特許第5885544号(P5885544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5885544圧電トランスの駆動回路、電源装置および圧電トランスの駆動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5885544
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】圧電トランスの駆動回路、電源装置および圧電トランスの駆動方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/5387 20070101AFI20160301BHJP
【FI】
   H02M7/5387 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-49346(P2012-49346)
(22)【出願日】2012年3月6日
(65)【公開番号】特開2013-187948(P2013-187948A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 浩一
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−164163(JP,A)
【文献】 特開2007−43844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42− 7/98
H02M 3/00− 3/44
H01L41/00−41/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流矩形波電圧を生成する共に当該交流矩形波電圧を圧電トランスの1次側電極間に印加することにより、当該圧電トランスの2次側電極に交流出力電圧を生成させる圧電トランスの駆動回路であって、
前記交流矩形波電圧の電圧波形を構成する負側矩形波を、当該負側矩形波の前後に出力される一対の正側矩形波のうちのいずれか一方の正側矩形波との間に短絡防止期間で主として構成されるオフ期間を介在させ、かつ当該一方の正側矩形波側に偏在させた状態で当該交流矩形波電圧を生成する圧電トランスの駆動回路。
【請求項2】
前記オフ期間は、前記短絡防止期間のみで構成されている請求項1記載の圧電トランスの駆動回路。
【請求項3】
請求項1または2記載の圧電トランスの駆動回路と、前記圧電トランスとを備え、当該圧電トランスによって生成された前記交流出力電圧に基づいて負荷用の出力電圧を生成して出力する電源装置。
【請求項4】
圧電トランスの1次側電極間に交流矩形波電圧を印加して、当該圧電トランスの2次側電極に交流出力電圧を生成させる圧電トランスの駆動方法であって、
前記交流矩形波電圧の電圧波形を構成する負側矩形波を、当該負側矩形波の前後に出力される一対の正側矩形波のうちのいずれか一方の正側矩形波との間に短絡防止期間で主として構成されるオフ期間を介在させ、かつ当該一方の正側矩形波側に偏在させた状態で当該交流矩形波電圧を生成する圧電トランスの駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電トランスを駆動して交流出力電圧を生成させる圧電トランスの駆動回路、この駆動回路を備えた電源装置、および圧電トランスの駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の圧電トランスの駆動回路および駆動方法として、下記の特許文献1に開示された圧電トランスの駆動回路および駆動方法が知られている。この圧電トランスの駆動回路51は、一例として、図1に示すように、パルス生成部52およびフルブリッジ回路部3を備えている。
【0003】
この場合、フルブリッジ回路部3は、一対のコンプリメンタリ型プッシュプル回路(以下、「プッシュプル回路」ともいう)11,12を備え、プッシュプル回路11,12間に交流矩形波電圧V1を生成する。具体的には、プッシュプル回路11は、トランジスタ等のスイッチ素子13,14で構成されて、スイッチ素子13が電源電圧Vcc側に配置された状態で、電源電圧Vccとグランド電位との間に接続されている。また、プッシュプル回路12は、トランジスタ等のスイッチ素子15,16で構成されて、スイッチ素子15が電源電圧Vcc側に配置された状態で、電源電圧Vccとグランド電位との間に接続されている。
