるものの、
図29に細線で示す部分は滑らかな曲面に形成され、所謂しわに相当するものではないので、厚肉部TP1、TP2及びTP3の発生を懸念する必要はない。寧ろ、これらの厚肉部TP1、TP2及びTP3が形成された屈曲パイプこそが、本実施形態のパイプ曲げ型ユニットを用いて曲げ加工が行われた証となり、その加工品質を裏付けるものとなる。
【0058】
上記のパイプ曲げ加工装置によってパイプPに対する曲げ加工が複数回連続して行われるが、そのうちの一回の曲げ加工における一連の工程を
図16乃至
図26を参照して順次説明する。本実施形態のパイプ曲げ加工装置においては、
図16に示すように、加工対象のパイプPを把持するパイプチャックCHが設けられると共に、パイプPを前進駆動し軸押し荷重を付与するキャリッジCRが設けられている。パイプチャックCHを回転駆動(割出し)することにより、パイプPの曲げ方向を変えることができ、これによって所謂3次元の曲げ加工が可能となる。また、把持型200は回動テーブル2に配置され、これよって軸部材60(回転軸(A))を中心に回転駆動されるように構成されている。
【0059】
図16は2回の曲げ加工が完了し最終曲げ加工を行う前の状態を示し、把持型200及び圧力型300が退避位置に駆動されると、
図17に示す状態となる。続いて、把持型200及び圧力型300が
図1と同様の原点位置に戻されると、
図18に示す状態となる。この状態でパイプチャックCHが回転駆動され、パイプPに対する曲げ方向が変更される。即ち、パイプPは
図17の状態から
図18の状態となり、この状態でパイプチャックCHによって保持される。次に、
図1に示す駆動装置DRによって、対圧部材20が軸部材60(回転軸(A))を中心に回転駆動され、
図19に示す退避位置で保持される。この結果、パイプチャックCHが対圧部材20と干渉することなく、パイプPは、
図20に示す曲げ加工開始位置までキャリッジCRによって前進駆動される。
【0060】
続いて、
図21に示すように、把持型200が前進駆動され、把持部材10との間にパイプPが把持される。この状態でパイプPに対するパイプチャックCHによる保持が解除され、
図22に示すように、キャリッジCRが後退駆動されると、パイプPは把持型200と把持部材10との間に把持された状態で、パイプチャックCHのみが後退するので、
図22に示すように、マンドレルMの後部シャフトが露出した状態となる。仮に、この状態で対圧部材20を曲げ加工開始位置とすると、パイプPの後端部が対圧部材20に対向する位置となり、そのままキャリッジCRが前進駆動されると、パイプチャックCHが対圧部材20に当接(干渉)し、曲げ加工を行うことができなくなる。
【0061】
このため、
図23に示すように、パイプPと同形状の管部材で形成されたパイプ(以下、キックパイプという)KPがパイプチャックCHに把持されて、キャリッジCRによって前進駆動され、キックパイプKPの前端部がパイプPの後端部に当接し、これらが一体となって前進駆動し得るように構成されている。そして、
図23に示すようにキックパイプKPを介してパイプチャックCHが後退した位置で、前述のように、対圧部材20が駆動装置DRによって軸部材60(回転軸(A))を中心に回転駆動され、
図24に示すように対圧部材20は曲げ加工開始位置で保持される。この状態で、圧力型300が前進駆動されると、
図25に示す曲げ加工開始状態となり、圧力型300によってパイプPが押圧されながら、
図26に示すように回動テーブル2が軸部材60(回転軸(A))を中心に回転駆動される。
【0062】
而して、パイプPは、把持部材10と把持型200との間に把持された状態で、圧力型300によって押圧されながら回動テーブル2が軸部材60(回転軸(A))を中心に回転駆動されると共に、キックパイプKPを介してキャリッジCRによって前進駆動され、パイプPに対し圧縮荷重及び軸押し荷重が印加されて曲げ加工が行われる。この結果、
