特許第5885557号(P5885557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5885557
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】切断機
(51)【国際特許分類】
   B27B 9/00 20060101AFI20160301BHJP
【FI】
   B27B9/00 E
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-74023(P2012-74023)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-202918(P2013-202918A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】河内山 勝利
(72)【発明者】
【氏名】山田 啓二
【審査官】 石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−017849(JP,A)
【文献】 特開2005−280366(JP,A)
【文献】 特開2004−142169(JP,A)
【文献】 特開平08−207014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27B 1/00−23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋸刃と、モータと、前記モータの回転を前記鋸刃に伝達する駆動伝達部と、前記鋸刃の上側を覆うソーカバーと、前記モータを収容するモータケースと、前記駆動伝達部を収容するギヤケースと、前記モータケースに設置されるハンドルと、を備える切断機において、
前記鋸刃による切断方向前方側における前記ソーカバーと前記ギヤケースの接続部に遮音壁が備えられており、
前記遮音壁は、補強リブとして前記ソーカバーの前記ギヤケース側の側面から前記ギヤケース側に張り出して形成されており、その張り出し量は、前記ソーカバーの前端部に備えられるボス部から前記ギヤケースとの接続部に向かって徐々に大きくなっており、さらに、
前記遮音壁は、前記ギヤケースに形成される冷却風の排出口を覆うように形成されていることを特徴とする切断機。
【請求項2】
前記ソーカバーと前記ギヤケースと前記遮音壁は一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の切断機。
【請求項3】
前記遮音壁は、前記鋸刃による被切断材の切断位置を目視する操作者の視線を遮らない範囲で張り出し形成されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の切断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用丸鋸等の切断機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、木材等の切断に用いられる切断機が知られている。切断機は、駆動減であるモータ及びモータの回転を鋸刃に伝達する駆動伝達部などを冷却するために冷却ファンが備えられている。この冷却ファンは、冷却風として外気を吸入し、モータ及び駆動伝達部の周辺を通過させて冷却した後、排出口から排出させている。
【0003】
冷却風の排出口は、駆動伝達部を収容するギヤケースから鋸刃の上側を覆うソーカバーの内部に向けて形成されている場合と、駆動伝達部を収容するギヤケースから外部に向けて形成されている場合と、それらの両方を備える場合がある。例えば、図6に示す従来の切断機70においては、ギヤケース71の外周面から外部に向けて複数の排出口72が形成されている。また、例えば、下記特許文献1においては、ギヤケースの切断方向前側の外周面に排出口を形成し、排出口から排出された冷却風により、切断方向前方の被切断材上に堆積した切粉を吹き飛ばすことに利用している。
【0004】
また、切断作業時に鋸刃による被切断材の切断位置を目視する場合、操作者は、ソーカバーの操作者が把持するハンドル側の下端部とベースとの間の隙間から切断位置を目視することになる。従って、下記特許文献1のように、操作者による切断位置の視認性を向上するために、ソーカバーの操作者が把持するハンドル側の下端部に逃がし形状部を形成し、ベースとの間の隙間を大きくすることも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−214292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述のように、ギヤケースから外部に向けて排出口を形成した場合、排出口から放出されるモータ及び駆動伝達部から発生する駆動音が、操作者に大きな音圧で届くため、操作者に不快感を与えていた。
【0007】
さらに、鋸刃による切断位置で発生する切断音が、ソーカバーの操作者が把持するハンドル側の下端部とベースとの間の隙間を通して操作者に大きな音圧で届くため、操作者に不快感を与えていた。特に、上述のように逃がし形状部を形成している場合、その逃がし形状部が切断音の通り道となるため、より不快感を与えていた。
【0008】
