(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、互いに流体状の反応剤(原料流体)同士を接触させ、混合することにより、所望の反応生成物を製造するための方法として、いわゆるマイクロチャネルリアクタと呼ばれる多流路機器を用いるものが知られている。
このマイクロチャネルリアクタは表面に微細な溝が形成された基体を備えており、この基体の表面に形成された微細な溝が原料流体同士を混合する反応流路とされている。多流路機器では、この反応流路内に反応対象の原料流体を流すことにより、単位体積あたりにおける反応対象の原料流体同士の接触面積を飛躍的に増大し、原料流体同士の混合の効率を高めるものとなっている。マイクロチャネルリアクタは、化学物質や薬品の製造などの用途に用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、多流路機器の中でもマイクロチャネルリアクタの例が開示されている。このマイクロチャネルリアクタは、リアクタ内での反応に必要な第1反応剤(第1の原料流体)を流通させる第1導入路と、この第1導入路の流れ方向の中途側に合流すると共に第2反応剤(第2の原料流体)を流通させる第2導入路とを備えている。そして、第1導入路を流れてきた第1反応剤と、第2導入路を流れてきた第2反応剤とが、両流路の合流路において化学反応を起こし、生成した反応生成物が第1導入路を経由して反応流路の外部に運ばれる。
【0004】
一方、マイクロチャネルリアクタのような構造の多流路機器は、対象となる流体の加熱・冷却を行う熱交換器としても使用されることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示すようなマイクロチャネルリアクタの反応流路に第1の原料流体と第2の原料流体とを導入したとき、当該反応流路は非常に微細な溝から形成されているため、閉塞してしまう虞がある。そのため、例えば、反応流路に第1反応剤や第2反応剤を導入する前に、わざわざ点検用の流体を流して反応流路の閉塞の有無を確認し、閉塞している場合には、反応流路を構成する基体を分解して反応流路全体を洗浄しなければならないのが実情であった。つまり、特許文献1のマイクロチャネルリアクタでは、反応流路において閉塞の検知(閉塞検知という)及び洗浄の対策が講じられておらず、反応流路の閉塞検知及び洗浄が非常に大変であった。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、反応流路の閉塞検知を容易に行うことができると共に反応流路の洗浄も簡単に行うことができる多流路機器の運転方法及び多流路機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の多流路機器の運転方法は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の多流路機器の運転方法は、原料流体を流通させつつ化学反応させて反応生成物を生成する反応流路が形成された多流路機器の運転方法であって、前記反応流路を複数の区間に分割しておき、 前記反応流路に原料流体を流通させつつ、各区間を流れる原料流体又は反応生物の圧力を測定し、各区間の圧力損失に基づいて区間の閉塞を判定することを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記各区間の圧力損失によって閉塞と判定された際には、閉塞状態とされる区間を洗浄するとよい。
好ましくは、前記反応流路に連通する少なくとも1以上の連通流路が設けられ、この連
通流路は、反応流路を連通部分で複数の区間に分割すると共に、連通部分での原料流体又は反応生物の圧力を測定するものである。
【0010】
好ましくは、前記連通流路を、前記反応流路の区間が閉塞したときに洗浄液を流す流路として兼用化して使用するとよい。
好ましくは、前記連通流路を、他の原料流体を流す流路として兼用化して使用するとよい。
