(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1および第2の気流が粉体流の流れ方向における速度成分を有するように、第1噴射口および第2噴射口よりの吹き出し方向が設定されている、請求項1に記載の粉体分散装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、分級処理が行われる原料粉体の対象が多様化しており、さらに原料粉体から細粉や粗粉(あるいは高密度粉体や低密度粉体)を高い分級精度でもって分級し、所定の粒径(あるいは密度)範囲の粉体を選択的に確実に取り出したいという要望が増えつつある。また、原料粉体の特性および粒径などによっては凝集作用が高くなる場合もある。
【0008】
例えば、特許文献1のようなエジェクタを用いた粉体分散装置では、粉体の分散量に対し消費エアが多く、また、粉体を含んだ気流をオリフィスに通過させるため、オリフィスを通過する際に脈動が生じやすい。さらに、オリフィスを通過後の噴流の中心部と外周部とでは流速が異なり、分散状態が不均一となる。そのため、従来のエジェクタ方式では、高い分散力を得ることできないため、凝集作用が高い粉体や粒子濃度が高い粉体に対しては効果的な分散効果を得ることができないという課題がある。
【0009】
一方、従来の分散装置の構成として、粉体流を旋回させて発生した遠心力を機械的剪断力として、原料粉体の分散を行うような方式があるが、このような方式では、高速回転を行うための動力などが必要となるとともに、装置構成が大型化するという課題がある。
【0010】
従って、本発明の目的は、上記課題を解決することにあって、粉体流として搬送される原料粉体に対して解砕または分散を行う粉体分散において、分散効果を高めることができる粉体分散装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0012】
本発明の第1態様によれば、原料粉体の導入口と、排出口と、導入口と排出口とを連通するように形成され、原料粉体の粉体流が流れる粉体流路とを備える本体部と、本体部の粉体流路内に第1の気流を吹き出す
スリット状の第1噴射口と、第1噴射口より吹き出された第1の気流と衝突位置にて衝突するように、本体部の粉体流路内に第2の気流を吹き出す
スリット状の第2噴射口と、を備え、
スリット状の第1噴射口および第2噴射口は、粉体流路の流れ方向の中心に対して直交する第1方向に延在しかつ同一形状に形成されており、第1方向に衝突位置も延在し、第1および第2の気流の衝突位置が粉体流路内に配置され、導入口から排出口へ向かって粉体流路を流れる粉体流が衝突位置を通過する際に、第1および第2の気流の衝突エネルギにより、原料粉体の解砕または分散が行われ
、第1および第2の気流の第1方向の長さ、ならびに衝突位置の第1方向の長さが、粉体流の第1方向の幅よりも大きい、粉体分散装置を提供する。
【0013】
本発明の第2態様によれば、第1および第2の気流が粉体流の流れ方向における速度成分を有するように、第1噴射口および第2噴射口よりの吹き出し方向が設定されている、第1態様に記載の粉体分散装置を提供する。
【0014】
本発明の第3態様によれば、第1噴射口および第2噴射口が、粉体流路の流れ方向の中心に対して、対称に配置されている、第1態様または第2態様に記載の粉体分散装置を提供する。
【0017】
本発明の第
4態様によれば、第1および第2噴射口から吹き出される第1および第2の気流により、粉体流路内に負圧が形成されて、粉体流路内に粉体流が形成される、第1態様から第
3態様のいずれか1つに記載の粉体分散装置を提供する。
【0018】
本発明の第
5態様によれば、原料粉体の導入口と、排出口と、導入口と排出口とを連通するように形成され、原料粉体の粉体流が流れる粉体流路とを備える本体部において、
粉体流路の流れ方向の中心に対して直交する第1方向に延在しかつ同一形状に形成されたスリット状の第1噴射口および第2噴射口より、第1の気流および第2の気流を吹き出して、粉体流の全てが第1および第2の気流のいずれかの気流を横切るとともに、粉体流路内に配置され
