(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る気化装置1を示す縦断面図である。
図1では、気化装置1の中心軸J1を含む縦断面を示す。気化装置1は、テトラエトキシシラン(TEOS)等の材料を加熱することにより当該材料を気化する装置である。気化装置1により気化された材料は、例えば、CVD(
Chemical Vapor Deposition)装置へと供給される。以下の説明では、中心軸J1に沿って
図1中の右側を「後側」と呼び、
図1中の左側を「前側」という。
【0021】
気化装置1は、略円柱状の本体部7と、本体部7を加熱する本体加熱部5と、本体部7および本体加熱部5を内部に収容する筐体6とを備える。本体加熱部5は、本体部7の外周面75に巻き付けられるバンドヒータであり、中心軸J1を中心とする周方向のおよそ全周に亘って外周面75を被覆する。筐体6では、中心軸J1に平行な内周面のおよそ全面に亘って断熱材61が設けられる。
【0022】
本体部7は、供給口11と、加熱流路部2と、スタティックミキサ部3と、フィルタ部4と、排出口12とを備える。本体部7では、供給口11が中心軸J1に平行な軸方向の前側に配置され、排出口12が軸方向後側に配置される。
【0023】
供給口11は、中心軸J1を中心とする円形開口であり、中心軸J1上に配置される。供給口11には、ガス供給管13と、材料供給管14とが接続される。ガス供給管13は、図示省略のガス供給源に接続されており、ガス供給源から供給されたキャリアガスは、ガス供給管13により供給口11に向けて導かれる。材料供給管14は、図示省略の材料供給源に接続されており、材料供給源から供給された液状の材料は、材料供給管14により供給口11に向けて導かれる。供給口11近傍では、材料とキャリアガスとが混合されることにより、材料の微小液滴が生成される。そして、キャリアガスと材料の微小液滴との混合流体が供給口11に供給される。本実施の形態では、材料としてテトラエトキシシラン(TEOS)が利用され、キャリアガスとして窒素(N
2)が利用される。
【0024】
図2は、
図1中のA−Aの位置にて気化装置1を切断した横断面図である。
図2では、気化装置1の前側から後側を見ており、断面の奥(すなわち、後側)にある構造も併せて示している。
図1および
図2に示すように、加熱流路部2は、中心軸J1を中心とする略円柱状であり、供給口11の後方に配置される。供給口11と加熱流路部2との間には、中心軸J1を中心とする略円柱状の第1拡散空間16が設けられる。第1拡散空間16の中心軸J1に垂直な断面の直径は、加熱流路部2の中心軸J1に垂直な断面の直径におよそ等しい。
【0025】
以下、単に「断面」および「断面積」という場合はそれぞれ、中心軸J1に垂直な断面、および、当該断面の面積を意味する(他の構成においても同様)。また、中心軸J1に垂直な断面の直径、内径および外径をそれぞれ、単に、「直径」、「内径」および「外径」という。加熱流路部2および第1拡散空間16の直径は、本体部7の直径の約2/3である。
【0026】
図1および
図2に示すように、加熱流路部2には、軸方向に延びる複数の加熱流路24が設けられる。複数の加熱流路24は、1つの第1流路21と、複数の第2流路22とを含む。第1流路21は、中心軸J1を中心とする略円柱状であり、中心軸J1上に配置される。複数の第2流路22は、第1流路21を中心として第1流路21の周囲に配置される。複数の加熱流路24、すなわち、第1流路21および複数の第2流路22は、互いに平行に軸方向に延び、中心軸J1を中心とする略円柱状の領域内に配置される。各第2流路22も略円柱状であり、各第2流路22の断面積は、第1流路21の断面積よりも小さい。第1流路21の直径は、供給口11の直径におよそ等しい。第1流路21および複数の第2流路22は、軸方向において第1拡散空間16の後側に位置し、第1拡散空間16に連続する。
【0027】
図3は、
図1中のB−Bの位置にて気化装置1を切断した横断面図である。
図3でも、
図2と同様に、気化装置1の前側から後側を見ており、断面の奥(すなわち、後側)にある構造も併せて示している。
図1および
図3に示すように、スタティックミキサ部3は、加熱流路部2の後方に配置される。
【0028】
