(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
テン真を中心に正回転及び逆回転の自由振動するテンプと、前記テンプにより作動した後、付勢力により再び初期位置に戻る作動レバーと、前記作動レバーの作動により1歯ずつ回転するガンギ車とを含み、
前記テンプは、
前記テンプとともに前記自由振動を行い、前記正回転時に前記作動レバーと接触することにより前記作動レバーを作動させ、前記ガンギ車を停止解除して前記ガンギ車を回転させる回転許容状態と、前記逆回転時に前記作動レバーと接触することにより変形し、再び元の位置に復帰する戻り状態とを有する片作動バネを備え、
前記片作動バネは、前記変形によりエネルギーを蓄え、前記テンプに前記エネルギーを付与することを特徴とするデテント脱進機。
前記舌片部は、前記テンプの径方向のうち前記テン真側に前記片作動バネ支持部に接続される基端部と、前記テンプの径方向外周側に前記作動レバーと接離可能な自由端部とを備え、
前記自由端部は、前記片作動バネ規制部より前記外周側に突出するように設けられることを特徴とする請求項12に記載のデテント脱進機。
前記舌片部は、前記テンプの径方向外周側に前記片作動バネ支持部に接続されるとともに前記作動レバーと接離可能な基端部と、前記テンプの径方向のうち前記テン真側に自由端部とを備え、
前記基端部は、前記片作動バネ規制部より前記外周側に突出するように設けられることを特徴とする請求項12に記載のデテント脱進機。
前記片作動バネ支持部は、前記テン真の軸方向において、前記作動レバーと異なる位置に配置されることを特徴とする請求項3、5および12の何れかに記載のデテント脱進機。
請求項1〜請求項18の何れかに記載のデテント脱進機と、動力源を有する香箱車と、前記香箱車の回転力により回転する表輪列とを備え、この表輪列の回転を前記デテント脱進機により制御することを特徴とする時計。
【背景技術】
【0002】
従来から、機械式時計の歩度を維持するための脱進機としてデテント脱進機が知られている。この種の脱進機の機構は、スプリングデテント脱進機(Spring Detent Escapement)とピボットデテント脱進機(Pivoted Detent Escapement)の2つに大別される(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
図21は、従来のスプリングデテント脱進機の一例を示す斜視図である。
同図に示すように、スプリングデテント脱進機300は、ガンギ車301と、回転軸であるテン真302を中心に自由振動するテンプ303と、デテントレバー304とを備えている。テンプ303は、ガンギ車301の歯部301aと接触可能な振り石305、およびデテントレバー304に取り付けられている片作動バネ309と接触可能な外し石306を有している。
【0004】
デテントレバー304は、この基端に設けられた復帰バネ307を介して固定されている。復帰バネ307は、デテントレバー304をガンギ車301に対して接離可能に支持していると共に、デテントレバー304を原位置に復帰するように付勢している。すなわち、デテントレバー304は、復帰バネ307の基端を支点304aとしてガンギ車301に接離可能に構成されている。
【0005】
また、デテントレバー304には、ガンギ車301の歯部301aと接触可能な止め石308が設けられている。さらに、デテントレバー304の基端側には、片作動バネ309の基端が固定されている。片作動バネ309は、この先端がデテントレバー304の先端よりも僅かに突出するようにデテントレバー304の長手方向に沿って形成されている。すなわち、片作動バネ309は、テンプ303のテン真302とデテントレバー304の支点304aとを通る直線上に沿うように形成されている。そして、片作動バネ309の先端が、テンプ303の外し石304と接触するようになっている。
【0006】
このような構成のもと、テンプ303の自由振動により外し石306が矢印CCW30方向(
図21に於ける反時計回り方向)に向かって回転すると、片作動バネ309を介してデテントレバー304が押圧される。すると、ガンギ車301の歯部301aに接触していた止め石308が歯部301aから離脱し、ガンギ車301とデテントレバー304との係合が解除される。そして、ガンギ車301が1歯分回転する。
ガンギ車301が1歯分回転する間に、デテントレバー304に復帰バネ307の付勢力が作用し、デテントレバー304が原位置に戻る。これにより、ガンギ車301の歯部301aに止め石308が再び接触する。すなわち、ガンギ車301とデテントレバー304とが係合し、ガンギ車301の回転が停止される。
【0007】
一方、テンプ303の自由振動により外し石306が逆転し、矢印CW30方向(
図21に於ける時計回り方向)に向かって回転すると、この外し石306によって片作動バネ309がデテントレバー304から離間する方向に向かって押圧される。このとき、片作動バネ309が弾性変形する一方、デテントレバー304は停止したままの状態となる。外し石306に押圧された片作動バネ309は、この片作動バネ309から外し石306が離間した後、片作動バネ309自身の復元力により原位置に戻る。
【0008】
すなわち、外し石306が矢印CCW30方向に向かって回転し、片作動バネ309を介してデテントレバー304が押圧される際、片作動バネ309は、何ら動作していないことになる。これに対し、外し石306が矢印CW30方向に向かって回転すると、片作動バネ309が弾性変形して動作することになる。
そして、この動作が繰り返し行われることにより、機械式時計の輪列が一定速度で駆動する。
【0009】
図22は、従来のピボットデテント脱進機の一例を示す斜視図である。なお、
図21のスプリングデテント脱進機300と同一態様には、同一符号を付して説明する。
同図に示すように、ピボットデテント脱進機400は、ガンギ車301と、テン真302を中心に自由振動するテンプ403と、デテントレバー404とを備えている。ここで、ピボットデテント脱進機400とスプリングデテント脱進機300との相違点は、デテントレバーを原位置に復帰させる付勢手段が異なる点にある。
【0010】
すなわち、ピボットデテント脱進機400のデテントレバー404は、回転軸410を介して回転自在に支持されており、これによってガンギ車301に対して接離可能となっている。また、デテントレバー404に設けられている復帰バネ407は、回転軸410を取り囲むように渦巻きバネで構成されており、デテントレバー404を原位置に復帰するように付勢している。
【0011】
