特許第5885500号(P5885500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5885500透明被膜形成用塗料および透明被膜付基材
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  • 特許5885500-透明被膜形成用塗料および透明被膜付基材 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5885500
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】透明被膜形成用塗料および透明被膜付基材
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/14 20060101AFI20160301BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20160301BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20160301BHJP
   B32B 23/08 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
   C09D175/14
   C09D4/02
   C09D7/12
   B32B23/08
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2011-286073(P2011-286073)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-133444(P2013-133444A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】村口 良
(72)【発明者】
【氏名】箱嶋 夕子
(72)【発明者】
【氏名】松田 政幸
【審査官】 村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−110787(JP,A)
【文献】 特開2013−101330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−10/00
101/00−201/10
C08J 7/04−7/06
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能基数が4以上のウレタンアクリレート樹脂(A)と、
2官能トリシクロデカン系ジアクリレート樹脂および/または3官能ペンタエリスリトールトリアクリレート樹脂であるアクリレート樹脂(B)と、
異形状金属酸化物微粒子(C)と、
有機溶媒(D)を含む透明被膜形成用塗料であって
前記ウレタンアクリレート樹脂(A)の重量平均分子量が500〜5000の範囲にあり、
前記アクリレート樹脂(B)の重量平均分子量が200〜500の範囲にあり、
前記ウレタンアクリレート樹脂(A)の濃度(CA)と前記アクリレート樹脂(B)の濃度(CB)との濃度比(CB)/(CA)が、0.05〜0.5の範囲にあって、
前記異形状金属酸化物微粒子(C)が、
(i)下記式(1)で表される球状係数が0.2〜0.9の範囲にある非球状金属酸化物微粒子(C−1)、および/または、
(ii)一次粒子が鎖状に連結した粒子であり、該一次粒子の、平均粒子径が3〜20nmの範囲にあり、連結数が2以上である鎖状金属酸化物微粒子(C−2)
であることを特徴とする透明被膜形成用塗料。

球状係数=(DS)/(DL)・・・・・・・・(1)
(但し、(DL)は平均粒子最長径、(DS)は最長径と直交する径で最も長い径を示す。)
【請求項2】
前記異形状金属酸化物微粒子(C)が、
シリカ、アルミナ、チタニア、シリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニア、酸化錫、SbまたはPがドープされた酸化錫、酸化インジウム、SnまたはFがドーピングされた酸化インジウム、酸化アンチモン、低次酸化チタンから選ばれる1種以上からなることを特徴とする請求項1に記載の透明被膜形成用塗料。
【請求項3】
前記アクリレート樹脂(A)の濃度(CA)が固形分として0.95〜45重量%の範囲にあり、
前記アクリレート樹脂(B)の濃度(CB)が固形分として0.05〜12重量%の範囲にあり、
前記異形状金属酸化物微粒子(C)の濃度(CC)が固形分として0.25〜48重量%の範囲にあり、
濃度比(CC)/{(CA)+(CB)+(CC)}が0.2〜0.7の範囲にあり、
合計濃度{(CA)+(CB)+(CC)}が固形分として、5〜60重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の透明被膜形成用塗料。
【請求項4】
基材と、基材上に形成された請求項1〜のいずれか1項に記載の透明被膜形成用塗料を用いて形成された透明被膜とからなり、
基材の厚みが20〜70μmの範囲にあることを特徴とする透明被膜付基材。
【請求項5】
前記基材がトリアセチルセルロース(TAC)であることを特徴とする請求項に記載の透明被膜付基材。
【請求項6】
前記透明被膜の膜厚が1〜10μmの範囲にあることを特徴とする請求項またはに記載の透明被膜付基材。
【請求項7】
透明被膜を形成し、20時間静置した10cm×10cm試験片について、平板からの高さを測定によるカーリング性が20mm以下であることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の透明被膜付基材。
【請求項8】
前記透明被膜の鉛筆硬度が3H以上であることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の透明被膜付基材。
【請求項9】
光透過率が92%以上であることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の透明被膜付基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚みの薄い基材であってもカーリング(湾曲)が抑制され、基材との密着性、硬度、耐擦傷性、透明性等に優れた透明被膜を形成するために使用される透明被膜形成用塗料、および該透明被膜を有する透明被膜付基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス、プラスチックシート、プラスチックレンズ等の基材表面の耐擦傷性を向上させるため、基材表面にハードコート機能を有する透明被膜を形成することが知られており、このような透明被膜として有機樹脂膜あるいは無機膜をガラスやプラスチック等の表面に形成することが行われている。さらに、有機樹脂膜あるいは無機膜中に樹脂粒子あるいはシリカ等の無機粒子を配合してさらに耐擦傷性を向上させることが行われている。
【0003】
このとき、塗料あるいは塗膜の厚さによっては透明被膜付基材がカーリング(湾曲)する問題があった。
さらに、近年、透明性を向上させるために、あるいは透明被膜付基材を使用した表示装置、携帯電話等の軽量化のために厚みの薄い基材が志向されている。
【0004】
従来このような樹脂製透明被膜には、アクリレート樹脂が使用されていた。たとえば、特許文献1(特開2002-055203号公報)、特許文献2(特表2007-524724号公報)などには、ウレタン系アクリレートや多官能アクリレート樹脂を用いた透明被膜が開示されている。
【0005】
また、本発明者らも、特許文献3(特開2010-001396号公報)、特許文献4(特開2011-137097号公報)に多官能アクリレート樹脂を用いた透明被膜を開示している。
また、これとは別に、本出願人は、特許文献5(特開2010-126675号公報)にて、(1)3官能以上の官能基を有する有機樹脂と、(2)2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂と、(3)1官能シリコン樹脂とからなるマトリックス形成成分と溶媒とからなる透明被膜形成用塗料を提案しているが、これは指紋付着性を主眼においたものであり、カーリング抑制について、教唆するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-055203号公報
【特許文献2】特表2007-524724号公報
