【文献】
P.Balchandani, M.M.Khalighi, S.S.Hsieh, K.Setsompop, J.Pauly, and D.Spielman,"Adiabatic B1 Shimming Algorithm for Multiple Channel Transmit at 7T",Proc.Intl.Soc.Mag.Reson.Med.19(2011),米国,2011年 7月13日,p2907
【文献】
BOB VAN DEN BERGEN,7 T BODY MRI: B1 SHIMMING WITH SIMULTANEOUS SAR REDUCTION,PHYSICS IN MEDICINE AND BIOLOGY,英国,TAYLOR AND FRANCIS LTD,2007年 9月 7日,V52 N17,P5429-5441
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用する実施形態を、図面を用いて説明する。なお、各実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは、同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【0018】
まず、本実施形態のMRI装置の全体構成について説明する。
図1は、本実施形態のMRI装置100のブロック図である。本図に示すように、本実施形態のMRI装置100は、静磁場を発生するマグネット101と、傾斜磁場を発生するコイル102と、静磁場均一度を調整するシムコイル112と、シーケンサ104と、高周波磁場(RF)を照射(送信)するRF送信用コイル(送信コイル)114と、被検体103から発生する核磁気共鳴信号を検出(受信)するRF受信用コイル(受信コイル)115と、被検体103を載置するテーブル107と、傾斜磁場電源105と、高周波磁場発生器106と、受信器108と、シム電源113と、MRI装置100の各部を制御し、撮像を実現する計算機109と、を備える。
【0019】
傾斜磁場コイル102およびシムコイル112は、それぞれ傾斜磁場電源105およびシム電源113に接続される。また、送信コイル114および受信コイル115は、それぞれ、高周波磁場発生器106および受信器108に接続される。
【0020】
シーケンサ104は、計算機109からの指示に従って、傾斜磁場電源105とシム電源113、および高周波磁場発生器106に命令を送り、それぞれ傾斜磁場およびRFを発生させる。RFは、送信コイル114を通じて被検体103に照射(送信)される。RFを照射(送信)することにより被検体103から発生する核磁気共鳴信号は受信コイル115によって検出(受信)され、受信器108で検波が行われる。受信器108での検波の基準とする磁気共鳴周波数は、計算機109によりシーケンサ104を介してセットされる。検波された信号はA/D変換回路を通して計算機109に送られ、ここで画像再構成などの信号処理が行われる。その結果は、計算機109に接続される表示装置110に表示される。検波された信号や測定条件は、必要に応じて、計算機109に接続される記憶装置111に保存される。
【0021】
マグネット101とシムコイル112とシム電源113とは、静磁場空間を形成する静磁場形成部を構成する。傾斜磁場コイル102と傾斜磁場電源105とは、静磁場空間に傾斜磁場を印加する傾斜磁場印加部を構成する。また、送信コイル114と高周波磁場発生器106とは、被検体103にRFを照射(送信)する高周波磁場送信部を構成する。受信コイル115と受信器108とは、被検体103から発生する核磁気共鳴信号検出(受信)する信号受信部を構成する。
【0022】
本実施形態の送信コイル114は、それぞれ独自のRFを送信する複数のチャンネルを備える多チャンネルコイルとする。
図2(A)に、本実施形態の送信コイル114の例を示す。ここでは、送信コイル114が、4つのチャンネル(114a、114b、114c、114d)を備える4チャンネル(4ch)コイルである場合を例示する。各チャンネル(114a、114b、114c、114d)
に送信されるRFの振幅および位相は、個々独立に計算機109により設定される。本実施形態の高周波磁場発生器106は、計算機109からの制御に従って、各チャンネル(114a、114b、114c、114d)が備える給電点(117a、117b、117c、117d)を介し、それぞれのチャンネルに独立にRF波形を送信する。なお、本図において116は、RFシールドである。
【0023】
本実施形態の計算機109は、SARもしくはアーチファクトを抑え、効率的に関心領域ROIの高画質画像を得るようMRI装置100の撮像に係る各部を制御する。これを実現するため、本実施形態の計算機109は、
図3に示すように、撮像条件を設定する撮像条件設定部310と、撮像条件設定部310により設定された撮像条件に従って本撮像を行う本撮像部320と、を備える。また、撮像条件設定部310は、撮像位置設定部311と、静磁場シミング部312と、RFシミング部313と、を備える。
【0024】