さらに、デテントレバー404には、この長手方向に略直交し、かつ回転軸410を通る直線P100上に片作動バネ409の基端が固定されている。片作動バネ409は、デテントレバー404の長手方向に沿うように、つまり、テンプ403のテン真302とデテントレバー404の回転軸410とを通る直線上に沿うように形成されており、その先端がテンプ403の外し石306と接触するようになっている。
【0012】
このような構成のもと、テンプ403が自由振動することにより、外し石306が矢印CCW31方向(
図22に於ける反時計回り方向)に向かって回転したり、矢印CW31方向(
図22に於ける時計回り方向)に向かって回転したりすると、これに基づいて片作動バネ409が動作したり、何ら動作しなかったりする。これにより、機械式時計の輪列が一定速度で駆動する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(第一実施形態)
(機械式時計)
次に、この発明の第一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、機械式時計のムーブメントを裏蓋側からみた平面図である。
同図に示すように、機械式時計100は、ムーブメント101を備えている。ムーブメント101は、このムーブメント101の基板を構成する地板102を有している。地板102には巻真案内孔103が形成されており、ここに巻真104が回転可能に組み込まれている。
【0035】
また、ムーブメント101の裏側(
図1に於ける紙面奥側)には、オシドリ、カンヌキ、およびカンヌキ押さえを含む切換装置(不図示)が配置されている。この切換装置により、巻真104の軸方向の位置が決定するようになっている。
一方、ムーブメント101の表側(
図1に於ける紙面手前側)には、表輪列105を構成する四番車108、三番車107、二番車106、および香箱車110が配置されていると共に、表輪列105の回転を制御するデテント脱進機1が配置されている。
【0036】
香箱車110は、ゼンマイ(不図示)を有しており、巻真104を回転させると不図示のツヅミ車が回転し、さらにキチ車、小鉄車、丸穴車、および角穴車(何れも不図示)を介して前記不図示のゼンマイが巻き上げられるようになっている。そして、前記不図示のゼンマイが巻き戻される際の回転力により香箱車110が回転し、さらに二番車106が回転するように構成されている。
二番車106は、香箱車110の不図示の香箱歯車に噛合う二番カナと、二番歯車(何れも不図示)とを有している。二番車106が回転すると、三番車107が回転するように構成されている。
【0037】
三番車107は、二番車106の二番歯車に噛合う不図示の三番カナと、三番歯車(何れも不図示)とを有している。三番車107が回転すると、四番車108が回転するように構成されている。
四番車108は、三番車107の三番歯車に噛合う不図示の四番カナと、四番歯車(何れも不図示)とを有している。四番車108が回転することによりデテント脱進機1が駆動する。このデテント脱進機1が駆動することにより、四番車108が1分間に1回転するように制御されると共に、二番車106が1時間に1回転するように制御される。
【0038】
(デテント脱進機)
図2は、デテント脱進機の斜視図、
図3は、デテント脱進機の平面図、
図4は
図3に於ける振り座周辺の拡大図、
図6はテンプに組み付けられた片作動バネ座を示す斜視図である。
図2、
図3、
図4、
図6に示すように、デテント脱進機1は、四番車108が回転することにより回転するガンギ車2と、ガンギ車2の歯部2aと接触可能な止め石6を有するデテント7と、ガンギ車2の歯部2aと接触可能な振り石3、片作動バネ規制部である外し石4を備えた振り座11、舌片部51の接触面51a、51bにてデテント7と接触可能な片作動バネ24を備えた片作動バネ座50により構成されている。
そして振り座11、及び片作動バネ座50は、テン真9に取り付けられており、テンプ5と一体となり作動する。
【0039】
ガンギ車2は不図示の四番歯車に噛合されるガンギカナ8を有しており、地板102(
図1参照)と輪列受(不図示)によって回転可能に枢支されている。すなわち、輪列受にガンギカナ8の上軸部が回転可能に支持されると共に、地板102にガンギカナ8の下軸部が回転可能に支持される。また、ガンギ車2の歯部2aは、ガンギ車2の外周部に複数(例えば、第一実施形態では15個)形成されている。
【0040】
テンプ5は、回転軸であるテン真9を中心にして自由振動するものであって、テン真9の他に、テン真9と同心円上に配置されたテン輪10と、略円板状の振り座11と、不図示のヒゲゼンマイとを有している。そして、不図示のテンプ受けにテン真9の上軸部が回転可能に支持されると共に、地板102にテン真9の下軸部が回転可能に支持されることにより、地板102、およびテンプ受けに、テンプ5が回転可能に枢支される。
【0041】
振り座11には振り石3と外し石4とが設けられている。振り石3は、この断面形状が振り座11の径方向に沿って長くなるように直方体状に形成されており、断面短手方向で対向する2面のうち、ガンギ車2の歯部2aと接触する接触面3aが他の面よりも振り座11から突出するように形成されている。
外し石4は接触面4aに於いて、片作動バネ座50に設けられた片作動バネ24の舌片部51の接触面51bと接離可能になっている。
そして、外し石4は一般的に時計用ムーブメントに用いられるルビー等のセラミックスに用いられている。
【0042】
片作動バネ座50には片作動バネ座50と一体で成形された片作動バネ24が設けられている。片作動バネ24は片作動バネ座50の周囲を囲うように円弧状に湾曲した湾曲部31と、舌片部51により形成され、片作動バネ支持部56を基点に弾性変形可能となる。
片作動バネ24は、片作動バネ24の舌片部51の接触面51bが常に外し石4の接触面4aと当接可能な程度のバネ力に設定されている。
舌片部51は、片作動バネ支持部56に接続された上記湾曲部31を介してテンプ外周側に向けて折れ曲がった基端部51cと、後述する作動レバー23と接離可能な自由端部51dとを備え、自由端部51dは外し石先端部4cより僅かに突出するように設けられる。
また、舌片部51の接触面51aは後述する作動レバー23作動時に、作動レバー23先端部30の接触面30aと接触し、片作動バネ24と外し石4は、舌片部51の接触面51bと外し石4の接触面4aが接離可能になっている。そして後述する片作動バネ24作動時には、片作動バネ24は弾性変形し、舌片部51の接触面51bが作動レバー先端部30の接触面30bと接触し、外し石4接触面4aとは離間する。