加熱流路部2の後側には、中心軸J1を中心とする第2拡散空間17が設けられる。第2拡散空間17は、加熱流路部2とスタティックミキサ部3との間に位置する主拡散空間171と、主拡散空間171の後側に位置する補助拡散空間172とを含む。主拡散空間171は、中心軸J1を中心とする略円柱状である。主拡散空間171の直径は、加熱流路部2の直径におよそ等しい。主拡散空間171は、軸方向において、第1流路21および複数の第2流路22の後側に位置し、第1流路21および複数の第2流路22に連続する。
【0029】
補助拡散空間172は、軸方向の前側から後側に向かって(すなわち、加熱流路部2からの混合流体が流れる方向に向かって)ドーム状に凸となっており、主拡散空間171に連続する。換言すれば、補助拡散空間172の断面は略円形であり、当該断面の面積は、主拡散空間171から軸方向に離れるに従って漸次減少する。補助拡散空間172の前側のエッジの直径は、加熱流路部2の直径(すなわち、主拡散空間171の直径)のおよそ2/3であり、第1流路21の直径のおよそ4倍である。
【0030】
スタティックミキサ部3は、中心軸J1を中心として軸方向に延びる略円筒状の部位である。詳細には、スタティックミキサ部3は、第2拡散空間17の主拡散空間171の後側のエッジよりも中心軸J1を中心とする径方向の内側、かつ、補助拡散空間172の前側のエッジよりも径方向の外側の略円環面を、軸方向後側に延ばした略円筒状の部位である。したがって、スタティックミキサ部3の外径は、第2拡散空間17の主拡散空間171の直径に等しい。また、第2拡散空間17の補助拡散空間172は、スタティックミキサ部3の径方向内側に配置される。
【0031】
スタティックミキサ部3は、加熱流路部2の外周部と軸方向に対向する位置にて、中心軸J1を中心として周状に設けられる。スタティックミキサ部3は、複数(本実施の形態では、12個)のスタティックミキサ31を備える。複数のスタティックミキサ31は、中心軸J1を中心とする周方向に等間隔にて配置される。複数のスタティックミキサ31はそれぞれ、互いに平行に軸方向に延びる略円柱状であり、互いに同様の構造を有する。中心軸J1から複数のスタティックミキサ31のそれぞれの中心軸までの距離は互いに等しい。
【0032】
図1に示すように、複数のスタティックミキサ31は、軸方向において第2拡散空間17の主拡散空間171の後側に位置し、第2拡散空間17に連続する。各スタティックミキサ31では、軸方向に延びる略円柱状の流路内に、複数(本実施の形態では、5個)の混合素子312が軸方向に配列される。各混合素子312は、長方形の板状部材の軸方向の一方の端部を、軸方向に平行な中心軸を中心として180°捻ったものである。スタティックミキサ31では、時計回りに捻って形成された混合素子312と、反時計回りに捻って形成された混合素子312とが、軸方向に交互に配列される。また、軸方向に隣接する各2つの混合素子312は、軸方向の端縁が直交するように配置される。
【0033】
フィルタ部4は、中心軸J1を中心として軸方向に延びる略円柱状であり、スタティックミキサ部3よりも後側に配置される。フィルタ部4の直径は、スタティックミキサ部3の内径よりも小さく、フィルタ部4の前側の端部は、スタティックミキサ部3の後端部の軸方向内側に位置する。換言すれば、フィルタ部4の前端部は、スタティックミキサ部3の後端部と径方向に重なっており、フィルタ部4の前端部の外側面は、スタティックミキサ部3の後端部の内側面と径方向に対向する。フィルタ部4の側壁部(すなわち、中心軸J1に略平行な側面)は、気体のみが通過可能な焼結フィルタである。
【0034】
排出口12は、中心軸J1を中心とする円形開口であり、フィルタ部4の後方にて中心軸J
1上に配置される。フィルタ部4を通過した気体は、排出口12から本体部7の外部へと排出される。排出口12には配管121が接続されており、排出口12から排出された気体は、配管121を介してCVD装置等に供給される。
【0035】
本体部7は、第1蓋部材71、中央部72および第2蓋部材73が、軸方向の前側から後側へと配列されてボルト等で固定されることにより形成される。第1蓋部材71、中央部72および第2蓋部材73はそれぞれ、中心軸J1を中心とする略円柱状の部材である。中央部72は、スタティックミキサ部3を有する。中央部72は、軸方向前側の端面721から軸方向後側の端面722に向かって窪む第1凹部723と、軸方向後側の端面722から軸方向前側の端面721に向かって窪む第2凹部724とを備える。スタティックミキサ部3は、第1凹部723および第2凹部724よりも径方向の外側に位置する。第1凹部723の前側の部位は、中心軸J1を中心とする略円柱状であり、第1凹部723の後側の部位は、中心軸J1を中心とするドーム状である。第2凹部724は、中心軸J1を中心とする略円柱状である。
