(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
陽イオン交換材料が、スルホプロピル基で官能化されたポリヒドロキシル化ポリマーで被覆された架橋ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)フロースルー粒子を含む請求項1に記載の方法。
汚染物質が、チャイニーズハムスター卵巣タンパク質(CHOP)、浸出プロテインA、DNA、凝集抗体、細胞培養培地成分、ガラマイシン、及びウイルス性汚染物質からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
均質な抗体調製物を得るために、抗体含有組成物に、工程(a)から(d)の工程前、工程中又は工程後に、一又は複数のさらなる精製工程を施すことをさらに含む請求項1に記載の方法。
ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)に結合する抗体を、該抗体と細胞培養培地成分、ガラマイシン、チャイニーズハムスター卵巣タンパク質(CHOP)、DNA、ウイルス性汚染物質、及び凝集VEGF抗体からなる群から選択される一又は複数の汚染物質を含有する組成物から精製する方法であって、
(a)陽イオン交換材料に組成物をロードし、ここで組成物は5.2〜5.8のpHであり、かつ6.5mS/cm以下の伝導率を有し;
(b)第一洗浄バッファーを用いて陽イオン交換材料を洗浄し、ここで第一洗浄バッファーのpHは6.6〜7.4であり、かつ第一洗浄バッファーは15〜35mMのMOPSを含み、かつ0.2〜1.2mS/cmの伝導率を有し;
(c)第二洗浄バッファーを用いて陽イオン交換材料を洗浄し、ここで第二洗浄バッファーのpHは5.1〜5.9であり、かつ第二洗浄バッファーは13〜33mMのMES及び5〜20mMのNaClを含み、かつ1.2〜1.8mS/cmの伝導率を有し;さらに
(d)溶出バッファーを用いて陽イオン交換材料から抗体を溶出させ、ここで溶出バッファーのpHは5.4〜5.6であり、かつ溶出バッファーは13〜33mMのMES及び160〜190mMのNaClを含み、かつ17.5〜18.5mS/cmの伝導率を有する
逐次工程を含む方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義:
ここで、「約」なる用語で前置きされた数的範囲又は量は、正確な範囲又は正確な数量を明示的に含む。
ここで精製される「組成物」は、関心ある抗体と一又は複数の汚染物質を含有する。組成物は「部分的に精製」(すなわち、一又は複数の精製工程が施されている)されてもよく、又は抗体を産生する宿主細胞又は生物体から直接得てもよい(例えば、組成物は、収集された細胞培養液を含んでいてもよい)。
【0014】
ここで使用される場合、「ポリペプチド」とは、一般的に約10以上のアミノ酸を有するペプチド及びタンパク質を意味する。好ましくは、ポリペプチドは哺乳動物タンパク質であり、例えばレニン;ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α-1-アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;濾胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、及びフォン・ウィルブランド因子などの凝固因子;プロテインC等の抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性剤;プラスミノーゲン活性化剤、例えばウロキナーゼ又はヒト尿素又は組織型プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA);ボンベシン;トロンビン;造血増殖因子;腫瘍壊死因子-α及びβ;エンケファリン分解酵素;RANTES(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP-1-α);ヒト血清アルブミン等の血清アルブミン;ミューラー阻害物質;リラキシンA-鎖;リラキシンB-鎖;プロレラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;β-ラクタマーゼ等の微生物タンパク質;DNアーゼ;IgE;CTLA-4等の細胞毒性Tリンパ球関連抗原(CTLA);インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子(VEGF);ホルモン又は増殖因子のレセプター;プロテインA又はD;リウマチ因子;神経栄養因子、例えば脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5又は-6(NT-3、NT-4、NT-5、又はNT-6)、又は神経増殖因子、例えばNGF-β;血小板誘導増殖因子(PDGF);aFGF及びbFGF等の線維芽細胞増殖因子;上皮増殖因子(EGF);TGF-α、及びTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、又はTGF-β5を含む、TGF-β等のトランスフォーミング増殖因子(TGF);インスリン様増殖因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質;CD3、CD4、CD8、CD19及びCD20等のCDタンパク質;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン-α、-β、及び-γ等のインターフェロン;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M-CSF、GM-CSF、及びG-CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL-1ないしIL-10;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞レセプター;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス性抗原、例えばAIDSエンベロープの一部;輸送タンパク質;ホーミングレセプター;アドレシン;調節タンパク質;インテグリン、例えばCD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA-4及びVCAM;腫瘍関連抗原、例えばHER2、HER3又はHER4レセプター;及び上に列挙したポリペプチド並びに抗体の何れかの断片及び/又は変異体、例えば上に列挙したポリペプチドの何れかに結合する抗体断片が含まれる。 好ましいポリペプチドは、例えばリツキシマブ等、ヒトCD20に結合する無傷抗体又は抗体断片;又は例えばベバシズマブ等、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)に結合する無傷抗体又は抗体断片である。
【0015】
「汚染物質」は所望される抗体産物とは異なる物質である。汚染物質には、限定されるものではないが、宿主細胞物質、例えばチャイニーズハムスター卵巣タンパク質(CHOP);浸出プロテインA;核酸;所望する抗体の変異体、断片、凝集体又は誘導体;他のポリペプチド;エンドトキシン;ウイルス性汚染物質;細胞培養培地成分(例えば、ガラマイシン;ゲンタマイシン(登録商標))等が含まれる。
【0016】
「陽イオン交換材料」なる表現は、負に荷電している固相であって、固相上又は固相中を通過する水溶液中の陽イオンと交換される遊離の陽イオンを有する固相を意味する。荷電は、固相に一又は複数の荷電リガンドを例えば共有結合により付着させることにより得られうる。別法として、又は加えて、荷電は、固相に固有の性質であってもよい(例えば全体的に負に荷電しているシリカの場合のように)。商業的に入手可能な陽イオン交換材料には、カルボキシ-メチル-セルロース、BAKERBOND ABX
TM、アガロースに固定されたスルホプロピル(SP)(例えば、GE HealthcareのSP-SEPHAROSE FAST FLOW
TM、SP-SEPHAROSE FAST FLOW XL
TM、又はSP-SEPHAROSE HIGH PERFORMANCE
TM)、CAPTO S
TM(GE Healthcare)、FRACTOGEL−SO3
TM、FRACTOGEL−SE HICAP
TM、及びFRACTOPREP
TM(EMD Merck)、アガロースに固定されたスルホニル(例えば、GE HealthcareのS-SEPHAROSE FAST FLOW
TM)、及びSUPER SP
TM(Tosoh Biosciences)が含まれる。ここで、好ましい陽イオン交換材料は、スルホプロピル基で官能化されたポリヒドロキシル化ポリマーで被覆された、架橋ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)フロースルー粒子(固相)(例えば、POROS 50 HS(登録商標)クロマトグラフィー樹脂)を含む。
【0017】
「固相」とは、一又は複数の荷電リガンドが付着可能な非水性マトリックスを意味する。固相は、精製カラム(限定されるものではないが、拡張ベッド(expanded bed)及び充填ベッドカラムを含む)、離散粒子の不連続相、メンブレン、又はフィルター等であってよい。固相を形成する物質の具体例には、多糖類(例えば、アガロース及びセルロース)及び他の機械的に安定しているマトリックス、例えばシリカ(例えば制御されたポアガラス)、ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)、ポリアクリルアミド、セラミック粒子、及び上述した任意のものの誘導体が含まれる。
ここで「ロード物」なる用語は、陽イオン交換材料にロードされる組成物を意味する。好ましくは、陽イオン交換材料は、精製される組成物がロードされる前に、平衡化バッファーで平衡にされる。
【0018】
「バッファー」は、 酸-塩基のコンジュゲート成分の作用によるpHの変化に抗する溶液である。例えば所望するバッファーのpHに応じて使用可能な種々のバッファーは、Buffers. A Guide for the Preparation and Use of Buffers in Biological Systems, Gueffroy, D., Calbiochem Corporation編(1975)に記載されている。
「平衡化バッファー」は、関心ある抗体と、一又は複数の汚染物質を含有する組成物を、陽イオン交換材料にロードする前に、陽イオン交換材料を平衡にするために使用されるバッファーである。ここで好ましくは、平衡化バッファーのpHは約5.0〜約6.0の範囲にあり、好ましくは約5.5である。ここで好ましくは、平衡化バッファーの伝導率は、約1〜約8mS/cm、好ましくは約4〜約8mS/cm、最も好ましくは約5〜約8mS/cmの範囲にある。場合によっては、平衡化バッファーは塩、例えば約40mM〜約80mM量のNaCl、好ましくは約60mMのNaClを含有する。