片作動バネ24は、例えば、ニッケルなどの弾性材料により形成されていることが望ましい。
ここで、一体成形を行う方法として、電鋳加工により片作動バネ座50を形成したり、フォトリソグラフィーのような光学的な手法を取り入れたLIGA(Lithographie Galvanoformung Abformung)プロセスやDRIE、MIMにより片作動バネ座50を形成したりすることが可能である。
【0043】
デテント7は、地板102に固定ワッシャ12を介して固定されている。固定ワッシャ12は、大径ワッシャ12aと、小径ワッシャ12bとにより構成されており、大径ワッシャ12aを地板102側(
図2に於ける下側)に配置した状態で、各ワッシャ12a,12bによりデテント7を挟持している。そして、この状態で一対の固定ピン13a,13bを介してデテント7を固定するようになっている。
【0044】
また、固定ワッシャ12は、地板102を挟んで反対側に設けられている回転レバー14と調整ボルト15を介して連結されている。調整ボルト15は、固定ワッシャ12の径方向中央を貫通するように設けられている。回転レバー14は、デテント7の取り付け角度を調整するためのものであって、デテント7の取り付け角度を調整した後、取り外せるようになっている。
【0045】
(デテント)
図5は、デテントの平面図である。
図2、
図3、
図5に示すように、デテント7は、固定ワッシャ12の大径ワッシャ12aと小径ワッシャ12bとにより挟持されている円板状のデテント固定部21と、デテント固定部21に復帰バネ22を介して支持されている作動レバー23が一体成形されたものである。
ここで、一体成形を行う方法として、電鋳加工によりデテント7を形成したり、フォトリソグラフィーのような光学的な手法を取り入れたLIGA(Lithographie Galvanoformung Abformung)プロセスやDRIE、MIMによりデテント7を形成したりすることが可能である。
【0046】
デテント固定部21の直径は、固定ワッシャ12を構成する小径ワッシャ12bの直径と略同一に設定されている。デテント固定部21の径方向中央には、調整ボルト15を挿通可能なボルト挿通孔25が形成されている。このボルト挿通孔25を挟んで両側には、一対の固定ピン13a,13bを挿通可能な2つのピン挿通孔26a,26bが形成されている。2つのピン挿通孔26a,26bのうち、一方のピン挿通孔26bは、各部品の製作誤差を吸収できるように長円形状に形成されている。
【0047】
また、デテント固定部21の外周部には、テンプ5側(
図5に於ける上側)に凹部27が形成され、ここに復帰バネ22が立設されている。復帰バネ22は、この基端22aとテンプ5のテン真9の中心(軸心)とを結ぶ第1直線L1に沿うように板状に形成されている。
復帰バネ22も片作動バネ同様に、例えば、ニッケルなどの弾性材料により形成されていることが望ましい。
【0048】
復帰バネ22の先端に設けられている作動レバー23は、第1直線L1上に沿う直方体状のアーム部28と、このアーム部28の先端側に配置され、アーム部28よりも幅広の止め石取付部29と、止め石取付部29よりも先端側に配置され、アーム部28よりも細い直方体状の先端部を斜めに落とした片作動バネ24の舌片部51と接触する接触面30bを設けた先端部30とが一体成形されている。
そしてデテント固定部21を除いたデテント7の重心位置を、従来技術に対して復帰バネ22の中心上を通過する第1直線L1上に極めて近い位置に設定しており、復帰バネ22に捻れが生じにくい構成となっている。
【0049】
止め石取付部29には、ガンギ車2の歯部2aと接触可能な止め石6が設けられている。止め石6は、この断面形状が作動レバー23の先端部30に向かうに従って漸次幅広となるように略台形状に形成されている。そして、止め石6の上面(
図3、
図5に於ける上側の面)がガンギ車2の歯部2aと接触する接触面6aに設定されている。
先端部30は、この中心が第1直線L1からガンギ車2とは反対側に向かって僅かにオフセットするように配置されている。
【0050】
ここで、第1直線L1上には、デテント固定部21のボルト挿通孔25の中心P1も位置しており、この中心P1、復帰バネ22、作動レバー23、およびテン真9が同一直線上に設けられた状態になっている。このように構成されたデテント7の作動レバー23は、復帰バネ22の基端22aを支点23aとし、この支点23aを中心にしてガンギ車2に対して接離可能になっている。すなわち、復帰バネ22が基端22aを中心にしてしなるように弾性変形することにより、作動レバー23がガンギ車2に対して接離方向に沿って変位する。
【0051】
復帰バネ22は、作動レバー23を原位置に復帰するように付勢している。より具体的には、
図3、
図5に図示した状態のように、復帰バネ22は、作動レバー23のアーム部28の長手方向が第1直線L1上となる位置に復帰するように付勢している。
【0052】
また、復帰バネ22は、デテント固定部21の凹部27に形成されていることから、デテント固定部21と作動レバー23との間の離間距離K1を大きく設定することなく十分な長さを確保することができる。これにより、復帰バネ22は、作動レバー23をガンギ車2の接離方向に沿って十分変位させることができるようになっている。
【0053】
ここで、凹部27の幅は、作動レバー23をガンギ車2に対して接離方向に沿う変位を許容可能に設定されている。また、デテント固定部21を挟持する大径ワッシャ12a、および小径ワッシャ12bには、デテント固定部21の凹部27に対応する部位に、それぞれ凹部16,17が形成されている。このため、各ワッシャ12a,12bによりデテント7を固定した状態であっても、作動レバー23をガンギ車2の接離方向に沿って十分変位させることができる。
【0054】
作動レバー先端部30の接触部30aは、舌片部51の接触面51aと接触した瞬間において、舌片部51の接触面51aに沿うように形成されている。
さらに、外し石4の断面形状が台形状のように振り座11の径方向外側に向かうに従って先細りになっており、テンプ5の自由振動時に於ける外し石先端4cの軌跡が作動レバー23の先端部30に接触不能な位置となるように、且つ、片作動バネ24の舌片部51に接触可能な位置となるように配置される。
【0055】
このように外し石4やデテント7を構成することにより、テンプ5の自由振動に伴って作動レバー23をガンギ車2から離間させたり、接近させたりすることができる(詳細は後述する)。
ここで、地板102には、作動レバー23のガンギ車2に接近する方向に向かう変位を規制するストッパ40が設けられている。ストッパ40は、ストッパアーム41とストッパアーム41の先端に立設されたストッパピン42とを有している。そして、ストッパアーム41の基端側が、固定ピン43を介して地板102に固定されている。