本発明は、上述した課題の存在に鑑みてなされたものであって、その目的は、冷却風の排出口から放出される駆動音や鋸刃による切断位置で発生する切断音が、操作者に大きな音圧で届くことによる操作者の不快感を低減することができる切断機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る切断機は、鋸刃と、モータと、前記モータの回転を前記鋸刃に伝達する駆動伝達部と、前記鋸刃の上側を覆うソーカバーと、前記モータを収容するモータケースと、前記駆動伝達部を収容するギヤケースと、前記モータケースに設置されるハンドルと、を備え、前記鋸刃による切断方向前方側における前記ソーカバーと前記ギヤケースの接続部に遮音壁が備えられており、前記遮音壁は、補強リブとして前記ソーカバーの前記ギヤケース側の側面から前記ギヤケース側に張り出して形成されており、その張り出し量は、前記ソーカバーの前端部に備えられるボス部から前記ギヤケースとの接続部に向かって徐々に大きくなっており、さらに、前記遮音壁は、前記ギヤケースに形成される冷却風の排出口を覆うように形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る切断機においては、前記ソーカバーと前記ギヤケースと前記遮音壁は一体に形成することができる。
【0013】
また、さらに、本発明に係る切断機においては、前記遮音壁は、前記鋸刃による被切断材の切断位置を目視する操作者の視線を遮らない範囲で張り出し形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、冷却風の排出口から放出される駆動音や鋸刃による切断位置で発生する切断音が、操作者に大きな音圧で届くことによる操作者の不快感を低減することができる切断機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る切断機の正面図である。
図2】本実施形態に係る切断機の平面図である。
図3】本実施形態に係る切断機の左側面図である。
図4】本実施形態に係る切断機の斜視面であり、切断位置を目視した場合の操作者の視界を示している。
図5図2における断面A−Aを示す図であり、一部省略している。
図6】従来の切断機の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図1は本実施形態に係る切断機の正面図である。図2は本実施形態に係る切断機の平面図である。図3は本実施形態に係る切断機の左側面図である。図4は本実施形態に係る切断機の斜視面であり、切断位置を目視した場合の操作者の視界を示している。図5図2における断面A−Aを示す図であり、一部省略している。図6は従来の切断機の正面図である。また、本明細書では、本実施形態の切断機の切断方向に基づき、「前、後、左、右、上、下」を決定してある。
【0018】
図1から図4に示すように、本実施形態における切断機1は、左右方向の軸線まわりに回転する鋸刃11を備えた本体部10と、被切断材の上面を摺動し、切断機1を被切断材の上面に沿って案内するためのベース51とを備えている。本体部10は、鋸刃11を回転駆動するための駆動源であるモータを収容するモータケース12と、モータケース12の右側に配置され、モータの回転駆動を減速して鋸刃11に伝達するための歯車等からなる駆動伝達部を収容するギヤケース21と、切断作業時に切断機1を把持するためのハンドル13と、ギヤケース21の右側に配置され、鋸刃11の上側を覆うソーカバー31と、切断作業を行わないときに鋸刃11を下側から覆うロアガード41とを備えている。
【0019】
モータケース12は、ギヤケース21と鋸刃11の軸線方向にネジ止めされ、ギヤケース21とソーカバー31は一体的に形成されており、モータケース12とギヤケース21とソーカバー31とから本体ハウジングが構成されている。また、ハンドル13は、モータケース12の上側から後方に伸びる上腕部13aと、モータケース12の後側下部から後方に延びる下腕部13bと、上腕部13aと下腕部13bの先端同士を上下に連結する把持部13cとから全体が略コの字状に形成されている。また、把持部13cの前面上部には、前方に突出するようにしてスイッチ14が配置されている。スイッチ14は、切断機1の作動、停止を制御するオンオフスイッチである。さらに、上腕部13aの基端部から前方に補助ハンドル15が延設されている。補助ハンドル15は、操作者が必要に応じて使用するものであり、図1に示すようにその先端側が左右方向に幅が広がっており、その右側面は、上腕部13aの右側面の延長線より左側に凹んだ凹部15aを備えている。この凹部15aは、操作者の把持を容易にすると共に、後述するように、操作者による切断位置の視認性を高めることを目的として備えられている。なお、本実施形態の切断機1は補助ハンドル15が装備されているが、補助ハンドルが装備されていない切断機についても本発明は有効である。
【0020】
ソーカバー31の前端部には中央に孔31aが形成されたボス部31bを備えており、ベース51の前部に取付けられたブラケット52には左右方向の軸線を持つネジ軸53が設置されている。そして、孔31aとネジ軸53が回動可能に嵌合することで、本体部10は、ベース51に対してネジ軸53の軸線まわりに上下に所定角度回動可能となっている。また、ソーカバー31の後部には公知の切り込み深さ調整機構が備えられており、これらにより、ベース51に対する本体部10の固定角度を変更し、ベース51の下面からの鋸刃11の突出量を調整することで、鋸刃11による切り込み深さが調整可能となっている。
【0021】