【特許文献3】特開2010-001396号公報
【特許文献4】特開2011-137097号公報
【特許文献5】特開2010-126675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、厚みの薄い基材に従来の透明被膜形成用塗料を用いて透明被膜を形成したところカーリング(湾曲)が顕著になり、場合によっては透明被膜が基材から剥離する場合があり、さらにカーリングした透明被膜付基材は、他の基材と張り合わせて使用することが困難な場合があり、まったく使用に耐えないことが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、このようなカーリング(湾曲)の抑制について鋭意検討した結果、カーリングは樹脂同士の結合、樹脂と粒子の接合が不十分の場合に起こると考えた。
そして、官能基数が4以上のアクリレート樹脂(A)と、官能基数が2および/または3のアクリレート樹脂(B)と、異形状金属酸化物微粒子(C)とを混合した透明被膜形成用塗料を用いるとカーリング(湾曲)が抑制され、基材との密着性に優れ、硬度、耐擦傷性の高い透明被膜付基材が得られることを見出して本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明に係る透明被膜形成用塗料は、官能基数が4以上のアクリレート樹脂(A)と、官能基数が2および/または3のアクリレート樹脂(B)と、異形状金属酸化物微粒子(C)と、有機溶媒(D)とからなり、
アクリレート樹脂(A)の濃度(CA)とアクリレート樹脂(B)の濃度(CB)との濃度比(CB)/(CA)が、0.05〜0.5の範囲にあることを特徴とする。
【0010】
前記異形状金属酸化物微粒子(C)は、
(i)下記式(1)で表される球状係数が0.2〜0.9の範囲にある非球状金属酸化物微粒子(C-1)、および/または、
(ii)一次粒子が鎖状に連結した粒子であり、該一次粒子の平均粒子径が3〜20nmの範囲にあり、連結数が2以上である鎖状金属酸化物微粒子(C-2)
であることが好ましい。
球状係数=(DS)/(DL)・・・・・・・・(1)
(但し、(DL)は平均粒子最長径、(DS)は最長径の中点で最長径と直交する平均短径)
【0011】
前記異形状金属酸化物微粒子(C)は、
シリカ、アルミナ、チタニア、シリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニア、酸化錫、SbまたはPがドープされた酸化錫、酸化インジウム、SnまたはFがドーピングされた酸化インジウム、酸化アンチモン、低次酸化チタンから選ばれる1種以上からなることが好ましい。
【0012】
前記アクリレート樹脂(A)が、ウレタンアクリレート樹脂であり、該樹脂の重量平均分子量が500〜5000の範囲にあることが好ましい。また、前記アクリレート樹脂(B)が2官能トリシクロデカン系ジアクリレート樹脂および/または3官能ペンタエリスリトールトリアクリレート樹脂であり、該樹脂(B)の重量平均分子量が200〜500の範囲にあることが好ましい。
【0013】
前記アクリレート樹脂(A)の濃度(CA)が固形分として0.95〜45重量%の範囲にあり、前記アクリレート樹脂(B)の濃度(CB)が固形分として0.05〜12重量%の範囲にあり、前記異形状金属酸化物微粒子(C)の濃度(CC)が固形分として0.25〜48重量%の範囲にあり、濃度比(CC)/{(CA)+(CB)+(CC)}が0.2〜0.7の範囲にあり、合計濃度{(CA)+(CB)+(CC)}が固形分として、5〜60重量%の範囲にあることが好ましい。
【0014】
本発明に係る透明被膜付基材は、基材と、基材上に形成された前記透明被膜形成用塗料を用いて形成された透明被膜とからなり、基材の厚みが20〜70μmの範囲にあることを特徴とする。
【0015】
前記基材は、トリアセチルセルロース(TAC)であることが好ましい。また透明被膜の膜厚は、1〜10μmの範囲にあることが好ましい。さらに、透明被膜を形成し、20時間静置した10cm×10cm試験片について、平板からの高さを測定によるカーリング性が20mm以下であることが好ましい。前記透明被膜の鉛筆硬度が3H以上であることが好ましい。光透過率は92%以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特定の2種以上のアクリレート樹脂と異形状粒子とを併用しているので、厚みの薄い基材であってもカーリング(湾曲)が抑制され、透明性、硬度、耐擦傷性等に優れた透明被膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は本発明で使用される異形状粒子の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定的に解釈されるものではない。
【0019】
[透明被膜形成用塗料]
本発明に係る透明被膜形成用塗料は、官能基数が4以上のアクリレート樹脂(A)と官能基数が2および/または3のアクリレート樹脂(B)と異形状金属酸化物微粒子(C)と有機溶媒(D)とからなる。
【0020】
なお、アクリレート樹脂は、塗料中では未反応のモノマーないしオリゴマーであり、被膜中では、重合体硬化物となる。また、単にアクリレート樹脂にはメタクリレート樹脂も包含するので、(メタ)アクリレート樹脂と表記することもある。
【0021】
官能基数が4以上のアクリレート樹脂(A)
官能基数が4以上のアクリレート樹脂(A)としては、ペンタエリストールテトラアクリレート等の4官能アクリレート樹脂、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルテトラアクリレート等のエポキシ基含有4官能アクリレート樹脂、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート等の6官能アクリレート樹脂、6官能ウレタンアクレートオリゴマー樹脂、8官能ウレタンアクレートオリゴマー樹脂、9官能ウレタンアクレートオリゴマー樹脂、12官能ウレタンアクレートオリゴマー樹脂などが挙げられ、また、エポキシ基を有するものも好ましく、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物等のエポキシ基を含有し、かつ4官能以上のアクリレート樹脂等も使用できる。さらにこれらの混合物も好適に用いることができる。これらはメタクリレート樹脂であってもよい。
【0022】
このようなアクリレート樹脂(A)としては、市販されているNKオリゴUA−33H,NKオリゴUA−6LR,NKオリゴUA−8LR,NKオリゴUA−12LR(新中村化学(株)製)等は好適に用いることができる。
【0023】
官能基数が4以上のアクリレート樹脂(A)のなかでも、官能基数が6〜12のアクリレート樹脂は、カーリング抑制効果が高く、硬度にも優れているので好適に用いることができる。
【0024】
本発明では、このような官能基数が4以上のアクリレート樹脂(A)は、特に、ウレタンアクリレート樹脂であることが好ましい。
ウレタンアクリレート樹脂を用いるとカーリング抑制、硬度、耐擦傷性に優れた透明被膜を得ることができる。
【0025】
また、前記ウレタンアクリレート樹脂(A)の重量平均分子量が500〜5000、さらには600〜4000の範囲にあることが好ましい。ウレタンアクリレート樹脂(A)の平均分子量が低いと、透明被膜形成時の膜の収縮が大きいためにカーリング抑制効果が不十分となる場合がある。ウレタンアクリレート樹脂(A)の重量平均分子量が大きすぎても、透明被膜の硬度、耐擦傷性が不十分となる場合がある。ウレタンアクリレート樹脂(A)は重量平均分子量が前記範囲にあるオリゴマーを用いることが好ましい。このようなオリゴマーを用いると、さらにカーリングが抑制され、硬度、耐擦傷性に優れた透明被膜を得ることができる。
【0026】
官能基数が2および/または3のアクリレート樹脂(B)
