(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板を部品実装位置に搬入し位置決めして搬出する基板搬送装置と、複数の部品を収容する部品収容部が複数個着脱可能に取り付けられる部品供給装置と、前記部品収容部から前記部品を採取して位置決めされた前記基板に装着する部品装着ヘッドを有する部品移載装置と、を備える部品実装機が複数段直列に配された部品実装ラインにおける部品実装方法であって、
少なくとも1つの前記部品実装機の故障によって前記部品の装着が未完了の装着未完了基板について当該基板の識別符号と装着未完了状態とを対応付けて記憶する装着未完了状態記憶工程と、
前記識別符号及び前記装着未完了状態に基づいて故障した前記部品実装機以外の複数の正常な前記部品実装機のうちの選択した選択部品実装機に故障した前記部品実装機の分担部品を割り振って装着させるための割振り部品装着プログラムを作成する割振り部品装着プログラム作成工程と、
前記装着未完了基板を最終段の前記部品実装機から搬出し、前段側の前記部品実装機に前記装着未完了基板を搬入して、前記選択部品実装機では、前記割振り部品装着プログラムを実行して前記装着未完了基板に割振り部品を装着し、前記故障した部品実装機及び前記選択部品実装機以外の正常な部品実装機では、前記基板搬送装置による前記装着未完了基板の搬送のみを行う割振り部品装着工程と、
を備えることを特徴とする部品実装方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。各実施形態について共通する箇所には共通の符号を付して対応させることにより重複する説明を省略する。なお、各図は概念図であり、細部構造の寸法まで規定するものではない。
【0016】
(1)第1実施形態
(1−1)部品実装ライン
図1は、部品実装ライン1の全体構成の一例を示す斜視図である。
図2は、
図1のシステムベース11の部品実装機を示す斜視図である。部品実装ライン1は、2台の同一構造の部品実装機を搭載したシステムベース11が4個列設されている。したがって、部品実装ライン1は、8台の部品実装機21〜28が直列に配されている。
図1の紙面左方向奥側の部品実装機21を前段側、紙面右方向手前側の部品実装機28を後段側とするとき、基板は、前段側の部品実装機21から搬入されて、後段側の部品実装機28から搬出される。部品実装機21〜28において基板が順次搬送される間に基板に部品が装着される。同図では、基板の搬送方向をX軸方向とし、水平面内でX軸方向に直交する方向をY軸方向とする。以下、後段側の部品実装機28を例に部品実装機の構成について詳説する。なお、部品実装機21〜27は、部品実装機28と同様の構成を有している。
【0017】
図2に示すように、部品実装機28は、基板搬送装置3、部品供給装置4、部品移載装置5、部品カメラ6、制御コンピュータ7及びノズル収容装置8を有しており、これらは基台9に組み付けられている。基板搬送装置3は、部品実装機28の長手方向(Y軸方向)の中央付近に配設されており、第1搬送装置31及び第2搬送装置32が並設された、いわゆるダブルコンベアタイプの搬送装置である。第1搬送装置31は、基台9上にX軸方向と平行に並設される図示しない一対のガイドレールと、一対のガイドレールに案内され基板を載置して搬送する図示しない一対のコンベアベルトと、を有している。また、第1搬送装置31には、部品実装位置まで搬送された基板を基台9側から押し上げて位置決めする図示しないクランプ装置が設けられている。第2搬送装置32は、第1搬送装置31と同様の構成を有している。
【0018】
部品供給装置4は、部品実装機28の長手方向の前部(
図2の紙面左方向前側)に設けられており、複数のカセット式フィーダ41が本体部上に着脱可能に取り付けられている。カセット式フィーダ41は部品収容部に相当する。カセット式フィーダ41は、フィーダ本体42と、フィーダ本体42に回転可能かつ着脱可能に装着された供給リール43と、フィーダ本体42の先端側(部品実装機28の中央寄り)に設けられた部品供給部44と、を備えている。供給リール43は部品を供給する媒体であり、所定個数の部品を一定の間隔で保持した図示しないキャリアテープが巻回されている。キャリアテープの先端が部品供給部44まで引き出されて、キャリアテープごとに異なる部品が供給される。カセット式フィーダ41は、例えば、チップ部品などの比較的小型の部品を供給することができる。なお、部品収容部は、カセット式フィーダ41以外にも、例えば、トレイユニットを用いることができる。トレイユニットは、例えば、IC素子やLSI素子などの比較的大形の部品をトレイに収容した状態で供給することができる。
【0019】
部品移載装置5は、X軸方向及びY軸方向に移動可能ないわゆるXYロボットタイプの移載装置であり、部品実装機28の長手方向の後部(
図2の紙面右方向奥側)から前部の部品供給装置4の上方にかけて配設されている。部品移載装置5は、ヘッド駆動機構51及び部品装着ヘッド52を有している。部品装着ヘッド52は複数種類あり、操作者は、部品装着ヘッド52の種類を選択して部品移載装置5に取り付けることができる。ヘッド駆動機構51は、部品装着ヘッド52をX軸方向及びY軸方向に駆動することができる。なお、第1搬送装置31及び第2搬送装置32で交互に基板を搬入及び搬出して、部品移載装置5で交互に部品の装着を行うことができる。
【0020】
部品カメラ6は、部品装着ヘッド52の吸着ノズル56が吸着した部品の適否及び部品の吸着状態の良否を判定することができる。部品カメラ6は、部品供給部44と第1搬送装置31との間の基台9上に配設されている。また、部品カメラ6に隣接して、基台9上にノズル収容装置8が配設されている。ノズル収容装置8は、複数のノズル保持穴を有し、ノズル保持穴に吸着ノズル56を収容することができる。ノズル収容装置8では、吸着ノズル56を交換することができる。吸着ノズル56を交換する際は、部品装着ヘッド52がノズル収容装置8に移動して、不要になった吸着ノズル56をノズル収容装置8に戻す。そして、交換する吸着ノズル56をノズル収容装置8から取り出して、部品装着ヘッド52に搭載する。
【0021】
制御コンピュータ7は、上部のカバー91の前側上部に配設されており、図示しないマイクロコンピュータを有している。マイクロコンピュータは、CPU、メモリ及び通信インターフェースを備えており、これらは、バスを介して接続されている。制御ブロックとして捉えると、マイクロコンピュータは、表示制御部、通信制御部及び実装制御部を有している。表示制御部は、基板に装着する部品の部品情報、対応する部品収容部の部品収容情報、部品の装着状況、部品実装機の状態などをモニタに表示することができる。例えば、部品収容部がカセット式フィーダ41の場合は、部品収容情報はフィーダ情報を有し、部品収容部がトレイユニットの場合は、部品収容情報はトレイ情報を有している。
