(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のポンプ装置は、出口通路部がポンプ流路の接線方向に延びており、ポンプ流路と出口通路部の流路方向が元々一致している構成において、出口通路部とポンプ流路との接続部において流路断面積を急激に変化させないことを目的としており、ポンプ流路に対して出口通路部が接線方向とは異なる角度で接続されたことに起因する圧力損失、言い換えれば、流路が屈曲していることに起因する圧力損失を低減させることを目的とするものではない。また、曲線状にする部分を吐出口への流路に限定しており、吸入口への流路における圧力損失を低減させることができない。更に、曲線状にする範囲を規定していないため、十分に圧力損失を低減させることができないおそれがある。
【0007】
一方、特許文献2のポンプ装置は、モータケースの側面に吸入口および吐出口を設けており、吸入口および吐出口に連通している平行流路がいずれもポンプ流路と曲線状に接続されている。従って、吐出口側だけでなく、吸入口側の圧力損失についても同様に低減させることができる。しかしながら、特許文献2の流路形状は、吸入口あるいは吐出口に向かう直線状流路とポンプ流路との接続部が滑らかに繋がってはいるものの、曲線状になっている流路の範囲が小さく、短い区間を流れる間に流体を大きく方向転換させなければならず、流路形状が十分になだらかになっているとはいえない。従って、十分に圧力損失を低減させることができず、ポンプ効率を十分に向上させることができないおそれがある。
【0008】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、吸入口あるいは吐出口に向かう流路と円弧状のポンプ流路との接続部における圧力損失を従来よりも大きく低減させることができるポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、円弧状の渦流室が形成されたポンプケースと、前記渦流室と同軸に配置され当該渦流室に挿入された円環状の羽根車と、当該羽根車を回転させるためのモータとを有するポンプ装置であって、前記ポンプケースには、前記渦流室の周方向の一端に連通する吸入流路と、前記渦流室の周方向の他端に連通する吐出流路が設けられ、前記吸入流路と前記吐出流路の少なくとも一方は、前記渦流室に対して外周側から接続される直線状流路であり、当該直線状流路の流路方向は、前記渦流室および前記羽根車の中心軸線に対して垂直であり、且つ、前記渦流室の端部における接線方向とは異なる方向であり、前記渦流室と前記直線状流路の接続部を前記中心軸線の方向から見た場合に、前記渦流室における円弧状の外周側内壁面の端部に、前記直線状流路における一方の内壁面が接続されており、前記渦流室における円弧状の内周側内壁面の端部に、当該内周側内壁面の延長線よりも外周側に配置された接続壁面の一端が接続され、当該接続壁面の他端が、前記直線状流路における他方の内壁面に接続されており、前記接続壁面と前記内周側内壁面との接続位置が、前記一方の内壁面と前記外周側内壁面との接続位置を通って径方向に延びる仮想線に対し、前記接続壁面と前記他方の内壁面との接続位置とは逆
の側に配置されて
おり、前記渦流室と前記直線状流路との接続部は、前記渦流室および前記羽根車の中心軸線を含む切断面で切断した断面形状が、前記外周側内壁面と前記内周側内壁面の半径差を直径とする円弧形状を、前記接続壁面の位置を通る直線で切断した形状となっていることを特徴とする。
【0010】
本発明では、このような構成により、渦流室と吐出流路あるいは吸引流路との接続部を、渦流室の外周側については、両流路(渦流室および直線状流路)の流路壁をその交点で接続する一方、渦流室の内周側については、両流路の流路壁が交差する角部を、渦流室の内周側内壁面よりも外周側に配置された流路壁(接続壁面)によってなだらかに面取りした形状としている。特に、本発明では、内周側の角部を面取りする範囲を、渦流室の外周側内壁面と直線状流路の一方の内壁面との接続位置を通って径方向に延びる仮想線を基準として、接続壁面の一端と他端が逆の側に位置するように(言い換えれば、接続壁面がこの仮想線と交差するように)設定している。このようにすると、渦流室と直線状流路との接続部における内周側の角部が広い範囲にわたって面取りされた形状となり、全体として緩やかに曲がる流路形状となる。従って、流路抵抗を従来よりも小さくすることができ、圧力損失を従来よりも大きく低減させることができる。よって、ポンプ効率を従来よりも向上させることができる。
