(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5885710
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】複合切刃インサート及びその作成方法
(51)【国際特許分類】
B23P 15/28 20060101AFI20160301BHJP
B23B 51/00 20060101ALI20160301BHJP
B23C 5/10 20060101ALI20160301BHJP
B23C 5/16 20060101ALI20160301BHJP
B23P 15/32 20060101ALI20160301BHJP
B23P 15/34 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
B23P15/28 Z
B23B51/00 F
B23B51/00 M
B23C5/10 B
B23C5/16
B23P15/32
B23P15/34
【請求項の数】33
【外国語出願】
【全頁数】63
(21)【出願番号】特願2013-168809(P2013-168809)
(22)【出願日】2013年8月15日
(62)【分割の表示】特願2008-527130(P2008-527130)の分割
【原出願日】2006年8月17日
(65)【公開番号】特開2014-12334(P2014-12334A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2013年9月6日
【審判番号】不服2015-13420(P2015-13420/J1)
【審判請求日】2015年7月15日
(31)【優先権主張番号】11/206,368
(32)【優先日】2005年8月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399031078
【氏名又は名称】ケンナメタル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Kennametal Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ファン,エックス・ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ウィルズ,デイヴィッド・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】マーチャンダニ,プラカシュ・ケイ
【合議体】
【審判長】
西村 泰英
【審判官】
栗田 雅弘
【審判官】
久保 克彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開平8−206902(JP,A)
【文献】
特開昭58−199841(JP,A)
【文献】
特表平10−511740(JP,A)
【文献】
特開昭57−16106(JP,A)
【文献】
米国特許第5543235(US,A)
【文献】
特開昭64−64701(JP,A)
【文献】
特開平5−177423(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第3347501(DE,A1)
【文献】
英国特許出願公告第634743(GB,A)
【文献】
英国特許出願公告第659765(GB,A)
【文献】
独国特許出願公開第3208282(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B51/00-51/14
B24B27/00-29/34
B22F1/00-8/00
C22F1/04-1/05
B23C5/10,5/16
B23P15/28,15/32,15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールエンドミルインサート及びスペードドリルインサートから選択された複合物品を製造する方法であり、
第一の金属粉末グレードを、第一のフィーダからダイ内のキャビティの中心領域を規定しているダイ内のキャビティの第一の部分内へ導入し、第二の金属粉末グレードを、第二のフィーダからダイ内のキャビティの周辺領域を規定しているダイ内のキャビティの第二の部分内へ導入するステップであり、前記第一の金属粉末グレードは、少なくとも1つの特性が前記第二の金属粉末グレードと異なっている前記ステップと、
前記第一及び第二の金属粉末グレードを固化して圧粉体を形成するステップと、を含み、
前記圧粉体は、
前記第一の金属粉末グレードからなり且つインサートの回転中心軸線に沿って位置決めされた中心領域と、
前記第二の金属粉末グレードからなる2つの別個の周辺領域であって、前記中心領域が該2つの周辺領域間に配置されている前記2つの別個の周辺領域と、
前記中心領域の部分と前記2つの別個の周辺領域の部分とからなる切刃を有し、前記中心領域の部分と前記2つの別個の周辺領域とは、前記インサートの面に沿って直接に接合され、且つ前記切刃に沿って互いに整合されている切削チップと、
からなる、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であり、
前記第一の金属粉末グレードを、第一のフィーダからダイ内のキャビティの第三の部分内へ導入するステップを更に含んでいる方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であり、
前記圧粉体を焼結させて、第一の複合材料を含んでいる周辺領域と第二の複合材料を含んでいる中心領域とを有する複合インサートを形成するステップを更に含み、前記第一の複合材料と第二の複合材料とは少なくとも1つの特性が異なっている、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であり、
前記第一及び第二の複合材料が、個々に、結合剤内に硬質の粒子を含んでおり、当該硬質の粒子は、個々に、炭化物、窒化物、ホウ化物、ケイ化物、酸化物、これらの固溶体のうちの少なくとも1つを含んでおり、前記結合剤が、コバルト、ニッケル、鉄、ルテニウム、パラジウム及びこれらの合金から選択された少なくとも1つの金属を含んでいる、方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法であり、
前記特性が、組成、粒子サイズ、弾性率、硬度、耐摩耗性、破壊靱性、引っ張り強さ、耐食性、熱膨張率及び熱伝導率からなる群から選択された少なくとも1つの特性である方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であり、
前記第一の金属粉末グレードと第二の金属粉末グレードとが、個々に、金属炭化物と結合剤金属とを含んでいる方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であり、
前記第一の金属粉末グレードの金属炭化物の金属と、前記第二の金属粉末グレードの金属炭化物の金属とが、個々に、チタン、クロム、バナジウム、ジルコニウム、ハフニウム、モリブデン、タンタル、タングステン及びニオビウムからなる群から選択されたものである方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であり、
前記金属炭化物が炭化タングステンである方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であり、
前記第一のフィーダ及び前記第二のフィーダのうちの1つが少なくとも2つの供給部分を含んでいる方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であり、
第三の金属粉末グレードをフィーダから前記ダイのキャビティ内に導入するステップを更に含んでいる方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であり、
前記第一の金属粉末グレード、前記第二の金属粉末グレード、又は第三の金属粉末グレードのうちの少なくとも1つをダイ内のキャビティの第三の部分内へ導入するステップを更に含んでいる方法。
【請求項12】
請求項4に記載の方法であり、
前記第一の複合材料の結合剤と前記第二の複合材料の結合剤とが、各々、個々に、コバルト、コバルト合金、ニッケル、ニッケル合金、鉄、ルテニウム、パラジウム及び鉄合金からなる群から選択された金属を含んでいる方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であり、
前記第一の複合材料の結合剤と前記第二の複合材料の結合剤との化学組成が異なっている方法。
【請求項14】
請求項6に記載の方法であり、
前記第一の金属粉末グレードの結合剤の重量パーセントが、前記第二の金属粉末グレードの結合剤の重量パーセントと異なっている方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であり、
前記第一の金属粉末グレードの金属炭化物は、化学組成及び平均粒子サイズのうちの少なくとも1つが、前記第二の金属粉末グレードの金属炭化物と異なっている方法。
【請求項16】
請求項6に記載の方法であり、
前記第一の金属粉末グレードと第二の金属粉末グレードとが、個々に、2〜40重量パーセントの結合剤と、60〜98重量パーセントの金属炭化物とを含んでいる方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であり、
前記第一の金属粉末グレードと前記第二の金属粉末グレードとのうちの一方が、前記第一の金属粉末グレードと前記第二の金属粉末グレードとのうちの他方よりも1〜10重量パーセント多い結合剤を含んでいる方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であり、
前記キャビティの各部分を形成するために、ダイ内のキャビティ内に少なくとも1つの仕切を導入することを更に含んでいる方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であり、