【0036】
第1蓋部材71は、中央部72の前側の端面721に取り付けられる。第1蓋部材71が中央部72に取り付けられることにより、中央部72の第1凹部723が第2拡散空間17となり、中央部72の第1凹部723の前側および後側の部位がそれぞれ、第2拡散空間17の主拡散空間171および補助拡散空間172となる。第1蓋部材71は、中央部72の前側の端面721に取り付けられる第1蓋部本体711と、第1蓋部本体711の前側に取り付けられる第1蓋部端部712とを有する。第1蓋部本体711は中心軸J1を中心とする略円柱状であり、第1蓋部端部712は、中心軸J1を中心とする略円板状である。
【0037】
第1蓋部本体711は、径方向の中央部に加熱流路部2を有し、加熱流路部2の前側には、中心軸J1を中心とする略円柱状の凹部が設けられる。当該凹部は、第1蓋部本体711の前側の端面に第1蓋部端部712が取り付けられることにより、第1拡散空間16となる。第1蓋部端部712は、径方向の中央部に供給口11を有する。
【0038】
第2蓋部材73は、中央部72の後側の端面722に取り付けられる。第2蓋部材73は、中央部72の後側の端面722に取り付けられる第2蓋部本体731と、第2蓋部本体731の後側に取り付けられる第2蓋部端部732と、上述のフィルタ部4とを有する。第2蓋部本体731は中心軸J1を中心とする貫通孔733を有する略円筒状である。
【0039】
貫通孔733は、第2蓋部本体731の前端部に位置する大径部734と、第2蓋部本体731の後端から前端部近傍に至る小径部736と、大径部734と小径部736とを連結する傾斜部735とを有する。大径部734の直径はおよそ一定であり、スタティックミキサ部3の外径、第2拡散空間17の主拡散空間171の直径、および、加熱流路部2の直径におよそ等しい。大径部734は、スタティックミキサ部3の複数のスタティックミキサ31、および、中央部72の第2凹部724に連続する。
【0040】
小径部736の直径はおよそ一定であり、大径部734の直径よりも小さい。小径部736の直径は、中央部72の第2凹部724の直径におよそ等しい。小径部736の直径、および、中央部72の第2凹部724の直径は、フィルタ部4の直径よりも大きい。傾斜部735の断面の直径は、軸方向の前側から後側に向かうに従って漸次減少する。
【0041】
第2蓋部端部732は、中心軸J1を中心とする略円板状であり、径方向の中央部に排出口12を有する。第2蓋部端部732の前側の端面には、フィルタ部4が取り付けられる。第2蓋部端部732が第2蓋部本体731に取り付けられた状態では、フィルタ部4が、第2蓋部端部732に支持されて、第2蓋部本体731の貫通孔733、および、中央部72の第2凹部724内に位置する。第2蓋部端部732は、フィルタ部4を支持するフィルタ支持部である。フィルタ部4は、第2蓋部本体731および中央部72に、直接的には接触しない。フィルタ部4の外周面は、貫通孔733の内周面、および第2凹部724の内周面と径方向に対向する。また、フィルタ部4の前側の端面は、第2凹部724の底部と軸方向に対向する。
【0042】
本体加熱部5は、第1加熱部51と、第2加熱部52と、温度制御部53とを備える。第1加熱部51は、本体部7の軸方向中央から前側において、本体部7の外周面75を周方向のおよそ全周に亘って被覆する。第1加熱部51は、径方向において、供給口11、第1拡散空間16、加熱流路部2、第2拡散空間17およびスタティックミキサ部3の外側に配置される。第1加熱部51の後縁は、軸方向において、スタティックミキサ部3の前端からスタティックミキサ部3の長さの約2/3の位置に位置する。第1加熱部51により、供給口11、第1拡散空間16、加熱流路部2、第2拡散空間17、および、スタティックミキサ部3の前側から約2/3の部位が加熱される。
【0043】
第2加熱部52は、本体部7の軸方向中央から後側において、本体部7の外周面75を周方向のおよそ全周に亘って被覆する。第2加熱部52は、径方向において、スタティックミキサ部3、第2凹部724、貫通孔733、フィルタ部4および排出口12の外側に配置される。第2加熱部52の前縁は、軸方向において、スタティックミキサ部3の後端からスタティックミキサ部3の長さの約1/3の位置に位置する。第2加熱部52の前縁は、第1加熱部51の後縁と軸方向に僅かに離間している。第2加熱部52により、スタティックミキサ部3の後側から約1/3の部位、第2凹部724、貫通孔733、フィルタ部4および排出口12が加熱される。
【0044】