2官能アクリレート樹脂としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクレート、ポリテトラエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(2,2- Bis〔4-(Methacryloxy Polyethoxy〕Phenyl〕Propane)、エトキシ化ポリプロピレングリコールジメタクリレート等のグリコール系アクリレートが挙げられる。さらに、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクレート、1,9−ノナンジオールジメタクレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、2-ヒドロキシ−3-アクリロイロキシプロピルメタクレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート(2-Hydroxy 1-3dimethacryloxy Propane)、ポリプロピレングリコールジメタクリレート等の非グリコール系アクリレートが挙げられる。
【0027】
3官能アクリレート樹脂としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の3官能アクリレート樹脂、ペンタエリスリトールヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等の3官能ウレタンアクリレート樹脂、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物等のエポキシ基含有3官能アクリレート樹脂等が挙げられ、これらの混合物も好適に用いることができる。
【0028】
このような官能基数が2および/または3のアクリレート樹脂(B)を用いると、硬度、耐擦傷性を損なうことなく基材との密着性に優れた透明被膜を得ることができる。また、前記ウレタンアクリレート樹脂(A)と組み合わせることで、基材との密着性に優れるとともに、カーリング抑制効果、硬度、耐擦傷性に優れた透明被を得ることができる。なかでも、2官能アクリレート樹脂としてはトリシクロデカン系ジアクリレート樹脂、官能基数が3のアクリレート樹脂(B)としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート樹脂が好適に用いられる。
【0029】
このようなシクロデカン系ジアクリレート樹脂、ペンタエリスリトールトリアクリレート樹脂はカーリング抑制効果、硬度を低下させることなくより密着性を向上することができるので好適に用いることができる。
【0030】
また、官能基数が2、3のアクリレート樹脂(B)の重量平均分子量が200〜500の範囲にあることが好ましい。
前記アクリレート樹脂(B)の重量平均分子量が小さいものは、カーリング抑制が不十分となる場合があり、平均分子量が大きすぎても、透明被膜の硬度、耐擦傷性が不十分となる場合がある。
【0031】
異形状金属酸化物微粒子(C)
異形状金属酸化物微粒子(C)としては、非球状金属酸化物微粒子(C-1)および/または鎖状金属酸化物粒子が使用される。このような粒子を使用することで、耐擦傷性、硬度に優れるとともに、カーリング抑制効果に優れた透明被膜を得ることができる。
【0032】
・非球状金属酸化物微粒子(C−1)
本発明に用いる非球状金属酸化物粒子(C−1)は、非真球状で、下記式(1)で表される球状係数が0.2〜0.9、さらには0.3〜0.8、さらに望ましくは0.3〜0.7未満の範囲にあることが好ましい。
球状係数=(DS)/(DL)・・・・・・・・(1)
但し、(DL)は平均粒子最長径、(DS)は最長径と直交する径で最も長い径を示す。
【0033】
球状係数が小さいものは、ブロック状、棒状、線維状などの形状に近付く。また球状係数が大きくなると、球状などの形状に近付く。このような球状係数にある粒子の形状としては、楕円球、または球状粒子の融合体であり、具体的には、ラグビーボール状、紡錘状、双球状、ブドウ房状などの形状が挙げられる。たとえば、図1に示されるものが例示される。
【0034】
非球状金属酸化物粒子(C-1)の球状係数が前記範囲の下限よりも小さい場合は、透明被膜中での分散性が不充分で、凝集することがあり、また、ハードコート膜にクラックを生じることがあり、硬度はある程度向上するものの基材との密着性、可撓性、透明性等が不充分となる場合がある。
【0035】
非球状金属酸化物粒子(C-1)の球状係数が前記範囲の上限を越えると、理由は必ずしも明らかではないが、耐擦傷性、硬度などの向上効果が不十分であったり、カーリング抑制効果が不十分となったりする場合がある。
【0036】
本発明の球状係数は、透過型電子顕微鏡写真(TEM)を撮影し、100個の粒子について最長径(DL)および最長径の中点で直交する短径(DS)を測定し、各平均値の比として求めることができる。なお、同一粒子について3回測定したところ、実質的に同じ値となる。
【0037】
非球状金属酸化物粒子(C-1)の最長径の平均値、すなわち、平均粒子最長径(DL)は5〜500nm、さらには、10〜300nmの範囲にあること好ましい。
金属酸化物粒子の平均粒子最長径(DL)が前記範囲の下限未満のものは得ること自体が困難であり、得られたとしても、分散性が不十分であったり、粒子が凝集する場合があり、得られる透明被膜の耐擦傷性、硬度が不十分となるとともに、カーリング抑制効果が得られない場合がある。金属酸化物粒子の平均粒子最長径(DL)が大きければ、当然粒子自体も大きいので透明被膜のヘーズが悪化することがある。
【0038】
本発明に用いる金属酸化物粒子はシリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、五酸化アンチモン、ボリアおよびこれらの複合酸化物からなっていることが好ましい。
とくに、シリカは、前記球状係数を有する粒子が得られやすいこと、および透明性に優れていること等の理由から好適である。なお、シリカを主成分とする粒子とは少なくとも粒子中のシリカ含有量が50質量%以上の粒子を意味している。
【0039】
本発明に用いる金属酸化物粒子としては、前記球状係数と粒子径を有していれば特に制限はないが、例えば、本願出願人の出願による特開2007−137972号公報に開示した異方形状シリカゾルの製造方法に準じて製造することができる。
【0040】
具体的には、珪酸塩を酸で中和して得られるシリカヒドロゲルを洗浄して、塩類を除去し、ついで、アルカリを添加した後、60〜200℃の範囲に加熱してシリカゾルを調製し、これをシードゾルとして、pH9〜12.5の範囲にて、温度60〜200℃の条件下、珪酸液を連続的にまたは断続的に添加することによって製造することができる。
【0041】
この方法では、シリカヒドロゲルにアルカリを添加した後、60〜200℃の範囲に加熱すると粒子径の不均一なシリカヒドロゲルが凝集した粒子径が不均一で非真球状のシリカゾルが生成し、これをシード(種粒子)として珪酸液(珪酸アルカリからイオン交換樹脂にて脱アルカリした珪酸液)を添加して粒子成長させることから前記した球状係数を有する金属酸化物粒子を得ることができる。なお、珪酸液と同時にアルミン酸ソーダを添加するとシリカを主成分とする金属酸化物粒子を得ることができる。
【0042】
なお、球状係数を調整するには下記の方法を例示することができる。
(1)球状係数の低い粒子を調製するには、前記シード粒子を高温で、具体的には120〜250℃で水熱処理し、シード粒子が複数個凝集あるいは鎖状化したシード粒子(シリカゾル)とし、これに酸性珪酸液を加えて粒子成長をさせる方法。
(2)球状係数の低い粒子を調製するには、前記シード粒子を高濃度下で、具体的にはシリカ濃度5〜30質量%の範囲で、60〜200℃で水熱処理し、シード粒子が複数個凝集あるいは鎖状化したシード粒子とし、これに酸性珪酸液を加えて粒子成長をさせる方法。
【0043】
(3)上記、(1)および(2)を組み合わせる方法。
(4)球状係数の高い粒子を調製するには、シリカヒドロゲルにアルカリを添加した後、高分散させ、60〜200℃の範囲に加熱すると粒子径の比較的均一なシリカヒドロゲルが凝集した粒子径が不均一で非真球状のシリカゾルが生成し、これをシード(種粒子)として珪酸液を添加して粒子成長させる方法。
(5)上記、(1)〜(3)で得られる平均粒子最長径が概ね200nm以下の粒子を種粒子とし、これに酸性珪酸液の添加速度を調整しながら(好ましくはゆっくり)加えて粒子成長をさせ、球状係数を高める方法。
【0044】
・鎖状金属酸化物微粒子(C-2)
鎖状金属酸化物微粒子(C-2)は、一次粒子が鎖状に連結した粒子であり、該一次粒子の平均粒子径が3〜20nm、さらには5〜18nmの範囲にあることが好ましい。
