(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材主面から面外方向に延在する複数の凸部または凹部から構成されるドットを含む微細構造層を備え、前記微細構造層は、前記基材主面内の第1方向において、前記複数のドットがピッチPyで配列された複数のドット列を構成し、一方、前記基材主面内の前記第1方向に直交する第2方向において、前記複数のドット列がピッチPxで配列された複数のドット列を構成しており、
前記ピッチPyおよび前記ピッチPxはいずれか一方がナノオーダーの一定間隔であり他方がナノオーダーの不定間隔であるか、またはいずれもナノオーダーの不定間隔であり、
不定間隔の前記ピッチPyは、各ドットの中心間の距離に等しく、不定間隔の前記ピッチPxは、前記複数のドットが前記ピッチPyで配列された複数のドット列間距離に等しく、かつ、前記ピッチPyおよび前記ピッチPxは各ドットの直径より大きく、
前記ピッチPyが不定間隔である場合には、少なくとも隣接する4個以上m個以下の前記ドット間の前記ピッチPyn(3≦n≦2aまたは3≦n≦2a+1。ただし、m、aは正の整数であり、n=m−1である。)は、下記式(1)の関係を満たすとともに、前記第1方向において、前記ピッチPy1〜Pynで構成されるドット群が少なくとも1個以上配列され、
前記ピッチPxが不定間隔である場合には、少なくとも隣接する4個以上m個以下の前記ドット間の前記ピッチPxn(3≦n≦2aまたは3≦n≦2a+1。ただし、m、aは正の整数であり、n=m−1である。)は、下記式(2)の関係を満たすとともに、前記第2方向において、前記ピッチPx1〜Pxnで構成されるドット列群が少なくとも1個以上配列されることを特徴とする樹脂モールド。
Py1<Py2<Py3<…<Pya>…>Pyn (1)
Px1<Px2<Px3<…<Pxa>…>Pxn (2)
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態について、以下、具体的に説明する。
【0028】
本実施の形態に係る光学用基材は、基材主面から面外方向に延在する複数の凸部または凹部から構成されるドットを含む微細構造層を備え、前記微細構造層は、前記基材主面内の第1方向において、前記複数のドットがピッチPyで配列された複数のドット列を構成し、一方、前記基材主面内の前記第1方向に直交する第2方向において、前記複数のドット列がピッチPxで配列された複数のドット列を構成しており、前記ピッチPyおよび前記ピッチPxはいずれか一方がナノオーダーの一定間隔であり他方がナノオーダーの不定間隔であるか、またはいずれもナノオーダーの不定間隔であることを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、ナノオーダーの凹凸構造が光学用基材表面に設けられることにより、光学用基材表面に半導体層を設ける際に、半導体層のCVD成長モードが乱され、相成長に伴う転位欠陥が衝突して消滅し、転位欠陥の低減効果を生じさせることができる。半導体結晶内の転位欠陥が低減することにより、半導体発光素子の内部量子効率IQEを高めることが可能となる。
【0030】
また、ナノオーダーの凹凸を有する光学用基材が、少なくとも2層以上の半導体層と発光層とを積層して構成される積層半導体層を有する半導体発光素子の最表面に設けられることにより、その表面に構成される透明導電膜または電極パッドとの接触面積が増大し、コンタクト抵抗を低減することが可能である。
【0031】
さらに、ピッチPyとピッチPxの両方、またはいずれか一方が不定間隔であることから、光学用基材表面に設けられる凹凸のナノオーダーでの周期性は乱れることとなり、半導体層中からの発光に対し、光散乱性を強く発現させることができる。この光散乱性によって導波モードを解消し光取り出し効率LEEを高めることが可能となる。
【0032】
ピッチPyおよびピッチPxのいずれか一方が一定間隔であり、他方が不定間隔である場合には、ピッチPyおよびピッチPxがともに不定間隔である場合に比べて、ナノオーダーの凹凸間隔が小さくなる。これにより、周期性の乱れによる光散乱効果は低下するが、CVD成長モードによる転位欠陥の低減効果、あるいは、透明導電膜または電極パッドとの接触面積が増大し、コンタクト抵抗の低減効果をより高めることができる。
【0033】
一方、ピッチPyおよびピッチPxがともに不定間隔である場合には、CVD成長モードによる転位欠陥の低減効果、あるいは、コンタクト抵抗の低減効果は、低下するが、周期性の乱れによる光散乱効果をより高めることができる。
【0034】
ピッチPyとピッチPxの両方を不定間隔とするか、あるいは、ピッチPyかピッチPxのいずれか一方を不定間隔とするかは、光学用基材の表面状態、目的により種々選択し、最適な構造を選択することができる。例えば、転位欠陥と光散乱効果との選択においては、転位欠陥が比較的生じにくい光学用基材、CVD装置またはCVD条件の場合には、光散乱効果を高めるため、ピッチPyとピッチPxの両方を不定間隔とする構造を採用すればよい。また、転位欠陥が比較的多く生じやすい光学用基材、CVD装置またはCVD装置条件の場合には、転位欠陥の低減効果を高めるため、ピッチPyかピッチPxのいずれか一方を不定間隔とする構造を採用すればよい。
【0035】
また、コンタクト抵抗と光散乱効果との選択においては、透明導電膜または電極パッドと最表層半導体層の生成条件や種類により種々選択し、最適な構造を選択することができる。例えば、比較的オーミック特性がよいp型半導体層と透明導電膜との組み合わせの場合には、光散乱効果を高めるため、ピッチPxとピッチPyの両方を不定間隔とする構造を採用すればよい。また、逆にオーミック特性がよくない場合には、接触面積増大によるコンタクト抵抗の低減効果を高めるために、ピッチPyかピッチPxのいずれか一方を不定間隔とする構造を採用すればよい。
【0036】
以下、本実施の形態に係る光学用基材について詳細に説明する。光学用基材とは、半導体発光素子と隣接する基材であり、少なくとも1層以上のn型半導体層と少なくとも1層以上のp型半導体層と1層以上の発光層から構成される半導体発光素子の、n型半導体層、発光半導体層、p型半導体層のいずれかに隣接する基材である。
【0037】
例えば、
図1は、本実施の形態の光学用基材を適用した半導体発光素子の断面模式図である。
図1に示すように、半導体発光素子100においては、光学用基材101の一主面上に設けられた微細構造層102上にn型半導体層103、発光半導体層104およびp型半導体層105が順次積層されている。また、p型半導体層105上には透明導電膜106が形成されている。また、n型半導体層103表面にカソード電極107が、透明導電膜106表面にアノード電極108がそれぞれ形成されている。なお、光学用基材101上に順次積層されたn型半導体層103、発光半導体層104およびp型半導体層105を、積層半導体層110と称する。
【0038】
なお、
図1においては、光学用基材101の一主面上に設けられた微細構造層102上に半導体層103、104、105を順次積層しているが、光学用基材101の微細構造層102が設けられた面と相対する他の一主面上に半導体層を順次積層してもよい。
【0039】
図2は、本実施の形態の光学用基材を適用した半導体発光素子の別の一例の断面模式図である。
図2に示すように、半導体発光素子200において、光学用基材201上には、n型半導体層202、発光半導体層203およびp型半導体層204が順次積層されている。また、p型半導体層204上には、p型半導体層204と接する一主面上に微細構造層205を有する本実施の形態の光学用基材である透明導電膜206が設けられている。また、n型半導体層202表面にカソード電極207が、透明導電膜206表面にアノード電極208がそれぞれ形成されている。
【0040】
図2においては、透明導電膜206の微細構造層205が設けられる主面は、p型半導体層204と隣接しているが、p型半導体層204と相対する主面に設けてもよい。
【0041】
図3は、本実施の形態の光学用基材を適用した半導体発光素子の別の一例の断面模式図である。
図3に示すように、半導体発光素子300においては、光学用基材301上にn型半導体層302、発光半導体層303、および、発光半導体層303と相対する主面上に微細構造層305が設けられた本発明の光学用基材であるp型半導体層304が順次積層されている。光学用基材301のn型半導体層302と接する主面とは反対側の主面にカソード電極306が、p型半導体層304表面にアノード電極307がそれぞれ形成されている。
【0042】
図1から
図3に示した半導体発光素子100、200、300は、ダブルヘテロ構造の半導体発光素子に、本実施の形態の光学用基材を適用した例であるが、積層半導体層の積層構造はこれに限定されるものではない。また、基材とn型半導体層との間に、図示しないバッファ層を設けてもよい。
【0043】
次に、
図4を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る光学用基材の構成について詳細に説明する。
図4は、第1の実施の形態に係る光学用基材1の一例を示す斜視模式図である。
図4に示すように、光学用基材1は、概して平板形状を有しており、基材11と、この基材11の一主面上に設けられた微細構造層12と、を備えている。微細構造層12は、基材11の主面から上方に突出する複数の凸部13(凸部列13−1〜13−N)を含む。凸部13は、それぞれ特定の間隔を持って配置されている。
【0044】
微細構造層12は、基材11の主面上に別途形成してもよいし、基材11を直接加工して形成してもよい。
【0045】
なお、
図4においては、微細構造層12の微細構造が複数の凸部13で構成される例について示しているが、これに限られず、微細構造層12の微細構造は複数の凹部で構成されていてもよい。
図5は、第1の実施の形態に係る光学用基材の他の例を示す斜視模式図である。
図5に示すように、光学用基材1aは、概して平板形状を有しており、基材11aと、この基材11aの一主面上に設けられた微細構造層12aと、を備えている。微細構造層12aは、微細構造層12aの表面Sから基材11a主面側に向けて陥没した複数の凹部14(凹部列14−1〜14−N)を含む。凹部14は、それぞれ特定の間隔を持って配置されている。
【0046】
微細構造層12aは、基材11aの主面上に別途形成してもよいし、基材11aを直接加工して形成してもよい。
【0047】
以下、光学用基材1,1aにおける微細構造層12、12aの微細構造を構成する凸部13または凹部14を「ドット」と称する。
【0048】
図6は、光学用基材1の平面模式図である。
図6に示すように、ドット(凸部13または凹部14)は、基材11主面内の第1方向D1において、複数のドットが不定間隔Py(ピッチPy1,Py2,Py3,…)で配列された複数のドット列(凸部列13−1〜13−Nまたは凹部列14−1〜14−N)を構成する。また、各ドット列は、基材11主面内で第1方向D1に直交する第2方向D2において、不定間隔Px(ピッチPx1,Px2,Px3,…)で配置されている。
【0049】
また、本実施の形態の光学用基材において、ナノオーダーの不定間隔が変動幅δであることが好ましい。具体的には
図6において、ピッチPy1、Py2、Py3は、Pyav±δの範囲である。
【0050】
平均ピッチの概念図を
