(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5885566
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】樋門カラー構造体及び該構造体を使用する函体目地部の施工方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/16 20060101AFI20160301BHJP
E02B 3/10 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
E02B3/16 A
E02B3/10
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-86162(P2012-86162)
(22)【出願日】2012年4月5日
(65)【公開番号】特開2013-217034(P2013-217034A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】500174328
【氏名又は名称】中大実業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594157418
【氏名又は名称】株式会社ドーコン
(73)【特許権者】
【識別番号】512089379
【氏名又は名称】株式会社水工技研
(74)【代理人】
【識別番号】100104330
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 誠二
(72)【発明者】
【氏名】花田 眞吉
(72)【発明者】
【氏名】林 秀哉
(72)【発明者】
【氏名】浜本 成
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 義仁
(72)【発明者】
【氏名】山根 正裕
(72)【発明者】
【氏名】吉田 透
(72)【発明者】
【氏名】澤口 雄介
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 克矢
(72)【発明者】
【氏名】滝口 敏美
(72)【発明者】
【氏名】小杉 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】堀江 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 元秋
【審査官】
石井 哲
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−296269(JP,A)
【文献】
特開平04−185830(JP,A)
【文献】
特開2002−275875(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3127038(JP,U)
【文献】
特開2000−320757(JP,A)
【文献】
米国特許第04749307(US,A)
【文献】
特開昭62−268413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/16
E02B 3/10
E03F 3/00− 3/06
E03F 5/10− 5/20
E21D 10/00− 19/06
E02D 29/00− 29/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する函体の目地部の周囲を被覆するように配置されたEPSブロックと、
前記EPSブロックを被覆するように配置されたジオテキスタイルとを備え、
前記EPSブロック及び前記ジオテキスタイルがワイヤによって前記目地部に固定されることを特徴とする樋門カラー構造体。
【請求項2】
前記EPSブロックが、発泡スチロール製のブロックを含むことを特徴とする請求項1に記載された樋門カラー構造体。
【請求項3】
前記周囲が、前記目地部の上面、下面及び両側面、又は、上面及び下面のいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載された樋門カラー構造体。
【請求項4】
前記EPSブロック及び前記ジオテキスタイルの外側に、前記EPSブロックを被覆するための鋼板を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された樋門カラー構造体。
【請求項5】
樋門を形成する函体の目地部を施工する方法であって、
前記目地部が設置される箇所に、前記目地部の下面を被覆するためのジオテキスタイルを配置する工程と、
前記目地部の下面を被覆するためのEPSブロックをジオテキスタイル上に配置する工程と、
函体を施工した後、前記目地部の側面及び上面にEPSブロックを配置する工程と、
前記目地部の側面及び上面のEPSブロックを被覆するようにジオテキスタイルを配置する工程と、
前記EPSブロック及び前記ジオテキスタイルを前記ワイヤで固定する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記EPSブロックが、発泡スチロール製のブロックを含むことを特徴とする請求項5に記載された方法。
