特許第5885554号(P5885554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5885554-継手スリーブの位置決め装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5885554
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】継手スリーブの位置決め装置
(51)【国際特許分類】
   B28B 7/00 20060101AFI20160301BHJP
   B28B 23/00 20060101ALI20160301BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20160301BHJP
   E04C 5/16 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
   B28B7/00 D
   B28B23/00
   E04G21/12 105D
   E04C5/16
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-68814(P2012-68814)
(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公開番号】特開2013-199056(P2013-199056A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2014年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】591157327
【氏名又は名称】石川ピーシー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】石川 康隆
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−025407(JP,A)
【文献】 実開平05−028855(JP,U)
【文献】 特開平10−252272(JP,A)
【文献】 特開2001−277224(JP,A)
【文献】 特開2007−069398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 7/00,23/00−23/02
E04C 5/16
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鉄筋が埋設されたプレキャストコンクリート部材を、型枠を用いて製造する際に、上記主鉄筋の一端部に取り付けられる筒状の継手スリーブを上記型枠に位置決めするための装置であって、
上記型枠の内部に位置固定して設けられた筒状の装置本体と、
上記装置本体の内部にその軸線方向へ移動可能に設けられた球体からなる楔部材と、
上記型枠又は上記装置本体に螺合され、先端部が上記装置本体の内部に挿入されねじ部材と、
上記装置本体の周壁部にその径方向へ移動可能に軸線方向へ移動不能にして、周方向に間隔をおいて設けられた複数の押圧部材とを備え、
上記押圧部材の径方向外側の端部は球面をなし、
上記ねじ部材の螺合を進めるときに、上記ねじ部材の先端部が上記楔部材に押圧接触して、上記楔部材が上記装置本体の軸線に沿って上記ねじ部材の螺合進み方向に移動させられ、
上記楔部材が上記螺合進み方向に移動させられるときに、上記押圧部材の径方向内側の端部が上記楔部材の球面に押されて、上記押圧部材が径方向外方向に移動させられ、
上記押圧部材が径方向外方向に移動させられるときに、押圧部材の径方向外側の端部が、上記装置本体に外挿された上記継手スリーブの他端部内周面に形成された環状の係合突出部に突き当たることを特徴とする継手スリーブの位置決め装置。
【請求項2】
上記装置本体の内部には、上記楔部材を上記ねじ部材の螺合進み方向と逆方向へ付勢して上記楔部材を上記ねじ部材の先端部に押し付ける付勢手段が設けられていることを特徴とする請求項に記載の継手スリーブの位置決め装置。
【請求項3】
上記ねじ部材として雄ねじ部材が用いられ、上記装置本体に上記型枠を貫通する突出部が形成され、この突出部に上記雄ねじ部材が螺合されるねじ孔が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の継手スリーブの位置決め装置。
【請求項4】