かつ第1方向に延在する衝突位置にて、第1の気流と第2の気流とを互いに衝突させ、導入口から排出口へ向かって粉体流路を流れる粉体流が衝突位置を通過する際に、第1および第2の気流の衝突エネルギにより、原料粉体の解砕または分散を行う、粉体分散方法を提供する。
【0019】
本発明の第
6態様によれば、第1および第2の気流が粉体流の流れ方向における速度成分を有して、衝突位置にて互いに衝突される、第
5態様に記載の粉体分散方法を提供する。
【0020】
本発明の第
7態様によれば、第1および第2の気流により、粉体流路内に負圧が形成されて、粉体流路内に粉体流が形成される、第
6態様に記載の粉体分散方法を提供する。
【0021】
本発明の第
8態様によれば、第1および第2の気流は、長さ方向に比して幅方向に狭い気流断面を有する、
第5態様から第7態様のいずれか1つに記載の粉体分散方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、第1噴射口より吹き出された第1の気流と、第2噴射口より吹き出された第2の気流とが互いに衝突する衝突位置が粉体流路内に配置されている。これにより、粉体流路を流れる粉体流が衝突位置を通過する際に、第1および第2の気流の衝突エネルギが原料粉体に付加されて、原料粉体の解砕または分散を行うことができる。よって、粉体分散における分散効果を高めることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
本発明の一の実施の形態にかかる粉体分散装置を備える粉体分級システムの主要な構成について、
図1に示すフロー図を用いて説明する。
【0026】
図1に示すように、粉体分級システム1は、定量フィーダ2と、粉体分散装置3と、粉体分級装置4と、細粉回収用バグフィルタ5と、粗粉回収用バグフィルタ6と、真空ポンプ7と、クリーンエア供給部8とを備えている。
【0027】
本実施の形態にかかる粉体分級システム1では、例えば0.1μm〜数十μmの粒径分布を含むような原料粉体を気体に混合させた状態(すなわち、固気混合状態)にて搬送して、粉体分級装置4にて細粉(第2粉体:例えば粒径0.1μm〜1μm程度)と粗粉(第1粉体:例えば1μmを超える粒径)に分級して回収するシステムである。
【0028】
このような原料粉体としては、ファインセラミックス、金属材料、高分子材料、電池・電子材料、複合材料、医薬品材料、食品材料など、電子、エネルギ、医療、食品などの各種技術分野にて用いられる無機物および有機物の微粉を対象とするものである。原料粉体から特定の仕様(サイズ、密度など)の粉体を選択的に取り出す処理が本発明の粉体分級処理である。また、原料粉体に含まれる特定の仕様の粉体以外の異物を、原料粉体から取り除く処理についても本発明の粉体分級処理に含まれる。
【0029】
定量フィーダ2は、粉体分級システム1内に対して、原料粉体を定量供給する装置であり、本実施の形態では、例えばマイクロフィーダが用いられる。
【0030】
粉体分散装置3は、定量フィーダ2にて定量供給された原料粉体を通過させる際に、原料粉体に対してエネルギを付与することにより原料粉体を解砕して分散させる。粉体分散装置3の詳細な構成については後述する。
【0031】
粉体分級装置4は、粉体分散装置3にて分散されて気体と混合状態にて搬送される原料粉体に対して、慣性力を用いて細粉と粗粉とに選択的に分級する装置である。この粉体分級装置4には、分散部9および分級部10が備えられおり、装置内に供給された原料粉体に対して、分散部9にて再度分散処理を行った後、分級部10にて分級処理を行う。また、粉体分級装置4には、クリーンエア供給部8が接続されており、装置内にクリーンエアが供給される。クリーンエア供給部8より供給されるクリーンエアの流れにより原料粉体が取り囲まれた状態にて分級部10にて分級処理が行われるため、分級部10の内壁面に原料粉体が付着することが防止され、高い分級精度を得ることができる。なお、粉体分級装置4の詳細な構成については後述する。
【0032】
細粉回収用バグフィルタ5は、粉体分級装置4にて分級された細粉を含む粉体気流を濾過して細粉を回収する。同様に、粗粉回収用バグフィルタ6は、粉体分級装置4にて分級された粗粉を含む粉体気流を濾過して粗粉を回収する。
【0033】