【0022】
各部品実装機21〜28の各制御コンピュータ7及びホストコンピュータは、有線又は無線の通信回線で接続されている。通信回線は、例えば、LANを用いることができる。通信制御部は、他の部品実装機21〜27及び図示しないホストコンピュータとの間の通信を制御することができ、各種データ及び制御信号を送受信することができる。各種データには、基板に装着する部品の部品情報、部品収容情報、部品の装着順序、部品の装着位置、部品装着ヘッド52の種別及び吸着ノズル56の種別などが含まれる。
【0023】
各部品実装機21〜28の通信制御部は、ホストコンピュータが作成した部品の装着プログラムを通信回線を介してダウンロードすることこができ、各部品実装機21〜28の実装制御部は、装着プログラムを実行することにより、他の部品実装機と協働して基板に部品を装着することができる。なお、ホストコンピュータの代わりに、部品実装機21〜28のうちの任意の部品実装機が部品の装着プログラムを作成して、他の部品実装機に部品の装着プログラムを送信することもできる。また、装着プログラムには、後述する分担部品装着プログラム及び割振り部品装着プログラムが含まれる。
【0024】
実装制御部は、部品の装着プログラムに基づいて、基板搬送装置3、部品供給装置4及び部品移載装置5を駆動することができ、基板に部品を装着することができる。実装制御部の指令により、部品移載装置5の部品装着ヘッド52は、まず部品供給装置4に移動して部品を吸着する。そして、部品装着ヘッド52は、部品カメラ6の撮像部に移動して、部品カメラ6は、部品の吸着状態を撮像する。次に、部品装着ヘッド52は、基板搬送装置3によって位置決めされた基板の所定の装着位置に移動して部品を装着し、最後に部品供給装置4に戻る。本明細書では、この一連の動作を装着サイクルといい、1回の装着サイクルに要する時間を装着サイクルタイムという。また、各部品実装機21〜28で装着サイクルを繰り返すことによって、配分された部品種の部品を装着するのに要する時間を個別サイクルタイムという。
【0025】
(1−2)部品実装方法
(部品実装方法の概要)
図3は、部品実装方法の手順の一例を示すフローチャートである。まず、ホストコンピュータは、各部品実装機21〜28が装着する分担部品を基板に装着するための分担部品装着プログラムを作成する(ステップS10)。分担部品装着プログラムは、各部品実装機21〜28に送信され、各部品実装機21〜28は、分担部品装着プログラムをダウンロードする。そして、各部品実装機21〜28は、分担部品装着プログラムを実行して基板に分担部品を装着する(ステップS11)。なお、分担部品とは、基板に装着する複数の部品のうち各部品実装機21〜28が装着を分担する部品をいう。
【0026】
次に、ホストコンピュータは、少なくとも1つの部品実装機が故障しているか否かを判定して(ステップS12)、すべての部品実装機21〜28が故障していない場合(すべての部品実装機21〜28が正常である場合)は、ステップS13に進み、すべての基板に部品の装着が完了したか否かを判定する。すべての基板の部品の装着が完了したときは、本フローチャートを終了し、部品の装着が完了していない基板があるときは、ステップS11に戻り、各部品実装機21〜28は、分担部品の装着を継続する。
【0027】
ステップS12で少なくとも1つの部品実装機が故障している場合は、ステップS14に進み、故障した部品実装機は、装着未完了基板の識別符号及び装着未完了状態をメモリに記憶する。そして、故障した部品実装機は、故障を示す異常信号と共に、装着未完了基板の識別符号及び装着未完了状態をホストコンピュータに送信する。ホストコンピュータは、装着未完了基板の識別符号及び装着未完了状態に基づいて割振り部品装着プログラムを作成する(ステップS15)。
【0028】
割振り部品装着プログラムは、選択部品実装機に送信され、選択部品実装機は、割振り部品装着プログラムをダウンロードする。そして、選択部品実装機は、割振り部品装着プログラムを実行して割振り部品の装着を行う(ステップS16)。なお、割振り部品装着プログラムとは、選択部品実装機に故障した部品実装機の分担部品を割り振って装着させるプログラムをいい、選択部品実装機とは、故障した部品実装機以外の複数の正常な部品実装機の中から選択された部品実装機をいう。
【0029】
次に、ホストコンピュータは、故障した部品実装機が回復したか否かを判定する(ステップS17)。故障した部品実装機が回復した場合は、ステップS11に戻り、各部品実装機21〜28は、分担部品装着プログラムを実行して分担部品の装着を行う。故障した部品実装機が回復していない場合は、ステップS18に進み、正常な部品実装機で臨時生産を行う。そして、ステップS19に進み、ホストコンピュータは、すべての基板に部品の装着が完了したか否かを判定する。すべての基板に部品の装着が完了したときは、本フローチャートを終了し、部品の装着が完了していない基板があるときは、ステップS17に戻り、故障した部品実装機が回復したか否かを判定する。
【0030】
本明細書では、分担部品装着プログラムの作成を行う工程(ステップS10)を分担部品装着プログラム作成工程といい、装着未完了基板の識別符号及び装着未完了状態を記憶する工程(ステップS14)を装着未完了状態記憶工程という。また、割振り部品装着プログラムの作成を行う工程(ステップS15)を割振り部品装着プログラム作成工程といい、割振り部品装着プログラムを実行して割振り部品の装着を行う工程(ステップS16)を割振り部品装着工程という。そして、臨時生産を行う工程(ステップS18)を臨時生産工程という。以下、各工程について詳説する。
【0031】
(分担部品装着プログラム作成工程)
ホストコンピュータは、各部品実装機21〜28で分担部品を基板に装着するための分担部品装着プログラムを作成する。分担部品装着プログラムは、各部品実装機21〜28の個別サイクルタイムが均等になるように、各部品実装機21〜28の分担部品を決定する最適化プログラムである。各部品実装機21〜28の個別サイクルタイムを均等化(平準化)することにより、各部品実装機21〜28における装着待ち時間を低減して、部品実装ライン1全体の実装時間を短縮することができる。最適化の方法は限定されず、公知の最適化プログラムを用いることができる。
