(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5885711
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】分散電源設備システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/50 20060101AFI20160301BHJP
H02J 3/16 20060101ALI20160301BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
H02J3/50
H02J3/16
H02J3/38 130
H02J3/38 160
H02J3/38 170
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-169464(P2013-169464)
(22)【出願日】2013年8月19日
(65)【公開番号】特開2015-39262(P2015-39262A)
(43)【公開日】2015年2月26日
【審査請求日】2015年6月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】オリジン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】大島 正明
(72)【発明者】
【氏名】宇敷 修一
【審査官】
横田 有光
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−114910(JP,A)
【文献】
特開2001−352682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00− 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流エネルギー源の分散電源と前記分散電源からの直流電力を交流電力に変換するパワコンとを備えた複数の分散電源設備を一箇所の連系点で低圧単相配電線に連系して変圧器を介して電力系統に電力を供給する分散電源設備システムにおいて、
複数の分散電源設備のうち何台かのパワコンは無効電力を出力する機能を有する無効電力調整機能付パワコンとし、
残りの分散電源設備のパワコンは無効電力の調整機能を有しない通常パワコンとし、
前記無効電力調整機能付パワコンのうちいずれか1台は無効電力を出力し、
残りの分散電源設備のパワコンは有効電力のみを出力し、
複数の分散電源設備の各々のパワコンは有効電力の増加に応じて連系点電圧が所定値を超えるか否かを判定し、
連系点電圧が所定値を超えると予想されるとき、
各々のパワコンのうち無効電力を出力している前記無効電力調整機能付パワコンは無効電力を維持し、
各々のパワコンのうち有効電力を出力している無効電力調整機能付パワコンは連系点電圧が所定値を超えないように無効電力を出力すること
を特徴とする分散電源設備システム。
【請求項2】
直流エネルギー源の分散電源と前記分散電源からの直流電力を交流電力に変換するパワコンとを備えた複数の分散電源設備を一箇所の連系点で低圧単相配電線に連系して変圧器を介して電力系統に電力を供給する分散電源設備システムにおいて、
複数の分散電源設備のうち何台かのパワコンは無効電力を出力する機能を有する無効電力調整機能付パワコンとし、
残りの分散電源設備のパワコンは無効電力の調整機能を有しない通常パワコンとし、
前記無効電力調整機能付パワコンのうちいずれか1台は無効電力を出力し、
残りの分散電源設備のパワコンは有効電力のみを出力し、
複数の分散電源設備の各々のパワコンは有効電力の増加に応じて連系点電圧が所定値を超えるか否かを判定し、
連系点電圧が所定値を超えると予想されるとき、各々のパワコンのうち無効電力を出力している前記無効電力調整機能付パワコンは連系点電圧が所定値を超えないように無効電力を増大し、且つ有効電力を低減し、
さらに連系点電圧が所定値を超えると予想されるとき、各々のパワコンのうち有効電力を出力している無効電力調整機能付パワコンは連系点電圧が所定値を超えないように無効電力を出力すること特徴とする分散電源設備システム。
【請求項3】