一方、本発明の多流路機器は、原料流体を流通させつつ化学反応させて反応生成物を生成する反応流路が形成された多流路機器において、前記反応流路は、原料流体を流入させる流入口と、反応生成物を流出させる流出口とを備えており、前記流入口と流出口との間の反応流路には、当該反応流路に連通する連通する少なくとも1以上の連通流路が設けられ、前記連通流路は、反応流路を連通部分で複数の区間に分割すると共に連通部分での原料流体又は反応生物の圧力を測定するものであることを特徴とする。
なお、本発明にかかる多流路機器の運転方法の最も好ましい形態は、原料流体を流通させつつ化学反応させて反応生成物を生成する反応流路が形成された多流路機器の運転方法であって、前記反応流路を複数の区間に分割しておき、前記反応流路に原料流体を流通させつつ、各区間を流れる原料流体又は反応生物の圧力を測定し、各区間の圧力損失に基づいて区間の閉塞を判定するものであって、前記各区間の圧力損失によって閉塞と判定された際には、閉塞状態とされる区間を洗浄することとし、前記反応流路に連通する少なくとも1以上の連通流路が設けられ、この連通流路は、反応流路を連通部分で複数の区間に分割すると共に、連通部分での原料流体又は反応生物の圧力を測定するものであって、前記連通流路を、前記反応流路の区間が閉塞したときに洗浄液を流す流路として兼用化して使用することを特徴とする。
また、本発明にかかる多流路機器の最も好ましい形態は、原料流体を流通させつつ化学反応させて反応生成物を生成する反応流路が形成された多流路機器において、前記反応流路は、原料流体を流入させる流入口と、反応生成物を流出させる流出口とを備えており、前記流入口と流出口との間の反応流路には、当該反応流路に連通する連通する少なくとも1以上の連通流路が設けられ、前記連通流路は、反応流路を連通部分で複数の区間に分割すると共に連通部分での原料流体又は反応生物の圧力を測定するものとされ、前記連通部分で測定された圧力を基に得られた各区間の圧力損失によって閉塞と判定された際には、閉塞状態とされる区間を洗浄すると共に、前記連通流路を、前記反応流路の区間が閉塞したときに洗浄液を流す流路として兼用化して使用するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の多流路機器の運転方法及び多流路機器によれば、反応流路の閉塞検知を容易に行うことができると共に反応流路の洗浄も簡単に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る多流路機器を図を基に説明する。
本実施形態の多流路機器1は、互いに異なる種類の第1の原料流体Qと第2の原料流体Rとを内部において化学反応させて反応生成物Sを得る機器であり、マイクロチャネルリアクタ3と呼ばれるものである。
まず、マイクロチャネルリアクタ3の説明に先立ち、このマイクロチャネルリアクタ3が設けられた化学製造装置2を説明する。
【0014】
図1は、マイクロチャネルリアクタ3が設けられた化学製造装置2を示している。
この化学製造装置2は、第1の原料流体Q(図中に「Q」で示す流体)を供給する第1原料供給部4と、第2の原料流体R(図中に「R」で示す流体)を供給する第2原料供給部5と、これら第1の原料流体Q及び第2の原料流体Rを混合させて反応させるマイクロチャネルリアクタ3と、を備えている。
図1の化学製造装置2では、第1原料供給部4及び第2原料供給部5のそれぞれからポンプ及び温調器を経由して第1の原料流体Q及び第2の原料流体Rがマイクロチャネルリアクタ3に供給されている。
【0015】
図2は、マイクロチャネルリアクタ3の全体図を示している。
図2に示すように、マイクロチャネルリアクタ3は、外見が角状であって、化学反応を利用して所望とする化学物質や医薬品などを製造する際に用いられる化学反応機器である。このマイクロチャネルリアクタ3(多流路機器)は、上述した第1の原料流体Qと第2の原料流体Rとを流通させる反応流路20を備えており、この反応流路20を流れる第1の原料流体Qと第2の原料流体Rとが化学反応して反応生成物Sが生成するようになっている。