【0011】
また、本発明では、渦流室と直線状流路との接続部の断面形状を上記のように設定しているので、接続部における流路方向に沿った断面積の変化が緩やかになり、接続壁面を設けたことに起因する流路断面積の減少を最小限にすることができる。従って、流路断面積の減少に起因する圧力損失を低減できる。
【0012】
本発明において、
前記接続壁面は、前記内周側内壁面に対し、その接線方向に接続されていることが望ましい。このようにすると、両流路の接続部が渦流室に対して最もなだらかに接続される。従って、圧力損失をより大きく低減させることができ、ポンプ効率をより向上させることができる。
【0013】
この場合に、前記一方の内壁面と前記外周側内壁面との接続位置を通って径方向に延びる仮想線と前記接続壁面との交差位置が、前記外周側内壁面よりも前記内周側内壁面に近いことが望ましい
。
【0014】
このようにすると、直線状流路との接続位置における流路の断面積を、渦流室における流路の断面積の1/2よりも大きくすることができると共に、直線状流路との接続位置における流路の高さを渦流室と同じにすることができ、接続部における流路の高さを全く変化させないようにすることができる。従って、流路抵抗を小さくすることができ、圧力損失を低減できる。
【0015】
本発明において、前記吐出流路は前記直線状流路であり、当該吐出流路の流路中心線の延長線が、前記羽根車の外周面における前記中心軸線方向の中央位置を通ることが望ましい。このようにすると、羽根車の外周面の中央部分と対向させるように吐出流路を開口させることができるため、羽根車の表面(外周面)に沿って遠心力で外周側に流れる流体をスムーズに吐出流路に流入させることができる。よって、流路抵抗を小さくすることができ、圧力損失を低減できる。
【0016】
本発明において、前記吐出流路と前記吸入流路はいずれも前記直線状流路であり、前記吐出流路と前記吸入流路は、前記中心軸線を含む平面に対して対称に形成されていることが望ましい。このようにすると、流体の吐出口および吸入口をポンプ装置の側面に形成できるため、ポンプ装置の軸線方向の寸法を小さくでき、薄型化に有利である。また、吐出流路および吸入流路と渦流室との両接続位置において圧力損失を低減できるため、ポンプ効率を大きく向上させることができる。また、ポンプを逆回転させても同じ効果が得られるという利点もある。
【0017】
本発明において、前記ポンプケースは、複数のケース体を組み立てて構成されており、前記吐出流路と前記吸入流路は平行であり、且つ、同一のケース体に形成されていることが望ましい。このようにすると、吸入流路と吐出流路を同一スライドコアで構成することができる。従って、金型を単純な構成にすることができる。
【0018】
本発明において、前記渦流室、および、当該渦流室の周方向の一端および他端に設けられた前記吐出流路および前記吸入流路との接続部に囲まれるシール面を有し、当該シール面は、前記渦流室の周方向の一端および他端から延びる各接続部の間に形成されている封鎖用シール面部分が、前記渦流室の周方向の中央位置の内周側に設けられている内側シール面部分と面一に形成されていることが望ましい。このようにすると、吐出流路と吸引流路との接続部におけるシール性能を高めることができる。
【0019】
本発明において、前記直線状流路は、その断面積が一定であることが望ましい。このようにすると、吐出流路あるいは吸引流路を流れる間の圧力損失を低減できる。
【0020】
本発明において、前記接続壁面と前記他方の内壁面との接続位置を、前記外周側内壁面の延長線上あるいはその外周側に設定することができる。このようにすると、接続部を更に緩やかに曲がる形状にすることができるため、流路の屈曲形状に起因する流路抵抗を小さくすることができ、圧力損失を低減できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のポンプ装置によれば、渦流室と直線状流路(吐出流路あるいは吸入流路)との接続部における流路抵抗を従来よりも小さくすることができ、圧力損失を従来よりも大きく低減させることができる。よって、ポンプ効率を従来よりも向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態のポンプ装置を説明する。なお、以下の説明において、説明の便宜上、
