特許第5885750号(P5885750)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5885750
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】バッファ降伏電圧が増大されたHEMT
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20160301BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20160301BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20160301BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20160301BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
   H01L29/80 H
   H01L29/78 301B
【請求項の数】20
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-534901(P2013-534901)
(86)(22)【出願日】2011年7月31日
(65)【公表番号】特表2013-544021(P2013-544021A)
(43)【公表日】2013年12月9日
(86)【国際出願番号】US2011046065
(87)【国際公開番号】WO2012054122
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2014年6月20日
(31)【優先権主張番号】12/908,458
(32)【優先日】2010年10月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591150672
【氏名又は名称】ナショナル セミコンダクター コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL SEMICONDUCTOR CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】サンディープ バヘル
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンチン ブルシー
【審査官】 棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−010262(JP,A)
【文献】 特開2010−206048(JP,A)
【文献】 特開2006−196869(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/001607(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/095−098
H01L 21/336−338
H01L 29/778
H01L 29/78
H01L 29/80−812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
増加されたバッファ降伏電圧を有するトランジスタであって、
第1の導電型の基板であって、上面を有する、前記基板と、
前記基板内に位置する第2の導電型のウェルであって、上面を有する、前記ウェルと、
前記基板の前記上面及び前記ウェルの前記上面に接するバッファ層であって、上面を有する、前記バッファ層と、
前記バッファ層の前記上面に接するチャネル層であって、III族窒化物を含み上面を有する、前記チャネル層と、
前記チャネル層の前記上面に接するバリア層であって、III族窒化物を含む、前記バリア層と、
前記チャネル及びバリア層にオーミック接触する、離間された金属ソース領域及び金属ドレイン領域であって、前記金属ドレイン領域が前記ウェルの直上にある、前記金属ソース領域及び金属ドレイン領域と、
を含み、
前記ウェルが前記ドレイン領域の下の部分から前記ソース領域の下に向けて前記ドレイン領域と前記ソース領域との間の中心を越えた位置へ横方向に延び、前記ウェルが前記ドレイン領域の下にあって前記ソース領域の下になく、前記基板と前記ウェルとにより形成される接合が直列に動作する接合隔離バリアを形成し、それにより前記バッファ降伏電圧が増加する、トランジスタ。
【請求項2】
請求項1に記載のトランジスタであって、
前記金属ドレイン領域が前記ウェルから垂直方向に間隔を空けて配される、トランジスタ。
【請求項3】