【0019】
「洗浄バッファー」なる用語は、ここでは、組成物のロード後、かつ関心あるタンパク質の溶出前に、陽イオン交換材料上を通過させるバッファーを意味するために使用される。洗浄バッファーは、所望の抗体産物を実質的に溶出させることなく、陽イオン交換材料から一又は複数の汚染物質を除去するために供給され得る。ここでの発明の好ましい実施態様では、「第一洗浄バッファー」と「第二洗浄バッファー」が使用される。
【0020】
ここで、「第一洗浄バッファー」なる表現は、ロード及び/又は平衡化バッファーのpHと比較して、高いpHを有する洗浄バッファーを意味する。第一洗浄バッファーは、そこから関心ある抗体産物を実質的に溶出させることなく、陽イオン交換材料から一又は複数の汚染物質を溶出させるために、ここで使用されうる。「第一」なる用語は、ローディングバッファーと第一洗浄バッファーの間で一又は複数の付加的な洗浄又は他のバッファーを使用することを除外していると解釈すべきではない。好ましくは、ここでの第一洗浄バッファーのpHは、約6.8〜約9.0、好ましくは約7.0〜約8.0、最も好ましくは約7.0〜約7.8のpH範囲にある。好ましくは、ここでの第一洗浄バッファーの伝導率は、約0.01〜約5mS/cm、好ましくは約0.1〜約3mS/cm、最も好ましくは約0.2〜約2mS/cmの範囲にある。場合によっては、第一洗浄バッファーは塩(例えばNaCl)を実質的に含有しない。
【0021】
この出願の目的に対して「第二洗浄バッファー」なる表現は、関心ある抗体を溶出させる陽イオン交換材料を準備するために、第一洗浄バッファーの後に使用される洗浄バッファーを意味する。「第二」なる用語は、第一洗浄バッファーと第二洗浄バッファーの間で一又は複数の付加的な洗浄又は他のバッファーを使用することを除外していると解釈すべきではない。好ましくは、ここでの第二洗浄バッファーのpHは、約5.0〜約6.0の範囲、好ましくは約5.5、最も好ましくは5.5である。好ましくは、ここでの第二洗浄バッファーの伝導率は、約0.01〜約5mS/cm、好ましくは約0.1〜約3mS/cm、最も好ましくは約0.5〜約3.0mS/cmの範囲にある。
【0022】
「溶出バッファー」は、固相から関心ある抗体を溶出させるために使用される。ここで、溶出バッファーは、所望の抗体産物が陽イオン交換材料から溶出されるように、第二洗浄バッファーよりも実質的に高い伝導率を有する。好ましくは、溶出バッファーの伝導率は、ローディングバッファー及び先行する各バッファー、すなわち平衡化バッファー、第一洗浄バッファー、及び第二洗浄バッファーの伝導率よりも実質的に高い。「実質的に高い」伝導率とは、例えば、バッファーが、比較される組成物又はバッファーの伝導率よりも、少なくとも2、3、4、5又は6伝導率単位(mS/cm)高い伝導率を有することを意味する。一実施態様では、溶出バッファーのpHは、平衡化バッファー及び/又は第二洗浄バッファーのpHと実質的に同じである。好ましくは、ここでの溶出バッファーのpHは約5.0〜約6.0の範囲、好ましくは約5.5、最も好ましくは5.5である。好ましくは、ここでの溶出バッファーの伝導率は、約10〜約100mS/cm、好ましくは約12mS/cm〜約30mS/cm、最も好ましくは約12〜約20mS/cmの範囲にある。増加した伝導率は、塩、例えば塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化カリウムを溶出バッファーに添加することにより達成され得る。好ましくは、溶出バッファーは約100〜約300mMのNaCl、好ましくは約150mM〜約200mMのNaCl、例えば約175mMのNaCl又は約160mMのNaClを含有する。
【0023】
「再生バッファー」は、陽イオン交換材料が再使用可能になるように、陽イオン交換材料を再生するために使用され得る。再生バッファーは、陽イオン交換材料から、実質的に全ての汚染物質及び関心ある抗体を除去するのに必要な伝導率及び/又はpHを有する。
【0024】
「伝導率」なる用語は、2つの電極の間の電流を伝導させる水溶液の能力を意味する。溶液中では、電流はイオン輸送により流れる。よって、水溶液中に存在するイオン量を増加させると、溶液は高伝導率を有するようになる。伝導率の測定値の基本単位はジーメンス(又はmho)、mho(mS/cm)であり、導電率計、例えば様々なモデルのオリオン導電率計を使用して測定可能である。電解伝導率は、溶液中における電流を運ぶイオンの能力であるため、溶液の伝導率は、そこでのイオン濃度が変化することにより変わり得る。例えば、溶液中の緩衝剤の濃度及び/又は塩(例えば、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、又は塩化カリウム)の濃度を、所望の伝導率が達成されるように変えてもよい。好ましくは、種々のバッファーの塩分濃度は、所望の伝導率が達成されるように調節される。
【0025】
抗体と一又は複数の汚染物質を含有する組成物から抗体を「精製」するとは、組成物から少なくとも一の汚染物質を(完全に又は部分的に)除去することにより、組成物における抗体の純度を増加させることを意味する。「精製工程」は「均質」な組成物にする全体的な精製プロセスの一部であってもよい。ここで使用される「均質」とは、組成物の全重量に基づき少なくとも約70重量%、好ましくは少なくとも約80重量%、より好ましくは少なくとも約90重量%、さらに好ましくは少なくとも約95重量%の関心ある抗体を含有する組成物を意味する。
【0026】
陽イオン交換材料に分子を「結合」させるとは、分子と陽イオン交換材料の荷電基又は荷電基群との間のイオン相互作用により、陽イオン交換材料内又は上に、分子が可逆的に固定化されるように、適切な条件下(pH及び/又は伝導率)で、分子を陽イオン交換材料に暴露させることを意味する。
陽イオン交換材料を「洗浄する」とは、陽イオン交換材料上に又はこれに通して、適切なバッファーを通過させることを意味する。
陽イオン交換材料から分子(例えば、抗体又は汚染物質)を「溶出させる」とは、そこから分子を除去することを意味する。
【0027】
本発明の好ましい実施態様では、ここで精製される抗体は組換え抗体である。「組換え抗体」は、抗体をコードする核酸が形質移入又は形質転換された宿主細胞において精製されるものか、又は相同的組換えの結果として生成される抗体である。「形質転換」及び「形質移入」は交換可能に使用され、細胞に核酸を導入する方法を意味する。形質転換又は形質転換後、核酸は宿主細胞ゲノムに統合されてもよく、又は染色体外エレメントとして存在してもよい。「宿主細胞」には、インビトロ細胞培養における細胞、並びに宿主動物内の細胞が含まれる。ポリペプチドの組換え生産方法は、例えば、特に出典明示によりここに援用される米国特許第5534615号に記載されている。
【0028】
出発ポリペプチドの「変異体」又は「アミノ酸配列変異体」は、出発ポリペプチドとは異なるアミノ酸配列を含有するポリペプチドのことである。一般的に、変異体は、天然ポリペプチドと、少なくとも80%の配列同一性、好ましくは少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性、最も好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有するであろう。配列同一性パーセントは、例えばFitchら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:1382-1386(1983)、Needlemanら, J. Mol. Biol. 48:443-453(1970)により記載されたアルゴリズムバージョンにより、最大相同性が提供される配列に整列させた後に決定される。ポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、ポリペプチドをコードするDNAに適切なヌクレオチド変化を導入するか、又はペプチド合成により調製されうる。このような変異体には、関心あるポリペプチドのアミノ酸配列内の残基が欠失した形態、及び/又は挿入及び/又は置換されたものが含まれる。最終的なコンストラクトが所望の特性を有するように、欠失、挿入及び置換を任意に組合せて、最終コンストラクトに至らしめる。またアミノ酸変化により、例えばグリコシル化部位の数又は位置を変えることにより、ポリペプチドの翻訳後プロセシングを変えてもよい。他の翻訳後修飾には、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリル、スレオニル又はチロシル残基のヒドロキシル基のホスホリル化、リジン、アルギニン及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化が含まれる(T.E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, pp. 79-86(1983))。ポリペプチドのアミノ酸配列変異体を産生させる方法は、例えば、出典明示により明示的にここに援用米国特許第5534615号に記載されている。
【0029】
「抗体」なる用語は、最も広義に使用され、特にモノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び所望する結合特異性を示す限りそれらの抗体断片を包含する。
【0030】
ここでの抗体は関心ある「抗原」に対するものである。好ましくは、抗原は、生物学的に重要なポリペプチドであり、疾病や疾患を患っている哺乳動物への抗体の投与によりその哺乳動物に治療的恩恵がもたらされうる。しかしながら、非ポリペプチド抗原(例えば腫瘍関連糖脂質抗原;米国特許第5091178号参照)に対する抗体もまた考慮される。抗原がポリペプチドである場合、それは膜貫通型分子(例えばレセプター)又はリガンド、例えば増殖因子でありうる。例示的な抗原には上述したポリペプチドが含まれる。本発明に包含される抗体に対する好ましい分子標的は、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、及びCD34のようなCDポリペプチド;HERレセプターファミリーのメンバー、例えばEGFレセプター(HER1)、HER2、HER3あるいはHER4レセプター;細胞接着分子、例えばLFA-1、Mac1、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM及びav/b3インテグリンで、そのa又はb何れかのサブユニットを含むもの(例えば、抗CD11a、抗CD18あるいは抗CD11b抗体);VEGFのような増殖因子;IgE;血液型抗原;flk2/flt3レセプター;肥満(OB)レセプター;mplレセプター;CTLA-4;プロテインC等を含む。他の分子に場合によってはコンジュゲートした可溶型抗原あるいはその断片も、抗体産生のための免疫原として用いることができる。レセプターのような膜貫通型分子については、これらの断片(例えば、レセプターの細胞外ドメイン)を免疫原として用いることができる。あるいは、膜貫通型分子を発現する細胞を免疫原として用いることができる。そのような細胞は、天然源(例えば癌細胞株)に由来しうるか、あるいは膜貫通型分子を発現させるために組換え技術によって形質転換された細胞でありうる。