図1〜
図3に図示した上下方向(下から上へ向かう方向を矢印Yで示す)に従ってポンプ装置の上下を説明する。
【0024】
(全体構成)
図1は本発明を適用したポンプ装置を前方の斜め上から見た斜視図であり、
図2はポンプ装置の分解斜視図である。本形態のポンプ装置1は水や空気等の流体を圧送する渦流ポンプである。
図1に示すように、ポンプ装置1は、全体として略四角柱形状をしており、ポンプケース2の下側にモータカバー3を固定した構成をしている。ポンプケース2は、上ケース2Aおよび下ケース2Bから構成されている。上ケース2A、下ケース2B、およびモータカバー3は、上下に積層して各ケースの四隅に設けられた固定用のネジ孔にネジ部材を螺合することにより、ポンプ装置1の形状に組み立てられている。上ケース2Aおよび下ケース2Bは、いずれも樹脂製であり、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等からなる。上ケース2Aの前面4からは吸入管5および吐出管6が前方に向かって平行に突出している。ポンプ装置1は、吸入管5の先端に開口する吸入口5aから吸い込んだ流体を吐出管6の先端に開口する吐出口6aから吐出するようになっている。
【0025】
図3(a)は上ケース2Aおよび下ケース2Bの概略断面構成を示す断面図(
図2のX−X方向断面図)であり、
図3(b)はその分解図である。上ケース2Aおよび下ケース2Bは上下に積層されており、上ケース2Aおよび下ケース2Bを組み立てると、その間には区画室7が構成されるようになっている。区画室7を形成する際には、両ケースの間に図示しないOリングを介在させることにより、区画室7を密閉状態とする。下ケース2Bは、
図2、
図3に示すように、矩形板状のフランジ部21と、フランジ部21の上面中央から上向きに突出する円形隆起部22と、フランジ部21の下面側から円形隆起部22と同軸状に下向きに突出する下側突出部23を備えている。下側突出部23は有底筒状に形成され、その内側には円形凹部24が同軸状に形成されている。円形凹部24の上端は円形隆起部22の上端面22aの中央部に開口しており、円形凹部24の底面中央には支軸固定用凹部24aが形成されている。下側突出部23の下端面中央には下向きに突出する円形凸部23aが設けられている。
【0026】
図3(a)(b)に示すように、上ケース2Aには、上ケース2Aの下面に開口する円形の区画室形成用凹部25が設けられている。区画室形成用凹部25は、下ケース2Bの円形隆起部22と同軸状に形成されており、その内周面は、区画室形成用凹部25の開口縁から上向きに延びる下側円筒部25aと、下側円筒部の上端縁に接続された円環状段面25bと、円環状段面25bの内周縁から下側円筒部25aよりも一回り小さい径寸法で上向きに延びる上側円筒部25cによって構成されている。下側円筒部25aは、円形隆起部22をその内周側に嵌合可能な径寸法および高さとなっている。区画室形成用凹部25の底面25dの中央には一段凹んだ円形の中央凹部26が形成され、その中央に支軸固定用凹部26aが形成されている。
【0027】
上ケース2Aと下ケース2Bの間の区画室7には、円板状のインペラ部11が上端に設けられ下端に駆動マグネット12が設けられたロータ10(
図2参照)と、このロータ10を回転可能に支持する支軸8(
図2参照)が配置される。インペラ部11とその下側に延びるロータ本体部10aはPPS等からなる樹脂製である。ロータ本体部10aの外周面には図示しないヨークが設けられ、このヨークを介してロータ本体部10aに駆動マグネット12が接着固定されている。支軸8は、ロータ10の中央を貫通するように装着され、その下端が下ケース2B側に設けられた支軸固定用凹部24aに固定されている。支軸8の上端は上ケース2A側に設けられた支軸固定用凹部26aに固定されている。インペラ部11の上面中央には支軸8を突出させるための軸孔11aが開口している。また、インペラ部11の外周部分には羽根車13が設けられている。
【0028】