請求項1に記載のトランジスタであって、
前記バッファ層に接し、且つ、前記チャネル層及び前記バリア層の領域に接し且つそれらの横方向の間にある、インプラント隔離領域を更に含む、トランジスタ。
【請求項4】
請求項1に記載のトランジスタであって、
前記基板内に位置する整合マーク開口を更に含み、前記金属ドレイン領域が前記整合マーク開口に対し所定の空間的関係を有する、トランジスタ。
【請求項5】
請求項1に記載のトランジスタであって、
前記バリア層に接する、又は絶縁性層により前記バリア層から分離される、金属ゲートを更に含む、トランジスタ。
【請求項6】
請求項1に記載のトランジスタであって、
前記バッファ層が、
前記基板の上面及び前記ウェルの前記上面に接する第1のバッファ層と、
前記第1のバッファ層内に位置し、前記ウェルの前記上面に接する第2の導電型の領域と、
前記第1のバッファ層に接する第2のバッファ層であって、前記チャネル層が前記第2のバッファ層の上面に接する、前記第2のバッファ層と、
を含む、トランジスタ。
【請求項7】
請求項6に記載のトランジスタであって、
前記第1のバッファ層が前記第2のバッファ層より薄い、トランジスタ。
【請求項8】
請求項6に記載のトランジスタであって、
前記第1のバッファ層内に位置する第2の導電型の前記領域が、前記ウェルの直上にあり且つ前記ウェルに接する、トランジスタ。
【請求項9】
請求項6に記載のトランジスタであって、
前記第1のバッファ層内に位置し、前記基板の上面に接する第1の導電型の領域を更に含む、トランジスタ。
【請求項10】
請求項9に記載のトランジスタであって、
前記第1のバッファ層内に位置する第1の導電型の前記領域が、前記第1のバッファ層内に位置する第2の導電型の前記領域に接する、トランジスタ。
【請求項11】
増加されたバッファ降伏電圧を有するトランジスタを形成する方法であって、
上面を有する、第1導電型の基板を形成することと、
前記基板内に、上面を有する、第2導電型のウェルを形成することと、
前記基板の前記上面及び前記ウェルの前記上面に接するようにバッファ層を形成することであって、前記バッファ層が上面を有する、前記バッファ層を形成することと、
前記バッファ層の前記上面に接するようにチャネル層を形成することであって、前記チャネル層がIII族窒化物を含み且つ上面を有する、前記チャネル層を形成することと、
前記チャネル層の前記上面に接するようにバリア層を形成することであって、前記バリア層がIII族窒化物を含む、前記バリア層を形成することと、
前記チャネル層にオーミック接触する、離間された金属ソース領域及び金属ドレイン領域を形成することであって、前記金属ドレイン領域が前記ウェルの直上にある、前記金属ソース領域及び金属ドレイン領域を形成することと、
を含み、
前記ウェルが前記ドレイン領域の下の部分から前記ソース領域の下に向けて前記ドレイン領域と前記ソース領域との間の中心を越えた位置へ横方向に延び、前記ウェルが前記ドレイン領域の下にあって前記ソース領域の下になく、前記基板と前記ウェルとにより形成される接合が直列に動作する接合隔離バリアを形成し、それにより前記バッファ降伏電圧が増加する、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
前記金属ドレイン領域が前記ウェルから垂直方向に間隔を空けて配される、方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、
開口を形成するように前記バリア層及び前記チャネル層の一部を取り除くことを更に含み、前記開口の底部が前記バッファ層の一部を露出させ、前記開口の側壁が前記チャネル層及び前記バリア層の一部を露出させる、方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法であって、
前記基板内に整合マーク開口を形成することを更に含み、前記金属ドレイン領域が前記整合マーク開口に対し所定の空間的関係を有する、方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法であって、
前記バリア層に接するように、又は絶縁性層により前記バリア層から分離されるように、金属ゲートを形成することを更に含む。
【請求項16】
請求項11に記載の方法であって、
前記バッファ層を形成することが、
前記基板の前記上面及び前記ウェルの前記上面に接するように第1のバッファ層を形成することであって、前記第1のバッファ層が上面を有する、前記第1のバッファ層を形成することと、
前記第1のバッファ層内に前記ウェルの上面に接する第2の導電型の領域を形成することと、