また、図5によく示されるように、ソーカバー31の左側面の前側下端部には、下側から上側に向かって凹んだ逃がし形状部31cが形成されている。この逃がし形状部31cは、鋸刃11による被切断材の切断位置の目視を容易にするために設けられている。また、逃がし形状部31cの上側には、ソーカバー31及びギヤケース21と一体に形成され、ボス部31bから後方に向かって延びる3本の補強リブ32,33,34が備えられている。補強リブ32,33,34の後部は、ギヤケース21の前側外周部に接続されている。より具体的には、補強リブ32,33,34の後部は、ギヤケース21の前側外周部に形成された冷却風の排出口22a,22b,22c,22dの隔壁23a,23c,23dにそれぞれ接続されている。
【0022】
補強リブ32,33は、図1図2によく示されるように、ソーカバー31の左側面から左側に張り出して形成されており、その張り出し量は、ボス部31bからギヤケース21との接続部に向かって徐々に大きくなっている。最も上側の補強リブ32のギヤケース21との接続部は、ハンドル13の上腕13aの右側面にまで張り出しており、排出口22a,22b,22c,22dの大部分を上側から覆っている。最も上側の補強リブ32が、本発明の遮音壁に相当する。なお、操作者の切断作業時の姿勢においては、操作者の視線は、切断機1の上方やや後側からとなり、この場合、補強リブ32は、排出口22a,22b,22c,22dのほぼ全てを操作者の視界から遮ることになる。
【0023】
図4は、切断作業時に操作者が鋸刃11による被切断材の切断位置を目視するため、姿勢をやや左側に移動したときの視界を示しているが、本実施形態の切断機1は、補助ハンドル15を装備しているため、補助ハンドル15の右側面と補強リブ33,34との間からソーカバー13の逃がし形状部31cを通して切断位置を目視することができるようになっている。また、最も上側の補強リブ32は、切断位置を目視する操作者の視線を遮らない範囲で、ソーカバー13の左側面から左側に張り出して形成されている。なお、補助ハンドルを装備していない切断機においては、姿勢をさらに左側に移動して切断位置の目視が可能となることから、遮音壁としての補強リブの左側への張り出し量をさらに大きくしてもよいことになる。
【0024】
上述の切断機1を使用して切断作業を行う場合について説明する。まず、操作者は、ハンドル13の把持部13cを把持し、被切断材の端部にベース51の前端部を載置させる。次に、スイッチ14を操作して切断機1を作動させ、把持部13cを介して切断機1を前方に押圧して前進させることで切断を行う。なお、切断箇所をスミ線で示している場合は、スミ線とベース51の前端部に形成されているスミ線ガイド51aとを一致させながら切断を行う。
【0025】
切断作業中は、本体ハウジング内部のモータ及び駆動伝達部で発生する駆動音が、本体ハウジングの形成された開口より外部に放出されることとなるが、ギヤケース21に形成された冷却風の排出口22a,22b,22c,22dから放出される駆動音は、遮音壁としての補強リブ32があることで、操作者に届く音圧が低減され、操作者に与える不快感が低減される。
【0026】
また、鋸刃11による被切断材の切断位置から発生する切断音は、遮音壁としての補強リブ32があることで、操作者に届く音圧が低減され、操作者に与える不快感が低減される。特に、本実施形態の切断機1においては、ソーカバー31に逃がし形状部31aを形成したことで、この逃がし形状部31aを通して切断音がより放出されるため、遮音壁としての補強リブ32の効果が顕著である。
【0027】
さらに、切断作業時に鋸刃11による被切断材の切断位置を目視する場合、補強リブ32は切断位置を目視する操作者の視線を遮らない範囲で、ソーカバー13の左側面から左側に張り出して形成されているため、視認性が低下することがない。
【0028】
また、さらに、補強リブ32,33は、ソーカバー31の左側面から左側に張り出して形成されており、その張り出し量は、ボス部31bからギヤケース21との接続部に向かって徐々に大きくなっており、特に、最も上側の補強リブ32のギヤケース21との接続部は、ハンドル13の上腕部13aの右側面にまで張り出していることで、ソーカバー31のボス部31bからギヤケース21にかけての領域の剛性を著しく高めることができる。よって、例えば、切断機1を床面に落下し、ソーカバー31と床面が衝突した場合、ボス部31b周辺にかかる大きな衝撃荷重による破損を防止することができる。
【0029】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の技術的範囲に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々なる形態に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 切断機、10 本体部、11 鋸刃、12 モータケース、13 ハンドル、13a 上腕部、13b 下腕部、13c 把持部、14 スイッチ、15 補助ハンドル、15a 凹部、21 ギヤケース、22a 排出口、22b 排出口、22c 排出口、22d 排出口、23a 隔壁、23c 隔壁、23d 隔壁、31 ソーカバー、31a 孔、31b ボス部、31c 逃がし形状部、32 補強リブ、33 補強リブ、34 補強リブ、41 ロアガード、51 ベース、51a スミ線ガイド、52 ブラケット、53 ネジ軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6