【0032】
図4は、分担部品装着プログラムの演算処理の一例を示すフローチャートである。ホストコンピュータは、まず、部品を装着可能な部品実装機に順に分担部品を振り分ける(ステップS101)。このとき、各部品実装機21〜28に振り分けられる部品の装着サイクルタイムの和が最小となるように、各部品実装機21〜28に順に部品を振り分けていく。例えば、各部品実装機21〜28のうち、部品実装機21に振り分けられた部品の装着サイクルタイムの和が最も小さいとする。この場合、装着サイクルタイムの和が最も小さい部品実装機21に次の部品を振り分ける。このようにして、すべての部品を部品実装機21〜28に振り分ける。なお、部品実装機が部品を装着可能であるか否かの判断は、後述する割振り部品装着プログラム作成工程と同様に行うことができる。また、部品が全く振り分けられていない場合や、装着サイクルタイムが同一である場合には、いずれの部品実装機に振り分けても良い。
【0033】
次に、ホストコンピュータは、各部品実装機21〜28の個別サイクルタイムが均等になるように、各部品実装機21〜28に振り分けられた部品の交換を行う(ステップS102、S103)。例えば、部品装着ヘッド52の種別によっては、1回の装着サイクルで複数の部品を装着することができる場合がある。そのため、必ずしも装着サイクルタイムの和が個別サイクルタイムになるとは限らない。ホストコンピュータは、各部品実装機21〜28の個別サイクルタイムを算出して、各部品実装機21〜28の個別サイクルタイムが均等になるように、各部品実装機21〜28に振り分けられた部品の交換を行う。例えば、個別サイクルタイムが最も大きい部品実装機に振り分けられた部品と、個別サイクルタイムが最も小さい部品実装機に振り分けられた部品と、を交換する。以上により、各部品実装機21〜28の個別サイクルタイムを均等化することができる。なお、個別サイクルタイムが均等であるか否かは、各部品実装機21〜28の個別サイクルタイムの差が所望の範囲にあるか否かによって判断することができる。
【0034】
各部品実装機21〜28に分配された部品は、各部品実装機21〜28の分担部品になる。分担部品は、装着順序、基板上の装着位置、使用する部品装着ヘッド52、吸着ノズル56などの部品の装着時に必要となる情報と共にプログラム化される。作成された分担部品装着プログラムは、ホストコンピュータから各部品実装機21〜28に通信回線を介して送信され、各部品実装機21〜28は、通信回線を介して分担部品装着プログラムをダウンロードする。そして、分担部品装着プログラムは、各部品実装機21〜28の制御コンピュータ7のメモリに記憶される。
【0035】
(装着未完了状態記憶工程)
部品実装機が故障すると、故障した部品実装機は、装着未完了基板の識別符号と装着未完了状態とを対応付けて制御コンピュータ7のメモリに記憶する。部品実装機の故障とは、基板搬送装置3によって基板を搬送することはできるが、基板に部品を装着できない状態をいう。例えば、部品供給装置4及び部品移載装置5のうちの少なくとも1つが故障した場合をいう。また、装着未完了基板とは、部品実装機21〜28のうちの少なくとも1つの部品実装機の故障によって、部品の装着が未完了の状態(以下、装着未完了状態という。)の基板をいう。各部品実装機21〜28は、部品を基板に装着する毎に基板の識別符号と装着状態とを対応付けた部品の装着データを更新する。部品実装機が故障すると、故障した部品実装機は、通信回線を介して部品の装着データをホストコンピュータに送信する。なお、部品の装着データは、ホストコンピュータが作成、更新することもできる。
【0036】
図5は、部品の装着データの一例を示す説明図である。部品の装着データは、基板の識別符号毎に作成される。同図では、部品の装着データの一例として、「装着番号」、「部品」、「装着位置」、「部品装着ヘッド」、「吸着ノズル」及び「装着状態」が挙げられている。「装着番号」は、基板に部品を装着する順序を示しており、既述の分担部品装着プログラム作成工程によって決定される。「部品」は、部品名又は部品番号を示しており、「装着位置」は、部品が装着される基板上の座標を示している。例えば、装着番号1の部品PA1の「装着位置X1,Y1」は、基板に規定される直交座標の点(X1,Y1)に部品PA1が装着されることを示している。部品の装着位置は、例えば、CADデータ等から抽出することができる。
【0037】
「部品装着ヘッド」及び「吸着ノズル」は、部品装着ヘッド52及び吸着ノズル56が実際に駆動されて部品が基板に装着されると「NG」が「OK」に変更される。「装着状態」は、「部品装着ヘッド」及び「吸着ノズル」がいずれも「OK」であり、部品カメラ6によって部品が適当であり、部品の装着状態が良好であると判断されると、「未装着」から「装着済」に変更される。このように、各部品実装機21〜28は、部品実装機の動作状況から基板と部品の装着状態とを対応付けて、制御コンピュータ7のメモリに記憶することができる。
【0038】
基板の識別符号は、基板搬送装置3によって搬送される複数の基板の中から特定の基板を識別することができれば、その方法は限定されない。例えば、部品実装機の動作状況などから基板を特定することができる。この場合、各部品実装機21〜28は、基板搬送装置3の駆動信号から搬送途中の各基板の位置を取得することができる。なお、基板にID等の識別符号を付すことによって、基板を識別することもできる。
【0039】
ホストコンピュータは、部品の装着データの装着状態から故障した部品実装機の分担部品のうち基板に未装着の分担部品を知得することができる。例えば、同図に示す装着番号4まで部品の装着が完了したときに、部品実装機が故障した場合を想定する。故障した部品実装機から故障を示す異常信号を受信すると、ホストコンピュータは、故障した部品実装機の部品の装着データを参照する。装着状態が「装着済」の場合、その部品は基板に装着されており、装着状態が「未装着」の場合、その部品は基板に未装着である。つまり、ホストコンピュータは、装着番号1〜4までの部品PA1〜PA2は基板に装着されており、装着番号5〜8の部品PA3〜PA5が基板に未装着であることを認識することができる。本実施形態では、部品実装機の動作状況から基板の識別符号と装着状態とを対応付けて記憶することができるので、装着未完了基板の識別符号と装着未完了状態との対応付けが容易である。
【0040】
(割振り部品装着プログラム作成工程)
