(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
希土類化合物を含む磁石素体の表面に重希土類化合物を付着させて加熱し、前記重希土類化合物に含まれる重希土類元素を前記磁石素体の表面部に拡散させて、前記磁石素体の表面部における前記重希土類元素の含有率を、前記表面部に囲まれた前記磁石素体の内部よりも高くする拡散工程と、
前記磁石素体の上に、ニッケル又はニッケル合金を含む、前記磁石素体との密着力が100N/m以上のめっき膜を形成するめっき工程と、を有し、
前記磁石素体と前記めっき膜との界面から深さ250μmの位置における重希土類元素の含有率に対する、前記界面から深さ10μmの位置における重希土類元素の含有率の質量比が3以上且つ5未満であり、
前記磁石素体と前記めっき膜との界面から深さ10μmの位置において、軽希土類元素に対する重希土類元素の質量比が0.06以上である、希土類焼結磁石の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、めっき膜のうち、銅めっき、亜鉛めっき、スズめっき等は、めっき膜が比較的軟らかいために、衝撃等によって希土類焼結磁石が容易に変形してしまう。また、亜鉛めっきの場合は、めっき膜を形成する際に磁石素体が腐食して、磁気特性が低下してしまう。一方、ニッケルめっき及びニッケル合金めっきは、他のめっきに比べて比較的硬いため、めっきの材質の点からは希土類焼結磁石用のめっきとして有望であると考えられ、現在広く使用されている。
【0005】
ところが、本発明者らの検討によれば、ニッケルめっき又はニッケル合金めっきを形成する際に発生する水素が希土類焼結磁石の表面部に含まれる希土類元素と反応してしまい、磁石素体の表面近傍にマイクロクラックが生じることが分かった。そして、これに伴って、希土類焼結磁石の磁気特性が低下したり、磁石素体とめっき膜との密着性が損なわれたりしてしまうことが分かった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、密着性に優れたニッケルを含むめっき膜を有するとともに優れた磁気特性を有する希土類焼結磁石を提供することを目的とする。また、ニッケルを含むめっき膜の密着性に優れるとともに優れた磁気特性を有する希土類焼結磁石の製造方法を提供することを目的とする。さらに、そのような希土類焼結磁石を備えることによって、信頼性に優れるモータ及び自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、希土類焼結磁石のニッケルを含むめっき膜の密着性を改善する手段を種々検討した。その結果、磁石素体の表面部の組成を制御することによって、磁石素体とめっき膜との界面付近における微細組織が改善されてめっき膜の密着性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、希土類化合物を含む磁石素体と、磁石素体の上にニッケル又はニッケル合金を含むめっき膜と、を備え、磁石素体の表面部の方が、表面部に囲まれた前記磁石素体の内部よりも重希土類元素の含有率が高い希土類焼結磁石を提供する。
【0009】
上記本発明の希土類焼結磁石は、磁石素体においても表面部の方が内部よりも重希土類元素の含有率が高くなっている。これによって、磁石素体にニッケルめっき又はニッケル合金めっき(以下、纏めて「ニッケルめっき等」という。)をする際に発生する水素、及びニッケルめっき等に由来する、磁石素体とめっき膜との界面に残留する水素によるマイクロクラックの発生を抑制することができる。このようにマイクロクラックの発生が抑制できる要因の一つとして、重希土類元素と軽希土類元素の水素との親和性の相違が考えられる。すなわち、重希土類元素やその化合物の方が、軽希土類元素やその化合物よりも水素化され難く、これが水素によるマイクロクラックの発生の抑制に寄与していると考えられる。これによって、磁石素体の劣化が抑制されて、めっき膜との密着性が高く、且つ磁気特性に優れる希土類焼結磁石とすることができる。
【0010】
本発明の希土類焼結磁石は、磁石素体とめっき膜との界面から深さ10μmの位置において、軽希土類元素に対する重希土類元素の質量比が0.04以上であることが好ましい。磁石素体の表面部の組成を上記質量比とすることによって、水素によるマイクロクラックの発生が十分に抑制され、一層優れた密着性と磁気特性を有する希土類焼結磁石とすることができる。
【0011】
本発明の希土類焼結磁石は、磁石素体の内部の重希土類元素に対する表面部の重希土類元素の質量比が2以上であることが好ましい。磁石素体全体の重希土類濃度を高くすることによってもマイクロクラックの発生は抑制され、ニッケルめっき等による磁気特性の劣化を抑えることができる。ただし、その場合、希土類焼結磁石の残留磁束密度(Br)が低下する傾向にある。そこで、磁石素体の表面部と内部における希土類元素の含有率の差を大きくすることによって、水素によるマイクロクラックの発生を抑制しつつ、残留磁束密度の高い高性能な希土類焼結磁石を得ることができる。