図26に点描で示すキックパイプKPの一部に相当する部分を有する長尺のパイプPに対し曲げ加工を行った後に、当該部分を切除するといった対応は必要ないので、切除工程が不要となるだけでなく、パイプPを構成する部材の歩留まりが向上する。しかも、対圧部材20を軸部材60(回転軸(A))を中心に回転駆動するだけで、パイプチャックCHと干渉することなく、曲げ加工開始位置と退避位置との間で容易且つ確実に移動させることができ、ノックピン80及び/又は駆動装置DRによって所望の位置で保持することができる。
【0063】
次に、パイプ曲げ型ユニットとしては、
図27に示すように、上記の把持部材10及び対圧部材20から成る複数の曲げ型100a、100b及び100cが積層された形態で回転軸(A)を中心に回転可能に支持される多段構成とすることもできる。何れの把持部材10及び対圧部材20も、夫々回転軸Aを中心とする蝶番結合によって連結されており、曲げ型100a、100b及び100cにおいては、四つの部材B1乃至B4(及び軸部材60)によって三つの把持部材の本体10xa、10xb及び10xcが構成されており、夫々に、把持対象であるパイプPの加工状態に応じた形状の把持具10ya、10yb及び10ycが接合されている。部材B2の円筒部には、回転軸(A)に直交する係合溝Bgが形成され、部材B3の円筒部にも、回転軸(A)に直交する係合溝Cgが形成されており、これらの溝に係合する突起91b、91cが連結支持部材91に形成されている。
【0064】
而して、各部材B1乃至B4は、各把持部材の曲げ加工開始位置と反対側で、ボルト等によって連結支持部材91に結合されると共に、突起91b、91cが夫々係合溝Bg、Cgに係合され、所謂インロー構造によって強固に保持される。即ち、曲げ型を構成する部材B2及びB3が夫々、回転軸(A)に直交する平面に平行に形成された係合溝Bg、Cgを有すると共に、連結支持部材91は、係合溝Bg、Cgの各々に係合する突起91b、91cを有し、これらによって把持部材の本体10xa、10xb及び10xcが強固に保持されている。尚、本体10xa、10xb及び10xcに対応する各対圧部材20(xa、xb及びxcは省略)は、支持部材26を介してボルト等によって連結支持部材92に接合されている。
【0065】
そして、
図28に示すように、本実施形態のパイプ曲げ加工装置1は、
図16等に示す回動テーブル2、キャリッジCR、把持型200、圧力型300等を備え、
図27に示す曲げ型ユニット(DUで示す)が装着されており、連結支持部材91及び連結支持部材92が回転軸(A)を中心に回転駆動され、三つの把持部材10及び対圧部材20の移動が制御されるように構成されている。尚、本実施形態においては、連結支持部材92はリンク93を介して駆動装置DRに接続され、三つの対圧部材20が夫々同時に移動するように構成されているが、三つの把持部材10及び対圧部材20を夫々別個に駆動制御するように構成してもよい。
【0066】
以上のように、本実施形態のパイプ曲げ型ユニットを備えたパイプ曲げ加工装置により、(しわが発生することなく)円滑な曲げ加工を行うことができる。換言すれば、曲げ加工に伴う塑性変形を適切に制御することにより、しわの発生を懸念することなく、パイプPに対する曲げ加工を適切に行うことができる。この結果、例えばパイプPの直径をdとし、曲げ半径をrとしたとき、r/dが1未満となる極小曲げ半径のパイプPも容易に形成することができる。尚、上記のパイプ曲げ加工装置とは逆に、把持部材10が固定され、対圧部材20が回転軸(A)を中心に回転駆動される構成としてもよい。更に、自動パイプ曲げ加工装置に上記のパイプ曲げ型ユニットを用い、ロボットによる自動段替えを行うことも可能となる。
【0067】
上記のパイプ曲げ加工装置において、更に、加工対象のパイプPの曲げ内側に印加される圧力を監視し、この監視結果に応じて曲げ加工を制御し得るように構成することもできる。例えば、対圧部材20の嵌合凹部22に対する圧力を検知する感圧センサPSを配設し、その検知結果に応じて、圧力型300の加圧荷重制御や、対圧部材20の角度調整制御を行うことにより、パイプPのしわの発生を適切に抑え、破断や座屈を防止することができる。対圧部材20の配置については、