ホストコンピュータは、装着未完了基板の識別符号及び装着未完了状態に基づいて割振り部品装着プログラムを作成する。割振り部品装着プログラムは、選択部品実装機に故障した部品実装機の分担部品を割り振って装着させる装着プログラムであり、部品実装機の選択は、部品供給装置が割振り部品を収容する部品収容部を装着可能であり、かつ、部品装着ヘッド52が割振り部品を採取可能である正常な部品実装機を選択部品実装機として選択することができる。以下、部品供給装置の制約条件の一例として、部品収容部の種別及び空きスロットの有無を挙げ、部品装着ヘッド52の制約条件の一例として、部品装着ヘッド52の種別及び吸着ノズル56のノズル径を挙げて説明するが、部品実装機の制約条件は、これらに限定されるものではない。
【0041】
図6は、部品実装機21〜28の構成の一例を示す説明図である。同図は、各部品実装機21〜28に搭載されている「部品収容部」、「部品装着ヘッド」、「吸着ノズルのノズル径」及び「空きスロットの有無」を示している。これらの部品実装機の構成情報は、各部品実装機21〜28からホストコンピュータに通信回線を介して送信することができる。「部品収容部」は、部品収容部の種別を示しており、例えば、既述のカセット式フィーダ41やトレイユニットが挙げられる。同図では、部品収容部の種別をユニット1及びユニット2で示している。なお、「空きスロット」とは、部品収容部が取り付けられていない部品供給装置4のスロットをいう。例えば、カセット式フィーダ41の場合、故障した部品実装機のカセット式フィーダ41を選択部品実装機の空きスロットに装着することができる。部品収容部がトレイユニットの場合も同様である。
【0042】
部品装着ヘッド52は、部品収容部から部品を採取して位置決めされた基板に装着することができる。部品装着ヘッド52は、ヘッド駆動機構51に対して選択的に取り付け可能になっており、部品の大きさ、形状、装着方法などに適合するように部品装着ヘッド52を選択する必要がある。
図7は、部品装着ヘッド52の一例を示す斜視図であり、(a)は高速ヘッド52Hを示し、(b)は中速ヘッド52Mを示し、(c)は汎用ヘッド52Lを示している。なお、部品装着ヘッド52は、3種類に限定されず、高速ヘッド52H及び汎用ヘッド52Lの2種類から選択することもでき、4種類以上の中から選択することもできる。
【0043】
同図(a)に示される高速ヘッド52Hは、装着可能な部品種が少なく装着能率が高い部品装着ヘッドである。高速ヘッド52Hは、ヘッド本体53Hの下側にホルダ保持体54Hを昇降可能かつ回転可能に保持している。ホルダ保持体54Hは、複数個(例えば8個)のノズルホルダ55Hを下向きに有し、各ノズルホルダ55Hは、それぞれ吸着ノズル56Hを下向きに着脱可能に保持している。高速ヘッド52Hのノズルホルダ55H及び吸着ノズル56Hは小形であり、かつ互いに隣接する吸着ノズル56H間の距離の制約もあり、装着できる部品がチップ抵抗やチップコンデンサなどの小形部品に限定される。一方で、1回の装着サイクルにより複数個(例えば最大8個)の部品を装着でき、装着能率が高い。
【0044】
同図(c)に示される汎用ヘッド52Lは、装着可能な部品種が多く装着能率が低い部品装着ヘッドである。汎用ヘッド52Lは、ヘッド本体53Lの下側に1つのノズルホルダ55Lを昇降可能かつ回転可能に保持し、ノズルホルダ55Lは、吸着ノズル56Lを下向きに着脱可能に保持している。汎用ヘッド52Lのノズルホルダ55L及び吸着ノズル56Lは大形であるので、大形の部品や特殊形状の部品を装着できて汎用性に優れ、極端に小さな部品は装着できない。一方で、1部品ごとに1回の装着サイクルが必要となり、装着能率が低い。
【0045】
同図(b)に示される中速ヘッド52Mは、高速ヘッド52Hと汎用ヘッド52Lとの中間的な特性を有する部品装着ヘッドである。中速ヘッド52Mは、ヘッド本体53Mの下側に2個のノズルホルダ55M、57Mを保持している。一方のノズルホルダ55Mは、汎用ヘッド52Lの大形のノズルホルダ55Lと同等であり、大きな吸着ノズル56Mを下向きに着脱可能に保持している。他方のノズルホルダ57Mは、水平方向の軸線まわりに複数個(例えば6個)の吸着ノズル58Mを選択可能に保持している。中速ヘッド52Mは、図示しないノズル選択装置を有しており、ノズル選択装置は、他方のノズルホルダ57Mの複数個の吸着ノズル58Mを軸線まわりに回動させ、下方に配されて下向きとなる吸着ノズル58M1を選択することができる。中速ヘッド52Mの一方のノズルホルダ55M及び吸着ノズル56Mは、大形の部品や特殊形状の部品を装着できて汎用性に優れ、他方のノズルホルダ57Mは、吸着ノズル58Mを選択できるので装着できる部品の種類が多くなる。一方で、2部品ごとに1回の装着サイクルが必要になり、装着能率は中庸である。
【0046】
図6では、吸着ノズル56のノズル径の一例が挙げられているが、これらのノズル径及びノズル径の組み合わせに限定されるものではない。また、
図7では記載が省略されているが、各部品装着ヘッド52H、52M、52Lは、ヘッド本体53H、53M、53Lの内部にノズル駆動部及び空気圧制御部を有している。ノズル駆動部は、吸着ノズル56H、56M、56L、58Mの昇降及び回動を行う部位であり、サーボモータを駆動源としている。空気圧制御部は、部品を吸着する際の負圧の発生及び制御を行う部位であり、エアポンプや弁類などで構成されている。なお、本明細書では、各部品装着ヘッド52H、52M、52Lを区別しない場合は、部品装着ヘッド52を用いる。同様に、吸着ノズル56H、56M、56L、58Mを区別しない場合は、吸着ノズル56を用いる。
【0047】
部品の装着方法の一例として、例えば、部品を基板に装着する際に加圧力制御を行う場合が挙げられる。加圧力制御とは、基板に付与される部品装着ヘッド52の荷重(押し付け圧力)を制御する実装方法をいう。加圧力制御を行う部品装着ヘッド52は、例えば、ノズル本体53とノズルホルダ55との間に図示しないスプリングを有し、ノズル本体53とノズルホルダ55との間の鉛直軸線方向の距離をストローク制御することができる。これにより、基板に付与される部品装着ヘッド52の荷重を任意に制御することができる。
【0048】
次に、選択部品実装機の選択方法の一例を説明する。