【0012】
本発明の希土類焼結磁石は、重希土類元素が、磁石素体の表面部において、磁石素体の粒界相に偏在していることが好ましい。ニッケルめっき等により発生する水素は、希土類元素と選択的に結合する。粒界相は、主相と比較して希土類元素がリッチになっているため、主相よりも水素を吸収しやすい傾向にある。したがって、水素との親和性が低い重希土類元素を粒界相に偏在させれば、磁石素体の内部に水素が拡散することがより困難となり、マイクロクラックの発生を一層十分に抑制することができる。したがって、より一層高い密着性と優れた磁気特性を有する希土類焼結磁石とすることができる。
【0013】
また、本発明では、希土類化合物を含む磁石素体の表面に重希土類化合物を付着させて加熱し、重希土類化合物に含まれる重希土類元素を磁石素体の表面部に拡散させる拡散工程と、磁石素体の上に、ニッケル又はニッケル合金を含むめっき膜を形成するめっき工程と、を有する、磁石素体と磁石素体の上にめっき膜とを備える希土類焼結磁石の製造方法を提供する。
【0014】
このような製造方法によれば、ニッケルめっき膜等を形成する際に、磁石素体に水素によってマイクロクラックが発生するのを抑制することができる。これによって、ニッケルめっき膜等と磁石素体との密着性が高く、磁気特性に優れた希土類焼結磁石を製造することができる。
【0015】
本発明の希土類焼結磁石における拡散工程では、重希土類化合物を付着させた磁石素体を800〜1000℃で加熱することが好ましい。これによって、磁石素体の表面部における重希土類元素と軽希土類元素の質量比率を好適な範囲にすることができる。したがって、希土類焼結磁石の耐食性と磁気特性とを一層向上することができる。
【0016】
本発明ではまた、上述の希土類焼結磁石を備えるモータを提供する。このモータは、上述の特徴を有する希土類焼結磁石を備えるため、希土類焼結磁石の磁気特性を長期間に亘って維持することができる。そして、めっき膜が容易に剥離しないことから信頼性に優れる。
【0017】
本発明ではまた、上述のモータを備える自動車を提供する。この自動車は、上述の特徴を有するモータを備えるため、信頼性に優れる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、密着性に優れたニッケルを含むめっき膜を有するとともに優れた磁気特性を有する希土類焼結磁石を提供することができる。また、ニッケルを含むめっき膜の密着性に優れるとともに優れた磁気特性を有する希土類焼結磁石の製造方法を提供することができる。さらに、そのような希土類焼結磁石を備えることによって、信頼性に優れるモータ及び自動車を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、場合により図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図面において、同一又は同等の要素には同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0021】
図1は本実施形態の希土類焼結磁石の一実施形態を示す概略斜視図である。
図2は
図1の希土類焼結磁石のII−II線断面図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の希土類焼結磁石10は磁石素体40と、磁石素体40の表面全体を被覆するめっき膜50とを有する。
【0022】
磁石素体40は、希土類元素を有する希土類化合物を主成分として含有する永久磁石である。希土類元素は、長周期型周期表の第3族に属するスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びランタノイド元素から選ばれる少なくとも一種の元素である。なお、ランタノイド元素には、例えば、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビニウム(Tb)、ディスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等が含まれる。
【0023】
上述の希土類元素は、重希土類元素(R
H)と軽希土類元素(R
L)に分類される。重希土類元素には、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luが含まれる。一方、軽希土類元素には、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Euが含まれる。
【0024】