図7に示す。ここで、変動幅δは、第1方向D1におけるドット列13−1を構成する複数のドット間のピッチPyの標準偏差σの3倍の値であり、第1方向D1のピッチPyを100点以上計測して算出される値で定義される。また、変動幅δは、平均ピッチPyavより小さいことが好ましい。変動幅δは、特に、平均ピッチPyavの1%以上50%以下の範囲であると、ドット列13−1を構成する複数のドット間のピッチPyの大きさが適度な範囲となるので、CVD成長モードによる転位欠陥の低減効果とコンタクト抵抗の低減効果を発現できる。変動幅δは、さらに、平均ピッチPyavの5%以上30%以下の範囲であると、CVD成長モードによる転位欠陥低減効果とコンタクト抵抗の低減効果、さらに光散乱効果が共に得られるのでより好ましい。
【0051】
以上は、第1方向D1のピッチPyについての記述であるが、第2方向D2については、PyをPxと読み替えて定義される。
【0052】
図8は、第1の実施の形態に係る光学用基材1の平面模式図である。
図8に示すように、凹凸構造12において、基材11本体の主面内に属するY軸方向において複数のドット31が配列されたドット列32−1〜32−Nを複数並設している。各ドット列32−1〜32−Nに属する複数のドット31は、互いに異なるピッチ(Py1、Py2、Py3)で不定間隔に配列されている。また、各ドット列32−1〜32−Nは、基材11本体主面内でY軸方向に直交するX軸方向(第2方向)において、一定間隔のピッチPxで並設されている。
【0053】
すなわち、第1の実施の形態に係る光学用基材1においては、各ドット列32−1〜32−Nに属する複数のドット31がY軸方向に不定間隔Py1,Py2,Py3で配置されると共に、各ドット列32−1〜32−NがX軸方向に一定間隔Pxで設けられている。この構成により、基材11本体をX軸方向から見た場合に、主面S上に複数のドット31が互いにずれて不規則に配置されるので、基材11本体の主面S内に配設される複数のドット間の繰り返しパターンの周期性が低減される。例えば、基材11本体の主面S内の斜め方向のピッチPa、Pbが異なる値となる。これにより、光学用基材1上に設けられた半導体結晶内の転移を低減できるので、内部量子効率IQEを向上できる。また、ナノオーダーであるので表面積が増加し、コンタクト抵抗を低減できる。また、凹凸構造12による光散乱性が向上するので、散乱による導波モードの解消による光取り出し効率LEEを向上できる。
【0054】
図9は、第2方向D2に前記複数のドットが一定間隔のピッチPxで配列された複数のドット列を有し、Y軸方向において、変動幅δを有するピッチPyで配列されている第1の実施の形態の光学用基材1を第1方向D1から見たときの複数のドットの配置を示す模式図である。
図9中、複数のドット31は、ドット列32−1に属するもの(図中実線で示す)と、ドット列32−2に属するもの(図中一点破線で示す)と、ドット列32−3に属するもの(図中二点破線で示す)に分けられる。同一のドット列に属する複数のドット31が、Y軸方向に不定間隔Py1、Py2、Py3で配置されている。これにより、
図9に示すように複数のドット31が互いにずれて不規則に配置され、配置が乱れることにより光散乱効果を発現させることができる。
【0055】
図10は、第1の実施の形態に係る光学用基材1における凹凸構造12を構成する複数のドット31の配置(ドットパターン)の一例を示す模式図である。
図10においては、各ドット31のピッチPyおよびピッチPxが略等しく、変動幅δがピッチPyavの20%である例を示している。
図10に示すように、各ドット列32−a、32−bがピッチPxで一定間隔に並んでいても、Y軸方向におけるドット31間のピッチPyに周期性はないことがわかる。このように、複数のドット31の存在により、光学用基材1上に設けた半導体結晶内の転位欠陥を抑制でき、さらに、複数のドット31の配置が乱れることにより光散乱効果を発現させることができる。
【0056】
ここで、互いに異なるピッチPxで不定間隔に配置された第2方向D2におけるドット列の配置例について説明する。
図11は、第2方向D2におけるドット列の配置例を示す模式図である。
図11に示すように、第2方向D2におけるドット列(
図11中DL)は、8列ずつ特定の間隔(ピッチPx)で配置されており、かつ、8列のドット列が繰り返し配置されている。この複数(z)のドット列で構成された単位を、長周期単位Lxz(ただし、zは正の整数)と称する。なお、互いに異なるピッチPyで不定間隔に配置された第1方向D1におけるドットについても、長周期単位Lyzを使用し、以下の説明と同様に配置できる。
【0057】
ピッチPxは、隣接するドット列間の距離である。ここで、長周期単位Lxzにおける少なくとも隣接する4個以上m個以下のドット列間のピッチPxn(3≦n≦2aまたは3≦n≦2a+1。ただし、m,aは正の整数であり、n=m−1である。)には、次の式(1)の関係が成り立つ。
Px1<Px2<Px3<…<Pxa>…>Pxn (1)
【0058】
なお、各ドットの直径は、ピッチPxnより小さい。ピッチPx1からPxnまでの長さは、長周期単位Lxzを構成する。
【0059】
図11は、長周期単位Lxzが8列のドット列で構成される場合、すなわち、m=8の場合を示している。この場合、n=7,a=3となるため、長周期L1において、ドット列間のピッチPxnには、次の式(2)の関係が成り立っている。
Px1<Px2<Px3>Px4>Px5>Px6>Px7 (2)
【0060】
また、長周期単位LxzにおけるピッチPxは、ピッチPxの最大値(Px(max))と、最小値(Px(min))との差で表される最大位相ずれδが、(Px(min))×0.01<δ<(Px(min))×0.66、好ましくは、(Px(min))×0.02<δ<(Px(min))×0.5、より好ましくは、(Px(min))×0.1<δ<(Px(min))×0.4、を満たすよう設定されている。
【0061】
例えば、
図11に示す長周期単位L1においては、各ドット列間のピッチPxnは次のように表される。
Px1=Px(min)
Px2=Px(min)+δa
Px3=Px(min)+δb=Px(max)
Px4=Px(min)+δc
Px5=Px(min)+δd
Px6=Px(min)+δe
Px7=Px(min)+δf
【0062】
ただし、δaからδfの値は、Px(min)×0.01<(δa〜δf)<Px(min)×0.5を満たす。隣接する長周期単位L2についても同様である。
【0063】
また、長周期単位Lxz、あるいは長周期単位Lyzにおけるzの最大値は、4≦z≦1000、好ましくは、4≦z≦100、より好ましくは、4≦z≦20、を満たすよう設定されている。
【0064】
なお、第1方向D1および第2方向D2における長周期単位LxzおよびLyzは互いに同一である必要はない。
【0065】
本実施の形態の光学用基材1において、第1方向D1においては、上記した長周期単位Lyzを有するドット群が少なくとも1個以上配列され、第2方向D2においては、上記した長周期単位Lxzを有するドット列群が少なくとも1個以上配列されることが好ましい。
【0066】
ピッチPyの不定期間隔に配置された配置は、上記説明した互いに異なるピッチPxで不定間隔に配置された第2方向におけるドット列の配置例において、ドット列をドットと読み替えることで定義される。
【0067】
第1の実施の形態に係る光学用基材1においては、微細構造層12(12a)の微細構造を構成するドットは、第1方向D1、第2方向D2ともに上記説明したような不定間隔のピッチPx,Pyで配置することもできるし(
図12参照)、第1方向D1、第2方向D2のいずれか一方のみを上記説明したような不定間隔のピッチで配置し、他方を一定間隔のピッチで配置することもできる(
図13参照)。なお、
図13においては、第1方向D1におけるドットが不定間隔で配置され、第2方向D2におけるドット列が一定間隔に配置されている。
【0068】
さらに、隣接する第1ドット列および第2ドット列間、あるいは第1ドット列および第3ドット列がそろった配置とすることもできる(
図14、
図15、
図16、
図17参照)。
【0069】
ピッチPyおよびピッチPxのいずれか一方が一定間隔であり、他方が不定間隔である場合には、ピッチPyおよびピッチPxがともに不定間隔である場合に比べて、ナノオーダーの凹凸間隔が小さくなる。これにより、周期性の乱れによる光散乱効果は低下するが、CVD成長モードによる転位欠陥の低減効果と、接触面積増大によるp型半導体層のコンタクト抵抗の低減効果をより高めることができる。
【0070】
一方、ピッチPyおよびピッチPxがともに不定間隔である場合には、CVD成長モードによる転位欠陥の低減効果と、接触面積増大によるp型半導体層のコンタクト抵抗の低減効果は低下するが、周期性の乱れによる光散乱効果をより高めることができる。
【0071】
ピッチPyとピッチPxの両方を不定間隔とするか、あるいは、ピッチPyかピッチPxのいずれか一方を不定間隔とするかは、光学用基材1の表面状態、CVD装置の特性、透明導電膜あるいはアノード電極およびp型半導体層の生成条件などにより種々選択し、最適な構造を選択することができる。例えば、転位欠陥が比較的生じにくい光学用基材1、CVD装置またはCVD条件の場合には、光散乱効果を高めるため、ピッチPyとピッチPxの両方を不定間隔とする構造を採用すればよい。また、転位欠陥が比較的多く生じやすい光学用基材1、CVD装置またはCVD条件の場合には、転位欠陥の低減効果を高めるため、ピッチPyかピッチPxのいずれか一方を不定間隔とする構造を採用すればよい。
【0072】
また、コンタクト抵抗と光散乱効果との選択においては、透明導電膜または電極パッドと最表層半導体層の生成条件や種類により種々選択し、最適な構造を選択することができる。例えば、比較的オーミック特性が良好なp型半導体層と透明導電膜あるいはアノード電極の場合には、光散乱効果を高めるため、ピッチPyとピッチPxの両方を不定間隔とする構造を採用するとよい。また、オーミック特性が比較的よくないp型半導体層と透明導電膜あるいはアノード電極の場合には、コンタクト抵抗低減効果を高めるため、ピッチPyかピッチPxのいずれか一方を不定間隔とする構造を採用するとよい。
【0073】
また、第1方向D1におけるドット間距離、あるいは第2方向D2におけるドット列間距離のいずれか一方が一定間隔で配置される場合には、一定間隔のピッチに対する不定間隔のピッチの比が、特定の範囲内にあることが好ましい。
【0074】
ここで、第1方向D1におけるドットが一定間隔Pycで配置され、第2方向D2におけるドット列が不定間隔Pxで配置される例について説明する。この場合には、一定間隔のピッチPycに対する、不定間隔のピッチPxの比は、85%〜100%の範囲内にあることが好ましい。一定間隔のピッチPycに対する、不定間隔のピッチPxの比が85%以上であれば、隣接するドット間の重なりが小さくなるため好ましい。また、一定間隔のピッチPycに対する、不定間隔のピッチPxの比が100%以下であれば、ドットを構成する凸部13の充填率が向上するため好ましい。なお、一定間隔のピッチPycに対する、不定間隔のピッチPxの比は、90%〜95%の範囲内にあることが、より好ましい。
【0075】
また、1つの長周期単位LxzあるいはLyzは、5個以上のドットから構成されると(属するピッチPxまたはPyが4以上であると)、半導体発光層内で発生した光の屈折率の長周期の変動が、ナノオーダーから遠ざかり、光散乱が生じやすくなるため好ましい。一方、十分な光取り出し効率LEEを得るためには、長周期単位Lxz、あるいはLyzは、1001個以下のドットから構成される(属するピッチPxまたはPyが1000以下である)ことが好ましい。