前記仕切が、モーター、油圧、空気圧及びソレノイドのうちの少なくとも1つによってキャビティ内へと降ろされる方法。
【請求項20】
ボールエンドミルインサート及びスペードドリルインサートから選択されたモジュール型回転バイトのための複合インサートであり、
第一の複合材料からなり且つ前記複合インサートの回転中心軸線に沿って位置決めされた中心領域と、
第二の複合材料からなる2つの別個の周辺領域であって、前記中心領域が該2つの別個の周辺領域間に配置されている前記2つの別個の周辺領域と、
前記中心領域の部分と前記2つの周辺領域の部分とからなる切刃を有し、前記中心領域の部分と前記2つの別個の周辺領域とは、前記複合インサートの面に沿って直接に接合され、且つ前記切刃に沿って互いに整合されている切削チップと、を含み、
前記第一の複合材料は少なくとも一つの特性が前記第二の複合材料と異なっている、複合インサート。
【請求項21】
請求項20に記載の複合インサートであり、
前記第一及び第二の複合材料が、個々に、結合剤内に硬質粒子を含んでおり、該硬質粒子が、個々に、炭化物、窒化物、ホウ化物、ケイ化物、酸化物、これらの固溶体のうちの少なくとも1つを含んでおり、前記結合剤が、コバルト、ニッケル、鉄、ルテニウム、パラジウム及びこれらの合金から選択された少なくとも1つの金属を含んでいる複合インサート。
【請求項22】
請求項20に記載の複合インサートであり、
前記特性が、組成、粒子サイズ、弾性率、硬度、耐摩耗性、破壊靱性、引っ張り強さ、耐食性、熱膨張率及び熱伝導率からなる群から選択された少なくとも1つの特性である複合インサート。
【請求項23】
請求項20に記載の複合インサートであり、
前記第一の複合材料と前記第二の複合材料とが、個々に、結合剤内に金属炭化物を含んでいる複合インサート。
【請求項24】
請求項23に記載の複合インサートであり、
前記第一の複合材料の金属炭化物の金属と前記第二の複合材料の金属炭化物の金属とが、チタン、クロム、バナジウム、ジルコニウム、ハフニウム、モリブデン、タンタル、タングステン及びニオビウムから個々に選択されたものである複合インサート。
【請求項25】
請求項23に記載の複合インサートであり、
前記第一の複合材料の結合剤と前記第二の複合材料の結合剤とが、各々、個々に、コバルト、コバルト合金、ニッケル、ルテニウム、パラジウム、ニッケル合金、鉄及び鉄合金からなる群から選択された金属を含んでいる複合インサート。
【請求項26】
請求項23に記載の複合インサートであり、
前記第一の複合材料の結合剤と前記第二の複合材料の結合剤との化学組成が異なっている複合インサート。
【請求項27】
請求項23に記載の複合インサートであり、
前記第一の複合材料の結合剤の重量パーセントが、前記第二の複合材料の結合剤の重量パーセントと異なっている複合インサート。
【請求項28】
請求項23に記載の複合インサートであり、
前記第一の複合材料の金属炭化物は、化学組成及び平均粒子サイズのうちの少なくとも1つが前記第二の複合材料の金属炭化物と異なっている複合インサート。
【請求項29】
請求項23に記載の複合インサートであり、
前記第一の複合材料と第二の複合材料とが、個々に、2〜40重量パーセントの結合剤と、60〜98重量パーセントの金属炭化物とを含んでいる複合インサート。
【請求項30】
請求項20に記載の複合インサートであり、
前記中心領域内の第一の複合材料の弾性率が、前記周辺領域内の第二の複合材料の弾性率と異なっている複合インサート。
【請求項31】
請求項20に記載の複合インサートであり、
前記中心領域内の前記第一の複合材料の硬度及び耐摩耗性のうちの1つが、前記周辺領域内の第二の複合材料と異なっている複合インサート。
【請求項32】
請求項23に記載の複合インサートであり、
前記金属炭化物が炭化タングステンである複合インサート。
【請求項33】
請求項23に記載の複合インサートであり、
前記第一の複合材料と第二の複合材料とのうちの一つが、0.3〜10μmの平均粒子サイズを有する炭化タングステン粒子を含んでいる複合インサート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、種々の特徴又は特性の領域を有している工具のブランク材、切刃インサート、スペードドリルインサート及びボールエンドミルのような複合部材を形成する方法に関する。
【0002】
本発明の方法は、切削工具の製造に一般的な用途を見出し、例えば、旋削、フライス加工、ねじ切り、溝付け、穴開け、リーマ仕上げ、座ぐり、深座ぐり及びエンドミル削りのような材料除去作業において使用される超硬合金回転バイトの製造において使用することができる。本発明の切刃インサートは、類似しているが異なるグレードの2つの超硬合金材料によって作ることができる。
【背景技術】
【0003】
金属加工に対して採用される切刃インサートは、一般的に、工具鋼及びセラミックのような他の工具材料と比較して、強度、靱性及び耐摩耗性のような機械的特性の好適な組み合わせによる複合材料によって製造される。超硬合金のような複合材料によって作られた従来の切刃インサートは、“一体構造”に基づいており、すなわち、単一グレードの超硬合金によって作られている。従って、従来の一体構造の切削工具は、当該工具全体に亘る全ての位置で同じ機械的特性及び化学的特性を有している。
【0004】
超硬合金材料は、少なくとも2つの相すなわち少なくとも1つの硬質セラミック成分と、より軟らかい金属結合剤のマトリックスとを含んでいる。硬質セラミック成分は、例えば、チタン、クロム、バナジウム、ジルコニウム、モリブデン、タンタル、タングステン及びニオビウムのような超硬合金形成元素からなる超硬合金とすることができる。一般的な例はタングステン超硬合金である。結合剤は、金属又は金属合金、典型的には、コバルト、ニッケル、鉄又はこれらの金属の合金とすることができる。結合剤は、セラミック成分を三次元的に連結されたマトリックス内で“固める”。超硬合金は、少なくとも1つの粉末セラミック成分と、少なくとも1つの粉末結合剤とからなる金属粉末を圧密固化することによって作ることができる。
【0005】
超硬合金材料の物理的及び化学的特性は、部分的に、材料を形成するために使用される金属粉末の個々の成分に依存する。超硬合金材料の特性は、例えば、セラミック成分の化学的組成、セラミック成分の粒子サイズ、結合剤の化学組成及びセラミック成分に対する結合剤の割合によって決定される。金属粉末の成分を変えることによって、スローアウェイ式チップ、ドリル及びエンドミルを含むインサートのような工具は、特別な用途に適合した独特の特性によって形成することができる。
【0006】
今日の近代的な金属材料の加工用途においては、濃縮グレードの超硬材料は、所望の品質及び生産性要件を達成するために望まれる場合が多い。しかしながら、より高いグレードの超硬合金を使用して一体化超硬合金構造によって作られた切刃インサートは、主として材料コストが高いことにより製造コストが高い。更に、インサート内の各位置において、異なる要求に適合するように、単一グレードの超硬材料を含む従来の一体化スローアウェイ式チップの組成を最適化することは困難である。
【0007】
2以上の異なる超硬材料又はグレードによって作られた複合回転バイトが米国特許第6,511,265号に記載されている。この時点では、複合超硬合金切刃インサートは、回転切削工具よりも製造がより困難である。まず第一に、切刃インサートのサイズは、典型的には、回転切削バイトよりも遙かに大きく、第二には、特に、今日の切刃インサートの切刃及びチップブレーカ構造は特性が複雑であり、第三には、より高い寸法精度及びより良好な表面品質が必要とされる。切刃インサートの場合には、最終製品は、製品をプレスし且つ焼結することによって作られ、後続の研磨動作は含まない。
【0008】
1983年に登録された米国特許第4,389,952号は、最初に超硬合金粉末と液体賦形剤との混合物を含むスラリーを形成し、次いで、塗装又は噴霧よって別の異なる超硬合金の圧粉体に当該混合物の層を付加することよって、複合超硬バイトを形成する革新的な着想を提供している。このような複合超硬バイトは、コア領域と表面層との間に個別の機械的特性を有している。この方法が請求される用途としては、削岩工具、採鉱工具及び金属加工のためのスローアウェイ式チップがある。しかしながら、スラリーに基づく方法は、チップブレーカの幾何学的構造又は極めて簡単な構造のチップブレーカを備えていないスローアウェイ式チップに適用できるだけである。これは、スラリーの厚い層が明らかにチップブレーカの幾何学的構造を変え、特に、広く使用されているスローアウェイ式チップが種々の材料を加工するための増加の一途をたどる要望に適合するのに必要とされるチップブレーカの幾何学的構造を有しているからである。更に、スラリーに基づく方法は、製造作業及び製造設備の著しい増加を含んでいる。
【0009】
回転バイトの用の切刃インサートに対しては、切刃インサートの中心領域の主要な機能は、最初に加工片を貫通し且つ穴が形成されるときに材料の殆どを除去することであり、一方、周辺領域の主目的は、穴を広げ且つ仕上げることである。切削過程中の切削速度は、インサートの中心領域からインサートの外周領域までに亘って大きく変化する。インサートの内側領域、中間領域及び外周領域の切削速度は全て異なり、従って、異なる応力及び摩耗形態を受ける。明らかに、工具の回転軸線からの距離が増すにつれて、切削速度は増大する。従って、一体構造を含んでいる回転ビットにおけるインサートは、本質的に、それらの特性及び適用範囲が限られる。
【0010】
従って、一体構造を有しているドリルインサート及びその他の回転バイトは、工具の切削面の中心から外周端縁までに亘る種々の場所で、均一な摩耗を受けず且つ/又は削り取り及び亀裂を受けない。更に、浸炭材料に穴開けする場合には、チゼルエッジは、典型的には焼き肌を貫通するために使用され、一方、ドリル本体の残りの部分は、浸炭材料のより軟らかいコアから材料を除去する。従って、この用途において使用される従来の一体構造のチゼルエッジは、切刃の残りの部分よりも遙かに速い速度で摩耗して、比較的短い耐用期限をもたらすであろう。これら両方の場合に、従来の超硬合金インサートの一体構造により、度重なる工具の交換は、使用されている工具の過度の中断時間を生じる。