図6に示す部品実装機21〜28のうち、例えば、部品実装機21が故障した場合を想定する。同図に示すように、部品実装機21の部品収容部はユニット1であり、部品装着ヘッドは部品装着ヘッド52Mである。また、部品実装機21は、ノズル径がφ2.0とφ3.0の吸着ノズル56を使用する。ホストコンピュータは、部品収容部にユニット1を備える部品実装機を抽出する。この場合は、部品実装機22、24、26が該当する。次に、ホストコンピュータは、部品実装機22、24、26のうち部品装着ヘッドに部品装着ヘッド52Mを備える部品実装機を抽出する。この場合は、部品実装機22、24、26の全てが該当する。そして、ホストコンピュータは、部品実装機22、24、26のうち空きスロットを有する部品実装機を抽出する。この場合は、部品実装機22、26が該当する。次に、ホストコンピュータは、ノズル径がφ2.0とφ3.0の吸着ノズル56を有する部品実装機を抽出する。この場合は、部品実装機26が該当する。以上により、ホストコンピュータは、選択部品実装機として部品実装機26を選択する。
【0049】
吸着ノズル56のノズル径が適合しない場合は、部品収容部及び部品装着ヘッドが共通し、空きスロットを有する部品実装機を選択部品実装機として選択する。例えば、同図において部品実装機26に空きスロットが無い場合を想定する。この場合、ホストコンピュータは、部品収容部にユニット1を有し、部品装着ヘッドに部品装着ヘッド52Mを備え、空きスロットを有する部品実装機22を選択部品実装機として選択する。但し、部品実装機22の吸着ノズル56のノズル径は、φ1.0とφ1.3であるので、ノズル径がφ2.0とφ3.0の吸着ノズル56に交換する必要がある。吸着ノズル56の交換は、ノズル収容装置8で行うことができる。
【0050】
選択部品実装機が複数ある場合は、後段側の部品実装機を選択部品実装機として選択することができる。例えば、同図において、部品実装機24が故障した場合を想定する。部品実装機24の部品収容部はユニット1であり、部品装着ヘッドは部品装着ヘッド52Mである。また、部品実装機24は、ノズル径がφ2.0とφ3.0の吸着ノズル56を使用する。この場合、部品収容部にユニット1を有し、部品装着ヘッドに部品装着ヘッド52Mを備え、空きスロットを有し、ノズル径がφ2.0とφ3.0の吸着ノズル56を備える部品実装機は、部品実装機21、26が該当する。この場合、ホストコンピュータは、後段側の部品実装機26を選択部品実装機として選択することができる。
【0051】
仮に、部品実装機21を選択部品実装機として選択すると、部品実装機21と故障した部品実装機24との間の部品実装機22、23に残された基板は、故障した部品実装機24で装着される予定であった分担部品が装着されないで、部品実装ライン1の最終段の部品実装機28から搬出されることになる。一方、後段側の部品実装機26を選択部品実装機として選択すると、選択部品実装機としての部品実装機26は、部品実装機22、23に残された基板に故障した部品実装機24の分担部品(割振り部品)を装着することができる。なお、部品実装機の制約条件によっては、故障した部品実装機の後段側の部品実装機を選択部品実装機として選択できない場合がある。この場合、装着未完了基板は、部品実装ライン1の最終段の部品実装機28から搬出される。
【0052】
また、選択部品実装機が複数ある場合は、各選択部品実装機の個別サイクルタイムが均等になるように、各選択部品実装機の割振り部品を割り振ることもできる。この場合、割振り部品装着プログラムは、分担部品装着プログラムと同様に公知の最適化プログラムを用いることができる。つまり、割振り部品装着プログラムは、各選択部品実装機の個別サイクルタイムが均等になるように、各選択部品実装機の割振り部品を決定する。これにより、各選択部品実装機の個別サイクルタイムが均等化(平準化)され、割振り部品装着工程における実装時間を短縮することができる。なお、選択部品実装機の個別サイクルタイムの均等化と、後段側の部品実装機を選択部品実装機として選択する方法と、を組み合わせても良い。
【0053】
図8は、割振り部品装着プログラムの演算処理の一例を示すフローチャートである。ホストコンピュータは、まず、割振り部品を装着可能な選択部品実装機に順に割振り部品を振り分ける(ステップS151)。このとき、各選択部品実装機に振り分けられた割振り部品の装着サイクルタイムの和が最小となるように、各選択部品実装機に順に割振り部品を振り分けていく。例えば、選択部品実装機として、部品実装機26〜28が選択され、選択部品実装機26〜28のうち、選択部品実装機26に振り分けられる割振り部品の装着サイクルタイムの和が最も小さいとする。この場合、装着サイクルタイムの和が最も小さい選択部品実装機26に次の割振り部品を振り分ける。このようにして、すべての割振り部品を選択部品実装機26〜28に振り分ける。なお、割振り部品が全く振り分けられていない場合や、装着サイクルタイムが同一である場合には、いずれの選択部品実装機に振り分けても良い。
【0054】
次に、ホストコンピュータは、選択部品実装機26〜28の個別サイクルタイムが均等になるように、選択部品実装機26〜28に振り分けられた割振り部品の交換を行う(ステップS152、S153)。ホストコンピュータは、選択部品実装機26〜28の個別サイクルタイムを算出して、選択部品実装機26〜28の個別サイクルタイムが均等になるように、選択部品実装機26〜28に振り分けられた割振り部品の交換を行う。例えば、個別サイクルタイムが最も大きい選択部品実装機に振り分けられた部品と、個別サイクルタイムが最も小さい選択部品実装機に振り分けられた部品と、を交換する。以上により、選択部品実装機26〜28の個別サイクルタイムを均等化することができる。なお、個別サイクルタイムが均等であるか否かは、選択部品実装機26〜28の個別サイクルタイムの差が所望の範囲にあるか否かによって判断することができる。
【0055】
選択部品実装機26〜28に分配された割振り部品は、装着順序、基板上の装着位置、使用する部品装着ヘッド52、吸着ノズル56などの部品の装着時に必要となる情報と共にプログラム化される。作成された割振り部品装着プログラムは、ホストコンピュータから選択部品実装機26〜28に通信回線を介して送信され、選択部品実装機26〜28は、通信回線を介して割振り部品装着プログラムをダウンロードする。そして、割振り部品装着プログラムは、選択部品実装機26〜28の制御コンピュータ7のメモリに記憶される。
【0056】
本実施形態では、部品供給装置4が割振り部品を収容する部品収容部を装着可能であり部品装着ヘッド52が割振り部品を採取可能である正常な部品実装機を選択部品実装機として選択するので、割振り部品を装着する際の部品実装機の制約条件に合わせて選択部品実装機を選択することができる。
【0057】
(割振り部品装着工程)