【0076】
第1の実施の形態に係る光学用基材1(1a)は、以上のような微細構造層12(12a)の微細構造の関係を満足することにより、光散乱効果が十分となり、かつ、ドット(凸部13または凹部14)の粗密が小さくなるため転位欠陥の低減効果が生じることとなる。その結果、ナノオーダーの凹凸で半導体層中の転位欠陥を減らすと同時に、ナノオーダーの周期性が乱れることとなり、半導体層中からの発光に対し、光散乱性を強く発現することができる。
【0077】
さらに第1の実施の形態に係る光学用基材1(1a)は、以上のような微細構造層12(12a)の微細構造の関係を満足することにより、光散乱効果が十分となり、かつ、ドット(凸部13または凹部14)の粗密による接触面積増加のためコンタクト抵抗を低減すると同時に、ナノオーダーの周期性が乱れることとなり、半導体層中からの発光に対し、光散乱性を強く発現することができる。
【0078】
続いて、第1の実施の形態に係る光学用基材1(1a)の微細構造層12(12a)の微細構造を構成するドット形状(凹凸構造)について説明する。凸部13および凹部14の形状は、本発明の効果が得られるもの範囲であれば特に限定されず、用途に応じて適時変更可能である。凸部13および凹部14の形状としては、例えば、ピラー形状、ホール形状、円錐形状、角錐形状および楕円錘形状などを用いることができる。
【0079】
本実施の形態に係る光学用基材1(1a)の微細構造層12(12a)の微細構造を構成するドット形状(凹凸構造)においては、ドットの各々の直径が、ピッチPyおよび/またはピッチPxに対応して増減することが好ましい。
【0080】
以下、ピッチに対応して増減するドットの直径の例について、詳細に説明する。
【0081】
本実施の形態に係る光学用基材1(1a)において、ピッチPyが不定間隔である場合には、少なくとも隣接する4個以上m個以下のピッチを構成するドット径Dyn(3≦n≦2aまたは3≦n≦2a+1。ただし、m、aは正の整数であり、n=m−1である。)は、下記式(3)の関係を満たすとともに、第1方向D1において、ドット径Dy1〜Dynで構成されるドット群が少なくとも1個以上配列され、ピッチPxが不定間隔である場合には、少なくとも隣接する4個以上m個以下のピッチを構成するドット径Dxn(3≦n≦2aまたは3≦n≦2a+1。ただし、m、aは正の整数であり、n=m−1である。)は、下記式(4)の関係を満たすとともに、第2方向D2において、ドット径Dx1〜Dxnで構成されるドット群が少なくとも1個以上配列されることが好ましい。
Dy1
>Dy2
>Dy3
>…
>Dya
<…
<Dyn (3)
Dx1
>Dx2
>Dx3
>…
>Dxa
<…
<Dxn (4)
【0082】
さらに、本実施の形態に係る光学用基材1(1a)においては、ピッチPyが不定間隔である場合には、少なくとも隣接する4個以上m個以下のピッチを構成するドット径Dyn(3≦n≦2aまたは3≦n≦2a+1。ただし、m、aは正の整数であり、n=m−1である。)は、上記式(3)の関係を満たすとともに、第1方向D1において、ドット径Dy1〜Dynで構成されるドット群が長周期単位Lyzで繰り返し配列され、かつピッチPxが不定間隔である場合には、少なくとも隣接する4個以上m個以下のピッチを構成するドット径Dxn(3≦n≦2aまたは3≦n≦2a+1。ただし、m、aは正の整数であり、n=m−1である。)は、上記式(4)の関係を満たすとともに、第2方向D2において、ドット径Dx1〜Dxnで構成されるドット群が長周期単位Lxzで繰り返し配列されることが好ましい。
【0083】
図18は、長周期単位Lxzが8列のドット列で構成される場合、すなわち、m=8の場合を示している。この場合、n=7、a=3となるため、長周期L1において、ドット列を構成する各ドットの径Dxnには、上記式(4)の関係が成り立っている。
【0084】
図18においては、隣接するドット間隔が広くなると、ドット径が小さくなり、ドット間隔が狭くなるとドット径が大きくなっている。増減するドット径の増減範囲は、大きすぎると隣接するドットと接するようになり好ましくなく、小さすぎると、光取り出し効率が低下するため好ましくない。同じ長周期単位Lxz内における、ドットの平均径に対し、±20%以内であると、光取り出し効率が増加し好ましい。
【0085】
上記構成により、発光光に対するドットによる周期性の乱れが大きくなり、半導体発光素子における光取り出し効率が増加することとなる。
【0086】
また、本実施の形態に係る光学用基材1(1a)の微細構造層12(12a)の微細構造を構成するドット形状(凹凸構造)においては、各ドットの各々の高さが、ピッチPyおよび/またはピッチPxに対して増減することが好ましい。
【0087】
以下、ピッチに対応して増減するドット高さの例について、詳細に説明する。
【0088】
本実施の形態に係る光学用基材1(1a)において、ピッチPyが不定間隔である場合には、少なくとも隣接する4個以上m個以下のピッチを構成するドット高さHyn(3≦n≦2aまたは3≦n≦2a+1。ただし、m、aは正の整数であり、n=m−1である。)は、下記式(5)の関係を満たすとともに、第1方向D1において、ドット高さHy1〜Hynで構成されるドット群が少なくとも1個以上配列され、ピッチPxが不定間隔である場合には、少なくとも隣接する4個以上m個以下の前記ピッチを構成するドット高さHxn(3≦n≦2aまたは3≦n≦2a+1。ただし、m、aは正の整数であり、n=m−1である。)は、下記式(6)の関係を満たすとともに、前記第2方向において、前記ドット高さHx1〜Hxnで構成されるドット群が少なくとも1個以上配列されることが好ましい。
Hy1
>Hy2
>Hy3
>…
>Hya
<…
<Hyn (5)
Hx1
>Hx2
>Hx3
>…
>Hxa
<…
<Hxn (6)
【0089】
さらに、本実施の形態に係る光学用基材1(1a)においては、ピッチPyが不定間隔である場合には、少なくとも隣接する4個以上m個以下のピッチを構成するドット高さHyn(3≦n≦2aまたは3≦n≦2a+1。ただし、m、aは正の整数であり、n=m−1である。)は、上記式(5)の関係を満たすとともに、第1方向D1において、ドット高さHy1〜Hynで構成されるドット群が長周期単位Lyzで繰り返し配列され、ピッチPxが不定間隔である場合には、少なくとも隣接する4個以上m個以下のピッチを構成するドット高さHxn(3≦n≦2aまたは3≦n≦2a+1。ただし、m、aは正の整数であり、n=m−1である。)は、上記式(6)の関係を満たすとともに、かつ、第2方向において、ドット高さHx1〜Hxnで構成されるドット群が長周期単位Lxzで繰り返し配列されることが好ましい。
【0090】
図19は、長周期単位Lxzが8列のドット列で構成される場合、すなわち、m=8の場合を示している。この場合、n=7、a=3となるため、長周期L1において、ドット列を構成する各ドットの高さHxnには、上記式(6)の関係が成り立っている。
【0091】
図19においては、隣接するドット間隔が広くなると、ドット高さが小さくなり、ドット間隔が狭くなるとドット高さが大きくなっている。増減するドット高さの増減範囲は、大きすぎるとその部分における光取り出し効率のムラが大きくなり好ましくなく、小さすぎると、ドット高さの増減による光取り出し効率の向上効果が低下するため好ましくない。同じ長周期単位Lxz内における、ドットの平均高さに対し、±20%以内であると、光取り出し効率がムラなく増加し好ましい。
【0092】
上記構成により、発光光に対するドットによる周期性の乱れが大きくなり、半導体発光素子における光取り出し効率が増加することとなる。
【0093】
また、本実施の形態に係る光学用基材1(1a)において、基材11(11a)の主面から面外方向に延在する複数の凸部13または凹部14で構成される複数のドットを含む微細構造層12(12a)を備え、微細構造層12(12a)は、基材11(11a)の主面内の第1方向D1において複数のドットが一定間隔Pyで配列されたドット列を構成し、且つ、これらのドット列を第1方向D1に直交する第2方向D2に一定間隔のピッチPxで並設し、隣接する第1ドット列および第2ドット列間の第1方向D1におけるシフト量α1と、第2ドット列および第2ドット列に隣接する第3ドット列間の第1方向D1におけるシフト量α2と、が互いに異なることを特徴とする。
【0094】
この構成によれば、まず、ピッチPyおよびピッチPxがともに一定間隔で、且つ、周期構造を有する一方、各ドット列間の第1方向D1におけるシフト量α1、α2が互いに異なるので、微細構造層12(12a)を構成する複数のドットの配置の周期性が乱れ、光散乱効果を生じさせることができる。
【0095】
また、この構成によれば、微細構造層12(12a)において、ナノオーダーの一定間隔ピッチPxで並設された複数のドット列が基材の表面に設けられるので、この基材の表面に半導体層を設ける際に、半導体層のCVD成長モードが乱され、相成長に伴う転位欠陥が衝突して消滅する。これにより、半導体結晶内の転位欠陥を低減することができるので、半導体発光素子の内部量子効率IQEを高めることができる。
【0096】
また、ナノオーダーの凹凸で形成されているので、接触面積増大によるp型半導体層のコンタクト抵抗の低減効果をより高めることができる。
【0097】
図20は、本発明の第2の実施の形態に係る光学用基材の平面模式図である。第2の実施の形態に係る光学用基材60においては、複数のドット61は、基材本体の主面内のY軸方向においてピッチPyで一定間隔に配列され、ドット列62−1〜62−Nを構成している。各ドット列62−1〜62−Nは、基材本体の主面内でY軸方向に直交するX軸方向に一定間隔のピッチPxで並設されている。そして、互いに隣接するドット列間にY軸方向においてシフト量α(位置差)が生じるように配列されている。
【0098】
すなわち、第2の実施の形態に係る光学用基材60においては、凹凸構造は、X軸方向において隣接する第1ドット列62−1および第2ドット列62−2との間のY軸方向におけるシフト量α1と、第2ドット列62−2およびこの第2ドット列62−2に隣接する第3ドット列62−3との間のシフト量α2とが、互いに異なるように設けられる。
【0099】
この構成により、基材本体の主面内における斜め方向の複数のドット61間のピッチP1〜ピッチP3が不規則となり、繰り返しパターンの周期性が低減されるので、凹凸構造による光散乱性がより強まる。
【0100】
また、第2の実施の形態に係る光学用基材60においては、シフト量α1とシフト量α2との差分が一定でないことが好ましい。この構成により、凹凸構造を構成する複数のドット61の配置の周期性、すなわち、繰り返しパターンの周期性がより低減され、さらに光散乱性を強めることができるので、半導体発光素子の光取り出し効率を向上させることができる。また、CVD成長モードによる転位欠陥の低減効果を発現できる。
【0101】
また、第2の実施の形態に係る光学用基材60においては、ピッチPyおよびピッチPxが共に一定間隔となるように設けている。このため、第1の実施の形態に係る光学用基材1においてピッチPxのみが一定間隔であり、Y軸方向のピッチPyが変動幅δを有して不定間隔である場合に比べて、ドット61の間隔が小さくなる。これにより、周期性の乱れによる光散乱効果は低下するが、CVD成長モードによる転位欠陥の低減効果をより高めることができる。