図1に示すように、粉体分級システム1において、上述したそれぞれの装置構成は管路(原料粉体の搬送用配管)にて接続されている。真空ポンプ7は、粉体分級システム1の管路全体の下流側端部に接続されており、管路内を吸引することにより、管路内が負圧に保たれて原料粉体の気流による搬送が行われる。なお、本実施の形態では、真空ポンプ7を用いた真空吸引搬送方式を採用した例について説明するが、原料粉体の搬送方法はその他方式を採用しても良く、例えば、圧縮空気を用いた圧送方式を採用しても良い。
【0034】
細粉回収用バグフィルタ5および粗粉回収用バグフィルタ6のそれぞれの出口の管路上には、開度調節弁5a、6a、流量計5b、6b、および圧力計5c、6cが設けられている。また、クリーンエア供給部8の管路上においても開度調節弁8a、流量計8b、および圧力計8cが設けられている。それぞれの流量計および圧力計が適切な値を示すようにそれぞれの開度調節弁を調節することで、クリーンエア、細粉、粗粉の各流れのバランスを制御できる。
【0035】
次に、粉体分級装置4の構成について図面を参照しながら説明する。粉体分級装置4の外観図(正面図)を
図2Aに示し、外観図(側面図)を
図2Bに示し、分解図を
図3に示す。なお、
図3の分解図では、
図2Aおよび
図2Bの粉体分級装置4の外観図に示す構成部材の中の主要な構成部材について示している。
【0036】
図2A、
図2Bおよび
図3に示すように、粉体分級装置4は、原料粉体導入部11と、分散板押さえ部材12と、分散板13と、分散板受け部材14と、整流板15と、整流板押さえ部材16と、合流部17と、分離部18と、クリーンエア導入部19と、細粉排出部20と、粗粉排出部21とを備えている。
【0037】
原料粉体導入部11は、定量フィーダ2および粉体分散装置3より管路を経由して搬送される原料粉体の投入口となっている。原料粉体導入部11は、管路との接続部分である円形状断面の原料粉体の流路を長方形状断面の流路に変換する、いわゆるコートハンガー型流路を有する。
【0038】
分散部9は、分散板13と、この分散板13を上流側および下流側から挟むようにして保持する分散板押さえ部材12および分散板受け部材14とにより構成されている。分散板押さえ部材12は原料粉体導入部11に接続されており、原料粉体導入部11よりの長方形状断面の流れにて原料粉体が分散部9に供給される。分散板13は、粉体分散機構として例えば複数のエジェクタが横一列に隣接配置された構成を有しており、それぞれのエジェクタ内に原料粉体を通過させることで、原料粉体を解砕して分散させる機能を有する。
【0039】
クリーンエア導入部19はクリーンエア供給部8と管路にて接続され、粉体分級装置4におけるクリーンエアの導入口となっている。分散板押さえ部材12および整流板押さえ部材16は、クリーンエア導入部19に接続されたクリーンエアの流路を形成する。クリーンエア流路は、分散部9の原料粉体流路の外周全体を囲み、原料粉体流路と区分された流路として形成される。クリーンエア流路には整流板15が配置され、整流板15は上流側および下流側から分散板押さえ部材12および整流板押さえ部材16により挟まれて保持される。なお、整流板15は、例えば網状の金属部材を積層して構成される。
【0040】
合流部17は分散板受け部材14と接続され、その内側に原料粉体流路を有するとともに、分離部18の内側に配置されることにより、分離部18との内壁面との間で原料粉体流路を囲むクリーンエア流路を形成する。合流部17の下流側先端にて、原料粉体流路とクリーンエア流路とが連通され、分離部18内にて原料粉体の流れを囲むようなクリーンエアの流れが形成される。
【0041】
特に
図2Bに示すように、分離部18内では、図示下方側へ向かう原料粉体流路22が、下方へ向かう粗粉流路24と大略横方向に分岐された細粉流路23とに分岐されている。この流路の分岐部分において、慣性力を利用した原料粉体の分級処理が行われ、細粉流れおよび粗粉流れの分離が行われる。なお、本実施の形態では、合流部17および分離部18により分級部10が構成されている。
【0042】
分離部18の細粉流路23は細粉排出部20に接続され、粗粉流路24は粗粉排出部21に接続される。また、細粉排出部20は管路を介して細粉回収用バグフィルタ5に接続され、粗粉排出部21は管路を介して粗粉回収用バグフィルタ6に接続される。
【0043】