【0056】
ストッパピン42は、作動レバー23のアーム部28に、ガンギ車2側から当接するようになっている。これにより、作動レバー23のガンギ車2に接近する方向に向かう変位が規制される。
また、ストッパアーム41は、固定ピン43を中心にして回転、及びスライド可能に設けられており、これによってストッパピン42の位置が調整できるようになっている。このストッパピン42の位置を調整することにより、作動レバー23の移動規制位置が、ガンギ車2の歯部2aに止め石6が接触可能、かつアーム部28の長手方向が第1直線L1上となる位置に設定される。
【0057】
(デテント脱進機の動作)
次に、
図3、
図7〜
図9に基づいて、デテント脱進機1の動作について説明する。
図7〜
図9は、デテント脱進機の動作説明図である。
図3に示すように、デテント7の作動レバー23が第1直線L1に沿う位置に存在している状態では、ガンギ車2の歯部2aと作動レバー23に設けられている止め石6の接触面6aとが接触し、両者2,6が係合した状態になっている。
ここで、ガンギ車2は表輪列105より回転力が付与されているが、止め石6と係合している状態にあっては、ガンギ車2が停止した状態になっている。
【0058】
この状態から、
図7に示すように、テンプ5が自由振動することにより、振り座11が矢印CCW1方向(
図7に於ける反時計回り方向)に向かって回転すると、振り座11に備わる外し石4の接触面4aで当接する舌片部51の接触面51aが、作動レバー先端部30の接触面30aと当接する。
そして片作動バネ規制部である外し石4によって弾性変形を規制された片作動バネ24の舌片部51を介して作動レバー23が押圧され、ガンギ車2から離間する方向に向かって変位する(
図7に於ける矢印Y1参照)。
【0059】
このとき、復帰バネ22がしなるように弾性変形することにより、作動レバー23が変位するが、これに対し、片作動バネ24は外し石4により弾性変形を規制されているため殆ど弾性変形しない。
【0060】
作動レバー23がガンギ車2から離間する方向に向かって変位することにより、これに設けられている止め石6がガンギ車2の歯部2aから離脱し、両者2,6の係合が解除される。これにより、ガンギ車2が矢印CW1方向(
図7に於ける時計回り方向)に向かって回転する。
また、振り座11が矢印CCW1方向に向かって回転することにより、ガンギ車2が矢印CW1方向に向かって回転し始めるのとほぼ同時に、ガンギ車2の歯部2aに振り石3の接触面3aが接触する(
図7に於ける2点鎖線参照)。そして、ガンギ車2の回転力が振り石3を介してテンプ5に伝達される。このとき、テンプ5は、矢印CCW1方向に向かって回転力が付与される。
【0061】
図8に示すように、振り座11が矢印CCW1方向(
図8に於ける反時計回り方向)に向かって所定角度回転すると、作動レバー先端30の接触面30aから、片作動バネ24の舌片部51が離間する。すると、復帰バネ22の復元力により、作動レバー23がガンギ車2に接近する方向(
図8に於ける矢印Y2参照)に向かって変位する。このとき、作動レバー23の変位がストッパ40によって規制され、作動レバー23が原位置に戻る。
【0062】
作動レバー23が原位置に戻ることにより、止め石6の接触面6aに回転するガンギ車2の歯部2aが当接し、再びガンギ車2と止め石6とが係合する。これにより、ガンギ車2の回転が停止される。ここで、ガンギ車2と止め石6との係合が解除されてから再び係合するまでの間に、ガンギ車2は1歯分だけ回転する。
一方、ガンギ車2によって矢印CCW1方向に向かう回転力が付与されたテンプ5は、このテンプ5に設けられているヒゲゼンマイが巻き上げられる。そして、ヒゲゼンマイが所定量巻き上げられると、ヒゲゼンマイの復元力とテンプ5の回転力とが逆転し、振り座11の回転方向が矢印CW2方向(
図8に於ける時計回り方向)に転じる。
【0063】
図9に示すように、振り座11が矢印CW2方向に向かって回転すると、舌片部51の接触面51bが作動レバー先端部30の接触面30bに接触する。そして、さらに振り座11が回転することにより、舌片部51の接触面51aと外し石4の接触面4aが離間し、舌片部51が外し石4から離間する方向、つまり、ガンギ車と逆方向(矢印Y3参照)に向かって押圧される。すると、片作動バネ24は、片作動バネ座50を包み込むように弾性変形する。
【0064】
片作動バネ24が弾性変形をした状態で、舌片部51の接触面51bの先端が作動レバー先端部30の接触面30b上を摺動しながら、テンプ5は保有する回転エネルギーにより矢印CW2方向に回転を続ける。
【0065】
図9に示すように、振り座11がさらに矢印CW2方向に向かって回転し、所定角度に達すると、片作動バネ24の舌片部51と作動レバー先端部30の接触面30bが離間する。すると、片作動バネ24の復元力により、舌片部51が外し石4側に向かって変位し(
図9に於ける矢印Y4参照)、再び元の位置に戻る。
そして片作動バネ24が元の位置に戻り、外し石4の接触面4aと舌片部51の接触面51bが当接する瞬間、片作動バネの復元力によりテンプ5はテンプ5の回転方向(
図9に於ける矢印CW2参照)に回転力が付与される。
【0066】
一方、振り座11が矢印CW2方向に向かって回転している間、テンプ5に設けられているヒゲゼンマイが巻き戻される。そして、ヒゲゼンマイが所定量巻き戻されると、ヒゲゼンマイの復元力とテンプ5の回転力とが逆転し、再び振り座11の回転方向が矢印CCW1方向(
図9に於ける反時計回り方向)に転じる。
これを繰り返すことにより、テンプ5がテン真9を中心にして自由振動すると共に、デテント7が
図7〜
図9に示す状態を繰り返す。このため、ガンギ車2が常に一定速度で回転する。
【0067】
上述の第一実施形態によれば、振り座11がさらに矢印CW2方向に向かって回転し、所定角度に達すると、片作動バネ24の舌片部51と作動レバー先端部30の接触面30bが離間した後、片作動バネ24の復元力により、舌片部51が外し石4側に向かって変位し(
図9に於ける矢印Y4参照)元の位置に戻り、外し石4の接触面4aと舌片部51の接触面51bが当接する瞬間、片作動バネの復元力によりテンプ5はテンプ5の回転方向(
図9に於ける矢印CW2参照)に回転力が付与される。このように、片作動バネ24が変形した時に蓄えられる弾性エネルギーをテンプ5に付与することが出来るため、エネルギー伝達効率に優れたデテント脱進機が実現できる。
そしてこのデテント脱進機を搭載することにより、エネルギー伝達効率が向上した時計を提供することができる。