直流エネルギー源の分散電源と前記分散電源からの直流電力を交流電力に変換するパワコンとを備えた複数の分散電源設備を一箇所の連系点で低圧単相配電線に連系して変圧器を介して電力系統に電力を供給する分散電源設備システムにおいて、
複数の分散電源設備のうち何台かのパワコンは無効電力を出力する機能を有する無効電力調整機能付パワコンとし、
残りの分散電源設備のパワコンは無効電力の調整機能を有しない通常パワコンとし、
複数の分散電源設備の各々のパワコンは有効電力のみを出力し、
複数の分散電源設備の各々のパワコンは有効電力の増加に応じて連系点電圧が所定値を超えるか否かを判定し、
連系点電圧が所定値を超えると予想されるとき、
各々のパワコンのうちいずれかの前記無効電力調整機能付パワコンは連系点電圧が所定値を超えないように無効電力を出力し、
他の前記無効電力調整機能付パワコンは有効電力を維持すること
を特徴とする分散電源設備システム。
【請求項4】
直流エネルギー源の分散電源と前記分散電源からの直流電力を交流電力に変換するパワコンとを備えた複数の分散電源設備を一箇所の連系点で低圧単相配電線に連系して変圧器を介して電力系統に電力を供給する分散電源設備システムにおいて、
複数の分散電源設備のうち何台かのパワコンは無効電力を出力する機能を有する無効電力調整機能付パワコンとし、
残りの分散電源設備のパワコンは無効電力の調整機能を有しない通常パワコンとし、
複数の分散電源設備の各々のパワコンは有効電力のみを出力し、
複数の分散電源設備の各々のパワコンは有効電力の増加に応じて連系点電圧が所定値を超えるか否かを判定し、
連系点電圧が所定値を超えると予想されるとき、各々のパワコンのうちいずれかの前記無効電力調整機能付パワコンは連系点電圧が所定値を超えないように無効電力を出力し、
さらに連系点電圧が所定値を超えると予想されるとき、他の前記無効電力調整機能付パワコンは連系点電圧が所定値を超えないように無効電力を出力すること
を特徴とする分散電源設備システム。
【請求項5】
前記無効電力調整機能付パワコンが無効電力を出力しても連系点電圧が所定値を超えると予想されるとき、前記残りの分散電源設備のパワコンは有効電力の出力を低減することを特徴とする請求項1から4に記載の分散電源設備システム。
【請求項6】
直流エネルギー源の分散電源と前記分散電源からの直流電力を交流電力に変換するパワコンとを備えた複数の分散電源設備を一箇所の連系点で低圧単相配電線に連系して変圧器を介して電力系統に電力を供給する分散電源設備システムにおいて、
複数の分散電源設備の各々のパワコンは無効電力を出力する機能を有する無効電力調整機能付パワコンとし、
前記無効電力調整機能付パワコンのうちいずれか1台は無効電力を出力し、
残りの無効電力調整機能付パワコンは有効電力のみを出力し、
各々の無効電力調整機能付パワコンは有効電力の増加に応じて連系点電圧が所定値を超えるか否かを判定し、
連系点電圧が所定値を超えると予想されるとき、
各々のパワコンのうち無効電力を出力している前記無効電力調整機能付パワコンは無効電力を維持し、
各々の無効電力調整機能付パワコンのうち有効電力を出力している無効電力調整機能付パワコンは連系点電圧が所定値を超えないように無効電力を出力すること
を特徴とする分散電源設備システム。
【請求項7】
直流エネルギー源の分散電源と前記分散電源からの直流電力を交流電力に変換するパワコンとを備えた複数の分散電源設備を一箇所の連系点で低圧単相配電線に連系して変圧器を介して電力系統に電力を供給する分散電源設備システムにおいて、
複数の分散電源設備の各々のパワコンは無効電力を出力する機能を有する無効電力調整機能付パワコンとし、
前記無効電力調整機能付パワコンのうちいずれか1台は無効電力を出力し、
残りの無効電力調整機能付パワコンは有効電力のみを出力し、
各々の無効電力調整機能付パワコンは有効電力の増加に応じて連系点電圧が所定値を超えるか否かを判定し、
連系点電圧が所定値を超えると予想されるとき、各々のパワコンのうち無効電力を出力している前記無効電力調整機能付パワコンは連系点電圧が所定値を超えないように無効電力を増大し、且つ有効電力を低減し、
さらに連系点電圧が所定値を超えると予想されるとき、各々の無効電力調整機能付パワコンのうち有効電力を出力している無効電力調整機能付パワコンは連系点電圧が所定値を超えないように無効電力を出力すること
を特徴とする分散電源設備システム。
【請求項8】