【0004】
パルス生成部52は、図6に示すタイミングで駆動パルスS1,S2を生成すると共に、図1に示すように、駆動パルスS1をスイッチ素子14,15に出力し、駆動パルスS2をスイッチ素子13,16に出力することにより、スイッチ素子14,15の組と、スイッチ素子13,16の組とを交互にオン状態に移行させる。
【0005】
また、駆動回路51は、プッシュプル回路11が、圧電トランス4における圧電振動体21の一方の端部側に形成された一対の1次側電極22,23のうちの一方の1次側電極22に接続され、プッシュプル回路12が、他方の1次側電極23に接続されている。
【0006】
以上の構成により、駆動回路51では、フルブリッジ回路部3の各スイッチ素子13,14,15,16がパルス生成部52から出力される上記の駆動パルスS1,S2によって図6に示すタイミングでオン・オフを繰り返すことにより、同図に示すように、正側の波高値がVccとなり、負側の波高値が−Vccとなる交流矩形波電圧V1を生成して、圧電トランス4の一対の1次側電極22,23間に出力する。これにより、圧電トランス4では、圧電振動体21が、他方の端部に形成された2次側電極24に交流出力電圧V2を生成して、この2次側電極24とグランド電位との間に接続されている負荷5に出力する。
【0007】
なお、フルブリッジ回路部3では、プッシュプル回路11を構成するスイッチ素子13,14が同時にオン状態に移行しないようにし(電源電圧Vccがグランド電位に短絡しないようにし)、かつプッシュプル回路12を構成するスイッチ素子15,16が同時にオン状態に移行しないようにする必要がある。このため、パルス生成部52は、駆動パルスS1の出力の停止から駆動パルスS2の出力の開始までの間と、駆動パルスS2の出力の停止から駆動パルスS1の出力の開始までの間とに、同じ長さのデッドタイム(短絡防止期間)Tdがそれぞれ設けられている状態で駆動パルスS1,S2を出力するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−86758号公報(第5−6頁、第12−13図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、使用する圧電トランス4の種類、フルブリッジ回路部3に使用する電源電圧Vcc、並びに駆動パルスS1,S2の周期およびデューティ比を変えないという条件の下で、圧電トランス4から出力される交流出力電圧V2の電圧値を高めることができれば、圧電トランス4の適用範囲をより拡げることができるので、好ましい。
【0010】
本願発明者は、上記の条件下で、駆動パルスS1の出力の停止から駆動パルスS2の出力の開始までの間のオフ期間と、駆動パルスS2の出力の停止から駆動パルスS1の出力の開始までの間のオフ期間のそれぞれの長さのバランスを、フルブリッジ回路部3において上記した短絡が発生しない範囲内で変更する(一方のオフ期間を長くしつつ、他方のオフ期間を短くする)実験を実施したところ、両方のオフ期間の長さを揃えた(同一にした)ときよりも、両方のオフ期間の長さを違えたときの方が、交流出力電圧V2が高くなるという現象を発見した。
【0011】
本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、圧電トランスから出力される交流出力電圧の電圧値を高め得る圧電トランスの駆動回路、この圧電トランスと駆動回路とを備えた電源装置、および圧電トランスの駆動方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成すべく請求項1記載の圧電トランスの駆動回路は、交流矩形波電圧を生成する共に当該交流矩形波電圧を圧電トランスの1次側電極間に印加することにより、当該圧電トランスの2次側電極に交流出力電圧を生成させる圧電トランスの駆動回路であって、前記交流矩形波電圧の電圧波形を構成する負側矩形波を、当該負側矩形波の前後に出力される一対の正側矩形波のうちのいずれか一方の正側矩形波との間に短絡防止期間で主として構成されるオフ期間を介在させ、かつ当該一方の正側矩形波側に偏在させた状態で当該交流矩形波電圧を生成する。