【0011】
従って、金属加工の用途のための近代のチップブレーカ構造を任意に含んでいる切刃インサート及びこのようなインサートを形成する方法を創り出す必要性が存在する。
【発明の開示】
【0012】
本発明の実施形態は、複合物品を形成する方法を含んでおり、当該方法は、第一の金属粉末グレードをフィーダからダイ内のキャビティの第一の部分内へ導入し、第二の金属粉末グレードをフィーダからキャビティの第二の部分内へ導入するステップを含んでいる。第一の金属粉末グレードは、化学組成又は粒子サイズが第二の金属粉末グレードとは異なっている。第一の金属粉末及び第二の金属粉末は、圧密されて圧粉体を形成することができる。種々の実施形態において、金属粉末はキャビティ内へ直接供給される。更に多くの実施形態においては、本発明の方法は、ダイのキャビティ又はその他の型のキャビティ内への2以上の金属粉末のほぼ同時の導入を可能にする。
【0013】
複合物品を製造する方法の更に別の実施形態は、第一の金属粉末グレードを第一のフィーダからダイのキャビティの第一の部分内へ導入し且つ第二の金属粉末グレードを第二のフィーダからキャビティの第二の部分内へ導入するステップを含んでいる。第一の金属粉末グレードは、少なくとも1つの特性が第二の金属粉末グレードとは異なっている。
【0014】
本発明の他の実施形態は、材料除去動作のための複合インサートを含んでいる。当該複合インサートは、第一の領域と第二の領域とを含んでおり、前記第一の領域は第一の複合材料を含んでおり、第二の領域は第二の複合材料を含んでおり、前記第一の複合材料は、少なくとも1つの特性が前記第二の複合材料と異なっている。より特別には、中心領域と周辺領域とを含んでいるモジュール型回転バイトのための複合インサートが提供され、前記中心領域は第一の複合材料を含んでおり、前記周辺領域は第二の複合材料を含んでおり、前記第一の複合材料は少なくとも1つの特性が前記第二の複合材料とは異なっている。中心領域は、インサートの中心を含む領域を意味するものと広く解釈されても良く、又は、複合回転バイトに対しては、当該中心領域は、最も遅い切削速度を有する切刃、典型的には回転軸線からより遠い切刃を含んでいる。前記中心領域はまた、インサートの周辺の一部分を含んでいても良い。
【0015】
他の方法で指示しない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用されている成分の量、時間、温度等を表している全ての符号は、全ての場合に、“約”という用語によって加減されると解されるべきである。従って、そうではないと指示されない限り、以下の明細書及び請求の範囲に記載されている数字のパラメータは、本発明によって得ようとされる所望の特性に応じて変化するかも知れない近似値である。少なくとも且つ請求の範囲と等価である原理の適用を制限する試みとしてではなく、各数字パラメータは、少なくとも、多くの報告された重要な数字を参考にして且つ通常の簡略化手法を適用することによって解釈されるべきである。
【0016】
本発明の広い範囲を記載している数字範囲及びパラメータは近似値であるにもかかわらず、特別な例に記載されている数字の値は出来る限り正確に報告されている。しかしながら、如何なる数字的な値も、本質的に、それら自体の試験測定において見出された標準偏差によって必然的に生じるある種の誤差を含んでいても良い。
【0017】
読者は、本発明の以下の詳細な説明を考慮に入れると、本発明の以上の詳細及び利点のみならずその他のものを理解できるであろう。読者はまた、本発明の実施形態を実施し且つ/又は使用する際に、本発明のこのような付加的な詳細及び利点を理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1a】
図1aは、複合材料からなる3つの領域を含んでいる本発明の矩形のスローアウェイ式切刃インサートの実施形態を示している図である。
【
図1b】
図1bは、複合材料からなる3つの領域を含んでいる本発明のスローアウェイ式切刃インサートの実施形態を示している正面図である。
【
図1c】
図1cは、複合材料からなる3つの領域を含んでいる本発明のスローアウェイ式切刃インサートの実施形態を示している頂面図である。
【
図1d】
図1dは、複合材料からなる3つの領域を含んでいる本発明のスローアウェイ式切刃インサートの実施形態を示している断面図である。
【
図2a】
図2aは、複合材料からなる2つの領域を含んでいる本発明のスローアウェイ式切刃インサートの実施形態を示している斜視図である。
【
図2b】
図2bは、複合材料からなる2つの領域を含んでいる本発明のスローアウェイ式切刃インサートの実施形態を示している正面図である。
【
図2c】
図2cは、複合材料からなる2つの領域を含んでいる本発明のスローアウェイ式切刃インサートの実施形態を示している頂面図である。
【
図2d】
図2dは、複合材料からなる2つの領域を含んでいる本発明のスローアウェイ式切刃インサートの実施形態を示している断面図である。
【
図3a】
図3aは、複合材料からなる3つの領域を含んでいる本発明のダイヤモンド形状のスローチャートウェイ切刃インサートの実施形態を示している斜視図である。
【
図3b】
図3bは、複合材料からなる3つの領域を含んでいる本発明のダイヤモンド形状のスローアウェイ式切刃インサートの実施形態を示している正面図である。
【
図3c】
図3cは、複合材料からなる3つの領域を含んでいる本発明のダイヤモンド形状のスローアウェイ式切刃インサートの実施形態を示している頂面図である。
【
図3d】
図3dは、複合材料からなる3つの領域を含んでいる本発明のダイヤモンド形状のスローアウェイ式切刃インサートの実施形態を示している断面図である。
【
図4a】
図4aは、複合材料からなる2つの領域を含んでいる本発明のスローアウェイ式切刃インサートの実施形態を示している斜視図である。
【
図4b】
図4bは、複合材料からなる2つの領域を含んでいる本発明のスローアウェイ式切刃インサートの実施形態を示している正面図である。
【
図4c】
図4cは、複合材料からなる2つの領域を含んでいる本発明のスローアウェイ式切刃インサートの実施形態を示している頂面図である。
【
図4d】
図4dは、複合材料からなる2つの領域を含んでいる本発明のスローアウェイ式切刃インサートの実施形態を示している断面図である。
【
図5a】
図5aは、複合材料からなる4つの領域を含んでいる本発明のダイヤモンド形状のスローアウェイ式切刃インサートの実施形態を示している斜視図である。
【
図5b】
図5bは、複合材料からなる4つの領域を含んでいる本発明のダイヤモンド形状のスローアウェイ式切刃インサートの実施形態を示している正面図である。
【
図5c】
図5cは、複合材料からなる4つの領域を含んでいる本発明のダイヤモンド形状のスローアウェイ式切刃インサートの実施形態を示している頂面図である。
【
図5d】
図5dは、複合材料からなる4つの領域を含んでいる本発明のダイヤモンド形状のスローアウェイ式切刃インサートの実施形態を示している断面図である。
【
図6】
図6は、複合材料からなる3つの領域を含んでいる本発明のスローアウェイ式切刃インサートの実施形態を示している図である。
【
図7】
図7は、複合材料からなる3つの領域を含んでいる本発明の丸い形状の切刃インサートの実施形態を示している図である。
【
図8】
図8は、複合材料からなる2つの領域を含んでいる本発明の丸い形状の切刃インサートの実施形態を示している図である。
【
図9】
図9は、複合材料からなる2つの領域を含んでいる本発明の一体化切刃インサートの実施形態を示している図である。
【
図10a】
図10aは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図10b】
図10bは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図11】
図11aは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
図11bは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図12】
図12aは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
図12bは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図13】
図13aは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
図13bは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図14a】
図14aは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図14b】
図14bは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図14c】
図14cは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図14d】
図14dは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図15a】
図15aは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図15b】
図15bは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図15c】
図15cは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図15d】
図15dは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図16a】