本体加熱部5では、温度制御部53により、第1加熱部51の温度と第2加熱部52の温度とが個別に制御され、それぞれ所定の温度に維持される。本実施の形態では、第1加熱部51の温度が、第2加熱部52の温度よりも低くなるように、温度制御部53による制御が行われる。
【0045】
気化装置1では、供給口11から供給された上述の混合流体(すなわち、材料の微小液滴およびキャリアガス)の一部は、第1拡散空間16から、加熱流路部2の第1流路21、および、第1流路21近傍の複数の第2流路22を通過して第2拡散空間17に流入し、主拡散空間171から補助拡散空間172へと流入する。補助拡散空間172に流入した混合流体は、補助拡散空間172の内面に沿って、径方向外方かつ軸方向前方へと拡散されつつ主拡散空間171に戻る。第2拡散空間17の混合流体の一部は、主拡散空間171において径方向外方へと拡散し、主拡散空間171の外周部へと導かれる。
【0046】
第2拡散空間17の混合流体の他の一部は、複数の第2流路22を軸方向の後側から前側へと通過して第1拡散空間16へと戻り、第1拡散空間16において径方向外方へと拡散する。また、供給口11から供給された混合流体の他の一部(すなわち、第1拡散空間16から加熱流路部2に流入しなかった混合流体)も、第1拡散空間16において径方向外方へと拡散する。第1拡散空間16の外周部では、混合流体は、複数の第2流路22を軸方向の前側から後側へと通過して第2拡散空間17の主拡散空間171の外周部へと導かれる。主拡散空間171の外周部の混合流体は、スタティックミキサ部3の複数のスタティックミキサ31に流入する。
【0047】
加熱流路部2を通過してスタティックミキサ部3へと流入した混合流体は、複数のスタティックミキサ31を通過することにより攪拌される。気化装置1では、第1拡散空間16、加熱流路部2および第2拡散空間17により構成される空間(以下、「前部空間20」という。)、および、スタティックミキサ部3を流れる混合流体が、第1加熱部51および第2加熱部52により加熱される。これにより、混合流体中の材料の微小液滴(以下、「材料液滴」という。)が気化して材料ガスとなる。
【0048】
スタティックミキサ部3を通過した混合流体は、貫通孔733の大径部734を介して、貫通孔733全体および第2凹部724へと広がる。上述のように、フィルタ部4の側壁部は気体のみが通過可能であり、スタティックミキサ部3を通過した混合流体のうちキャリアガスおよび材料ガスのみが、フィルタ部4の側壁部を通過してフィルタ部4の内部へと流入し、排出口12から排出される。スタティックミキサ部3を通過した混合流体中に、気化していない材料液滴が僅かに残っている場合、当該材料液滴はフィルタ部4の内部には流入せず、貫通孔733および第2凹部724において第2加熱部52により加熱されて材料ガスとなった後、フィルタ部4の内部へと流入する。
【0049】
以上に説明したように、気化装置1では、前部空間20において混合流体が上述のように様々な方向に流れるため、混合流体が効率的に攪拌される。これにより、混合流体中における材料液滴の分布の均一性を向上させることができ、その結果、材料液滴の気化効率を向上することができる。また、前部空間20では、上述のように混合流体が様々な方向に流れるため、材料ガスとキャリアガスとが攪拌され、混合流体中の材料ガスの濃度の均一性も向上される。
【0050】
また、混合流体は、スタティックミキサ部3においてさらに効率的に攪拌される。これにより、混合流体中における材料液滴の分布の均一性をより一層向上させることができ、その結果、材料液滴の気化効率をさらに向上することができる。また、スタティックミキサ部3では、材料ガスおよびキャリアガスが効率的に攪拌されるため、混合流体中の材料ガスの濃度の均一性をさらに向上することもできる。
【0051】
上述のように、前部空間20では、加熱流路部2の軸方向後側にて加熱流路部2に連続する第2拡散空間17が設けられ、加熱流路部2を通過した混合流体が、第2拡散空間17において径方向外方へと拡散してスタティックミキサ部3へと導かれる。第2拡散空間17では、混合流体が効率的に攪拌されるため、材料液滴の気化効率がより一層向上されるとともに、混合流体中の材料ガスの濃度の均一性もより一層向上される。
【0052】