【0013】
また、請求項2記載の圧電トランスの駆動回路は、請求項1記載の圧電トランスの駆動回路において、前記オフ期間は、前記短絡防止期間のみで構成されている。
【0014】
また、請求項3記載の電源装置は、請求項1または2記載の圧電トランスの駆動回路と、前記圧電トランスとを備え、当該圧電トランスによって生成された前記交流出力電圧に基づいて負荷用の出力電圧を生成して出力する。
【0015】
また、請求項4記載の圧電トランスの駆動方法は、圧電トランスの1次側電極間に交流矩形波電圧を印加して、当該圧電トランスの2次側電極に交流出力電圧を生成させる圧電トランスの駆動方法であって、前記交流矩形波電圧の電圧波形を構成する負側矩形波を、当該負側矩形波の前後に出力される一対の正側矩形波のうちのいずれか一方の正側矩形波との間に短絡防止期間で主として構成されるオフ期間を介在させ、かつ当該一方の正側矩形波側に偏在させた状態で当該交流矩形波電圧を生成する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の圧電トランスの駆動回路、請求項3記載の電源装置、および請求項4記載の圧電トランスの駆動方法では、交流矩形波電圧の電圧波形を構成する負側矩形波を、この負側矩形波の前後に出力される一対の正側矩形波のうちのいずれか一方の正側矩形波との間に短絡防止期間で主として構成されるオフ期間を介在させ、かつこの一方の正側矩形波側に偏在させた状態で交流矩形波電圧を生成して、圧電トランスの一対の1次側電極間に出力する。
【0017】
したがって、この圧電トランスの駆動回路、電源装置および圧電トランスの駆動方法によれば、圧電トランスの種類およびフルブリッジ回路部に使用する電源電圧を一定とし、かつ交流矩形波電圧を構成する正側矩形波および負側矩形波の周期およびデューティ比(各矩形波のパルス幅)を一定とするという条件の下で、電圧値が高められた交流出力電圧を圧電トランスから出力させることができる。
【0018】
請求項2記載の圧電トランスの駆動回路によれば、オフ期間を短絡防止期間のみで構成するようにしたことにより、電圧値が最も高められた交流出力電圧を圧電トランスから出力させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】圧電トランス4の駆動回路1(51)を備えた電源装置PSの構成を示す構成図である。
図2】駆動回路1の動作および圧電トランス4の駆動方法を説明するためのタイミングチャートである。
図3】圧電トランス4の駆動方法についての実験内容を説明するためのタイミングチャートである。
図4】交流矩形波電圧V1のT2/T1を0.3に維持しつつ、T3/T1を変化させたときの圧電トランス4で生成した交流出力電圧V2の電圧値の変化の様子を示す圧電トランス4の出力特性図である。
図5】交流矩形波電圧V1のT2/T1を0.1に維持しつつ、T3/T1を変化させたときの圧電トランス4で生成した交流出力電圧V2の電圧値の変化の様子を示す圧電トランス4の出力特性図である。
図6】従来の圧電トランス4の駆動方法を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、圧電トランスの駆動回路、電源装置および圧電トランスの駆動方法についての実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0021】
最初に、圧電トランスの駆動回路1およびこの駆動回路1を備えた電源装置PSの構成について、図面を参照して説明する。
【0022】
電源装置PSは、図1に示すように、駆動回路1および圧電トランス4を備えて、交流出力電圧V2を生成すると共に、生成した交流出力電圧V2に基づいて負荷5用の出力電圧を生成して、負荷5に出力可能に構成されている。なお、本例では、一例として、圧電トランス4で生成した交流出力電圧V2をそのまま負荷5用の出力電圧として、負荷5に出力する。