図16aは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図16b】
図16bは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図16c】
図16cは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図16d】
図16dは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図17a】
図17aは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図17b】
図17bは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図17c】
図17cは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図17d】
図17dは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図18a】
図18aは、本発明の方法の一実施形態において使用するためのラックとピニオンとを備えたフィーダの一実施形態を示している正面図である。
【
図18b】
図18bは、本発明の方法の一実施形態において使用するためのラックとピニオンとを備えたフィーダの一実施形態を示している側面図である。
【
図18c】
図18cは、本発明の方法の一実施形態において使用するためのラックとピニオンとを備えたフィーダの一実施形態を示している頂面図である。
【
図18d】
図18dは、本発明の方法の一実施形態において使用するためのラックとピニオンとを備えたフィーダの一実施形態を示している斜視図である。
【
図19】
図19aは、複合材料からなる3つの領域を含んでいる本発明のダイヤモンド形状のスローアウェイ式切刃インサートの一実施形態を示している頂面図である。
図19bは、複合材料からなる3つの領域を含んでいる本発明のダイヤモンド形状のスローアウェイ式切刃インサートの一実施形態を示している図である。
図19cは、複合材料からなる3つの領域を含んでいる本発明のダイヤモンド形状のスローアウェイ式切刃インサートの一実施形態を示している図である。
図19dは、複合材料からなる3つの領域を含んでいる本発明のダイヤモンド形状のスローアウェイ式切刃インサートの一実施形態を示している図である。
【
図20】
図20は、本発明の方法の一実施形態を示している図であり、当該実施形態においては、
図19a乃至19dのダイヤモンド形状のスローアウェイ式切刃インサートを形成するために、
図18a乃至18dのフィーダが使用されている。
【
図21】
図21は、
図20の本発明の方法の実施形態を示している図であり、金属粉末がダイ内へ導入されている。
【
図22a】
図22aは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図22b】
図22bは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図22c】
図22cは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図22d】
図22dは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図23a】
図23aは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図23b】
図23bは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図23c】
図23cは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図23d】
図23dは、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図24a】
図24aは、本発明のボールインサートの一実施形態と、工具ホルダー内の本発明のボールインサートの一実施形態とを示している図である。
【
図24b】
図24bは、本発明のボールインサートの一実施形態と、工具ホルダー内の本発明のボールインサートの一実施形態とを示している図である。
【
図24c】
図24cは、本発明のボールインサートの一実施形態と、工具ホルダー内の本発明のボールインサートの一実施形態とを示している図である。
【
図25a】
図25aは、本発明のスペードドリルインサートの一実施形態と、工具ホルダー内の本発明のスペードドリルインサートの一実施形態を示している図である。
【
図25b】
図25bは、本発明のスペードドリルインサートの一実施形態と、工具ホルダー内の本発明のスペードドリルインサートの一実施形態を示している図である。
【
図26a】
図26aは、本発明のボールインサートの一実施形態を示している図である。
【
図26b】
図26bは、本発明のボールインサートの一実施形態を示している図である。
【
図27a】
図27aは、本発明のスペードドリルインサートの一実施形態を示している図である。
【
図27b】
図27bは、本発明のスペードドリルインサートの一実施形態を示している図である。
【
図28a】
図28aは、本発明の切刃インサートの一実施形態を示している図である。
【
図28b】
図28bは、本発明の切刃インサートの一実施形態を示している図である。
【
図29a】
図29aは、複合材料からなる2つの領域を含んでいる本発明のスペードドリルインサートの一実施形態を示している図である。
【
図29b】
図29bは、複合材料からなる2つの領域を含んでいる本発明のスペードドリルインサートの一実施形態を示している図である。
【
図30a】
図30aは、複合材料からなる2つの領域を含んでいる本発明の丸い形状の切刃インサートの一実施形態を示している図である。
【
図30b】
図30bは、複合材料からなる2つの領域を含んでいる本発明の丸い形状の切刃インサートの一実施形態を示している図である。
【
図30c】
図30cは、複合材料からなる2つの領域を含んでいる本発明の丸い形状の切刃インサートの一実施形態を示している図である。
【
図31a】
図31aは、複合材料からなる2つの領域を含んでいる本発明の丸い形状の切刃インサートの一実施形態を示している図である。
【
図31b】
図31bは、複合材料からなる2つの領域を含んでいる本発明の丸い形状の切刃インサートの一実施形態を示している図である。
【
図32a】
図32aは、
図30a乃至30c又は
図31a乃至31bの丸い形状のスローアウェイ式切刃インサートを形成するために使用することができる本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図32b】
図32bは、
図30a乃至30c又は
図31a乃至31bの丸い形状のスローアウェイ式切刃インサートを形成するために使用することができる本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図33a】
図33aは、
図32a及び32bの方法において使用することができるギヤの一実施形態を示している図である。
【
図33b】
図33bは、
図32a及び32bの方法において使用することができるギヤの一実施形態を示している図である。
【
図34a】
図34aは、
図33a及び33bのギヤが
図31a及び31bの方法において使用されている、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【
図34b】
図34bは、
図33a及び33bのギヤが
図31a及び31bの方法において使用されている、本発明の方法の一実施形態を示している図である。
【0019】
本発明は、切刃インサート、回転切刃インサート、穴開けインサート、スペードドリル、スペードドリルインサート、ボールエンドミルインサートのような複合製品を提供し且つこのような複合製品を形成する方法を提供する。複合製品特に複合インサートは更に、頂面若しくは底面又は頂面及び底面の両方上に、チップ形成構造を含んでいても良い。複合製品のチップ形成構造は、複雑なチップ形成構造であっても良い。複合なチップ形成構造は、塊、隆起、畝、溝、ランド、背壁又はこれらの構造の組み合わせのような種々の構造を工具のすくい面上に有している如何なる構造であっても良い。
【0020】
ここで使用されている“複合製品”又は“複合インサート”は、物理特性、化学特性、化学組成及び/又は微細構造が異なる別個の領域を有している物品又はインサートを指している。これらの領域は、物品又はインサートに適用される単なるコーティングを含んでいない。これらの違いは、少なくとも1つの特性が異なる領域をもたらす。これらの領域の特徴は、例えば、高度、引っ張り強さ、耐摩耗性、破壊靱性、弾性率、耐食性、熱膨張率及び熱伝導率のうちの1つとすることができる。ここで使用されている“複合材料”は、2以上の相の複合材、例えば、超硬合金のような結合剤内にセラミック成分を含む材料である。本発明において提供されるように構成することができる複合インサートとしては、例えば、材料の旋削、切断、立削り、フライス加工、穴開け、孔ぐり、座ぐり、深ぐり、正面削り及びねじ立てのためのインサートがある。
【0021】
本発明は、より特別には、少なくとも1つの切刃と、少なくとも1つの特性が異なる複合材料からなる少なくとも2つの領域とを有している複合物品及び複合インサートを提供する。この複合インサートは、更に、スローアウェイ式であり且つ/又はチップフォーミング構造を有していても良い。超硬材料の2つの領域の化学組成及び微細構造のうちの少なくとも1つが変わることによって、異なる特性が提供される。一つの領域の化学組成は、例えば、この領域のセラミック成分及び/又は結合剤の化学組成及び超硬合金対結合剤の比の関数である。例えば、回転バイトの2つの超硬合金領域のうちの1つは、2つの領域のうちの他方の領域よりも大きな耐摩耗性、高い硬度及び/又は高い弾性率を呈しても良い。