【0068】
なお、本発明は上述の第一実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の第一実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の第一実施形態では、電鋳加工やLIGAプロセスにより、デテント7、及び片作動バネ座50を一体成形する場合について説明したが、これに限られるものではなく、樹脂成形としてもよい。また、復帰バネ22や片作動バネ24は、例えば、ニッケルなどの弾性材料により形成されていることが望ましいと説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、例えば、金属製の板バネや線バネにより形成することも可能である。
そして、デテント固定部21や作動レバー23を樹脂成形とし、復帰バネ22や片作動バネ24を金属製の板バネや線バネとする場合、デテント固定部21や作動レバー23に、復帰バネ22、および片作動バネ24をインサート成型する構成としてもよい。
【0069】
また、上述の第一実施形態のデテント7についてはデテント固定部21、復帰バネ22、作動レバー23を一体成形した場合について説明した。
しかしながら、これに限られるものではなく、少なくとも復帰バネ22、作動レバー23が一体成形されていれば良い。
これにより、作動レバー23に対する復帰バネ22の取り付け位置を調整する必要がなくなるので、組み立て誤差による完成品の精度のばらつきを抑えることができる。
【0070】
さらに、上述の第一実施形態のデテント7についてはデテント固定部21、復帰バネ22、作動レバー23を、片作動バネ座50については片作動バネ24、片作動バネ座50を一体成形した場合について説明した。
しかしながら、これに限られるものではなく、必要に応じて、デテント固定部21、復帰バネ22、作動レバー23を別の材料により作製し一体化しても良い。
同様に、片作動バネ座50についても、片作動バネ24、片作動バネ座50を別の材料により作製し一体化しても良い。
これにより、例えば復帰バネの機械的特性のみを変更する必要な構成に於いても、本発明の構成を適用することが可能となる。
【0071】
さらに、上述の第一実施形態では、デテント固定部21に復帰バネ22を介して作動レバー23が支持されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、所謂ピボットデテント脱進機のように、不図示の回転軸を介して作動レバー23を回転自在に支持し、これによってガンギ車2に対して作動レバー23を接離可能に構成してもよい。この場合、復帰バネ22に代わって不図示の回転軸を取り囲むように渦巻きバネ(不図示)や板バネ(例えば、特許文献4の復帰バネ)を設ける。そしてこれらのバネにより、作動レバー23を原位置に復帰するように付勢すればよい。
【0072】
そして、上述の第一実施形態では、デテント固定部21の中心P1、復帰バネ22、作動レバー23、およびテン真9が、全て復帰バネ22の基端22a、つまり作動レバー23の支点23aとテンプ5のテン真9の中心とを結ぶ第1直線L1上に形成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、作動レバー23の止め石6がガンギ車2の歯部2aに対して接離可能に構成されていればよい。
ここで、第1直線L1は、作動レバー23の支点23aとテンプ5のテン真9の中心とを通る直線であればよい。
【0073】
また、上述の第一実施形態では、外し石4は、この断面形状が台形状のように振り座11の径方向外側に向かうに従って先細りになっている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、外し石4は、断面円形状や楕円形状、または断面四角形状等、片作動バネ24の舌片部51に接触可能な形状であればよい。
そして、上述の第一実施形態では外し石4は、一般的に時計用ムーブメントに用いられているルビー等のセラミックスについて説明しているが、金属製のピンによって構成されることによって、外し石4が作動レバー先端部30と接触する時の耐衝撃性向上さたり、耐衝撃性、耐摩耗性、摺動性、保油性等を向上させるための表面処理を施したピンを用いて、外し石4の基本性能を向上させたりしても良い。
【0074】
さらに、上述の第一実施形態では、片作動バネ24を備える前記片作動バネ座50の片作動バネ支持部56が、作動レバー23作動時にテン真9の回転中心と作動レバー23の死点23aとを通る第1直線L1に対して、テンプ5によって前記作動レバー23がガンギ車2から離間する方向(
図7に於ける矢印Y1方向)に配置され、片作動バネ24が片作動バネ座50の周囲を囲むように引き回された湾曲部23と外し石4と当接する舌片部51により構成される場合について説明した。
しかしながら、これに限るものではなく、テンプ5により作動レバー23を作動させる時に、外し石4を例とした片作動バネ規制部と作動レバー先端部30の間に少なくとも片作動バネ24の一部が介在し、テンプ5により作動レバー23がガンギ車2から離間する方向(
図7に於ける矢印Y1方向)に作動することが可能なように、片作動バネ24は形成されていれば良い。
【0075】
(第二実施形態)
(デテント脱進機)
図10、
図11に基づいて、第二実施形態について説明する。なお、以下の図面において、上述の実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する。
図10は、第二実施形態に於けるデテント脱進機の平面図である。また、
図11は
図10に於ける振り座111周辺の拡大図である。
【0076】
図10、及び
図11に示すように、第二実施形態に於ける片作動バネ座150に設けられている片作動バネ124は、上述の第一実施形態の片作動バネ24と同様に、片作動バネ座150の周囲を囲うように円弧状に湾曲した湾曲部131と、テンプ5の回転中心を基準として外し石84の外側を通過し、湾曲部131から作動レバー先端部30に向けて伸びる直線部32と、直線部32がテンプ回転中心側に向けて折れ曲がり、接触面151bにて外し石84の接触面84aと当接するよう設けられた舌片部151により形成されている。また、舌片部151は、片作動バネ支持部56に接続された上記湾曲部131及び直線部32を介してテンプ回転中心側に向けて折れ曲がった基端部151dと、作動レバー23と接触することにより外し石84の接触面84aに接離可能な自由端部151eとを備え、基端部151dは外し石先端部より僅かに突出するように設けられる。