【0031】
精製される抗体の具体例には、限定されるものではないが、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))(Carterら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285-4289(1992), 米国特許第5725856号)及びペルツズマブ(OMNITARG
TM)(国際公開第01/00245号)を含む抗HER2抗体;CD20抗体(以下参照);IL-8抗体(St John., Chest, 103:932(1993)、及び国際公開第95/23865号);例えばヒト化VEGF抗体huA4.6.1ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))及びラニビズマブ(Kimら, Growth Factors, 7:53-64(1992)、国際公開第96/30046号、及び国際公開第98/45331号、1998年10月15日公開)のようなヒト化及び/又は親和成熟VEGF抗体を含むVEGF又はVEGFレセプター抗体;PSCA抗体(国際公開第01/40309号);エファリズマブ(RAPTIVA(登録商標))を含むCD11a抗体(米国特許第5622700号、国際公開第98/23761号、Steppeら, Transplant Intl. 4:3-7(1991)、及びHourmantら, Transplantation 58:377-380(1994));オマリズマブ(XOLAIR(登録商標))を含むIgEに結合する抗体(Prestaら, J. Immunol. 151:2623-2632(1993)、及び国際公開第95/19181号;1998年2月3日に公開された米国特許第5714338号、又は1992年2月25日に公開された米国特許第5091313号、1993年3月4日に公開された国際公開第93/04173号、又は1998年6月30日に出願された国際出願第PCT/US98/13410号、米国特許第5714338号);CD18抗体(1997年4月22日に公開された米国特許第5622700号、又は1997年7月31日に公開された国際公開第97/26912号);Apo-2レセプター抗体抗体(1998年11月19日に公開された国際公開第98/51793号);組織因子(TF)抗体(1994年11月9日に許可された欧州特許出願公開第0420937B1号);α4-α7インテグリン抗体(1998年2月19日に公開された国際公開第98/06248号);EGFR抗体(例えば、キメラ又はヒト化225抗体、セツキシマブ、ERBUTIX(登録商標)、1996年12月19日に公開された国際公開第96/40210号);CD3抗体、例えばOKT3(1985年5月7日に公開された米国特許第4515893号);CD25又はTac抗体、例えばCHI-621(SIMULECT(登録商標))及びZENAPAX(登録商標)(1997年12月2日に公開された米国特許第5693762号を参照);CD4抗体、例えばcM-7412抗体(Choyら Arthritis Rheum 39(1):52-56(1996));CD52抗体、例えばCAMPATH-1H(ILEX/Berlex)(Riechmannら Nature 332:323-337(1988));Fcレセプター抗体、例えばFcに対するM22抗体(Grazianoら J. Immunol. 155(10):4996-5002(1995)にあるようなRI);癌胎児性抗原(CEA)抗体、例えばhMN-14(Sharkeyら Cancer Res. 55(23Suppl): 5935s-5945s(1995)));huBrE-3、hu-Mc3及びCHL6を含む乳房上皮細胞に対する抗体(Cerianiら, Cancer Res. 55(23): 5852s-5856s(1995);及びRichmanら, Cancer Res. 55(23 Supp): 5916s-5920s(1995));C242のような大腸癌腫細胞に結合する抗体(Littonら, Eur J. Immunol. 26(1):1-9(1996));CD38抗体、例えばAT13/5(Ellisら, J. Immunol. 155(2):925-937(1995));Hu M195(Jurcicら, Cancer Res 55(23 Suppl):5908s-5910s(1995))及びCMA-676又はCDP771のようなCD33抗体;EpCAM抗体、例えば17-1A(PANOREX(登録商標));GpIIb/IIIa抗体、例えばアブシキシマブ又はc7E3 Fab(REOPRO(登録商標));RSV抗体、例えばMEDI-493(SYNAGIS(登録商標));CMV抗体、例えばPROTOVIR(登録商標);HIV抗体、例えばPRO542;肝炎抗体、例えばHep B抗体OSTAVIR(登録商標);CA 125抗体OvaRex;イディオタイプGD3エピトープ抗体BEC2;αvβ3抗体(例えば、VITAXIN(登録商標);Medimmune);ヒト腎臓細胞癌腫抗体、例えばch-G250;ING-1;抗ヒト17-1An抗体(3622W94);抗ヒト結腸直腸腫瘍抗体(A33);GD3ガングリオシドを指向する抗ヒト黒色腫抗体R24;抗ヒト扁平上皮細胞癌腫(SF-25);ヒト白血球抗原(HLA)抗体、例えばSmart ID10及び抗HLA DR抗体Oncolym(Lym-1);CD37抗体、例えばTRU 016(Trubion);IL-21抗体(Zymogenetics/Novo Nordisk);抗B細胞抗体(Impheron);B細胞標的MAb(Immunogen/Aventis);1D09C3(Morphosys/GPC);LympHoRad 131(HGS);Lym-1抗体、例えばLym-1Y-90(USC)、又は抗Lym-1 Oncolym(USC/Peregrine);LIF 226(Enhanced Lifesci.);BAFF抗体(例えば、国際公開第03/33658号);BAFFレセプター抗体(例えば、国際公開第02/24909号を参照);BR3抗体;Blys抗体、例えばベリムマブ(belimumab);LYMPHOSTAT-B
TM;ISF154(UCSD/Roche/Tragen);ゴミリキシマ(gomilixima) (Idec 152; Biogen Idec);IL-6レセプター抗体、例えばアトリズマブ(atlizumab)(ACTEMRA
TM; Chugai/Roche);IL-15抗体、例えばHuMax-Il-15(Genmab/Amgen);ケモカインレセプター抗体、例えばCCR2抗体(例えば、MLN1202; Millieneum);抗補体抗体、例えばC5抗体(例えば、エクリズマブ5G1.1; Alexion);ヒト免疫グロブリンの経口製剤(例えばIgPO; Protein Therapeutics);IL-12抗体、例えばABT-874(CAT/Abbott);テネリキシマブ(Teneliximab)(BMS-224818;BMS);CD40抗体、特にS2C6及びそのヒト化変異体(国際公開第00/75348号)及びTNX 100(Chiron/Tanox);TNF-α抗体、特にcA2、又はインフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、CDP571、MAK-195、アダリムマブ(HUMIRA
TM)、ペグ化TNF-α抗体断片、例えばCDP-870(Celltech)、D2E7(Knoll)、抗TNF-αポリクローナル抗体(例えば、PassTNF;Verigen);CD22抗体、例えばLL2又はエピラツズマブ(LYMPHOCIDE(登録商標);Immunomedics)、特にエピラツズマブY-90、及びエピラツズマブI-131、アビオゲン(Abiogen)製CD22抗体(Abiogen, Italy)、CMC 544(Wyeth/Celltech)、コンボトックス(combotox)(UT Soutwestern)、BL22(NIH)、及びLympoScan Tc99(Immunomedics)が含まれる。好ましくは、ここで精製される抗体は、ヒトCD20に結合するネイキッドの無傷抗体、又はヒトVEGFに結合するネイキッドの無傷抗体である。
【0032】
ヒト「CD20」抗原、又は「CD20」は、末梢血又はリンパ系器官の90%以上のB細胞の表面にみられる、約35kDaの非グルコシル化リンタンパク質である。CD20は正常なB細胞、並びに悪性のB細胞の双方に存在するが、幹細胞では発現しない。文献中でのCD20の他の名前には、「Bリンパ球限定抗原(B-lymphocyte-restricted antigen)」及び「Bp35」が含まれる。CD20抗原は、例としてClarkら Proc. Natl. Acad. Sci.(USA) 82:1766 (1985)に記載されている。
【0033】
ここで「CD20抗体アンタゴニスト」とは、B細胞上のCD20に結合することによって、被験者ののB細胞を破壊又は枯渇させる、及び/又は例えばB細胞に誘導される体液性反応を低減又は阻害するすることにより、一又は複数のB細胞機能に干渉する抗体である。好ましくは、抗体アンタゴニストは、それによって治療される被験者のB細胞を枯渇する(すなわち、循環B細胞レベルを低下させる)ことができる。そのような枯渇は、抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)及び/又は補体依存性細胞障害(CDC)、B細胞増殖の阻害及び/又はB細胞死の誘導(例えば、アポトーシスを介する)等の多様な機能を介して達成されるであろう。
【0034】
ここで使用される場合「B細胞枯渇」とは、一般的に、治療前のレベルに対し、薬剤又は抗体治療後の、動物又はヒトにおけるB細胞レベルが低減していることを意味する。B細胞枯渇は、部分的又は完全なものであってよい。B細胞レベルは公知の技術、例えばReffら, Blood 83:435-445(1994)、又は米国特許第5736137号(Andersonら)に記載されているものを使用して測定可能である。例えば哺乳動物(例えば正常な霊長類)を、種々の用量の抗体又はイムノアドヘシンで治療し、末梢B細胞濃度を、例えばB細胞を計測するFACS法により測定してもよい。
【0035】
CD20抗体の例には、「リツキシマブ」(「RITUXAN(登録商標)」)と称される「C2B8」(米国特許第5736137号)、「Y2B8」と呼称されるイットリウム-[90]-ラベル2B8マウス抗体、又はIDEC pharmaceuticals社から商業的に入手可能な「イブリツモマブ・チウキセタン」(ZEVALIN(登録商標))(米国特許第5736137号;1993年6月22日にHB11388の受託番号でATCCに寄託された2B8;場合によっては