撮像位置設定部311は、撮像位置(撮像断面)を設定する。撮像断面は、本撮像を行う前にスカウトスキャン等を実施し、得られた位置決め画像を用いて設定される。例えば、表示装置110に表示した位置決め画像上で、ユーザによる指定を受け付け、指定された位置を撮像断面として設定する。撮像断面として、部位毎に、予め定められた位置を、位置決め画像上の特徴点等を手がかりに自動的に設定してもよい。なお、撮像断面上の被検体103領域を撮像領域と呼ぶ。
【0025】
静磁場シミング部312では、静磁場分布を計測し、静磁場が出来る限り均一となるように調整を行う。調整は、シム電源113を介してシムコイル112を動作させることにより行う。なお、静磁場の均一度調整が不要な場合、静磁場シミング部312、シム電源113、シムコイル112は、備えなくてもよい。
【0026】
RFシミング部313は、送信コイル114の各チャンネル(114a、114b、114c、114d)
に送信するRFの振幅と位相との少なくとも一方を決定するRFシミング処理を行う。本実施形態のRFシミング部313は、上述のように、SARおよびアーチファクトの少なくとも一方を抑え、効率的に関心領域ROIの高画質画像を得るよう、各RFの振幅と位相との少なくとも一方を決定する。以下、本実施形態のRFシミング部313が決定する、送信コイル114の各チャンネルに送信されるRFそれぞれの振幅と位相との少なくとも一方を、高周波磁場条件と呼ぶ。
【0027】
これを実現するため、本実施形態のRFシミング部313は、領域設定部301と、条件設定部302と、最適化部303と、条件記憶部304とを備える。
【0028】
RFシミング部313による本実施形態のRFシミング処理を実現する各部の構成の説明に先立ち、本実施形態の送信コイル114によるRF照射方法について簡単に説明する。ここでは、被検体103の腹部領域を撮像する場合を例にあげて説明する。腹部領域撮像時は、
図2(B)に示すように、被検体103の撮像領域201が設定される。
【0029】
この被検体103の腹部領域を模したファントム200に対して、送信コイル114からRFを照射した際の、ファントム200内に生成される回転磁界B
1(B
1分布)202の電磁場シミュレーション結果を、
図2(C)に示す。
【0030】
なお、本シミュレーションにおいて、撮像領域201内部のB
1強度は、ファントム200内の最大B
1強度が1となるよう無次元化した。ファントム200のx、y、z軸方向の寸法はそれぞれ、300mm、200mm、900mmとした。これは、生体の腹部断面を想定した上で、単純化した形状としたものである。また、ファントム200の物性値は、導電率0.6S/m、比誘電率80とした。これは、生体の物性値と近い水ファントムを想定した上で決定された。照射されるRFの周波数については、3T MRI装置を想定して、128MHzとした。
【0031】
また、各チャンネル(114a、114b、114c、114d)それぞれの給電点(117a、117b、117c、117d)に以下の式(1)に示すsine波形の電圧を給電した。
【数1】
【0032】
なお、A1、φ1は、それぞれチャンネル114aの給電点117aに給電されるsine波形電圧の振幅および位相、A2、φ2は、それぞれチャンネル114bの給電点117bに供給される同振幅および位相、A3、φ3は、それぞれチャンネル114cの給電点117cに供給される同振幅および位相、A4、φ4は、それぞれチャンネル114dの給電点117dに供給される振幅および位相を示す。また、
図2(C)に示すB
1分布202は、A1、A2、A3、A4をすべて1、位相をφ1=0、φ2=π/2、φ3=π、φ4=3π/2に設定した。これは、QD(Quadrature Drive)と呼ばれるRF照射方法で、標準的なRF照射手法である。
【0033】
QD照射のように、各チャンネル(114a、114b、114c、114d)から、同じ振幅で、π/2ずつ異なる位相でRF波形を送信する場合、
図2(C)に示すように、ファントムの撮像領域201内では、B
1強度が大きくばらつき、不均一になる。これが、現在、高磁場MRI装置において課題とされているB
1不均一である。
【0034】
本実施形態のRFシミング部313は、撮像領域201内の、特に診断したい領域(診断領域)内のB
1不均一を低減するよう、各々のチャンネル(114a、114b、114c、114d)に送信するRFの振幅(A1、A2、A3、A4)と位相(φ1、φ2、φ3、φ4)とを調整し、最適なものを高周波磁場条件として設定する。このとき、本実施形態のRFシミング部313は、さらに、SARおよびアーチファクトの少なくとも一方を抑えるようこれらのパラメータを調整する。
【0035】
本実施形態のRFシミング部313は、まず、撮像領域の中で、高画質の画像を取得したい診断領域を特定する。さらに、診断領域にアーチファクトを発生させる領域または局所SARが高くなる領域として、抑制領域を特定する。抑制領域は、診断領域とは異なる領域とする。そして、診断領域内のB
1均一度を高めながら、SARおよびアーチファクトの少なくとも一方を抑えるよう高周波磁場条件を決定する。
【0036】