そして、片作動バネ124の長さは、テンプ5の回転中心を基準に外し石84の外側から回り込むよう形成されるため、第一実施形態に於ける片作動バネ24より長く設定されている。
【0077】
(第二実施形態のデテント脱進機の動作)
次に、
図10〜
図14に基づいて、第二実施形態のデテント脱進機の動作について説明する。
図12〜
図14は、第二実施形態に於けるデテント脱進機の動作説明図である。
図10、
図11に示すように、デテント7の作動レバー23が第1直線L1に沿う位置に存在している状態では、ガンギ車2の歯部2aと作動レバー23に設けられている止め石6の接触面6aとが接触し、両者2,6が係合した状態になっている。
ここで、ガンギ車2は表輪列105より回転力が付与されているが、止め石6と係合している状態にあっては、ガンギ車2が停止した状態になっている。
【0078】
この状態から、
図12に示すように、テンプ5が自由振動することにより、振り座111が矢印CCW1方向(
図12に於ける反時計回り方向)に向かって回転すると、振り座111に備わる外し石84の接触面84aで当接する片作動バネ舌片部151の接触面151aが、作動レバー先端部30の接触面30aと当接する。
そして片作動バネ規制部である外し石84によって弾性変形を規制された片作動バネ124の舌片部151を介して作動レバー23が押圧され、ガンギ車2から離間する方向に向かって変位する(
図12に於ける矢印Y1参照)。
【0079】
このとき、復帰バネ22がしなるように弾性変形することにより、作動レバー23が変位するが、これに対し、片作動バネ124は外し石84により弾性変形を規制されているため殆ど弾性変形しない。
【0080】
作動レバー23がガンギ車2から離間する方向に向かって変位することにより、これに設けられている止め石6がガンギ車2の歯部2aから離脱し、両者2,6の係合が解除される。これにより、ガンギ車2が矢印CW1方向(
図12に於ける時計回り方向)に向かって回転する。
また、振り座111が矢印CCW1方向に向かって回転することにより、ガンギ車2が矢印CW1方向に向かって回転し始めるのとほぼ同時に、ガンギ車2の歯部2aに振り石3の接触面3aが接触する(
図12に於ける2点鎖線参照)。そして、ガンギ車2の回転力が振り石3を介してテンプ5に伝達される。このとき、テンプ5は、矢印CCW1方向に向かって回転力が付与される。
【0081】
図13に示すように、振り座111が矢印CCW1方向(
図13に於ける反時計回り方向)に向かって所定角度回転すると、作動レバー先端30の接触面30aから、片作動バネ124の舌片部151が離間する。すると、復帰バネ22の復元力により、作動レバー23がガンギ車2に接近する方向(
図13に於ける矢印Y2参照)に向かって変位する。このとき、作動レバー23の変位がストッパ40によって規制され、作動レバー23が原位置に戻る。
【0082】
作動レバー23が原位置に戻ることにより、止め石6の接触面6aに回転するガンギ車2の歯部2aが当接し、再びガンギ車2と止め石6とが係合する。これにより、ガンギ車2の回転が停止される。ここで、ガンギ車2と止め石6との係合が解除されてから再び係合するまでの間に、ガンギ車2は1歯分だけ回転する。
一方、ガンギ車2によって矢印CCW1方向に向かう回転力が付与されたテンプ5は、このテンプ5に設けられているヒゲゼンマイが巻き上げられる。そして、ヒゲゼンマイが所定量巻き上げられると、ヒゲゼンマイの復元力とテンプ5の回転力とが逆転し、振り座11の回転方向が矢印CW2方向(
図13に於ける時計回り方向)に転じる。
【0083】
図14に示すように、振り座111が矢印CW2方向に向かって回転すると、片作動バネ舌片部151の接触面151cが作動レバー先端部30の接触面30bに接触する。そして、さらに振り座111が回転することにより、片作動バネ舌片部151の接触面151bと外し石84の接触面84aが離間し、片作動バネ舌片部151が外し石84から離間する方向、つまり、ガンギ車と逆方向(
図14に於ける矢印Y3参照)に向かって押圧される。すると、片作動バネ124は、片作動バネ座150を包み込むように弾性変形する。
【0084】
片作動バネ124が弾性変形をした状態で、片作動バネ124の直線部32の接触面151cの先端が作動レバー先端部30の接触面30b上を摺動しながら、テンプ5は保有する回転エネルギーにより矢印CW2方向に回転を続ける。
この間、外し石84と片作動バネ124は接触しないようになっている。
【0085】
図14に示すように、振り座111がさらに矢印CW2方向に向かって回転し、所定角度に達すると、片作動バネ124の直線部32の接触面151cと作動レバー先端部30の接触面30bが離間する。すると、片作動バネ124の復元力により、舌片部151が外し石84側に向かって変位し(
図14に於ける矢印Y4参照)、元の位置に戻る。
そして片作動バネ124が元の位置に戻り、外し石84の接触面84aと舌片部151の接触面151bが当接する瞬間、片作動バネの復元力によりテンプ5はテンプ5の回転方向(
図9に於ける矢印CW2参照)に回転力が付与される。
【0086】
一方、振り座111が矢印CW2方向に向かって回転している間、テンプ5に設けられているヒゲゼンマイが巻き戻される。そして、ヒゲゼンマイが所定量巻き戻されると、ヒゲゼンマイの復元力とテンプ5の回転力とが逆転し、再び振り座111の回転方向が矢印CCW1方向(
図14に於ける反時計回り方向)に転じる。
これを繰り返すことにより、テンプ5がテン真9を中心にして自由振動すると共に、デテント7が
図12〜
図14に示す状態を繰り返す。このため、ガンギ車2が常に一定速度で回転する。
【0087】
上述の第二実施形態によれば、片作動バネ124は第一実施形態に於ける片作動バネ24に対して長いバネで形成されているため、第一実施形態に於ける片作動バネ24作動時よりしなり易くなり、テンプのエネルギーロスを低減することが出来る。
【0088】
(第三実施形態)
(デテント脱進機)
図15に基づいて、第三実施形態について説明する。なお、以下の図面において、上述の実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する。
図15は、第三実施形態に於けるデテント脱進機の平面図である。
【0089】
図15に示すように、第三実施形態に於ける片作動バネ座250には、第二実施形態に於ける片作動バネ座150に対して、片作動バネ座250の同一平面状に片作動バネ124の舌片部151の接触面151bと当接するように片作動バネ規制部である片作動バネ規制突起部53が設けられている。