磁石素体40の主成分である希土類化合物としては、構成元素として、上記希土類元素と、希土類元素以外の元素と、を有する化合物が挙げられる。希土類元素以外の元素としては、遷移元素及びホウ素(B)元素が挙げられる。希土類化合物は、遷移元素として、好ましくは、鉄(Fe)、コバルト(Co)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含み、より好ましくはFe及び/又はCoを含む。また、希土類化合物は、構成元素として遷移元素とホウ素の両方を含んでもよい。
【0025】
磁石素体40は、上述の希土類化合物の他に、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ビスマス(Bi)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、ジルコニウム(Zr)、ニッケル(Ni)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、銅(Cu)、ハフニウム(Hf)等の元素、又はこれらの元素を含む化合物を含んでいてもよい。
【0026】
磁石素体40は、希土類化合物(希土類合金)として、例えばR−T−B系化合物を含有する。R−T−B系化合物の場合、Rは、好ましくはNdを主成分とする希土類元素であり、Tは、好ましくはFe及び/又はCoを主成分とする遷移金属元素である。好ましいR−T−B系化合物としては、R
2T
14Bが挙げられる。
【0027】
磁石素体40は、磁石素体40の内部42よりも、内部42を覆う表面部44の方が重希土類元素(R
H)の質量比率が高くなっている。このような構造にすることによって、磁石素体40とめっき膜50との密着性が向上し、高い磁気特性と耐食性とを兼ね備えた希土類焼結磁石10とすることができる。
【0028】
磁石素体40の表面部44は、例えば、磁石素体40の表面から深さ100μmまでの領域であり、内部42は、磁石素体40の表面から深さが100μmを超える領域である。内部42は、例えば、希土類元素として軽希土類元素を含むが、重希土類元素を実質的に含まない領域であってもよい。これによって、低コストで高い磁気特性を有する希土類焼結磁石10とすることができる。ここでいう「実質的に含まない」とは、通常不純物として含まれ得る程度の量を含んでもよいことを意味する。
【0029】
内部42の重希土類元素の含有率に対する表面部44の重希土類元素の含有率の質量比αは、好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上であり、さらに好ましくは4以上である。質量比αを大きくすることによって、ニッケルめっき等に伴って発生した水素のバリア効果が大きくなり、マイクロクラックの発生を抑制することができる。なお、上記質量比αに特に上限はないが、実用上、5未満である。すなわち、希土類焼結磁石10は、質量基準で、表面部44に、好ましくは内部42における重希土類元素の含有率の2倍以上、より好ましくは3倍以上の重希土類元素を含有する領域を有することによって、密着力及び磁気特性を一層向上することができる。
【0030】
内部42は、主な結晶相(主相)として、R−T−B系化合物を主成分とする粒子を含有し、当該粒子の間(粒界相)に、軽希土類化合物を含有する構造であることが好ましい。軽希土類化合物は、主相におけるR−T−B系化合物とは異なる化合物であり、例えば希土類元素の含有割合が高い希土類リッチ相や、ホウ素原子の含有割合が高いホウ素リッチ相であってもよい。
【0031】
内部42における重希土類元素の含有率は、例えば1質量%未満であってもよい。このように重希土類元素の含有率を十分に低くすることによって、表面部44との重希土類元素の濃度変化を大きくすることが可能となる。これによって、ニッケルめっき等のとき、及びニッケルめっき等を形成した後における水素によるマイクロクラックの発生を一層抑制することができる。
【0032】
表面部44は、内部42よりも重希土類元素の含有率が高い。表面部44は、主な結晶相(主相)として、重希土類元素が固溶したR−T−B系化合物を含む粒子を含有し、当該粒子の間(粒界相)に、重希土類化合物を含有する構造であることが好ましい。表面部44は、軽希土類元素を実質的に含んでいなくてもよく、軽希土類元素と重希土類元素の両方が固溶したR−T−B系化合物を含む粒子を含んでいてもよい。粒界相における重希土類化合物は、例えば、重希土類元素の含有割合が高い重希土類リッチ相や、ホウ素原子の含有割合が高いホウ素リッチ相であってもよい。このように、重希土類元素が表面部44の粒界相に偏在した構造とすることによって、ニッケルめっき等の際、またはその後におけるマイクロクラックの発生を十分に抑制することができる。
【0033】