ここで、粉体分級装置4における原料粉体およびクリーンエアなどのそれぞれの流路について、概略的に
図4に示す。
【0044】
図4に示すように、粉体分級装置4に供給された原料粉体の流路は、原料粉体導入部11にて、円形状断面の流路25から長方形状断面の流路26へと変換されて、分散板13へと導かれる。分散板13内のそれぞれのエジェクタを通過した原料粉体は、合流部17(および分散板受け部材14)内の長方形状断面の流路27へと吐出される。
【0045】
一方、クリーンエア導入部19から粉体分級装置4に供給されたクリーンエアは、分散板押さえ部材12内にて、長方形状断面の原料粉体流路26を囲むような枠断面状の流路28となって、合流部17の外周へと導かれる。
【0046】
合流部17の外周では、下流側へ向かって枠状断面のクリーンエア流路28の外径が絞られて、合流部17の先端にて原料粉体流路27とクリーンエア流路28とが合流し、その外周全体がクリーンエアにより囲まれた原料粉体流路22となる。
【0047】
その後、分離部18内において、原料粉体流路22が細粉流路23と粗粉流路24とに分岐され、この分岐部分にて原料粉体が細粉と粗粉とに分級される。
【0048】
次に、粉体分散装置3の詳細な構成について説明する。
【0049】
粉体分散装置3の外観および内部構造を
図5に示す。
図5において、(A)は粉体分散装置3の上面図、(B)は側面図、(C)は下面図である。
【0050】
図5に示すように、粉体分散装置3は、原料粉体の導入口31と、排出口32と、導入口31と排出口32とを連通するように形成された原料粉体の粉体流が流れる粉体流路33とが形成された本体部30を備えている。本体部30には、2箇所のクリーンエアのエア導入口34、35と、それぞれのエア導入口34、35より導入されたクリーンエアを粉体流路33内に吹き出す第1噴射口36および第2噴射口37と、それぞれのエア導入口34、35と、第1および第2噴射口36、37を連通するエア流路38、39とが形成されている。
【0051】
図5(A)および(B)に示すように、原料粉体の導入口31およびエア導入口34、35は、粉体分散装置3の本体部30の上面に開口して形成されており、原料粉体の排出口32は、本体部30の側面に開口して形成されている。
【0052】
また、
図5(A)および(C)に示すように、第1および第2噴射口36、37から吹き出したクリーンエアの第1および第2の気流F1、F2は、粉体流路33の流れ方向の中心C1に向かい、中心C1上にて第1および第2の気流F1、F2が衝突するように、それぞれの噴射口36、37が配置されている。なお、第1および第2噴射口36、37は、互いに同一形状(構造)を有するとともに、粉体流路33の流れ方向の中心C1に関して対称に配置されている。また、第1および第2の気流F1、F2が衝突する位置を衝突位置Pと称する。
【0053】
ここで、粉体分散装置3の本体部30における第1噴射口36およびエア流路38の詳細について、
図6および
図7に示す。なお、
図6(A)は、第1噴射口36およびエア流路38付近における上方部分の構造を示す図であり、(B)は下方部分の構造を示す図である。また、
図7(A)は、
図6(A)におけるA−A線近傍の部分拡大図であり、(B)は
図6(B)におけるB−B線近傍の部分拡大図であり、(C)は、A−A線およびB−B線断面を一体的に示す図である。
【0054】
図6および
図7に示すように、エア流路38は、垂直方向から水平方向に向かうように流路が曲げられており、さらにエア導入口34から第1噴射口36に向かうにしたがって、その流路断面が縮小されている。エア流路38の下流側端には、第1噴射口36が形成されており、第1噴射口36は、水平方向の開口幅よりも上下方向(第1方向)の開口長さが長い、いわゆるスリット状の開口として形成されている。本実施の形態の例では、開口幅0.3mm、開口長さ4mmの長方形スリット状に形成されている。第1噴射口36は、水平方向に延在する粉体流路33に連通するように開口されている。本実施の形態の例では、第1噴射口36からの第1の気流F1の吹き出し方向が、粉体流路33の流れ方向の中心C1に対して、鋭角に傾斜している。このように、第1噴射口36がスリット状に形成されていることにより、第1の気流F1が高速気流(例えば、音速以上)として、粉体流路33内に吹き出すことが可能とされている。なお、第2噴射口37およびエア流路39についても同じ構造であるため、その説明は省略する。