まず、部品実装ライン1に残された装着未完了基板を最終段の部品実装機28から搬出しないで、装着未完了基板に割振り部品を装着することができる場合を想定する。この場合、部品実装機の故障により基板が停止した状態から基板の搬送を開始して、割振り部品の装着を行うことができる。選択部品実装機以外の正常な部品実装機では、分担部品装着プログラムを実行して分担部品を基板に装着する。選択部品実装機では、分担部品装着プログラム及び割振り部品装着プログラムを実行して分担部品及び割振り部品を基板に装着する。すべての分担部品及び/又はすべての割振り部品が装着未完了基板に装着されると、装着完了基板として後段側の部品実装機28から搬出される。
【0058】
次に、部品実装ライン1に残された装着未完了基板を最終段の部品実装機28から搬出しなければ、装着未完了基板に割振り部品を装着することができない場合を想定する。この場合、まず、部品実装ライン1に残された装着未完了基板を最終段の部品実装機28から搬出する。そして、部品実装ライン1の前段側の部品実装機21に装着未完了基板を搬入する。装着未完了基板の搬入方法は、特に限定されない。例えば、操作者によって装着未完了基板を部品実装ライン1に搬入しても良く、ベルトコンベア等の搬送装置を用いて、装着未完了基板の搬入を行うこともできる。そして、故障した部品実装機及び選択部品実装機以外の正常な部品実装機では、基板搬送装置3による基板の搬送のみを行い、選択部品実装機では、割振り部品装着プログラムを実行して割振り部品の装着を行う。すべての割振り部品が装着未完了基板に装着されると、装着完了基板として後段側の部品実装機28から搬出される。
【0059】
本実施形態では、装着未完了状態記憶工程及び割振り部品装着プログラム作成工程を有するので、装着未完了基板の識別符号及び装着未完了状態に基づいて、故障した部品実装機が分担する装着未完了基板の未装着部品を正常な部品実装機に割り振ることができる。そして、本実施形態では、割振り部品装着工程を有するので、選択された正常な部品実装機で装着未完了基板に割振り部品を装着することができる。そのため、故障した部品実装機の回復を待たずに装着未完了基板に未装着部品を装着することができる。
【0060】
(臨時生産工程)
臨時生産工程は、少なくとも1つの部品実装機が故障しているときに、生産を継続する工程であり、部品が1つも装着されていない基板に対して部品を装着する工程である。本工程では、部品が1つも装着されていない基板を部品実装ライン1に搬入して、選択部品実装機及び選択部品実装機以外の正常な部品実装機によって部品を装着する。選択部品実装機では、分担部品装着プログラム及び割振り部品装着プログラムを実行して分担部品及び割振り部品を基板に装着する。選択部品実装機以外の正常な部品実装機では、分担部品装着プログラムを実行して分担部品を基板に装着する。故障した部品実装機では、基板搬送装置3による基板の搬送のみを行う。なお、本工程の割振り部品装着プログラムは、故障した部品実装機の分担部品をすべて選択部品実装機に割り振る点が割振り部品装着プログラム作成工程の割振り部品装着プログラムと異なる。
【0061】
本実施形態では、臨時生産工程を有するので、部品実装機が故障しているときに、部品が1つも装着されていない基板に部品を装着することができる。そのため、故障した部品実装機の回復を待たずに生産を継続することができ、生産効率を向上させることができる。
【0062】
(1−3)プログラムの管理
選択部品実装機の制御コンピュータ7のメモリでは、分担部品装着プログラムと割振り部品装着プログラムとが分離して記憶されていると好適である。故障した部品実装機が、例えば修理されて正常な部品実装機として回復した場合には、割振り部品装着プログラムは不要になる。そのため、故障した部品実装機が回復したときに、割振り部品装着プログラムをメモリから削除する。このとき、分担部品装着プログラムと割振り部品装着プログラムとがメモリ上で混在していると、割振り部品装着プログラムのみをメモリから削除することが容易ではなく、分担部品装着プログラムを誤って変更、削除してしまう可能性がある。
【0063】
そこで、選択部品実装機の制御コンピュータ7のメモリにおいて、分担部品装着プログラムと割振り部品装着プログラムとを分離して記憶することにより、割振り部品装着プログラムのみをメモリから削除することが容易になり、分担部品装着プログラムを誤って変更、削除してしまうことを防止できる。
【0064】
(2)第2実施形態
本実施形態は、第1実施形態と比べて、分担部品装着プログラム作成工程が異なる。つまり、各部品実装機21〜28の分担部品の振り分け方法が異なる。
【0065】
図9は、分担部品装着プログラムの演算処理の一例を示すフローチャートである。ホストコンピュータは、部品実装動作に先立ち、複数の基板種のそれぞれの生産枚数の基板に部品を装着する期間を通して部品装着ヘッド52を取り替えない条件下で装着に要すると推定される所要時間Tを短縮するように各部品実装機21〜28の部品移載装置5の部品装着ヘッド52の種類を決定する。さらに、ホストコンピュータは、決定した部品装着ヘッド52の組み合わせの条件下で、各部品実装機21〜28の部品供給装置4の複数のカセット式フィーダ41(部品収容部)に収容する部品種の配分を決定する。
【0066】
図10は、分担部品装着プログラムの演算処理の前提条件及び演算処理過程の一例を示す説明図である。まず、分担部品装着プログラムの演算処理の前提条件を説明する。同図の一覧表で、1行目の「基板種情報」の欄は、部品装着ヘッド52を取り替えずに連続的に生産する複数の基板種を示し、一例として4種類の基板種A〜Dを示している。2行目の「部品種情報」の欄は、それぞれの基板種A〜Dに装着される全部品の部品種PA〜PD(=ΣPAk〜ΣPDk)の情報を示している。具体的には、部品種PAの情報は、基板種Aの基板に部品種PA1、PA2、PA3……がそれぞれ何個ずつ装着されるかを示す情報と、部品種PA1、PA2、PA3……を装着可能な部品装着ヘッド52の種類の情報とを含んでいる。また、3行目の「生産枚数N」の欄は、基板種A〜Dの基板のそれぞれの予定の生産枚数NA〜NDを示している。4行目の「優先度係数K」の欄は、基板種A〜Dに設定されたそれぞれの優先度係数KA〜KDを示している。生産枚数N及び優先度係数Kは、後述するように特定の所要時間TN、TKを演算する際に使用する。
【0067】
ホストコンピュータは、