【0022】
本発明の実施形態は、複合物品を形成する方法を含んでおり、当該方法は、フィーダから金型キャビティの第一の部分内へ第一の金属粉末グレードを導入し且つ第二の金属粉末グレードをフィーダからキャビティの第二の部分内へ導入するステップを含み、前記第一の金属粉末は少なくとも1つの特性が第二の金属粉末グレードとは異なっている。次いで、金属粉末グレードは、圧密固化されて圧粉体を形成する。金属粉末グレードは、セラミック成分のような硬質粒子と結合剤とを含んでいても良い。この硬質粒子は、炭化物、窒化物、ホウ化物、ケイ化物、酸化物及びこれらの固溶体のうちの少なくとも1つを個別に含んでいても良い。結合剤は、コバルト、ニッケル、鉄及びこれらの合金から選択された少なくとも1つの金属を含んでいても良い。結合剤はまた、例えば、タングステン、クロム、チタン、タンタル、バナジウム、モリブデン、ニオビウム、ジルコニウム、ハフニウム、ルテニウム、パラジウム及び炭素をこれらの元素の溶解限界まで結合剤内に含んでいても良い。更に、結合剤は、銅、マンガン、銀、アルミニウム及びルテニウムのような元素を5重量%まで含んでいても良い。当業者は、固められた硬質粒子材料の構成成分のうちの幾らか又は全てを化合物及び/又は母合金として、元素形態で導入しても良い。更に別の実施形態は、フィーダからキャビティ内へ第三の金属粉末グレードを導入するステップを含んでいても良い。
【0023】
圧粉体を焼結することによって、第一の複合材料を含んでいる第一の領域と第二の複合材料を含んでいる第二の領域とを有し且つ当該第一の複合材料と第二の複合材料との少なくとも1つの特性が異なっている複合物品が形成されるであろう。領域間で異なる特性としては、組成、粒子サイズ、弾性率、硬度、耐摩耗性、破壊靱性、引っ張り強さ、耐食性、熱膨張率からなる群の少なくとも1つとすることができる。
【0024】
第一及び第二の複合材料は、結合剤内に硬質粒子を含んでおり、当該硬質粒子は、炭化物、窒化物、ホウ化物、ケイ化物、酸化物及びこれらの固溶体のうちの少なくとも1つを個々に含んでおり、前記結合剤は、コバルト、ニッケル、鉄及びこれらの合金から選択された少なくとも1つを含んでいる。ある種の実施形態においては、硬質粒子は別個の金属炭化物であっても良い。この金属炭化物は、チタン、クロム、バナジウム、ジルコニウム、ハフニウム、モリブデン、タンタル、タングステン及びニオビウムのようなあらゆる炭化物形成元素から選択することができる。第一の複合材料の金属炭化物は、化学組成及び平均粒子サイズのうちの少なくとも1つが第二の複合材料の金属炭化物とは異なっていても良い。第一の金属粉末グレードの結合剤と第二の金属粉末グレードの結合剤とは、各々別個に、コバルト、コバルト合金、ニッケル、ニッケル合金、鉄及び鉄合金からなる群から選択された金属を含んでいても良い。第一の金属粉末グレードと第二の金属粉末グレードとは、個々に、金属粉末の全重量に対して、2〜40重量%の結合剤と、60〜98重量%の金属炭化物とを含んでいても良い。第一の金属粉末グレードの結合剤と、第二の金属粉末グレードの結合剤とは、化学特性、金属粉末グレード内の結合剤の重量パーセント又はその両方が異なっていても良い。幾つかの実施形態においては、第一の金属粉末グレード及び第二の金属粉末グレードの一方は、第一の金属粉末グレード及び第二の金属粉末グレードのうちの他方よりも1〜10重量%だけ多くの結合剤を含んでいる。
【0025】
前記切刃インサートの実施形態はまた、限定的ではないが、同時係属中の米国特許出願第10/735,379号(本明細書にその全体が参考として組み込まれている)に記載された複合焼結炭化物のいずれかのような複合焼結炭化物をも含んでいる。一般的には、複合焼結炭化物は、第二の焼結炭化物の連続相内全体に分散された少なくとも1つの焼結炭化物の粒子を含んでいて焼結炭化物の複合材を形成している材料である。米国特許第10/735,379号の複合焼結炭化物は、低い接近比率と、他の複合焼結炭化物に対して改良された特性とを有している。好ましくは、複合焼結炭化物の分散相の接近比率は、0.48よりも少ないか等しくすることができる。更に、本発明の複合焼結炭化物複合材は、連続層の硬度よりも高い硬度の分散相を有しているのが好ましい。例えば、本発明の切刃インサートの1以上の領域内で使用される複合焼結炭化物のある種の実施形態においては、分散相の硬度は、88HRAより大きいか等しく、95HRA未満か等しいのが好ましく、連続相の硬度は78より大きいか等しく、91HRAより小さいか等しい。
【0026】
しかしながら、本発明の以下の説明は、更に複雑な幾何学的構造及び/又は2以上の領域を有している複合インサートの製造にも適用できることが当業者に明らかであろう。従って、以下の説明は、本発明を限定することを意図しておらず、単に実施形態を例示することを意図している。
【0027】
ある種の実施形態においては、セラミック成分は、5%未満の炭化タンタル、炭化ニオビウム及び炭化チタンのような立方晶系炭化物を含んでいても良く、又は幾つかの用途においては、3重量%未満の立方晶系炭化物を含んでいる。本発明の実施形態においては、立方晶系炭化物を避けるか又は低濃度の立方晶系炭化物を含むだけであるのが有利であるかも知れない。なぜならば、立方晶系炭化物は横破壊強度を低減させ、製造コストを増大させ、最終製品の破壊靱性を低減させるからである。このことは、硬い加工部片を加工する場合に使用され、加工によって剪断作用がもたらされ、ドリルの強度が最大であるべきである工具に対して特に重要である。他の欠点としては、より高い熱膨張率による低い耐熱衝撃性、より低い熱伝導率及び低い耐研磨摩耗性がある。
【0028】
当業者は、本発明の説明を考慮した後に、本発明の改良された回転バイトは、バイトの中心領域から周辺までの1以上の特性の大きさの経過を形成するために、異なる超硬材料からなる幾つかの層によって構成することができることを理解するであろう。本発明の複合製品及び複合インサートの主要な利点は、種々の用途に適合させるために工具の各領域の特性を調整するように利用できる工具設計の自由度である。例えば、本発明の特別な複合ブランクの個々の超硬材料領域の大きさ、位置、厚み、幾何学的構造及び/又は物理特性は、ブランクによって作られる回転バイトの特別な用途に適するように選択することができる。従って、インサートが使用中に著しい曲げを受ける場合には、例えば、インサートの1以上の領域の剛性を増大させても良い。このような領域は、切削面を有する1以上の超硬合金領域の例えば高い弾性率又は硬度及び/又は耐摩耗性を有し且つ他の領域よりも速い切削速度を受ける超硬材料を含んでいても良く、且つ/又は使用中に化学的接触を受ける超硬材料の領域の耐食性を高めても良い。
【0029】
複合インサートの実施形態は、より良好な耐摩耗性を得るために、より高いグレードの超硬材料の表面領域を有し且つ衝撃を増大させ又は抵抗を与えるためにより強靱なグレードの超硬合金としてのコア領域を有するように最適化しても良い。従って、本発明によって作られた複合的なスローアウェイ式超硬合金切刃インサートは、製造コストが低いことと改良された加工性能を有することとの2つの利点を有している。
【0030】
図1a〜1dの切刃インサートは、8つの割り送り位置(各側に4個)を有している。
図1aは、切刃インサートの一実施形態の二次元図である。頂部領域2と底部領域3とは超硬合金を含んでいる。これらの領域の超硬合金は、同じであっても良いし又は異なっていても良い。中間領域4は、頂部領域2及び底部領域3とは異なるグレードの超硬合金材料を含んでいる。切刃インサート1は、ある種の切削状態下で特別な群の材料の加工を改良するように設計することができる埋込又は圧入チップブレーカ構造5を有している。
図1bは切刃インサート1の前面図であり、
図1cは切刃インサート1の頂面図であり、
図1dは切刃インサート1の断面図である。このタイプの切刃インサートは、真っ直ぐな側壁6と中心穴7とを有している。中心穴7は、切刃インサート1をホルダー内に固定するために使用することができる。
【0031】
図2a〜2dは、頂面のみに埋込チップブレーカを備えている複合スローアウェイ式切刃インサートを示している。切刃インサート11は、4回割り送りすることかできる。
図2aは、第一の炭化物グレードを含んでいる全頂部領域12と第二の炭化物グレードを含んでいる全底面領域13とを備えた三次元図であり、第一の炭化物グレードと第二の炭化物グレードとは少なくとも1つの特性が異なっている。切刃インサート11は、幾つかの切削状態下で特定の群の材料に対する加工を改良するように設計されている埋込又は圧入チップブレーカ構造14を有している。
図2bは、切刃インサート11の前面図であり、
図2cは切刃インサートの頂面図であり、
図2dは切刃インサートの断面図である。このタイプの切刃インサートは、角度が付けられた壁15と中心穴16とを有している。
【0032】
複合的なスローアウェイ式超硬合金切刃インサートの実施形態は、
図1及び2に示されている切刃インサート1及び11に限られない。次の
図3乃至5においては、更に別の実施形態が、本発明によってもたらされる超硬合金切刃インサートの3つの他の可能な複合構造を示している。本発明の実施形態のいずれもが、複合材料のような異なる材料を各領域内に含んでいても良い。
【0033】
本発明の原理に基づいて、
図3a乃至3dは、頂面と底面との両方に埋込チップブレーカを備えた複合的なスローアウェイ式超硬合金切刃インサートの一つのタイプの構造を例示している。切刃インサート21は、ダイヤモンド形状を有し且つ4回(各側で2回)割り送りできる。
図3aは三次元図であり、一つのコーナー領域22全体ともう一つの別のコーナー領域23全体とは同じグレードでも異なるグレードでも良い超硬合金材料を含んでおり、中心領域24もまた、少なくとも1つの異なる特性を有する複合材料を含んでいても良い。切刃インサート21は、特別な群の金属材料を幾つかの切削条件下で加工するように設計されている埋込又は圧入のチップブレーカ構造25を有している。
図3bは、切刃インサート21の前面図であり、
図3cは切刃インサートの頂面図であり、