図14に示すように、第2の溝部21の底中心とパイプPの外周面とが1°未満の傾斜角度(γ)を成すように初期設定されているが、その傾斜角度(γ)を(1°未満の範囲内で)感圧センサPSの検知結果に応じて調整し得る以下の構成とすることができる。
【0068】
先ず、対圧部材20は、
図30乃至
図32に示すように、回転支持部23を構成する第1の部材20xと、第2の溝部21及び嵌合凸部22を構成する第2の部材20yに二分割され、摩耗し易い部分を含む第2の部材20yのみを交換し得るように構成される。更に、第1の部材20xと第2の部材20yとの間にシート状の感圧センサPSが配設され、第1の部材20xに形成された貫通孔20xh(
図31に示す)を介して、感圧センサPSのリード線SLが導出し得るように構成される。この感圧センサPSとしては、例えばピエゾフィルムが好適であるが、ピエゾフィルムのように、強度を確保しつつ薄く形成でき比較的記広範な領域の圧力を検知し得る感圧素子であれば、他の歪ゲージ等を用いることとしてもよい。尚、その他の構成は前述の
図5に示す構成と同様であるので、実質的に同一の部材については同一の符合を付して説明は省略する。
【0069】
図33は、
図32に示すパイプ曲げ型ユニットを備えたパイプ曲げ加工装置により曲げ加工を行う制御例を示すフローチャートで、先ず、ステップS101において、把持部材10、対圧部材20、把持型200及び圧力型300等の初期値が設定され、ステップS102にて把持型200及び圧力型300等が駆動されてクランプ及び型締めが行われ、ステップS103にて前述のように曲げ加工が開始し、ステップS104にて、曲げ加工の進捗状況を表す加工進捗情報(n)がインクリメントされた後、ステップS105に進む。この加工進捗情報(n)は、加工時間や把持部材10(及び把持型200)の回転角度に応じて設定され、それらの所定間隔毎に繰り返される加工ループの進捗状況を表す指標である。
【0070】
ステップS105においては、感圧センサPSの検知結果である圧力(Ps)が、最小値(Kpmin)以上且つ最大値(Kpmax)以下の範囲内にあるか否かが判定され、当該範囲内にあって正常と判定されれば、そのままステップS110に進むが、当該範囲外であるときにはステップS106に進み、圧力型300によって付与される荷重が調整される。この後、ステップS107にて圧力(Ps)が当該範囲内にあるか否かが判定され、当該範囲内にあればそのままステップS110に進むが、当該範囲外であるときには更にステップS108に進み、対圧部材20の角度調整制御が行われる。
【0071】
即ち、
図14に示す対圧部材20の第2の溝部21の底中心とパイプPの外周面との傾斜角度(γ)が、感圧センサPSの検知結果に応じて減少するように(即ち、1°未満の範囲内で0°に近づくように)制御され、しわの発生が抑制される最適な傾斜角度に調整される。この結果、ステップS109にて圧力(Ps)が最小値(Kpmin)以上且つ最大値(Kpmax)以下の範囲内にあると判定されれば、そのままステップS110に進むが、当該範囲外と判定されたときには、ステップS113にて曲げ加工が停止された後、ステップS112に進み、把持型200及び圧力型300等が原点位置に復帰する。従って、しわの発生が懸念される状況となったときには、曲げ加工が停止されるので、パイプPが破損に至るおそれはない。
【0072】
このようにして、ステップS110にて加工進捗情報(n)が所定の曲げ加工指標(N)に至ったと判定されるまで上記の曲げ加工が繰り返され、曲げ加工が終了するとステップS111にて後処理(各種メモリ値のクリア等)が行なわれ、ステップS112にて把持型200及び圧力型300等が原点位置に復帰する。
【0073】
本発明においては、前述の実施形態に示す曲げ型100、特に蝶番結合によって把持部材10に連結される対圧部材20が機能し、圧力型300の大きな荷重に十分抗し得るように構成されている。即ち、