上記装置本体の突出部の上記型枠を貫通した先端部にナットが螺合され、このナットと上記装置本体とで上記型枠を挟持することにより、上記装置本体が上記型枠に取り付けられていることを特徴とする請求項に記載の継手スリーブの位置決め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プレキャストコンクリート柱等のプレキャストコンクリート部材を型で製造する際に用いられる位置決め装置、特に鉄筋連結用の継手スリーブを型枠に位置決めするための位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の位置決め装置は、下記特許文献1に記載されているように、型枠の内部に水平に配置され、型枠の端壁に固定された筒状の装置本体と、この装置本体の内部にその軸線方向へ移動可能に収容された楔部材と、型枠の端壁を外部から貫通して装置本体内に入り込み、楔部材に形成された雌ねじ孔に螺合された雄ねじ部材と、装置本体の周壁にその径方向へ移動可能に設けられた複数の押圧部材とを有している。
【0003】
上記構成の位置決め装置を用いて継手スリーブを位置決めする場合には、予め継手を装置本体に外挿しておく。そして、雄ねじ部材を回転させ、楔部材を端壁に接近するように移動させる。すると、各押圧部材が楔部材により装置本体の径方向外側へ移動させられる。各押圧部材は、継手スリーブの内周面に形成された環状突出部に突き当たって継手スリーブをその径方向へ押圧する。これにより、継手スリーブの径方向の位置決めがなされる。また、各押圧部材は、継手スリーブをその軸線方向へ押圧して型枠の端壁に押し付ける。これにより、継手スリーブの軸線方向の位置決めがなされる。このようにして、継手スリーブが型枠に位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4509897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の継手スリーブの位置決め装置においては、楔部材に雌ねじ孔が形成されているため、楔部材が雌ねじ孔の分だけ大径になる。楔部材が大径になると、それを収容している装置本体が大径になり、その結果装置全体が大型化するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、主鉄筋が埋設されたプレキャストコンクリート部材を、型枠を用いて製造する際に、上記主鉄筋の一端部に取り付けられる筒状の継手スリーブを上記型枠に位置決めするための装置であって、上記型枠の内部に位置固定して設けられた筒状の装置本体と、上記装置本体の内部にその軸線方向へ移動可能に設けられた球体からなる楔部材と、上記型枠又は上記装置本体に螺合され、先端部が上記装置本体の内部に挿入されねじ部材と、上記装置本体の周壁部にその径方向へ移動可能に軸線方向へ移動不能にして、周方向に間隔をおいて設けられた複数の押圧部材とを備え、上記押圧部材の径方向外側の端部は球面をなし、上記ねじ部材の螺合を進めるときに、上記ねじ部材の先端部が上記楔部材に押圧接触して、上記楔部材が上記装置本体の軸線に沿って上記ねじ部材の螺合進み方向に移動させられ、上記楔部材が上記螺合進み方向に移動させられるときに、上記押圧部材の径方向内側の端部が上記楔部材の球面に押されて、上記押圧部材が径方向外方向に移動させられ、上記押圧部材が径方向外方向に移動させられるときに、押圧部材の径方向外側の端部が、上記装置本体に外挿された上記継手スリーブの他端部内周面に形成された環状の係合突出部に突き当たることを特徴としている。
この場合、上記装置本体の内部には、上記楔部材を上記ねじ部材の螺合進み方向と逆方向へ付勢して上記楔部材を上記ねじ部材の先端部に押し付ける付勢手段が設けられていることが望ましい。
上記ねじ部材として雄ねじ部材が用いられ、上記装置本体に上記型枠を貫通する突出部が形成され、この突出部に上記雄ねじ部材が螺合されるねじ孔が形成されていることが望ましい。
上記装置本体の突出部の上記型枠を貫通した先端部にナットが螺合され、このナットと上記装置本体とで上記型枠を挟持することにより、上記装置本体が上記型枠に取り付けられていることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、ねじ部材が楔部材を押しているので、楔部材にはねじ部材が螺合する雌ねじ孔が形成されていない。したがって、楔部材を小径にすることができ、楔部材を収容する装置本体を小径にすることができる。よって、位置決め装置全体を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、この発明の一実施の形態を示す断面図である。