【請求項7】
前記EPSブロック及び前記ジオテキスタイルの外側に鋼板を配置する工程をさらに含むことを特徴とする請求項5又は6に記載された方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樋門を形成する函体の目地部に配置される樋門カラー構造体、及びこのような樋門カラー構造体を使用して函体の目地部を施工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
堤防を横断して設置される樋門を形成する函体は、温度応力によるクラックを防止するため、約10m毎に目地部が設置されている(
図9参照)。一方、函体の不同沈下により生ずる函体の段差や漏水を防止するため、函体の目地部にはカラーが設置されている。従来の一般的なカラーは、目地部における段差の発生(上下方向の変位)を抑制しつつ、目地部の一定の挙動(水平方向の変位)を許容するため、約10m毎に設置された函体の目地部に20mm厚の目地材を内蔵する40cm厚のコンクリートで目地部周辺を囲むように構成されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のカラーを用いた場合には、函体の端部に輪切りのクラックが発生しがちであるという不都合があった。函体の変位は、支持地盤強度や強度分布のバラツキ、作用荷重の変化、地震時挙動の違いなどの不確実性要因の組み合わせにより変化すると考えられる。その結果、函体相互の不同沈下に伴う段差や回転が発生するが、コンクリートカラーの場合、カラーによる拘束が生じ、そのため、輪切りクラックが発生すると推測される。また、従来の方法では、コンクリート施工を伴うため、カラーの規模に比較して、施工工期がかかりすぎるという不都合もあった。
【0004】
本発明は、このような状況に鑑みて開発されたものであって、函体の端部にクラックが発生するのを防止するとともに、施工工期の短縮を可能とする樋門カラー構造体、及びこのような樋門カラー構造体を使用して函体の目地部を施工する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に記載された樋門カラー構造体は、隣接する函体の目地部の周囲を被覆するように配置されたEPSブロックと、前記EPSブロックを被覆するように配置されたジオテキスタイルとを備え、前記EPSブロック及び前記ジオテキスタイルがワイヤによって前記目地部に固定されることを特徴とするものである。
【0006】
本願請求項2に記載された樋門カラー構造体は、前記請求項1の樋門カラー構造体において、前記EPSブロックが、発泡スチロール製のブロックを含むことを特徴とするものである。
【0007】
本願請求項3に記載された樋門カラー構造体は、前記請求項1又は2の樋門カラー構造体において、前記周囲が、前記目地部の上面、下面及び両側面、又は、上面及び下面のいずれかであることを特徴とするものである。
【0008】
本願請求項4に記載された樋門カラー構造体は、前記請求項1から請求項3までのうちいずれか1項に記載された樋門カラー構造体において、前記EPSブロック及び前記ジオテキスタイルの外側に、前記EPSブロックを被覆するための鋼板を更に備えることを特徴とするものである。
【0009】
本願請求項5に記載された函体の目地部を施工する方法は、前記目地部が設置される箇所に、前記目地部の下面を被覆するためのジオテキスタイルを配置する工程と、前記目地部の下面を被覆するためのEPSブロックをジオテキスタイル上に配置する工程と、函体を施工した後、前記目地部の側面及び上面にEPSブロックを配置する工程と、前記目地部の側面及び上面のEPSブロックを被覆するようにジオテキスタイルを配置する工程と、前記EPSブロック及び前記ジオテキスタイルを前記ワイヤで固定する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0010】
本願請求項6に記載された函体の目地部を施工する方法は、前記請求項5の方法において、前記EPSブロックが、発泡スチロール製のブロックを含むことを特徴とするものである。
【0011】
本願請求項7に記載された函体の目地部を施工する方法は、前記請求項5又は6の方法において、前記EPSブロック及び前記ジオテキスタイルの外側に鋼板を配置する工程をさらに含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、比較的柔軟性のあるEPSブロックによってカラー構造体を形成したことにより、カラーによる拘束力が抑制され、函体の端部におけるクラックの発生を防止することができる。また、本発明では、コンクリートカラーの施工に伴う種々の作業(型枠工、鉄筋工、コンクリート打設、脱型など)が不要になるため、施工工期を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の好ましい実施の形態に係る樋門カラー構造体を示した部分切り取り斜視図である。
【
図4】
図1の樋門カラー構造体の一部を示した拡大斜視図である。
【
図5】
図5(a)は、
図2の部分5aの拡大図、
図5(b)は、
図2の部分5bの拡大図、
図5(c)は、
図2の部分5cの拡大図、