領域設定部301は、診断領域および抑制領域を、それぞれ、第一領域ROI1および第二領域ROI2として設定する。設定は、それぞれ、ユーザが位置決め画像上、または、高周波磁場条件を初期値にして行うB
1分布計測結果上で指定した領域を受け付けることにより行う。すなわち、領域設定部301は、ユーザからの指示に従って、第一領域ROI1および第二領域ROI2を設定する。
図4(A)に、撮像部位として腹部が指定された場合の、第一領域ROI1および第二領域ROI2の設定例を示す。
【0037】
アーチファクトを発生させる領域として、例えば、脂肪領域、および心臓領域等の周期的体動のある領域が設定される。なお、脂肪領域は、脂肪からの信号強度が他の組織と比べて大きいため、周期的、ランダムを問わず、アーチファクトへの寄与が大きいためである。
【0038】
なお、診断領域である第一領域ROI1および抑制領域である第二領域ROI2は、撮像部位、撮像目的に応じて自動的に設定されるよう構成してもよい。この場合は、MRI装置100は、部位および撮像目的に対応づけて第一領域ROI1および第二領域ROI2を記憶する領域記憶部をさらに備え、領域設定部301は、撮像条件として部位および撮像目的が設定されると、撮像条件で設定された撮像部位または撮像目的に対応づけて記憶される第一領域ROI1および第二領域ROI2を領域記憶部から抽出し、設定する。領域記憶部は、予め記憶装置111に登録される。
【0039】
また、第一領域ROI1にアーチファクトを生じさせる領域がない場合、または、あるとしても、生じるアーチファクトが無視できる程度の場合、
図4(B)に示すように、第二領域ROI2の選択はなされなくてもよい。
【0040】
最適化部303は、第一領域ROI1内のB
1分布を最適化するよう、各チャンネル(114a、114b、114c、114d)に送信されるRFの、振幅(A1、A2、A3、A4)および位相(φ1、φ2、φ3、φ4)の少なくとも一方を高周波磁場条件として決定する。本実施形態では、上述のように、第一領域ROI1内のB
1分布の均一度が所定値以上であり、かつ、SARおよびアーチファクトの少なくとも一方を低減させるようこの高周波磁場条件を決定する。本実施形態では、この高周波磁場条件を、予め定めた制約条件の下、予め定めた目的関数を最小とする解として得る。
【0041】
解の算出は、最適化問題の解法、例えば、最急降下法、勾配法、ニュートン法、最小二乗法、共役勾配法、線形計画法、非線形計画法、振幅および位相の値を網羅的に変化させることによって最適解を算出する方法、などを用いて行う。
【0042】
また、振幅および位相の値を網羅的に変化させて、目的関数を最小化する解を求めてもよい。たとえば、振幅および位相の値を、それぞれ、1dB、5度ずつ変化させて目的関数の値を計算し、最小となる場合の振幅および位相を求める。ただし、網羅的に振幅や位相を変化させる際に計算時間が膨大にかかる場合は、たとえば、振幅および位相の変化量をはじめは大きくした状態で目的関数の最小値をとる振幅および位相を求め、次に、その振幅および位相の値の近傍で、変化量を小さくした状態で振幅および位相を求めてもよい。これらの解法を行う場合の振幅および位相の初期値は、予め記憶装置111に保持される。また、予め最適な振幅や位相について、ある程度予測のつく場合には、その予測値を初期値として、その近傍の値のみについて、網羅的に振幅や位相を変化させてもよい。
【0043】
ここで、最適化部303は、高周波磁場条件を変更する毎に、撮像領域内のB
1分布を計測するB
1分布計測を行い、撮像領域内のB
1値を得てもよい。また、振幅および位相の一方のみを変化させ、高周波磁場条件を決定してもよい。
【0044】
条件記憶部304は、最適化部303が高周波磁場条件算出に用いる制約条件および目的関数の組(最適化条件)を記憶する。条件設定部302は、ユーザの指示に従って、最適化部303が高周波磁場条件算出に用いる最適化条件を条件記憶部304から抽出し、設定する。最適化部303は、設定された最適化条件を用いて、高周波磁場条件を算出する。
【0045】
なお、最適化条件を、撮像部位および撮像目的の少なくとも一方に対応づけて条件記憶部304に記憶し、条件設定部302が、ユーザにより設定された撮像部位に応じて、最適化条件を条件記憶部304から抽出することにより、最適化条件が自動的に選択、設定されるよう構成してもよい。
【0046】
これらの各機能による、本実施形態のRFシミング処理を含む、撮像処理の流れを
図5に示す。本実施形態の撮像処理は、ユーザによる指示により開始される。
【0047】
まず、撮像条件設定部310は、ユーザから撮像パラメータ、撮像部位、撮像目的などを含む撮像条件の入力を受け付け、設定する(ステップS1001)。次に、撮像位置設定部311は、スカウトスキャンを実施し、撮像位置を設定する(ステップS1002)。次に、領域設定部301は、第一領域ROI1および第二領域ROI2を設定する(ステップS1003)。上述のように、第二領域ROI2は設定されなくてもよい。
【0048】