片作動バネ座250は、片作動バネ規制突起部53と舌片部151の間に僅かにクリアランスが設けられ一体成形される。
一体成形後に片作動バネ支持部56、及び湾曲部124を塑性変形させ、片作動バネ規制突起部53の接触面53aと舌片部151の接触面151bは当接するように調整をする。
【0090】
(第三実施形態のデテント脱進機の動作)
第三実施形態に於けるデテント脱進機7の動作は、第二実施形態に於ける片作動バネ座150、外し石84、外し石84の接触面84aを、それぞれ片作動バネ座250、片作動バネ規制突起部53、片作動バネ規制突起部53の接触面53aに変更し、第二実施形態と同様の動作となる。
【0091】
上述の第三実施形態により、前述の第一実施形態、及び第二実施形態に対して部品点数を削減でき、且つ、前述の第二実施形態と同様の効果を奏すことが出来る。
【0092】
(第四実施形態)
(デテント脱進機)
図16に基づいて、第四実施形態について説明する。なお、以下の図面において、上述の実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する。
図16は、第四実施形態に於けるデテント脱進機の平面図である。
【0093】
図16に示すように、第四実施形態に於ける片作動バネ座350には、第二実施形態に於ける片作動バネ座150に対して、片作動バネ座350の重心位置を、平面視でテンプ5の重心位置と合わさるように重心補正を施すべく重心補正錘55が設けられている。
【0094】
(第四実施形態のデテント脱進機の動作)
第四実施形態に於けるデテント脱進機の動作は、第二実施形態に於ける片作動バネ座150を、片作動バネ座350に変更し、第二実施形態と同様の動作となる。
【0095】
上述の第四実施形態によれば、片作動バネ座350の重心位置をテンプ5回転中心と一致させ、テンプ5の片重りによる縦姿勢差の低減を図ることが出来、且つ、前述の第二実施形態と同様の効果を奏すことが出来る。
【0096】
(第五実施形態)
(デテント脱進機)
図17に基づいて、第五実施形態について説明する。なお、以下の図面において、上述の実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する。
図17は、第五実施形態に於けるデテント脱進機の平面図である。
【0097】
図17に示すように、第五実施形態に於ける片作動バネ座450には、第二実施形態に於ける片作動バネ座150に対して、片作動バネ座450の重心位置を、平面視でテンプ5の重心位置と合わさるように重心補正を施すべく重心補正孔57が設けられている。
【0098】
(第五実施形態のデテント脱進機の動作)
第五実施形態に於けるデテント脱進機の動作は、第二実施形態に於ける片作動バネ座150を、片作動バネ座450に変更し、第二実施形態と同様の動作となる。
【0099】
上述の第五実施形態によれば、片作動バネ座450の重心位置をテンプ5回転中心と一致させ、テンプ5の片重りによる縦姿勢差の低減を図ることが出来、且つ、前述の第二実施形態と同様の効果を奏すことが出来る。
【0100】
(第六実施形態)
(デテント脱進機)
図18に基づいて、第六実施形態について説明する。なお、以下の図面において、上述の実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する。
図18は、第六実施形態に於けるデテント脱進機の振り座周辺の拡大図である。
【0101】
第六実施形態は、第一実施形態に対して片作動バネ座を廃し、
図18に示すように、片作動バネ224は片作動バネ支持部56に於いて片作動バネ規制部である外し石4に連接され、略L字形状に形成されており、片作動バネ支持部56を基点に弾性変形可能になっている。
そして、第一実施形態と同様に片作動バネ224には接触面51bが常に外し石4の接触面4aと当接可能な程度のバネ力に設定されており、舌片部51の先端は外し石4先端部4cより僅かに突出するように設けられる。
また、第一実施形態と同様に舌片部51の接触面51aは作動レバー23作動時に、作動レバー23先端部30の接触面30aと接触し、片作動バネ224と外し石4は、舌片部51の接触面51bと外し石4の接触面4aが接離可能になっている。そして片作動バネ224作動時には、片作動バネ224は弾性変形し、舌片部51の接触面51bが作動レバー先端部30の接触面30bと接触し、外し石4接触面4aとは離間する。
【0102】
(第六実施形態のデテント脱進機の動作)
第六実施形態に於けるデテント脱進機の動作は、第一実施形態に於ける片作動バネ24を、片作動バネ224に変更し、第一実施形態と同様の動作となる。
【0103】
上述の第六実施形態によれば、前述の第一実施形態、及び第二実施形態に対して部品点数を削減し、テンプ5の軽量化を図り、且つ、前述の第一実施形態と同様の効果を奏すことが出来る。
【0104】
(第七実施形態)
(デテント脱進機)
図19に基づいて、第七実施形態について説明する。なお、以下の図面において、上述の実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する。
図19は、第七実施形態に於けるデテント脱進機の振り座周辺の拡大図である。
【0105】
第七実施形態は、第一実施形態に対して片作動バネ座を廃し、
図19に示すように、片作動バネ24は片作動バネ支持部56に於いて片作動バネ支持ピン59に連接され、片作動バネ支持ピン58を介して振り座411に備え付けられる。
【0106】
(第七実施形態のデテント脱進機の動作)
第七実施形態に於けるデテント脱進機の動作は、第一実施形態に於ける片作動バネ座50を片作動バネ支持ピン59に変更し、第一実施形態と同様の動作となる。
【0107】
上述の第七実施形態によれば、前述の第一実施形態に対して、テンプ5の軽量化を図る事ができ、且つ、前述の第一実施形態と同様の効果を奏すことが出来る。
【0108】
(第八実施形態)
(デテント脱進機)
図20に基づいて、第八実施形態について説明する。なお、以下の図面において、上述の実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する。
図20は、第八実施形態に於けるデテント脱進機の振り座周辺の拡大図である。
【0109】
第八実施形態は、第一実施形態に対して片作動バネ24の舌片部51に、片作動バネ24が作動した後、元の位置に戻る時に、片作動バネ24の舌片部51が外し石4に与える運動エネルギーを最大化するために、舌片部51に補正錘58を設けている。
【0110】
(第八実施形態のデテント脱進機の動作)
第八実施形態に於けるデテント脱進機の動作は、第一実施形態と同様の動作となる。
【0111】