図9のステップS201で、まず前提条件を把握する。前提条件としては、上述した基板種情報、部品種情報、生産枚数N及び優先度係数Kの他に、各部品装着ヘッド52H、52M、52Lの種類に応じた装着サイクルタイムや所要時間Tの選択決定などを含む。これらの前提条件は、予めホストコンピュータ内のメモリに格納されるか、あるいは部品実装動作に先立って入力設定される。
【0068】
所要時間Tは、最終的に各部品実装機21〜28の部品装着ヘッド52の種類の組み合わせを決定する際に採用する評価パラメータであり、生産計画などを考慮して次に列記する3つから択一して決定する。
(i)所要時間TS:全基板種の基板種サイクルタイムの和
(ii)所要時間TN:各基板種の基板種サイクルタイムと生産枚数Nとの積を全基板種について加算した和
(iii)所要時間TK:各基板種の基板種サイクルタイムと優先度係数Kとの積を全基板種について加算した和
【0069】
(i)の所要時間TSは、各基板種A〜Dの基板をそれぞれ1枚生産するのに要する時間を意味する。所要時間TSは、各生産枚数NA〜NDが概ね等しい場合、例えば、各基板種A〜Dの基板が組み合わせられて1つの最終製品とされる場合などに好ましい評価パラメータである。また、所要時間TSは、各生産枚数NA〜NDが未定あるいは不定の場合にも選択することができる。(ii)の所要時間TNは、各基板種A〜Dをそれぞれの生産枚数NA〜NDだけ生産するのに要する全数生産時間、厳密には段取り替え時間を除いた全数生産時間に相当する。所要時間TNは、各生産枚数NA〜NDが大きく異なっている場合に好ましい評価パラメータである。(iii)の所要時間TKは、各基板種A〜Dの優先度を考慮した生産効率の尺度を意味する。所要時間TKは、特定の基板種の優先度が高いとき、例えば、特定の基板種の納期が差し迫り急いで生産する必要がある場合などに好ましい評価パラメータである。
【0070】
次にステップS202で、全ての部品実装機21〜28の部品移載装置5の部品装着ヘッド52の種類を汎用ヘッド52Lに仮置きする。次にステップS203で、各基板種A〜Dにおける各部品実装機21〜28への部品種PA〜PDの配分を最適化する。配分の最適化とは、或る基板種の1枚の基板に部品を装着するのに要する各部品実装機21〜28の個別サイクルタイムをできるだけ均等化することを意味する。最適化により、
図10の5行目から12行目に示される個別サイクルタイムtjiが演算される。なお、個別サイクルタイムtjiの符号の添字jは部品実装機21〜28の区別を示し、添字iは基板種A〜Dの区別を示している。
【0071】
例えば、基板種Aにおける各部品実装機21〜28への部品種PAの配分を最適化した結果、個別サイクルタイムt1A〜t8Aが得られる。同様に、基板種B〜Dにおいて、個別サイクルタイムt1B〜t8B、個別サイクルタイムt1C〜t8C及び個別サイクルタイムt1D〜t8Dが得られる。ここで、個別サイクルタイムt1A〜t8Dは、概ね各部品実装機21〜28における装着サイクル数と装着サイクルタイムとの積で求められる。したがって、ホストコンピュータは、各部品実装機21〜28の部品装着ヘッド52の種類を考慮して装着可能な部品種を配分するだけでなく、各部品実装機21〜28にできるだけ均等に部品種PA〜PD及びその部品点数を配分する。ただし、部品装着ヘッド52の種類の組み合わせに依存して最適化の演算処理は複雑化するので、ホストコンピュータは、必要に応じて最適化する。
【0072】
次にステップS204で、各基板種A〜Dの基板種サイクルタイムtA〜tDを求める。例えば、
図10の13行目の基板種Aの基板種サイクルタイムtAは、各部品実装機21〜28の個別サイクルタイムt1A〜t8A(5〜12行目)のうちの最大値で求められる。
【0073】
次にステップS205で、下記数1〜数3のいずれかを用いて、3つの所要時間TS、TN、TKのいずれかを演算する。但し、数1〜数3のiは、A〜Dを示している。
(数1)
TS=Σti
(数2)
TN=Σ(Ni×ti)
(数3)
TK=Σ(Ki×ti)
【0074】
以上により、
図10の最下行までの演算処理が行われて、所要時間T(TS、TN又はTK)が求められる。所要時間Tは、部品装着ヘッド52の組み合わせ1種類について得られるものである。
【0075】
次にステップS206で、所要時間Tが短縮されたか否か判定して、短縮されたときにステップS207に進み、そうでないときにS208に進む。なお、全てが汎用ヘッド52Lである初回のステップS206では、所要時間Tの初期値が求められるので、無条件でステップS207に進む。ステップS207では、短縮された所要時間Tを得ることができた部品装着ヘッド52の組み合わせ(ステップS209で設定される)及び部品種の配分(ステップS203で設定される)を更新保持する。
【0076】
ステップS207の後ステップS208に合流し、前段側の部品実装機から順番に、汎用ヘッド52Lを高速ヘッド52H又は中速ヘッド52Mに取り替え可能か否かを判定する。つまり、未だ汎用ヘッド52Lが残されているか否か及び取り替えを実施したときに全基板種A〜Dの基板に所定の全部品種PA〜PDの部品を装着できる見込みがあるか否かを調査する。取り替え可能のときステップS209に進んで、部品装着ヘッド52を取り替える。例えば、初回のステップS209では、最前段の部品実装機21の汎用ヘッド52Lを高速ヘッド52Hに取り替える。この後ステップS203に戻る。なお、部品装着ヘッド52の種類によって使用できる数量が限定されている場合には、限定範囲内での取り替えを実施する。
【0077】
2度目以降のステップS203〜S206では、設定された新しい部品装着ヘッド52の組み合わせに対してそれぞれ、
図10の5行目以下の演算処理過程を実施して所要時間Tを求め、短縮されたか否かを判定する。そして、所要時間Tが短縮されたときには好ましい演算結果であるので、ステップS207で部品装着ヘッド52の組み合わせ及び部品種の配分を更新保持し、ステップS208に進む。また、所要時間Tが短縮されなかったときには好ましい演算結果ではないので、更新保持を行わずにステップS208に進む。
【0078】
2度目以降のステップS208では、部品装着ヘッド52が取り替え可能か否かを判定して、取り替えが可能である間、ステップS209からステップS203に戻る演算処理を繰り返す。そして、汎用ヘッド52Lがなくなった時点又は全基板種A〜Dの基板に所定の全部品種PA〜PDの部品を装着できる見込みがなくなった時点で部品装着ヘッド52の取り替えを打ち切り、ステップS210に進む。ステップS210では、保持している部品装着ヘッド52の組み合わせ及び部品種の配分を採用して、演算処理フローを終了する。採用した演算処理結果は、最終的に所要時間Tが最も短縮された好ましいものである。