前記第1のバッファ層の前記上面に接するように第2のバッファ層を形成することであって、前記チャネル層が前記第2のバッファ層の上面に接する、前記第2のバッファ層を形成することと、
を含む、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、
前記第1のバッファ層が前記第2のバッファ層より薄い、方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、
前記第1のバッファ層内の第2の導電型の前記領域が、前記ウェルの直上にあり且つ前記ウェルに接する、方法。
【請求項19】
請求項16に記載の方法であって、
前記第1のバッファ層内に前記基板の上面に接する第1の導電型の領域を形成することを更に含む、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
前記第1のバッファ層内の第1の導電型の前記領域が、前記第1のバッファ層内の第2の導電型の前記領域に接する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物(III−N)HEMTに関し、特に、バッファ降伏電圧が増大されたIII族窒化物のHEMTに関する。
【背景技術】
【0002】
III族窒化物の高電子移動度トランジスタ(HEMT)は、より広いバンドギャップ及び優れた電子飽和速度があるため、パワーエレクトロニクスに潜在的な優位性を示してきた。これらの材料特性は、高い降伏電圧、低いオン抵抗、及び高速スイッチングを実現する。III族窒化物のHEMTはまた、シリコンベースのトランジスタよりも高い温度で動作し得る。これらの特性により、III族窒化物のHEMTは、照明及び車両制御のような高効率の電力レギュレーションのアプリケーションに良好に適している。
【0003】
図1は、従来のIII族窒化物のHEMT100を例示する断面図を示す。図1に示されるように、III族窒化物のHEMT100は、基板110と、基板110の上面上に形成された層状領域112とを含む。層状領域112は、頂部にバリア層114、中間にチャネル層116、及び基板110とチャネル層116との間にある底部にバッファ層118を含む。バリア層114、チャネル層116、及びバッファ層118はそれぞれ、In、Ga及びAlのうちの1つもしくは複数を含むIII族を有する、1つもしくは複数の連続的なIII族窒化物層で典型的に実装される。例えば、バリア層114は、通常、AlGaNから形成され、チャネル層116は、通常、GaNから形成される。
【0004】
下記文献1において説明されるように、HEMTのチャネル層及びバリア層は、チャネル層の頂部にある二次元電子ガス(2DEG)の形成を誘発する、異なる分極特性及びバンドギャップを有する。高濃度の電子を有する2DEGは、従来の電界効果トランジスタ(FET)のチャネルと類似している。
【非特許文献1】Mishra et al., “AlGaN/GaN HEMTs - An Overview of Device Operation and Applications”, Proceedings of IEEE, Vol. 90, No. 6, June 2002, pp. 1022-1031
【0005】
天然のIII族窒化物の基板は容易に入手することができないので、層状領域112は、従来、有機金属化学気相成長法(MOCVD)や分子線エピタキシー法(MBE)などのエピタキシャル蒸着技術を使用して、基板110上に成長される。バッファ118は、格子定数の差に対処し且つ最小転位の成長表面を提供するために、基板110とチャネル層116との間に遷移層を提供する。
【0006】
SiCが妥当な低い格子不整合(〜3%)と高い熱伝導率を有するため、基板110は、SiCで一般に実装される。しかしながら、SiC基板は、高価でありサイズが制限される。また、Siの低コスト及びSi処理インフラテクチャーの利用しやすさのため、基板110は、Siでも一般に実装される。しかしながら、Si基板は、ウエハの応力及びそれに伴うたわみにより、6インチの基板上でのバッファ層118の厚みが2〜3μmに制限される。
【0007】
2〜3μmのバッファの厚みの制限の1つは、薄いバッファ層がデバイスの降伏電圧に制限を与える点である。これは、バッファ降伏電圧が極めて低いためである。例えば、2μmの厚みのバッファは300Vで降伏する。バッファ降伏電圧を増加させるひとつのアプローチは、基板をフローとさせることである。基板をフローティングにすることで、バッファ降伏電圧は、電圧が2つのバッファ層の厚みによって支持されるので、2倍の600Vとなる。