131Iで標識され、「131I-B1」を生じる、「トシツモマズ」と呼称されるマウスIgG2a「B1」、又はCorixaから商業的に入手可能な「ヨードI113トシツモマズ」抗体(BEXXAR
TM)(また、米国特許第5595721号を参照);マウスモノクローナル抗体「1F5」(Pressら, Blood 69(2):584-591(1987))及び「フレームワークパッチ」又はヒト化1F5を含むその変異体(国際公開第2003/002607号、Leung, S.; ATCC寄託HB−96450);マウス2H7及びキメラ2H7抗体(米国特許第5,677,180号);ヒト化2H7(国際公開第2004/056312号、Lowmanら、以下に説明);2F2(HuMax-CD20)、B細胞の細胞膜においてCD20分子を標的とする全長ヒト高親和性抗体(Genmab, Denmark;例えばGlennie and van de Winkel, Drug Discovery Today 8: 503-510(2003)、及びCraggら, Blood 101: 1045-1052(2003); 国際公開第2004/035607号;米国特許第2004/0167319号を参照);国際公開第2004/035607号及び米国特許出願公開第2004/0167319号(Teelingら)に説明されているヒトモノクローナル抗体;米国特許第2004/0093621号(Shitaraら)に記載されているような、Fc領域に結合した複合N-グリコシド-結合糖鎖を有する抗体;CD20に結合するモノクローナル抗体及び抗原結合断片(国際公開第2005/000901号、Tedderら)、例えばHB20-3、HB20-4、HB20-25、及びMB20-11;CD20結合分子、例えばAMEシリーズの抗体、特に国際公開第2004/103404号及び米国特許出願公開第2005/0025764号(Watkinsら, Eli Lilly/Applied Molecular Evolution, AME)に説明されているようなAME33抗体;米国特許出願公開第2005/0025764号(Watkinsら)に記載されているようなCD20結合分子;A20抗体又はその変異体、例えばキメラ又はヒト化A20抗体(それぞれ、cA20、hA20)又はIMMU-106(米国特許出願公開第2003/0219433号、Immunomedics);CD20-結合抗体、特にエピトープ枯渇Leu-16、1H4、又は2B8で、米国特許出願公開第2005/0069545A1号及び国際公開第2005/16969号(Carrら)のような、場合によってはIL-2とコンジュゲートしているもの;CD22及びCD20に結合する二重特異性抗体、例えばhLL2xhA20(国際公開第2005/14618号、Changら);International Leukocyte Typing Workshopから入手可能なモノクローナル抗体L27、G28-2、93-1B3、B-C1又はNU-B2(Valentineら: Leukocyte Typing III(McMichael編, p. 440, Oxford University Press(1987));1H4(Haismaら Blood 92:184(1998));抗CD20オーリスタチン(auristatin)Eコンジュゲート(Seattle Genetics);抗CD20-IL2(EMD/Biovation/City of Hope);抗CD20 MAb治療(EpiCyte);抗CD20抗体TRU 015(Trubion)が含まれる。ここで好ましいCD20抗体は、キメラ、ヒト化、又はヒトCD20抗体、より好ましくはリツキシマブ、ヒト化2H7、2F2(Hu-Max-CD20)ヒトCD20抗体(Genmab)、及びヒト化A20又はIMMUN-106抗体(Immunomedics)である。
【0036】
ここでの目的に対して、「リツキシマブ」、「RITUXAN(登録商標)」及び「C2B8」なる用語は、米国特許第5736137号、Andersonらに記載されているような、ヒトCD20抗原に結合する組換えキメラ抗体を意味する。このような抗体は、好ましくはCDR H1(配列番号:5)、CDR H2(配列番号:6)、CDR H3(配列番号:7)を含む重鎖と軽鎖を含有し、ここで軽鎖は、好ましくはCDR L1(配列番号:8)、CDR L2(配列番号:9)、及びCDR L3(配列番号:10)を含み;好ましくは、重鎖は、配列番号:3を含む可変重(VH)領域と、配列番号:4を含む可変軽(VL)領域を含有し;最も好ましくは、配列番号:1(C末端リジン残基を有する又は有さない)を含む重鎖と軽鎖を含有し、ここで軽鎖は、好ましくは配列番号:2を含む。本用語は、特に Moorhouseら J. pharm Biomed. Anal. 16:593-603(1997)に記載されているような変異体形態も含む。
【0037】
ここで使用される場合「ヒトVEGF」なる用語は、165-アミノ酸のヒト血管内皮細胞増殖因子を称し、天然に生じるアレルを伴い、Leungら, Science 246:1306(1989), 及びHouck ら, Mol. Endocrin. 5:1806(1991)に記載されているような、121-、189-及び206-アミノ酸の血管内皮細胞増殖因子、及びこれらの増殖因子のプロセシング形態に関する。
【0038】
本発明は、VEGFの一又は複数の生物活性、例えばその分裂促進又は血管新生活性を阻害可能な抗VEGFアンタゴニスト抗体を提供する。VEGFのアンタゴニストは、細胞レセプターへのVEGFの結合に干渉することにより、VEGFで活性化される細胞を無能力化又は殺すことにより、又は細胞レセプターにVEGFが結合した後、血管内皮細胞の活性化に干渉することにより作用する。VEGFアンタゴニストによりインターベンションされるこのような全ての点は、この発明の目的にとって、等価であると見なされる。
【0039】
ここでの目的にとって、「ベバシズマブ」、「アバスチン(AVASTIN)(登録商標)」、「F(ab)-12」及び「rhuMAb VEGF」なる用語は、米国特許第7169901号、Prestaらに記載されているような、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)抗原(rhuMAb VEGF)に結合する組換えヒト化モノクローナル抗体を意味する。このような抗体は、好ましくはCDR H1(配列番号:15)、CDR H2(配列番号:16)、CDR H3(配列番号:17)を含む重鎖と軽鎖を含有し、ここで軽鎖は、好ましくはCDR L1(配列番号:18)、CDR L2(配列番号:19)、及びCDR L3(配列番号:20)を含み;最も好ましくは、重鎖は、配列番号:13を含む可変重(VH)領域と、配列番号:14を含む可変軽(VL)領域を含有し;好ましくは、配列番号:11(C末端リジン残基を有する又は有さない)を含む重鎖と軽鎖を含有し、ここで軽鎖は、好ましくは配列番号:12を含む。本用語は、特に、組換え抗体産物の生成中に形成される種々の形態を含む。
【0040】
ここで使用される「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体、すなわち、集団に含まれる個々の抗体が、少量で存在しうる自然に生じる可能性がある突然変異を除いて同一な抗体を意味する。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含む一般的な(ポリクローナル)抗体調製物に対して、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対するものである。「モノクローナル」との修飾語句は、実質的に均一な抗体の集団から得たものとしての抗体の性質を表すものであり、抗体が何か特定の方法によって生産されることを必要としていると解してはならない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature, 256:495 (1975)に記載されたハイブリドーマ法によって産生でき、あるいは組換えDNA法によって作ることができる(例えば米国特許第4816567号を参照)。さらなる実施態様では、「モノクローナル抗体」は、例えば、McCafferty等, Nature, 348:552-554(1990)に記載されている技術を使用して作製される抗体ファージライブラリーから単離することができる。Clacksonら,Nature, 352:624-628(1991)及びMarksら, J. Mol. Biol. 222: 581-597(1991)には、それぞれファージライブラリーを使用するマウス及びヒト抗体の分離について記述されている。続く文献には、チェインシャッフリング(Marksら, Bio/Technology, 10:779-783(1992))による高親和性(nM範囲)ヒト抗体の生産、並びに非常に大きなファージライブラリーを構築するための戦略としてのコンビナトリアル感染及びインビボ組換え(Waterhouse ら, Nuc. Acids. Res., 21:2265-2266(1993))について記載がある。よって、これらの技術は、モノクローナル抗体の単離のための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術の実行可能な代替策である。別法として、内因性の免疫グロブリン産生がなくともヒト抗体の全レパートリーを免疫化することで生成することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作ることが今は可能である。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(J
H)遺伝子の同型接合除去が内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系列突然変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子列の転移は、抗原投与時にヒト抗体の生成をもたらす。Jakobovitsら, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:2551(1993);Jakobovitsら, Nature 362:255-258(1993); Bruggermanら, Year in Immuno., 7:33(1993);及びDuchosalら, Nature 355:258(1992)を参照。
【0041】