直流エネルギー源の分散電源と前記分散電源からの直流電力を交流電力に変換するパワコンとを備えた複数の分散電源設備を一箇所の連系点で低圧単相配電線に連系して変圧器を介して電力系統に電力を供給する分散電源設備システムにおいて、
複数の分散電源設備の各々のパワコンは無効電力を出力する機能を有する無効電力調整機能付パワコンとし、
各々の無効電力調整機能付パワコンは有効電力のみを出力し、
各々の無効電力調整機能付パワコンは有効電力の増加に応じて連系点電圧が所定値を超えるか否かを判定し、
連系点電圧が所定値を超えると予想されるとき、
いずれかの前記無効電力調整機能付パワコンは連系点電圧が所定値を超えないように無効電力を出力し、
他の前記無効電力調整機能付パワコンは有効電力を維持すること
を特徴とする分散電源設備システム。
【請求項9】
直流エネルギー源の分散電源と前記分散電源からの直流電力を交流電力に変換するパワコンとを備えた複数の分散電源設備を一箇所の連系点で低圧単相配電線に連系して変圧器を介して電力系統に電力を供給する分散電源設備システムにおいて、
複数の分散電源設備の各々のパワコンは無効電力を出力する機能を有する無効電力調整機能付パワコンとし、
各々の無効電力調整機能付パワコンは有効電力のみを出力し、
各々の無効電力調整機能付パワコンは有効電力の増加に応じて連系点電圧が所定値を超えるか否かを判定し、
連系点電圧が所定値を超えると予想されるとき、いずれかの前記無効電力調整機能付パワコンは連系点電圧が所定値を超えないように無効電力を出力し、
さらに連系点電圧が所定値を超えると予想されるとき、他の前記無効電力調整機能付パワコンは連系点電圧が所定値を超えないように無効電力を出力すること
を特徴とする分散電源設備システム。
【請求項10】
各パワコンは、自己の低圧単相配電線の接続点の電圧に基づいて、連系点電圧が所定値を超えるか否かを判定することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の分散電源設備システム。
【請求項11】
各パワコンは、複数台のパワコンの連系点の電圧に基づいて、連系点電圧が所定値を超えるか否かを判定することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の分散電源設備システム。
【請求項12】
各パワコンは、前記変圧器の前記分散電源側の端子電圧に基づいて、連系点電圧が所定値超えるか否かを判定することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の分散電源設備システム。
【請求項13】
各パワコンは、自己の低圧単相配電線の接続点の電圧及び複数台のパワコンの連系点の電圧に基づいて、連系点電圧が所定値を超えるか否かを判定することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の分散電源設備システム。
【請求項14】
各パワコンは、自己の低圧単相配電線の接続点の電圧及び前記変圧器の前記分散電源側の端子電圧に基づいて、連系点電圧が所定値超えるか否かを判定することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の分散電源設備システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散電源とパワコンとからなる複数の分散電源設備を一箇所の連系点で低圧単相配電線に連系した分散電源設備システムに関する。
【背景技術】
【0002】
分散電源として、太陽光発電設備や風力発電設備あるいは燃料電池など直流電力を発生する直流エネルギー源の分散電源がある。このような分散電源とパワーコンディショナ(以下、パワコンという)とを組み合わせて分散電源設備を構成し、パワコンは分散電源からの直流電力を交流電力に変換し電力系統との連系制御を行い電力系統に電力を供給する。
【0003】
通常、分散電源とパワコンとからなる分散電源設備は、電力系統の低圧単相配電線に接続される。例えば、分散電源が太陽光発電設備である場合には210Vの配電線に接続される。この場合、太陽光発電設備の導入量の拡大に伴い、複数の分散電源設備を一箇所の連系点で低圧単相配電線に連系して変圧器を介して電力系統に電力を供給することがある。
【0004】