図34に示すようにパイプPに対し軸押し荷重(FLで示す)が加えられると共に圧縮荷重(PLで示す)が加えられるが、本発明においては、
図2に示すように、曲げ加工開始位置Sを基準に、嵌合凹部12における回転軸(A)に対し直交する平面に包含されない嵌合凸部22との嵌合部(F)がパイプPの進行方向の前方側に位置し、把持部材10の第1の溝部11と対圧部材20の第2の溝部21との回転方向の当接部(R)がパイプPの進行方向に対して後方側に位置するように、把持部材10と対圧部材20が連結されているので、圧力型300の大きな荷重にも十分抗し得る耐圧強度を確保することができる。更に、パイプP内に芯金M(玉芯金M1及びM2)が挿入された状態とされると、パイプPに対する圧縮荷重(PL)を更に大きくすることができるので、パイプPの曲げ半径を極小とすることができる。
【0074】
また、
図35に拡大して示すように、曲げに伴うパイプPの曲げ外側部分の減肉を回避するため、パイプPに対し軸押し荷重(FL)が加えられ、材料が送り込まれる(増肉)ように構成されているが、パイプPの曲げ内側部分には、軸押し荷重(FL)に抗して圧縮荷重(PL)による摩擦力(
図35に左方向の矢印FRで示す)が生じ、この摩擦力(FR)によって増肉が促進される。更に、パイプP内に芯金Mが挿入された状態で軸押し荷重(FL)が加えられると、パイプPは芯金Mと対圧部材20との間に挟持された状態で前進駆動(
図35の右方向への移動)されるので、両部材によるしごき的な作用も加わり、増肉が一層促進される。
【0075】
一方、従来の曲げ型及びワイパー(しわおさえ)を備えた回転引き曲げ加工装置においては、
図36に示すように、パイプPと曲げ型Dに対して楔形状のワイパーWが食い込むように配置されており、パイプPとの間の隙間を極力小さくするため、ワイパーWの先端は極薄形状とされているので、脆弱とならざるを得ない。このため、圧力型300の大きな荷重が連続して加えられると、ワイパーWの先端が変形あるいは破損し、パイプPとの間の隙間が大となり、しわが発生することとなる。このしわを回避するためには、ワイパーWの先端の極薄形状を維持する必要があり、前述のように定期的な交換や破損時の交換が必須とされていた。また、しわを抑制しつつ曲げ加工を行うことになるので、曲げ加工が可能なパイプPの曲げ半径にも制限があり、前述のr/d比が2程度の曲げ半径のパイプを製造することが精々であった。
【0076】
上記従来の回転引き曲げ加工装置においても、パイプP内に芯金Mが挿入された状態で曲げ加工が行われ、
図37に拡大して示すように摩擦力(FR)も生ずるが、パイプPと曲げ型Dとの間は基本的に摺動ではなく、曲げ型Dの回転作動に伴うパイプPの従動であるので、この間の摩擦力(FR)による増肉の促進は期待できない。尚、
図36及び
図37は、単に本発明のパイプ曲げ型ユニットを用いたときの作用効果を従来技術における作用効果と対比して説明するために作成したものに過ぎず、
図36及び
図37は、従来装置が本発明のパイプ曲げ型ユニットと対比し得ることを示唆するものではない。
曲げ型(100)が、外周面に断面半円状の第1の溝部(11)を有すると共に、第1の溝部に形成され、回転軸(A)に対し直交する平面内で周方向に第1の所定距離延在する嵌合凹部(12)を有する把持部材(10)と、外周面に断面半円状の第2の溝部(21)を有すると共に、第2の溝部の先端部から周方向に第2の所定距離延出する嵌合凸部(22)を有する対圧部材(20)を具備する。嵌合凸部は嵌合凹部に嵌合され、第1の溝部及び第2の溝部によって断面半円状のパイプ受溝が形成される。而して、対圧部材と把持部材は回転軸を中心とする蝶番結合によって連結され、回転軸を中心に相対的に回転可能に支持される。対圧部材は、パイプに対する曲げ加工開始位置から離隔する方向に、回転軸を中心として回転可能に支持され、パイプに対する曲げ加工開始位置から離隔した所定の退避位置と曲げ加工開始位置との間で保持される。