【0055】
図5(B)に示すように、導入口31付近にて上下方向に延在している粉体流路33は、その後水平方向に延在して衝突位置Pを通過し、排出口32に連通されており、衝突位置Pの付近では流路断面が拡大されている。
【0056】
このような構成の粉体分散装置3において、原料粉体に対して解砕および分散が行われる原理について、
図8、
図9の模式図を用いて説明する。
【0057】
図8は、粉体分散装置3の本体部30の内部において、粉体流路33を流れる粉体流F3と、スリット状の第1噴射口36から吹き出される第1の気流F1と、スリット状の第2噴射口37から吹き出される第2の気流F2との関係を示している。
【0058】
図8に示すように、スリット状の第1噴射口36から吹き出された第1の気流F1は、上下方向に幅を有する気流として衝突位置Pに向かう。同様に、スリット状の第2噴射口37から吹き出された第2の気流F2は、上下方向に幅を有する気流として衝突位置Pに向かう。粉体流路33の流れ方向の中心C1上には、上下方向(第1方向)に延在するように衝突位置Pが設けられており、この衝突位置Pにて第1および第2の気流F1、F2は互いに衝突する。また、第1および第2の気流F1、F2の吹き出し角度θは、粉体流路33の流れ方向の中心C1に対して例えば鋭角に設定されている。
【0059】
一方、粉体流F3は、第1および第2の気流F1、F2を横切るようにして衝突位置Pを通過し、それとともにその流路断面の拡大が行われる。
【0060】
ここで、
図8の模式図を上方から見た模式図を
図9に示す。
図9に示すように、衝突位置Pでは、高速気流である第1および第2の気流F1、F2が互いに衝突し、衝突位置P付近の領域では、衝突エネルギにより渦流が発生して気流同士が混合される混合領域40が形成される。衝突位置Pおよびこの混合領域40を粉体流F3が通過すると、通過の際に、衝突により生じたエネルギ(例えば、衝突エネルギと称する。)が粉体流F3に含まれる原料粉体に付与される。この衝突エネルギにより原料粉体の凝集が解砕されて分散される。その後、分散された粉体流F3は衝突位置Pの下流側に流れ、流路断面が拡大されることによりその流れが整えられて、分散処理が行われた粉体流F3が排出口32より本体部30の外部へ搬送される。
【0061】
このような粉体分散装置3の構成によれば、クリーンエアの高速気流である第1および第2の気流F1、F2を粉体流路33内にて衝突させ、この衝突により生じるエネルギを原料粉体に作用させることにより、原料粉体の解砕および分散を行うことができる。したがって、高い分散効果を得ることができる。
【0062】
また、高速気流を吹き出す第1および第2噴射口36、37は、粉体の混合気流を通過させるものではなく、クリーンエアを通過させるものであるため、流路が絞られた噴射口36、37にて脈動が生じ難く、また粉体詰まりなども発生し難い。したがって、高濃度粉体の分散処理に対して効果的に適用できる。
【0063】
また、第1および第2噴射口36、37は上下方向に延在するスリット状に形成されている。そのため、特に
図8に示すように、上下方向に幅を有する気流F1、F2を、上下方向に延在する衝突位置P(すなわち、点ではなく上下方向に長さを有する位置)にて衝突させることができる。また、粉体流F3の全てが、気流F1、F2のいずれかを横切ることになる。したがって、衝突位置Pを通過する粉体流F3に対して、衝突エネルギを効果的に付与することができる。また、このように衝突エネルギを用いて効果的な分散を実現できるため、分散効果に対するクリーンエアの消費量を抑制することが可能となる。なお、本実施の形態では、粉体流F3の全てが、気流F1、F2のいずれかを横切るような場合を例として説明するが、求められる分散効果の程度によっては、粉体流F3の大半が、気流F1、F2のいずれかを横切り、粉体流F3の一部が気流F1、F2を横切らないような構成を採用することもできる。
【0064】
また、第1および第2の気流F1、F2の吹き出し角度θが、粉体流路33の流れ方向の中心C1に対して例えば鋭角に設定されている。これにより、粉体流路33内に導入口31に対して負圧となる部分を形成することができ、導入口31から粉体流路33内へ原料粉体を導いて粉体流F3を形成できる。