一次粒子の平均粒子径が小さいものは、一次粒子自体が得ることが困難であり、得られたとしても、粒子が凝集して所望の鎖状金属酸化物微粒子が得られない場合がある。一次粒子が大きすぎるものは、鎖状化が困難で、特に連結数の大きい鎖状粒子が得られない場合がある。
【0045】
また、一次粒子の連結数は2以上、さらには3〜30の範囲にあることが好ましい。
連結数が2未満(実質的に単分散粒子)の場合は、透明被膜の硬度の向上効果が不充分で所望の硬度が得られない。
【0046】
鎖状粒子に用いる金属酸化物粒子は、前記非球状粒子と同様に、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、五酸化アンチモン、ボリアおよびこれらの複合酸化物からなっていることが好ましい。
【0047】
このような鎖状金属酸化物微粒子の製造方法としては、前記鎖状金属酸化物微粒子(C-2)が得られれば制限はないが、例えば、本願出願人の出願による特開2008−115060号公報、特開2006−339113号公報、特開2005−139026号公報等に開示した製造方法に準じて製造することができる。
【0048】
たとえば(a)平均粒子径2〜300nmのシリカ系微粒子を水に分散させたシリカゾルに、必要に応じて他の金属酸化物前駆体水溶液と、珪酸液の水溶液を撹拌しながら添加し、得られた水溶液を陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリしたのち、反応容器中に入れて、100〜350℃の温度で水熱処理する方法などが挙げられる。
【0049】
以上の異形状金属酸化物微粒子(C)は、従来公知の方法によりシランカップリング剤処理などの分散性を高める処理が施されていてもよい。例えば、本願出願人の出願による特開2008−001869号公報に開示した方法は好適に採用することができる。
【0050】
有機溶媒(D)
本発明に用いる有機溶媒としては前記官能基数が4以上のアクリレート樹脂(A)と官能基数が2のアクリレート樹脂(B)、重合開始剤を溶解あるいは分散できるとともに、異形状金属酸化物微粒子(C)を均一に分散することができる従来公知の溶媒を用いることができる。
【0051】
具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール(IPA)、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプルピル、酢酸プルピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸シクロヘキシル、エチレングリコールモノアセテート等のエステル類、エチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのグリコール類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプルピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プルピレングリコールものエチルエーテルなどのエーテル類を含む親水性溶媒、酢酸プルピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸シクロヘキシル、エチレングリコールものアセタートなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類;トルエン等極性溶媒が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。
【0052】
重合開始剤
本発明では、必要に応じて光重合開始剤を用いることができる。
重合開始剤としては、公知のものを特に制限なく使用することが可能であり、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4−トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ-メチル-2-メチル-フェニル-プロパン-1-ケトン、2,2-ジメトキシ-1、2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン等が挙げられる。
【0053】
塗料組成
前記各成分を含む透明被膜形成用塗料中のアクリレート樹脂(A)の濃度(CA)は固形分として0.95〜45重量%、さらには2.0〜40重量%の範囲にあることが好ましい。
【0054】
透明被膜形成用塗料中のアクリレート樹脂(A)の濃度(CA)が少ないと、得られる透明被膜がカーリングする場合がある。アクリレート樹脂(A)の濃度(CA)が多すぎても、得られる透明被膜の硬度が不十分となる場合がある。
【0055】
また、アクリレート樹脂(B)の濃度(CB)は固形分として0.05〜12重量%、さらには0.1〜10重量%の範囲にあることが好ましい。アクリレート樹脂(B)の濃度(CB)が低すぎても、透明被膜と基材との密着性が不十分となる場合がある。アクリレート樹脂(B)の濃度(CB)が高すぎても、得られる透明被膜の硬度が不十分となる場合がある。
【0056】
透明被膜形成用塗料中の異形状金属酸化物微粒子(C)の濃度(CC)は固形分として0.25〜48重量%、さらには0.5〜42重量%の範囲にあることが好ましい。
透明被膜形成用塗料中の異形状金属酸化物微粒子(C)の濃度(CC)が低すぎても、カーリング抑制効果、硬度および耐擦傷性が不十分となる場合がある。異形状金属酸化物微粒子(C)の濃度(CC)が高すぎても、得られる透明被膜と基材との密着性が不十分となり、厚膜化した場合にクラックを生じる場合がある。
【0057】
透明被膜形成用塗料の(A)、(B)、(C)の合計濃度は固形分として5〜60重量%、さらには10〜50重量%の範囲にあることが好ましい。
透明被膜形成用塗料の合計濃度が固形分として5重量%未満の場合は、1回の塗布で膜厚が0.5μm以上の透明被膜を得ることが困難な場合があり、繰り返し塗布、乾燥して形成した場合、得られる透明被膜の硬度や耐擦傷性が不充分となったり、ヘーズあるいは外観が悪くなったり、生産性、製造信頼性等が低下する。
【0058】
透明被膜形成用塗料の合計濃度が固形分として60重量%を越えると、塗料の粘度が高くなり、塗布性が低下したり、得られる透明被膜のヘーズが高くなったり、表面粗さが大きく耐擦傷性が不充分となる場合がある。
【0059】
前記アクリレート樹脂(A)の濃度(CA)と前記アクリレート樹脂(B)の濃度(CB)との濃度比(CB)/(CA)は0.05〜0.50、さらには0.05〜0.43の範囲にあることが好ましい。前記濃度比(CB)/(CA)が低いと、アクリレート樹脂(B)が少ないために、密着性が不十分となる場合があり、前記濃度比(CB)/(CA)が高すぎても、アクリレート樹脂(A)が少なすぎるため、カーリング抑制効果および硬度、耐擦傷性が不十分となる場合がある。
【0060】
全固形分濃度{(CA)+(CB)+(CC)}に対する異形状金属酸化物微粒子(C)の濃度(CC)の割合、(CC)/{(CA)+(CB)+(CC)}は0.2〜0.7、さらには0.25〜0.6の範囲にあることが好ましい。
【0061】
前記(CC)/{(CA)+(CB)+(CC)}が低すぎると、カーリング抑制効果、硬度および耐擦傷性が不十分となる場合がある。(CC)/{(CA)+(CB)+(CC)}が高すぎても、得られる透明被膜と基材との密着性が不十分となり、厚膜化した場合にクラックを生じる場合がある。
【0062】
このような透明被膜形成塗料を用いた透明被膜の形成方法は、ディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法、バーコート法、グラビア印刷法、マイクログラビア印刷法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、紫外線照射する等、常法によって硬化させることによって透明被膜を形成することができる。得られた透明被膜付基材の透明被膜の膜厚は1〜10μm、さらには2〜10μmの範囲にあることが好ましい。
次ぎに、本発明に係る透明被膜付基材について説明する。
【0063】
[透明被膜付基材]
本発明に係る透明被膜付基材は、基材と、基材上に形成された透明被膜とからなり、該透明被膜が前記透明被膜形成用塗料を用いて形成された透明被膜であることを特徴としている。
【0064】
基材
本発明では、20〜70μm、さらには30〜60μmの範囲にある厚みの薄い基材が使用される。このような薄い基材を使用してもカーリング性を抑制できる透明被膜は従来知られていなかった。