上述の第八実施形態によれば、片作動バネが元の位置に戻る時に保有する運動エネルギーを最大化するよう補正錘58を設定することにより、片作動バネからテンプに効率的にエネルギーを付与する事ができ、且つ、前述の第一実施形態と同様の効果を奏すことが出来る。
【0112】
(第九実施形態)
図23、
図24、
図25に基づいて、第九実施形態について説明する。
図23は、デテント脱進機の作動レバー、テンプの振り座、およびガンギとの位置関係を示す平面図であり、
図24は、その斜視図であり、
図25は、
図23の平面図における振り座部分を拡大した図である。上述の実施形態と同様の構成や効果については説明を省略する。
【0113】
本実施形態においては、振り座511に対して片作動バネ支持ピン159により片作動バネ324の一端が固定され、他端の舌片部251が外し石4の接触面4aに係合している。片作動バネ324の一端と他端との間には湾曲部231が形成されている。片作動バネ324の湾曲部231が内接するテン真9を中心とする円の半径R2は、作動レバー7の片作動バネ324との接触部251aが位置する半径R1以上の部分を有する。また、片作動バネ支持ピン159が位置する半径R3は、半径R1以上とすることができる。つまり、テン真9の軸方向から見る平面視において、片作動バネ支持ピン159と湾曲部231を含む片作動バネ324は、振り座511、即ちテンプ5の回転時に、作動レバー7と重なる位置に形成される。なお、
図25における一点鎖線の円は、半径R1、R2、R3を有する円周を示している。ここで、
図24から分かるように、テン真9の軸に直交する方向から見て、片作動バネ324は、外し石4に係合する舌片部251を除く部分である湾曲部231と片作動バネ支持ピン159とが、作動レバー7と振り座511との間に配置されている。よって、振り座511、即ちテンプ5の回転時においても、片作動バネ324は、作動レバー7と接触することはない。つまり、片作動バネ324は、テン真9の軸方向において、外し石4に係合する舌片部251は作動レバー先端部30と接触する高さ位置に形成され、外し石4に係合する舌片部251を除く部分である湾曲部231と片作動バネ支持ピン159とは、作動レバー7と接触する位置から偏倚した位置に形成される形状となっている。換言すれば、片作動バネ324は、一端が片作動バネ支持ピン159に固定され、他端に向って湾曲部231が湾曲しながら振り座511の表面に沿って延び、他端の舌片部251の外し石4に係合する部位は、振り座511から離れる方向に突出して形成されている。
【0114】
ここで、片作動バネ324がテンプ5の回転に対して生じさせるエネルギー損失は、作動レバー7に係合することで片作動バネ324の湾曲部231がたわむ際の片作動バネ324の支点である振り座511が受ける回転損失と、片作動バネ324と作動レバー7との摺動抵抗による回転損失とによる。本実施形態においては、上述の実施形態に比べ、このような回転損失を更に補填することができるようになる。つまり、上述の実施形態においては、片作動バネ324が外し石4の接触面4a、即ち、片作動バネ規制部に与える衝撃によりテンプ5に回転トルクを添加する構成としているが、本実施形態においては、片作動バネ規制部である外し石4に与える衝撃から得られるエネルギー補填効率を更に高めることができる。まず、上述の回転損失を低減するには片作動バネ324のバネ定数を小さくする必要がある。バネ定数を小さくするためには、バネの巻き数を多くする等の対策が考えられるが、片作動バネ324が配置されるテンプ5の振り座511は狭小であり、そのような巻き数の多いバネを配置する空間的な余裕がない。よって、本実施形態においては、片作動バネ324の湾曲部231をもつ本実施形態のような板バネを採用している。一方、片作動バネ324が支持される片作動バネ支持部156に連結される片作動バネ支持ピン159は振り座511に固定されるが、その固定位置は作動レバーと干渉しない位置に設けなければならず、テン真9に近い内径側とする必要がある。このような位置で支持される片作動バネ324では、湾曲部231の曲率が大きくなってしまい、そのバネ定数を小さくすることが困難となる。そこで、本実施形態では、片作動バネ支持部156を、テン真9の軸方向に偏倚させて配置している。つまり、作動レバー7のテン真軸方向の位置に対して片作動バネ支持部156をオフセットさせることで、テンプ5が回転しても、作動レバー7と片作動バネ支持部156とが接触することがないので、作動レバーとの干渉を考慮することなく、片作動バネ支持部156を振り座511上に設置できるようになる。この構成により、狭小な振り座上においてもバネ定数を小さく設定することが可能となり、片作動バネのバネ定数を自由に設定することができる。
【0115】
このような構成により、平面視において作動レバー7の軌跡と重複する位置に湾曲部231および片作動バネ支持ピン159の少なくとも一方を配置し、バネ定数を小さくすることで、エネルギーの損失分を更に低減することができる。一方、その位置から若干内径側において片作動バネ支持ピン159を固定することにより、片作動バネ324戻り時の衝撃力を大きくすることができる。本実施形態により、これら両者の調整幅を大きく確保することが可能となる。よって、エネルギー損失を効率よく補填することができるようになる。
【0116】
(第十実施形態)
図26、
図27に基づいて、第十実施形態について説明する。
図25は、デテント脱進機の作動レバー7、テンプ5の振り座11、およびガンギ車2との位置関係を示す平面図であり、
図27は、片作動バネ424がテン真9に固定されている、振り座11付近を拡大した拡大斜視図である。上述の実施形態と同様の構成や効果については説明を省略する。
【0117】
本実施形態は、外し石184に係合する片作動バネ424の舌片部が、外し石184を取り囲むように形成される環状部351を備えている点が上述の実施形態と異なる。
【0118】
本構成により、舌片部が外し石184に対してテン真9の軸方向にずれることで、片作動バネ424と振り座11との係合が不意に解除されてしまう事態を防止することができるようになる。よって、片作動バネ424がテンプ5に対して常にエネルギー伝達可能な位置を維持することができるようになり、片作動バネ424の復元力を更に有効に利用することができるようになる。
【0119】
そして上述の実施形態はいずれも、動力源がゼンマイ(不図示)を有した香箱車とした機械式時計について説明をした。
しかしながら、これに限るものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、動力源を変更した時計全般に適応できるものである。