【0065】
また、このような粉体分散装置3では、粉体流路33と、クリーンエアの2つの噴射口36、37とを設けた構造となるため、装置構成が大型化することなく、効率的な分散処理を行うことができる。
【0066】
このような構成の粉体分散装置3を粉体分級システム1に採用することにより、凝集力が比較的強い微粉体(例えば、10μm以下)を原料粉体として、粉体分散装置3にて効率的な分散処理を行った後、粉体分級装置4にて確実な分級処理を行うことが可能となる。
【0067】
上述の説明では、第1および第2の気流F1、F2の吹き出し角度θが、粉体流路33の流れ方向の中心C1に対して鋭角に設定されているような場合を例として説明したが、
図10に示すように、吹き出し角度θを例えば90度に設定しても良い。吹き出し角度θを鋭角よりも90度に設定する方が、発生する衝突エネルギを大きくすることができるため、分散効果を高めることができる。ただし、吹き出し角度θを鋭角とした場合には、負圧形成効果が得られるため、粉体流路33内に粉体流F3を円滑に導入することが可能となる。なお、吹き出し角度θは、原料粉体の仕様や要求される分散効果に応じて設定あるいは変更しても良い。
【0068】
第1および第2の気流F1、F2が例えば、音速以上の高速気流である場合を例として説明したが、気流F1、F2の速度は、少なくとも粉体流F3の速度よりも高い速度であれば、衝突エネルギを用いた分散効果を得ることができる。なお、このような原料粉体の粉体流F3の速度は、一般的に20〜30m/s程度の範囲で用いられることが多い。したがって、本発明において、高速気流とは、少なくとも粉体流F3の速度よりも高い速度のことを意味する。
【0069】
また、第1および第2噴射口36、37の形状としてスリット状の開口を用いる場合を例として説明したが、本発明はこのような場合についてのみ限定されない。第1および第2噴射口を円孔状または正方形孔状に形成しても良く、さらにオリフィス孔状に形成しても良い。ただし、スリット状の開口を用いた場合には、クリーンエアに対する絞り効果を得ながら、一方向に幅を有する気流を吹き出して、粉体流F3との接触効率を高めることが可能となる。
【0070】
また、上述の説明では、粉体流路33の大部分が水平方向に延在するような場合を例として説明したが、粉体流路33は鉛直方向に延在しても良く、水平方向に対して傾斜した方向に延在しても良い。
【0071】
また、定量フィーダ2から粉体分散装置3に導入される原料粉体は、上述の負圧効果を利用して粉体流路33内に導入されるようにしても良く、あるいは動力を用いて機械的に粉体流路33内に導入しても良い。
【0072】
また、粉体分散装置3を複数個、並列あるいは直列させて配置するような構成を用いても良い。複数個の粉体分散装置3を用いるような場合、各装置3にそれぞれ異なる種類の原料粉体を導入しても良い。
【0073】
また、上述の実施の形態では、粉体分級装置4が、原料粉体を粉体サイズに応じて分離して、粗粉(第1粉体)と細粉(第2粉体)とに分級するような場合を例として説明したが、本発明の粉体分級装置は、このような場合についてのみ限定されない。本発明の粉体分級装置にて、原料粉体を粉体密度に応じて分離して、原料粉体を高密度粉体(第1粉体)と低密度粉体(第2粉体)とに分級するような場合であっても良い。
【0074】
また、上述の実施の形態では、粉体分散装置3が粉体分級システム1に用いられるような場合を例として説明したが、粉体分級に限られず、粉体に対して分散処理を行う装置や方法に対して、本発明の粉体分散装置を適用することができる。
【0075】
また、上述の実施の形態では、粉体分散装置3において、1種類の原料粉体に対して分散処理を行うような場合を例として説明したが、複数種類の原料粉体を別々に導入して、原料粉体に対して分散処理を行うとともに、それぞれの原料粉体を混合するようにすることもできる。なお、本明細書において、原料粉体の種類とは、組成だけでなく、大きさ、形状による違いを含む概念を意味する。
【0076】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。