図2図2は、同実施の形態の要部を、継手スリーブを型枠に位置決め固定した状態で示す拡大断面図である。
図3図3は、同実施の形態の要部を、継手スリーブを型枠に位置決め固定する前の状態で示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、この発明に係る継手スリーブの位置決め装置1が用いられた型枠装置Aを示す。型枠装置Aは、プレキャストコンクリート柱(プレキャストコンクリート部材)を製造するためのものである。勿論、この発明に係る位置決め装置1は、プレキャストコンクリート壁等の他のプレキャストコンクリート部材を製造するための型枠装置にも適用可能である。
【0010】
まず、型枠装置Aによって製造されるプレキャストコンクリート柱について説明すると、プレキャストコンクリート柱は、断面四角形のコンクリート部(図示せず)を有している。このコンクリート部の内部には、鉄筋篭Cが設けられている。鉄筋篭Cは、主筋D、フープ筋(図示せず)、及び継手スリーブEを複数ずつ有している。
【0011】
主筋Dは、その長手方向をプレキャストコンクリート柱の長手に向けて設けられている。しかも、各主筋Dは、プレキャストコンクリート柱の外周面に沿って配置されている。フープ筋は、全主筋Dを互いに連結して固定するためのものであり、各主筋Dの外側を囲むように配置され、各主筋Dに結束等の固定手段によって固定されている。継手スリーブEは、筒状をなしており、その一端部(図1において右端部)には、主筋Dの一端部(図1において左端部)が挿入固定されている。なお、以下においては、説明の便宜上、図1の左右及び上下を用いて型枠装置A及び位置決め装置1を説明する。勿論、位置決め装置1は、そのような方向に限定されるものではない。
【0012】
上記構成のプレキャストコンクリート柱を製造するための型枠装置Aは、型枠Bを有している。型枠Bは、プレキャストコンクリート柱のコンクリート部と同一の内部形状、特にコンクリート部の長手方向を左右方向に向けて水平に配置したときの形状と同一の内部形状を有しており、上部が開放された断面四角形の箱状に形成されている。したがって、型枠Bの内部には、鉄筋篭Cがその長手方向を左右方向に向けて水平に配置される。型枠Bの左端壁B1には、この発明に係る位置決め装置1によって継手スリーブEが位置決め固定されている。そのために、左端壁B1には、これを左右方向に貫通する複数の取付孔B2(図2及び図3参照)が形成されている。取付孔B2は、その軸線を主筋Dの軸線と一致させた状態で配置されている。型枠Bの右端壁B3には、複数の貫通孔B4が設けられている。各貫通孔B4は、各主筋Dと軸線を一致させて配置されており、各主筋Dの右端部がシール状態でそれぞれ挿通されている。
【0013】
次に、この発明に係る継手スリーブの位置決め装置1について説明する。図2及び図3に示すように、位置決め装置1は、装置本体2を有している。装置本体2は、長さが短い断面円形の筒状をなしており、互いの軸線を一致させた大径部2a及び小径部(突出部)2bを有している。大径部2aと小径部2cとの間には、当接面2cが環状に形成されている。
【0014】
装置本体2は、その長手方向を左右方向に向けて水平に配置されている。装置本体2の大径部2aは、型枠Bの内部に配置されている。一方、小径部2bは、取付孔B2に嵌合されている。これにより、装置本体2の軸線が主筋Dの軸線と一致させられている。小径部2bの左端部(突出部の先端部)は、取付孔B2から外部に突出させられており、そこにはナット3が螺合されている。このナット3を締め付けると、当接面2cが左端壁B1の内面に当接し、ナット3と大径部2aとによって左端壁B1が挟持される。これにより、装置本体2が左端壁B1に固定されている。
【0015】
装置本体2の内部には、その右端面から左端面に向かって順次、第1ねじ孔2d、収容孔2e及び第2ねじ孔(ねじ孔)2fが形成されている。
【0016】
収容孔2eには、金属製の球体(楔部材)4が収容されている。球体4は、収容孔2eの内径とほぼ同一の外径を有しており、収容孔2eにその軸線方向へは移動可能に、かつ軸線と直交する方向へは移動不能に収容されている。球体に代えて、円錐台状又は角錐台状をなす部材を楔部材として用いてもよい。円錐台状又は角錐台状をなす楔部材を用いる場合には、その小径側部分が型枠Bの内部側に位置するように、つまり収容孔2eの右端側に位置するように配置される。
【0017】
第1ねじ孔2dには、ばね受け5が螺合固定されている。このばね受け5と球体4との間には、圧縮コイルばね(付勢手段)6が設けられている。この圧縮コイルばね6によって球体4が左方へ付勢されている。