ここでモノクローナル抗体は、その重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種由来又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であり、残りの鎖が、他の種由来又は他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同のものである「キメラ」抗体(免疫グロブリン)と、所望の生物学的活性を表す限り、このような抗体の断片を特に包含する(米国特許第4816567号;Morrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。
【0042】
ここで使用される場合「高頻度可変領域」なる用語は、抗原結合の原因である抗体のアミノ酸残基を意味する。高頻度可変領域は、「相補性決定領域」あるいは「CDR」(つまり、軽鎖可変ドメイン中の残基24-34(L1)、50-56(L2)及び89-97(L3)と、重鎖可変ドメイン中の残基31-35(H1)、50-65(H2)及び95-102(H3);Kabatら, Sequences of Polypeptides of Immunological Interest, 5版 Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(1991))からのアミノ酸残基及び/又は「高頻度可変ループ」(つまり、軽鎖可変ドメイン中の残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)と、重鎖可変ドメイン中の残基26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3);Chothia及び Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917(1987))からの残基を含む。「フレームワーク」あるいは「FR」残基は、ここに定義される高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0043】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。通例、ヒト化抗体は、所望の特異性、親和性及び能力を持つマウス、ラット、ウサギあるいは非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域からの残基によってレシピエントの高頻度可変領域からの残基が置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が対応する非ヒト残基と置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体中あるいはドナー抗体中に見出されない残基を含みうる。これらの改変は抗体の性能をさらに洗練するためになされる。一般に、ヒト化抗体は、高頻度可変ループの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも一つ、典型的には二つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、また、場合によっては、典型的にはヒト免疫グロブリンのものである免疫グロブリン定常領域(Fc)の一部分を少なくとも含むであろう。
【0044】
ヒト化抗体を作るのに使用されるヒト可変ドメインの選択は、軽鎖でも重鎖でも、抗原性を低減させるために非常に重要である。いわゆる「ベストフィット(best-fit)」法によれば、齧歯類抗体の可変ドメインの配列は、既知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに対してスクリーニングされる。齧歯類の配列に最も近いヒト配列は、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク(FR)として受容される(Simsら,J. Immunol., 151:2296(1993);Chothiaら, J. Mol. Biol., 196:901(1987))。
【0045】
別の方法は、軽鎖又は重鎖の特定のサブグループの全てのヒト抗体のコンセンサス配列に由来した特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークを、幾つかの異なるヒト化抗体のために使用することができる(Carterら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285(1992);Prestaら, J. Immunol, 151:2623(1993))。
【0046】
抗体は抗原への高親和性及び他の好ましい生物学的性質を保持したままヒト化されることがさらに重要である。この目標を達成するために、好ましい方法では、ヒト化抗体は、親及びヒト化配列の三次元モデルを用いて、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析プロセスによって調製される。三次元の免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能で、当業者にはなじみが深い。選択された候補免疫グロブリン配列の有望な三次元立体構造を例証し表示するコンピュータプログラムを利用することができる。これらの表示の検査により、候補免疫グロブリン配列の機能中で残基の可能な役割の分析、つまり、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、標的抗原に対する親和性の増大のような、所望の抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及びインポート配列から選び、組み合わせることができる。一般に、CDR残基は、抗原結合に影響を及ぼすことに直接的かつ最も実質的に関与している。
【0047】
「抗体断片」は、全長抗体の一部、一般的にはその抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')
2及びFv断片;ダイアボディ;線形抗体;一本鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多特異性抗体が含まれる。抗体断片を生産するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、無傷抗体のタンパク分解性消化を介して誘導されていた(例えば、Morimotoら, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennanら, Science, 229:81(1985)を参照)。しかし、これらの断片は現在は組換え宿主細胞により直接生産することができる。例えば、抗体断片は上述において検討した抗体ファージライブラリーから分離することができる。別法として、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合してF(ab')
2断片を形成することができる(Carterら, Bio/Technology 10:163-167(1992))。他の実施態様では、F(ab')
2はロイシンジッパーGCN4を使用して形成され、F(ab')
2 分子のアセンブリが促進される。他のアプローチでは、F(ab')
2断片を組換え宿主細胞培養から直接分離することができる。抗体断片の生産のための他の技術は当業者には明らかであろう。
【0048】
他の実施態様では、選択された抗体は一本鎖Fv断片(scFv)である。国際公開第93/16185号を参照。「一本鎖Fv」又は「sFv」抗体断片は、抗体のV
H及びV
Lドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。一般的に、FvポリペプチドはV
H及びV
Lドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含み、それはsFvが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。sFvの概説については、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)のPluckthunを参照。
【0049】
「ダイアボディ」なる用語は、二つの抗原結合部位を持つ小さい抗体断片を指し、その断片は同一のポリペプチド鎖(V
H-V
L)内で軽鎖可変ドメイン(V
L)に結合した重鎖可変ドメイン(V
H)を含む。非常に短いために同一鎖上で二つのドメインの対形成ができないリンカーを使用して、ドメインを他の鎖の相補ドメインと強制的に対形成させ、二つの抗原結合部位を創製する。ダイアボディは、例えば、欧州特許出願公開第404097号;国際公開第93/11161号;及びHollingerら, Proc.Natl.Acad.Sci. USA 90:6444-6448 (1993)にさらに詳細に記載されている。
【0050】
この出願を通して使用される場合「線形抗体」なる表現は、Zapataら, Polypeptide Eng. 8(10):1057-1062(1995)において記載されるような抗体を意味する。簡潔に述べると、これらの抗体は、一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデム型Fdセグメント(V
H-C
H1-V
H-C
H1)を含む。線形抗体は二重特異性又は単一特異性であってよい。
【0051】
「多重特異性抗体」は、少なくとも2の異なるエピトープに対する結合特異性を有し、該エピトープが通常異なる抗原からのものである。このような分子は、通常の2つの抗原のみに結合する(すなわち、二重特異性抗体、BsAbs)が、さらなる特異性を有する抗体、例えば三重特異性抗体も、ここで使用される場合はこの表現に含まれる。BsAbsには、一本のアームが腫瘍細胞抗原に対し、他のアームが、細胞障害誘発分子、例えば抗FcγRI/抗CD15、抗p185
HER2/FcγRIII(CD16)、抗CD3/抗悪性B-細胞(1D10)、抗CD3/抗p185
HER2、抗CD3/抗p97、抗CD3/抗腎細胞癌、抗CD3/抗OVCAR-3、抗CD3/L-D1(抗結腸癌)、抗CD3/抗メラニン細胞刺激ホルモン類似体、抗EGFレセプター/抗CD3、抗CD3/抗CAMA1、抗CD3/抗CD19、抗CD3/MoV18、抗神経細胞接着分子(NCAM)/抗CD3、抗葉酸結合タンパク質(FBP)/抗CD3、抗パン(pan)癌腫関連抗原(AMOC-31)/抗CD3に対するもの;腫瘍抗原に特異的に結合する一本のアームと、毒素、例えば抗サポリン/抗Id-1、抗CD22/抗サポリン、抗CD7/抗サポリン、抗CD38/抗サポリン、抗CEA/抗リシンA鎖、抗インターフェロン-α(IFN-α)/抗ハイブリドーマイディオタイプ、抗CEA/抗ビンカアルカロイドに結合する一本のアームを有するBsAbs;抗CD30/抗アルカリホスファターゼ(マイトマイシンホスフェートプロドラッグのマイトマイシンアルコールへの転換を触媒)等、転換酵素活性化プロドラッグ用のBsAbs;抗フィブリン/抗組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、抗フィブリン/抗ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(uPA)等、線維素溶解剤として使用可能なBsAbs;抗低密度リポタンパク質(LDL)/抗Fcレセプター(例えば、FcγRI、又はFcγRIII)等、細胞表面レセプターへ免疫複合体を標的化するためのBsAbs;抗CD3/抗単純ヘルペスウイルス(HSV)、抗T細胞レセプター:CD3複合体/抗インフルエンザ、抗FcγR/抗HIV等の感染症の治療に使用するためのBsAbs;抗CEA/抗EOTUBE、抗CEA/抗DPTA、抗p185