また、第2拡散空間17の主拡散空間171に連続する補助拡散空間172が設けられることにより、補助拡散空間172から主拡散空間171に戻る混合流体と、加熱流路部2から主拡散空間171に流入する混合流体とが、主拡散空間171において衝突する。これにより、第2拡散空間17における混合流体の攪拌が促進されるため、材料液滴の気化効率をさらに向上することができるとともに、混合流体中の材料ガスの濃度の均一性もさらに向上することができる。また、補助拡散空間172が上述のドーム状であることにより、混合流体を径方向外方に効率良く拡散させることができる。
【0053】
その上、補助拡散空間172から主拡散空間171へと戻った混合流体が加熱流路部2を軸方向の後側から前側へと通過して第1拡散空間16に流入し、供給口11から径方向外方へと広がる混合流体と衝突する。これにより、第1拡散空間16における混合流体の攪拌が促進されるため、材料液滴の気化効率をより向上することができるとともに、混合流体中の材料ガスの濃度の均一性もより向上することができる。さらに、加熱流路部2を軸方向の前側から後側へと一度通過した混合流体が、加熱流路部2を軸方向の後側から前側へと通過することにより、前部空間20における混合流体の移動距離を長くすることができる。これにより、気化装置1の大型化を抑制しつつ、混合流体の加熱時間を増大させることができ、材料液滴の気化効率をより一層向上することができる。
【0054】
加熱流路部2では、径方向の中央部に、周囲の複数の第2流路22よりも断面積が大きい第1流路21が設けられる。これにより、供給口11から供給された混合流体を、迅速に第2拡散空間17に導くことができる。その結果、混合流体を径方向外方に迅速に拡散させることができるとともに、気化装置1の流量を増大させることができる。また、補助拡散空間172の前側のエッジの直径が、第1流路21の直径よりも大きいため、第1流路21を通過した混合流体を径方向外方に容易に拡散させることができる。
【0055】
気化装置1では、本体部7の外周面75が、第1加熱部51および第2加熱部52により被覆されており、加熱流路部2の複数の加熱流路24(第1流路21および複数の第2流路22)が、外周面75から径方向内側に離れて中心軸J1近傍に集中的に設けられる。これにより、複数の加熱流路24において、径方向の位置による温度のばらつきを抑制することができる。その結果、加熱流路部2の一部が過剰に高温になり、材料液滴が固化して二酸化珪素等の固体の副生成物が生成されてしまうことが抑制される。
【0056】
気化装置1では、スタティックミキサ部3を、加熱流路部2の外周部と対向する位置にて周状に設けることにより、スタティックミキサ部3を第1加熱部51および第2加熱部52近傍に配置し、スタティックミキサ部3における混合流体の効率的な加熱を実現することができる。また、各スタティックミキサ31の断面の各位置において、本体部7の外周面75からの距離に大きな差がないため、スタティックミキサ31内を流れる混合流体をほぼ均一に加熱することができる。さらに、スタティックミキサ部3において、混合流体が流れる流路面積を大きく確保することができる。
【0057】
本体加熱部5では、前部空間20およびスタティックミキサ部3の前部を加熱する第1加熱部51の温度と、スタティックミキサ部3の後部およびフィルタ部4を加熱する第2加熱部52の温度とが、温度制御部53により個別に制御される。これにより、気化装置1の前部および後部において、混合流体をそれぞれ適切に加熱することができる。その結果、二酸化珪素等の副生成物の生成を抑制することができ、フィルタ部4の目詰まりを抑制することができる。
【0058】
気化装置1では、中央部72の前側および後側に、第1蓋部材71および第2蓋部材73を取り付けることにより本体部7が形成される。また、加熱流路部2は第1蓋部材71に設けられ、スタティックミキサ部3は中央部72に設けられ、フィルタ部4は第2蓋部材73に設けられる。このため、第1蓋部材71、中央部72および第2蓋部材73を分離することにより、加熱流路部2、スタティックミキサ部3およびフィルタ部4のメンテナンスや交換を容易に行うことができる。また、加熱流路部2、スタティックミキサ部3およびフィルタ部4の種類や大きさを、それぞれ容易に変更することができる。例えば、第2蓋部本体731の長さを変更することにより、フィルタ部4の軸方向の長さの変更に容易に対応することができる。その結果、様々な種類の材料の気化処理に容易に対応することができる。
【0059】
気化装置1では、複数のスタティックミキサ31を周方向に配置することによりスタティックミキサ部3が形成されるため、市販品のスタティックミキサ等を利用してスタティックミキサ部3を容易に形成することができる。