【0016】
詳しくは、マイクロチャネルリアクタ3は、多数(図例ではP1〜P3の3枚)の流路板P1〜P3をその厚み方向に積層した構造となっていて、各流路板P1〜P3を上下に合わせることによって内部に反応流路20が形成されている。また、マイクロチャネルリアクタ3の一方の側面(
図2の手前側を向く側面、以降は「手前側」という)には、マイクロチャネルリアクタ3内(反応流路20内)に第1の原料流体Qを供給する第1の流入口7、及び第2の原料流体Rを供給する第2の流入口8が開口している。マイクロチャネ
ルリアクタ3の手前側に、リアクタ内(反応流路20内)の流体の圧力を取り出すための複数の取出口(図例では、第1の取出口21及び第2の取出口22)が第2の流入口8の側方に距離をあけて形成されている。
【0017】
また、マイクロチャネルリアクタ3における他方の側面(
図2の奥側を向く側面、以降は「奥側」という)には、これらの第1の原料流体Q及び第2の原料流体Rから生成される反応生成物Sをリアクタ外(反応流路20外)に排出する流出口10が開口している。
さて、マイクロチャネルリアクタ3は、上述したように、マイクロチャネルリアクタ3の反応流路20内に原料流体を流通させて反応生成物Sを反応流路20外に取り出す構造であるが、様々な原因で反応流路20内が閉塞することがある。そのため、本発明のマイクロチャネルリアクタ3では、当該マイクロチャネルリアクタ3内に反応流路20と連通する連通流路23を設けて反応流路20内の圧力を検出できるようにし、検出した圧力に基づいて反応流路20内の閉塞を素早く検知することとしている。
【0018】
次に、
図3を用いて本発明のマイクロチャネルリアクタ3の構造について説明する。
図3に示すように、反応流路20及び連通流路23は、マイクロチャネルリアクタ3を構成する流路板P1〜P3のうち、流路板P2の上面(表面)や下面(裏面)等にケミカルエッチングなどの手法を用いて断面が半円状の微細な流路溝(開口幅数μm〜数mm程度)を形成し、流路板P2を流路板P1、P3で挟み込むことにより構成されている。
【0019】
マイクロチャネルリアクタ3を構成する3枚の流路板のうち、真ん中の流路板「P2」の上面には、第1の流路溝14が下方に向かって凹状に形成されている。この第1の流路溝14は、流路板「P2」の手前側の端縁から板中央側に向かって伸び、次に奥側の端縁に達する前で流路板の長手と平行な方向に直角に折れ曲がる。そして、流路板の長手と平行な方向に伸びた後、今度は手前側に向かって直角に折れ曲がり、手前側の端縁に達する前で再び流路板の長手と平行な方向に直角に折れ曲がる。以降は、この直角方向に沿った折れ曲がりを複数回に亘って繰り返しつつ蛇行する。そして、最後に、入った側とは逆側の端縁に達するように配備されている。この第1の流路溝14の入側は第1の流入口7に連通しており、また出側は流出口10に連通している。一方、流路板「P1」は、凹状の溝が形成されず、平板となっていて仕切り板とされている。そして、流路板「P2」の上面に形成された第1の流路溝14を覆うように、流路板「P2」と流路板「P1」とを重ね合わせることによって原料流体を流通させる反応流路20が形成されている。
【0020】
また、流路板「P2」の下面には、第1の流路溝14と同じ手間側の端縁を始点として板中央側に向かって直線状に伸びる第2の流路溝15が、上方に向かって半円状に形成されている。この第2の流路溝15の入側は上述した第2の流入口8に対応した位置に連結している。また、この第2の流路溝15は手間側の端縁から板中央側に向かって少しだけ伸び、板中央側に達する手前で上方に向かって折れ曲がる。そして、第2の流路溝15の出側は「P2」の内部を貫通して、第1の流路溝14と交差する位置(合流部18)に達していて、第1の流路溝14(反応流路20)に連通している。一方、流路板「P3」は、凹状の溝が形成されず、平板となっていて仕切り板とされている。そして、流路板「P2」の下面に形成された第2の流路溝15を覆うように、流路板「P2」と流路板「P1」とを重ね合わせることによって、第1の流路溝14(反応流路20)に連通し且つ当該反応流路20に向けて第2の原料流体Rを流通するための導入路25が形成される。