【0018】
第2ねじ孔2fには、雄ねじ部材(ねじ部材)7が螺合されている。雄ねじ部材7の右端面には、球体4が圧縮コイルばね6によって押し付けられている。したがって、雄ねじ部材7を正逆方向へ回転させて左右方向へ移動させると、それに追随して球体4が左右方向へ移動する。
【0019】
大径部2aには、その外周面から収容孔2eの内周面まで延びるガイド孔2gが複数形成されている。各ガイド孔2gは、大径部2aの周方向へ等間隔だけ離れて配置されている。
【0020】
ガイド孔2gには、押圧部材8が挿入されている。押圧部材8は、断面円形の短い棒状をなしており、ガイド孔2gの内径とほぼ同一の外径を有している。したがって、押圧部材8は、装置本体2に対し、その径方向へは移動可能であるが、軸線方向へはほとんど移動不能である。押圧部材8は、所定の位置から右方への移動が不能であれば、左右方向へ若干移動可能にしてもよい。また、押圧部材8を棒状に形成しているが、球状に形成してもよい。
【0021】
装置本体2の径方向内側に位置する押圧部材8の内側端部には、第1球面8aが形成されている。この第1球面8aは、押圧部材8の軸線上に中心を位置させ、かつ押圧部材8の外径と同一の外径を有する球面の半分によって構成されている。第1球面8aの外面のうちの左斜め内方(左斜め方向で装置本体2の内方)を向く部分は、押圧部材8を装置本体2の径方向内側へ移動させると、球体4の外面の右半分のうちの右斜め外方を向く部分(傾斜面)に接触する。その状態を維持しつつ球体4を雄ねじ部材7によって右方へ移動させると、押圧部材8が球体4の外面の傾斜した部分の楔作用によって外側へ移動させられる。球体4が圧縮コイルばね6によって左方へ移動させられると、球体4が左方へ移動した分だけ押圧部材8が装置本体2の径方向内側へ移動可能になる。
【0022】
装置本体2の径方向外側に位置する押圧部材8の外側端部には、小径部8bが形成されている。一方、ガイド孔2gの外側の開口部には、その径方向内側へ向かって突出する環状突出部(図示せず)が形成されている。この環状突出部の内径は、小径部8bの外径とほぼ同一になっている。したがって、押圧部材8が装置本体2の径方向外側へ向かって移動すると、押圧部材8の段差面8cが環状突出部に突き当たる。これにより、押圧部材8がガイド孔2gから外部に抜け出ることが阻止されている。
【0023】
小径部8bの外側端部には、第2球面8dが形成されている。第2球面8dは、押圧部材8の軸線上に中心を位置させ、かつ小径部8bの外径と同一の外径を有する球面の半分によって構成されている。第2球面8dの外側の端部は、ガイド孔2gから外部に突出させられている。
【0024】
図2に示すように、装置本体2の大径部2aには、継手スリーブEが所定の大きさの隙間をもって外挿されている。継手スリーブEは、大径部2aにほとんど隙間無く外挿してもよい。継手スリーブEの左端開口部には、環状突出部(係合突出部)E1が形成されている。球体4を右方へ移動させて各押圧部材8を外方へ移動させると、各押圧部材8の第2球面8dの外面のうちの斜め左外方を向く部分が環状突出部E1の内周面の右端縁に同時に押圧接触し、各押圧部材8が継手スリーブEをその径方向へ押す。これにより、継手スリーブEの軸線と直交する方向の位置決めがなされる。また、各押圧部材8は、外側へ移動すると、環状突出部E1を継手スリーブEの軸線方向へ押し、継手スリーブEを左方へ移動させる。そして、継手スリーブEは、左端壁B1にパッキンPを介して押し付けられる。これにより、継手スリーブEが、その軸線方向において位置決めされるとともに、左端壁B1に固定される。このようにして、継手スリーブEがその軸線方向及び軸線と直交する方向に位置決めされるとともに、左端壁B1に固定されている。継手スリーブEは、パッキンPを介在させることなく、左端壁B1に直接押圧固定してもよい。
【0025】
上記構成の位置決め装置1が設けられた型枠装置Aによってプレキャストコンクリート柱を製造する場合には、型枠B内に鉄筋篭Cを装入する。次に、主筋Dの右端部を右端壁B3の貫通孔D4に挿入する。その後、位置決め装置1を左端壁B1に取り付ける。鉄筋篭Cを型枠Bに装入した後に位置決め装置1を左端壁B1に取り付けるのは、鉄筋篭Cの型枠B内への装入時に位置決め装置1が邪魔にならないようにするためである。位置決め装置1が鉄筋篭Cの装入の邪魔にならない場合には、鉄筋篭Cの型枠Bへの装入前に位置決め装置1を左端壁に取り付けておいてもよい。
【0026】