【0060】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る気化装置1aの本体部7aおよび本体加熱部5を示す縦断面図である。
図4では、気化装置1aの中心軸J1を含む縦断面を示す。本体部7aは、加熱流路部2aがスタティックミキサ部3の径方向内側に配置される点を除き、
図1に示す気化装置1の本体部7とおよそ同様の構造を有する。本体加熱部5は、
図1に示す本体加熱部5と同様の構造を有する。以下の説明では、気化装置1の各構成と対応する構成に同符号を付す。
【0061】
加熱流路部2aは、中心軸J1を中心とする略円柱状であり、加熱流路部2aの直径は、スタティックミキサ部3の内径よりも小さい。加熱流路部2aでは、互いに断面積が等しい複数の加熱流路23が軸方向に延びる。複数の加熱流路23は、中心軸J1を中心として、加熱流路部2aに略均等に分布するように配置される。加熱流路23と供給口11との間には、中心軸J1を中心とする略円柱状の第1拡散空間16aが設けられる。第1拡散空間16aの直径は、加熱流路23の直径よりも僅かに小さい。第1拡散空間16aもスタティックミキサ部3の径方向内側に配置される。換言すれば、加熱流路部2aおよび第1拡散空間16aは、径方向においてスタティックミキサ部3と重なっている。
【0062】
加熱流路部2aの軸方向の後側には、中心軸J1を中心とする略円柱状の第2拡散空間17aが設けられる。第2拡散空間17aの直径は、加熱流路部2aの直径よりも僅かに大きい。加熱流路部2aの外周面、および、第1拡散空間16aを形成する円筒部161の外周面は、スタティックミキサ部3の内周面と径方向に対向する。スタティックミキサ部3の内周面と、加熱流路部2aおよび円筒部161の外周面との間には、間隙19が設けられる。間隙19の後端部は、第2拡散空間17aの外周部に連続する。また、間隙19の前端部は、中心軸J1を中心とする軸方向が短い円筒状の空間191を介して、スタティックミキサ部3の複数のスタティックミキサ31に連続する。
【0063】
本体部7aは、第1蓋部材71、中央部72および第2蓋部材73が、軸方向の前側から後側へと配列されてボルト等で固定されることにより形成される。第1蓋部材71、中央部72および第2蓋部材73はそれぞれ、中心軸J1を中心とする略円柱状の部材である。中央部72は、軸方向前側の端面721から軸方向後側の端面722に向かって窪む第1凹部723と、軸方向後側の端面722から軸方向前側の端面721に向かって窪む第2凹部724とを備える。第1凹部723および第2凹部724はそれぞれ、中心軸J1を中心とする略円柱状である。第1凹部723の直径と第2凹部724の直径とはおよそ等しい。
【0064】
また、中央部72は、スタティックミキサ部3を有する。スタティックミキサ部3は、第2凹部724の後側のエッジよりも径方向の外側、かつ、後述する貫通孔733の大径部734の前側のエッジよりも径方向の内側の略円環面を、軸方向前側に延ばした略円筒状の部位である。換言すれば、スタティックミキサ部3は、第1凹部723および第2凹部724よりも径方向の外側に位置する。
【0065】
第1蓋部材71は、中心軸J1を中心とする略円板状の第1蓋部本体711と、第1蓋部本体711から後側に突出する上述の円筒部161および加熱流路部2aとを有する。第1蓋部材71は、径方向の中央部に供給口11を有する。第1蓋部材71は、加熱流路部2aおよび円筒部161を中央部72の第1凹部723に挿入しつつ、中央部72の前側の端面721に取り付けられる。第1蓋部材71が中央部72に取り付けられた状態では、円筒部161および加熱流路部2aが、第1蓋部本体711に支持されて第1凹部723内に配置される。第1蓋部本体711は、円筒部161および加熱流路部2aを支持する加熱流路支持部である。
【0066】
第2蓋部材73の構造は、第1の実施の形態とおよそ同様であり、第2蓋部材73は、中央部72の後側の端面722に取り付けられる。第2蓋部材73は、中央部72の後側の端面722に取り付けられる第2蓋部本体731と、第2蓋部本体731の後側に取り付けられる第2蓋部端部732と、フィルタ部4とを有する。第2蓋部本体731は中心軸J1を中心とする貫通孔733を有する略円筒状である。
【0067】
貫通孔733は、第1の実施の形態と同様に、大径部734と、傾斜部735と、小径部736とを有する。大径部734は、スタティックミキサ部3の複数のスタティックミキサ31、および、中央部72の第2凹部724に連続する。小径部736の直径はおよそ一定であり、大径部734の直径よりも小さい。小径部736の直径は、中央部72の第2凹部724の直径におよそ等しい。小径部736の直径、および、中央部72の第2凹部724の直径は、フィルタ部4の直径よりも大きい。傾斜部735の断面の直径は、軸方向の前側から後側に向かうに従って漸次減少する。