HER2/抗ハプテン等、インビトロ又はインビボにおいて腫瘍を検出するためのBsAbs;ワクチンアジュバントとしてのBsAbs;抗ウサギIgG/抗フェリチン、抗西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)/抗ホルモン、抗ソマトスタチン/抗サブスタンスP、抗HRP/抗FITC、抗CEA/抗βガラクトシダーゼ等、診断ツールとしてのBsAbsが含まれる。三重特異性抗体の例には、抗CD3/抗CD4/抗CD37、抗CD3/抗CD5/抗CD37、及び抗CD3/抗CD8/抗CD37が含まれる。二重特異性抗体は、全長抗体又は抗体断片(例えば、F(ab')
2二重特異性抗体)として調製可能である。
【0052】
2以上の結合価を有する抗体が考慮される。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tuttら J. Immunol. 147: 60(1991)。
ここでの目的に対して「ネイキッド抗体」とは、細胞障害性部分又は放射標識にコンジュゲートしない抗体である。
ここで「無傷抗体」とは、2つの抗原結合領域とFc領域を含むものである。好ましくは、無傷抗体は機能的Fc領域を有する。
【0053】
「処置」とは、治療的処置、及び予防的又は防止的対策の双方を意味する。処置が必要なものには、既に疾患を患っているもの、並びに疾患が予防されるものが含まれる。
「疾患」とは、ここで記載されたようにして精製された抗体を用いた処置で利益を受ける任意の病状である。これには、慢性及び急性の疾患及び病気、及び当該問題の疾患に哺乳動物がかかりやすい病的状態を含む。
【0054】
ここで使用される場合「標識」なる用語は、抗体に直接又は間接的にコンジュゲートする検出可能な化合物又は組成物を意味する。標識はそれ自体が検出可能なもの(例えば、放射性同位元素標識又は蛍光標識)、又は酵素標識のケースでは、検出可能な基質化合物又は組成物の化学的変化を触媒するものであってもよい。
【0055】
ここで使用される場合「細胞障害性剤」なる用語は、細胞の機能阻害又は阻止、及び/又は細胞破壊をもたらす物質を意味する。この用語は、放射性同位体(例えば、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32及びLuの放射性同位体)、化学療法剤、及び細菌、真菌、植物、又は動物起源の酵素活性毒素又は小分子毒素などの毒素、またはそれらの断片を含むことを意図する。
【0056】
発明の実施形態
ここでの発明は、抗体と一又は複数の汚染物質を含有する組成物(例えば水溶液)から抗体を精製する方法を提供する。組成物は、一般的に抗体の組換え生産から得られるが、ペプチド合成(又は、他の合成手段)による抗体の生成から得てもよく、又は抗体は、抗体の天然源から精製されてもよい。好ましくは、抗体は、リツキシマブ等ヒトCD20抗原に結合するか、又はベバシズマブ等、VEGF抗原に結合する。
【0057】
抗体の組換え生産
抗体の組換え生産のために、それをコードする核酸が単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために、複製可能なベクター内に挿入される。抗体をコードするDNAは容易に単離され、一般的な手順を使用(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用)して配列化される。多くのベクターが入手可能である。ベクター成分は、一般的に、これらに限定されるものではないが、次のものの一又は複数:シグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列(例えば、特に出典明示によりここに援用される米国特許第5534615号に記載されているもの)を含む。
【0058】
ここで、ベクターにDNAをクローニングあるいは発現するために適切な宿主細胞は、原核生物、酵母、又は高等真核生物細胞である。この目的に適切な原核生物は、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えば大量菌類、特に大腸菌、エンテロバクター、エルウィニア、クレブシエラ、プロテウス(Proteus)、サルモネラ、例えばネズミチフス菌、セラチア、例えば、セラチア・マルセサンス(Serratia marcescans) 、及び赤痢菌、並びに桿菌、例えばバシリ・スブチリス(B. subtilis)及びバシリ・リチェニフォルミス(B. licheniformis)(例えば、1989年4月12日公開のDD266710に記載されたバシリリチェニフォルミス41P)、シュードモナス、例えば緑膿菌及びストレプトマイセスなどの腸内細菌科を含む。好ましい大腸菌クローニング宿主は大腸菌294(ATCC 31,446)であるが、他の菌株、例えば大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC 31,537)、及び大腸菌株W3110(ATCC27,325)も適している。これらの例は限定というよりは、例示的なものである。
【0059】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母のような真核微生物は、抗体コード化ベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシア、又は通常のパン酵母が、下等真核生物宿主微生物の中で最も一般的に使用されている。しかしながら、他の多くの属、種及び菌株、例えばシゾサッカロミセス・プロンブ(Schizosaccharomyces prombe);クルベロミセス・ホスツ(Kluveromyces hosts)、例えばケーラクチス(K. lactis)、ケーフラギリス(K. fragilis)(ATCC 12,424)、ケーブルガリクス(K. bulgaricus)(ATCC 16,045)、ケーウィケラミイ(K. wickeramii)(ATCC 24,178)、ケーワルチイ(K. waltii)(ATCC 56,500)、ケードロソフィラルム(K. drosophilarum)(ATCC 36,906)、ケーテルモトレランス(K. thermotolerans)及びケーマルキシアナス(K. marxianus);ヤロウィア(yarrowia)(欧州特許出願公開第402226号);ピッチャ・パストリス(Pichia pastoris)(欧州特許出願公開第183070号);カンジダ;トリコデルマレーシア(reesia)(欧州特許出願公開第244234号);アカパンカビ;シュワニオマイセス(Schwanniomyces)、例えばシュワニオマイセス・オクシデンタリス(occidentalis);及び糸状真菌、例えば、ニューロスポラ、ペニシリウム、トリポクラジウム(Tolypocladium)、及びコウジ菌、例えば偽巣性コウジ菌及びクロコウジカビも、ここでは一般的に入手可能で有用である。
【0060】
グリコシル化抗体の発現に適切な宿主細胞は多細胞生物から誘導される。無脊椎動物細胞の例には、植物及び昆虫細胞が含まれる。多くのバキュロウイルスの菌株及び変異体、宿主、例えばヨトウガ(イモムシ)、ネッタイシマカ(蚊)、ヒトスジシマカ(蚊)、キイロショウショウバエ(ショウジョウバエ)、及びカイコからの対応する許容的昆虫宿主細胞が同定されている。形質移入用の様々なウイルス株、例えばオートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)NPVのL-1変異体、及びカイコNPVのBm-5株も公に入手可能であり、このようなウイルスは、本発明では、特にヨウトガ細胞の形質移入用のウイルスとして使用されてよい。綿、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマト、及びタバコの植物細胞培養体も、宿主として利用可能である。
【0061】
しかしながら、脊椎動物細胞にも大きな興味があり、培養(組織培養)における脊椎動物細胞の増殖は、常套的な手順でなされる。有用な哺乳動物宿主細胞株の例には、限定されるものではないが、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株 (COS-7, ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓細胞(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol., 36:59 (1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK, ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaubら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76, ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA, ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK, ATCC CCL 34);バッファロラット肝臓細胞(BRL 3A, ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138, ATCC CCL 75); ヒト肝細胞(Hep G2, HB 8065); 及びマウス乳房腫瘍(MMT 060562, ATTC CCL51);TRI細胞(Matherら, Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68(1982));MRC 5細胞;FS4細胞;及びヒト肝細胞腫(Hep G2)が含まれる。多くの場合、抗体の発現にはCHO細胞が好ましくは、本発明で精製される抗体を産生するのにも有利に使用される。
【0062】
宿主細胞は、抗体生成用の上述した発現又はクローニングベクターで形質転換され、プロモーターの誘発、形質転換体の選択、又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適するように改変された従来からの栄養培地で培養される。