【0008】
例えば、図1に示されるように、Si基板がフローティングされドレイン−ソースが降伏すると、降伏電流が、降伏通路部分A、B、Cを含む、ドレインからソースへの通路を流れる。降伏通路部分A及びCはそれぞれ約300Vの降伏電圧を有するのに対し、降伏通路部分Bはオーミック(ohmic)である。それ故、全降伏電圧(600V)を達成するためには、基板110は、半分の降伏電圧(300V)までフロートすることができなければならない。
【0009】
しかしながら、基板をフローティングするための要件は、デバイス間の容量性結合に起因するクロストークの大きな問題を引き起こす。また、フローティング基板はパッケージングの大きな問題を引き起こす。従来のパッケージを用いる場合、III族窒化物のHEMTは、非導電性エポキシを使用して取り付けられる。しかしながら、非導電性エポキシは、導電性エポキシよりも熱伝導率が悪い。このことは、III族窒化物のデバイスが電力アプリケーションに意図され、良質なヒートシンクを持つ必要性があるために重要な問題を引き起こす。
【0010】
AlNのような高い熱伝導率を持つ中間の絶縁層を使用する、改良されたヒートシンクを有するパッケージがある。しかしながら、これらは高価であり、しかも導電性エポキシで直接取付けるよりも、なお低い熱伝導率を有する。さらに、基板が直接接触されていないので、フローティング基板の電圧が特定されない。規制されない電圧は、回路設計において好ましくない。それ故、III族窒化物のHEMTを形成する代替的なアプローチが必要である。
【発明の概要】
【0011】
本発明のトランジスタは、バッファ降伏電圧を増大させる。本発明の或るトランジスタが、第1導電型の基板、及び基板に位置する第2の導電型のウェルを含む。この基板及びウェルは各々上面を有する。このトランジスタは、基板の上面及びウェルの上面に接するバッファ層、及びバッファ層の上面に接するチャネル層を更に含む。バッファ層及びチャネル層は各々上面を有し、チャネル層はIII族窒化物を含む。このトランジスタは、チャネル層の上面に接するバリア層と、チャネル層に接触する、離間された金属ソース領域及び金属ドレイン領域とを更に含む。バリア層はIII族窒化物を含む。金属ドレイン領域はウェルの直上にある。
【0012】
本発明におけるトランジスタを形成する或る方法が、第1の導電型の基板を形成すること、及びこの基板に第2の導電型のウェルを形成することを含む。基板及びウェルはいずれも上面を有する。この方法は、基板の上面及びウェルの上面に接するようにバッファ層を形成すること、及びバッファ層の上面に接するようにチャネル層を形成することを更に含む。バッファ層及びチャネル層はいずれも上面を有し、チャネル層はIII族窒化物を含む。この方法は、チャネル層の上面に接するようにバリア層を形成すること、及びチャネル層に接触する、離間された金属ソース領域及び金属ドレイン領域を形成することを更に含む。バリアはIII族窒化物を含む。金属ドレイン領域はウェルの直上にある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来のIII族窒化物のHEMT100を例示する断面図である。
図2】本発明に従ったIII族窒化物のHEMT200を形成する方法の一例を示す一連の断面図である。
図3】本発明に従ったIII族窒化物のHEMT200を形成する方法の一例を示す一連の断面図である。
図4】本発明に従ったIII族窒化物のHEMT200を形成する方法の一例を示す一連の断面図である。
図5】本発明に従ったIII族窒化物のHEMT200を形成する方法の一例を示す一連の断面図である。
図6】本発明に従ったIII族窒化物のHEMT200を形成する方法の一例を示す一連の断面図である。
図7A】本発明に従った単一のIII族窒化物のHEMT200の動作を例示する断面図である。
図7B】本発明に従った一対の隣り合ったIII族窒化物のHEMT200の動作を例示する断面図である。
図8】本発明の第1の代替の実施例によるIII族窒化物のHEMT800を形成する方法の一例を示す一連の断面図である。
図9】本発明の第1の代替の実施例によるIII族窒化物のHEMT800を形成する方法の一例を示す一連の断面図である。
図10】本発明の第1の代替の実施例によるIII族窒化物のHEMT800を形成する方法の一例を示す一連の断面図である。
図11】本発明の第1の代替の実施例によるIII族窒化物のHEMT800を形成する方法の一例を示す一連の断面図である。
図12】本発明の第1の代替の実施例によるIII族窒化物のHEMT800を形成する方法の一例を示す一連の断面図である。