【0068】
第2蓋部端部732は、中心軸J1を中心とする略円板状であり、径方向の中央部に排出口12を有する。第2蓋部端部732の前側の端面には、フィルタ部4が取り付けられる。第2蓋部端部732が第2蓋部本体731に取り付けられた状態では、第1の実施の形態と同様に、フィルタ部4が、第2蓋部端部732に支持されて、第2蓋部本体731の貫通孔733、および、中央部72の第2凹部724内に配置される。第2蓋部端部732は、フィルタ部4を支持するフィルタ支持部である。
【0069】
本体加熱部5の第1加熱部51および第2加熱部52はそれぞれ、第1の実施の形態と同様に、本体部7の軸方向中央から前側および後側において、本体部7の外周面75を周方向のおよそ全周に亘って被覆する。第1加熱部51は、径方向において、供給口11、第1拡散空間16a、加熱流路部2a、第2拡散空間17a、間隙19およびスタティックミキサ部3の外側に配置される。第1加熱部51の後縁は、軸方向において、スタティックミキサ部3のおよそ中央に位置する。第1加熱部51により、供給口11、第1拡散空間16a、加熱流路部2a、第2拡散空間17a、間隙19、および、スタティックミキサ部3の前部が加熱される。
【0070】
第2加熱部52は、径方向において、スタティックミキサ部3、第2凹部724、貫通孔733およびフィルタ部4の外側に配置される。第2加熱部52の前縁は、軸方向において、スタティックミキサ部3のおよそ中央に位置する。第2加熱部52の前縁は、第1加熱部51の後縁と軸方向に僅かに離間している。第2加熱部52により、スタティックミキサ部3の後部、第2凹部724、貫通孔733およびフィルタ部4が加熱される。
【0071】
本体加熱部5では、温度制御部53により、第1加熱部51の温度と第2加熱部52の温度とが個別に制御され、それぞれ所定の温度に維持される。本実施の形態では、第1加熱部51の温度が、第2加熱部52の温度よりも低くなるように、温度制御部53による制御が行われる。
【0072】
気化装置1aでは、供給口11から供給された混合流体(すなわち、材料の微小液滴およびキャリアガス)が、第1拡散空間16aから、加熱流路部2aの複数の加熱流路23へと流入する。加熱流路部2aを軸方向前側から軸方向後側へと通過した混合流体は、第2拡散空間17aにおいて径方向に拡散され、加熱流路部2aとスタティックミキサ部3との間に設けられた間隙19を、軸方向後側から軸方向前側へと通過してスタティックミキサ部3へと導かれる。
【0073】
スタティックミキサ部3へと流入した混合流体は、複数のスタティックミキサ31を通過することにより攪拌される。気化装置1aでは、第1拡散空間16a、加熱流路部2a、第2拡散空間17aおよび間隙19により構成される空間(以下、「内側空間20a」という。)、および、スタティックミキサ部3を流れる混合流体が、第1加熱部51および第2加熱部52により加熱される。これにより、混合流体中の材料液滴が気化して材料ガスとなる。
【0074】
スタティックミキサ部3を通過した混合流体は、第1の実施の形態と同様に、貫通孔733および第2凹部724へと広がり、混合流体中のキャリアガスおよび材料ガスのみが、フィルタ部4の側壁部を通過してフィルタ部4の内部へと流入し、排出口12から排出される。
【0075】
以上に説明したように、気化装置1aでは、内側空間20aを通過した混合流体が、スタティックミキサ部3において効率的に攪拌される。これにより、混合流体中における材料液滴の分布の均一性を向上することができ、その結果、材料液滴の気化効率を向上することができる。また、スタティックミキサ部3では、材料ガスおよびキャリアガスが効率的に攪拌されるため、混合流体中の材料ガスの濃度の均一性を向上することもできる。
【0076】
上述のように、加熱流路部2aは、径方向においてスタティックミキサ部3と重なり、加熱流路部2aを通過した混合流体が、加熱流路部2aとスタティックミキサ部3との間に設けられた間隙19を通過して、スタティックミキサ部3へと導かれる。これにより、気化装置1aの大型化を抑制しつつ、加熱流路部2aからスタティックミキサ部3へと流れる混合流体の移動距離を長くして、混合流体の加熱時間を増大させることができ、材料液滴の気化効率をより一層向上することができる。
【0077】