次に、図3において矢印で示すように、鉄筋篭Cを型枠Bに対して相対的に左方へ移動させ、継手スリーブEの左端部を装置本体2の大径部2aに外挿する。このとき、各押圧部材8の最も外側の箇所に外接する円の直径が環状突出部E1の内径と同等以下になるように、球体4を適宜の位置まで左方へ移動させておく。継手スリーブEは、その左端面が左端壁B1にパッキンPを介してほぼ接触するまで移動させておく。この状態では、環状突出部E1の右端縁が第2球面8dの最も外側に位置する箇所より左側に位置している。
【0027】
次に、雄ねじ部材7を一方向へ回転させて右方へ移動させ、球体4を圧縮コイルばね6の付勢力に抗して右方へ移動させる。すると、押圧部材8が球体4によって外側へ移動させられ、押圧部材8の第2球面8dの左斜め外側を向く部分が継手スリーブEの環状突出部E1の右端縁に突き当たる。そして、押圧部材8が継手スリーブEを外方及び左方へ押圧する。その結果、継手スリーブEがその軸線方向及び軸線と直交する方向に位置決めされるとともに、左端壁B1にパッキンPを介して押圧固定される。
【0028】
その後、型枠B内にコンクリートを打設する。コンクリートが固化してから所定の期間養生させた後、型枠Bを分解する。このとき、雄ねじ部材7を他方向へ回転させて左方へ移動させ、球体4を圧縮コイルばね6によって左方へ移動させておく。球体4の左方への移動距離は、環状突出部E1が押圧部材5の外側を通過することができるようになるまでの距離である。したがって、型枠Bを分解すると、大径部2aが継手スリーブEから抜け出る。また、主筋Dの右端部が右端壁B3の貫通孔B4から抜け出る。このようにして、プレキャストコンクリート柱が得られる。
【0029】
上記構成の位置決め装置1においては、球体4に雄ねじ部材7が突き当たっており、球体4には雄ねじ部材7が螺合する雌ねじ部が形成されていない。したがって、球体4の外径を小さくすることができ、それに対応して大径部2aの外径を小さくすることができる。よって、位置決め装置1全体を小型化することができる。
【0030】
また、上記の位置決め装置1においては、楔部材として球体4が用いられており、球体4はボールベアリング等に用いられる市販の安価な鋼球を用いることができる。したがって、位置決め装置1の製造費を低減することができる。
【0031】
また、球体4を圧縮コイルばね6によって雄ねじ部材7に押し付けているので、球体4が不用意に移動することがない。したがって、位置決め装置1の搬送時等に球体4が装置本体2や雄ねじ部材7に衝突して騒音が発生することを防止することができる。さらに、段差面8cがガイド孔2cの開口部に形成された環状突出部に突き当たるまで球体4を右方へ移動させておくことにより、各押圧部材8を位置固定しておくことがで き、押圧部材8の移動に伴う騒音の発生も防止することができる。
【0032】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において各種の変形例を採用可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、装置本体2の小径部2bを取付孔B2に挿入し、小径部2bに螺合されたナット3によって装置本体2を型枠Bの左端壁B1に固定しているが、上記特許文献1に記載されているように、左端壁B1を貫通するボルトを大径部2aに螺合させ、そのボルトによって装置本体2を左端壁B1の内面に押圧固定してもよい。その場合には、小径部2bが不要である。小径部2bが形成されない場合には、雄ねじ部材7を型枠Bの取付孔B2に螺合させてもよい。ただし、装置本体2は、ナット3によって固定することが望ましい。ボルトを用いた場合には、複数のボルトが必要であり、その締め付けに多くの手間を要するのに対し、ナット3を用いた場合には、装置本体2を一つのナット3だけで固定することができ、装置本体2の取り付けに要する手間を軽減することができるからである。
さらに、上記の実施の形態においては、ねじ部材として第2ねじ孔2fに螺合された雄ねじ部材7が用いられているが、ねじ部材として有底筒状をなす袋ナットを用いてもよい。袋ナットは、小径部2bの外周面に螺合される。袋ナットの底部には、押圧軸部が設けられる。この押圧軸部は、第2ねじ孔2fに挿通されて球体4に押し付けられる。ここで、押圧軸部は、第2ねじ孔2fに螺合されないので、第2ねじ孔2fに代えてストレートな孔を形成してもよい。
【符号の説明】
【0033】
A 型枠装置
B 型枠
D 主筋
E 継手スリーブ
E1 係合突出部
1 継手スリーブの位置決め装置
2 装置本体
2a 小径部(突出部)
3 ナット
4 球体(楔部材)
6 圧縮コイルばね(付勢手段)
7 雄ねじ部材(ねじ部材)
8 押圧部材
図1
図2
図3