【0023】
駆動回路1は、図1に示すように、パルス生成部2およびフルブリッジ回路部3を備えている。パルス生成部2は、フルブリッジ回路部3を構成する後述の各スイッチ素子14,15を駆動するための駆動パルスS1と、後述の各スイッチ素子13,16を駆動するための駆動パルスS2とを生成して出力する。
【0024】
具体的には、パルス生成部2は、図2に示すように、駆動パルスS2の前後に出力される一対の駆動パルスS1のうちのいずれか一方の駆動パルスS1(本例では、後の駆動パルスS1)とこの駆動パルスS2との間に短絡防止期間(デッドタイム)Tdで主として構成されるオフ期間(各駆動パルスS1,S2がいずれも出力されない期間)Toff1を介在させ、かつこの駆動パルスS2をこの後の駆動パルスS1側に偏在させた状態で、各駆動パルスS1,S2を生成する。言い換えれば、パルス生成部2は、駆動パルスS1における始端および終端のうちのいずれか一方の端部(同図では一例として始端(左端))と、駆動パルスS2における始端および終端のうちの駆動パルスS1における上記の一方の端部(始端)と異なる種類の一方の端部(終端(同図での右端))とが上記のオフ期間Toff1を挟んで連続して出現する状態を維持しつつ、この駆動パルスS2の前後に出力される一対の駆動パルスS1間において、この駆動パルスS2を本例では後の駆動パルスS1側に偏在させた状態で各駆動パルスS1,S2を生成する。
【0025】
この場合、この短絡防止期間Tdは、フルブリッジ回路部3を構成する後述のプッシュプル回路11を構成するスイッチ素子13,14が同時にオン状態に移行せず(電源電圧Vccがプッシュプル回路11を介してグランド電位に短絡せず)、かつ後述のプッシュプル回路12を構成するスイッチ素子15,16が同時にオン状態に移行しない(電源電圧Vccがプッシュプル回路12を介してグランド電位に短絡しない)最小限の長さ(時間間隔)に規定されている。また、オフ期間Toff1は、短絡防止期間Tdとほぼ等しい長さ(具体的には、オフ期間Toff1に占める短絡防止期間Tdの割合が80%以上、好ましくは90%以上となる長さ)に規定されることにより、短絡防止期間Tdで主として構成されている。
【0026】
また、駆動パルスS2の前後に出力される一対の駆動パルスS1のうちの他方の駆動パルスS1(本例では、前の駆動パルスS1)とこの駆動パルスS2との間にも、他のオフ期間Toff2が介在しているが、上記のようにして駆動パルスS2を後の駆動パルスS1側に偏在させたことにより、この他のオフ期間Toff2は、上記のオフ期間Toff1よりも、常に長い状態に維持されている。
【0027】
この構成により、パルス生成部2は、駆動パルスS1のデューティ比を設定するときには、駆動パルスS1における上記した一方の端部(図2中の始端)を基準として、パルス幅T2(一方の端部から他方の端部(図2中の終端(右端))までの時間)を矢印Aで示すように変更する。また、パルス生成部2は、駆動パルスS2のデューティ比を設定するときには、駆動パルスS2における上記した一方の端部(図2中の終端)を基準として、パルス幅T2(一方の端部から他方の端部(図2中の始端(左端))までの時間)を矢印Aで示すように変更する。つまり、他のオフ期間Toff2の長さを変更する。
【0028】
フルブリッジ回路部3は、一対のコンプリメンタリ型プッシュプル回路(以下、「プッシュプル回路」ともいう)11,12を備え、プッシュプル回路11,12間に交流矩形波電圧V1を生成する。具体的には、プッシュプル回路11は、スイッチ素子(例えば電界効果型トランジスタ)13,14で構成されて、スイッチ素子13が電源電圧Vcc側に配置され、スイッチ素子14がグランド電位側に配置された状態で、電源電圧Vccとグランド電位との間に接続されている。また、プッシュプル回路12は、スイッチ素子(例えば電界効果型トランジスタ)15,16で構成されて、スイッチ素子15が電源電圧Vcc側に配置され、スイッチ素子16がグランド電位側に配置された状態で、電源電圧Vccとグランド電位との間に接続されている。
【0029】