図13】本発明の第2の代替の実施例によるIII族窒化物のHEMT1300を形成する方法の一例を示す一連の断面図である。
図14】本発明の第2の代替の実施例によるIII族窒化物のHEMT1300を形成する方法の一例を示す一連の断面図である。
図15】本発明の第2の代替の実施例によるIII族窒化物のHEMT1300を形成する方法の一例を示す一連の断面図である。
図16】本発明の第2の代替の実施例によるIII族窒化物のHEMT1300を形成する方法の一例を示す一連の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図2図6は、本発明に従ったIII族窒化物のHEMT200を形成する方法の一例を例示する一連の断面図を示す。以下により詳細に述べるように、本発明の方法は、ドレイン下のシリコン基板内にPN接合を形成して、直列に動作し、それによりバッファ降伏電圧を増加させる、接合隔離バリアを形成する。
【0015】
図2に示すように、本発明の方法は、従来通り形成される単結晶の低濃度にドープされたP型のSi基板220(例えば<111>)を用いる。更に図2に示すように、本発明の方法は、パターニングされたフォトレジスト層212を基板210の上面上に形成することにより開始する。
【0016】
パターニングされたフォトレジスト層212は従来の方式で形成され、この方式は、フォトレジストの層を堆積すること、マスクとして知られるパターニングされた黒/透明ガラスプレートを介して光を投射して、光に曝されたフォトレジスト領域を軟化させるフォトレジストの層上に、パターニングされた画像を形成すること、及び軟化されたフォトレジスト領域を取り除くことを含む。パターニングされたフォトレジスト層212が形成された後、基板210の露出された領域はエッチングされて、整合マーク216を含むHEMT構造214を形成する。パターニングされたフォトレジスト層212はその後取り除かれる。
【0017】
図3に図示するように、パターニングされたフォトレジスト層212の除去の後、従来の方式で、パターニングされたフォトレジスト層220が基板210の上面上に形成される。パターニングされたフォトレジスト層220が形成された後、リン及び/又はヒ素などのN型ドーパントが、パターニングされたフォトレジスト層220内の開口を介して基板210にインプラントされる。次に、インプラントを拡散及び活性化するためにアニールが実行され、それにより、基板210にNウェル232を含む中間HEMT構造230が形成される。パターニングされたフォトレジスト層220はその後取り除かれる。
【0018】
図4に図示するように、パターニングされたフォトレジスト層220が取り除かれると、基板210上に層状領域240が形成される。層状領域240は、バッファ層242、チャネル層244、及びバリア層246を含む。バッファ層242、チャネル層244、及びバリア層246は、各々、In、Ga及びAlのうちの1つもしくは複数を含むIII族を有する、1つもしくは複数の連続的なIII族窒化物の層で実装され得る。例えば、バッファ層242は、AlN(熱的に安定した材料)、AlGaN、及びGaNの連続した層で実装され得る。また、チャネル層244は、例えばGaNで実装され得、バリア層246は、例えばAlGaNで実装され得る。
【0019】
層状領域240は、従来の方法で形成され得、この方法では、例えば、MOCVDリアクタに中間HEMT構造230を配置し、基板構造210の上面にバッファ層242、バッファ層242の上面にチャネル層244、チャネル層244の上面にバリア層246をエピキャシタル成長させる。
【0020】
図5に図示するように、層状領域240の従来通りの形成に続いて、この方法は、Nウェル232の直上に金属ドレイン領域254を配置するために整合マーク216が用いられることを除き従来の方式で、金属ゲート領域250、金属ソース領域252、及び金属ドレイン領域254を形成することによって、III族窒化物のHEMT200の形成を完了する。
【0021】
金属ゲート領域250は、ショットキー接触するように形成され、他方、金属ソース領域252及び金属ドレイン領域254は、チャネル層244とオーミック接触するよう形成される。代替的に、図5の点線で示されるように、ゲート250は、絶縁層ISOによってバリア層246から絶縁され得る。
【0022】
また、この方法は、整合マーク216及び非デバイス領域の上にあるバリア層246及びチャネル層244を取り除くことにより、隣接するデバイスを隔離する。バリア層246及びチャネル層244が、整合マーク216及び非デバイス領域の上から取り除かれるとき、この除去は開口256を形成し、開口256の底部がバッファ層242の一部を露出させ、開口256の側壁がチャネル層244及びバリア層246の一部を露出させる。