図2に示すように、インペラ部11の外周部分には上下2段に形成された凹部14が周方向に等角度間隔で形成されている。凹部14はインペラ部11の上面の周縁を円弧形状に切り欠いて形成された上側凹部14aと、インペラ部11の下面の周縁を円弧形状に切り欠いて形成された下側凹部14bを備えており、周方向で隣接する凹部14a、14bの間はそれぞれ半径方向に延びる羽根15a、15bとなっている。上下方向で隣接する上側凹部14aと下側凹部14bの間は、周方向に延びて上側凹部14aと下側凹部14bの間を上下に区画するリブ16となっている。本例の羽根車13は、上段側の凹部14aと下段側の凹部14bを周方向にずらして形成しており、そのずれ量は各凹部の周方向の配列ピッチの1/2の寸法となっている。このため、上段側の羽根15aと下段側の羽根15bは、周方向にその配列ピッチの1/2の寸法ずつずらされて千鳥状に配置されている。
【0029】
下ケース2Bの下側、すなわち、区画室7とは反対側には、駆動コイル31と、この駆動コイル31を搭載するステータコア32を備えるステータ30が配置されている。ステータ30は、下ケース2Bにおける下側突出部23の外周側に装着され、その外側を覆うようにモータカバー3が装着される。ステータコア32は円筒状部材33の内周側に保持されており、径方向を向いた複数の突極32aを備えている。駆動コイル31は複数の突極32aのそれぞれに巻き回されている。複数の突極32aは、ロータ10およびステータ30の中心軸線L回りに等角度間隔で配置されている。各突極32aは、中心軸線Lと直交する方向で、下ケース2Bを介して、円形凹部24内に配置された駆動マグネット12と対向している。このような配置により、駆動マグネット12と駆動コイル31が羽根車13を回転駆動するための磁気駆動機構を構成している。下ケース2Bは、ロータ10とステータ30の間に配置されて、区画室7とステータ30を隔てる隔壁として機能している。
【0030】
モータカバー3の上面には円形のモータ収納室3aが開口している。モータ収納室3a内には、ステータ30を下側から覆うように円板状の基板9が配置されている。基板9には電源回路や配線接続用の端子部等が設けられており、ステータ30の駆動コイル31から引き出した巻き線の端部(図示省略)が接続されている。基板9の中央には円形開口9aが形成されている。基板9は、円形開口9aの中心と、ロータ10およびステータ30の中心軸線Lとを一致させるように配置されている。基板9を介して駆動コイル31に励磁電流が供給されると、ロータ10は中心軸線L回りに回転する。これにより、吸入口5aから後述する渦流室41内に流体が吸い込まれ、渦流室41内で加圧されて、吐出口6aから吐出される。このように、ロータ10、ステータ30、および基板9によって、ポンプ装置1を駆動するモータが構成されている。基板9の駆動制御装置から駆動コイル31に供給される励磁電流の順序を逆にすることにより、ロータ10を逆方向に回転させることができる。この場合には、流体を吐出口6aから吸入して吸入口5aから吐出することができる。
【0031】
(渦流室)
図3(a)に示すように、上ケース2Aと下ケース2Bの間に形成された区画室7の上部には、上ケース2Aにおける区画室形成用凹部25の底面25dと、下ケース2Bにおける円形隆起部22の上端面22aがインペラ部11の厚みよりもわずかに大きい間隔で対向しており、この間にポンプ室40が形成されている。ポンプ室40の外周部分には、中心軸線L回りの所定の角度範囲(本例では、270°を超える角度範囲)にわたって円弧状の渦流室41が形成されている。インペラ部11はポンプ室40に収容されており、インペラ部11の外周に設けられた羽根車13は渦流室41と同軸に配置され、渦流室41に挿入されている。
【0032】
図2、
図3に示すように、下ケース2Bには、ポンプ室40の底面を規定している円形隆起部22の上端面22aの外周部分には円弧溝42Bが形成されている。円弧溝42Bは、その両端を除く大部分の断面形状が半円形になっている。一方、
図4は上ケース2Aを下側(
図3の矢印Y方向/ポンプ室40側)から見た平面図であるが、
図3、
図4に示すように、ポンプ室40の天井面を規定している区画室形成用凹部25の底面25dの外周部分には、円弧溝42Bと同一の断面形状の円弧溝42Aが形成されている。円弧溝42Aと円弧溝42Bは、中心軸線L方向から見たときに重なる位置に形成されており、且つ、中心軸線Lに対して垂直な面を基準として上下に対称な形状となるように形成されている。
【0033】
図2、
図3に示すように、下ケース2Bにおいてポンプ室40の底面を構成している上端面22aは、円弧溝42Bよりも外周側の円環状領域が、上ケース2Aの円環状段面25bに密着する外側シール面部分22bとなっている。また、上端面22aにおける円弧溝42Bの内周側の領域は、インペラ部11との間に微小なギャップを隔てて対向する内側シール面部分22cとなっている。更に、上端面22aにおける円弧溝42Bの一端と他端の間の領域は、内側シール面部分22cと面一な封鎖用シール面部分22dとなっている。また、