表面部44における重希土類元素の含有率は、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは1.2質量%以上である。表面部44における重希土類元素の含有率が上記範囲未満であると、ニッケルめっき膜等の種類によってはマイクロクラックの発生を十分に抑制できない場合がある。
【0034】
表面部44において、軽希土類元素の含有率に対する重希土類元素の含有率の質量比βは、好ましくは0.04以上であり、より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.06以上である。上記質量比βを高くすることによって、マイクロクラックの発生を十分に抑制することができる。
【0035】
磁石素体40の組成は、
図2に示すような磁石素体40の断面をEPMA(X線マイクロアナライザ法)で測定して確認することができる。表面部44及び内部42の組成は、それぞれ均一である必要はない。例えば、表面部44は、磁石素体40の表面に近接するにつれて、R
H(R
H−T−B系化合物)の含有率が高くなっていてもよい。
【0036】
また、内部42と表面部44における質量比βは、希土類焼結磁石10の深さ方向に沿って連続的に変化してもよい。この場合、例えば質量比βが0.02以上の領域を表面部44、当該質量比βが0.02未満の領域を内部42とすることができる。
【0037】
めっき膜50は、ニッケルめっき膜又はニッケル合金めっき膜である。ニッケル合金めっきとしては、Zn−Niめっき、Ni−Bめっき、Ni−Wめっき、Ni−W−Coめっき、Ni−Pめっき、Ni−Snめっき、Ni−Feめっき等が挙げられる。これらのニッケルめっき膜、ニッケル合金めっき膜には、微量のC、Sといった非金属元素を含む場合もある。これらのめっきの中で、一層優れた密着性を有するめっき膜とする観点から、ニッケルめっきが好ましい。
【0038】
めっき膜50の厚みは、好ましくは5〜100μmであり、より好ましくは10〜50μmであり、さらに好ましくは10〜30μmである。めっき膜50の厚みを上述の範囲とすることによって、優れた磁気特性と優れた耐食性とを一層高水準で両立することができる。
【0039】
上述の磁石素体40とめっき膜50とは、密着性に優れる。密着性向上の要因の一つとして、ニッケルめっき膜等の作製時及び作製後に界面等に滞留した水素によるマイクロクラックの発生が十分に抑制されていることが挙げられる。磁石素体40とめっき膜50との密着力は、好ましくは90N/m以上であり、より好ましくは100N/m以上であり、更に好ましくは110N/m以上である。なお、この密着力の値は、JIS H8504(めっきの密着性試験方法−テープ試験)に準拠して測定される値である。
【0040】
本実施形態の希土類焼結磁石10は、めっき膜50と磁石素体40とが直接接触していることから、めっき膜50と磁石素体40との間に他の中間層(例えば銅めっき膜など)を備える場合に比べて、磁気特性を高くすることができる。
【0041】
次に、本発明の希土類焼結磁石の製造方法の好適な実施形態を、希土類焼結磁石10を例にして説明する。本実施形態の製造方法は、
(1)軽希土類化合物を含有する磁石素体を作製する準備工程、
(2)磁石素体の表面に重希土類化合物を付着させて加熱し、重希土類化合物に含まれる重希土類元素を磁石素体の表面部に拡散させる拡散工程、
(3)磁石素体の表面に付着した重希土類化合物の少なくとも一部を除去する除去工程、
(4)磁石素体の表面に、ニッケル又はニッケル合金を含むめっき膜を形成するめっき工程と、を有する。以下、各工程の詳細を説明する。
【0042】
準備工程では、軽希土類化合物を含有する磁石素体を作製する。磁石素体は、粉末冶金法によって製造することができる。具体的には、まず、鋳造法やストリップキャスト法等の公知の合金製造プロセスにより所望の組成を有する合金を作製する。次に、この合金をジョークラッシャー、ブラウンミル、スタンプミル等の粗粉砕機を用いて10〜100μmの粒径となるように粉砕した後、更にジェットミル、アトライター等の微粉砕機により0.5〜5μmの粒径にする。こうして得られた粉末を、好ましくは600kA/m以上の磁場強度を有する磁場の中で、0.5〜5ton/cm
2の圧力で成形して、成形体を作製する。
【0043】
作製した成形体を、好ましくは不活性ガス雰囲気又は真空中、1000〜1200℃で0.5〜10時間加熱して焼結し、その後急冷する。さらに、この焼結体に、不活性ガス雰囲気又は真空中、500〜900℃で1〜5時間の熱処理(時効処理)を施し、必要に応じて焼結体を所望の形状(実用形状)に加工して、磁石素体を得ることができる。このようにして得られた磁石素体には、さらに硝酸等による酸洗浄を施してもよい。
【0044】