【0021】
さらに、流路板「P2」の下面には、上述した第2の流路溝15の他に、複数の流路溝(図例では、第3の流路溝16及び第4の流路溝17)が所定の間隔をあけて形成されている。詳しくは、第2の流路溝15と同じ手間側の端縁を始点として板中央側に向かって直線状に伸びる第3の流路溝16及び第4の流路溝17が上方に向かって半円状に形成されている。第3の流路溝16及び第4の流路溝17は、手間側の端縁から板中央側に向かって少しだけ伸び、板中央側に達する手前で上方に向かって折れ曲がる。
【0022】
そして、第3の流路溝16の出側は、「P2」の内部を貫通して、第1の流路溝14と交差する位置(連通部分)26に達していて、第1の流路溝14(反応流路20)に連通している。同じく、第4の流路溝17は、「P2」の内部を貫通して、第1の流路溝14と交差する位置(連通部分)26に達していている。第4の流路溝17が第1の流路溝1
4と交差する位置26は、第3の流路溝16が第1の流路溝14と交差する位置26よりも下流側に位置している。また、第3の流路溝16と第4の流路溝17とは、幅方向(
図3で言うと紙面左右方向)に離れていて、第3の流路溝16の入側は上述した第1の取出口21に対応した位置に連結し、第4の流路溝17の入側は上述した第2の取出口22に対応した位置に連結している。
【0023】
このように、流路板「P2」の下面に形成された第3の流路溝16及び第4の流路溝17を覆うように、流路板「P3」を重ね合わせることによって、上述した導入路25とは別の反応流路20に連通する連通流路23が形成されている。つまり、マイクロチャネルリアクタ3には、反応流路20を中途部分で分岐する2つの連通流路23(第1の連通流路23A、第2の連通流路23B)が形成されている。
【0024】
このように本発明のマイクロチャネルリアクタ3では、当該マイクロチャネルリアクタ3内に、反応流路20に連通する少なくとも1以上の連通流路23(
図3では第1の連通流路23A、第2の連通流路23B)を設け、この連通流路23によって反応流路20を複数の区間に分割し、分割した各区間における原料流体の圧力損失を連通流路23を用いて見ることによって、反応流路20の閉塞検知を容易に行うことができるようにしている。
【0025】
図4は、
図3に示すマイクロチャネルリアクタ3の反応流路20と連通流路23との関係を示したものである。
図4を用いて、反応流路20に原料流体を流したときの詰まりについて各区間の圧力損失と共に説明する。
図4(a)、(b)に示す位置Aは、反応流路20と第2の原料流体Rを導入する導入路とが合流する合流部18であり、位置Bは反応生成物Sが流出する流出口10である。位置C1は第1の連通流路23に設けた第1の取出口21であり、位置C2は第2の連通流路23に設けた第2の取出口22である。線分Fは反応流路20であり、線分Gは第1の連通流路23Aであり、線分Hは第2の連通流路23Bであり、線分Fと線分Gの交差部は第1の連通流路23Aと反応流路20との連通部分26であり、線分Fと線分Hの交差部は第2の連通流路23Bと反応流路20との連通部分26である。なお、原料流体などの圧力は、第1の取出口21、第2の取出口22、流出口10等の各位置で測定することができ、各位置における圧力の差を求めることによって後述するように、各区間における圧力損失を計算することができる。
【0026】