【0102】
また、ピッチPyが不定間隔である第1の実施の形態に係る光学用基材1と比較して、CVD成長モードによる転位欠陥の低減効果は低下するが、複数のドット61の配置の周期性の乱れによる光散乱効果をより高めることができる。
【0103】
この場合、シフト量α1とシフト量α2の差分が一定でないことが好ましい。この構成により、光散乱効果が更に向上するので、導波モードを解消し光取り出し効率をさらに高めることが可能となる。
【0104】
また、上記した本発明の第1および第2の実施の形態に係る光学用基材において、ピッチPxおよびピッチPyは、それぞれ100nm以上1000nm以下であることが好ましい。ピッチPx,Pyがこの範囲内にあると、ナノオーダーの凹凸が光学用基材表面に設けられることにより、光学用基材表面に半導体層を設けた場合の半導体層中の転位欠陥数を減らすことができる。ピッチPx,Pyは、100nm以上であることにより、LEDの光取り出し効率LEEが向上し、発光効率向上に寄与する転位欠陥の減少の効果が現れる。また、ピッチPx,Pyが1000nm以下であることにより、転位欠陥数の低減効果が維持される。
【0105】
光学用基材が、半導体発光素子の最表面に設けられる場合も、ピッチPx、Pyは、それぞれ100nm以上1000nm以下であることが好ましい。吸収係数による発光光減衰を抑えるために、半導体発光素子の最表面に設けられるp型半導体層は概して数μmの厚みに構成されている。そのためにp型半導体層表面に設ける凹凸の深さは、1000nm以下に抑える必要がある。光取り出し効率向上のためには、ピッチPx、ピッチPyと深さとの比であるアスペクト比は1以上が好ましいため、ピッチPxおよびピッチPyは、100nm以上1000nm以下であると好ましい。さらにピッチPx、ピッチPyが1000nm以下であると、
図2におけるp型半導体層204と本実施の形態に係る光学用基材である透明導電膜206、または、
図3における本実施の形態に係る光学用基材であるp型半導体層304とアノード電極307との接着性が向上し好ましい。
【0106】
続いて、本実施の形態に係る光学用基材により、光取り出し効率が向上する原理について説明する。
【0107】
先述のとおり、光学用基材に、ナノオーダーの凹凸(ドット)から構成される微細構造層を設けることにより、光散乱により導波モードを解消することによる光取り出し効率LEEの改善の効果が得られる。
【0108】
複数のドットから構成される長周期単位Lxzを繰り返し並べることにより、長周期単位Lxzごとに屈折率が変化し、長周期単位Lxzを構成する複数のドットが1単位となって繰り返された場合と同じ効果を生じることとなる。換言すると、波長と同程度の複数のドットの場合、平均的な屈折率分布で光の挙動を説明できるため(有効媒質近似)、空間の平均屈折率分布を計算すると、あたかも、長周期単位Lxzの複数のドットが1単位として繰り返されたように光に作用する。このように長周期単位Lxzで並べられた複数のドットは、光散乱効果を奏する。
【0109】
さらに、本実施の形態に係る光学用基材においては、ドットの各々の直径が、ピッチに応じて増減する。空間の平均屈折率分布は、構成単位の体積分率に依存し変化するため、長周期単位Lxzの複数のドットにおいて、各ドットの体積が変化するとそれだけ、平均屈折率分布の変化が大きくなり、同じ長周期単位Lxzでも、より光散乱効果が高まることとなる。この効果は、ドット間ピッチが狭い場合、ドットの直径を大きく、ドット間ピッチが広い場合、ドットの直径を小さくすることでより顕著となる。
【0110】
さらに、本実施の形態に係る光学用基材においては、ドットの高さもドット間ピッチに応じて増減する。この場合も上記した理由と同様、ドット間ピッチが狭い場合、ドット高さを大きくし、ドット間ピッチが広い場合、ドット高さを小さくすると、長周期単位Lxz内の平均屈折率分布が大きくなり、光散乱効果を増加させることになる。
【0111】
さらに、複数のドットから構成される長周期単位Lxzを繰り返し並べた配列において、上記したドットの各々の直径とドットの高さの両方を、ピッチに応じて増減させると、有効媒質近似により記述される屈折率分布の差がさらに大きくなるため好ましい。この場合、ドット間ピッチが狭い場合、ドットの直径とドットの高さを大きくし、ドット間ピッチが広い場合、ドットの直径とドットの高さを小さくすると、空間の平均屈折率分布において、構成単位の体積分率の差が大きくなり、より光散乱効果が高まり好ましい。
【0112】
本実施の形態に係る光学用基材においては、基材本体の材質は、半導体発光素子用基材として使用できるものであれば特に制限はない。例えば、サファイア、SiC、SiN、GaN,シリコン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化マンガン亜鉛鉄、酸化マグネシウムアルミニウム、ホウ化ジルコニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化リチウムガリウム、酸化リチウムアルミニウム、酸化ネオジウムガリウム、酸化ランタンストロンチウムアルミニウムタンタル、酸化ストロンチウムチタン、酸化チタン、ハフニウム、タングステン、モリブデン、GaP、GaAsなどの基材を用いることができる。なかでも半導体層との格子マッチングの観点から、サファイア、GaN、GaP、GaAs、SiC基材などを適用することが好ましい。さらに、単体で用いてもよく、これらを用いた基材本体上に別の基材を設けたヘテロ構造の基材としてもよい。
【0113】
また、本実施の形態に係る光学用基材においては、p型半導体層の材質は、LEDに適したp型半導体層として使用できるものであれば、特に制限はない。例えば、シリコン、ゲルマニウムなどの元素半導体、および、III−V族、II−VI族、VI−VI族などの化合物半導体に適宜、種々の元素をドープしたものを適用できる。
【0114】
本実施の形態に係る光学用基材においては、透明導電膜の材質は、LEDに適した透明導電膜として使用できるものであれば、特に制限はない。例えば、Ni/Au電極などの金属薄膜や、ITO、ZnO、In
2O
3、SnO
2、IZO、IGZOなどの導電性酸化物膜などを適用できる。特に、透明性、導電性の観点からITOが好ましい。
【0115】
次に、本発明の実施の形態に係る光学用基材を適用した半導体発光素子について説明する。
【0116】
本実施の形態に係る半導体発光素子においては、上述の本実施の形態に係る光学用基材を少なくとも一つ以上を構成に含む。本実施の形態に係る光学用基材を構成に入れることで、IQEの向上、EIEの構造、LEEの向上を図ることができる。
【0117】
本実施の形態に係る半導体発光素子は、例えば、基材主面上に、少なくとも2層以上の半導体層と発光層とを積層して構成される積層半導体層を有する。そして、積層半導体層が最表面半導体層主面から面外方向に延在する複数の凸部または凹部から構成されるドットを含む微細構造層を備え、この微細構造層が、上述の実施の形態に係る光学用基材の微細構造に相当する。積層半導体層については、
図1〜
図3を用いた説明した通りである。
【0118】
本実施の形態に係る半導体発光素子において、n型半導体層としては、LEDに適したに適したn型半導体層として使用できるものであれば、特に制限はない。例えば、シリコン、ゲルマニウムなどの元素半導体、III−V族、II−VI族、VI−VI族などの化合物半導体などに適宜、種々の元素をドープしたものを適用できる。また、n型半導体層、p型半導体層には、適宜、図示しないn型クラッド層、p型クラッド層を設けることができる。
【0119】
発光半導体層としては、LEDとして発光特性を有するものであれば、特に限定されない。例えば、発光半導体層として、AsP、GaP、AlGaAs、InGaN、GaN、AlGaN、ZnSe、AlHaInP、ZnOなどの半導体層を適用できる。また、発光半導体層には、適宜、特性に応じて種々の元素をドープしてもよい。
【0120】
これらの積層半導体層(n型半導体層、発光半導体層、およびp型半導体層)は、基材表面に公知の技術により製膜できる。例えば、製膜方法としては、有機金属気相成長法(MOCVD)、ハイドライド気相成長法(HVPE)、分子線エピタキシャル成長法(MBE)などが適用できる。
【0121】
続いて、本実施の形態に係る光学用基材の製造方法について説明する。ただし、以下に示す製造方法は一例であって、光学用基材の製造方法はこれに限定されるものではない。
【0122】
光学用基材の製造には露光装置が用いられる。本実施の形態に係る露光装置は、表面がレジスト層で被覆されたロール状部材をレーザ光でパルス露光して、前記レジスト層に複数の露光部からなる露光パターンを形成する露光装置であって、前記ロール状部材を中心軸周りに回転させる回転制御部と、前記レーザ光を照射する加工ヘッド部と、前記加工ヘッド部を前記ロール状部材の長軸方向に沿って移動させる軸方向移動手段と、前記回転制御部の回転と同期した基準信号に基づいて、位相変調させたパルス信号に基づくパルス露光を繰り返し、前記ロール状部材の円周に沿って前記露光パターンを形成するよう前記加工ヘッド部を制御する露光制御部と、を備えることを特徴とする。
【0123】
また、本実施の形態に係る露光装置は、表面がレジスト層で被覆されたロール状部材をレーザ光でパルス露光して、前記レジスト層に複数の露光部からなる露光パターンを形成する露光装置であって、前記ロール状部材を中心軸周りに回転させる回転制御部と、前記レーザ光を照射する加工ヘッド部と、前記加工ヘッド部を前記ロール状部材の長軸方向に沿って周期的に変化する移動速度で移動させる軸方向移動手段と、前記回転制御部の回転と同期した基準信号に基づいて制御したパルス信号に基づくパルス露光を繰り返し、前記ロール状部材の円周に沿って前記露光パターンを形成するよう前記加工ヘッド部を制御する露光制御部と、を備えることを特徴とする。
【0124】
まず、
図21を参照して、本実施の形態に係るナノインプリントモールド形成用の露光装置について説明する。
図21は、本実施の形態に係る露光装置の概略構成図である。
【0125】
本実施の形態に係る露光装置は、上記実施の形態に係る光学用基材を転写賦形によって製造するためのインプリント用モールドの表面に形成するドットパターンを、レジスト層で被覆されたロール状部材の表面をレーザ光でパルス露光して前記レジスト層に複数の露光部からなる露光パターンを形成するものである。
【0126】
ここで、インプリント用モールドは、上記実施の形態に係る光学用基材の主面上に形成するドットに対応する形状のドットを有する。言い換えれば、インプリント用モールドの表面にドットパターンが形成され、このドットパターンを光学用基材の主面上に転写して、微細構造層の複数のドットを形成する。インプリント用モールドにドットパターンを形成するために、以下に説明する露光装置を用いて、インプリント用モールドのための基材の表面に設けたレジスト層を露光する。
【0127】
図21に示すように、露光装置400は、レジスト層が被覆されたロール状部材401を図示しないロール把持部により把持しており、回転制御部402と、加工ヘッド部403と、移動機構部404と、露光制御部405と、を備えている。回転制御部402は、ロール状部材401の中心を軸として、ロール状部材401を回転させる。加工ヘッド部403は、レーザ光を照射して、ロール状部材401のレジスト層を露光する。移動機構部404は、加工ヘッド部403をロール状部材401の長軸方向に沿って、制御速度で移動させる。露光制御部405は、回転制御部402によるロール状部材401の回転と同期した基準信号に基づいて、加工ヘッド部403によるレーザ露光のパルス信号を制御する。