拡散工程では、重希土類元素を上述の通り作製した磁石素体の表面部に拡散させる。このとき、重希土類化合物の少なくとも一部が、磁石素体と一体化してもよい。重希土類元素源となる重希土類化合物として、重希土類元素の水素化物やフッ化物等を用いることが好ましい。重希土類元素を円滑に磁石素体中に拡散させる観点から、重希土類化合物は、好ましくは重希土類元素の水素化物を含む。重希土類化合物は、公知の方法で調製することができる。
【0045】
磁石素体に重希土類化合物を付着させる方法は、特に限定されるものではなく、例えば、粉末状の重希土類化合物を分散させたスラリー中に磁石素体を浸漬する方法、粉末状の重希土類化合物を含むペーストを磁石素体の表面に塗布する方法、及び真空中で重希土類元素を蒸発させて磁石素体に付着させる方法が挙げられる。これらの方法のうち、磁石素体に重希土類化合物をできるだけ均一に付着させる観点から、粉末状の重希土類化合物を分散させたスラリー中に磁石素体を浸漬する方法が好ましい。
【0046】
スラリー中の重希土類化合物の含有量は、磁石素体40に付着させる重希土類化合物の量を好適な範囲とする観点から、好ましくは30〜50質量%であり、より好ましくは35〜45質量%である。スラリー中に分散させる重希土類化合物の粉末の平均粒径は、好ましくは0.1〜50μmであり、より好ましくは0.1〜10μmである。平均粒径が大き過ぎると、磁石素体上に形成される被覆層の厚みがばらつき易くなる傾向にある。スラリーに用いる溶媒としては、アルコール、アセトンなどの有機溶媒を用いることができる。なお、本明細書における粉末の平均粒径は、市販のレーザー回折式の粒度分布計を用いて測定される体積平均粒子径である。
【0047】
磁石素体に付着させる重希土類化合物の量は、磁石素体を基準として、重希土類元素換算で好ましくは0.1〜5質量%であり、より好ましくは0.2〜3質量%であり、さらに好ましくは、0.3〜2質量%である。磁石素体に付着させる重希土類元素の量が多過ぎると、磁石素体の表面が平滑になり難くなる傾向にある。一方、磁石素体に付着させる重希土類元素の量が少な過ぎると、十分な量の重希土類元素を拡散させることが困難になる傾向にある。
【0048】
磁石素体に重希土類化合物を付着させた後、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中で重希土類化合物が付着した磁石素体を加熱して、重希土類化合物に含まれる重希土類元素を磁石素体の表面部44に拡散させる。
【0049】
重希土類化合物が付着した磁石素体の加熱温度は、好ましくは600〜1000℃であり、より好ましくは800〜900℃である。磁石素体の加熱時間は、好ましくは0.5〜10時間であり、より好ましくは1〜5時間である。磁石素体の加熱温度が上記範囲を超えると、重希土類元素が磁石素体の内部にまで拡散して、水素拡散のバリア効果が得られ難くなる傾向にある。一方、磁石素体の加熱温度が低すぎると、重希土類元素が十分に磁石素体中に拡散せず、めっき液の種類によっては、後のめっき工程で水素によってマイクロクラックが発生し易くなる傾向にある。
【0050】
以上の工程によって、内部42と、内部42の周囲に設けられ内部42よりも重希土類元素の含有率が高い表面部44と、を有する磁石素体40が形成される。なお、拡散処理後、磁石素体40に、不活性ガス雰囲気又は真空中、500〜900℃で1〜5時間加熱する時効処理を施してもよい。
【0051】
表面処理工程では、磁石素体40上に付着した粒状の重希土類化合物を除去する。これによって、磁石素体40の表面が平滑になり、後の工程でニッケルめっき膜等を容易に形成することができる。重希土類化合物の除去方法としては、バレル研磨、ショットブラスト、及び酸エッチングなどの公知の方法が挙げられる。
【0052】
めっき工程では、磁石素体40の表面にニッケルめっき膜又はニッケル合金膜を形成する。ニッケルめっき膜及びニッケル合金膜は、無電解めっき又は電解めっきなどの公知の方法によって形成することができる。ニッケルめっき膜及びニッケル合金膜を形成する際には、通常水素が発生する。本実施形態では、重希土類元素の含有率が内部42よりも高い表面部44を有する磁石素体上にニッケルめっき又はニッケル合金めっきを施しても、軽希土類元素よりも水素と反応し難い重希土類元素が表面部分に偏在した構造を有しているため、マイクロクラックの発生を十分に抑制することができる。
【0053】
以上の工程によって、磁石素体40と、磁石素体40を覆うめっき膜50と、を有する希土類焼結磁石10を得ることができる。
【0054】
以上、本発明の希土類焼結磁石10及びその製造方法について説明したが、本発明の希土類焼結磁石及びその製造方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、磁石素体40とめっき膜50との間に、重希土類化合物を含む中間層を有していてもよい。当該中間層は磁石素体から拡散した軽希土類元素を含んでいてもよい。また、希土類焼結磁石10は、上述の製造方法によって得られるものに限定されない。例えば、磁石素体となる成形体に重希土類化合物を付着させ、加熱することによって、軽希土類元素に対する重希土類元素の質量比が高い表面部を有する磁石素体を得てもよい。