【0065】
本発明に用いる基材としては、前記厚みを有するものであれば、公知のものを特に制限なく使用することが可能であり、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PET、トリアセチルセルロース(TAC)等のプラスチックシート、プラスチックフィルム等、プラスチックパネル等があげられる。
【0066】
特にTAC基材は、不燃性、透明性、表面外観、電気絶縁性などに優れ、液晶ディスプレイの構成部材である偏光板の保護膜として汎用されているものの、基材の厚みが薄い場合にカーリングしやすいが、本発明の塗料を使用すれば、カーリングを抑制することが可能となり、薄膜化が可能となる。
【0067】
本発明は、所定の厚さの基材を対象として、前記した本発明の透明被膜形成塗料を用いるものであるが、この厚さ以外の基材(薄い基材や厚い基材)に、本発明の透明被膜形成塗料を用いて透明被膜を形成することを排除するものではない。
【0068】
透明被膜
本発明に係る透明被膜は、前記した官能基数が4以上のアクリレート樹脂(A)と官能基数が2および/または3のアクリレート樹脂(B)と前記した異形状金属酸化物微粒子(C)とからなっている。透明被膜中で、前記アクリレート樹脂(A)も(B)も重合して重合体となり、そこに異形状金属酸化物微粒子(C)が分散している。
【0069】
透明被膜中アクリレート樹脂(A)の含有量(WA)は1.58〜75重量%、さらには3.33〜66.7重量%の範囲にあることが好ましい。アクリレート樹脂(A)の含有量(WA)が少ないと透明被膜がカーリングする場合がある。(WA)が多すぎても前記したように透明被膜の硬度、耐擦傷性が不十分となる場合がある。
【0070】
透明被膜中の官能基数が2および/または3のアクリレート樹脂(B)の含有量(WB)は固形分として0.08〜20重量%、さらには0.17〜16.7重量%の範囲にあることが好ましい。
【0071】
透明被膜中のアクリレート樹脂(B)の含有量(WB)が少ないと、基材との密着性が不十分となる場合があり、多すぎても、硬度、耐擦傷性が不十分となる場合がある。
透明被膜中の前記アクリレート樹脂(A)の含有量(WA)と前記樹脂(B)含有量(WB)との含有量比(WB)/(WA)は0.05〜0.5、さらには0.05〜0.43の範囲にあることが望ましい。
【0072】
含有量比(WB)/(WA)が低いと、アクリレート樹脂(B)が少ないために、密着性が不十分となる場合がある。含有量比(WB)/(WA)が多すぎても、アクリレート樹脂(A)が少なくなるので、透明被膜がカーリングしたり、硬度、耐擦傷性が不十分となる場合がある。
【0073】
透明被膜中の異形状金属酸化物微粒子(C)の含有量(WC)は20〜70重量%、さらには25〜60重量%の範囲にあることが好ましい。含有量(WC)が少ないと、カーリング抑制効果、硬度および耐擦傷性が不十分となる場合がある。含有量(WC)が多すぎても、得られる透明被膜と基材との密着性が不十分となり、厚膜化した場合にクラックを生じる場合がある。
【0074】
透明被膜の膜厚は、基材の厚さにもよるが、1〜10μm、さらには2〜10μmの範囲にあることが好ましい。
透明被膜の膜厚が薄いと、透明被膜の硬度、耐擦傷性が不充分となる場合があり、厚すぎても、基材との密着性が不十分となったり、クラックが発生する場合がある。
【0075】
本発明にかかる透明被膜付基材は、カーリング性が20mm以下、さらには10mm以下であることが好ましい。ここで、本発明でカーリング性とは、所定の形状(14cmx25cmx厚み:40μm)のTACフィルム基材上に所定の厚み(7μm)の透明被膜が形成できるように透明被膜形成用塗料を塗布し、20時間静置し、その後、フィルムを10cm×10cmサイズにカットし、塗布面を下にしてフィルムを平板上に置き、カーリング(湾曲)して浮上した基材の頂点の平板からの高さ(Amm)として定義される。
【0076】
透明被膜のカーリング性が20mmを越えると、偏光板等の基材と接着する際にハンドリングが悪く、透明被膜が基板に均一に密着した透明被膜付基材が得られない場合がある。
【0077】
また、本発明の透明被膜の鉛筆硬度は3H以上、さらには4H以上であることが好ましい。透明被膜の鉛筆硬度が3H未満の場合は、耐擦傷性が不十分である。
透明被膜付基材の光透過率が92%以上、さらには92.5%以上であることが好ましい。透明被膜付基材の光透過率が低すぎると、表示装置等に用いた場合、画像の鮮明度不充分となる場合がある。
【0078】
このように、本発明によれば、従来困難であった薄型の基材フィルムであっても、カーリングすることなく、透明被膜を形成できる。
【0079】
[実施例]
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、質量%と重量%は同じ意味を示す。
[実施例1]
異形状金属酸化物微粒子(1)の調製
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:カタロイドSI−550、BET法により測定された平均粒子径:5nm、比表面積:545m2/g、SiO2濃度:20重量%)100gについて、pHが2.8になるまで、強酸性陽イオン交換樹脂SK1BH(三菱化学社製)0.4Lに空間速度3.1で通液を繰り返した。次に、このシリカゾルを強塩基性イオン交換樹脂SANUPC(三菱化学社製)0.4Lに空間速度3.1で通液させ、pHを4.1とした後、pHが8.5になるようにアルカリ性水溶液として5%水酸化ナトリウム水溶液を5g添加した。
【0080】
pH調整したシリカゾルを180℃にて2時間加熱した。このシリカゾルをエバポレーターにてSiO2濃度20重量%まで濃縮してシリカ粒子が鎖状に連結した異形状金属酸化物粒子(1)分散ゾルを調製した。
【0081】
鎖状に連結した異形状金属酸化物粒子(1)の透過型電子顕微鏡写真(日立製作所製:H−800)の観察により、平均粒子径5nmのシリカ粒子が平均10個鎖状に連結していた。
【0082】
この鎖状に連結した異形状金属酸化物粒子(1)分散ゾルを、限外濾過膜を用いて洗浄し、メタノールにて溶媒置換するとともに固形分濃度20重量%になるまで濃縮した。ついで、このゾル100gにγ-メタクロキシプロピルトリメトキシシラン3.0g(信越シリコ−ン(株)製:KBM−503、SiО2成分81.2%)を加え、50℃で6時間加熱撹拌して表面処理した異形状金属酸化物粒子(1)分散液を得た。ついで、ロータリーエバポレーターにてメチルイソブチルケトンに溶媒置換して固形分濃度40.5重量%の異形状金属酸化物粒子(1)分散液を得た。
【0083】
透明被膜形成用塗料(1)の調製
濃度40.5重量%の異形状金属酸化物粒子(1)分散液59.26gと、官能基数が9のアクリレート樹脂(A)としてウレタンアクリレートオリゴマー樹脂(新中村化学(株)製:NKオリゴ UA−33H、平均分子量=4,000)14.40gと、官能基数が2のアクリレート樹脂(B)としてジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDCP−A、平均分子量=302)1.60gと、シリコーン系レベリング剤(楠本化成(株)製;ディスパロン1711)0.20gと光重合開始剤(チバジャパン(株))製:イルガキュア184)0.96gとPGME13.58gとアセトン10.0gを充分に混合して固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(1)を調製した。
【0084】
透明被膜付基材(1)の製造
透明被膜形成用塗料(1)を、TACフィルム(富士フィルム(株)製:FT−PB40UL−M、厚さ:40μm、屈折率:1.51)にバーコーター法(#14)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、N2雰囲気下300mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて透明被膜付基材(1)を得た。透明被膜の膜厚は7μmであった。得られた透明被膜付基材(1)について、全光線透過率およびヘイズは、ヘーズメーター(スガ試験機(株)製)により測定した。なお、未塗布のTACフィルムは全光線透過率が93.2%、ヘイズが0.2%であった。