次に、条件設定部302は、目的関数および制約条件の組からなる最適化条件を条件記憶部304から抽出し、設定する(ステップS1004)。最適化部303は、条件設定部302が設定した制約条件の下で、目的関数を最小とする解を求める最適化を行う(ステップS1005)。そして、撮像条件設定部310は、求めた解を、撮像に用いる各チャンネルに送信するRFの振幅および位相として、他の撮像パラメータとともに撮像条件に設定する(ステップS1006)。
【0049】
そして、本撮像部320は、撮像条件設定部310により設定された撮像条件に従って、本撮像を行う(ステップS1007)。
【0050】
計算機109が実現する各機能は、計算機109が備えるCPUが、記憶装置111に予め格納されたプログラムをメモリにロードして実行することにより実現される。また、条件記憶部304は、記憶装置111上に構築される。
【0051】
次に、本実施形態の条件記憶部304に記憶される最適化条件(目的関数と制約条件との組み)の具体例を説明する。本実施形態では、関心領域ROI内のB
1分布の均一度、SARに影響を与える照射パワー、関心領域ROI内のB
1平均値、関心領域にアーチファクトを生じさせる領域内のB
1平均値のいずれかを、撮像部位および目的に応じて目的関数および制約条件に用いる。
【0052】
以下、本実施形態では、撮像領域201内のB
1分布の均一度を示す指標として、以下の式(2)で表されるB
1分布均一度指標U
SDを用いる。B
1分布均一度指標U
SDは、B
1値の標準偏差をB
1平均値で除した値である。このB
1分布均一度指標U
SDが小さければ小さいほど、対象領域内のB
1分布は均一といえる。
【数2】
【0053】
まず、第一の最適化条件(第一最適化条件)を説明する。第一最適化条件では、目的関数として、送信コイル114の各チャンネルに送信するRFによる照射パワーを特定する指標を用いる。具体的には、以下の式(3)で示される、照射パワー指標P
SUMを用いる。なお、照射パワー指標P
SUMは、各チャンネルに送信されるRFの振幅の二乗和である。
【数3】
また、制約条件は、第一領域ROI1のB
1分布均一度指標U
SD_ROI1が、所定値U
U以下、とする。この所定値U
Uは、所定の画質を実現可能な値が予め定められ、最適化条件とともに条件記憶部304に記憶される。以下、第一領域ROI1のB
1分布均一度指標U
SD_ROI1を、所定値U
U以下とする制約条件を、均一度制約条件と呼ぶ。
【0054】
従って、条件設定部302により、第一最適化条件が最適化条件として設定されると、最適化部303は、以下の式(4)の最適解として、高周波磁場条件を算出する。
【数4】
【0055】
第一最適化条件を選択し、高周波磁場条件を決定すると、診断領域である第一領域ROI1の、B
1分布均一度指標U
SDは、均一度制約条件により、所定値以下に抑えられる。従って、第一領域ROI1は、所定以上の均一度となる。また、各チャンネルから照射されるRFのパワーP
SUMは最小となる。従って、撮像領域201全体に対する照射パワーが最小となり、SARを抑えることができる。
【0056】
特に、診断領域以外の領域が、アーチファクトを生じさせない領域である場合、診断領域の画質を維持しながら、効果的にSARを抑えることができる。なお、この場合は、第二領域ROI2の選択は、なされなくてもよい。
【0057】
次に、第二の最適化条件(第二最適化条件)を説明する。第二最適化条件では、目的関数は、以下の式(5)で示される、第二領域ROI2のB
1平均値mean(B
1_ROI2)の、第一領域ROI1のB
1平均値mean(B
1_ROI1)に対する比、m
ratioとする。m
ratioは、式(5)に示すように、第二領域ROI2のB
1平均値mean(B
1_ROI2)を第一領域ROI1のB
1平均値mean(B
1_ROI1)で除した値である。以下、m
ratioを、B
1比と呼ぶ。
【数5】
【0058】
また、制約条件として、前述の均一度制約条件、および、撮像領域の照射パワー指標P
SUMを所定値P
U以下とする照射パワー制約条件の2つを用いる。照射パワー制約条件の所定値P
Uは、安全性などの観点から予め定められ、最適化条件とともに条件記憶部304に記憶される。
【0059】
従って、条件設定部302により、第二最適化条件が最適化条件として設定されると、最適化部303は、以下の式(6)の最適解として、高周波磁場条件を算出する。
【数6】
【0060】
B
1は、それぞれの領域の感度を示す。抑制領域の感度を相対的に抑えることにより、診断領域の信号強度に対する抑制領域の信号強度を低下させる。従って、第二最適化条件を選択し、高周波磁場条件を決定すると、B
1比が最小となるため、第二領域ROI2からの信号を抑え、第一領域ROI1の信号を相対的に大きくすることができる。また、第一領域ROI1のB
1分布均一度および撮像領域201の照射パワーがそれぞれ所定値以下に抑えられる。従って、診断領域は高画質で撮像でき、かつ、SARを抑えられる。また、抑制領域の信号値を抑えることができるため、診断領域のアーチファクトを低減することができ、より、高画質の画像を得ることができる。
【0061】
特に、第二最適化条件を用いると、アーチファクトを生じさせやすい部位に近接する部位が診断対象の場合、診断領域の画質を維持しながら、効果的にSARを抑えることができる。