図4(a)、(b)に示すように、第1の連通流路23A及び第2の連通流路23Bによって、位置Aから位置Bまでの反応流路20を3つに区画している。位置Aから位置Bまでを区間A−B、位置Aから位置C1までを区間A−C1、位置C1から位置C2までを区間C1−C2、位置C2から位置Bまでを区間C2−Bとしたする。各区間において、反応流路20が詰まっていないとき(製作時)の各区間の圧力損失をΔP1、ΔP2、ΔP3、ΔP4としたとき、製作時と運転後とにおける各区間の圧力損失の変化は、表1に示す「製作時と運転後の圧力損失」の欄のようになる。
【0028】
表1に示すように、原料流体を反応流路20に流したとき、「閉塞発生時」の欄のように各区間の圧力が変化したとする。区間A−C1の圧力損失及び区間C2−Bの圧力損失は、運転前後共に同じ値(ΔP2=ΔP2’、ΔP4=ΔP4’)であることから、原料流体がスムーズに流れていると考えられる。一方、区間A−C1と区間C2−Bとの間に位置する区間C1−C2の圧力損失は変化していて大きい(ΔP3<ΔP3’)ことから、区間C1−C2が詰まっている可能性がある。
【0029】
このように、本発明によれば、連通流路23を用いて反応流路20を複数の区間に分割しておき、各区間を流れる原料流体の圧力を測定し、各区間の圧力損失に基づいて区間の
閉塞を判定しつつ反応流路20に原料流体を流すこととしている。各区間の圧力損失によって閉塞と判定された際には、例えば、上述したように、区間C1−C2が詰まったときには、
図4(b)に示すように、区間C1−C2以外の部分(詰まった部分以外)をバルブ等の閉塞具27によって閉鎖し、閉塞状態とされる区間(区間C1−C2)に洗浄液を流して、区間C1−C2を洗浄する。
【0030】
詳しくは、原料流体の圧力を取り出していた第1の取出口21や第2の取出口22のどちらか一方側から洗浄液を入れ、第1の連通流路23及び第2の連通流路23を介して区間C1−C2における反応流路20内に洗浄液を通す。そして、洗浄液を入れた側とは反対側の第1の取出口21や第2の取出口22から洗浄液を出して、区間C1−C2における反応流路20内を洗浄する。即ち、本発明では、原料流体の圧力を取り出すための連通流路23を、反応流路20の区間が閉塞したときに洗浄液を流す流路として兼用化して使用している。
【0031】
図5は、上記した流路構成を備えた実際の流路板(真ん中の流路板「P2」)の一例を示した図である。この図に示すように、実際の流路板には複数の反応流路20が設けられていると共に、流路の屈曲回数(ジグザグの回数)も多い。この反応流路20は非常に長い流路長を有するものとなっている。
図5に示すように、真ん中の流路板「P2」には、各反応流路20に対応して、1つの反応流路20当たり3カ所の連通部分26を設けている。そして、各連通部分26に連通流路23を設けて、反応流路20を4つに区画している。
【0032】
図6は、
図5に示す流路板を用いてマイクロチャネルリアクタ3を形成した場合の反応流路20と連通流路23との関係を示したものである。各区間の定義及び圧力損失の定義は、
図4と同じであるため説明を省略する。表2は、
図5に示すマイクロチャネルリアクタ3を用いたときの、製作時と運転後とにおける各区間の圧力損失の変化を示したものである。
【0034】
表2に示すように、「閉塞発生時」の欄のように各区間の圧力が変化したとする。ここで、区間A−C1の圧力損失、区間C2−B、区間C3−Bの圧力損失は、運転前後共に同じ値(ΔP2=ΔP2’、ΔP4=ΔP4’、ΔP5=ΔP5’)であることから、原料流体がスムーズに流れていると考えられる。一方、区間A−C1と区間C2−Bとの間に位置する区間C1−C2の圧力損失は変化していて大きい(ΔP3<ΔP3’)ことから、区間C1−C2が詰まっていることになる。
【0035】
このように、区間C1−C2が詰まったときには、