図3dは切刃インサート21の断面図である。このタイプの切刃インサートは、真っ直ぐな側壁26と中心穴27とを有している。
【0034】
本発明の原理に基づいて、複合的なスローアウェイ式超硬合金切刃インサート31の
図4a〜4dに示されている更に別の実施形態は、中心穴を有していないが、埋込のチップブレーカを頂部に含んでいる。切刃インサート31は4回割り送りすることができる。
図4aは三次元図である。周辺近くの部分的な頂部領域32は第一の複合材料を含んでいる。切刃インサートの本体領域33の残りの部分(頂部中心部分から底部領域全体まで)は、前記第一の複合材料とは異なる第二の複合材料を含んでいる。インサート31は、埋込のチップブレーカ構造34を有している。
図4bは切刃インサート31の前面図であり、
図4cは切刃インサート31の頂面図である。
図4dから明らかにわかるように、部分的な頂部領域32は、超硬合金グレードのような複合材料を含んでおり、本体領域33は、異なるグレードの超硬素材の第二の複合材料を含んでいる。このタイプの切刃インサートは角度が付けられた側壁35を有している。
【0035】
図5a〜5dは、頂面と底面との両方の上に、埋込のチップブレーカを備えた複合的なスローアウェイ式超硬合金切刃インサートの更に別の実施形態を含んでいる。切刃インサート41は、ダイヤモンド形状を有しており且つ4回(各側部で2回)割り送りすることができる。
図5aに示されているように、切刃インサートは、4つのコーナー領域42,43,44及び45の全ての切削部分に同じ複合材を含んでいても良く、本体領域46に第二のグレードの炭化物を含んでいても良い。切刃インサート41は、ある種の切削条件下で特別な群の材料を加工するように設計されている埋込又は圧入のチップブレーカ構造47を備えている。
図5bは切刃インサート41の前面図であり、
図5cは切刃インサート41の頂面図であり、
図5dは切刃インサートの断面図である。切刃インサート41は、真っ直ぐな側壁48と中心穴49とを有している。
【0036】
スローアウェイ式切刃インサートの形状は、金属加工用途のために当業者に知られている如何なる積極的/消極的な幾何学的構造形態であっても良く、如何なる所望のチップ形成構造が含まれていても良いことは強調されるべきである。
図6〜9は、本発明において提供されている方法に基づいて形成することができる切刃インサートの異なる幾何学的形状の更に別の例を提供している。
図6は、超硬材料52及び53のような2つの異なる複合材料を有する不規則な形状のフライス加工インサート51を示している。切刃インサート51は、埋込又は圧入のチップブレーカ構造54を有している。
図7は、2つの異なる超硬材料57及び58を有する丸い形状の汎用の切刃インサート56を図示している。切刃インサート56は平らな頂面59を有している。
図8は、2つの領域62及び63を有する丸い形状の汎用のインサート61を示している。切刃インサート61は、埋込又は圧入型のチップブレーカ構造64を有している。
図8は、異なるグレードの複合材料67及び68を含んでいる2つの領域を有している不規則な形状の溝削り/切り落としインサート66を示している。切刃インサート66は、埋込又は圧入型のチップブレーカ構造69を有している。
【0037】
チップブレーカ構造を備えているか備えていない本発明の新規な複合的なスローアウェイ式超硬合金切刃インサートを形成するために使用される形成方法は、一般的な炭化物粉末処理方法に基づいている。本発明の方法の一実施形態においては、金属粉末グレードは、単一フィーダ又は多フィーダによってダイのキャビティの一部分内へ導入することができる。ある種の実施形態においては、フィーダのうちの少なくとも1つが、同じフィーダによってキャビティの各部分の充填を補助するための少なくとも2つの供給部分を含んでいる。この方法の実施形態は更に、ダイのキャビティの部分を形成するためにキャビティ内に仕切を導入することを含んでいても良い。この仕切は、装置の別の部分によってフィーダに取り付けるかキャビティ内に導入しても良い。仕切は、モーター、油圧、空気圧又はソレノイドによってキャビティ内へと下げることができる。
【0038】
図10a及び10bは、一般的な超硬材粉末の圧締め構造を図示している。
図10aは、超硬材粉末71が底部パンチ73の頂面まで型72のキャビティ内へ導入される充填段階における圧締め装置を示している。この金属粉末は、チューブ82及びホース76を介して供給ホッパー75に結合されているフィーダ74によって供給することができる。
図10aにおいては、頂部パンチ77は持ち上げられた位置にある。金型取付板78は型72を支持するために使用されており、コアロッド79は、切刃インサート内に穴を形成するために使用されている。
図10bは、金属粉末71が圧締めされて未焼結の大きさの超硬合金切刃インサート80にされる圧締め段階中の圧締め装置を図示している。頂部パンチ77と底部パンチ73との両方が圧締め中心軸線81と同心である。
【0039】
本発明において提供される複合切刃インサートの種々の構造に対しては、種々の製造方法を使用することができる。このプロセスは、分割面(単一又は多数/水平及び垂直)に主として依存して、切刃インサートの2つの基本的なタイプの複合構造によって例示される。ここで使用されている“分割面”は、複合物又は複合インサート内の2つの異なる複合材料間の境界である。2つの異なる組成の材料を有する第一の基本的なタイプのインサート99及び100が
図11に図示されており、単一の分割面93を備えた切刃インサート91或いは多数の分割面94及び95を備えた切刃インサートは、頂部パンチ97と底部パンチ98との圧締め中心軸線96に直角である。これらの実施形態においては、分割面は、圧締め中心軸線96に直角である。複合構造の第一の基本的な実施形態の典型的な例が、以前の
図1,2,6,7及び8に示されている。
【0040】
2つの異なる複合材料109及び110を備えた複合インサートの第二の基本的な実施形態が
図12に図示されており、典型的な簡素化された複合超硬合金切刃インサート101の単一の分割面103或いは典型的な簡素化された複合超硬合金切刃インサート102の多数の分割面104及び105は、頂部パンチ107及び底部パンチ108の圧締め中心軸線106に平行である。言い換えると、全ての分割面が圧締め中心軸線106に平行である。第二の基本的なタイプの複合構造の典型的な例が以前の
図3及び9に示されている。
【0041】
本発明において提供されている複合構造の上記した2つの基本的な実施形態の組み合わせは、次いで、圧締め中心軸線に直角とすることができる多数の分割面及び圧締め中心軸線に平行とすることができる分割面(単一又は複数)を含んでいる種々のタイプのより複雑な複合構造を形成することができる。2つの異なる超硬材料119及び120を備えた複合超硬合金切刃インサートに対して
図13に示されているように、典型的な簡素化された複合超硬合金切刃インサート111の単一の分割面113は圧締め中心軸線114に直角であり、一方、単一の分割面112は、頂部パンチ115及び底部パンチ116の圧締め中心軸線114に平行である。更に、
図13に示されているように、典型的な簡素化された複合超硬合金切刃インサート121の多数の分割面122及び123は圧締め中心軸線114に直角であり、一方、多数の分割面124及び125は圧締め中心軸線114に平行である。以前の
図4及び5には、結合された複合構造の典型的な例が示されている。分割面は、異なる複合材料の領域間の境界部である。
【0042】
図14a〜14dは、本発明において提供される複合構造の第一の基本的な実施形態の複合切刃インサートを作るための製造方法の一実施形態の代表的な図(縮尺なしで図示されている)である。
図14aに示されているように、底部パンチ31は、型133の頂面132と整合されており、次いで、底部パンチ131は、圧締め中心軸線134に沿って下方へ移動することができ、一方、これと同時に、超硬材料粉末135が所望の量に達するまで型133のキャビティ内へ導入される。金属粉末は、超硬材料粉末充填装置150によって充填される。粉末充填装置150は、フィーダ136、金属チューブ137,ホース138及び供給ホッパー139を備えている。金型取付板141は型133を支持するために使用されており、コアロッド142は切刃インサート143内に穴を形成する。頂部パンチ140は、第一の金属粉末135を導入するために、この圧締め段階中は持ち上げられた位置にある。ひとたび第一の金属粉末の充填が完了すると、
図14bに示されている第二の超硬材料粉末充填装置152は、第二の金属粉末149の異なるグレードを型133のキャビティ内へ導入し、一方、底部パンチ131は、第二の金属粉末が所望量に達するまで圧締め中心軸線134に沿って下方へ移動し続ける。第二の金属粉末を導入した後に、第一の超硬材料粉末充填装置150は、再び第一の金属粉末をキャビティ内へ導入しても良く、一方、底部パンチは、
図14cに示されているように所望量が導入されるまで下方へ移動し続ける。最後に、超硬材料粉末の3つの層全てが導入されると、頂部パンチ140は下方へ動き、底部パンチ131は上方へ移動して、
図14dに示されているように圧締めされた超硬合金切刃インサートの圧粉体155が形成される。代替的に、
図14に示された2つの超硬材料粉末充填装置150及び152は、
図15に示されているように、組み込まれた別個のホッパー162及び163(及びこれに対応するチューブ及びホース)を備えた単一のフィーダ161と置換することができる。
図15a、15b、15cに示されている充填段階は、各々、
図14a及び14cに示されているものと同じである。更に、複合インサート圧粉体165は、頂部パンチ166及び底部パンチ167によって圧締めされる。
【0043】
図16a〜16dは、本発明において提供されている複合構造の第二の基本的な実施形態の複合的なスローアウェイ式超硬合金切刃インサート、特に
図3のものと類似している複合超硬合金切刃インサートを製造するための製造方法の別の実施形態を示している。当該複合切刃インサートは、2つのコーナー168及び169に同じグレードの(又は異なるグレードの)超硬材料を含み、中心領域170に異なる超硬材料を含んでいても良い。