【0062】
従って、第二最適化条件は、例えば、撮像部位として腹部に対応づけて条件記憶部304に記憶してもよい。上述のように、脂肪からの信号強度は他組織と比べて大きいため、体動アーチファクトへの寄与が大きい。従って、腹部を撮像する場合、腹部上部の脂肪が多く存在する領域(脂肪領域)を第二領域ROI2に設定し、第二最適化条件に従って高周波磁場条件を決定することにより、脂肪領域の信号値を小さくでき、アーチファクトを低減できる。
【0063】
このとき、脂肪領域を精度よく選択し、第二領域ROI2として設定することにより、より効果的に脂肪領域のB
1比を低減することができる。ここで、腹部を撮像する場合の、第一領域ROI1および第二領域ROI2の設定例を
図6に示す。腹部上部表面は、脂肪が多く存在する領域である。従って、腹部上部表面の領域を第二領域ROI2に設定する。このように、第二領域ROI2の範囲を精度よく限定することによって、特に信号値を低減したい領域のみ効果的に低減できる。なお、脂肪領域の選択方法として、水脂肪分離された画像を用いて、脂肪領域をユーザが指定してもよいし、脂肪領域をコンピュータが自動的に指定してもよい。
【0064】
次に、第三の最適化条件(第三最適化条件)を説明する。第三最適化条件では、目的関数は、上記式(6)で示されるB
1比とする。また、制約条件には、均一度制約条件、および、第一領域ROI1のB
1平均値mean(B
1_ROI1)が所定値B
L以上とする第一領域磁場制約条件を用いる。第一領域磁場制約条件の所定値B
Lは、予め定められ、最適化条件とともに条件記憶部304に記憶される。
【0065】
従って、条件設定部302により、第三最適化条件が最適化条件として設定されると、最適化部303は、以下の式(7)の解として、高周波磁場条件を算出する。
【数7】
【0066】
第三最適化条件を選択し、高周波磁場条件を決定すると、B
1平均値が所定値以上という条件の下でB
1比を最小とするため、第一領域ROI1内の信号値を所定値以上に維持しながら、第二領域ROI2の信号値を相対的に抑えることができる。従って、アーチファクトを効果的に抑えることができる。また、第一領域ROI1のB
1分布均一度は所定以上を保つため、診断したい領域が高画質で撮像される。
【0067】
第三最適化条件は、例えば、撮像領域201の診断領域外に周期的体動によりアーチファクトを生じさせやすい部位が含まれる場合、周期的体動部位を第二領域ROI2に設定し、適用することができる。従って、第三最適化条件は、例えば、撮像部位として乳房に対応づけて条件記憶部304に記憶してもよい。乳房撮像時には、周期的体動を行う心臓が撮像領域に含まれるためである。
【0068】
図7(A)は、乳房撮像時の撮像領域201を説明するための図である。撮像領域201は、撮像位置設定部311により設定される撮像位置(撮像断面)により特定される。また、
図7(B)は、この場合の領域設定部301により設定される第一領域ROI1および第二領域ROI2を説明するための説明図である。本図に示すように、乳房領域を第一領域ROI1に設定し、心臓領域を第二領域ROI2に設定する。
【0069】
上記第三最適化条件に従って算出した振幅および位相を有するRFを、各チャンネルから送信することにより、乳房領域(第一領域ROI1)のB
1均一度が向上し、かつ、所定以上の信号値を得る。一方、心臓領域(第二領域ROI2)の信号値は抑えることができる。従って、乳房領域のアーチファクトを低減させた高画質の画像を得ることができる。
【0070】
次に、第四の最適化条件(第四最適化条件)を説明する。第四最適化条件では、目的関数を、第一領域ROI1のB
1平均値の逆数(1/mean(B
1_ROI1))とする。また、制約条件には、均一度制約条件、および、第二領域ROI2のB
1平均値mean(B
1_ROI2)を所定値B
U以下とする第二領域磁場制約条件を用いる。
【0071】
従って、条件設定部302により、第四最適化条件が最適化条件として設定されると、最適化部303は、以下の式(8)の解として、高周波磁場条件を算出する。
【数8】
【0072】
第四最適化条件によれば、診断領域(第一領域ROI1)について、B
1分布の均一度を所定値以上とする中で、B
1平均値が最大となるよう、高周波磁場条件が決定される。また、抑制領域(第二領域ROI2)については、B
1平均値が所定値以下となるよう、高周波磁場条件が決定される。従って、抑制領域からの信号値は抑えられ、アーチファクトが低減し、かつ、診断領域の画質は向上する。なお、この場合の目的関数は、上記関数に限られない。アーチファクトが低減されるものであればよい。
【0073】
第四最適化条件は、例えば、被検体103の中心が磁場中心からずれたオフセンター撮像に適用できる。従って、第四最適化条件は、例えば、撮像部位として肩に対応づけて条件記憶部304に記憶してもよい。
【0074】
図8(A)は、肩撮像時の撮像領域201を説明するための図である。撮像領域201は、撮像位置設定部311により設定される撮像位置(撮像断面)により特定される。また、