また、各プッシュプル回路11,12のスイッチ素子13〜16のうちの、スイッチ素子14,15は、パルス生成部2から出力される駆動パルスS1によって駆動されて、駆動パルスS1が入力されている期間においてオン状態に移行し、それ以外の期間はオフ状態に移行する。また、スイッチ素子13,16は、駆動パルスS2によって駆動されて、駆動パルスS2が入力されている期間においてオン状態に移行し、それ以外の期間はオフ状態に移行する。
【0030】
また、フルブリッジ回路部3では、プッシュプル回路11における各スイッチ素子13,14の接続点Aと、プッシュプル回路12における各スイッチ素子15,16の接続点Bとが、それぞれ交流矩形波電圧V1の出力端子として機能して、圧電トランス4の後述する1次側電極22,23に接続されている。
【0031】
圧電トランス4は、圧電振動体21、圧電振動体21の一方の端部側に圧電振動体21の厚み方向に離間して形成された一対の1次側電極22,23、圧電振動体21の他方の端部側に形成された2次側電極24を備えて構成されている。このように構成された圧電トランス4は、交流矩形波電圧V1が1次側電極22,23間に入力されている状態において、機械的振動が圧電振動体21における1次側電極22,23の形成部位側に励起されて、圧電振動体21における2次側電極24の形成部位側においてこの機械的振動を電圧に変換して交流出力電圧V2を生成する。なお、この生成された交流出力電圧V2は、2次側電極24に接続されている出力端子C(電源装置PSにおける出力端子)から電源装置PSの外部に出力される。
【0032】
次に、電源装置PSおよび駆動回路1の動作と共に、駆動回路1による圧電トランス4の駆動方法について、図面を参照して説明する。
【0033】
この電源装置PSでは、パルス生成部2が、図2に示すように、駆動パルスS2の前後に出力される一対の駆動パルスS1のうちの後の駆動パルスS1とこの駆動パルスS2との間にオフ期間Toff1を介在させ、かつ駆動パルスS2をこの後の駆動パルスS1側に偏在させた状態で、各駆動パルスS1,S2を生成してフルブリッジ回路部3に出力する。
【0034】
フルブリッジ回路部3では、駆動パルスS1に従い、プッシュプル回路11のスイッチ素子14とプッシュプル回路12のスイッチ素子15とが同期してオン状態およびオフ状態を交互に繰り返し、駆動パルスS2に従い、プッシュプル回路11のスイッチ素子13とプッシュプル回路12のスイッチ素子16とが同期してオン状態およびオフ状態を交互に繰り返す。
【0035】
これにより、図2に示すように、駆動パルスS1の入力時には、接続点Aがオン状態のスイッチ素子14を介してグランド電位に接続されると共に、接続点Bがオン状態のスイッチ素子15を介して電源電圧Vccに接続され、駆動パルスS2の入力時には、接続点Aがオン状態のスイッチ素子13を介して電源電圧Vccに接続されると共に、接続点Bがオン状態のスイッチ素子16を介してグランド電位に接続される。このため、フルブリッジ回路部3は、その一対の出力端子としての各接続点A,B間に、図2に示すような正側の波高値がVccとなり、負側の波高値が−Vccとなる交流矩形波電圧V1を生成して、この交流矩形波電圧V1を圧電トランス4の1次側電極22,23間に印加(出力)する。
【0036】
圧電トランス4は、1次側電極22,23間への交流矩形波電圧V1の印加により、2次側電極24に交流出力電圧V2を生成すると共に、生成した交流出力電圧V2を出力端子Cを介して負荷5に出力する。
【0037】
この駆動回路1では、上記したように、各駆動パルスS1,S2において、駆動パルスS2の前後に出力される一対の駆動パルスS1のうちの後の駆動パルスS1とこの駆動パルスS2との間に短絡防止期間Tdで主として構成されるオフ期間Toff1が介在し、かつこの駆動パルスS2が後の駆動パルスS1側に偏在する状態が維持されている。また、駆動パルスS1,S2のデューティ比の設定に際しては、この状態が維持されたままで、各駆動パルスS1,S2のパルス幅T2が矢印Aで示されるように変更される。
【0038】