【0128】
露光装置400によるロール状部材401の加工は、ロール状部材401を回転させた状態で、加工ヘッド部403からパルスレーザを照射することにより行う。加工ヘッド部403は、パルスレーザを照射しながら、移動機構部404によって、ロール状部材401の長軸方向に沿って移動する。ロール状部材401の回転数およびパルスレーザの周波数から、回転方向におけるロール状部材401の外周面のレジスト層に任意のピッチでパターン406が記録される。これが、ロールツーロールナノインプリントモールドにおける第1方向D1のピッチPyとなる。
【0129】
さらに、ロール状部材401の長軸方向に沿って走査しているため、任意の位置からロール状部材401が1周すると、加工ヘッド部403が長軸方向にずれることになる。これがロールツーロールナノインプリントモールドにおける第2方向D2のピッチPxとなる。ロール状部材401の周長に比較して、パターン406のピッチPy,Pxは、ナノメートルオーダーと非常に小さいので、第1方向D1のピッチPyを維持しながら、長軸方向でみると第1方向D1のシフト量がずれた列状パターンを形成することができる。さらに、上述したように、パターン406のピッチPy,Pxは、ロール状部材401の周長に比較して非常に小さいので、第1方向D1と第2方向D2は実質的に直交する。
【0130】
ロール状部材401は、円筒状に形成された部材に回転軸が備えられているものであり、材質としては、金属、カーボンコア、ガラス、石英などが適用できる。ロール状部材401は、高回転が可能な加工精度が必要とされることから、材質は、金属、カーボンコアなどが好ましい。さらに、レーザ露光される円筒表面部のみ、異なる材料で被覆することもできる。特に、熱反応型レジストを使用するときは、断熱効果を高めるために金属よりも熱伝導率が低い材料を適用することが好ましく、ガラス、石英、酸化物、窒化物などが挙げられる。円筒表面に被覆した層を、後述するレジスト層をマスクとしてエッチングするエッチング層として、使用することも可能である。
【0131】
ロール状部材401を被覆するレジストは、レーザ光により露光されるものであれば、特に限定されるものではなく、光硬化型レジスト、光増幅型レジスト、熱反応型レジストなどが適用できる。特に、熱反応型レジストは、レーザ光の波長よりも小さい波長でパターン形成できるので好ましい。
【0132】
熱反応型レジストは、有機レジストまたは無機レジストであることが好ましい。これらのレジストにより形成されたレジスト層は、単層構造であっても、複数のレジスト層を組み合わせた多層構造であってもよい。なお、どのようなレジストを選択するかは、工程や要求加工精度などによって適宜変更することができる。例えば、有機レジストは、ロール状部材401を被覆するレジスト層を形成する際に、ロールコーターなどで塗布できるため工程が簡便となる。ただし、スリーブ上に塗布するためレジストの粘性に制限があり、塗布厚精度や制御あるいは多層にコーティングすることは難しい。
【0133】
有機レジストとしては、(株)情報機構発刊 「最新レジスト材料ハンドブック」や(株)工業調査会 「フォトポリマーハンドブック」にあるように、ノボラック樹脂またはノボラック樹脂とジアゾナフトキンとの混合物、メタクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ビニル系樹脂などが挙げられる。
【0134】
一方、無機レジストは、ロール状部材401を被覆するレジスト層を、抵抗加熱蒸着法や電子ビームスパッタ法、CVD法などの気相法などによって設けることが好適である。これらの方法は、基本的に真空プロセスになるため、スリーブ上に形成するには工数が掛かるが、膜厚が精度良く制御でき、また、多層に積層することが容易である。
【0135】
無機レジスト材料は、反応させる温度によって種々選択することができる。例えば、無機レジスト材料としては、Al,Si,P,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,As,Se,In,Sn,Sb,Te,Pb,Bi,Ag,Auおよびこれらの合金が挙げられる。また、無機レジスト材料は、Mg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,As,Se,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Pd,Ag,In,Sn,Sb,Te,Ba,Hf,Ta,W,Pt,Au,Pb,Bi,La,Ce,Sm,Gd,Tb,Dyの酸化物、窒化物、窒酸化物、炭化物、硫化物、硫酸化物、フッ化物、塩化物や、これらの混合物を適用してもよい。
【0136】
ロール状部材401を被覆するレジストとして、熱反応型レジストを使用すると、後述する回転と同期した基準信号に基づいて位相変調させたパルス信号で露光する場合、パターンを形成するドットの各々の直径が、ピッチPyおよび/またはピッチPxに対応して増減するため好ましい。熱反応型レジストを使用した場合に、ピッチに対応してドットの直径が増減する明確なメカニズムは不明であるが、つぎのように推測される。
【0137】
熱反応型レジストの場合、照射部に照射されたレーザの熱エネルギーによりレジスト層を形成する材料に変化が生じ、エッチング特性が変わることでパターンが形成される。この時、照射された熱はレジスト層の変化にすべて使われるのではなく、一部は蓄熱され隣接する領域に伝熱される。そのため、隣接する領域での熱エネルギーは、照射エネルギーに加え、隣接する領域からの伝熱エネルギーが加わることになる。ナノオーダーのパターン形成では、この伝熱エネルギーの寄与は無視できず、伝熱の寄与は、パターンを形成するドット間距離に反比例するため、結果として、得られるパターン径は、隣接するドット間距離の影響を受ける。
【0138】
ここで、ドット間距離が位相変調により変わると、上記した伝熱エネルギーの寄与が、ドット毎に異なることになり、ドット間距離が広いと、伝熱エネルギーの寄与が小さくなり、ドット径が小さくなり、ドット間距離が狭いと、伝熱エネルギーの寄与が大きくなるため、ドット径が大きくなる。
【0139】
また、ロール状部材401を被覆するレジストとして、熱反応型レジストを使用し、後述するエッチング層を設け、パターンの加工深さを制御すると、前記したと同様、回転と同期した基準信号に基づいて位相変調させたパルス信号で露光する場合、パターンを形成するドットの各々の高さが、ピッチPyおよび/またはピッチPxに対応して増減するため好ましい。熱反応型レジストとエッチング層を併用した場合に、ピッチPxに対応してドットの高さが増減するメカニズムは不明であるが、上記した、ドット間距離に応じてドット径が増減することから説明が可能である。
【0140】
すなわち、ナノオーダーのパターニングにおいて、ドット径に応じて、エッチング深さは増減し、ドット径が広くなるとエッチング深さは深くなり、ドット径が狭くなるとエッチング深さが浅くなる傾向がある。特に、エッチング手法がドライエッチングにおいて顕著である。これは、エッチャントの交換、あるいは、エッチング生成物の離脱が迅速に行われないためであると考えられる。
【0141】
前記したように、熱反応型レジストを使用すると、ドット間距離が広いとドット径が小さくなり、ドット間距離が狭いと、ドット径が大きくなる。ドット径に応じて、エッチング深さが増減する傾向があるため、結果として、ドット間距離が広いと、ドット深さは浅くなり、ドット間距離が狭いと、ドット深さが深くなる。
【0142】
以上のドット間距離と、ドット径、ドット深さの増減の影響は、平均ピッチが小さくなると顕著である。これは、上記した伝熱エネルギーの影響が大きくなるためと推定される。
【0143】
本発明においては、ロール状部材401を被覆するレジスト層を利用してそのままロールツーロールナノインプリントモールドとして適用してもよく、また、レジスト層をマスクとして、ロール状部材401の表面基材をエッチングすることによりパターンを形成してもよい。
【0144】
ロール状部材401にエッチング層を設けることで、パターンの加工深さを自由に制御でき、かつ、熱反応レジスト層の厚みを加工に最適な膜厚に選択することができる。すなわち、エッチング層の厚みを制御することで、加工深さを自由に制御できる。また、加工深さはエッチング層で制御できることから、熱反応型レジスト層は露光や現像が容易な膜厚を選択すればよい。
【0145】
露光を行う加工ヘッド部403に用いるレーザは、波長150nm以上550nm以下が好ましい。また、波長の小型化および入手の容易さから、半導体レーザを使用することが好ましい。半導体レーザの波長は、150nm以上550nm以下であることが好ましい。波長が150nmより短い場合には、レーザの出力が小さくなり、ロール状部材401を被覆するレジスト層を露光することが困難なためである。一方、波長が550nmより長い場合には、レーザのスポット径を500nm以下にすることができず、小さな露光部を形成することが困難なためである。
【0146】
一方、スポットサイズが小さな露光部を形成するためには、加工ヘッド部403に用いるレーザとして、ガスレーザを使用することが好ましい。特に、XeF、XeCl、KrF、ArF、F2のガスレーザは、波長が351nm、308nm、248nm,193nm、157nmと短く、非常に小さなスポットサイズに集光することができるため好ましい。
【0147】
また、加工ヘッド部403に用いるレーザとして、Nd:YAGレーザの2倍波、3倍波、4倍波を用いることができる。Nd:YAGレーザの2倍波、3倍波、4倍波の波長は、それぞれ532nm、355nm、266nmであり、小さなスポットサイズを得ることができる。
【0148】
ロール状部材401の表面に設けられたレジスト層に微細パターンを露光により形成する場合、ロール状部材401の回転位置精度が非常に高く、初めに焦点深度内に部材表面があるようにレーザの光学系を調整しておけば製造は容易である。しかしながら、ナノインプリントに適合するほどのロール寸法精度、回転精度を保持することは非常に困難である。そのため、露光に用いるレーザは対物レンズにより収束されロール状部材401表面が焦点深度の中に絶えず、存在するようにオートフォーカスがかけられていることが好ましい。
【0149】
回転制御部402は、ロール状部材401をロールの中心を軸に回転させる機能を有する装置であれば特に制限されるものではなく、例えば、スピンドルモーターなどが好適である。
【0150】
加工ヘッド部403をロール状部材401の長軸方向に移動させる移動機構部404としては、制御された速度で加工ヘッド部403を移動できれば特に制限されるものではなく、リニアサーボモーターなどが好適に挙げられる。
【0151】
図21に示す露光装置400では、ロール状部材401の表面上に形成される露光パターンが回転制御部402の回転(例えば、スピンドルモーターの回転)と同期した基準信号に基づいて、位相変調させたパルス信号により露光制御部405で露光部の位置を制御している。基準信号としては、スピンドルモーターの回転に同期したエンコーダーからの出力パルスを用いることができる。
【0152】
回転と同期した基準信号に基づいて位相変調させたパルス信号は、例えば、次のように制御することができる。
【0153】