図3、
図4に示すように、上ケース2Aにおいてポンプ室40の天井面を形成している底面25dは、円弧溝42Aの内周側の領域がインペラ部11との間に微小なギャップを隔てて対向する内側シール面部分25eとなっている。そして、底面25dにおける円弧溝42Aの一端と他端の間の領域は、内側シール面部分25eと面一な封鎖用シール面部分25fとなっている。ポンプ室40の底面および天井面にこのようなシール面(上端面22aおよび底面25dの各部)を形成することにより、ポンプ室40内において渦流室41が密閉された流路を構成している。
【0034】
上ケース2Aにおいて、円弧溝42Aの外周縁は上側円筒部25cの上端縁に接続されており、上側円筒部25cの下端縁には下ケース2B側の円弧溝42Bの外周縁が接続されている。上側円筒部25cは、羽根車13を外周側から囲むように配置されている。
【0035】
(渦流室と吸入流路および吐出流路との接続形状)
図4に示すように、渦流室41を規定している円弧溝42Aの一方の端が位置する上ケース2Aの部位には、吸入口5aに連通する吸入流路50が設けられている。また、渦流室41の他方の端が位置する上ケース2Aの部位には、吐出口6aに連通する吐出流路60が設けられている。吸入流路50および吐出流路60は、流路方向に対して垂直な断面で切断した断面形状が一定な円筒状流路であり、両流路の断面形状は同一となっている。吸入流路50と吐出流路60は平行に配置されており、且つ、ポンプ装置1の中心軸線Lに対して垂直な方向を向いており、更に、ポンプ装置1の中心軸線Lを含み、且つ、渦流室41の流路方向の中央位置Cを通る対称面Pに対して対称に配置されている。このため、渦流室41の一端および他端の流路方向に対し、吸入流路50と吐出流路60の各流路方向のなす角度(
図4に示す角度θ1、θ2)が同一となっている。本例では、渦流室41の一端および他端に対し、吸入流路50と吐出流路60を同一の接続形状で接続している。
【0036】
図5は、渦流室41に対する吸入流路50および吐出流路60の接続形状を示す説明図であり、これらの流路を中心軸線Lの方向から見た形状を示している。なお、
図5において、インペラ部11は図示を省略している。また、
図4と
図5において、
図4は上ケース2Aを下側(
図3の矢印Y方向)から見た平面構成であり、
図5は吸入管5および吐出管6の流路中心を通る断面を上側から見た平面構成であるため、吸入管5と吐出管6の位置が左右逆になっている。以下に、渦流室41の一方の端部41aに対する吸入流路50の接続形状について説明し、渦流室41の他方の端部41bに対する吐出流路60の接続形状については、吸入流路50の場合と同一であるため説明を省略する。
図5に示すように、吸入流路50は、渦流室41の端部41aに対して外周側から接続されており、吸入流路50の流路方向は、渦流室41の端部の接線方向とは異なる方向となっている。渦流室41の内周側内壁面43および外周側内壁面44は同軸状の円弧形状であり、両内壁面の間には一定幅の円弧状流路が形成されている。一方、吸入流路50は直線状流路であり、その内壁面51、52は平行となっている。内壁面51、52のうち、渦流室41との接続時に流路の入り隅部となる側の内壁面51は、外周側内壁面44との接続位置Qbまで直線状に延びている。一方、流路の出隅部となる側の内壁面52は、内周側内壁面43よりも外周側までしか延びておらず、内周側内壁面43よりも外周側の位置において、直線状の接続壁面45の一端に接続されている。接続壁面45の他端は、内周側内壁面43の端部に対し、接線方向に接続されている。つまり、接続壁面45は、全体として、内周側内壁面43よりも外周側に配置されている。
【0037】
ここで、接続壁面45と内周側内壁面43との接続位置Qa1と、接続壁面45と内壁面52との接続位置Qa2の位置関係は、内壁面51と外周側内壁面44との接続位置Qbを通って径方向に延びており渦流室41の中心軸線Lと交差する仮想線L1に対し、接続位置Qa1と接続位置Qa2が逆の側に配置されるように設定されている。このようにすると、接続位置Qa2は、仮想線L1と内周側内壁面43との交点Qcよりも渦流室41の中央位置Cの側に後退した位置となるため、吸入流路50と渦流室41との接続部が、その出隅側の角部を広い範囲にわたって切り欠いた形状となっている。