複数の分散電源設備を一箇所の連系点で低圧単相配電線に連系した場合、分散電源設備から変圧器までを繋ぐ低圧単相配電線(引込み線)の連系点の電圧が上昇することがある。これは、複数の分散電源設備で発電した電力が電力系統に供給される逆潮流時には、逆潮流が低圧単相配電線に流れることにより、そのインピーダンスで発生する電圧分だけ連系点の電圧が上昇するからである。
【0005】
ここで、配電系統と所定の分散型電源との接続点電圧が所定の上限値を下回り、かつ、上限値を下回る所定の閾値を上回る時に、電力の運転力率が所定の下限値を下回らない条件を満たすとき無効電力を増加させるように電力を制御し、配電系統と所定の分散型電源との接続点電圧が所定の上限値を上回り、かつ、電力の運転力率が所定の下限値を下回らない場合には、無効電力を増加させるように電力を制御し、配電系統と所定の分散型電源との接続点電圧が所定の上限値を上回り、かつ、電力の運転力率が所定の下限値を下回る場合には、有効電力および無効電力を低減させるように制御するようにしたものがある(特許文献1参照)。
【0006】
る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5091439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1のものでは、それぞれの分散電源設備が接続点電圧に基づいて無効電力を増加したり有効電力を減少させたりして、分散電源設備の接続点電圧が上昇しないように制御しているが、個々の分散電源設備が個別に接続点電圧を制御するものであるので、一箇所の連系点で複数の分散電源設備が連系した場合には、他の分散電源設備での電圧制御と協調を取ることが必要となる。
【0009】
また、個々の分散電源設備は、無効電力を増加したり有効電力を減少させたりするので、最大電力点追従制御を行う場合の有効電力出力と出力抑制制御を行う場合の有効電力出力との差である出力抑制損失が増え分散電源設備の運転効率が低下する。
【0010】
本発明の目的は、複数の分散電源設備を一箇所の連系点で低圧単相配電線に連系した場合に、全体の運転効率の向上を図ることができ連系点電圧の上昇も抑制できる分散電源設備システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の分散電源設備システムは、直流エネルギー源の分散電源と前記分散電源からの直流電力を交流電力に変換するパワコンとを備えた複数の分散電源設備を一箇所の連系点で低圧単相配電線に連系して変圧器を介して電力系統に電力を供給する分散電源設備システムにおいて、複数の分散電源設備のうち何台かのパワコンは無効電力を出力する機能を有する無効電力調整機能付パワコンとし、残りの分散電源設備のパワコンは無効電力の調整機能を有しない通常パワコンとし、前記無効電力調整機能付パワコンのうちいずれか1台は無効電力を出力し、残りの分散電源設備のパワコンは有効電力のみを出力し、複数の分散電源設備の各々のパワコンは有効電力の増加に応じて連系点電圧が所定値を超えるか否かを判定し、各々のパワコンのうち有効電力を出力している無効電力調整機能付パワコンは連系点電圧が所定値を超えると予想されるときは連系点電圧が所定値を超えないように順次無効電力を出力すること特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の分散電源設備を一箇所の連系点で低圧単相配電線に連系する場合に、無効電力調整機能付パワコンを接続し、無効電力調整機能付パワコンは、連系点電圧が所定値を超えると予想されるときは連系点電圧が超えないように順次無効電力を出力するので、全体の運転効率の向上を図ることができ連系点電圧の上昇も抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る分散電源設備システムの一例の構成図。
【
図2】本発明の実施形態におけるパワコンの構成図。
【
図3】本発明の実施形態に係る分散電源設備システムの他の一例の構成図。
【
図4】本発明の実施形態に係る分散電源設備システムの別の他の一例の構成図。
【
図5】本発明の実施形態に係る分散電源設備システムの実施例の構成図。
【
図6】本発明の実施形態に係る分散電源設備システムの実施例における通常パワコンの出力電力Pxと連系点電圧V1の関係を示すグラフ。
【