【0055】
次に、本発明のモータの好適な実施形態について以下に説明する。
【0056】
図3は、本実施形態のモータの内部構造の一例を示す説明図である。本実施形態のモータ100は、永久磁石同期モータ(IPMモータ)であり、円筒状のロータ20と該ロータ20の外側に配置されるステータ30とを備えている。ロータ20は、円筒状のロータコア22と、円筒状のロータコア22の外周面に沿って所定の間隔で希土類焼結磁石10を収容する複数の磁石収容部24と、磁石収容部24に収容された複数の希土類焼結磁石10とを有する。
【0057】
ロータ20の円周方向に沿って隣り合う希土類焼結磁石10は、N極とS極の位置が互いに逆になるように磁石収容部24に収容されている。これによって、円周方向に沿って隣り合う希土類焼結磁石10は、ロータ20の径方向に沿って互いに逆の方向の磁力線を発生する。
【0058】
ステータ30は、ロータ20の外周面に沿って、所定の間隔で設けられた複数のコイル部32を有している。このコイル部32と希土類焼結磁石10とは互いに対向するように配置されている。ステータ30は、電磁気的作用によってロータ20にトルクを与え、ロータ20は円周方向に回転する。
【0059】
IPMモータ100は、ロータ20に、上記実施形態に係る希土類焼結磁石10を備える。希土類焼結磁石10は、優れた磁気特性を有するとともに、容易に剥離しないめっき膜を有する。このため、IPMモータ100は信頼性に優れる。IPMモータ100は、従来よりも長い期間に亘って高出力を維持することができる。IPMモータ100は、希土類焼結磁石10以外の点について、通常のモータ部品を用いて通常の方法によって製造することができる。
【0060】
本発明のモータは、IPMモータに限定されるものではなく、SPMでもよく、また永久磁石同期モータだけでなく、永久磁石直流モータ、リニア同期モータ、ボイスコイルモータ、振動モータであってもよい。
【0061】
図4は、本発明の好適な実施形態である自動車の発電機構、蓄電機構及び駆動機構を示す概念図である。本実施形態の自動車200は、上記実施形態のモータ100、車輪68、蓄電池64、発電機62及びエンジン60を備える。
【0062】
エンジン60で発生した機械的エネルギーは、発電機62によって電気エネルギーに変換される。この電気エネルギーは蓄電池64に蓄電される。蓄電された電気エネルギーは、モータ100によって機械的エネルギーに変換される。モータ100からの機械的エネルギーによって、車輪68が回転し、自動車200が駆動される。なお、本発明の自動車は、
図4に示すものに限定されない。
【実施例】
【0063】
本発明の内容を、実施例及び比較例を用いて以下に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
<準備工程(磁石素体の作製)>
主として磁石素体の結晶粒(主相)を形成する主相系合金と、主として磁石素体の粒界(粒界相)を形成する粒界系合金の2種類の原料合金を準備した。これらの原料合金をそれぞれ水素粉砕により粗粉砕した後、高圧N
2ガスによるジェットミル粉砕を行い、平均粒径が4μmである微粉末A,Bをそれぞれ調製した。
【0065】
調製した主相系合金の微粉末Aと、粒界系合金の微粉末Bとを、微粉末A:微粉末B=95:5の質量割合で混合して、磁石素体の原料粉末を調製した。次いで、この原料粉末を用いて、成形圧1.2t/cm
2、配向磁界20kOeの条件で磁場中成形を行い、直方体形状の成形体(縦×横×長さ=50mm×33mm×33mm)を得た。得られた成形体を、1060℃、4時間の条件で焼成して、下記の組成を有する磁石素体(焼結体)を得た。
【0066】
Nd:24.50質量%
Dy:0.50質量%
Pr:5.30質量%
Co:0.45質量%
Al:0.18質量%
Cu:0.06質量%
B:1.00質量%
Fe:残部(この中には、0.1質量%未満の不可避的不純物が含まれる。)
【0067】
得られた磁石素体を所定の寸法(縦×横×長さ=20mm×10mm×2mm)になるように切断した後、硝酸エタノール溶液(硝酸濃度:3質量%)に3分間浸漬した。その後、磁石素体を硝酸エタノール溶液から取り出して、エタノール中で超音波洗浄した。
【0068】
<重希土類化合物の調製>
次に、以下の手順でDyH
2粉末を調製した。大きさが10mm程度である金属Dy塊を、大気圧下、水素雰囲気中、360℃で1時間加熱して、水素を吸蔵させた。水素を吸蔵させた塊に、大気圧下、アルゴンガス雰囲気中、600℃で1時間の熱処理を施して、Dy水素化物を得た。得られたDy水素化物は、X線回折法によってDyH