図16aに示されている超硬材料粉末充填装置171は、多数の供給ホッパー173,174及び175を備えた単一のフィーダ172を含んでいる。底部パンチ176は、圧締め中心軸線177に沿って下方へと動き且つ異なるグレードの超硬材料粉末が分離部分(
図17に示されているような)を介してフィーダ172内に形成されるのを可能にする。
図16a,16b及び16cは、超硬材料粉末充填プロセス中の過程を例示しており、最終的には、本発明において提供される第二の基本的なタイプの複合構造を有している複合超硬切刃インサート181が、頂部パンチ182と底部パンチ176とによって形成される。フィーダ172の基本的な構造を示している概略図が
図17に示されている。
図17aは前面図であり、
図17bは側面図であり、
図17cは頂面図であり、
図17dは三次元図である。原理的には、フィーダ172は、多数の管191,192及び193と、枠194と、多数の分割部195及び196とを含んでおり、枠194内でのこれらの位置は、圧締めされる切刃インサートの大きさ及び複合構造に従って調整可能であり又は固定される。
【0044】
主として底部パンチ及び多数の超硬材料粉末充填装置に基づいている上記の好ましい製造方法とは異なる
図18に示されている別の好ましい製造方法は、多数のスプリッタを自動的に制御し且つ薄いスプリッタを金型キャビティ内へ駆動して多数の区分を形成する機構に基づいている。この駆動機構は、ラック−ピニオン、エアーシリンダ、油圧シリンダ、リニアーモーター等の使用を含んでいる。
図18の実施形態は、ラック−ピニオン装置を使用している駆動機構を例示しており、
図18aは前面図であり、
図18bは側面図であり、
図18cは頂面図であり、
図18dは三次元図である。このような装置は、基本的には、電動機201、ピニオン202、ラック203、フレーム204、多数のスプリッタ区分205及び206、0.003〜0.040インチ(0.076〜1.02ミリメートル)の厚みを有する多数の薄いスプリッタ207及び208、移動ブラケット209、モーター支持部材210並びに多数の金属管211、212及び213からなる。移動ブラケット209は、ラック203に結合されており且つ直線的に上下動する。多数の薄いスプリッタ207及び208は、可動ブラケット209の2つの側面に機械的に取り付けられている。
【0045】
例として
図19に示されているような(
図12に規定されている)複合構造の第二の基本的な実施形態を使用して、多数の薄いスプリッタのための上記したラック−ピニオン駆動装置の詳細な作動原理を以下に説明する。
【0046】
図19には、2つのコーナー領域222及び223に同じグレードの超硬材料を含み、中心領域224に異なる超硬材料を含むことができる複合切刃インサート221が示されている。切刃インサート221は、埋込又は圧入型のチップブレーカ構造225を備えている2つの等しい頂面及び底面を有している。切刃インサート221は、真っ直ぐな側壁226と中心穴227とを有している。
【0047】
図20には、薄いスプリッタ231及び232が、底部パンチ234の頂面233に到達するためにラック及びピニオン機構によって下方へ駆動される位置にあるフィーダが示されている。スプリッタ231及び232は、型238の区分化されたキャビティ235、236を形成している。次いで、金属粉末が多数の金属管239、240及び241を介して導入することができる。
【0048】
図21に示されているように、フィーダは、型238の区分化されたキャビティ235、236及び237が2つのコーナー246及び247において金属粉末によって充填され、中心領域248に異なる金属粉末が充填された後に、多数の薄いスプリッタ231及び232がラック及びピニオン機構によって上方へ駆動されて型238の頂面245上へ到達した位置にある。
【0049】
本発明において提供される複合切刃インサートを作るための製造方法は、
図4〜21に示された上記の製造方法に限られないことがここでは述べられるべきである。本発明の複合的なスローアウェイ式超硬合金切刃インサートを製造するための他の可能な製造方法がある。
図22a〜22dは、2つの頂部パンチを備えたプレスを含んでいる可能な製造方法を図示している。
図22aは、所望量の第一の金属粉末251が型253のキャビティ252内に充填される第一の充填位置にある圧締め構造を示しており、平らな面を備えた頂部パンチ254とチップブレーカ構造を備えた頂部パンチ255とが共に持ち上げられた位置にある。
図22bは、平らな面の頂部パンチ254と底部パンチ257とを使用して、第一の金属粉末251が圧締めされて未焼結圧粉体256にされる第一の圧締め位置にある圧締め構造を示している。更に、
図22cは、異なる超硬材料粉末258が型のキャビティ252内に充填された後に、平らな面の頂部パンチ254を使用している第二の圧締め位置を示している。
図22dは、第一の種類の超硬材料粉末259が再び型キャビティ252内に充填された後に、チップブレーカ構造255を有する頂部パンチを使用している最終的な圧締め段階にある圧締め構造を示しており、このようにして、超硬材料粉末251、258及び259が圧締めされて複合未焼結圧粉体超硬合金切刃インサート261とされる。
【0050】
本発明の複合回転バイト及びこれらのバイトを製造するために使用する複合材ブランクを製造する方法の付加的な実施形態は、第一の金属粉末を型の第一の領域の空所内へ配置するステップを含んでいる。型は乾式バッグラバー成形型であるのが好ましい。第二の金属粉末は、型の空所の第二の領域内に配置される。回転バイトにおいて望ましい異なる焼結超硬材料からなる領域の数に応じて、型は、特別な金属粉末が配置される付加的な領域に区分化されても良い。この型は、幾つかの領域を規定するために型の空所内に物理的な仕切を配置することによって、幾つかの領域に分離しても良い。金属粉末は、上記した回転バイトの対応する領域の所望の特性を達成するように選択される。少なくとも第一の領域と第二の領域とのうちの一部分が相互に接触状態とされ、型は次いで静水圧的に圧縮されて金属粉末を圧縮して固化された粉末の圧粉体を更に圧縮し且つ第一と第二の領域間の、存在するならば他の領域間の自己結合を形成する。焼結された圧粉体は、特別な回転バイトの幾何学的構造の切刃及び/又は他の物理的形態を含むように加工することができるブランクを提供する。このような特徴は、当業者に知られており、ここでは特に説明しない。
【0051】
本発明の方法のこのような実施形態は、特別な用途のために異なる領域の設計における大きな自由度を切刃インサートの設計者に付与する。第一の圧粉体は、所望の焼結硬質粒子材料によって所望の形状に設計することができる。更に、当該方法は、所望に応じて焼結前に何回でも繰り返すことができる。例えば、固化後に第二の圧粉体を形成するために、第三の型内で第二の圧粉体を第三の圧粉体と置換し且つ固化して第三の圧粉体を形成することができる。このような各々のプロセスによって、より複雑な形状を形成することができ、異なる特性の多くの明確に規定された領域を含む切刃インサートを形成することができ、切刃インサートの設計者は、特別な領域に特別な摩耗性能を有する切刃インサートを設計することができるであろう。
【0052】
当業者は、焼結超硬切刃インサートのような焼結硬質粒子物品を形成するために、固化及び焼結に必要とされるプロセスパラメータが理解できるであろう。このようなパラメータは、本発明の方法において使用することができ、例えば、1500℃以下の温度のような物品を圧縮強化するのに適した温度で焼結を行うことができる。
【0053】
本発明の複合切刃インサートを作る別の可能な製造方法の原理が
図23a〜23dに示されている。
図23aは、頂部パンチ271が当該頂部パンチ271内を上下に摺動できる同心状のパンチインサート272を有している新規なパンチの設計を示している。同心状のパンチインサート272が底部のパンチ280の頂面に到達するまで型273内を下方へと摺動する充填段階において、第一の金属粉末274は金型273のキャビティ内へ導入される。充填の後に、同心状のパンチインサート272は、型273から後退し且つ
図23bに示されているように型273のキャビティの内側キャビティ275から離れる。次いで、異なるグレードの金属粉末276が上記のキャビティ275内に充填され、一方、頂部パンチ271及び同心のパンチインサート272は、
図23cに示されている持ち上げ位置となる。最後に、
図23dは、圧締め段階における圧締め構造を図示しており、この段階においては、第一の金属粉末274と、異なるグレードの金属粉末276とは、頂部パンチ271と底部パンチ277とによって、圧締めされて切刃インサート圧粉体277が形成される。このようにして得られた切刃インサートは、2つのコーナー領域に同じグレードの超硬材料粉末を有し、中心領域に異なる種類の超硬材料粉末を有する複合物を含んでいる。
【0054】
本発明の物品の実施形態はまた、回転バイトのためのインサートをも含んでいる。モジュール型の回転バイトは、典型的には、切刃本体に固着された焼結超硬インサートを含んでいる。切刃本体は、典型的には鋼によって作ることができる。回転バイトのインサートは、例えば、クランプ又はねじによって切刃本体に固定しても良い。典型的なモジュール型ボールエンドミル300の構成部品が
図24a〜24c二示されている。モジュール型ボールエンドミル300は、ボールインサート301と鋼本体302とを含んでいる。スペードドリルもまた、モジュール型回転バイトとして製造することができる。
図25a〜25bからわかるように、典型的なモジュール型スペードドリル400は、スペードドリルインサート401と鋼本体402とを含んでいる。
【0055】