また、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を以下の方法、評価基準で評価し、結果を表1および2に示す。
【0085】
カーリング性評価
14cm×25cm×40μm(厚み)のTACフィルム基材上に厚みが7μmの透明被膜が形成できるように透明被膜形成用塗料(1)を塗布し、20時間静置し、その後、フィルムを10cm×10cmサイズにカットし、塗布面を下にしてフィルムを平板上に置き、カーリング(湾曲)して浮上した基材の頂点の平板からの高さを測定し、以下の基準で評価した。
〈評価基準〉
10mm未満 :◎
10〜20mm未満 :○
20〜30mm未満 :△
30mm以上 :×
【0086】
鉛筆硬度の測定
JIS−K−5600に準じて鉛筆硬度試験器により測定した。
耐擦傷性の測定
#0000スチールウールを用い、荷重2kg/cm2で10回摺動し、膜の表面を目視観察し、以下の基準で評価した。
評価基準:
筋条の傷が認められない :◎
筋条に傷が僅かに認められる:○
筋条に傷が多数認められる :△
面が全体的に削られている :×
【0087】
[実施例2]
透明被膜形成用塗料(2)の調製
実施例1において、官能基数が9のアクリレート樹脂(A)としてウレタンアクリレートオリゴマー樹脂(新中村化学(株)製:NKオリゴ UA−33H、平均分子量=4,000)15.20gと、官能基数が2のアクリレート樹脂(B)としてジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDCP−A、平均分子量=302)0.8gとを用いた以外は同様にして固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(2)を調製した。
【0088】
透明被膜付基材(2)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗料(2)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(2)を得た。透明被膜の膜厚は7μmであった。得られた透明被膜付基材(2)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表1および2に示す。
【0089】
[実施例3]
透明被膜形成用塗料(3)の調製
実施例1において、官能基数が9のアクリレート樹脂(A)としてウレタンアクリレートオリゴマー樹脂(新中村化学(株)製:NKオリゴ UA−33H、平均分子量=4,000)9.1gと、官能基数が2のアクリレート樹脂(B)としてジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDCP−A、平均分子量=302)6.9gとを用いた以外は同様にして固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(3)を調製した。
【0090】
透明被膜付基材(3)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗料(3)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(3)を得た。透明被膜の膜厚は7μmであった。得られた透明被膜付基材(3)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表1および2に示す。
【0091】
[実施例4]
透明被膜形成用塗料(4)の調製
実施例1において、官能基数が8のアクリレート樹脂(A)としてウレタンアクリレートオリゴマー樹脂(新中村化学(株)製:NKオリゴ UA−8LR、平均分子量=3,000)14.4gを用いた以外は同様にして固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(4)を調製した。
【0092】
透明被膜付基材(4)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗料(4)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(4)を得た。透明被膜の膜厚は7μmであった。得られた透明被膜付基材(4)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表1および2に示す。
【0093】
[実施例5]
透明被膜形成用塗料(5)の調製
実施例1において、官能基数が12のアクリレート樹脂(A)としてウレタンアクリレートオリゴマー樹脂(新中村化学(株)製:NKオリゴ UA−12LR、平均分子量=4,400)14.4gを用いた以外は同様にして固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(5)を調製した。
【0094】
透明被膜付基材(5)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗料(5)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(5)を得た。透明被膜の膜厚は7μmであった。得られた透明被膜付基材(5)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表1および2に示す。
【0095】
[実施例6]
透明被膜形成用塗料(6)の調製
実施例1において、官能基数が3のアクリレート樹脂(B)としてペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE−3A、平均分子量=298)1.60gを用いた以外は同様にして固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(6)を調製した。
【0096】
透明被膜付基材(6)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗料(6)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(6)を得た。透明被膜の膜厚は7μmであった。得られた透明被膜付基材(6)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表1および2に示す。
【0097】
[実施例7]
透明被膜形成用塗料(7)の調製
実施例1と同様にして調製した濃度40.5重量%の異形状金属酸化物粒子(1)分散液69.14gと、官能基数が9のアクリレート樹脂(A)としてウレタンアクリレートオリゴマー樹脂(新中村化学(株)製:NKオリゴ UA−33H、平均分子量=4,000)10.80gと、官能基数が2のアクリレート樹脂(B)としてジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDCP−A、平均分子量=302)1.20gと、シリコーン系レベリング剤(楠本化成(株)製;ディスパロン1711)0.20gと光重合開始剤(チバジャパン(株))製:イルガキュア184)に溶解0.72gとPGME7.94gとアセトン10.0gを充分に混合して固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(7)を調製した。
【0098】
透明被膜付基材(7)の製造
実施例1おいて、透明被膜形成用塗料(7)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(7)を得た。透明被膜の膜厚は7μmであった。得られた透明被膜付基材(7)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表1および2に示す。
【0099】
[実施例8]
透明被膜形成用塗料(8)の調製
実施例1と同様にして調製した濃度40.5重量%の異形状金属酸化物粒子(1)分散液49.38gと、官能基数が9のアクリレート樹脂(A)としてウレタンアクリレートオリゴマー樹脂(新中村化学(株)製:NKオリゴ UA−33H、平均分子量=4,000)18.0gと、官能基数が2のアクリレート樹脂(B)としてジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDCP−A、平均分子量=302)2.00gと、シリコーン系レベリング剤(楠本化成(株)製;ディスパロン1711)0.20gと光重合開始剤(チバジャパン(株))製:イルガキュア184)1.20gとPGME19.22gとアセトン10.0gを充分に混合して固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(8)を調製した。