図22A〜22Cを用いて、スピンドルモーターのZ相信号と、基準パルス信号、変調パルス信号との関係を説明する。Z相信号を基準とし、そのm倍(m>2の整数)の周波数のパルス信号が基準パルス信号であり、n倍(m/n>kかつk>1の整数)の周波数のパルス信号が変調パルス信号となる。基準パルス信号、変調パルス信号のいずれも、Z相信号の周波数の整数倍であるために、ロール状部材401が中心軸周りに1回転する時間内に整数のパルス信号が存在することになる。
【0154】
続いて、
図23を用いて、基準パルス信号と変調パルス信号、位相変調パルス信号との関係を説明する。基準パルス信号の位相を変調パルス信号の波長で周期的に増減させると、位相変調パルス信号となる。例えば、基準パルス周波数fY0を次の式(7)で表わし、変調周波数fYLを次の式(8)で表わすと、周波数変調させた変調パルス信号fYは次の式(9)で表せられる。
fY0=Asin(ω0t+φ0) (7)
fYL=Bsin(ω1t+φ1) (8)
fY=Asin(ω0t+φ0+Csin(ω1t)) (9)
また、次の式(10)で表わすように、基準パルス周波数fY0に、変調パルス信号から得られるサイン波を加算することでも位相変調パルス信号fY´を得ることができる。
fY´=fY0+C´sin(t・fYL/fY0×2π) (10)
【0155】
さらには、基準パルスのパルス波長LY0に、変調パルス信号の波長LYLから得られるサイン波を加算することで、位相変調パルス信号の波長LYを得ることができる。
【0156】
図23に示すように、得られる位相変調パルス信号は、変調パルス信号の信号間隔に応じて、基準パルス信号のパルス間隔が周期的に増減した信号となる。
【0157】
また、露光装置400においては、位相変調したパルス信号によらず、一定周波数の基準パルス信号を用いて加工ヘッド部403によるレーザ露光のパルス信号を制御し、移動機構部404による加工ヘッド部403の移動速度を周期的に増減させる構成としてもよい。この場合には、例えば、
図24に示すように、加工ヘッド部403の移動速度を周期的に増減する。
図24に図示した移動速度は、基準移動速度±σの移動速度の例である。この移動速度は、ロール状部材401の回転と同期させることが好ましく、例えば、Z相信号における速度が
図24に示す速度となるように制御する。
【0158】
以上は、パターン406が周期的な位相変調で制御された場合であるが、周期的でなくランダムな位相変調によってパターン406を形成することもできる。例えば第1方向D1においては、ピッチPyは、パルス周波数に反比例するので、パルス周波数に、最大位相ずれが1/10になるようにランダム周波数変調を行うと、ピッチPyは、ピッチPyの1/10の最大変動幅δ1を有し、ランダムにピッチPyが増減したパターンを得ることができる。
【0159】
回転と同期した基準信号の制御頻度については、ロール1周毎など複数回以上の頻度による基準信号により、変調パルス信号を制御してもよく、露光初期に設定した初期の基準信号のみで制御してもよい。初期の基準信号のみで制御する場合、回転制御部402の回転数に変調が生じた場合、露光パルス信号に位相変調が生じることとなる。なんとなれば、ナノオーダーの回転制御であるため、回転制御部402のわずかな電位変動でも、ナノオーダーのピッチ変動が生じ、それが積算されるためである。仮に500nmピッチのパターンピッチの場合、ロール外周長が250mmであると、50万回のレーザ露光となり、1万回毎に1nmのずれでも、50nmのずれとなる。
【0160】
同じピッチ、同じ長周期でも、基準信号の制御頻度の調整により、
図12および
図14に示す配置の微細構造を作成することが可能となる。
図12に示す配置の微細構造を形成する場合は、基準信号の制御頻度を下げており、
図14に示す配置の微細構造を形成する場合は基準信号の制御頻度を上げている。そのため、
図14に示す配置においては、該当するドットの第2方向D2の位相(位置)がそろっており、
図12に示す配置においては、該当するドットの第2方向D2の位相(位置)にずれが生じる。
図13および
図15に示す配置の関係も同様である。
【0161】
さらに、同様の理由により、第1方向D1のピッチPy、第2方向D2のピッチPxが、各々等ピッチであっても、
図20に示す第2の実施の形態に係る光学用基材60のように、X軸方向において隣接する第1ドット列62−1および第2ドット列62−2との間のY軸方向におけるシフト量α1と、第2ドット列62−2およびこの第2ドット列62−2に隣接する第3ドット列62−3との間のシフト量α2とが、互いに異なるように設けられ、シフト量α1とシフト量α2の差分は一定でない。
【0162】
この構成により、基材本体の主面内における斜め方向の複数のドット61間のピッチP1〜ピッチP3が不規則となり、繰り返しパターンの周期性が低減されるので、凹凸構造による光散乱性がより強まる。
【0163】
露光装置400により、表面に設けられたレジスト層が露光されたロール状部材401を現像し、現像したレジスト層をマスクとして、ドライエッチングによりエッチング層をエッチングする。エッチング後、残渣のレジスト層を除去すると、ロールツーロールナノインプリントモールドを得ることができる。
【0164】
上記のように得られたパターン406を、所定の基材に転写し、本実施の形態に係る光学用基材を得る方法としては特に限定されるものではなく、例えば、ナノインプリントリソグラフィ法により所定の基材表面にパターンを転写し、転写パターン部分をマスクとして、ドライエッチングにより基材をエッチングすることでパターン406を基材に転写することができる。具体的には、パターン406を形成したロール状部材401を円筒型モールド(ロールツーロールナノインプリントモールド)として用いる。基材の表面側に有機材料からなるレジスト層を形成し、このレジスト層に円筒型モールドを押し付けて、パターン406をレジスト層に転写した後、レジスト層および基材を表面側からエッチングすることで基材の表面側に微細凹凸構造を形成し、本実施の形態の光学用基材とすることができる。
【0165】
また、円筒型モールド(ロール状部材401)からパターン406を直接基材に転写するのではなく、パターン406を一度フィルムに転写し、樹脂モールドを形成してから、この樹脂モールドによるナノインプリントリソグラフィ法により基材上にパターンを形成し、本実施の形態に係る光学用基材を得る方法も挙げられる。この方法によれば、モールドの利用効率を高めて、基材の平坦性を吸収できるため、パターンを基材に転写する方法としては、樹脂モールドによるナノインプリントリソグラフィ法がより好ましい。
【0166】
円筒型モールドから樹脂モールドにパターン406を転写する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、直接ナノインプリント法が適用できる。直接ナノインプリント法としては、所定温度で加熱しながら円筒型モールドのパターン406に熱硬化性樹脂を充填し、円筒型モールドを冷却してから硬化した熱硬化性樹脂を離型して転写する熱ナノインプリント法や、円筒型モールドのパターン406に充填した光硬化性樹脂に所定の波長の光を照射し、光硬化性樹脂を硬化させてから、円筒型モールドから硬化した光硬化性樹脂を離型して転写する光ナノインプリント法が挙げられる。
【0167】
円筒型モールド(ロール状部材401)は、シームレスの円筒状モールドであるため、特に、ロールツーロールナノインプリントにより樹脂モールドを連続転写することに好適である。
【0168】
また、パターン406を転写した樹脂モールドから電鋳により電鋳モールドを作製し、この電鋳モールドによりナノインプリントリソグラフィ法によりパターンを形成する方法も挙げられる。電鋳モールドを形成した場合は、元型となる円筒型モールドの寿命を延ばす点で好ましく、電鋳モールドを一度形成する方式においても、基材の平坦性を吸収できるため、さらに樹脂モールドを形成する方法が好ましい。
【0169】
さらに、樹脂モールド法においては、繰り返し転写が容易であるため好ましい。ここでの「繰り返し転写」とは、(1)凸凹パターン形状を有する樹脂モールド(+)から、転写反転した凹凸パターン転写物を複数製造すること、または、(2)特に硬化性樹脂組成物を転写剤として用いる場合において、樹脂モールド(+)から反転した転写体(−)を得て、次に転写体(−)を樹脂モールド(−)として、反転転写した転写体(+)を得て、凸凹/凹凸/凸凹/凹凸/・・・/を繰り返しパターン反転転写することのいずれか一方、あるいは両方を意味する。
【0170】
レジスト層により基材の表面側にパターンを形成したのち、レジスト層をマスクとして、エッチングにより基材に凹凸を形成する。エッチング方法としては、レジスト層をマスクとして基材に凹凸を形成できれば、特に限定されるものではなく、ウェットエッチング、ドライエッチングなどが適用できる。特に、基材の凹凸を深く形成できるためドライエッチング法が好ましい。ドライエッチング法の中でも異方性ドライエッチングが好ましく、ICP−RIE、ECM−RIEが好ましい。ドライエッチングに使用する反応ガスとしては、基材の材質と反応すれば、特に限定されるものではないが、BCl3、Cl2、CHF3、あるいはこれらの混合ガスが好ましく、適宜、Ar、O2などを混合できる。
【実施例】
【0171】
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例をもとに本発明をより詳細に説明する。なお、実施例における材料、使用組成、処理工程などは例示的なものであり、適宜変更して実施することが可能である。その他、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、適宜変更して実施することが可能である。そのため、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0172】
[実施例1]
(円筒状金型作製(樹脂モールド作製用鋳型の作製))
【0173】
円筒状金型の基材としては、直径80mm、長さ50mmの円筒型石英ガラスロールを用いた。この円筒型石英ガラスロール表面に、次の方法により半導体パルスレーザを用いた直接描画リソグラフィ法により微細構造(微細凹凸構造)を形成した。
【0174】
まず、この石英ガラス表面の微細構造上にスパッタリング法によりレジスト層を成膜した。スパッタリング法は、ターゲット(レジスト層)として、CuO(8atm%Si含有)を用いて、RF100Wの電力で実施した。成膜後のレジスト層の膜厚は20nmであった。以上のように作製した円筒状金型を線速度s=1.0m/secで回転させながら、以下の条件で露光した。
露光用半導体レーザ波長:405nm
露光レーザパワー:3.5mW
X軸方向ピッチPx:398nm
X軸方向ピッチPxに対する変動幅δ2:80nm
変動幅δ2のX軸方向の長周期PxL :5μm
Y軸方向ピッチPy:460nm
Y軸方向ピッチPyに対する変動幅δ1:100nm
変動幅δ1のY軸方向の長周期PyL :5μm
【0175】
Y軸方向ピッチPyは次のように決定される。
【0176】
スピンドルモーターのZ相信号を基準に、1周に要する時間Tが測定され、線速度sから周長Lが計算され、次の式(11)が得られる。
L=T×s (11)
【0177】
目標ピッチをPyとして、L/Pyが整数になるように目標ピッチPyの0.1%以下の値を足して調整し、実効ピッチPy’を次の式(12)によって得る。
L/Py’=m (mは整数) (12)
【0178】