【0038】
このような接続壁面45を設けると、内壁面52と内周側内壁面43を単に交差させた場合に比べて壁面の接続形状をなだらかにすることができ、流体の経路を全体として緩やかに曲がる形状にすることができる。具体的には、内壁面52を内周側内壁面43の延長線との交点Qa3まで延ばした場合(すなわち、接続壁面45によって流路形状を調整しなかった場合)の流路の屈曲角度と、本例における流路の屈曲角度とを比較すると、
図5に示すように、接続壁面45を設けた場合の流路の接続角度θαと、接続壁面45を設けない場合の接続角度θβの大小関係が、θα>θβとなっている。
【0039】
次に、渦流室41に対する吸入流路50の接続部の断面形状(中心軸線Lを含む切断面で切断した断面形状)について説明する。
図6は渦流室41に対する吸入流路50あるいは吐出流路60の接続部の断面形状を示す説明図であり、
図6(a)は断面位置を示す説明図、
図6(b)〜(d)は
図6(a)に示す各断面位置X1、X2、X3における断面図である。断面位置X1は渦流室41と吸入流路50の接続部を含まない断面位置であり、吸入流路50の流路方向と直交する断面方向となっている。これに対し、断面位置X2、X3は接続部を含む断面位置であり、断面位置X2は断面位置X1に対して45度傾いており、断面位置X3は断面位置X1に対して60度傾いている。本例では、接続壁面45を、中心軸線Lと平行な方向に延びる平面状の内壁面としている。上述したように、渦流室41の内壁面は、吸入流路50あるいは吐出流路60との接続部を除き、半円形の断面形状の円弧溝42A、42Bの内周面によって規定されている。すなわち、
図6(b)に示すように、内周側内壁面43は、円弧溝42A、42Bの内周面における内周側の縁部分であり、外周側内壁面44は、円弧溝42A、42Bの外周側の縁部分である。このため、渦流室41の断面形状は、円弧溝42A、42Bの溝幅D0(すなわち、内周側内壁面43と外周側内壁面44の半径差)を直径とする半円形状となっている。
【0040】
接続壁面45は、この半円形断面の円弧溝42A、42Bと斜めに交差するように配置されている。このため、渦流室41に対する吸入流路50の接続部では、
図6(c)(d)に示すように、溝幅D0の半円形を、中心軸線Lと平行な直線によって内周側からカットした形状となっている。接続壁面45は、接続位置Qa1から接続位置Qa2に向かうに従って外周側に移動するため、吸入流路50の側へ向かうに従って切り欠き面積は大きくなり、流路断面積は減少してゆく。しかしながら、接続壁面45の断面形状をこのように設定すると、流路の平面形状をなだらかにしながらも、断面積の変化については極力小さくできるため、流路断面積の変化に起因する圧力損失を低減できる。
【0041】
ここで、
図5に示すように、接続壁面45は、仮想線L1との交点Qdの位置が、内周側内壁面43よりも外周側内壁面44に近い位置となるように設定されている。言い換えれば、交点Qdと接続位置Qbとの距離が、交点Qdと交点Qcとの距離よりも大きくなるように、交点Qdの位置が設定されている。このようにすると、
図6に示すように、半円形の流路断面形状を端から切り欠いてゆく場合には、仮想線L1の位置(すなわち、吸入流路50と渦流室41の外周側の壁面同士の接続位置)での流路の断面積を、渦流室41における流路の断面積の1/2よりも大きくすることができる。また、仮想線L1の位置での流路の高さ(渦流室41の中心軸線L方向の寸法)が渦流室41における流路の高さと同一の寸法に維持されており、接続部において流路の高さが全く変化しない構成となっている。従って、流路抵抗が少なく、圧力損失を低減できる。
【0042】
図7は、本発明の流路接続形状によるポンプ効率の向上効果を示すグラフであり、横軸は流量、縦軸は吐出圧を示している。実線A1、A2、A3は本例のポンプ装置、破線B1、B2、B3は従来例のポンプ装置(すなわち、接続壁面45を設けずに直線状流路の壁面を円弧状流路の内周側の壁面まで延ばして交差させた形状)によるものであり、A1とB1、A2とB2、A3とB3は、それぞれ、同一回転数の場合である。このグラフに示すように、本例の流路接続形状では、従来例の流路接続形状の場合と比較して圧力損失が低減されており、ポンプ効率が向上している。