2であることを確認した。
【0069】
得られたDyH
2を、スタンプミルを用いて粒径100μm以下に粉砕した後、エタノールを配合し、ボールミルを用いて湿式粉砕を行って、平均粒径3μmのDyH
2粉末を含有するスラリーを得た。その後、このスラリーをエタノールで希釈して、固形分40質量%のスラリーを得た。
【0070】
<拡散工程>
固形分40質量%のスラリーに、磁石素体を浸漬した。その後、焼結体をスラリーから取り出して乾燥し、磁石素体の表面に重希土類化合物であるDyH
2粉末を付着させた。DyH
2粉末の付着量は、磁石素体を基準として、Dy換算で0.5質量%とした。
【0071】
続いて、大気圧下、アルゴンガス雰囲気中、800℃(熱処理温度)で6時間加熱する熱処理を行って、磁石素体の表面部に重希土類元素を拡散させた。これによって、磁石素体の表面部の方が、磁石素体の内部よりも、軽希土類元素に対する重希土類元素の割合が高くなった。その後、大気圧下、アルゴンガス雰囲気中、540℃で1時間加熱する時効処理を行った。
【0072】
<表面処理工程>
次に、磁石素体の表面にバレル研磨を施して、表面に残留していた重希土類化合物の粉末を除去した。その後、磁石素体を、硝酸濃度が3質量%である硝酸水溶液に2分間浸漬した。そして、磁石素体の超音波水洗を行った。
【0073】
直流B−Hトレーサを用いて、得られた磁石素体の飽和磁束密度[Br(1)]を測定した。測定結果は、表1に示すとおりであった。続いて、以下のめっき工程を行った。
【0074】
<めっき工程>
次に、磁石素体の表面に電解ニッケルめっきを施して、被覆層の上にニッケルめっき膜(厚み:20μm)を形成した。ニッケルめっき膜の厚みは、蛍光X線膜厚計を用いて測定した。以上の工程によって、磁石素体上に、めっき膜を備える実施例1の希土類焼結磁石を得た。
【0075】
<磁石素体の組成分析>
得られた希土類焼結磁石を、集束イオンビーム加工装置を用いて切断し、切断面における磁石素体の組成を、電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて測定した。測定は、めっき膜と磁石素体との界面からの深さ125μmの位置を中心として、深さ方向に沿って、250μm四方の領域における軽希土類元素(R
L)及び重希土類元素(R
H)の元素マッピングを行った。そして、界面から深さ10μm及び250μmの位置における、R
L及びR
Hの含有率の平均値を求めた。測定結果を表1に示す。
【0076】
<希土類焼結磁石の評価>
直流B−Hトレーサを用いて、得られた希土類焼結磁石の飽和磁束密度[Br(2)]を測定した。また、めっき膜形成前後のBr(1)及びBr(2)の値から、Br減少率を求めた。また、JIS H8504(めっきの密着性試験方法−テープ試験)に準拠して、めっき膜の磁石素体に対する密着強度を測定した。これらの結果を纏めて表1に示す。
【0077】
(実施例2)
拡散工程において、DyH
2粉末に代えてTbH
2粉末を磁石素体の表面に付着させたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の希土類焼結磁石を作製した。そして、実施例1と同様にして、磁石素体のBr測定、組成分析及び希土類焼結磁石の評価を行った。組成分析の結果及び評価結果を纏めて表1に示す。なお、TbH
2は、次の手順で調製した。金属Tb塊を、大気圧下、水素雰囲気中、360℃で1時間加熱して、水素を吸蔵させた。そして、大気圧下、アルゴンガス雰囲気中、600℃で1時間の熱処理を施して、TbH
2を得た。また、TbH
2粉末の磁石素体への付着量は、磁石素体を基準として、Tb換算で0.5質量%とした。
【0078】
(実施例3)
拡散工程における熱処理温度を800℃から900℃に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の希土類焼結磁石を作製した。そして、実施例1と同様にして、磁石素体のBr測定、組成分析及び希土類焼結磁石の評価を行った。組成分析の結果及び評価結果を纏めて表1に示す。
【0079】
(実施例4)
拡散工程における熱処理温度を800℃から900℃に変えたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例4の希土類焼結磁石を作製した。そして、実施例2と同様にして、磁石素体のBr測定、組成分析及び希土類焼結磁石の評価を行った。組成分析の結果及び評価結果を纏めて表1に示す。
【0080】
(
参考例2)
拡散工程における熱処理温度を800℃から1000℃に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、
参考例2の希土類焼結磁石を作製した。そして、実施例1と同様にして、磁石素体のBr測定、組成分析及び希土類焼結磁石の評価を行った。組成分析の結果及び評価結果を纏めて表1に示す。