図7】本発明の実施形態に係る分散電源設備システムの実施例における無効電力調整機能付パワコンの出力電力Pyと連系点電圧V1の関係を示すグラフ。
【
図8】本発明の実施形態に係る分散電源設備システムの実施例における無効電力調整機能付パワコン12yと通常パワコン12xとの並列運転時の連系点電圧V1との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の実施形態に係る分散電源設備システムの一例の構成図である。分散電源11a〜11nは、太陽光発電設備や風力発電設備あるいは燃料電池などの直流電力を発生する直流エネルギー源である。パワコン12a〜12nは分散電源11a〜11nにそれぞれ設けられ、分散電源11a〜11nからの直流電力を交流電力に変換し連系点13に連系する。すなわち、分散電源11a〜11nとパワコン12a〜12nとを組み合わせて分散電源設備14a〜14nを構成し、これら複数の分散電源設備14a〜14nは、一箇所の連系点13で低圧単相配電線15に連系され、変圧器16を介して電力系統17に電力を供給する。また、連系点13には分散電源設備側負荷18が接続され、変圧器16の電力系統17側には電力系統側負荷19が接続されている。
【0015】
複数の分散電源設備14a〜14nのうち何台かのパワコン12a〜12iは無効電力を出力する機能を有する無効電力調整機能付パワコンで構成する。これは、各々の分散電源設備14a〜14nで発電した電力が電力系統17に供給される逆潮流時には、逆潮流が低圧単相配電線15に流れることにより、そのインピーダンスZ(=R+jωL)で発生する電圧分だけ連系点13の電圧V1が上昇するので、無効電力を出力することによって連系点電圧V1の上昇を抑制するためである。
【0016】
いま、分散電源設備14a〜14nのうち何台かのパワコン12a、12bを無効電力調整機能付パワコンとし、残りの分散電源設備のパワコン12c〜12nは無効電力の調整機能を有しない通常パワコンとする。無効電力調整機能付パワコンは、例えば、本出願人の特許5184153号公報に示される単相電圧型交直変換装置を用いる。この無効電力調整機能付パワコンは、内部インピーダンスを持ち無効電力制御を行える同期単相発電機と同じ特性を持つ電圧型電圧制御方式のインバータであり、単相の無効電力を精度良く迅速に計算できる機能、例えば、特許第238358号公報に示される交流電力測定装置を有するものである。一方、通常パワコン12c〜12nは、分散電源11c〜11nで発電した直流電力を交流電力に変換する電圧型電流制御方式のインバータである。
【0017】
そして、無効電力調整機能付パワコン12a、12bのうちいずれか1台、例えば、無効電力調整機能付パワコン12aは無効電力Qaを出力する。
図1では、無効電力調整機能付パワコン12aは無効電力Qaだけでなく有効電力Paも出力している場合を示している。また、残りの分散電源設備のパワコン12b〜12nは有効電力Pb〜Pnのみを出力する。
【0018】
この状態で、各々のパワコン12a〜12nは有効電力Pの増加に応じて連系点電圧V1が所定値を超えるか否かを判定する。
図2はパワコン12の構成図である。パワコン12は分散電源11からの直流電力を電力変換部20に入力し、この電力変換部20により交流電力に変換する。その際に、電力変換部20の出力電圧Vを電圧検出器21で検出し、電力変換部20の出力電流Iを電流検出器22で検出して、連系点電圧監視部23に入力する。連系点電圧監視部23は出力電圧V及び出力電流Iに基づいて、自己の出力電力Pを演算し連系点電圧V1が所定値を超えると予想されるか否かを監視する。例えば、自己の出力電力Pと連系点電圧V1との相関関係を予め記憶しておき、自己の出力電力Pが増加したときは、その相関関係から連系点電圧V1が所定値を超えると予想されるか否かを監視する。
【0019】
連系点電圧監視部23により連系点電圧V1が所定値を超えると予想されなかったときは、既に無効電力Qaを出力しているパワコン12aはそのままの状態を維持する。同様に、有効電力Pb〜Pnのみを出力しているパワコン12b〜12nもそのままの状態を維持する。有効電力Pb〜Pnのみを出力しているパワコン12b〜12nは、最大電力追従制御MPPTにより有効電力Pb〜Pnを出力する。
【0020】