本発明の実施形態はまた、モジュール型の回転バイトのための複合インサートをも含んでいる。当該複合インサートは、少なくとも中心領域と周辺領域とを含んでおり、中心領域は第一の複合材料を含み、周辺領域は第二の複合材料を含んでいる。第一の複合材料は、少なくとも1つの特性が第二の複合材料と異なっている。この特性は、組成、粒子サイズ、弾性率、硬度、耐摩耗性、破壊靱性、引っ張り強さ、耐食性、熱膨張率及び熱伝導率からなる群から選択された少なくとも1つの特性とすることができ、複合材料は上記したものとすることができる。複合インサートは、ボールエンドミルインサート、スペードドリルインサート又はその他の回転バイトインサートであっても良い。
図26a及び26bは、本発明のボールインサートの2つの異なる実施形態を示している。
図26aのボールインサート310は、複合材料を含んでいる3つの領域311、312及び313を含んでいる。インサート310は、回転中心軸線に沿って延びている中心領域312及び2つの周辺領域311,313とを含んでいる。これらの領域は全て、異なる領域複合材料を含んでいても良く、又はこれらの領域のうちのいずれか2つは同じ材料を含んでいても良く且つその他の領域は異なる複合材料を含んでいても良い。代替的な実施形態においては、
図26bのボールインサート320は、複合材料を含んでいる2つの領域321、322を含んでいる。インサート320は、回転中心軸線に直角に延びている中心領域321と、インサート320の前方切削チップに設けられた周辺領域322とを含んでいる。
【0056】
更に別の例において、
図27a及び27bは、本発明のスペードドリルインサートの2つの異なる実施形態を示している。
図27aのスペードドリルインサート410は複合材料を含んでいる3つの領域411、412及び413を含んでいる。ボールインサート310と同様に、スペードドリルインサート410は、回転中心軸線に沿って延びている中心領域412と、2つの周辺領域411、413とを含んでいる。以前と同様に、これらの領域は、異なる複合材料を含んでいても良く、他の領域は、異なる複合材料を含んでいても良い。ボールインサート320と同様に、
図27bのスペードドリルインサート420は、複合材料を含んでいる2つの領域421、422を含んでいる。スペードドリルインサート420は、回転中心軸線に直角に延びている中心領域421と、インサート420の前方切削チップに設けられた周辺領域422とを含んでいる。代替的に、本発明の回転バイトインサートは、工具の異なる領域において、特別な特性の違いが生じる他の複合構造によって形成することができる。
【0057】
ある種の実施形態においては、当該複合インサートは、周辺領域内の第二の複合材料の弾性率と異なる弾性率と異なる弾性率を中心領域に有している複合材料を含んでいても良い。ある種の用途においては、中心領域の弾性率は、周辺領域の弾性率よりも大きくても良い。例えば、中心領域内の第一の複合材料の弾性率は、約90×10
6乃至95×10
6psi(約621×10
6乃至655×10
6kPa)とすることができ、第二の複合材料の弾性率は、約69×10
6乃至92×10
6psi(約448×10
6乃至634×10
6psi)とすることができる。
【0058】
ある種の実施形態においては、複合インサートは、周辺領域内の第二の複合材料の硬度又は耐摩耗性とは異なる硬度又は耐摩耗性を中心領域に有している複合材料を含んでいても良い。ある種の用途においては、周辺領域の硬度又は耐摩耗性は、中心領域の硬度又は耐摩耗性よりも大きくても良い。これらの特性の違いは、結合剤の濃度の違いを有している焼結超硬材料を使用することによって得ることができる。例えば、ある種の実施形態においては、第一の複合材料は、6〜15重量%のコバルト合金を含んでいても良く、第二の複合材料は10〜15重量%のコバルト合金を含んでいても良い。回転バイト切刃インサートの実施形態は、2以上の複合材料を含んでいても良く、又は2以上の領域又はその両方を含んでいても良い。
【0059】
本発明のインサートの更に別の実施形態が
図28〜31に示されている。これらの実施形態は、典型的な圧締め軸線に平行か又は頂面若しくは底面にほぼ直角な分割面を有している。言い換えると、
図28〜31の実施形態は、2つの異なる複合材料を有している複合インサートの第二の基本的な実施形態であると考えられても良い。
図28a及び28bは、周辺領域432内の2つの先端部分431に超硬合金グレードを有し且つ中心領域433内に異なる超硬合金グレードを有しているボールフライアッシュか加工インサート430の実施形態を示している。
【0060】
図29a及び29bは、複合スペードドリルインサート440の実施形態を示しており、当該インサート440は、中心領域442の切刃チップ441に超硬合金グレードを有し且つ周辺領域443に別の異なる超硬合金材料を有している。中心領域切刃444に沿った中心領域442の切削速度は、周辺領域切削領域445に沿った切削速度よりも遅いであろう。
【0061】
図30a、30b及び30cは、前記外周領域452に超硬合金グレードを有し且つ中心領域451に異なる超硬合金グレードを有している角度が付けられた側面453を有している複合的なスローアウェイ式超硬合金切刃インサートの一実施形態450を示している。中心領域451は、外周領域452の切刃により大きな耐摩耗性のグレードを支持している強靱な超硬合金グレードを含んでいても良い。更に、
図31a及び31bは、頂面と底面との両方に埋込チップブレーカ463を備えている複合的なスローアウェイ式超硬合金切刃インサート460の別の実施形態を示しており、当該切刃インサート460は、外周領域461全体に一つの超硬合金グレードを有し、中心領域462に別の異なる超硬合金グレード材料を有している。
【0062】
外周領域全体に一つの複合材料を有し、中心部分に別の異なる複合材料を有している複合切刃インサートを製造するための新規な製造方法もまた提供されている。フィーダは、一つの複合グレードが外周に沿って分布せしめられ、異なる複合材料が中心領域に分布せしめられるようにダイのキャビティを充填するように変更しても良い。当該フィーダは、多数の供給チューブによって又は1つの供給チューブによって分配されるキャビティの同心状の各領域内に重力によって供給されて金属粉末が各領域を充填するように設計することができる。本発明の方法の別の実施形態が
図32〜34に示されている。
【0063】
図32a及び32bは、
図31a及び31bに示されているような複合構造を備えた典型的な丸い切刃インサートを製造するための電動化された粉末フィーダ機構500を示している。フィーダ機構500は、2つの電動化されたユニットを含んでいても良い。第一の電動化されたユニットは、ラック501、ピニオン502、支持ブラケット503、モーター504及びモーター軸507を含んでいる。この実施形態においては、ラック501は中空筒505に結合されており、中空シリンダ形状を有している薄いスプリッタ506が中空筒505の外側筒形面に取り付けられている。
図32aに示されているように、中空筒505は、薄い筒形スプリッタ506が底部パンチ508の頂面に到達するまで、ラック501によって下方へ駆動される。このようにして、2つの区分化されたキャビティ、すなわち、中心キャビティ509と全外周キャビティ510全体とは、底部パンチ508と型511との間に形成されている。第二の電動化されたユニットは、モーター520と、モーター軸521と、小さなギヤ522と、一連の埋込ブレード524を備えている独特の構造を有している大きなギヤ523とからなる(
図33a及び33b参照)。図示されているように、大きなギヤ523は、底部支持ベース526と頂部支持ベース527との間に着座している一対のスラストギヤ525によって支持されている。
【0064】
上記のギヤ523の詳細は、
図33aにおいて平面図で及び
図33bにおいて斜視図で示されている。大きなギヤ523は、一連の標準的な又は非標準的な歯530と、一連のブレード524とを有している。ブレード524は、簡単な平らな面又は捻られた角度又は螺旋状の面を備えている平らな面の形状とすることができる。ブレードは、
図32aに示されているように、全周部分510においてキャビティ内に炭化物粉末を均一に分布させるための分配器として機能する。
【0065】
図34a及び34bは、2つの供給ホッパーを備えた一体化されたフィーダ装置を(縮尺なしで)例示している。フィーダ装置540は、駆動シャフト541を介してある種の直線精密位置決めユニットによって駆動され、このようにして、フィーダ装置540は、周辺キャビティ542と中心キャビティ543との上方に正確に配置することができる。フィーダ装置540には、金属粉末を周辺キャビティ542内に供給するための供給ホッパーユニット544と、別の供給ホッパーユニット545とが設けられている。供給ホッパー544及び545は両方とも、ホッパーベース550によって支持されている。薄い筒形スプリッタ546が底部パンチ547の頂面に配置されている。供給ホッパーユニット545からの金属粉末560は、中心キャビティ543内へ直接導入され、一方、供給ホッパーユニット544からの金属粉末562は、多数のブレード563によって周辺キャビティ542内へ導入される。多数のブレード563は、金属粉末562を、大きなギヤ564の制御された回転によって周辺キャビティ542内へ均一に分配する。好ましくは、金属粉末は全て、キャビティ内へ直接給送されるのが好ましい。
【0066】
図35においては、
図34の実施形態は、キャビティ542及び543の両方が2つの異なる金属粉末571及び572によって充填されている位置にある。この位置では、薄い筒形のスプリッタ573は、ラック575によって上方へ駆動されている中空の筒574によって型の面576の上方へ持ち上げられている。
【0067】
本明細書は、本発明の明確な理解に関係する本発明の特徴を示していることが理解されるべきである。従って、当業者に明らかであり、従って、本発明のより十分な理解を補助しない本発明のある種の特徴は、本記載を簡素化するために提供しなかった。以上、本発明の実施形態を説明したけれども、当業者は、以上の説明を考慮したときに、本発明の多くの改変及び変更を採用することができることを認識するであろう。本発明のこのような変更及び改変の全てが上記の説明及び請求の範囲によって保護されることが意図されている。