このため、フルブリッジ回路部3で生成する交流矩形波電圧V1においても、図2に示すように、交流矩形波電圧V1の電圧波形を構成する負側矩形波Vmの前後に出力されるこの電圧波形を構成する一対の正側矩形波Vpのうちのいずれか一方の正側矩形波Vp(本例では、後の正側矩形波Vp)とこの負側矩形波Vmとの間に短絡防止期間Tdで主として構成されるオフ期間Toff1が介在し、かつこの負側矩形波Vmが一方の正側矩形波Vp側に偏在している状態が維持されている。また、正側矩形波Vpおよび負側矩形波Vmの各デューティ比の設定に際しては、この状態が維持されたままで、正側矩形波Vpおよび負側矩形波Vmの各パルス幅T2が矢印Aで示されるように変更される。
【0039】
本願発明者は、図3に示すように、交流矩形波電圧V1の周期T1を一定(つまり、正側矩形波Vpおよび負側矩形波Vmも周期T1で一定)にした状態において、正側矩形波Vpおよび負側矩形波Vmの各パルス幅T2についても一定に維持しながら、正側矩形波Vpにおける一方の端部(同図での始端(左端))と、負側矩形波Vmにおける一方の端部(同図での終端(右端))との間の時間間隔T3を、同図中の上段に示される状態(時間間隔T3=短絡防止期間Td)から、中段に示される状態(負側矩形波Vmがその前後の正側矩形波Vpの中間点で出力される状態)を経由して、下段に示される状態(負側矩形波Vmの前後に出力される一対の正側矩形波Vpのうちの前の正側矩形波Vpとこの負側矩形波Vmとの間に短絡防止期間Tdのみが介在し、かつこの負側矩形波Vmがこの前の正側矩形波Vp側に偏在している状態)に至るまで、徐々に長くしたとき(負側矩形波Vmの前後の正側矩形波Vpのうちの前側の正側矩形波Vpに徐々に近づけたとき)の交流出力電圧V2の変化の様子を実験で測定した。
【0040】
なお、図3中の下段に示される状態とは、パルス生成部2が、駆動パルスS2の前後に出力される一対の駆動パルスS1のうちの前の駆動パルスS1とこの駆動パルスS2との間に短絡防止期間Tdのみが介在し、かつこの駆動パルスS2が前の駆動パルスS1側に偏在する状態で、各駆動パルスS1,S2を生成している状態である。また、この実験では、圧電トランス4としてタムラ製作所製のAS−A243Tを使用し、電源電圧Vccを20Vに規定し、各プッシュプル回路11,12を構成するスイッチ素子13,15としてPチャンネル型のパワーMOSFET(TPC8120:東芝製)を使用すると共に、スイッチ素子14,16としてNチャンネル型のパワーMOSFET(TPC8063−H:東芝製)を使用した。また、各駆動パルスS1,S2の周期T1を10μs(周波数では100kHz)に規定した。
【0041】
交流矩形波電圧V1の周期T1に対する正側矩形波Vpおよび負側矩形波Vmの各パルス幅T2の比率(デューティ比)を0.3(=T2/T1)としたときの、この実験の結果を図4に示す。なお、横軸は、周期T1に対する時間間隔T3の比率(=T3/T1)を示している。
【0042】
この実験の結果によれば、交流出力電圧V2の電圧値(ピークtoピーク)は、図3中の上段に示す状態から時間間隔T3が長くなるに伴って徐々に低下し、比率T3/T1が0.2のとき、すなわち、正側矩形波Vpに対する負側矩形波Vmの位置が同図中の中段に示す状態のときに、最小になる。また、交流出力電圧V2の電圧値は、この中段に示す状態からさらに時間間隔T3が長くなるに伴い、徐々に上昇し、この上昇は同図中の下段に示す状態のときまで継続する、という特性を有していることが確認できる。
【0043】
また、交流矩形波電圧V1の周期T1に対する正側矩形波Vpおよび負側矩形波Vmの各パルス幅T2の比率(デューティ比)を0.1(=T2/T1)としたときの、この実験の結果を図5に示す。
【0044】
この実験の結果においても、交流出力電圧V2の電圧値(ピークtoピーク)は、図3中の上段に示す状態から時間間隔T3が長くなるに伴って徐々に低下し、比率T3/T1が0.4のとき、すなわち、正側矩形波Vpに対する負側矩形波Vmの位置が同図中の中段に示す状態のときに、最小になる。また、交流出力電圧V2の電圧値は、この中段に示す状態からさらに時間間隔T3が長くなるに伴い、徐々に上昇し、この上昇は同図中の下段に示す状態のときまで継続する、という特性を有していることが確認できる。
【0045】