なお、気化装置1aでは、加熱流路部2aの少なくとも一部が、径方向においてスタティックミキサ部3と重なっていれば、当該一部とスタティックミキサ部3との間に設けられた間隙19を混合流体が通過することにより、上記と同様に、気化装置1aの大型化を抑制しつつ材料液滴の気化効率をより一層向上することができる。
【0078】
気化装置1aでは、スタティックミキサ部3が、径方向に関して複数の加熱流路23よりも外側に設けられる。これにより、スタティックミキサ部3を第1加熱部51および第2加熱部52近傍に配置し、スタティックミキサ部3における混合流体の効率的な加熱を実現することができる。また、各スタティックミキサ31の断面の各位置において、本体部7aの外周面75からの距離に大きな差がないため、スタティックミキサ31内を流れる混合流体をほぼ均一に加熱することができる。さらに、スタティックミキサ部3において、混合流体が流れる流路面積を大きく確保することができる。
【0079】
気化装置1aでは、第1の実施の形態と同様に、加熱流路部2aの複数の加熱流路23が、第1加熱部51および第2加熱部52から径方向内側に離れて中心軸J1近傍に集中的に設けられる。これにより、複数の加熱流路23において、径方向の位置による温度のばらつきを抑制することができる。その結果、加熱流路部2aの一部が過剰に高温になり、材料液滴が固化して二酸化珪素等の固体の副生成物が生成されてしまうことが抑制される。
【0080】
本体加熱部5では、内側空間20aおよびスタティックミキサ部3の前部を加熱する第1加熱部51の温度と、スタティックミキサ部3の後部およびフィルタ部4を加熱する第2加熱部52の温度とが、温度制御部53により個別に制御される。これにより、気化装置1aの前部および後部において、混合流体をそれぞれ適切に加熱することができる。その結果、二酸化珪素等の副生成物の生成を抑制することができ、フィルタ部4の目詰まりを抑制することができる。
【0081】
気化装置1aでは、第1の実施の形態と同様に、第1蓋部材71、中央部72および第2蓋部材73を分離することにより、加熱流路部2a、スタティックミキサ部3およびフィルタ部4のメンテナンスや交換を容易に行うことができる。また、加熱流路部2a、スタティックミキサ部3およびフィルタ部4の種類や大きさを、それぞれ容易に変更することができる。例えば、第2蓋部本体731の長さを変更することにより、フィルタ部4の軸方向の長さの変更に容易に対応することができる。その結果、様々な種類の材料の気化処理に容易に対応することができる。
【0082】
気化装置1では、複数のスタティックミキサ31を周方向に配置することによりスタティックミキサ部3が形成されるため、市販品のスタティックミキサ等を利用してスタティックミキサ部3を容易に形成することができる。
【0083】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0084】
第1の実施の形態に係る気化装置1では、スタティックミキサ部3は、必ずしも加熱流路部2の外周部に軸方向に対向する位置に設けられる必要はなく、例えば、中心軸J1を中心として周状に設けられたスタティックミキサ部3が、径方向に関して複数の加熱流路よりも外側に配置されてもよい。この場合であっても、加熱流路部2を通過した混合流体が、スタティックミキサ部3において攪拌されることにより、混合流体中における材料液滴の分布の均一性が向上され、材料液滴の気化効率が向上される。また、混合流体中の材料ガスの濃度の均一性を向上することもできる。
【0085】
スタティックミキサ部3では、必ずしも複数のスタティックミキサ31が周方向に配列される必要はなく、中心軸J1を中心とする略円筒状の1つのスタティックミキサ31が設けられてもよい。また、スタティックミキサ31の構造は、必ずしも流路内に混合素子が設けられるものには限定されず、例えば、混合流体が通過する流路内にスチールウールが収容されたスタティックミキサが利用されてもよい。
【0086】
上記実施の形態に係る気化装置1,1aでは、様々な種類の材料の気化が行われてよく、また、様々な種類のキャリアガスが利用されてよい。
【0087】
本体加熱部5では、気化される材料の特性等に合わせて、第1加熱部51の温度が第2加熱部52の温度よりも高くなるように温度制御が行われてもよく、第1加熱部51の温度と第2加熱部52との温度が等しくなるように温度制御が行われてもよい。
【0088】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。