【0063】
この発明の抗体の生成に使用される宿主細胞は、様々な培地で培養されてよい。商業的に入手可能な培地、例えばハム(Ham)のF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigma)、RPMI-1640(Sigma)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM)、Sigma)が、宿主細胞の培養に適している。さらに、 Hamら, Meth. Enz. 58:44(1979)、Barnesら, Anal. Biochem.102:255(1980)、米国特許第4767704号;同4657866号;同4927762号;同4560655号;又は同5122469号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;又は米国特許第Re.30985号に記載されている任意の培地も、宿主細胞用の培養培地として使用されてよい。これらの培地はいずれも、ホルモン及び/又は他の増殖因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は表皮増殖因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオシド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えばガラマイシン:ゲンタマイシン(登録商標))、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は同等のエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について以前から用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
【0064】
組換え技術を使用する場合、抗体は細胞膜周辺腔で細胞内で産生されるか、あるいは直接培地へ分泌されるかである。最初の段階として、タンパク質が、微粒子状破片、宿主細胞あるいは溶解された断片(例えば、ホモジナイズの結果)のいずれかから細胞内で産生されるなら、例えば、遠心分離又は限外濾過によって除去される。抗体が培地へ分泌される場合には、このような発現系からの上清は、商業的に入手可能なタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon又はMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して濃縮されうる。
【0065】
本発明の陽イオン交換クロマトグラフィー法
本発明の好ましい実施態様では、ここでの精製方法にかけられる組成物は、組換え生産された抗体、好ましくはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)組換え宿主細胞培養で発現した無傷抗体である。場合によっては、組成物は、陽イオン交換クロマトグラフィーの前に、少なくとも一の精製工程にかけられる。組成物は関心ある抗体と一又は複数の汚染物質、例えばチャイニーズハムスター卵巣タンパク質(CHOP);浸出プロテインA;核酸;所望する抗体の変異体、断片、凝集体又は誘導体;他のポリペプチド;エンドトキシン;ウイルス性汚染物質;細胞培養培地成分(例えばガラマイシン:ゲンタマイシン(登録商標))等を含有する。
【0066】
陽イオン交換クロマトグラフィー法の前、実施中又は後に実施されてもよいさらなる精製手順の例には、疎水性相互作用クロマトグラフィー(例えば、フェニル-セファロース
TM)における分画、エタノール沈殿、等電点電気泳動、逆相HPLC、シリカにおけるクロマトグラフィー、ヘパリンセファロース
TMにおけるクロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、さらなる陽イオン交換クロマトグラフィー、混合モードイオン交換、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、硫酸アンモニウム沈降、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、親水性電荷誘導クロマトグラフィー、及びアフィニティクロマトグラフィー(例えば、プロテインA、プロテインG、抗体、又は特定の基質、リガンド、又はキャプチャー試薬としての抗原を使用)が含まれる。
【0067】
本発明によれば、陽イオン交換精製スキームは、典型的には、逐次的に実施される次の工程を含む:(1)陽イオン交換材料の平衡化;(2)陽イオン交換材料への、精製される組成物のロード;(3)第1の洗浄工程;(4)第2の洗浄工程、及び(5)関心ある抗体の溶出。
【0068】
陽イオン交換精製スキームに少なくとも2の洗浄工程で、その少なくとも第一のものが高pH(約pH6.8以上)で実施される工程を含めることにより、精製効率が有意に改善される。特に、約6.8〜約9.0(例えば、約7.0〜8.0)、例えば約pH7.8又はpH7.0の範囲のpHを有する洗浄バッファーを使用する第一の洗浄工程を実施することで、約5.0〜約5.5の従来からの低pH範囲を使用する場合よりも、上述した汚染物質がより効果的に除去される。結果として、陽イオン交換材料から溶出する抗体を含有する組成物の宿主細胞タンパク質の含有量は、典型的には約200ppmであり、約5〜5.5のpHでの洗浄工程1回を使用して達成される約500ppmレベル以下である。
【0069】
本発明の好ましい実施態様では、陽イオン交換材料は、スルホプロピル基で官能化されたポリヒドロキシル化ポリマーで被覆された架橋ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)フロースルー粒子(固相)、例えば、Applied Biosystemsから入手可能なPOROS 50HS(登録商標)カラムを含む。
【0070】
通常、平衡化バッファーは、関心ある抗体と一又は複数の汚染物質を含有する組成物を、前記物質にロードする前に、陽イオン交換材料上に又はこれに通して通過される。本発明の好ましい実施態様では、平衡化バッファーは約5.0〜約6.0、例えば約5.5のpHを有する。一例では、平衡化バッファーは19mMのMES、60mMのNaClを含有し、pH5.50である。他の例では、平衡化バッファーは23mMのMES、60mMのNaClを含有し、pH5.50である。
【0071】
平衡後、関心ある抗体と一又は複数の汚染物質を含有する水溶液が、陽イオン交換材料にロードされる。場合によっては、ロード物のpHは約4.0〜約6.0の範囲であり、例えばpH約5.0又はpH約5.5である。好ましい実施態様では、前の精製工程からの調整された生成物プールがロードされる。一実施態様では、前のプロテインAクロマトグラフィー精製、pH5.0からのプロテインAプールがイオン交換物質にロードされる。他の実施態様においては、調整されたQ-セファロース(登録商標)プール、pH5.5が陽イオン交換材料にロードされる。例示的なロード密度は、約10〜約100g/L樹脂、好ましくは約10〜約60g/L樹脂、最も好ましくは約15〜約45g/L樹脂である。関心ある抗体は、このロード工程の結果として、陽イオン交換材料に結合する。
【0072】
ロード後、陽イオン交換材料は、第一洗浄バッファーを用いて、第一の洗浄工程にて洗浄される。洗浄プロセス中、洗浄バッファーは陽イオン交換材料上を通過する。洗浄バッファーの組成は、典型的には、関心ある抗体を実質量溶出させることなく、可能な限り多くの汚染物質が樹脂から溶出するように選択される。第一洗浄バッファーのpHは、平衡化バッファー及び/又はロードされる組成物のpHよりも一般的に高く、例えば約2〜約3pH単位高い。好ましくは、第一洗浄バッファーのpHは、pH約6.8〜約9.0、好ましくはpH約6.8〜約8.0の範囲にあり、例えばpH約7.8又はpH約7.0である。このpH範囲にあるバッファーの例には、限定されるものではないが、HEPES、MES、酢酸ナトリウム、トリス/HCl、トリエタノールアミン 塩酸/NaOH、ビシン/HCl、トリシン/HCL等が含まれる。好ましい第一洗浄バッファーは:(1)25mMのHEPES、pH7.8、又は(2)25mMのMOPS、pH7.0を含有するか、又はこれらからなる。
【0073】
この点に関し、本発明は、25mMのHEPES、pH7.8に、組換えキメラCD20抗体、例えばリツキシマブを含有する組成物を提供する。また本発明は、25mMのMOPS、pH7.0に、組換えヒト化VEGF抗体、例えばベバシズマブを含有するものを提供する。このような組成物は、とりわけ、これらの生成物の精製に使用される中間組成物として有用である。
【0074】
本発明は、第二洗浄バッファーを使用する、少なくとも一のさらなる又は第二の洗浄工程を、一般的には必要とする。第二洗浄バッファーのpHは、好ましくは第一洗浄バッファーより低く、例えば約2〜約3pH単位低い。それで、第二洗浄バッファーのpHは、pH約5.0〜pH約6.0の範囲であってよい。好ましくは、第二洗浄バッファーのpHは約5.5である。このpH範囲にあるバッファーの例には、限定されるものではないが、MES、酢酸/酢酸ナトリウム、又はNaOH、NaH
2PO
3/Na
2HPO
4、ビス.トリス/HClが含まれる。MES、pH5.5が、第2の洗浄において好ましいバッファーである。一実施態様では、第二洗浄バッファーは、19mMのMES、10mMのNaCl、pH5.50を含有するか、又はこれらからなる。他の実施態様では、第二洗浄バッファーは、23mMのMES、10mMのNaCl、pH5.50を含有するか、又はこれらからなる。
【0075】
付加的な洗浄工程が使用されてもよいが、所望の抗体の溶出の前には、第一及び第二の洗浄工程のみが実施されることが好ましい。汚染物質、例えば上述したものは、第一及び/又は第二の洗浄抗体中に、陽イオン交換材料から除去される。好ましくは、第一の洗浄工程でほとんどの汚染物質が除去される。
【0076】
上述した洗浄工程(類)に続いて、所望の抗体が陽イオン交換材料から溶出される。抗体の溶出は、伝導率又はイオン強度を増加させることによって達成され得る。望ましくは、溶出バッファーの伝導率は約10mS/cm以上である。溶出バッファーにおいて、比較的高い塩分濃度を増加させることにより、伝導率の増加が達成され得る。この目的のための例示的な塩には、限定されるものではないが、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム(NaCl)、及び塩化カリウム(KCl)が含まれる。一実施態様では、溶出バッファーは約100〜約300mMのNaClを含有する。溶出バッファーは、一般的に第二洗浄バッファーとほぼ同じpHを有する。好ましい溶出バッファーは、19mMのMES、160mMのNaCl、pH5.5を含有する。他の好ましい溶出バッファーは、23mMのMES、175mMのNaCl、pH5.5を含有する。溶出は段階溶出(勾配溶出とは対照)を好ましくは含む。