【0100】
透明被膜付基材(8)の製造
実施例1おいて、透明被膜形成用塗料(8)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(8)を得た。透明被膜の膜厚は7μmであった。得られた透明被膜付基材(8)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表1および2に示す。
【0101】
[実施例9]
異形状金属酸化物微粒子(2)の調製
SiO2濃度が24重量%の珪酸ナトリウム水溶液(SiO2/Na2Oモル比が3.1)33.4Kgを純水126.6Kgで希釈して、SiO2濃度が5重量%の珪酸ナトリウム水溶液(pH11)を160Kg調製した。この珪酸ナトリウム水溶液のpHが4.5になるように硫酸濃度25%の硫酸水溶液を加えて中和し、常温で5時間保持することにより、熟成して、シリカヒドロゲルを調製した。
【0102】
このシリカヒドロゲルを、濾布を張った濾過機を用いて、SiO2固形分の約120倍相当量の純水で充分に洗浄した。シリカヒドロゲルを純水に分散し、SiO2濃度3重量%の分散液を調製し、強力攪拌機を使用して、流動性のスラリー状態になるまで攪拌した。
【0103】
このスラリー状のシリカヒドロゲル分散液のpHが10.5になるように濃度15重量%のアンモニア水を添加し、95℃で1時間かけて攪拌を続け、シリカヒドロゲルの解膠操作を行い、シリカゾルを得た。
【0104】
得られたシリカゾルを150℃で1時間加熱して、安定化させた後、シリカゾルを限外濾過膜(旭化成工業(株)製:SIP−1013)を用いて、SiO2濃度が13重量%になるまで濃縮し、ついで、ロータリーエバポレーターで濃縮し、44μmメッシュのナイロンフィルターで濾過してSiO2濃度30重量%のシリカゾル(2)を調製した。
【0105】
シリカゾル(2)中の非球状シリカ粒子の平均粒子最長径(DL)は48nm、平均短径(DS)は16nmであり、球状係数は0.33であった。ついで、シリカゾル(2)600gと、純水5,955gおよびSiO2濃度が24重量%の珪酸ナトリウム水溶液(SiO2/Na2Oモル比が3.1)63.3gを混合し、87℃まで昇温し、0.5時間熟成した。ついで、SiO2濃度が3重量%の珪酸液1,120gを14時間かけて添加した。室温まで冷却した後、得られたシリカゾルを限外濾過膜(旭化成工業(株)製:SIP−1013)を用いて、SiO2濃度が12重量%になるまで濃縮し、ついで、ロータリーエバポレーターで濃縮し、44μmメッシュのナイロンフィルターで濾過して固形分濃度30重量%の非球状シリカからなる異形状金属酸化物微粒子(2)分散液を得た。
【0106】
つぎに、濃度30重量%の異形状金属酸化物微粒子(2)分散液400gに純水を添加し固形分濃度20重量%とし、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)240gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、この分散液を限外濾過膜を用いてメタノールにて溶媒置換して固形分濃度20重量%のメタノール分散液を得た。
【0107】
このメタノール分散液100gにメタクリル系シランカップリング剤(信越化学(株)製:KBM‐503、γ-メタクロキシプロピルトリメトキシシラン)3.0gを加え、50℃で6時間加熱撹拌して有機ケイ素化合物で表面処理した非球状シリカからなる異形状金属酸化物微粒子(2)分散液を調製した。ロータリーエバポレーターにてメチルイソブチルケトンに溶媒置換して固形分濃度40重量%の非球状シリカからなる異形状金属酸化物微粒子(2)のメチルイソブチルケトン分散液とした。
【0108】
得られた、表面処理した非球状シリカからなる異形状金属酸化物微粒子(2)の平均粒子最長径(DL)は50nm、平均短径(DS)は21nmであり、球状係数(DS)/(DL)は0.42であった。
【0109】
透明被膜形成用塗料(9)の調製
固形分濃度40.5重量%の非球状シリカからなる異形状金属酸化物微粒子(2)のメチルイソブチルケトン分散液59.26gと、官能基数が9のアクリレート樹脂(A)としてウレタンアクリレートオリゴマー樹脂(新中村化学(株)製:NKオリゴ UA−33H、平均分子量=4,000)14.40gと、官能基数が2のアクリレート樹脂(B)としてジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDCP−A、平均分子量=302)1.60gと、シリコーン系レベリング剤(楠本化成(株)製;ディスパロン1711)0.20gと光重合開始剤(チバジャパン(株))製:イルガキュア184)0.96gとPGME13.58gとアセトン10.0gを充分に混合して固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(9)を調製した。
【0110】
透明被膜付基材(9)の製造
実施例1おいて、透明被膜形成用塗料(9)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(9)を得た。透明被膜の膜厚は7μmであった。得られた透明被膜付基材(9)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表1および2に示す。
【0111】
[実施例10]
異形状金属酸化物微粒子(3)の調製
実施例9と同様にしてSiO2濃度30重量%のシリカゾル(2)を調製した。
ついで、SiO2濃度30重量%のシリカゾル(2)400gに純水を添加し固形分濃度20重量%とし、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)240gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、この分散液を、限外濾過膜を用いてメタノールにて溶媒置換して固形分濃度20重量%のメタノール分散液を得た。
【0112】
ついで、このメタノール分散液100gにメタクリル系シランカップリング剤(信越化学(株)製:KBM‐503、γ-メタクロキシプロピルトリメトキシシラン)3.0gを加え、50℃で6時間加熱撹拌して有機ケイ素化合物で表面処理した非球状シリカからなる異形状金属酸化物微粒子(3)分散液を調製した。
【0113】
ついで、ロータリーエバポレーターにてメチルイソブチルケトンに溶媒置換して固形分濃度20重量%の非球状シリカからなる異形状金属酸化物微粒子(3)のメチルイソブチルケトン分散液とした。表面処理した非球状シリカからなる異形状金属酸化物微粒子(3)の平均粒子最長径(DL)は48nm、平均短径(DS)は16nmであり、球状係数(DS)/(DL)は0.33であった。
【0114】
透明被膜形成用塗料(10)の調製
実施例9において、固形分濃度40.5重量%の非球状シリカからなる異形状金属酸化物微粒子(3)のメチルイソブチルケトン分散液を用いた以外は同様にして固形分濃度40重量%の透明被膜形成用塗料(10)を調製した。
【0115】
透明被膜付基材(10)の製造
実施例1おいて、透明被膜形成用塗料(10)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(10)を得た。透明被膜の膜厚は7μmであった。得られた透明被膜付基材(10)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表1および2に示す。
【0116】
[実施例11]
透明被膜付基材(11)の製造
実施例1において、TACフィルム(富士フィルム(株)製:FT−PB40UL−M、厚さ:60μm、屈折率:1.51)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(11)を得た。透明被膜の膜厚は7μmであった。得られた透明被膜付基材(11)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表1および2に示す。
【0117】
[比較例1]