【0043】
(作用効果)
以上のように、本例のポンプ装置1は、渦流室41と直線状流路(吸入流路50および吐出流路60)との接続部における内周側の角部を接続壁面45によって広い範囲にわたってなだらかに接続した形状にして、流路の接続部を全体として緩やかに曲がる流路形状にしている。従って、流路抵抗を小さくすることができ、圧力損失を大きく低減させることができる。よって、ポンプ効率を大きく向上させることができる。
【0044】
また、本例では、このような流路接続形状にしながらも、接続部における流路方向に沿った断面積の変化が緩やかであり、接続壁面45を設けたことに起因する流路断面積の減少が最小限になっている。従って、流路断面積の減少に起因する圧力損失を低減できる。
【0045】
更に、本例では、吸入流路50および吐出流路60の両方を渦流室41に対して上記のような形状に接続しているため、吐出側と吸引側の両方の接続部において圧力損失の低減効果が得られる。よって、ポンプ効率を大きく向上させることができる。さらに、渦流室41が対称面Pに対して対称に配置されているため、ポンプを逆回転(インペラ部11を逆方向に回転)させても同じ効果が得られるという利点もある。
【0046】
加えて、本例では、吸入流路50および吐出流路60が直線状の平行流路となっており、両流路が共に上ケース2Aに形成されている。従って、両流路を同一スライドコアで構成することができ、上ケース2Aを樹脂成形する場合の金型を単純な構成にすることができる。
【0047】
また、本発明では、吸入流路50および吐出流路60の流路方向をポンプ装置1の中心軸線L方向に対して垂直にして、流体の吐出口6aおよび吸入口5aをポンプ装置の前面4(側面)に形成している。このため、ポンプ装置1の軸線方向の寸法を小さくでき、薄型化に有利である。
【0048】
更に、本発明では、接続壁面45が内周側内壁面43よりも外周側に設けられているため、渦流室41の内周側に設けられたシール面の部分(内側シール面部分22c、内側シール面部分25e)を内周側に切り欠くことのない形状となっている。このため、シール性の低下を抑制できる。更に、ポンプ室40の底面側において、前記渦流室41の周方向の一端および他端から延びる各接続部の間に形成されている封鎖用シール面部分22dが、渦流室41の周方向の中央位置Cの内周側に設けられている内側シール面部分22cと面一に形成されている。また、ポンプ室40の天井面側において、封鎖用シール面部分25fが内側シール面部分25eと面一に形成されている。このため、吐出流路60および吸入流路50との接続部におけるシール性能が十分に高いという利点もある。
【0049】
また、本発明では、吸入流路50および吐出流路60の流路中心線L2(
図6(d)参照)が、ポンプ室40の中心軸線L方向の高さ寸法の中央の位置、言い換えれば、羽根車13の外周面における中心軸線L方向の中央位置を通るように構成されている。このような構成では、羽根車13の外周面の中央部分と対向するように吐出流路60を開口させることができるため、羽根車13の表面(外周面)に沿って遠心力で外周側に流れる流体をスムーズに吐出流路60に流入させることができる。よって、流路抵抗が少なく、圧力損失を低減できるという効果が得られる。
【0050】
(他の実施形態)
図8は、他の実施形態の流路接続形状を示す説明図である。上記実施形態では、接続壁面45と内壁面52との接続位置Qa2を外周側内壁面44の延長線上に設定しているが、
図8(a)に示す接続壁面45Aのように、接続位置Qa2を外周側内壁面44よりも外周側に設定することもできる。このようにすると、接続角度θαを大きな角度にすることができ、流路の接続部の屈曲角度を緩やかにすることができる。従って、圧力損失の低減効果を高めることができる。また、
図8(b)に示す接続壁面45Bのように、接続位置Qa2を外周側内壁面44の延長線の内周側に設定することもできる。この場合には、
図5、
図8(a)の接続形状よりも効果は低いものの、従来のように内壁面52と内周側内壁面43を単に交差させた場合に比べて壁面の接続形状をなだらかにすることができる。従って、圧力損失の低減効果が得られる。
【0051】
このように、接続位置Qa1、Qa2の位置を