溶出工程には、場合によっては再生工程が続くが、これは本発明の好ましい実施態様に必要ではない。
【0077】
さらなる工程が考慮されるが、好ましくは、陽イオン交換精製法は次の工程:平衡化(例えば、pH約5.5の平衡化バッファーを使用)、抗体と汚染物質(類)を含有する組成物のロード(例えば、ロードされる組成物のpHは約5.0又は約5.5である)、汚染物質を溶出させるための第一の洗浄工程(例えば、pH約7.8の第一洗浄バッファー、又はpH約7.0の第一洗浄バッファーを使用)、第二の洗浄工程(例えば、pH約5.5の第二洗浄バッファーを使用)、及び溶出(例えば、抗体を溶出させる初期の各工程よりも比較的増加した伝導率、及びpH約5.5の溶出バッファーを使用)のみからなる。
【0078】
ここで陽イオン交換クロマトグラフィー法により得られる抗体調製物には、必要ならば、さらなる精製工程を施してもよい。例示的なさらなる精製工程は、上述にて検討している。
場合によっては、抗体は、所望の場合は一又は複数の異種分子にコンジュゲートされる。異種分子は、例えば抗体の血清半減期を増加させるもの(例えば、ポリエチレングリコール、PEG)であり得、又は標識(例えば、酵素、蛍光標識及び/又は放射性核種)、又は細胞障害性分子(例えば、毒素、化学治療剤、又は放射性同位元素)でありうる。
【0079】
場合によっては異種分子とコンジュゲートした抗体を含有する治療用製剤は、所望の純度を有する抗体を、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で、任意の薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は安定剤(Remington's pharmaceutical Sciences 第16版, Osol, A. 編(1980))と混合することにより調製されてよい。「薬学的に許容可能な」担体、賦形剤、又は安定剤は、用いられる用量及び濃度でレシピエントに非毒性であり、ホスフェート、シトレート、及び他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド;ベンズエトニウムクロリド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖類;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又はトゥイーン(TWEEN)
TM、プルロニクス(PLURONICS)
TM、又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0080】
また、活性成分は、例えばコアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマイクロエマルション中に包括されてもよい。これらの技術はRemington's Pharmaceutical Science 第16版, Osol, A. 編(1980)に開示されている。
【0081】
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過により容易に達成される。
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の好適な例は、抗体変異体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスを含み、このマトリックスは成形された物品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形状である。除放性マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸及びγ-エチル-L-グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT
TM(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロリドからなる注射可能なミクロスフィア)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。
【0082】
ここで開示されたようにして精製される抗体、又は抗体と薬学的に許容可能な担体を含有する組成物は、種々の診断、治療、及びこのような抗体及び組成物に公知の他の用途に使用される。例えば、治療的有効量の抗体を哺乳動物に投与することにより、哺乳動物における疾患を処置するのに、抗体は使用される。CD20抗体、例えばリツキシマブのケースにおいては、B-細胞の枯渇、リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、NHL)、又は白血病(例えば、慢性リンパ性白血病、CLL)、並びに自己免疫疾患、例えば関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、ループス等の処置に使用することができる。VEGFに結合する抗体、例えばベバシズマブについては、血管新生の阻害、癌の処置、及び黄斑変性症の処置に使用することができる。
次の実施例は例証のために提供されるものであって、限定するためのものではない。本明細書における全ての引用の開示は、出典明示により明示的にここに援用される。
【実施例】
【0083】
実施例1:CD20抗体の精製
この実施例は、CD20抗体のリツキシマブを精製するための改善された陽イオン交換クロマトグラフィー法を記載する。リツキシマブはNHL、CLL、RA、MS等の治療に使用される。リツキシマブ分子の構造はAndersonらの米国特許第5736137号 (出典明示により明示的にここに援用)、並びに
図1A-1Bに開示されている。リツキシマブはジェネンテック社から商業的に入手可能である。
【0084】
陽イオン交換クロマトグラフィーは、CHOP、DNA、浸出プロテインA、ガラマイシン(ゲンタマイシン(登録商標))、リツキシマブ凝集体、及び潜在的ウイルスのレベルをさらに低下させるのに使用される。リツキシマブはロード条件下でカラムに結合する。ついで、カラムは、洗浄、溶出、再生/衛生化され、次の使用まで保存される。複数サイクルを使用してアフィニティプールのバッチ全体を処理してもよい。陽イオン交換プールは、室温から30℃までで3日間まで、あるいは5℃で7日間まで保持されうる。
【0085】
陽イオン交換樹脂(POROS 50 HS(登録商標)、Applied Biosystems)を、ベッド高さ17−33cmになるまでカラムに充填する。アフィニティープールをロードする前に、陽イオン交換カラムは、平衡化バッファーを用いて、保存溶液のパージがなされる。平衡化後、アフィニティプールをカラムにロードする。これらの条件下で、生成物をカラムに結合させる。ついで、第一洗浄バッファー、続いて第二洗浄バッファーを用いて、カラムを洗浄する。高イオン強度の溶出バッファーを使用し、カラムからリツキシマブを溶出させる。
【0086】
元の(コントロール)方法に対する本発明の方法の条件の比較を次表にまとめる。
【0087】
リツキシマブ法におけるロード物及びバッファーについての所望のpH、伝導率、及びモル濃度の範囲を次表にまとめる。
【0088】
リツキシマブ精製のための実証された方法では、洗浄相において宿主細胞タンパク質が高度に除去されることで、宿主細胞タンパク質除去のロバスト性が高まり、結果として生成物プール(溶出プール)中の宿主細胞タンパク質レベルが低下し、後続する下流の工程における不純物の除去が容易になる。
図3は、宿主細胞タンパク質の除去に関する本方法の利点を例証している。
【0089】
実施例2:VEGF抗体の精製
この実施例は、組換えヒト化血管内皮増殖因子抗体(rhuMAb VEGF)のベバシズマブを精製するための陽イオン交換クロマトグラフィー法を記載する。ベバシズマブ分子の構造は、ここに出典明示により明示的に援用されるPrestaらの米国特許第7169901号に開示されている。また、ここでの
図2A-2Bを参照のこと。ベバシズマブはジェネンテック社から商業的に入手可能である。
【0090】
この実施例は、改善されたベバシズマブ精製法のための、陽イオン交換工程で実施された開発研究をまとめたものである。これらの研究において、CM SEPHAROSE FAST FLOW(登録商標)、SP SEPHAROSE FAST FLOW(登録商標)及びPOROS 50HS(登録商標)の3種の陽イオン交換樹脂を評価した。これらの3種の樹脂を使用する陽イオン交換精製法を、プロセス性能(不純物の除去性、レトロウイルスの除去性、及び工程収率)、生成物の品質、プロセスのロバスト性、及び現在のあらゆる製造現場でのプロセス適合性に関して評価した。これらの研究から作成されたデータに基づき、POROS 50HS(登録商標)が優れたプロセス性能及びロバスト性を示し、改善された精製法のための陽イオン交換樹脂として選択された。
【0091】
陽イオン交換クロマトグラフィーは、精製プロセスの最終のクロマトグラフィー工程である。それにより、細胞培養培地成分(ガラマイシン)、宿主細胞誘導性の不純物(CHOP、及びDNA)、及びベバシズマブの凝集形態が除去される。それはまたウイルス除去工程としても機能する。
【0092】
カラムは結合-溶出方式で操作し、周囲温度で実施される。カラムには陽イオン交換樹脂(POROS 50HS(登録商標))を使用する。樹脂は、負に荷電した官能基でカップリングした多孔質のポリスチレン-ジビニルベンゼンベッド担体からなる。カラムは平衡化バッファーを用いた洗浄により、保存状態から取り出される。ウイルス濾過されたプールは、≦5.5mS/cmの伝導率限界を満たすように0.3容量の注射用水(WFI)で希釈される。ついで、ウイルス濾過されたプールを平衡化したカラムにロードする。生成物が樹脂に結合する。ロード後、高pHのバッファーでカラムを洗浄し、ロード物質をカラムを通して流し、CHOP不純物を除去する。ついで、カラムを低塩分バッファーで洗浄し、pHを低下させ、溶出用のカラムを調製する。最大7カラム体積の高塩分バッファーの段階溶出を使用し、生成物を溶出させる。溶出後、衛生化溶液(0.5NのNaOH)を用いて、カラム及びスキッドを衛生化し、次に使用するまで貯蔵溶液(0.1NのNaOH)で保存する。
【0093】
次表は本発明のベバシズマブ法に対する条件を記載したものである。
【0094】
ベバシズマブ法でのロード物及びバッファーに対する所望のpH、伝導率及びモル濃度範囲を次表にまとめる。
【0095】
本方法は、pH5.5の第一洗浄バッファーを使用した元のベバシズマブ法より優れていることが見出された。ここでの新規方法は、低いCHOPレベルのプールを得ることができ、高い工程収率が達成され、製造中実施するのに全体的によりロバストな方法であった。