次に、連系点電圧監視部23により連系点電圧V1が所定値を超えると予想されたときについて説明する。パワコン12が無効電力調整機能付パワコン12a、12bであるときは、その連系点電圧監視部23a、23bにより連系点電圧V1が所定値を超えると予想されたときは、制御部24a、24bは連系点電圧V1が所定値を超えないように無効電力を出力するように動作する。
【0021】
例えば、無効電力調整機能付パワコン12aは既に無効電力Qaを出力しているので、無効電力Qaを大きくし有効電力Paを小さくし、無効電力調整機能付パワコン12bは、無効電力調整機能付パワコン12aが無効電力Qaのみを出力する状態となっても連系点電圧V1が所定値を超えると予想されるときに、最大電力追従制御MPPTを止め無効電力Qbを出力するようにする。また、無効電力調整機能付パワコン12aの無効電力Qaはそのままに維持し、無効電力調整機能付パワコン12bが追加で無効電力Qbを出力するようにしてもよい。
【0022】
一方、パワコン12が通常パワコン12c〜12nであるときは、その連系点電圧監視部23c〜23nにより連系点電圧V1が所定値を超えると予想されたときは、制御部24c〜24nは最大電力追従制御MPPTを止め有効電力Pc〜Pnの出力を小さくする。それでも、連系点電圧V1が所定値を超えると予想されたときは、通常パワコン12c〜12nにいずれかを停止するようにしてもよい。
【0023】
なお、実際には、無効電力調整機能付パワコン12a、12bにより無効電力を出力するので、連系点電圧V1が所定値を超えると予想される状態は解除される。従って、通常パワコン12c〜12nの制御部24c〜24nは最大電力追従制御MPPTを維持することになる。
【0024】
以上の説明では、無効電力調整機能付パワコンと通常パワコンとを混在させた場合について説明したが、すべてのパワコンを無効電力調整機能付パワコンとしてもよい。この場合、無効電力Qを出力しないときは、無効電力調整機能付パワコンは最大電力追従制御MPPTで有効電力Pを出力することになる。
【0025】
次に、本発明の実施形態の他の一例を説明する。
図3は本発明の実施形態に係る分散電源設備システムの他の一例の構成図である。この他の一例は、
図1に示した実施形態に対し、無効電力調整機能付パワコンのうちいずれか1台は無効電力を出力することに代えて、常時は、各々のパワコンは有効電力のみを出力し、連系点電圧が所定値を超えると予想されるときは無効電力調整機能付パワコンから無効電力を出力するようにしたものである。
図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0026】
図3(a)において、いま、分散電源設備14a〜14nのうちのパワコン12a、12bを無効電力調整機能付パワコンとし、残りの分散電源設備のパワコン12c〜12nは無効電力の調整機能を有しない通常パワコンとする。そして、常時は、各々のパワコン12a〜12nは最大電力追従制御MPPTにより有効電力Pa〜Pnのみを出力している。この状態で、各々のパワコン12a〜12nの連系点電圧監視部23a〜23nは有効電力Pa〜Pnの増加に応じて連系点電圧V1が所定値を超えるか否かを判定する。
【0027】
連系点電圧監視部23a〜23nにより連系点電圧V1が所定値を超えると予想されなかったときは、各々のパワコン12a〜12nはそのままの状態を維持する。一方、無効電力調整機能付パワコン12a、12bの連系点電圧監視部23a、23bにより連系点電圧V1が所定値を超えると予想されたときは、パワコン12a、12bのうちのいずれかが連系点電圧V1が所定値を超えないように無効電力を出力する。いま、パワコン12aが無効電力を出力するように動作したとする。
【0028】
図3(b)は、パワコン12aが有効電力Paを出力しつつ無効電力Qaを出力している状態を示す構成図である。そして、パワコン12aが無効電力Qaのみを出力する状態となっても連系点電圧V1が所定値を超えると予想されるときには、パワコン12bが最大電力追従制御MPPTを止め無効電力Qbを出力する。なお、パワコン12a、12bの双方が有効電力Pa、Pbを出力しつつ無効電力Qa、Qbを出力するようにしてもよい。
【0029】