これにより、この電源装置PSでは、圧電トランス4が、負側矩形波Vmがこの負側矩形波Vmの前後で出力される一対の正側矩形波Vpのうちの一方の正側矩形波Vp(後の正側矩形波Vp)側にオフ期間Toff1(短絡防止期間Tdで主として構成される期間)が介在し、かつこの一方の正側矩形波Vp側に偏在している状態で出力される交流矩形波電圧V1によって駆動されるため、電圧値が最も高い状態または最も高い状態に近い状態に高められた交流出力電圧V2(電圧値が高められた交流出力電圧V2)を2次側電極24において生成して、負荷5に供給することが可能となっている。
【0046】
なお、図示はしないが、交流矩形波電圧V1の周期T1に対する正側矩形波Vpおよび負側矩形波Vmの各パルス幅T2の比率(デューティ比)を短絡防止期間Tdを確保した状態で0.5(=T2/T1)に近づけたときには、負側矩形波Vmがこの負側矩形波Vmの前後で出力される一対の正側矩形波Vpのうちの一方側に偏る程度が徐々に少なくなり、負側矩形波Vmがこの一対の正側矩形波Vpの中間点で出力される構成に近づくことから、交流出力電圧V2をより高める効果が次第に低下することが確認されている。
【0047】
このように、この圧電トランス4の駆動回路1、この駆動回路1を有する電源装置PS、および圧電トランス4の駆動方法では、交流矩形波電圧V1の電圧波形を構成する負側矩形波Vmを、この負側矩形波Vmの前後に出力される一対の正側矩形波Vpのうちのいずれか一方の正側矩形波Vpとの間にオフ期間Toff1を介在させ、かつこの一方の正側矩形波Vp側に偏在させた状態で交流矩形波電圧V1を生成して、圧電トランス4の1次側電極22,23に印加(出力)する。
【0048】
したがって、この駆動回路1、電源装置PS、および圧電トランス4の駆動方法によれば、圧電トランス4の種類およびフルブリッジ回路部3に使用する電源電圧Vccを一定とし(変えずに)、かつ駆動パルスS1,S2の周期T1およびデューティ比(各駆動パルスS1,S2のパルス幅T2)を一定とする(つまり、交流矩形波電圧V1を構成する正側矩形波Vpおよび負側矩形波Vmの周期T1およびデューティ比(各矩形波Vp,Vmのパルス幅T2)を一定とする)という条件の下で、電圧値が高められた交流出力電圧V2(電圧値が最も高い状態または最も高い状態に近い状態に高められた交流出力電圧V2)を圧電トランス4から負荷5に出力させることができる。
【0049】
なお、上記の駆動回路1では、短絡防止期間Tdとほぼ等しい長さ(具体的には、オフ期間Toff1に占める短絡防止期間Tdの割合が80%以上、好ましくは90%以上となる長さ)にオフ期間Toff1を規定しているが、短絡防止期間Tdと等しい長さ(具体的には、オフ期間Toff1に占める短絡防止期間Tdの割合が100%となる長さ)に規定する構成、つまり、オフ期間Toff1を短絡防止期間Tdのみで構成するという構成を採用することもできる。この構成を採用することにより、負側矩形波Vmがこの負側矩形波Vmの前後で出力される一対の正側矩形波Vpのうちの一方の正側矩形波Vp側にオフ期間Toff1(短絡防止期間Tdのみで構成される期間)が介在し、かつこの一方の正側矩形波Vp側に偏在している状態で出力される交流矩形波電圧V1によって圧電トランス4が駆動されるため、電圧値が最も高められている交流出力電圧V2を2次側電極24において生成して、負荷5に供給することができる。
【0050】
なお、上記の電源装置PSでは、圧電トランス4から出力される交流出力電圧V2を負荷5用の出力電圧として、負荷5にそのまま出力する構成を採用しているが、圧電トランス4の2次側電極24と出力端子Cとの間に不図示の整流部を配設する構成を採用して、交流出力電圧V2に基づいて負荷5用の出力電圧を生成して(つまり、交流出力電圧V2を整流部で直流電圧に変換して出力電圧を生成して)、負荷5に出力する構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0051】
1 駆動回路
2 パルス生成部
4 圧電トランス
21 圧電振動体
22,23 1次側電極
24 2次側電極
PS 電源装置
V1 交流矩形波電圧
V2 交流出力電圧
Vm 負側矩形波
Vp 正側矩形波
図1
図2
図3
図4
図5
図6