目標ピッチPyと実効ピッチPy’とは、厳密にはPy≠Py’であるが、L/Py≒10
7であるので、Py/Py’≒10
−7となり、実質的に等しいものとして扱うことができる。同様に、長周期PyLも、L/PyLが整数になるように実効長周期PyL’を次の式(13)によって得る。
L/PyL’=n (nは整数) (13)
【0179】
この場合も、厳密にはPyL≠PyL’であるが、L/PyL≒10
5であるので、PyL/PyL’≒10
−5となり、実質的に等しいものとして扱うことができる。
【0180】
次に実効ピッチPy’から、式(14),(15)により、基準パルス周波数fy0、変調周波数fyLが算出される。
fy0=s/Py’ (14)
fyL=s/PyL’ (15)
【0181】
最後に、式(14)、(15)から、スピンドルモーターのZ相信号からの経過時間tにおけるパルス周波数fyが、式(16)のように決定される。
fy=fy0+δ1×sin(t×(fyL/fy0)×2π) (16)
【0182】
X軸方向の軸送り速度は次のように決定される。
【0183】
スピンドルモーターのZ相信号を基準に、1周に要する時間Tが測定され、X軸方向ピッチPxから、軸方向の基準送り速度Vx0が次の式(17)のように決定される。
Vx0=Px/T (17)
【0184】
X軸方向の長周期PxLから、時刻tにおける軸送り速度Vxを次の式(18)で決定し、スキャンする。
Vx=Vx0+Vδ2・sin(Px/PxL×t×2π) (18)
【0185】
ここで、Vδ2は、x軸方向の長周期PxLにおける速度変動幅であり、長周期PxLのピッチ変動幅δ2,Px,Vx0により、次の式(19)で示される。
Vδ2=δ2×Vx0/Px (19)
【0186】
次に、レジスト層を現像する。レジスト層の現像は、0.03wt%のグリシン水溶液を用いて、処理時間240秒の条件で実施した。次に、現像したレジスト層をマスクとし、ドライエッチングによるエッチング層のエッチングを行った。ドライエッチングは、エッチングガスとしてSF
6を用い、処理ガス圧1Pa、処理電力300W、処理時間5分の条件で実施した。次に、表面に微細構造が付与された円筒状金型から、残渣のレジスト層のみをpH1の塩酸で6分間の条件で剥離して円筒モールド(転写用モールド)を作製した。
【0187】
(樹脂モールドの作製)
得られた円筒状の石英ガラスロール表面(転写用モールド)に対し、デュラサーフHD−1101Z(ダイキン化学工業社製)を塗布し、60℃で1時間加熱後、室温で24時間静置、固定化した。その後、デュラサーフHD−ZV(ダイキン化学工業社製)で3回洗浄し、離型処理を施した。
【0188】
次に、得られた円筒モールドからリール状樹脂モールドを作製した。OPTOOL DAC HP(ダイキン工業社製)、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)およびIrgacure 184(Ciba社製)を重量部で10:100:5の割合で混合して光硬化性樹脂を調製した。次に、この光硬化性樹脂をPETフィルム(A4100、東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚6μmになるように塗布した。
【0189】
次いで、円筒モールド(円筒状金型)に対し、光硬化性樹脂を塗布したPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が600mJ/cm
2となるように、UV露光装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン社製、Hバルブ)を用いて紫外線を照射して連続的に光硬化を実施して、表面に微細構造が反転転写されたリール状透明樹脂モールド(長さ200m、幅300mm)を得た。
【0190】
樹脂モールドを走査型電子顕微鏡で観察したところ、断面形状がφ400nm、h800nmの凸部がつぎの長周期構造を有する周期構造で形成されていた。
X軸方向ピッチPx:398nm
X軸方向ピッチPxに対する変動幅δ2:80nm
変動幅δ2のX軸方向の長周期PxL :5μm
Y軸方向ピッチPy:460nm
Y軸方向ピッチPyに対する変動幅δ1:100nm
変動幅δ1のY軸方向の長周期PyL :5μm
【0191】
(電子顕微鏡)
装置;HITACHI s−5500
加速電圧;10kV
MODE;Normal
【0192】
(反転樹脂モールドの作製)
次に、OPTOOL DAC HP(ダイキン工業社製)、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)、およびIrgacure 184(Ciba社製)を重量部で10:100:5の割合で混合して光硬化性樹脂を調製した。この光硬化性樹脂をPETフィルム(A4100、東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚2μmになるように塗布した。
【0193】
次いで、上記リール状樹脂モールドに、光硬化性樹脂を塗布したPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が600mJ/cm
2となるように、UV露光装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン社製、Hバルブ)を用いて紫外線を照射して連続的に光硬化を実施して、表面に微細構造が反転転写された透明樹脂モールドシート(長さ200mm、幅300mm)を得た。
【0194】
(ナノインプリントリソグラフィ)
φ2”厚さ0.33mmのC面サファイア基材上に、マスク材料をスピンコーティング法(2000rpm、20秒)により塗布し、レジスト層を形成した。マスク材料は、感光性樹脂組成物の固形分を5重量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈した塗布溶液を作製した。
【0195】
(感光性樹脂組成物)
感光性樹脂組成物としては、3−エチル−3{[3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン(OXT−221、東亜合成社製)20重量部、3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(和光純薬社製)80重量部、フェノキシジエチレングリコールアクリレート(アロニックス(登録商標)M−101A、東亜合成社製)50重量部、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート(アロニックス(登録商標)M−211B、東亜合成社製)50重量部、DTS−102(みどり化学社製)8重量部、1,9−ジブトキシアントラセン(アントラキュア(登録商標)UVS−1331、川崎化成社製)1重量部、Irgacure(登録商標)184(Ciba社製)5重量部およびオプツール(登録商標) DAC HP(20%固形分、ダイキン工業社製)4重量部、を混合して使用した。
【0196】
レジスト層を形成したサファイア基材上に、透明樹脂モールドシートを70mm×70mm(□70mm)に切断し貼り合わせた。貼り合わせには、サンテック社製のフィルム貼合装置(TMS−S2)を使用し、貼合ニップ力90N、貼合速度1.5m/sで貼り合わせた。次に、貼合し一体化した透明樹脂モールド/レジスト層/サファイア基材とを、□70mm×t10mmの透明シリコーン板(硬度20)2枚で挟んだ。その状態で、エンジニアリングシステム社製のナノインプリント装置(EUN−4200)を用いて、0.05MPaの圧力でプレスした。プレスした状態で、透明樹脂モールド側から紫外線を2500mJ/cm
2で照射し、レジスト層を硬化させた。硬化後、透明シリコーン板と透明樹脂モールドを剥離し、C面状にパターンが形成されたレジスト/サファイア積層体を得た。
【0197】
(エッチング)
反応性イオンエッチング装置(RIE−101iPH、サムコ株式会社製)を用い、下記エッチング条件でサファイアをエッチングした。
エッチングガス:Cl2/(Cl2+BCl3)=0.1
ガス流量:10sccm
エッチング圧力:0.1Pa
アンテナ:50w
バイアス:50w
【0198】
エッチング後、サファイア基材の断面を電子顕微鏡で観察したところ、断面形状φ400nm、h=250nmの凸部が、ナノインプリントに使用したリール状透明樹脂モールドと同様の長周期構造を含む周期構造であった。
【0199】
(半導体発光素子の形成)
得られたサファイア基材上に、MOCVDにより、(1)AlGaN低温バッファ層、(2)n型GaN層、(3)n型AlGaNクラッド層、(4)InGaN発光層(MQW)、(5)p型AlGaNクラッド層、(6)p型GaN層、(7)ITO層を連続的に積層した。サファイア基材上の凹凸は、(2)n型GaN層の積層時に埋められて、平坦化する製膜条件とした。さらに、エッチング加工し電極パッドを取り付けた。
【0200】
この状態で、プローバを用いてp電極パッドとn電極パッドの間に20mAの電流を流し発光出力を測定した。比較例1との発光出力比を表1に示す。
【0201】
[実施例2]
実施例1と同様に作製した円筒状金型を線速度s=3.0m/secで回転させながら、以下の条件で露光した。
露光用半導体レーザ波長:405nm
露光レーザパワー:3.5mW
X軸方向ピッチPx:173nm
X軸方向ピッチPxに対する変動幅δ2:17nm
変動幅δ2のX軸方向の長周期PxL :5μm
Y軸方向ピッチPy:200nm
Y軸方向ピッチPyに対する変動幅δ1:20nm
変動幅δ1のY軸方向の長周期PyL :5μm
【0202】
以下、実施例1と同様の操作により、表面に微細構造が反転転写されたリール状透明樹脂モールド(長さ200m、幅300mm)を得た。
【0203】
樹脂モールドを走査型電子顕微鏡で観察したところ、断面形状がφ150nm±15nm、h260nm±30nmの凸部がつぎの長周期構造を有する周期構造で形成されていた。
X軸方向ピッチPx:173nm
X軸方向ピッチPxに対する変動幅δ2:17nm
変動幅δ2のX軸方向の長周期PxL :5μm
Y軸方向ピッチPy:200nm
Y軸方向ピッチPyに対する変動幅δ1:20nm
変動幅δ1のY軸方向の長周期PyL :5μm
【0204】
ドット径とドット高さの最大値は、最も周囲とのドット間距離が狭いドットにおいて観察され、ドット径とドット高さの最小値は、最も周囲とのドット間距離が広いドットにおいて観察され、その間のドット径は、ドット間距離の変動幅の変調と同様な変調曲線を示した。
【0205】
以下、実施例1と同様に半導体発光素子を作製し、発光出力を測定した。発光出力比を表1に示す。
【0206】
[実施例3]
実施例1と同様に作製した円筒状金型を線速度s=1.0m/secで回転させながら、以下の条件で露光した。
露光用半導体レーザ波長:405nm
露光レーザパワー:3.5mW
X軸方向ピッチPx:260nm
X軸方向ピッチPxに対する変動幅δ2:26nm
変動幅δ2のX軸方向の長周期PxL :3.64μm
Y軸方向ピッチPy:300nm
Y軸方向ピッチPyに対する変動幅δ1:30nm
変動幅δ1のY軸方向の長周期PyL :4.2μm
【0207】
次に実施例1と同様に、表面構造が反転転写されたリール状透明樹脂モールド(長さ200m、幅300mm)が得られた。
【0208】
次に、作製したリール状透明樹脂モールドの表面を走査型電子顕微鏡により観察した。電子顕微鏡写真を