【0079】
この後、ホストコンピュータは、採用した部品種の配分を基にして、基板種A〜Dごとに各部品実装機21〜28の個別サイクルタイムt1A〜t8Dを最小化する最適な部品種の配列順序を決定する。つまり、各部品実装機21〜28の部品供給装置4のカセット式フィーダ41の配列順序を決定する。例えば、ホストコンピュータは、或る部品実装機の部品供給装置4において使用頻度の高い部品種を中央寄りに配し、使用頻度の低い部品種を端寄りに配するように配列順序を決定する。これにより、部品装着ヘッド52の総移動距離を短縮して個別サイクルタイムt1A〜t8Dを最小化することができる。なお、カセット式フィーダ41の配列順序を決定する演算処理は、各部品実装機21〜28の制御コンピュータ7で実行するように機能分担してもよい。以上のことは、トレイユニットについても同様である。
【0080】
次に、部品実装ライン1の動作について例示説明する。
図11は、部品装着ヘッド52の組み合わせが決定される過程の一例を示す説明図である。同図の「ケースNo.」の欄は
図9の演算処理フロー中のステップS203〜S208までの繰り返し回数を示し、「各部品実装機の部品装着ヘッドの種類」の欄は、ステップS202及びS209で設定された部品装着ヘッド52の組み合わせを示している。また、「装着可否判定」の欄は全基板種A〜Dの基板に所定の全部品種PA〜PDの部品を装着できる(図中の○印)か否(図中の×印)かの判定結果を示し、「所要時間T」の欄は装着できるときに求めた値である。
【0081】
図11のケースC1で、全ての部品実装機21〜28を汎用ヘッド52Lに仮置きすると、全基板種A〜Dの基板に所定の全部品種PA〜PDの部品を装着でき(装着可能であり)、
図10の5行目以下の演算処理過程が実施されて所要時間T=T1が求められる。次のケースC2で、最前段の部品実装機21の汎用ヘッド52Lを高速ヘッド52Hに取り替えると、装着可能であり、所要時間T=T2が求められる。次のケースC3〜C5で、2段目から4段目までの部品実装機22〜24の汎用ヘッド52Lを順番に高速ヘッド52Hに取り替えると、それぞれ装着可能であり、所要時間T=T3、T4、T5が求められる。
【0082】
次のケースC6で、5段目の部品実装機25の汎用ヘッド52Lを高速ヘッド52Hに取り替えると、全基板種A〜Dの基板に所定の全部品種の部品を装着できなくなる。この状況は、例えば、全部品種PA〜PDのうちの大形部品の数量に対して、これを装着できない高速ヘッド52Hの数量が増加し過ぎたことによる。換言すれば、全部品種PA〜PDのうちの大形部品の数量に対して、これを装着できる中速ヘッド52M及び汎用ヘッド52Lが不足することによる。そこで、次のケースC7では、5段目の部品実装機25の高速ヘッド52Hを中速ヘッド52Mに取り替えると、装着可能となり、所要時間T=T7が求められる。
【0083】
さらに、次のケースC8で、6段目の部品実装機26の汎用ヘッド52Lを高速ヘッド52Hに取り替えても装着できなくなるのは明らかであるので、汎用ヘッド52Lを中速ヘッド52Mに取り替えると、装着可能であり、所要時間T=T8が求められる。次のケースC9で、7段目の部品実装機27の汎用ヘッド52Lを中速ヘッド52Mに取り替えると、装着できなくなる。ここで、全基板種A〜Dの基板に所定の全部品種PA〜PDの部品を装着できる見込みがなくなるので、部品装着ヘッド52の取り替えを打ち切る。そして、これまでに得られた所要時間T=(T1〜T5、T7、T8)のうちの最小値が自動的に更新保持されており、当該の部品装着ヘッド52の種類の組み合わせを採用することができる。
【0084】
本実施形態の分担部品装着プログラム作成工程では、部品実装動作に先立ち、複数の基板種A〜Dに対して部品装着ヘッド52を取り替えない条件下で装着に要すると推定される所要時間Tを短縮するように各部品実装機21〜28の部品装着ヘッド52の種類を決定し、かつ各部品実装機21〜28の部品種の配分を決定する。したがって、複数の基板種A〜Dを生産する期間を通して操作者が部品装着ヘッド52を交換する取り替え作業が不要となり、所要時間Tを短縮できるので、生産効率が向上する。
【0085】
また、或る基板種Aについて各部品実装機21〜28の個別サイクルタイムt1A〜t8Aをできるだけ均等化して、その最大値を基板種サイクルタイムtAとするので、部品実装ライン1内でボトルネックが生じなくなり、基板種サイクルタイムtAが短縮される。また、生産計画などを考慮して、各基板種A〜Dの基板をそれぞれ1枚生産するのに要する所要時間TS、各基板種A〜Dをそれぞれの生産枚数NA〜NDだけ生産するのに要する全数生産時間に相当する所要時間TN、及び各基板種A〜Dの優先度KA〜KDを考慮した生産効率の尺度を意味する所要時間TKを適宜択一できる。そして、この所要時間T(TS、TN又はTK)を短縮するように部品装着ヘッド52の組み合わせを決定でき、生産効率が向上する。
【0086】
さらに、全ての部品実装機21〜28を汎用ヘッド52Lに仮置きし、次いで汎用ヘッド52Lを高速ヘッド52H及び中速ヘッド52Mへと順次取り替えてそれぞれ所要時間Tを計算するので、部品装着ヘッド52の組み合わせの全部で所要時間Tを計算する手間を省略できる。例えば、本実施形態の装置構成で部品装着ヘッド52の全組み合わせ数は3種類の8乗で6561通りあり、
図11の例では9通りの組み合わせで所要時間Tを計算することができる。
【0087】
また、前段側に高速ヘッド52H、後段側に汎用ヘッド52Lが優先的に配されるので、部品種の装着順序が自動的に最適化される。すなわち、まず、前段側の高速ヘッド52Hでチップ抵抗やチップコンデンサなどの小形部品が装着され、その後に後段側の汎用ヘッド52LでIC素子やLSI素子などの大形部品が装着されるので、装着済みの小形部品は大形部品を装着するときの邪魔にならない。仮に、前段側に汎用ヘッド52Lが配されて大形部品が先に装着されると、後段側の高速ヘッド52Hで小形部品を装着する際に装着済みの大形部品が邪魔になることがある。さらに、ホストコンピュータは、基板種A〜Dごとに各部品実装機21〜28の個別サイクルタイムt1A〜t8Dを最小化する最適な部品種の配列順序を決定するので、基板種サイクルタイムtA〜tD及び所要時間Tも最小化されて、生産効率が格段に向上する。
【0088】
(3)その他
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施することができる。