【0023】
代替的に、図6に示すように、この方法は、整合マーク216及び非デバイス領域の上にあるバリア層246及びチャネル層244の領域に窒素など隔離種をインプラントすることにより、隣接するデバイスを隔離することができる。(このインプラントは更に、隔離種をバッファ層242へ途中まで駆動する。)バリア層246及びチャネル層244がインプラントされるとき、このインプラントは、バッファ層242より上にあり、チャネル層244及びバリア層246の領域に接し且つそれらの横方向の間にある、インプラント隔離領域258を形成する。
【0024】
図7A及び図7Bは、本発明に従ったIII族窒化物のHEMT200の動作を例示する断面図を示す。図7Aは、単一のIII族窒化物HEMT200の動作を示す。図7Aに示すように、ドレイン対ソースが降伏したとき、降伏通路部分A、B、及びCを含む、金属ドレイン領域254から金属ソース領域252までの通路を降伏電流が流れる。
【0025】
しかし、P基板210内のNウェル232の形成は、経路部分Bを遮断する空乏領域260を備えたPN接合を形成する。降伏経路Aはまだアクティブであるが、それがオンにされると、PN接合を逆方向バイアスさせ、それにより、降伏経路B及びCをオフにする。これは、バッファ降伏電圧を増大させるPN接合の逆方向バイアスされた降伏電圧であるため、Nウェル232を形成するために用いられるドーパント濃度は、逆方向バイアスされた降伏電圧を最大化させるように選択される。
【0026】
それ故、本発明の効果の1つは、金属ドレイン領域254下にPN接合を形成することによって、薄いバッファ層(例えば、2〜3μm厚み)がSi基板上に成長されるときにバッファ降伏電圧が実質的に増大され得る点である。改良されたバッファ降伏電圧は、III族窒化物HEMT200に対し一層高い降伏電圧を提供する。
【0027】
図7Bは、一対の隣り合ったIII族窒化物HTMT200の動作を示す。図7Bに示すように、III族窒化物HEMT200の各ドレイン254は、対応するNウェル232の上の中央に置かれる。Nウェル232は、III族窒化物HEMT200のソース252程度に遠くまで左へ、及び、図7Bに示すように、III族窒化物HEMT200の隣接する対のゲート間の中間点にほぼ一致する地点までの等価的距離右へ、横方向に延長し得る。
【0028】
Nウェル232の幅は、ドレイン254からバッファ層242へ及び基板210へ流れ、それにより、対応するNウェル232のPN接合あたりへ行く任意の降伏電流が、Nウェル232の逆方向バイアスされた降伏電圧とほぼ同等である電圧を低下させたことを確実にするよう実験的に決定される。III族窒化物HEMT200は、横方向寸法より比較的小さい垂直の寸法を有する横型高電圧トランジスタであるため、トランジスタはNウェル232の幅に対応するよう充分大きな横方向寸法を有する。
【0029】
図7Bに更に示すように、PN接合は、Nウェル232を電気的にフローティングとさせ、P型基板210を電気的にグランド(接地)させることを可能にする。そのため、本発明の別の利点は、P型基板210をグランドさせることが、隣接するデバイス間のクロストークを減らす点である。また、P型基板210をグランドさせることで、非導電性エポキシよりも良好な熱伝導率を提供する導電性エポキシが、III族窒化物のHEMT200をパッケージに取り付けるのに使用され得る。
【0030】
図8図12は、本発明の第1の代替的な実施例によるIII族窒化物のHEMT800の形成する方法の一例を例示する一連の断面図を示す。III族窒化物HEMT800を形成する方法は、パターニングされたフォトレジスト層212の除去までは、III族窒化物HEMT200を形成する方法と同じであるため、両方の方法に共通の構造を示すために同様の参照符号を用いる。
【0031】
図8に図示するように、パターニングされたフォトレジスト層212が取り除かれると、例えば、MOCVDリアクタ内に中間HEMT構造214を配置することにより、及び従来の方式で基板210の上面上に第1のバッファ層810をエピタキシャル成長させることにより、第1のバッファ層810が形成される。バッファ層242より実質的に薄い第1のバッファ層810の成長は、中間HEMT構造812を形成する。第1のバッファ層810は、In、Ga及びAlのうちの1つもしくは複数を含むIII族を有する、1つもしくは複数の連続的なIII族窒化物の層で実装され得る。第1のバッファ層810は、AIN又は高Al組成(例えば、50%を上回る)を有する頂部層を備えた1つ又は複数のIII族窒化物材料のシーケンスなど、熱的に安定した材料で実装されることが好ましい。