図25に示す。
図25は、平面視における凹凸構造の電子顕微鏡写真である。
図25からわかるように、この微細構造においては、Y軸方向(上下方向)、X軸方向(左右方向)ともに、ナノオーダーの凸部が不定間隔で配列され、各ピッチは、上記したピッチが、長周期で繰り返し配列されている。
【0209】
以下、実施例1と同様に半導体発光素子を作製し、発光出力を測定した。発光出力比を表1に示す。
【0210】
[実施例4]
実施例1と同様に作製した円筒状金型を線速度s=1.0m/secで回転させながら、以下の条件で露光した。
露光用半導体レーザ波長:405nm
露光レーザパワー:3.5mW
X軸方向ピッチPx:200nm
Y軸方向ピッチPy:200nm
【0211】
ピッチPyの基準信号の制御を初期のみとした。
【0212】
次に実施例1と同様に、表面構造が反転転写されたリール状透明樹脂モールド(長さ200m、幅300mm)が得られた。
【0213】
次に、作製したリール状透明樹脂モールドの表面を走査型電子顕微鏡により観察した。電子顕微鏡写真を
図26に示す。
図26から分かるように、この微細構造においては、Y軸方向(上下方向)において設定したピッチPyで凸部が列状に配列されている。また、この列状の凸部は、X軸方向(左右方向)において所定のピッチPxで繰り返し設けられていることがわかる。また、X軸方向において隣接して配列された列状の凸部間において、シフト量αが不規則であることがわかる。
X軸方向ピッチPx:200nm
Y軸方向ピッチPy:200nm
【0214】
以下、実施例1と同様に半導体発光素子を作製し、発光出力を測定した。発光出力比を表1に示す。
【0215】
[実施例5]
円筒状モールドの作製において、露光用半導体レーザの発光周波数にランダム信号を重畳し、Y軸方向のピッチPyに下記に示す変動幅δを設けた。
Y軸方向ピッチ Py:200nm±10nm
【0216】
以下、実施例1と同様に半導体発光素子を作製し、発光出力を測定した。発光出力比を表1に示す。
【0217】
[実施例6]
基材をSiCとした以外は、実施例4と同様にしてSiC基材(光学用基材)および半導体発光素子を作製し、発光出力を測定した。発光出力比を表1に示す。
【0218】
[実施例7]
実施例1と同様にして、表面に微細構造が反転転写された透明樹脂モールドシート(長さ200m、幅300mm)を得た。
【0219】
(積層半導体層の形成)
φ2”厚さ0.37mmのC面サファイア基材上に、MOCVDにより、(1)AlGaN低温バッファ層、(2)n型GaN層、(3)n型AlGaNクラッド層、(4)InGaN発光層(MQW)、(5)p型AlGaNクラッド層、(6)p型GaN層を連続的に積層し、積層半導体層を形成した。
【0220】
(ナノインプリントリソグラフィ)
得られた積層半導体層の最表面の(6)p型GaN層上に、マスク材料をスピンコーティング法(2000rpm、20秒)により塗布し、レジスト層を形成した。マスク材料は、感光性樹脂組成物の固形分を5重量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈した塗布溶液を作製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同一組成のものを使用した。
【0221】
レジスト層を形成したGaN面上に、透明樹脂モールドシートを70mm×70mm(□70mm)に切断し貼り合わせた。貼り合わせには、サンテック社製のフィルム貼合装置(TMS−S2)を使用し、貼合ニップ力90N、貼合速度1.5m/sで貼り合わせた。次に、貼合し一体化した透明樹脂モールド/レジスト層/GaN層/サファイア基材を、□70mm×t10mmの透明シリコーン板(硬度20)2枚で挟んだ。その状態で、エンジニアリングシステム社製のナノインプリント装置(EUN−4200)を用いて、0.05MPaの圧力でプレスした。プレスした状態で、透明樹脂モールド側から紫外線を2500mJ/cm
2で照射し、レジスト層を硬化させた。硬化後、透明シリコーン板と透明樹脂モールドを剥離し、C面状にパターンが形成されたレジスト/GaN/サファイア積層体を得た。
【0222】
(エッチング)
反応性イオンエッチング装置(RIE−101iPH、サムコ株式会社製)を用い、下記エッチング条件でGaN半導体層をエッチングした。
エッチングガス:Cl2/(Cl2+BCl3)=0.1
ガス流量:10sccm
エッチング圧力:0.1Pa
アンテナ:50w
バイアス:50w
【0223】
エッチング後、GaN面上を電子顕微鏡で観察したところ、断面形状φ400nm、h=50nmの凸部が、ナノインプリントに使用したリール状透明樹脂モールドと同様の長周期構造を含む周期構造であった。
【0224】
(半導体発光素子の形成)
凹凸パターンが形成された積層半導体層表面のGaN面上に、さらに透明導電膜としてITO層をスパッタにより形成した。さらに、エッチング加工し電極パッドを取り付けた。
【0225】
この状態で、プローバを用いてp電極パッドとn電極パッドの間に20mAの電流を流し発光出力を測定した。この実施例7と、下記比較例1との発光出力比を表1に示す。
【0226】
[実施例8]
実施例1と同様にして、表面に微細構造が反転転写された透明樹脂モールドシート(長さ200m、幅300mm)を得た。
【0227】
(積層半導体層の形成)
φ2”厚さ0.37mmのC面サファイア基材上に、MOCVDにより、(1)AlGaN低温バッファ層、(2)n型GaN層、(3)n型AlGaNクラッド層、(4)InGaN発光層(MQW)、(5)p型AlGaNクラッド層、(6)p型GaN層、(7)ITO層を連続的に積層し、積層半導体層を形成した。
【0228】
(ナノインプリントリソグラフィ)
得られた積層半導体層の最表面の(7)ITO層上に、マスク材料をスピンコーティング法(2000rpm、20秒)により塗布し、レジスト層を形成した。マスク材料は、感光性樹脂組成物の固形分を5重量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈した塗布溶液を作製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同一組成であった。
【0229】
レジスト層を形成したITO面上に、透明樹脂モールドシートを70mm×70mm(□70mm)に切断し貼り合わせた。貼り合わせには、サンテック社製のフィルム貼合装置(TMS−S2)を使用し、貼合ニップ力90N、貼合速度1.5m/sで貼り合わせた。次に、貼合し一体化した透明樹脂モールド/レジスト層/ITO層/GaN層/サファイア基材を、□70mm×t10mmの透明シリコーン板(硬度20)2枚で挟んだ。その状態で、エンジニアリングシステム社製のナノインプリント装置(EUN−4200)を用いて、0.05MPaの圧力でプレスした。プレスした状態で、透明樹脂モールド側から紫外線を2500mJ/cm
2で照射し、レジスト層を硬化させた。硬化後、透明シリコーン板と透明樹脂モールドを剥離し、C面状にパターンが形成されたレジスト/ITO/GaN/サファイア積層体を得た。
【0230】
(エッチング)
反応性イオンエッチング装置(RIE−101iPH、サムコ株式会社製)を用い、下記エッチング条件でITO層をエッチングした。
エッチングガス:Cl2/(Cl2+BCl3)=0.1
ガス流量:10sccm
エッチング圧力:0.1Pa
アンテナ:50w
バイアス:50w
【0231】
エッチング後、ITO面上を電子顕微鏡で観察したところ、断面形状φ400nm、h=50nmの凸部が、ナノインプリントに使用したリール状透明樹脂モールドと同様の長周期構造を含む周期構造であった。
【0232】
(半導体発光素子の形成)
凹凸パターンが形成された積層半導体層表面のITO面上に、さらに、エッチング加工し電極パッドを取り付けた。
【0233】
この状態で、プローバを用いてp電極パッドとn電極パッドの間に20mAの電流を流し発光出力を測定した。この実施例8と、下記比較例1との発光出力比を表1に示す。
【0234】
[比較例1]
実施例1と同様の条件で通常のフラットなサファイア基材上に半導体発光層を形成し、同様の方法で発光出力を測定した。
【0235】
[比較例2]
通常のフォトリソグラフィ法により、直径3μm、ピッチ6μm、高さ2μmの六方配置の凹凸構造をサファイア基材上に設けた。その後、実施例1と同様の条件で半導体発光層を形成し、同様の方法で発光出力を測定した。
【0236】
[比較例3]
実施例1と同様の方法で、半導体レーザを用いた直接描画リソグラフィ法によりナノパターンの微細構造(微細凹凸構造)を石英ガラス表面に形成した。X軸方向、Y軸方向のピッチは同じで、ピッチ変動がない六方配列とした。
X軸方向ピッチPx:398nm
Y軸方向ピッチPy:460nm
その後、実施例1と同様の方法で、半導体発光層を形成し、発光出力を測定した。
【0237】
[比較例4]
半導体レーザを用いた直接描画リソグラフィ法によりナノパターンの微細構造(微細凹凸構造)を石英ガラス表面に形成した。X軸方向、Y軸方向のピッチは同じで、ピッチ変動がない六方配列とした。
X軸方向ピッチ Px:200nm
Y軸方向ピッチ Py:200nm
上記以外は、実施例1と同様にしてサファイア基材(光学用基材)および半導体発光素子を作製し、発光出力を測定した。結果を表1に示す。
【0238】
[比較例5]
通常のフォトリソグラフィ法により、直径3μm、ピッチ6μm、高さ50nmの六方配置の凹凸構造をサファイア基材上のp型GaN層上に設けた。その後、実施例7と同様の条件で半導体発光素子を形成し、同様の方法で発光出力を測定した。
【0239】
[比較例6]
通常のフォトリソグラフィ法により、直径3μm、ピッチ6μm、高さ50nmの六方配置の凹凸構造を実施例8に用いた積層半導体層上に設けた。その後、実施例8と同様の条件で半導体発光素子を作製し、同様の方向で発光出力を測定した。
【0240】
表1は、比較例1の出力を1として、発光出力比として示している。表1から、本実施の形態に係る光学用基材(実施例1〜実施例6)によれば、従来の平坦なサファイア基材(比較例1)、μオーダーの凹凸を有するサファイア基材(比較例2)、ピッチ変動がないナノオーダーの凹凸を有するサファイア基材(比較例3)に比べ、サファイア基材上に成膜した半導体層中の転位欠陥数を減らすことができ、また、周期性が乱れた凹凸パターンに起因する光散乱により導波モードを解消して光取り出し効率を上げることができるため、高い発光効率を有する半導体発光素子を得ることができることがわかった。
【0241】
また、表1から、本実施の形態に係る半導体発光素子(実施例7、8)によれば、従来の平坦な最表層(比較例1)、マイクロオーダーの凹凸を有するGaN最表層(比較例4)、マイクロオーダーの凹凸を有するITO最表層(比較例5)に比べ、透明導電膜、p電極パッドとのコンタクト抵抗を低減し、また、周期性が乱れた凹凸パターンに起因する光散乱により導光モードを解消して光取り出し効率を上げることができるため、高い発光効率を有することがわかった。
【表1】
【0242】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、さまざまに変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更が可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施可能である。