図8(B)は、この場合の領域設定部301により設定される第一領域ROI1および第二領域ROI2を説明するための説明図である。本図に示すように、撮像対象側の肩を第一領域ROI1に設定し、他方の肩を第二領域ROI2に設定する。
【0075】
なお、肩撮像時は、前述のように、撮像対象の側の肩を高画質で撮像するため、当該肩が送信コイル114の中心(磁場中心)に位置するよう被検体103を配置するオフセンター撮像が行われる。このため、
図8(B)に示すように、撮像対象でない肩領域は、送信コイル114に近接し、局所SARが高くなりがちである。
【0076】
従って、局所SARの低減を目的とする最適化条件の制約条件として、均一度制約条件、および、局所SARを低減したい領域に近いチャンネル、すなわち、第二領域近傍のチャンネルから送信されるRFの照射パワーを所定値以下とする局所パワー制約条件を用いる第五最適化条件を、肩に対応づけて記憶してもよい。このとき、目的関数は、第四最適化条件と同じとする。
【0077】
例えば、
図8(B)に示すように、局所SARを低減したい領域に近いチャンネルを、チャンネル114bおよびチャンネル114cとすると、これらのチャンネルの照射パワーの和(A
22+A
32)が、所定値A
U以下とする。この所定値A
Uは、予め定められ、最適化条件とともに条件記憶部304に記憶される。
【0078】
従って、この場合、条件設定部302により、第五最適化条件が最適化条件として設定されると、最適化部303は、以下の式(9)の解として、各チャンネル
に送信されるRFの振幅および位相を決定する。
【数9】
【0079】
また、目的関数を、局所SARを低減したい領域(第二領域ROI2)に近いチャンネルから送信されるRFの照射パワーの和とし、制約条件に、均一度制約条件とともに第二領域ROI2のSAR(SAR
ROI2)を所定値SAR
U以下とするSAR制約条件を用いる第六最適化条件を肩に対応づけて記憶してもよい。SAR制約条件の所定値SAR
Uは、予め定められ、最適化条件とともに条件記憶部304に記憶される。
【0080】
従って、例えば、局所SARを低減したい領域に近いチャンネルを、チャンネル114bおよびチャンネル114cとすると、この場合、最適化部303は、以下の式(10)の解として、高周波磁場条件を決定する。
【数10】
【0081】
なお、このとき、第二領域ROI2のSARは、例えば、B
1分布から推定する。また、電磁界シミュレーションを用いて計算してもよい。電磁界シミュレーションを用いて計算する場合は、人体モデル内のSAR分布を計算した結果を用いる等の手法を用いてもよい。
【0082】
撮像対象とする肩を第一領域ROI1に、他方の肩の送信コイル114に近い領域を第二領域ROI2にそれぞれ設定する。このとき、上述の、第五または第六最適化条件に従って算出した振幅および位相を有するRFを各チャンネルから送信することにより、撮像対象の肩領域(第一領域ROI1)におけるB
1均一度を所定に保ちながら、他方の肩領域(第二領域ROI2)近傍の照射パワーを抑えることができる。
【0083】
従って、第五または第六最適化条件を選択し、高周波磁場条件を決定すると、診断領域のB
1均一度が所定値以上であるとともに抑制領域近傍の照射パワーが抑えられるため、診断領域の画質が向上し、かつ、局所SARが低減する。
【0084】
次に、第七の最適化条件(第七最適化条件)を説明する。第七最適化条件では、目的関数は、以下の式(11)で示される、照射パワー指標P
SUMとB
1比とに重み付けをして組合せた指標を用いる。以下、本指標を、合成指標と呼ぶ。
【数11】
ここで、α+β=1とする。また、αとβとは、いずれを重視するかにより、ユーザが設定する。あるいは、撮像部位毎に予め定められていてもよい。制約条件には、均一度制約条件を用いる。
【0085】
従って、条件設定部302により、第七最適化条件が最適化条件として設定されると、最適化部303は、以下の式(12)の最適解として、高周波磁場条件を算出する。
【数12】
【0086】
第七最適化条件を選択し、高周波磁場条件を決定すると、第一最適化条件選択時および第二最適化条件選択時、それぞれの効果が得られる。また、設定する係数により、その効果の度合いを調整することができる。
【0087】
なお、条件記憶部304に記憶される最適化条件は、上記7つに限られない。診断領域である第一領域ROI1内のB
1分布の均一度を所定レベル以上とし、かつ、効果的にアーチファクトの低減およびSARの抑制の少なくとも一方を実現可能な解が得られるものであればよい。また、アーチファクトのレベルおよびSARのレベルの少なくとも一方を所定値以下とし、かつ、第一領域ROI1内のB
1分布の均一度の向上を実現可能な解が得られるものであってもよい。
【0088】
以下、本実施形態のRFシミングのシミュレーション結果を、従来のRFシミングおよびRFシミング無しの場合と対比して示す。
【0089】
ここでは、
図2(A)に示す4チャンネルのRFコイルを送信コイル114として用い、被検体103を模したファントム200に対して、RF照射した際の、ファントム200内で生成される回転磁界B