【0032】
図9に図示するように、第1のバッファ層810が形成された後、中間HEMT構造812がリアクタから取り除かれ、パターニングされたフォトレジスト層814が従来の方式で第1のバッファ層810の上面上に形成される。パターニングされたフォトレジスト層814が形成された後、リンおよび/またはヒ素のようなN型のドーパントが、パターニングされたフォトレジスト層814内の開口を介して及び第1のバッファ層810を介してインプラントされて、基板210内のN型インプラントされた領域を形成する。インプラントのドーパント濃度は、Nウェル232を形成するために用いられるドーパント濃度にほぼ等しくなるよう選択され得る。
【0033】
これに続き、SiなどのN型ドーパントが、パターニングされたフォトレジスト層814内の開口を介して第1のバッファ層810にインプラントされて、第1のバッファ層810内にN型インプラントされた領域を形成する。インプラントのドーパント濃度は、Nウェル232を形成するために用いられるドーパント濃度にほぼ等しくなるように選択され得る。パターニングされたフォトレジスト層814はその後、中間HEMT構造816を形成するように取り除かれる。
【0034】
図10に図示するように、パターニングされたフォトレジスト層814が取り除かれると、中間HEMT構造816がリアクタに戻され、インプラントされたドーパントを拡散及び活性化するためにアニールが実行され、それにより、基板210にNウェル820を、及びNウェル820より上にありNウェル820に接する第1のバッファ層810にN型領域822を形成する。
【0035】
(Nウェル820及びN型領域822は、代替的に個別のマスクを用いて形成されてもよい。例えば、Nウェルは、図9に示すパターニングされたフォトレジスト層814のみがN型領域822を形成するために用いられるように、第1のバッファ層810が図3に図示するようなパターニングされたフォトレジスト層220を用いて形成される前に、形成され得る。)
【0036】
アニールに続いて、第2のバッファ層824が、従来の方式で第1のバッファ層810の上面上に第2のバッファ層824をエピタキシャル成長することにより形成される。第1のバッファ層810の厚み及び第2のバッファ層824の厚みは、バッファ層242の厚みにほぼ等しい。
【0037】
第2のバッファ層824が形成されると、従来の方式で、第2のバッファ層824上にチャネル層826がエピタキシャル成長され、チャネル層826上にバリア層828がエピタキシャル成長される。第2のバッファ層824、チャネル層826、及びバリア層828は、In、Ga及びAlのうちの1つもしくは複数を含むIII族を有する、1つもしくは複数の連続的なIII族窒化物の層で実装され得る。
【0038】
例えば、第2のバッファ層824は、AlGaN及びGaNの連続した層で実装され得、チャネル層826はGaNで実装され得、バリア層828はAlGaNで実装され得る。第1のバッファ層810、第2のバッファ層824、チャネル層826、及びバリア層828は、層状領域830を形成する。
【0039】
図11に図示するように、バリア層828の従来の形成に続き、この方法は、金属ドレイン領域844をNウェル820及びN型領域822の直上に配置するために整合マーク216が用いられることを除き、従来の方式で、金属ゲート領域840、金属ソース領域842、及び金属ドレイン領域844を形成することにより、III族窒化物HEMT800の形成を終了する。
【0040】
金属ゲート領域840はショットキー接触をするように形成され、他方で金属ソース領域842および金属ドレイン領域844は、チャネル層826とオーミック接触するよう形成される。代替的に、図11の点線で示されるように、ゲート840は、絶縁層ISOによってバリア層828から絶縁され得る。
【0041】
また、この方法は、整合マーク216及び非デバイス領域上にあるバリア層828及びチャネル層826を取り除くことにより、隣接するデバイスを隔離させる。バリア層828及びチャネル層826が整合マーク216及び非デバイス領域の上から取り除かれるとき、この除去は開口846を形成し、開口846の底部がバッファ層824の一部を露出させ、開口846の側壁がチャネル層826及びバリア層828の一部を露出させる。
【0042】