一方、通常パワコン12c〜12nの連系点電圧監視部23c〜23nにより連系点電圧V1が所定値を超えると予想されたときは、制御部24c〜24nは最大電力追従制御MPPTを止め有効電力Pc〜Pnの出力を小さくする。それでも、連系点電圧V1が所定値を超えると予想されたときは、通常パワコン12c〜12nにいずれかを停止するようにしてもよい。なお、実際には、無効電力調整機能付パワコン12a、12bにより無効電力を出力するので、連系点電圧V1が所定値を超えると予想される状態は解除される。従って、通常パワコン12c〜12nの制御部24c〜24nは最大電力追従制御MPPTを維持することになる。
【0030】
以上の説明では、無効電力調整機能付パワコンと通常パワコンとを混在させた場合について説明したが、すべてのパワコンを無効電力調整機能付パワコンとしてもよい。この場合、無効電力Qを出力しないときは、無効電力調整機能付パワコンは最大電力追従制御MPPTで有効電力Pを出力することになる。
【0031】
また、以上の説明では、各々のパワコン12a〜12nは、パワコン12a〜12nの出力電圧V及び出力電流Iを検出し、自己の出力電圧V及び出力電流Iに基づいて、自己の出力電力Pを演算し連系点電圧V1が所定値を超えると予想されるか否かを監視するようにしたが、
図4(a)に示すように、自己の出力電圧V及び出力電流Iに加えて、連系点電圧V1及び連系点電流I1を検出し、自己の低圧単相配電線の接続点の電圧V及び出力電流I、複数台のパワコン12a〜12nの連系点電圧V1及び連系点電流I1に基づいて、連系点電圧V1が所定値を超えるか否かを判定するようにしてもよい。
【0032】
例えば、自己の出力電力Pと連系点電圧V1との相関関係に加え、自己の出力電力Pの増加分と連系点電圧V1の上昇分との相関関係から、連系点電圧V1が所定値を超えると予想されるか否かを判定する。また、自己の出力電圧V及び出力電流Iの検出を省略し、連系点電圧V1及び連系点電流I1に基づいて連系点電力P1を演算し、連系点電力P1の増加分と連系点電圧V1の上昇分との相関関係から、連系点電圧V1が所定値を超えると予想されるか否かを判定するようにしてもよい。
【0033】
また、
図4(b)に示すように、自己の出力電圧V及び出力電流Iに加えて、
変圧器17の分散電源14側の端子電圧V2及び端子電流I2を検出し、自己の低圧単相配電線の接続点の電圧V及び出力電流I、変圧器17の分散電源14側の端子電圧V2及び端子電流I2に基づいて、連系点電圧V1が所定値を超えるか否かを判定するようにしてもよい。
【0034】
例えば、自己の出力電力Pと連系点電圧V1との相関関係に加え、自己の出力電力Pの増加分と変圧器17の分散電源14側の端子電圧V2の上昇分との相関関係から、連系点電圧V1が所定値を超えると予想されるか否かを判定する。
【0035】
また、自己の出力電圧V及び出力電流Iの検出を省略し、変圧器17の分散電源14側の端子電圧V2及び端子電流I2に基づいて端子電力P2を演算し、端子電力P2の増加分と連系点電圧V1の上昇分との相関関係から、連系点電圧V1が所定値を超えると予想されるか否かを判定するようにしてもよい。
【0036】
図5は本発明の実施形態に係る分散電源設備システムの実施例の構成図である。
図5に実施例において、分散電源設備側負荷18、分散電源11x、11yとして太陽光発電設備、そのパワコンとして通常パワコン12xと無効電力調整機能付パワコン12yとを用意し、分散電源設備14x、14yとした。そして、連系点電圧V1、低圧単相配電線15のインピーダンスをZ(=R+jωL)、変圧器16、電力系統17の交流電圧Vac、他の住宅側負荷あるいは電力系統側負荷19を備えた分散電源設備システムを構成した。
【0037】
分散電源設備側負荷18は2kW、電力系統側負荷19は5kWとし、交流電圧源Vac(=200V)は単相、変圧器16の巻数比は1対1とした。また、実施例では、実際の配電系統よりも厳しくし、30kVAの変圧器16から住宅へ引き込むまでの距離を100mとし、低圧配電線の抵抗値RをR=0.9Ω、リアクタンス値XをjωL=0.9Ωとした。
【0038】
パワコン12a、12bの出力が零である初期状態は、電力系統側から分散電源設備側負荷18へ2kWの電力供給P0があり、連系点電圧V1は190Vに電圧降下した。
【0039】
次に、通常パワコン12xのみを運転し、有効電力Pxによる連系点電圧V1の変化を測定した。日射量の増加に伴い分散電源11xの発電量が増加し、パワコン12xから電力系統17側に逆潮流する電力によって連系点電圧V1が上昇する。