1の電磁場シミュレーション結果を示す。使用したファントム200の仕様は、
図2(C)の電磁場シミュレーション時と同様である。また、照射RFの周波数も同様に128MHzとした。各給電点(117a、117b、117c、117d)に給電したsine波形も同様である。
【0090】
図9(A)は、RFシミングなしの場合、すなわち、各チャンネルに送信するRFそれぞれの振幅および位相に、設定された初期値をそのまま使用した場合のB
1分布401である(ケースA)。
【0091】
図9(B)は、従来のRFシミング(従来RFシミング)を行った場合、すなわち、第一領域ROI1内のB
1分布を均一化するように各RFの振幅および位相を最適化した場合のB
1分布402である(ケースB)。なお、B
1均一度の指標は、上記式(2)で示されるU
SDを用いた。
【0092】
図9(C)は、本実施形態の第一最適化条件を最適化条件とし、各RFの振幅および位相を最適化した場合のB
1分布403であり(ケースC)、
図9(D)は、本実施形態の第二最適化条件を最適化条件とし、各RFの振幅および位相を最適化した場合のB
1分布404である(ケースD)。
【0093】
なお、
図9に示すシミュレーションでは、
図2(C)同様、
図9(A)内のファントム200内の最大B
1強度が1となるよう無次元化している。
【0094】
また、
図10の表500に、
図9(A)〜
図9(D)に示す、4つのRF照射方法それぞれにおけるファントム200内の、第一領域ROI1内のB
1均一度指標U
SD、RF照射パワーP
SUM、B
1比m
ratioを示す。なお、
図9(A)のRFシミング無しの場合(ケースA)のRF照射パワーP
SUMを100%として基準とした。また、B
1比については、第一領域ROI1内のB
1平均値と第一領域ROI1外のB
1平均値との比とした。原点対象のB1分布の為、B
1比は1となっている。
【0095】
図9(B)に示されるように、従来RFシミングにより、第一領域ROI1内のB
1分布は最も均一になった。しかし、第一領域ROI1外の領域のB
1については、従来のRFシミングでは制御できていない。
【0096】
一方、
図9(C)に示すように、本実施形態の第一最適化条件に従ってRFシミングを行うと、ファントム200の下部のB
1に比べ、ファントム上部のB
1が小さく抑えられたことがわかる。また、
図9(D)に示すように、本実施形態の第二最適化条件に従ってRFシミングを行うと、ファントム200下部のB
1に比べ、ファントム200上部のB
1が小さく抑えられたことがわかる。
【0097】
また、
図10の表500に示すように、RFシミングなしの場合(ケースA)を基準として考えると、従来RFシミングの場合(ケースB)は、U
SDが小さくなり、第一領域ROI1内のB
1分布が均一になっている。しかし、RF照射パワーP
SUMは、RFシミング無しの場合(ケースA)と変わらない。
【0098】
第一最適化条件に従ったRFシミングの場合(ケースC)は、RFシミングなしの場合(ケースA)よりU
SDが小さくなり、さらに、RF照射パワーは51.9%となっている。従って、第一最適化条件に従ったRFシミングにより、B
1均一度は向上し、全体SAR(生体全体で吸収されるSAR)は低減したことがわかる。
【0099】
上述のように、第一最適化条件下では、制約条件において、第一領域ROI1内のU
SDは、所定以上の画質を実現可能とするような値(U
U)以下となるよう設定される。よって、第一最適化条件に従ってRFシミングを行うことによって、所定以上の画質を実現可能なB
1均一度が得られ、かつ、SARを半減させることが可能となる。なお、本ケースでは、2チャンネルのRFシミングを行った場合のU
SDの値(0.167)をU
Uとした。すなわち、4チャンネルのRFパラメータを制御することによって、2チャンネルの場合のB
1均一度を実現しつつ、SARを半減できることを示している。
【0100】
第二最適化条件に従ったRFシミングの場合(ケースD)は、RFシミング無しの場合(ケースA)よりU
SDが小さくなり、さらに、B
1比m
ratioが最小となっている。第一領域ROI1のB
1平均値を1とした場合、第二領域ROI2内のB
1平均値は0.48となり、第二領域ROI2と設定されたファントム200上部のB
1値を低減されていることがわかる。これより、ファントム200上部により生じるアーチファクトを抑制することが可能となる。
【0101】
以上説明したように、本実施形態のMRI装置100は、被検体にそれぞれ高周波を送信する複数のチャンネルを有する送信コイルを備えるMRI装置100であって、撮像領域内の高画質の画像を取得したい領域を第一領域として設定する領域設定部301と、前記複数のチャンネルそれぞれ
に送信する高周波の振幅と位相との少なくとも一方を高周波磁場条件として決定する最適化部303と、を備え、前記最適化部303は、前記第一領域内の高周波磁場分布の均一度を所定値以上とし、かつ、比吸収率およびアーチファクトを発生させる領域の信号値の少なくとも一方をそれぞれの所定値所以下とするよう前記高周波磁場条件を決定することを特徴とする。
【0102】