代替的に、図12に示すように、この方法は、整合マーク216及び非デバイス領域の上にあるバリア層828及びチャネル層826の領域に、窒素などの隔離種をインプラントすることにより、隣接するデバイスを隔離することができる。(このインプラントはまた、隔離種をバッファ層824へ途中まで駆動する。)バリア層828及びチャネル層826がインプラントされるとき、このインプラントは、バッファ層824より上にあり、且つ、チャネル層826及びバリア層828の領域に接し且つそれらの横方向の間にあるインプラント隔離領域848を形成する。
【0043】
そのため、本発明の第1の代替実施例の利点の一つは、基板210とバッファ層との間のインタフェースに存在し得る如何なる漏れ電流も最小化するNウェル820の直上の第1のバッファ層810内にN型領域822を形成することである。それ以外は、III族窒化物HEMT800は、III族窒化物HEMT200と同じく動作する。
【0044】
図13図16は、本発明の第2の代替的な実施例によるIII族窒化物1300を形成する方法の一例を例示する一連の断面図を示す。III族窒化物HEMT1300を形成する方法は、パターニングされたフォトレジスト層814の除去までは、III族窒化物HEMT800を形成する方法と同じであるため、両方の方法に共通の構造を示すために同様の参照符号を用いる。
【0045】
図13に図示するように、パターニングされたフォトレジスト層814の除去に続いて、パターニングされたフォトレジスト層1310が、従来の方式で第1のバッファ層810上に形成される。パターニングされたフォトレジスト層1310が形成された後、MgなどのP型ドーパントが、パターニングされたフォトレジスト層1310内の開口を介して第1のバッファ層810にインプラントされて、第1のバッファ層810内にインプラントされた領域を形成する。
【0046】
インプラントされた領域を形成するために用いられるドーパント濃度は、P型基板210を形成するために用いられるドーパント濃度にほぼ等しくなるように選択される。パターニングされたフォトレジスト層1310は、その後取り除かれて、中間HEMT構造1314を形成する。(パターニングされたフォトレジスト層1310は、任意選択で、パターニングされたフォトレジスト層814が形成される前に形成されてもよい。)
【0047】
図14に図示するように、パターニングされたフォトレジスト層1310が取り除かれた後、中間HEMT構造1314がリアクタに戻され、インプラントされたドーパントを拡散及び活性化するためにアニールが実行され、それにより、基板210にNウェル820を、Nウェル820より上にあり且つNウェル820に接する第1のバッファ層810にN型領域822を、及び第1のバッファ層810にP型領域1316を形成する。この拡散に続いて、図14に示すように、P型領域1316はN型領域822に接し、それにより、第1のバッファ層810内にPN接合を形成する。
【0048】
図15に図示するように、アニールが終了した後、この方法は、III族窒化物HEMT1300を形成するための第1の代替実施例に関連して説明したように、即ち、第2のバッファ層824、チャネル層826、及びバリア層828、及び金属コンタクト840、842、及び844を形成することにより、継続する。
【0049】
そのため、本発明の第2の代替実施例の利点の一つは、P型領域1316及びN型領域822を備えた第1のバッファ層810にPN接合を形成することが、基板210とバッファ層との間のインタフェースに存在し得る如何なる漏れ電流をも更に最小化する点である。
【0050】
代替的に、図16に示すように、アニール後に、拡散されたP型ドーパントが、N型領域822を形成する拡散されたN型ドーパントに接するように伸張しないように、パターニングされたフォトレジスト層1310が配置され得、それにより、P型領域1316とN型領域822との間にギャップ1320を形成するようにしてもよい。それ以外は、III族窒化物HEMT1300の変形はいずれも、III族窒化物HEMT800と同じく動作する。
【0051】
上記説明が本発明の例示であり、本明細書に記載された発明の様々な代替物が発明を実施するにあたり採用され得ることが理解されるべきである。例えば、III族窒化物のHMTは、デプレーションモードのデバイスとして従来通り形成されるが、エンハンスメントモードのデバイスとしても形成され得る。
【0052】
本発明は、デバイスの基板とバッファ層の構造が同じであるため、エンハンスメントモードのデバイスにも均等に十分に適用される。それゆえ、以下の請求項が発明の範囲を規定し、これらの請求項の範囲内の構造および方法とその均等物とがカバーされることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16