図6にパワコン12xの有効電力Pxと連系点電圧V1の関係を示す。
【0040】
図6の曲線S1に示すように、パワコン12xの運転前は、連系点電圧V1は電力系統17から分散電源設備側負荷18への潮流による低圧単相配電線15の電圧降下で190Vとなる。パワコン12xの運転後において、分散電源設備側負荷18への電力供給は電力系統17からパワコン12xへ徐々に切替り、低圧単相配電線15の電圧降下が低減する。そして、分散電源設備側負荷18への供給がパワコン14xのみになると、パワコン14xから2kWの有効電力Pxが供給され連系点電圧V1は199Vになる。このときの連系点電圧V1の電圧上昇は9.2Vとなる。
【0041】
パワコン12xからの電力供給がさらに増加し、配電系統へ逆潮流すると低圧単相配電線15の電圧降下によって、連系点電圧V1は、199Vを超えて上昇する。例えば、パワコン14xから3kWの有効電力Pxが供給されると、逆潮流電力は他の電力系統側負荷19に供給され、連系点電圧V1の電圧上昇は13.4Vとなる。電力系統17の系統電圧Vacの変化は無視できるとし、低圧単相配電線のインピーダンスZのみの電圧変化に着目する。
【0042】
次に、無効電力調整機能付パワコン12yのみ運転し、有効電力Pyと無効電力Qyとによる連系点電圧V1の変化を測定した。太陽電池設備である分散電源11yの出力増加に伴い発電量が増加し、パワコン12yの有効電力Pyの出力も増加する。パワコン12yから電力系統17側への逆潮流によって連系点電圧V1が上昇するが、パワコン12yは無効電力Qyも同時に発生するため、連系点電圧V1の上昇を抑制する。
【0043】
図7に無効電力Qyを出力するパワコン12yの有効電力Pyと連系点電圧V1との関係を示す。
図7では通常パワコン12xによる有効電力Pxの曲線S1も併せて記載している。
図7の曲線S2に示すように、有効電力Pyによる電圧上昇分と無効電力Qyによる電圧降下分の相殺によって、有効電力3kW時の電圧上昇は4.5Vになり、有効電力Pxのみの通常パワコン12xに比べ、8.9Vの電圧上昇抑制となっている。
【0044】
有効電力Pyが5kW時でも電圧上昇は6.1Vであり、逆潮流時であっても系統電圧Vacより低く抑制されている。この時点の無効電力Qyは,約1.3kVarである。無効電力Qyは無効電力調整機能付パワコン12yの出力電流Iyと出力電圧Vyとの位相差から生じている。
【0045】
次に、無効電力調整機能付パワコン12yのみを運転し、その後に通常パワコン12xを運転し、有効電力P(Py,Px+Py)と無効電力Qyによる連系点電圧V1の変化を測定した。
図8に無効電力調整機能付パワコン12yと通常パワコン12xとの並列運転時の連系点電圧V1との関係を示す。
図8では通常パワコン12xによる有効電力Pxの曲線S1も併せて記載している。
図8の曲線S3に示すように、無効電力調整機能付パワコン12yのみを運転し、有効電力P(Py)を3kWまで出力した後、通常パワコン12xを追加運転して2台の並列運転を実施した。
【0046】
無効電力調整機能付パワコン12yによって,無効電力Qyが発生している低圧単相配電線に、通常パワコン12xより、さらに有効電力Pxが2kWが逆潮流しているが、電圧上昇は4vとなり、通常パワコン12x単体では、9.2Vの電圧降下が観測されたが、パワコン12yとの並列運転時は、5.2Vの電圧抑制ができた。このように、無効電力調整機能付パワコン12yは、通常パワコン12xと並列して連系した場合にも連系点電圧V1の電圧上昇抑制機能を発揮する。
【0047】
本発明の実施形態では、無効電力調整機能付パワコン12から有効電力Pと無効電力Qとを同時に発生させることで、逆潮流時の電圧上昇値を抑制できる。また、一箇所の連系点13に複数のパワコン12を接続し、各パワコン12が有効電力Pを出力しているときに、少なくとも何れか1台が無効電力Qを出力することで逆潮流時の電圧上昇値を抑制できる。
【0048】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
11…分散電源、12…パワコン、13…連系点、14…分散電源設備、15…低圧単相配電線、16…変圧器、17…電力系統、18…分散電源設備側負荷、19…電力系統側負荷、20…電力変換部、21…電圧検出器、22…電流検出器、23…連系点電圧監視部、24…制御部