前記最適化部303は、前記均一度、前記比吸収率、および前記アーチファクトを発生させる領域の信号値の少なくとも1つを制約条件とし、残りの少なくとも1つを目的関数としてそれぞれ予め定め、前記目的関数を最適化する解として、前記高周波磁場条件を算出し、決定してもよい。また、前記領域設定部301は、前記撮像領域内の前記第一領域とは異なる領域であって、前記アーチファクトを発生させる領域を含む領域または比吸収率が高くなる領域を、さらに、第二領域と設定してもよい。
【0103】
このように、本実施形態によれば、診断したい領域である第一領域ROI1の、B
1分布均一度指標U
SDを所定値以下に抑える。このため、第一領域ROI1は、所定の均一度を保つことができる。また、最適化条件に応じて、各チャンネルから照射されるRFのパワーP
SUMを最小、あるいは、所定値以下に抑える。従って、SARを抑えることができる。また、例えば、診断領域外の領域で、目的に応じて第二領域ROI2に設定し、その領域のB
1値または照射パワーを低減する。例えば、アーチファクト発生への寄与が大きい領域を第二領域ROI2に設定し、B
1値を低減すれば、効率よくアーチファクトを低減できる。また、局所的に高いSARが生じる領域を第二領域ROI2として設定し、照射パワーを低減すれば、効率よく局所SARを低減できる。
【0104】
従って、本実施形態によれば、診断したい領域を高画質で撮像し、かつ、SARまたはアーチファクトの少なくとも一方を低減する照射RFパラメータを決定できる。そして、このパラメータに従って撮像されるため、効率的に、診断したい領域の高画質の画像を取得できる。
【0105】
なお、上記実施形態では、最適化処理において、各目的関数を最小化する解を算出しているが、これに限られない。例えば、各目的関数を、それぞれ、上記各目的関数の逆数に設定し、それを最大化する解を算出してもよい。さらに、各指標に負の符号を付し、その指標を最大化する解を算出するよう構成してもよい。
【0106】
また、上記実施形態は、アーチファクト低減の為に使用されるプリサチュレーションパルスの印加と併用してもよい。例えば、
図9(D)に示すように、断面の下半分領域(第一領域ROI1)を均一に照射し、上半分領域(第二領域ROI2)の信号をできる限り抑える場合、上半分領域にプリサチュレーションパルスを照射する。
【0107】
プリサチュレーションパルスは、照射
対象領域である上半分領域内にできる限り均一に照射した方が、アーチファクト低減効果が高い。このため、プリサチュレーションパルス照射時は、上半分領域のB
1分布ができる限り均一になるようRFパラメータを算出することが望ましい。すなわち、第二領域ROI2のB1均一度(U
SD_ROI2)とすると、目的関数を以下の式(13)に設定し、プリサチュレーションパルス用のRFパラメータを算出する。
【数13】
次に、プリサチュレーションパルス印加後の励起パルスは、上述したように下半分領域(第一領域ROI1)のB
1分布を均一にするRFパラメータで照射する。このように、プリサチュレーションパルスと励起パルスとで、各々最適なRFパラメータを適用することによって、アーチファクト低減効果がより高くなる。
【0108】
なお、上記実施形態では、診断領域である第一領域ROI1および抑制領域である第二領域ROI2を、それぞれ1つ設定する場合を例にあげて説明しているが、これに限られない。それぞれ、複数設定可能である。例えば、アーチファクトを低減したい領域が離れた位置に複数個所ある場合、それぞれの箇所に設定する。このように構成することにより、より局所的にB
1値を抑えることができ、効果的にアーチファクトを低減できる。
【0109】
また、このとき、例えば、第四最適化条件のように、抑制領域のB
1平均値を抑える制約条件を設定する場合、複数の抑制領域それぞれについて、制約条件の所定値B
Uを異なる値として設定してもよい。すなわち、抑制領域の位置に応じて、制約条件に重み付けを行ってもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、主に撮像領域が2次元の場合について図示したが、3次元の場合でも同様の方法で、最適な高周波磁場条件を求めることができる。
【0111】
また、上記実施形態では、3T MRI装置、および、4チャンネルの送信コイルを例にあげて説明したが、MRI装置の構成はこれに限られない。3Tよりも高磁場、4チャンネルより多いチャンネル数の送信コイルを用いてもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、MRI装置100が備える計算機109がRFシミング部313を備え、最適なRFの振幅および位相の少なくとも一方を算出するよう構成しているが、これに限られない。例えば、計算機109とデータの送受信が可能な、MRI装置100とは独立した計算機上にRFシミング部313が構築されていてもよい。条件記憶部304も同様に、MRI装置100が備える記憶装置111上ではなく、計算機109がアクセス可能な独立した記憶装置上に構築されていてもよい。
【0113】
また、本実施形態の手法は、医用をはじめとする各種の撮像分野に適用可能である。