透明被膜形成用塗料(R1)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度40.5重量%の異形状金属酸化物粒子(1)分散液59.26gと、官能基数が9のアクリレート樹脂(A)としてウレタンアクリレートオリゴマー樹脂(新中村化学(株)製:NKオリゴ UA−33H、平均分子量=4,000)16.0gと、シリコーン系レベリング剤(楠本化成(株)製;ディスパロン1711)0.2gと光重合開始剤(チバジャパン(株))製:イルガキュア184)0.96gとPGME13.58gとアセトン10gを充分に混合して固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(R1)を調製した。
【0118】
透明被膜付基材(R1)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗料(R1)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(R1)を得た。透明被膜の膜厚は7μmであった。得られた透明被膜付基材(R1)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表1および2に示す。
【0119】
[比較例2]
透明被膜形成用塗料(R2)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度40重量%の異形状金属酸化物粒子(1)分散液59.26gと、官能基数が2のアクリレート樹脂(B)としてジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDCP−A、平均分子量=302)16.0gと、シリコーン系レベリング剤(楠本化成(株)製;ディスパロン1711)0.20gと光重合開始剤(チバジャパン(株))製:イルガキュア184)0.96gとPGME13.58gとアセトン10.0gを充分に混合して固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(R2)を調製した。
【0120】
透明被膜付基材(R2)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗料(R2)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(R2)を得た。透明被膜の膜厚は7μmであった。得られた透明被膜付基材(R2)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表1および2に示す。
【0121】
[比較例3]
透明被膜形成用塗料(R3)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度40.5重量%の異形状金属酸化物粒子(1)分散液59.26gと、アクリル樹脂(共栄社化学社(株)製:DPE−6A、平均分子量=578)16.0gと、シリコーン系レベリング剤(楠本化成(株)製;ディスパロン1711)0.20gと光重合開始剤(チバジャパン(株))製:イルガキュア184)0.96gとPGME13.58gとアセトン10gを充分に混合して固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(R3)を調製した。
【0122】
透明被膜付基材(R3)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗料(R3)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(R3)を得た。透明被膜の膜厚は7μmであった。得られた透明被膜付基材(R3)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表1および2に示す。
【0123】
[比較例4]
透明被膜形成用塗料(R4)の調製
シリカオルガノゾル分散液(日揮触媒化成(株)製:OSCAL1842;平均粒子径12nm、SiO2濃度40.5重量%、分散媒:メチルイソブチルケトン、粒子屈折率1.46)59.26gと、ポリエステルアクリレート樹脂(大阪有機化学社(株)製:V#1000、平均分子量=1000〜2000)16.0gと、シリコーン系レベリング剤(楠本化成(株)製;ディスパロン1711)0.20gと光重合開始剤(チバジャパン(株))製:イルガキュア184)0.96gとPGME13.58gとアセトン10.0gを充分に混合して固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(R4)を調製した。
【0124】
透明被膜付基材(R4)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗料(R4)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(R4)を得た。透明被膜の膜厚は7μmであった。得られた透明被膜付基材(R4)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表1および2に示す。
【0125】
[比較例5]
透明被膜形成用塗料(R5)の調製
官能基数が9官能のアクリレート樹脂(A)としてウレタンアクリレートオリゴマー樹脂(新中村化学(株)製:NKオリゴ UA−33H、平均分子量=4000)36.0gと、官能基数が2のアクリレート樹脂(B)としてジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDCP−A、平均分子量=302)4.0gと、シリコーン系レベリング剤(楠本化成(株)製;ディスパロン1711)0.20gと光重合開始剤(チバジャパン(株))製:イルガキュア184)2.4gとPGME47.4gとアセトン10.0gを充分に混合して固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(R5)を調製した。
【0126】
透明被膜付基材(R5)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗料(R5)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(R5)を得た。透明被膜の膜厚は7μmであった。得られた透明被膜付基材(R5)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表1および2に示す。
【0127】
[比較例6]
透明被膜形成用塗料(R6)の調製
シリカオルガノゾル分散液(日揮触媒化成(株)製:OSCAL1842;平均粒子径12nm、SiO2濃度40.5重量%、分散媒:メチルイソブチルケトン、粒子屈折率1.46、球状係数=1)59.26gと、官能基数が9のアクリレート樹脂(A)としてウレタンアクリレートオリゴマー樹脂(新中村化学(株)製:NKオリゴ UA−33H、平均分子量=4,000)14.40gと、官能基数が2のアクリレート樹脂(B)としてジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDCP−A、平均分子量=302)1.60gと、シリコーン系レベリング剤(楠本化成(株)製;ディスパロン1711)0.20gと光重合開始剤(チバジャパン(株))製:イルガキュア184)0.96gとPGME13.58gとアセトン10.0gを充分に混合して固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(R6)を調製した。
【0128】
透明被膜付基材(R6)の製造
透明被膜形成用塗料(R6)を、TACフィルム(富士フィルム(株)製:FT−PB40UL−M、厚さ:40μm、屈折率:1.51)にバーコーター法(#14)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、N2雰囲気下300mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて透明被膜付基材(R6)を得た。透明被膜の膜厚は7μmであった。得られた透明被膜付基材(R6)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表1および2に示す。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
図1