【0081】
(
参考例3)
拡散工程における熱処理温度を800℃から1000℃に変えたこと以外は、実施例2と同様にして、
参考例3の希土類焼結磁石を作製した。そして、実施例2と同様にして、磁石素体のBr測定、組成分析及び希土類焼結磁石の評価を行った。組成分析の結果及び評価結果を纏めて表1に示す。
【0082】
(実施例7)
拡散工程において、DyH
2粉末に代えてHoH
2粉末を磁石素体の表面に付着させたこと以外は、実施例3と同様にして、実施例7の希土類焼結磁石を作製した。そして、実施例3と同様にして、磁石素体の組成分析、Br測定及び希土類焼結磁石の評価を行った。組成分析の結果及び評価結果を纏めて表1に示す。なお、HoH
2は、次の手順で調製した。金属Ho塊を、大気圧下、水素雰囲気中、360℃で1時間加熱して、水素を吸蔵させた。そして、大気圧下、アルゴンガス雰囲気中、600℃で1時間の熱処理を施して、HoH
2を得た。また、HoH
2粉末の磁石素体への付着量は、磁石素体を基準として、Ho換算で0.5質量%とした。
【0083】
(実施例8)
拡散工程において、DyH
2粉末に代えてErH
2粉末を磁石素体の表面に付着させたこと以外は、実施例3と同様にして、実施例8の希土類焼結磁石を作製した。そして、実施例3と同様にして、磁石素体の組成分析、Br測定及び希土類焼結磁石の評価を行った。組成分析の結果及び評価結果を纏めて表1に示す。なお、ErH
2は、次の手順で調製した。金属Er塊を、大気圧下、水素雰囲気中、360℃で1時間加熱して、水素を吸蔵させた。そして、大気圧下、アルゴンガス雰囲気中、600℃で1時間の熱処理を施して、ErH
2を得た。また、ErH
2粉末の磁石素体への付着量は、磁石素体を基準として、Er換算で0.5質量%とした。
【0084】
(実施例9)
拡散工程において、DyH
2粉末に代えてTmH
2粉末を磁石素体の表面に付着させたこと以外は、実施例3と同様にして、実施例9の希土類焼結磁石を作製した。そして、実施例3と同様にして、磁石素体の組成分析、Br測定及び希土類焼結磁石の評価を行った。組成分析の結果及び評価結果を纏めて表1に示す。なお、TmH
2は、次の手順で調製した。金属Tm塊を、大気圧下、水素雰囲気中、360℃で1時間加熱して、水素を吸蔵させた。そして、大気圧下、アルゴンガス雰囲気中、600℃で1時間の熱処理を施して、TmH
2を得た。また、TmH
2粉末の磁石素体への付着量は、磁石素体を基準として、Tm換算で0.5質量%とした。
【0085】
(
参考例4)
拡散工程において、磁石素体の表面に付着させる重希土類化合物の粉末として、DyH
2粉末に代えてDyF
3粉末(日本イットリウム株式会社製、平均粒径:300nm)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、
参考例4の希土類焼結磁石を作製した。なお、DyF
3粉末の磁石素体への付着量は、磁石素体を基準として、Dy換算で0.5質量%とした。そして、実施例3と同様にして、磁石素体のBr測定、組成分析及び希土類焼結磁石の評価を行った。組成分析の結果及び評価結果を纏めて表1に示す。
【0086】
(
参考例1)
拡散工程において、磁石素体の表面に付着させる重希土類化合物の粉末として、DyH2粉末に代えてDy
2O
3粉末(日本イットリウム株式会社製、平均粒径:300nm)
を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、
参考例1の希土類焼結磁石を作製した。なお、Dy
2O
3粉末の磁石素体への付着量は、磁石素体を基準として、Dy換算で0.5質量%とした。そして、実施例3と同様にして、磁石素体のBr測定、組成分析及び希土類焼結磁石の評価を行った。組成分析の結果及び評価結果を纏めて表1に示す。
【0087】
(比較例1)
拡散工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の希土類焼結磁石を作製した。つまり、重希土類化合物を用いずに、準備工程で得られた磁石素体(焼結体)の上にそのままニッケルめっき膜を形成した。そして、実施例1と同様にして、磁石素体のBr測定、組成分析及び希土類焼結磁石の評価を行った。組成分析の結果及び評価結果を纏めて表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1〜
4、7〜9及び参考例1
〜4の希土類焼結磁石は、めっき膜と磁石素体との密着性が比較例1の希土類焼結磁石よりも優れていることが確認された。また、実施例1〜
4、7〜9及び参考例1
〜4の希土類焼結磁石は、めっき膜の形成による残留磁束密度の低下が小さく、比較例1の希土類焼結磁石よりも高い磁気特性を維持できることが確認された。