図5(d)は、底盤用固定鋼板の斜視図である。
【
図6】EPSブロックの使用形態を示した図である。
【
図8】函体の目地部を施工する手順を示した一連の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係る樋門カラー構造体について詳細に説明する。
図1は、本発明の好ましい実施の形態に係る樋門カラー構造体を示した部分切り取り斜視図である。
図1において全体として参照符号10で示される樋門カラー構造体は、隣接する函体の目地部の周囲を被覆するように配置されたEPSブロック12を備えている。ここで、目地部の周囲とは、目地部の上面、下面、及び左右の側面を意味する。
【0015】
EPSブロック12は、狭義にはビーズ法ポリスチレンフォーム製のブロックを意味するが、本明細書では、例えば軽量盛土材として使用されているような、発泡スチロール製のブロックをも含むものとする。EPSブロック12は、目地部を完全に被覆することができる程の所要の幅、及び、容易に破損しないような所要の厚みを有している。
【0016】
なお、EPSブロック12は、所要の厚みwを有するブロックを使用してもよいし(
図6(a))、複数枚の薄板状のEPS板を重ねて所要の厚みwが得られるようにしてもよい(
図6(b))。
【0017】
樋門カラー構造体10は、EPSブロック12を被覆するように配置されたジオテキスタイル14と、EPSブロック12及びジオテキスタイル14を目地部に固定するためのワイヤ16とを備えている。
【0018】
ジオテキスタイル14をEPSブロック12とワイヤ16との間に配置することにより、ワイヤ16がEPSブロック12に食い込んでEPSブロック12を傷つけるのを防止することができる。また、EPSブロック12は、圧縮には強いが曲げや剪断力に弱いという特性を有するが、曲げや剪断力に強いジオテキスタイル14を使用することにより、EPSブロック12の弱点を補強することができる。
【0019】
なお、ジオテキスタイル14は、任意の種類のものを使用してよい。
【0020】
図5(a)は、函体の下面に配置したEPSブロック12がワイヤ16で固定されている状態を示した図である。函体の下面におけるEPSブロック12の固定には、底盤用固定鋼板17を使用する。底盤用固定鋼板17は、
図5(d)に示されるように、所定寸法の矩形の鋼板の四周を上方に折り曲げて舟型形状に形成したものであり、折り曲げ部にワイヤ固定用金具17aが取り付けられている。そして、底盤用固定鋼板17上にEPSブロック12を配置し、ワイヤ16の端部のシャックル16aをワイヤ固定用金具17aに連結することにより、EPSブロック12を固定する。このようにして、函体の下面に底盤用固定鋼板17を敷設することにより、段ずれ(せん断)によりEPSブロック12が破損することが防止される。
図5(b)は、函体の上面に配置したEPSブロック12がワイヤ16で固定されている状態を示した図であり、EPSブロック12の角部を傷つけないように、角部用固定金具18が使用されている。
図5(c)は、函体の側面に配置したEPSブロック12がワイヤ16で固定されている状態を示した図であり、ターンバックル16bを使用してワイヤ16が緊張される。なお、
図5に示したワイヤの固定形態は一例にすぎず、EPSブロック12(及びジオテキスタイル14)を堅固に固定することができるのであれば、他の形態を使用してもよい。
【0021】
次に
図8を参照して、樋門カラー構造体10を使用して、函体の目地部を施工する方法について説明する。まず、函体の目地部が設置される箇所に、函体の目地部の下面を被覆するための底盤用固定鋼板17及びジオテキスタイル14を配置(
図8(a))した後、函体の目地部の下面を被覆するためのEPSブロック12をジオテキスタイル14上に配置する(
図8(b))。次いで、函体を施工し(
図8(c))、型枠等を取り外した後、函体の目地部の側面及び上面にEPSブロック12を配置し(
図8(d))、函体の目地部の側面及び上面のEPSブロック12を被覆するようにジオテキスタイル14を配置し(
図8(e))、ワイヤ16で固定することによって目地部の施工が完了する(
図8(f))。
【0022】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0023】
たとえば、前記実施の形態では、EPSブロック12がジオテキスタイル14で被覆され、ワイヤ16で固定されているが、EPSブロック12の破損が想定される場合には、EPSブロック12の破損を防止するため、想定箇所のEPSブロック12を鋼板20で被覆するのが好ましい(
図7参照)。
【0024】
また、前記実施の形態では、函体の四周がEPSブロック12で被覆されているが、函体に生ずる主要な変位が上下方向のものであることを考慮すると、函体の上面と下面のみをEPSブロック12で被覆し、函体の側面をゴム材などで被覆するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0025】
10 樋門カラー構造体
12 EPSブロック
14 ジオテキスタイル
16 ワイヤ
16a シャックル
16b ターンバックル
17 底版用固定鋼板
18 角部用固定金具
20 鋼板