図5の位置から変更した接続壁面45の形状を決定するにあたっては、例えば、接続位置Qa2を設定し、接続位置Qa2を通る内周側内壁面43の接線を決定して、この接線と内周側内壁面43との接点の位置を接続位置Qa1に設定することができる。このとき、上述したように、接続位置Qa1が仮想線L1に対して接続位置Qa2とは逆の側に位置するという条件を満たすように、接続位置Qa2を設定する。このようにすると、接続壁面45と内周側内壁面43が直線状に接続され、最もなだらかな接続形状となる。あるいは、最初に、仮想線L1(
図5参照)に対して渦流室41の流路方向の中央位置Cの側に接続位置Qa1を設定し、この点を通る内周側内壁面43の接線を延ばして、この接線と内壁面52との交点を接続位置Qa2に設定することもできる。
【0052】
図8(c)に示す接続壁面45Cのように、直線状ではなく曲線状に接続することもできる。例えば、接続壁面45Cは、接続位置Qa2における接続壁面45の接線方向を内壁面51の方向と一致させた湾曲状となっている。また、曲線状にする場合においては、曲線の両端を結ぶ直線よりも内周側内壁面43の側に湾曲させることが望ましい。このようにすると、よりなだらかに接続できる。また、流路断面積の減少を少なくすることができるため、流路断面積の変化に起因する圧力損失を低減させることができる。
【0053】
図8(d)に示す接続壁面45Dの形状は、接続位置Qa1の位置を更に後退させ、全体を湾曲させた形状である。このような形状にすると、流路断面積の変化をより緩やかにすることができる。
【0054】
図8(e)に示すように、渦流室41に対する直線状流路(吸入流路50あるいは吐出流路60)の接続方向を変更した場合にも、上記各形態と同じ接続形状にして流路の接続形状をなだらかにすることができる。すなわち、本発明は、吸入流路50と吐出流路60が平行でない構成にも適用可能である。また、吸入流路50と吐出流路60を、渦流室41の一端および他端に対し、それぞれ異なる接続角度で接続させるようにしてもよい。また、吸入流路50と吐出流路60のいずれか一方のみを、上記各形態のようになだらかな接続形状とし、他方については従来のような接続形状(すなわち、接続壁面45を設けることなく、内壁面52と内周側内壁面43を単に交差させた形状)としてもよい。
【0055】
図9は、接続部における流路の断面形状の
参考形態を示す説明図であり、
図9(a1)(a2)(a3)はそれぞれ、
図6における各断面位置X1、X2、X3で切断した場合の
参考形態の断面形状を示している。なお、比較のため、
図9(b1)(b2)(b3)には
図6に示した上記の形態における断面形状を示す。
図9(a)に示す断面形状は、半円形を直線でカットする代わりに、カット位置に応じて半円形断面の直径を変化させ、全体として縮小した半円形にするものである。すなわち、この場合には、中心軸線Lを含む切断面で切断した流路断面形状が、当該切断面内における外周側内壁面44と前記接続壁面45Eとの距離を直径とする円弧形状となっている。このようにすると、内周側と外周側が滑らかな円弧曲線で接続された断面形状となるため、流路の内壁に沿って流路中心線を中心とする周方向に流体が流れる場合の流路抵抗を低減できる。また、接続部における流路の高さの変化も滑らかである。従って、流路抵抗を少なくすることができ、圧力損失の低減効果が得られる。
【0056】
なお、上記形態では、接続壁面45を中心軸線Lと平行な面にしていたが、
図9(b1)〜(b3)に示すように、接続壁面45の代わりに、中心軸線Lに対して傾いた接続壁面45Fを設けた構成にすることもできる。この場合、接続壁面45Fを渦流室41の開口側(すなわち、円弧溝42A、42Bの開口側)に広がる方向に傾けることが望ましい。このようにすると、上ケース2Aおよび下ケース2Bを樹脂成型で構成した場合に、渦流室41を形成する金型の構成を簡単にできる。
【0057】
また、上記各形態は、ポンプ室40がモータ部(ロータ10およびステータ30)の上方に1室のみ設けられたポンプ装置1についての形態であったが、本発明を、モータ部を挟み、上下に2つのポンプ室を配置したポンプ装置に適用することもできる。
【0058】
さらに、上記各形態は、吸入流路50および吐出流路60を共に上ケース2Aに形成したが、吸入流路50および吐出流路60を、ポンプ室40の流路中心線L2を通り中心軸線Lに垂直な面で2分割し、上ケース2Aと下ケース2Bの2部材で構成することもできる。この場合、上ケース2Aおよび下ケース2Bにおいて内壁面51、52が表面に露出するため、内壁面51と外周側内壁面44を滑らかに接続することが容易になる。