図6(b)に示すように、位置A、位置C、位置C1を閉塞具27によって閉鎖し、例えば、第1の取出口21から洗浄液を入れ、第1の連通流路23及び第2の連通流路23を介して区間C1−C2における反応流路20内に洗浄液を通す。そして、洗浄液を入れた側とは反対側の取出口から洗浄液を出して、区間C1−C2における反応流路20内を洗浄する。区間C1−C2における反応流路20内の詰まり(閉塞)が解消されたか否かは、区間C1−C2に洗浄液などの流体を流したときの圧力損失で判断することができる。例えば、区間C1−C2を流れる流体の圧力損失が製造時のΔP3や運転時の圧力損失よりも小さい(位置C1における圧力と位置C2における圧力に差が無い)とき、詰まりが解消されたと判断できる。
【0036】
なお、
図7は、多流路機器の変形例、即ち、真ん中の流路板「P2」の変形例を示したものであり、
図7(a)は流路板「P2」の上面(表面)であり、
図7(b)は流路板「P2」の下面(裏面)である。
図7(a)、(b)に示すように、真ん中の流路板「P2」の幅方向両側(紙面左右方
向)には、当該流路板「P2」を貫通する複数の孔が形成されている。そして、幅方向両側に形成した複数の孔のうち、1つの孔が原料流体をマイクロチャネルリアクタ3内(反応流路20内)に供給する流入口7とされ、これとは別の孔が、原料流体を反応流路20から排出する流出口10とされている。また、流入口7及び流出口10とは異なる孔が反応流路20内)の流体の圧力を取り出すための第1の取出口21及び第2の取出口22とされている。
【0037】
そして、
図7(a)に示すように、流路板「P2」の上面には、1本の長い第1の流路溝14が下方に向かって凹状に形成され、当該第1の流路溝14の入側は流入口7に達していて、第1の流路溝14の出側は流出口10に達している。この1本の長い第1の流路溝14は、左右方向に延びていて、左右方向の端部から折り返すことを繰り返す蛇行状となっている。一方、流路板「P2」の下面には、第1の取出口21から幅方向へ延びる凹状の第3の流路溝16が形成され、第3の流路溝16の出側(第1取出口21と反対側)は、流路板「P2」を貫通して流路板「P2」の上面に形成された連結部分26で第1の流路溝14に連結している。また、流路板「P2」の下面には、第2の取出口22から幅方向へ延びる凹状の第4の流路溝17が形成され、第4の流路溝17の出側(第2取出口22と反対側)は、流路板「P2」を貫通して流路板「P2」の上面に形成された連結部分26で第1の流路溝14に連結している。このように、変形例の多流路機器(流路板「P2」)では、第3の流路溝16及び第4の流路溝17によって一本の反応流路を3つに分割し、各区間に流れる原料流体の圧力を取り出すことができる。
【0038】
このように、本発明によれば、連通流路23によって、反応流路20を連通部分で複数の区間に分割すると共に連通部分から導入される原料流体の圧力を測定するようにしているため、区間毎の原料流体の圧力損失を容易に求めることができ、各区間毎の圧力損失によって、反応流路20における閉塞位置を容易に検出(特定)することができる。また、各区間の圧力損失によって閉塞と判定した場合には、連通流路23に洗浄液を流すことによって、閉塞状態とされる区間のみを容易に洗浄することができる。
【0039】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【0040】
例えば、上述した実施形態では、多流路機器として、化学反応を用いて反応生成物Sを得るマイクロチャネルリアクタ3を例示したが、本発明の多流路機器は、対象となる流体の加熱・冷却を行う熱交換器、特に、移動する熱の精確なコントロールが必要な熱交換器などとして用いることもできる。
また、上述した実施形態では、連通流路23を反応流路20に流れる原料流体の圧力を取り出すための流路としていたが、原料流体の圧力を測定しない場合などは、他の原料流体を流す流路として兼用化して使用してもよい。また、上述した実施形態では、反応流路20の区間を流れる原料流体の圧力を測定し、各区間の圧力損失に基づいて区間の閉塞を判定するとしているが、圧力の測定は原料流体であっても、反応後の反応生成物であってもよい。